説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】小型で、省電力化やウォームアップ時間の短縮を図ることができる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着部は、定着ローラ61、テンションローラ63、定着ローラ61及びテンションローラ63に張架された無端状の定着ベルト60、定着ベルト60を加熱するヒータユニット64、及び、定着ベルト60を介して定着ローラ61に圧接される加圧ローラ62を備えて構成する。ヒータユニット64は、定着ベルト60に圧接するように配してあり、テンションローラ63は、定着ベルト60に接する外周に断熱層63bを配してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート上に画像を定着させる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、主としてオフィス等で電子写真方式の画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」という)の普及が進んでいる。該画像形成装置は、感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び定着手段を含み、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程を行って、シート状の記録媒体(以下、単に「シート」ともいう)に画像を形成する装置である。
【0003】
定着手段として、例えば熱ローラ定着方式の定着装置を用いる。この定着装置は、定着ローラ及び加圧ローラを含む。定着ローラ及び加圧ローラは、互いに圧接するローラ対である。定着ローラ及び加圧ローラの少なくともいずれか一方の内部には、加熱手段としてハロゲンヒータなどの熱源が配されている。
【0004】
定着工程では、熱源が定着に必要な所定の温度(以下「定着温度」という)までローラ対を加熱した後、未定着のトナー像が形成された記録媒体が、定着ローラと加圧ローラとの圧接部である定着ニップ部に供給される。定着ニップ部を通過するトナー像は、定着ローラ及び加圧ローラの少なくともいずれか一方から伝わる熱と、定着ローラ及び加圧ローラの圧力とによって、紙などの記録媒体に定着される。熱源が定着装置の温度を定着温度まで昇温させるのに必要な時間(以下「ウォームアップ時間」という)が長いと、記録媒体に画像形成するまでに時間を要してしまうので、ウォームアップ時間は短い方がユーザの利便性は良好となる。
【0005】
フルカラー印刷が可能な画像形成装置に装着する定着装置では、例えばシリコーンゴムなどからなる弾性層を表面に設けた定着ローラを用いる。この定着ローラを用いると、定着ニップ部において定着ローラ表面の弾性層が未定着トナー像の凹凸に対応して弾性変形し、未定着トナー像を覆い包むようにして定着ローラと未定着トナー像とが接触するので、単色画像に比べてトナー量の多いカラーの未定着トナー像に対して、定着性を良好にすることができる。
【0006】
また、定着ローラ表面の弾性層の歪み解放効果によって、単色画像に比べてオフセットしやすいカラートナーの離型性を向上させることができる。具体的には、定着ニップ部で圧縮され歪が生じた弾性層は、定着ニップ部の出口でその歪が解放されるので、定着ニップ部の出口では弾性層とトナー像との間にずれが生じ、その結果、弾性層のトナー像に対する付着力が低減され、離型性が向上する。また、定着ニップ部における定着ローラ及び加圧ローラの形状であるニップ形状が、定着ローラ側に凸(逆ニップ形状)となるので、定着ローラと記録媒体との剥離性能を向上させることができる。したがって、定着ローラと記録媒体とを剥離する剥離手段として、例えば剥離爪を用いることなく記録媒体と定着ローラとの剥離が可能なセルフストリッピングを実現することができるので、剥離手段に起因する画像欠陥を解消することができる。
【0007】
高速化に対応するためには定着ニップ部の幅(以下「定着ニップ幅」という)を広くする必要がある。定着ニップ幅を広くする方法として、定着ローラの弾性層を厚くする方法、又は定着ローラ径を大きくする方法の2つの方法が挙げられる。しかし、定着ローラの弾性層の熱伝導性は非常に低いので、弾性層を厚くすると、定着ローラ内部に加熱手段がある場合にはウォームアップ時間が長くなり、プロセス速度を高速化すると、定着ローラの温度が定着温度に追従しなくなる。また、定着ローラ径を大きくすると、熱容量が大きくなり、加熱手段による消費電力が増大してしまう。
【0008】
特許文献1には、高速化に対応しつつ、ウォームアップ時間及び消費電力を改善する定着装置が開示されている。特許文献1に開示された定着装置は、定着ローラ、加圧ローラ、加熱ローラ、及び無端状ベルトを含み、定着ローラ及び加熱ローラに無端状ベルトを掛け渡し、無端状ベルトを介して定着ローラと加圧ローラとを圧接させるベルト定着方式を用いている。この定着装置は、加熱手段を定着ローラに内蔵する必要がないので、定着ローラの弾性層を厚く設け、定着ローラ径を大きくすることによって高速化に対応しつつ、加熱ヒータを内部に含む加熱ローラによって熱容量の小さい無端状ベルトを加熱できるので、熱容量の大きい弾性層を加熱する必要がなく、ウォームアップ時間が短く、消費電力の増大を回避することができるというものである。
【0009】
また、特許文献2には、加圧ローラに対向して、面状発熱体を加熱手段として内蔵した定着ヘッドを設け、定着ベルトを介して、加熱手段による熱を被加熱材としての記録媒体に付与し、記録媒体上の未定着トナー像を加熱定着させる定着装置が提案されている。特許文献2に開示された定着装置では、面状発熱体の熱容量を、加熱手段としてハロゲンヒータを用いた場合の熱容量に比べて、小さくすることができるので、省電力化やウォームアップ時間の短縮が可能になるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第99/00713号パンフレット
【特許文献2】特開平02−143274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の定着装置では、加熱ローラ内にハロゲンランプヒータを内蔵しており、ハロゲンランプヒータによるウォームアップ時間を短くするためには、加熱ローラの厚みを薄くして加熱ローラ自体の熱容量を小さくしなければならない。また、加熱ローラの厚みを薄くしながらも十分な強度を得るためには、ローラ径を大きくしなければならず、装置が大型化するという問題点があった。
【0012】
また、特許文献2に記載された加圧ローラに定着ヘッドが対向する構成では、定着ヘッドの他に、定着ベルトを張架するための複数のローラを配置する必要があり、装置が大型化するという問題点があった。
【0013】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型で、省電力化やウォームアップ時間の短縮を図ることができる定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る定着装置は、定着ローラと、該定着ローラと平行に配されたテンションローラと、前記定着ローラ及び前記テンションローラに張架された無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを加熱するヒータと、前記定着ベルトを介して前記定着ローラに圧接される加圧ローラとを備え、現像剤による画像を担持したシートを前記定着ベルト及び前記加圧ローラにより挟持しながら搬送して前記シート上に画像を定着させる定着装置において、前記ヒータは、前記定着ベルトに圧接するように配してあり、前記テンションローラは、前記定着ベルトに接する外周に断熱部材を配してあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る定着装置は、前記テンションローラの外径が前記定着ローラの外径よりも小さいことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る定着装置は、前記ヒータが、前記定着ベルトが周回する軌道の内側に配してあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る定着装置は、前記テンションローラに配してある前記断熱部材が、多孔質素材により形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る定着装置は、前記加圧ローラを加熱するヒータを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る画像形成装置は、取得した画像データに基づいて現像剤による画像をシート上に転写する転写手段と、上述の定着装置とを備え、該定着装置で画像を定着させて画像形成を行うようにしてあることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、無端状の定着ベルトを定着ローラ及びテンションローラに張架し、定着ベルトを加熱するヒータが定着ベルトに圧接するように配してあり、テンションローラが定着ベルトに接する外周に断熱部材を配してあるため、テンションローラへの熱伝導が抑制され、ウォームアップ時間を短縮することができる。
【0021】
本発明にあっては、テンションローラの外径が定着ローラの外径よりも小さいため、装置を小型化することができる。
【0022】
本発明にあっては、定着ベルトが周回する軌道の内側にヒータが配してあるため、装置を小型化することができる。
【0023】
本発明にあっては、テンションローラに配してある断熱部材が、多孔質素材により形成されているため、断熱部材の断熱性が高く、ウォームアップ時間を短縮することができる。
【0024】
本発明にあっては、加圧ローラを加熱するヒータを備えるため、ウォームアップ時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、無端状の定着ベルトを定着ローラ及びテンションローラに張架し、定着ベルトを加熱するヒータが定着ベルトに圧接するように配してあり、テンションローラが定着ベルトに接する外周に断熱部材を配してあるので、テンションローラへの熱伝導が抑制され、ウォームアップ時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の例を示す模式図である。
【図2】図1の作像ユニットの断面を示す模式図である。
【図3】図1の定着部の断面を示す模式図である。
【図4】図3の面状発熱体の正面図である。
【図5】ウォームアップ時の温度変遷を表すグラフである。
【図6】各実施例のウォームアップ時間を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって本発明を限定するものと解されるべきではない。
【0028】
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の例を示す模式図である。画像形成装置1は、画像形成部2、中間転写部3、2次転写部4、記録媒体供給部5、本発明の定着装置である定着部6、図1には図示しない操作部、及び制御部等を備える。
【0029】
(画像形成部2の構成及び動作)
画像形成部2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを備えている。作像ユニット10y,10m,10c,10bは、各色相のデジタル信号(以下、「画像情報」と記載する)に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して、各色ごとに現像剤による画像(トナー像)を形成するユニットである。ここで、画像情報は画像読取部9によって原稿画像を読み取って生成されるものである。作像ユニット10yはイエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0030】
作像ユニット10y,10m,10c,10bの相違点は、それぞれイエロー色現像剤、マゼンタ色現像剤、シアン色現像剤、又はブラック色現像剤を使用すること、及び画像形成部2に入力される画像情報のうち、イエロー色成分像に対応する画素信号、マゼンタ色成分像に対応する画素信号、シアン色成分像に対応する画素信号、ブラック色成分像に対応する画素信号がそれぞれ入力されることである。作像ユニット10y,10m,10c,10bの構成は同等であるので、以下では、イエロー色に対応する作像ユニット10yを例として説明し、他の作像ユニットについては説明を省略する。
【0031】
なお、各色に対応する作像ユニット10などを個々に示す場合には、アルファベットの添字:y(イエロー色)、m(マゼンタ色)、c(シアン色)、b(ブラック色)を付して表す。作像ユニット10y,10m,10c,10bは、後述する中間転写ベルト30の移動方向(副走査方向)、すなわち、矢符31の方向の上流側から下流側にこの順番で一列に並んで配列される。
【0032】
図2は、作像ユニット10yの断面を示す模式図である。作像ユニット10yは、感光体ドラム11y、帯電ローラ12y、光走査ユニット13y、現像装置14y、及びドラムクリーナ15y等を含む。
【0033】
感光体ドラム11yは、イエロー色のトナー像が表面に形成される像担持体であり、軸線回りに回転駆動可能に支持され、円筒状、円柱状又は薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。感光体ドラム11yとしては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される感光層である有機感光層とを含む、GND(接地)電位に接続される感光体ドラムを使用できる。
【0034】
有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成されるものであってもよく、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含む1つの層によって形成されてもよい。有機感光層の層厚は、特に限定されるものではないが、例えば、厚み20μmなどとする。また、有機感光層と導電性基体との間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。
【0035】
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性の電位に帯電させるローラである。感光体ドラム11yを帯電させる手段としては、帯電ローラ12yに限定されるものではなく、帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、又はスコロトロンというコロナ帯電器なども使用できる。
【0036】
光走査ユニット13yは、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面にイエロー色の画像情報により制御されたレーザ光を照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成するユニットである。レーザ光の光源には、半導体レーザ素子などが用いられる。
【0037】
現像装置14yは、感光体ドラム11yに臨んで設けられ、感光体ドラム11y表面に形成される静電潜像を現像して顕像化する装置である。現像スリーブ17y表面に、現像槽19y内の2成分現像剤16yに含まれるイエロー色トナー及びキャリアのうち、イエロー色トナーを担持し、層厚規制部材18yによって所定量の厚さに規制して感光体ドラム11y表面に搬送し、感光体ドラム11y表面に形成される静電潜像を現像して顕像化する。また、現像槽19y内には現像スリーブ17yへ現像剤を供給する供給ローラ20yを備える。なお、現像剤としては、キャリアを含まない1成分現像剤を用いることもできる。
【0038】
ドラムクリーナ15yは、感光体ドラム11yに圧接されるクリーナブレード21yを有している。感光体ドラム11y表面のイエロー色のトナー像が中間転写ベルト30に中間転写された後、クリーナブレード21yにより、感光体ドラム11y表面において中間転写ベルト30に中間転写されずに残留したイエロー色トナーを除去し、箱体22yに回収する。
【0039】
つぎに、画像形成部2の動作について説明する。感光体ドラム11yは、図2には図示しない駆動手段によって、矢符23の方向に、例えば周速度220mm/sで回転駆動される。現像スリーブ17yは、感光体ドラム11yに近接する現像ニップ部において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と逆の方向である矢符24の方向に回転駆動される。
【0040】
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、図示しない電源により帯電ローラ12yに、例えば−1200Vを印加して放電させることよって、感光体ドラム11yの表面を例えば−600Vに帯電させる。つぎに、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13yからイエロー色の画像情報により制御されたレーザ光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。
【0041】
次いで、感光体ドラム11yの表面と現像スリーブ17y表面に担持されるイエロー色トナーとを近接させる。現像スリーブ17yには現像電位として−450Vの直流電圧が印加されており、現像スリーブ17yと感光体ドラム11yとの電位差によって、静電潜像にイエロー色トナーが付着し、感光体ドラム11yの表面にイエロー色トナー像が形成される。このイエロー色トナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に圧接し、矢符31の方向に駆動する中間転写ベルト30に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロー色トナーはドラムクリーナ15yにより除去回収される。以後、同様にしてイエロー色のトナー像の形成動作が繰り返し実行される。なお、本実施の形態に係る画像形成装置1で用いられる2成分現像剤16y,16m,16c,16bについては後述することとする。
【0042】
(中間転写部3の構成及び動作)
中間転写部3は、中間転写ベルト30、中間転写ローラ32y,32m,32c,32b、支持ローラ33,34,35、及びベルトクリーナ36等を含む。本実施の形態では、中間転写部3、及び後述する2次転写部4によって、記録媒体8に画像が転写される。
【0043】
中間転写ベルト30は、支持ローラ33,34,35に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状の像担持体である。中間転写ベルト30は、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ周速度で、矢符31の方向に、すなわち、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに臨む像担持面が、感光体ドラム11yから感光体ドラム11bに向って移動するように駆動される。
【0044】
中間転写ベルト30には、例えば、厚さ100μmのポリイミドフィルムを使用できる。中間転写ベルト30の材料としてはポリイミドのみに限定されず、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル及びポリプロピレンなどの合成樹脂、又は各種ゴムなどから構成されるフィルムを使用できる。
【0045】
合成樹脂又は各種ゴムから構成されるフィルム中には、中間転写ベルト30の電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック及びグラファイトカーボンなどの導電材が配合される。また、中間転写ベルト30には、トナーに対する付着力の弱いフッ素樹脂組成物、又はフッ素ゴムなどから構成される被覆層が設けられていてもよい。被覆層の構成材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びPFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)などが挙げられる。被覆層には導電材が配合されていてもよい。
【0046】
中間転写ローラ32y,32m,32c,32bは夫々、中間転写ベルト30を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向するように設けられるローラ状部材であり、中間転写ベルト30における像担持面の反対面に圧接し、図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。
【0047】
中間転写ローラ32y,32m,32c,32bには、例えば金属製軸体、及び金属製軸体の表面に形成される導電体層を含むローラ状部材が用いられる。金属製軸体は、例えば、ステンレス鋼などの金属によって構成される。金属製軸体の直径は特に制限されないが、好ましくは8mm以上10mm以下である。導電体層は、導電性を有する弾性体などによって構成される。導電性を有する弾性体としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、カーボンブラックなどの導電剤を含む、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、発泡EPDM、及び発泡ウレタンなどが挙げられる。導電体層によって、中間転写ベルト30に高電圧が均一に印加される。
【0048】
中間転写ローラ32y,32m,32c,32bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト30上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック色のトナー像が中間転写ベルト30の像担持面に順次重ね合わさって転写され、多色のトナー像が形成される。ただし、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック色の一部のみの画像情報が入力される場合には、作像ユニット10y,10m,10c,10bのうち、入力される画像情報の色に対応する作像ユニット10のみにおいてトナー像が形成される。
【0049】
支持ローラ33,34,35は、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられ、中間転写ベルト30を張架して矢符31の方向に回転駆動させる。支持ローラ33,35には、例えば、直径30mm、及び肉厚1mmのアルミニウム製円筒体(パイプ状ローラ)が用いられる。このうち、支持ローラ34は、中間転写ベルト30を介して後述する2次転写ローラ40に圧接して2次転写ニップ部を形成し、かつ電気的に接地される。
【0050】
ベルトクリーナ36は、中間転写ベルト30の像担持面上のトナー像を後述の2次転写部4において記録媒体8に転写した後に、像担持面上に残存するトナーを除去する部材である。中間転写ベルト30を介して支持ローラ35に対向するように設けられる。
【0051】
つぎに、中間転写部3の動作について説明する。中間転写ベルト30の像担持面は、中間転写ベルト30の駆動方向における上流側から、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト30が感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色トナー像の中間転写位置となる。
【0052】
中間転写ローラ32y,32m,32c,32bには、トナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が均一に印加される。この高電圧印加によって、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成されるトナー像は、中間転写ベルト30の像担持面の所定位置に重ね合わされて中間転写され、多色のトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。このトナー像は、後述するように、2次転写ニップ部において記録媒体8に2次転写される。2次転写後に中間転写ベルト30の像担持面に残留するトナー、及び紙粉などがベルトクリーナ36によって除去され、中間転写ベルト30の像担持面には再度多色のトナー像が転写される。
【0053】
(2次転写部4の構成及び動作)
2次転写部4は、支持ローラ34と、2次転写ローラ40とを含む。支持ローラ34は、中間転写ベルト30を張架する機能と共に、中間転写ベルト30上の多色のトナー像を記録媒体8に2次転写させる機能を有する。2次転写ローラ40は、中間転写ベルト30を介して支持ローラ34に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。
【0054】
2次転写ローラ40は、例えば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される導電体層とを含む。金属製軸体は、例えば、ステンレス鋼などの金属によって形成される。導電体層は、導電性を有する弾性体などによって形成される。導電性を有する弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、例えば、カーボンブラックなどの導電材を含む、EPDM、発泡EPDM及び発泡ウレタンなどが挙げられる。2次転写ローラ40には図示しない電源が接続され、トナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が均一に印加される。
【0055】
つぎに、2次転写部4の動作について説明する。支持ローラ34、中間転写ベルト30及び2次転写ローラ40の圧接部によって、2次転写ニップ部が形成される。中間転写ベルト30上のトナー像が2次転写ニップ部に搬送されるのに同期して、後述する記録媒体供給部5から送給される記録媒体8が2次転写ニップ部に搬送される。そして、2次転写ニップ部において多色のトナー像と記録媒体8とが重ね合わされ、2次転写ローラ40に高電圧が印加されることによって、未定着のトナー像が記録媒体8に2次転写される。そして、未定着トナー像を担持した記録媒体8は、定着部6に搬送される。
【0056】
(記録媒体供給部5の構成及び動作)
記録媒体供給部5は、収容トレイ50、収容トレイ50に収容された記録媒体8を搬出する搬出ローラ51、搬送ローラ52a,52b、及び搬送路P等により構成される。なお、記録媒体8は、印刷用紙であるほか、OHP(Overhead Projector )シートのようなフィルム状の記録媒体であってもよい。
【0057】
つぎに、記録媒体供給部5の動作について説明する。収容トレイ50は記録媒体8を収容し、搬出ローラ51は、収容トレイ50に収容されている記録媒体8を搬出する。搬送ローラ52a,52bは、搬出された記録媒体8を2次転写部4へ搬送する。
【0058】
(定着部6の構成及び動作)
図3は定着部6の断面を示す模式図である。定着部6は、定着ベルト60、定着ローラ61、加圧ローラ62、テンションローラ63、ヒータユニット64、及びサーミスタ65等により構成される。
【0059】
定着ベルト60は、定着ローラ61とテンションローラ63との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材である。また、定着ベルト60は、定着ローラ61と加圧ローラ62との圧接点で加圧ローラ62に接触するように設けられ、記録媒体8に担持されるトナー像を構成するトナーを加熱溶融させて記録媒体8に定着させるものである。定着ベルト60は、加圧ローラ62の矢符66a方向の回転駆動によって矢符66bの方向に従動回転する。
【0060】
定着ベルト60は、基材層60a、弾性層60b、及び離型層60cを含む3層構造とする。後述の実施例では、該3層構造を有する直径50mmの円筒形状に形成された無端状ベルトを使用している。基材層60aを形成する材料としては、耐熱性及び耐久性に優れるものであれば特に制限されないが、ニッケル電鋳、ステンレスなどのほか、耐熱性合成樹脂を挙げることができ、中でも、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)が好ましい。これらの材料は、強度、耐熱性に優れ、しかも安価である。また、基材層60aの厚さも特に制限されないが、好ましくは、30〜200μmである。
【0061】
弾性層60bを構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないが、さらに耐熱性にも優れたものが好ましい。このような材料の具体例としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコーンゴムが好ましい。弾性層60bの硬度は、JIS−A硬度1〜60度であることが好ましい。このJIS−A硬度の範囲であれば、弾性層60bの強度の低下、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止できる。シリコーンゴムとしては、具体的には、1成分系、2成分系又は3成分系以上のシリコーンゴム、LTV(Low Temperature Vulcanization)型、RTV(Room Temperature Vulcanization)型、又はHTV(High Temperature Vulcanization)型のシリコーンゴム、縮合型又は付加型のシリコーンゴム等が挙げられる。
【0062】
また、弾性層60bの厚さは、100〜200μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、弾性層60bの弾性効果を維持しつつ、断熱性を低く抑えることができて省エネルギー効果を発揮できる。後述の実施例では、JIS−A硬度5度のシリコーンゴムを使用している。
【0063】
離型層60cは、例えばフッ素樹脂チューブで形成した層、又はフッ素樹脂を含有する樹脂を弾性層60bに塗布して焼成することにより形成した層よりなる。フッ素樹脂の材料としては、耐熱性及び耐久性に優れ、トナーとの付着力が弱いものであれば特に制限されず、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)などが挙げられる。離型層60cの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。この厚さの範囲であれば、適度な強度を持ち、弾性層60bの弾性を発揮させつつ、記録媒体の微小な凹凸に追従することが可能である。
【0064】
定着ローラ61は、図示しない支持手段によって回転自在に支持され、加圧ローラ62、定着ベルト60の回転駆動によって、矢符66cの方向に所定の速度で従動回転するローラ状部材である。定着ローラ61は、芯金61a及び弾性層61bを含む構成とする。後述の実施例では、外径30mmの円筒形状に形成されるローラ状部材を使用する。芯金61aを形成する金属には熱伝導率の高い金属を使用でき、例えば、アルミニウム、鉄などが挙げられる。
【0065】
弾性層61bを構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないが、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特に液状熱硬化型シリコーンゴムが好ましく、また、定着ローラ61の断熱性を高めるためには、弾性層61bが多孔質であることが好ましい。
【0066】
更に、定着ベルト60の寄りを修正するため、弾性層61b上に表面層61cを設ける。これは、表面層61cにより定着ローラ61の表面の摺動性を高めることにより、定着ベルト60の寄りが修正され易くなるためである。表面層61cを構成する材料としては、耐熱性及び耐久性に優れ、摺動性が高いものであれば特に制限されず、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴム等が好ましい。
【0067】
また、定着ローラ61の内部に、補助的な加熱ヒータ68aを設けてもよい。これは、画像形成装置1の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録媒体8に熱が伝導することに起因する定着ローラ61の表面温度の低下などを防止するためである。加熱ヒータ68aにはハロゲンヒータなどが用いられる。
【0068】
加圧ローラ62は、定着ローラ61の鉛直方向最下点よりも定着ローラ61の回転方向下流側において、図示しない加圧手段により定着ベルト60を介して定着ローラ61に圧接され、定着ニップ部67を形成する。加圧ローラ62は図示しない駆動手段によって回転駆動される。加圧ローラ62は、定着ローラ61によるトナー像の記録媒体8への加熱定着において、溶融状態にあるトナーを記録媒体8に対して押圧することによって、トナー像の記録媒体8への定着を促進する。
【0069】
加圧ローラ62は、芯金62a、弾性層62b、及び表面層62cを含む構成とする。後述の実施例では、外径30mmのローラ状部材を使用する。芯金62a、弾性層62b及び表面層62cを形成する材料としては、夫々、定着ローラ61の芯金61a、弾性層61b及び表面層61cを形成する金属、又はその他材料と同じものを使用できる。また、芯金62aの形状も定着ローラ61の芯金61aの形状と同様である。
【0070】
また、加圧ローラ62の内部に、補助的な加熱ヒータ68bを設けてもよい。これは、画像形成装置1の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録媒体8に熱が伝導することに起因する加圧ローラ62の表面温度の急激な低下などを防止するためである。加熱ヒータ68bにはハロゲンランプなどが用いられる。
【0071】
テンションローラ63は、回転自在に支持され、かつ図示しない加圧手段によって定着ベルト60にテンションを加えられるように設けられたローラ状部材である。テンションローラ63は、定着ベルト60の矢符66b方向の回転に従動回転する。テンションローラ63は、芯金63a、断熱層63bの2層構造を有する円筒体である。芯金63aには、鉄やステンレスなどのヤング率が高く撓みに強い金属製又は炭素繊維製のローラ状部材を使用できる。後述の実施例では外径20mmのローラなどを使用する。
【0072】
断熱層63bは、熱が芯金63aへ伝わることを防止する目的のため、芯金63a表面を被覆するように設けられている。断熱層63bによる断熱性を高めるためには、断熱層63bが多孔質であることが好ましい。断熱層63bに用いる材料は、断熱性の高い材料であればよく、例えば、セラミック材料を用いても良いし、多孔質のシリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどでもよい。また、多孔質素材を用いる場合、孔が連通しているものであっても、独立気泡のものであってもよいが、テンションが加えられることによる変形を抑えるためには、独立気泡の多孔質素材が好ましい。後述の実施例では、断熱層63bとしてシリコーンスポンジを用い、断熱層63bによって芯金63aを被覆した。
【0073】
ヒータユニット64は、定着ベルト60が周回する軌道の内側に配置され、内部に加熱源を持ち、図示しない加圧手段によって定着ベルト60に圧接されて定着ベルト60を加熱するように設けられたユニットである。ヒータユニット64は、伝熱部材64a、面状発熱体64b、断熱部材64c、押圧部材64d、及び補強部材64eで構成される。
【0074】
伝熱部材64aは、面状発熱体64bの熱を定着ベルト60に伝達する部材である。伝熱部材64は、耐熱性があり、熱伝導率の高い部材であれば特に制限はないが、アルミニウム、鉄などの金属が好ましい。また、伝熱部材64aを図示しない支持部材に取り付けるために、伝熱部材64aの形状は、図3に示すように上下にフランジを設けた「コ」の字形状とすることが望ましい。
【0075】
伝熱部材64aの表面は、定着ベルト60の内面と摺接するため、円弧形状とすることが好ましい。ただし、曲率が大きい場合、定着ベルト60が伝熱部材64aの形状に追従することができず、伝熱部材64aの中央部において、定着ベルト60が伝熱部材64aから浮いてしまうといった不具合が発生するため、伝熱部材64aの曲率は、R10〜200の範囲であることが望ましい。また、定着ベルト60の内面と良好に摺動させるため、必要に応じて伝熱部材64aの表面にフッ素樹脂層を形成してもよい。
【0076】
図4は、面状発熱体64bの正面図である。図4に示すように面状発熱体64bは、平面視矩形短冊状のセラミックなどの絶縁基板641上に銀・パラジウム(AgPd)などからなる複数本の抵抗発熱体642を配したものである。絶縁基板641の材料としては、耐熱性、熱伝導性に優れ、電気絶縁性などを備えたものであれば特に制限はなく、アルミナや窒化アルミなどのセラミック材料が挙げられる。また、耐熱性に優れ、電気絶縁性を持つガラス材料などをコーティングしたステンレスなどの金属材等を使用することも可能である。後述の実施例では長さ366mm、幅15.8mm、厚さ0.6mmのガラス材料がコーティングされたステンレス基板を用いている。
【0077】
図4においては、抵抗発熱体642を3本の直線状のパターンとして設け、各抵抗発熱体642の一端及び他端の夫々を接続する共通の端部電極643、該端部電極643の間に長手方向の抵抗値を安定させるための導通部644を設けている。絶縁基板641上に、抵抗発熱体642のパターンを銀・パラジウムペーストにより形成し、端部電極643及び導通部644のパターンを銀ペーストにより形成した後、焼成炉で所定の焼成条件により焼成する。焼成後、絶縁保護層として抵抗発熱体642の表面をガラス材料などの絶縁材料によりコーティングすることにより面状発熱体64bが形成される。後述の実施例における抵抗発熱体642及び導通部644の厚みは、それぞれ約10μmの層であり、抵抗発熱体642の長さは320mmとした。
【0078】
断熱部材64cは、面状発熱体64bの熱が押圧部材64dを通して拡散するのを防ぐために配置する部材である。断熱部材64cとしては、耐熱性、断熱性に優れるものであれば特に制限はなく、発泡ポリイミドシートやアラミドシートなどを使用することができる。
【0079】
押圧部材64dは、断熱部材64cを介して面状発熱体64bを伝熱部材64a側へ押圧するために配置する部材である。押圧部材64dは耐熱性に優れた硬質材料製であることが好ましく、アルミニウム、硬質の樹脂材料などが用いられる。
【0080】
補強部材64eは、定着ベルト60にヒータユニット64を圧接させる際に、ヒータユニット64が撓むことを防止する部材であり、また、面状発熱体64b、断熱部材64c及び押圧部材64dを伝熱部材64aとの間に挟み込むための部材でもある。補強部材64eは、耐熱性があり、剛性の高い部材であれば特に制限はないが、鉄などの金属が好ましい。
【0081】
図3に示すように、伝熱部材64aの上下のフランジに複数のビス穴を開け、伝熱部材64aと補強部材64eとをビスによって締結することで、伝熱部材64aと補強部材64eを結合する。長手方向において複数ヶ所で結合できるため、伝熱部材64aの局所的な温度低下を防止することができ、また、伝熱部材64aの撓みが抑制されることにより、定着ベルト60への押圧力が不均一になることを防止することができる。
【0082】
サーミスタ65は、ヒータユニット64が定着ベルト60に圧接される位置よりも回転方向下流側であって、かつ定着ベルト60が加圧ローラ62に接触する位置よりも上流側の位置において、定着ベルト60に近接するように設けられ、定着ベルト60の温度を検出する。
【0083】
つぎに、定着部6の動作について説明する。定着部6は、上述の図示しない制御部によって行われる駆動及び温度制御によって動作する。制御部は、図示しないCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、CPUが実行する制御ブログラムを格納したROM(Read Only Memory)等によって構成される。CPUが駆動及び温度制御プログラムをROMから読み出して実行することにより、制御部は定着部6の駆動及び温度制御を行う。
【0084】
制御部は、画像形成装置1の電源ボタンが押されたことにより画像形成装置1が電源オンの状態となったこと、又は画像形成装置1に画像を形成させる画像形成指示を受け付けたことなどをトリガにして、定着部6を昇温させる温度制御を行う。ここで、画像形成指示は、画像形成装置1の上面に設けられた操作部から、又は画像形成装置1に接続されるコンピュータなどの外部機器から入力される。
【0085】
制御部は、ヒータユニット64、定着ローラ61の内部に設けた加熱ヒータ68a、及び加圧ローラ62の内部に設けた加熱ヒータ68bに電力を供給するための制御信号を図示しない電源部へ送出する。制御部からの制御信号を受けた電源部によって、ヒータユニット64、加熱ヒータ68a,68bへ電力が供給されることにより、ヒータユニット64、加熱ヒータ68a,68bが夫々発熱し、定着部6の温度が上昇する。制御部は、サーミスタ65による検出温度が設定温度に到達したことを検知すると、電源部からヒータユニット64、加熱ヒータ68a,68bへの電力供給をオンオフ制御するなどしてサーミスタ65による検出温度が設定温度を保つようにする。
【0086】
つぎに、制御部は、駆動手段によって加圧ローラ62を矢符66aの方向に回転させる。加圧ローラ62の回転に伴って定着ベルト60、定着ローラ61及びテンションローラ63が従動回転する。この状態で、未定着トナー像を担持する記録媒体8が2次転写ローラ40(図1参照)から定着ニップ部67に搬送される。記録媒体8が定着ニップ部67を通過する際に、トナー像を構成するトナーが加熱及び加圧されることによって記録媒体8に定着し、画像が形成される。
【0087】
なお、消費電力を低減し、さらには部品点数を削減するために、加熱ヒータ68a,68bを設けない構成とする場合には、ヒータユニット64によって定着ベルト60を加熱し、定着ベルト60からの伝熱によって、定着ローラ61及び加圧ローラ62を間接的に昇温させる。
【0088】
定着部6のヒータユニット64、加熱ヒータ68a,68bに電力供給して昇温動作を開始してから、サーミスタ65の温度が設定温度に到達するまでに要する時間(ウォームアップ時間)は、定着部6全体の熱容量に依存する。一般に、定着部6全体の熱容量が大きいとウォームアップ時間は長くなり、逆に定着部6全体の熱容量が小さくすれば、ウォームアップ時間は短くなる。
【0089】
上述のように、定着ローラ61、テンションローラ63、ヒータユニット64を定着ベルト60が周回する軌道の内側に納めた構成において、定着部6全体の熱容量を小さく抑えるためには、テンションローラ63を小径にしてテンションローラ63の熱容量を小さくすればよい。しかし、テンションローラ63を小径にした場合に、テンションローラ63を中空(円筒状)とすると剛性が足りず、加えられるテンションによって撓みが発生してしまう。
【0090】
小径のテンションローラ63に発生する撓みを抑えるためには、芯金63aの厚みを厚くするか、中実にする必要がある。芯金63aの厚みを厚くし、又は中実にした場合、テンションローラ63の熱容量が大きくなってしまう。そこで、本発明は、断熱層63bを設けることによって、定着ベルト60側からテンションローラ63側への熱伝導を抑え、定着部6を短時間で昇温することができるものである。これにより、ウォームアップ時間を短くすることができるとともに、テンションローラ63の小径化によって、定着部6を小型化できるものである。
【0091】
テンションローラ63の外径については、テンションローラ63の外径をr、定着ローラ61の外径をRとしたとき、外径rを外径Rより小さくすることで、少なくとも定着部6を小型化できるが、さらに下記の関係式を満足することが望ましい。
r≦2/3×R
【0092】
外径rが上記の関係式を超える場合、テンションローラ63の外径rが大きいため、芯金63aの厚みを薄くしても、ひずみに対する十分な強度をテンションローラ63に持たせることができる。芯金63aの厚みを薄くした分、熱容量を小さくすることができるので、テンションローラ63の表面を断熱層63bで被覆することによってウォームアップ時間が短縮化されるものの、時間短縮の効果は限定的なものとなる。
【0093】
外径rが上記の関係式を満たす場合、芯金63aの厚みを厚くするか、芯金63aを中実としなければ、ひずみに対する十分な強度をテンションローラ63に持たせることができない。芯金63aの厚みを厚くした分、テンションローラ63の熱容量が大きくなるので、テンションローラ63の表面を断熱層63bで被覆することによるウォームアップ時間の短縮効果は大きくなる。
【0094】
(実施例)
テンションローラ63を変更したときのウォームアップ時間の短縮効果について、具体的な実施例により検討した結果を説明する。実施例として、実施例1、実施例2、比較例の3種類を用いる。まず、この3種類の実施例において共通する構成について説明する。定着ベルト60は、基材層60a、弾性層60b、及び離型層60cを含む3層構造を有し、外径50mmの円筒形状に形成された無端ベルトを使用し、とくに弾性層60bはJIS−A硬度5度のシリコーンゴムを使用する。
【0095】
定着ローラ61は、芯金61a及び弾性層61bを含む構成とし、外径30mmの円筒形状に形成されるローラ状部材を使用する。加圧ローラ62は、芯金62a、弾性層62b、及び表面層62cを含む構成とし、外径30mmのローラ状部材を使用する。ヒータユニット64は、面状発熱体64bとして、長さ366mm、幅15.8mm、厚さ0.6mmのガラス材料がコーティングされたステンレス基板を用い、抵抗発熱体642及び導通部644の厚みが夫々約10μmの層であり、抵抗発熱体642の長さが320mmとした。定着ベルト60、定着ローラ61、加圧ローラ62、及びヒータユニット64は、3種類の実施例で同じ構成のものを使用している。
【0096】
つぎに、3種類の実施例において異なる構成について説明する。テンションローラ63のローラ径は、実施例1が外径12.3mm(定着ベルト60のテンションにより、定着部6に装着された状態では外径12.0mm相当となる)、実施例2が外径14.0mm、比較例が外径12.0mmとした。なお、実施例1及び実施例2のテンションローラ63は、芯金63a及び断熱層63b(シリコーンスポンジ)を有する構成とし、比較例は芯金63a(機械構造用炭素鋼鋼管:例えばJIS−G−3445規定のSTKM)のみによる構成とした。
【0097】
ウォームアップ完了の判定は、定着ベルト60が175℃に到達した時点とした。3種類の実施例について試験した結果を図5及び図6に示す。図5は、ウォームアップ時の温度変遷を表すグラフであり、図6は、各実施例のウォームアップ時間を示す図表である。図5に示すように、テンションローラ63を芯金63a及び断熱層63bで構成した実施例1の方が、テンションローラ63を芯金63aのみで構成した比較例よりも早く昇温しており、断熱層63bによってテンションローラ63での熱伝導が抑えられることによって、定着ベルト60が短時間で昇温することが確認できる。また、図6に示すように、実施例1と実施例2とでは、テンションローラ63の外径が異なるものの、いずれも断熱層63bを有しているため、断熱層63bを有さない比較例に比べてウォームアップ時間を短くできることが確認できる。
【0098】
(トナーの説明)
【0099】
以下、本実施の形態に係る画像形成装置1で用いられる2成分現像剤16y,16m,16c,16bについて詳細に説明する。2成分現像剤16y,16m,16c,16bはトナー及びキャリアを含む。
【0100】
トナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有するトナー粒子で構成される。結着樹脂としてはこの分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0101】
これらの結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性及び耐久性などの点から、軟化点が100〜150℃であり、ガラス転移点が50〜80℃の結着樹脂が好ましく、上記範囲内に軟化点及びガラス転移点を有するポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは軟化又は溶融状態で高い透明度を示す。結着樹脂がポリエステルである場合、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が重ね合わされた多色トナー像を、後述する定着部6で記録媒体8に定着させると、ポリエステル自体は透明化するので、減法混色によって十分な発色が得られる。
【0102】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術に用いられるトナー用顔料、及び染料を使用できる。トナー顔料としては、例えば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料等の有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム及びベルリンブルーなどの無機系顔料、並びにアルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。トナー顔料は1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0103】
離型剤としては、例えば、ワックスを使用できる。ワックスとしては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0104】
トナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤の他に、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤及び導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種又は2種以上を含有してもよい。
【0105】
トナーは、粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法などの公知の方法で製造できる。粉砕法では、着色剤及び離型剤などを結着樹脂と溶融混練して粉砕することでトナーを得る。懸濁重合法では、結着樹脂、着色剤及び離型剤などのモノマーを均一に分散した後、これらのモノマーを重合させることでトナーを得る。乳化凝集法では、結着樹脂、着色剤及び離型剤などを凝集剤によって凝集させ、得られる凝集物の微粒子を加熱することでトナーを得る。
【0106】
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは2μm以上7μm以下である。また、トナーの体積平均粒径が上述のように適度に小さい場合には、記録媒体8に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化、及びトナー消費量の低減化を達成できる。
【0107】
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、撹拌及び帯電が不十分になるので、感光体ドラム11に供給されるトナー量の不足や逆極トナーの増加などが発生し、高画質画像が得られないおそれがある。トナーの体積平均粒径が7μmを超えると、定着時に中心部分まで軟化し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、記録媒体8へのトナー像の定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOHPシートへの定着の場合には、画像が暗くなる。
【0108】
本実施の形態に係る画像形成装置1で用いられるトナーは、ガラス転移点が60℃であり、軟化点が120℃であり、体積平均粒径が6μmの負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。このトナーを用いて、X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4の画像濃度を得るには、記録媒体8の表面において5g/m2のトナー量が必要である。
【0109】
また、トナーは、結着樹脂としてガラス転移点が60℃であり軟化点が120℃のポリエステルを含み、着色剤として各色の顔料をトナー全量の12重量%含み、離型剤としてガラス転移点が50℃であり軟化点が70℃の低分子ポリエチレンワックスをトナー全量の7重量%含む。このトナーに離型剤として用いられる低分子ポリエチレンワックスは、結着樹脂として用いられるポリエステルよりもガラス転移点及び軟化点が低いワックスである。
【0110】
キャリアとしては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子としては、例えば、鉄、フェライト及びマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウム又は鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
【0111】
また、磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、又は樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂及びフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としては特に制限されないが、例えばスチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂及びフェノール樹脂などが挙げられる。
【0112】
キャリアの体積平均粒径は、特に制限されないが、高画質化を考慮すると、好ましくは30μm以上50μm以下である。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは108 Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。
【0113】
キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cm2 の断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められたキャリアにおもりで1kg/cm2 の荷重を掛け、おもりと底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読み取ることで得られる値である。キャリアの抵抗率が低いと、現像スリーブ17yにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体ドラム11yにキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0114】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g以上60emu/g以下、さらに好ましくは15emu/g以上40emu/g以下である。磁化強さは現像スリーブ17yの磁束密度にもよるが、現像スリーブ17yの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、感光体ドラム11yと非接触状態を保つことが困難になる。また、接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0115】
キャリアの形状は、球形又は扁平形状が好ましい。また、2成分現像剤16y,16m,16c,16bにおけるトナーとキャリアとの混合割合は特に制限されず、トナー及びキャリアの種類に応じて適宜選択すればよい。
【0116】
なお、前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味及び前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0117】
60 定着ベルト
61 定着ローラ
62 加圧ローラ
63 テンションローラ
63b 断熱層(断熱部材)
64 ヒータユニット(ヒータ)
68b 加熱ヒータ(ヒータ)
8 記録媒体(シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラと、該定着ローラと平行に配されたテンションローラと、前記定着ローラ及び前記テンションローラに張架された無端状の定着ベルトと、該定着ベルトを加熱するヒータと、前記定着ベルトを介して前記定着ローラに圧接される加圧ローラとを備え、現像剤による画像を担持したシートを前記定着ベルト及び前記加圧ローラにより挟持しながら搬送して前記シート上に画像を定着させる定着装置において、
前記ヒータは、前記定着ベルトに圧接するように配してあり、
前記テンションローラは、前記定着ベルトに接する外周に断熱部材を配してあることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記テンションローラの外径が前記定着ローラの外径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記定着ベルトが周回する軌道の内側に配してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記テンションローラに配してある前記断熱部材は、多孔質素材により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧ローラを加熱するヒータを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項6】
取得した画像データに基づいて現像剤による画像をシート上に転写する転写手段と、請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の定着装置とを備え、該定着装置で画像を定着させて画像形成を行うようにしてあることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83730(P2013−83730A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222296(P2011−222296)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】