説明

定着装置

【課題】 加熱により、加圧ローラ系が膨張しても、画像伸びが発生しにくい定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 加圧ローラに当接しヒータに対向する位置に駆動ローラを設ける。駆動手段によって駆動ローラを駆動し、加圧ローラは駆動ローラに従動することによって回転させられる。駆動ローラに熱膨張率の低い部材を用いることで、画像伸びを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザビームプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置の定着器の駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は用紙のトナー像を定着させるために、適当な熱と圧力を必要としている。そのため、用紙を挟持搬送して熱と圧力を与える定着器を必要としている。図5に定着器の構成を図示する。定着器は、ヒータ502、ヒータステイ503、フィルム501、からなるヒータユニットと、加圧ローラ504主に二つのユニットで構成される。加圧ローラ504は軸505を中心に回転するように構成され、矢印A方向に回転する。フィルム501は加圧ローラ504に従動して矢印B方向に回転する。用紙506はヒータユニットと、加圧ローラ504に挟持されて搬送路507上を矢印C方向に搬送され、定着器を抜けた段階で、トナーが用紙上に固定される。しかしながら、加圧ローラ504の外周部分には通常ゴムが使用されるため、ヒータ502によって加熱されると、加圧ローラ系が膨張し、それによって、加圧ローラ504の周速が変化し、加圧ローラ504の温度が上昇するに従い、用紙の搬送スピードも加速してしまうという、いわゆる画像伸び問題を引き起こしている。かかる対策のために特許文献2おいては、加圧ローラの速度を周速度が一定になるように制御するという対策がなされており、特許文献2においては、プロセススピードすなわち用紙搬送の速度を変更することによって、1枚中の画像伸び量を一定にしようとする対策がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-207154号公報
【特許文献2】特開平10-020710号公報
【特許文献3】特開2001-22873号公報
【特許文献4】特開2002-70838号公報
【特許文献5】特開2000-19422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加圧ローラの周速度を一定に保つためには、特許文献1に示すように、加圧ローラの周速を測定するもしくは特許文献3に示すように加圧ローラの径を測定する必要が有り、測定する部材が別途必要になり、コスト増を招いていた。また、周速や径を直接測定することは困難なため、特許文献2のように加圧ローラの温度を測定し、その温度における伸び量を推測して速度が一定になるような制御を行うこともある。このような場合、温度を測定する部材や制御手段が別途必要となりコスト増を招くことはもとより、温度と周速の関係はゴムの処方や加圧ローラ径の設計値などによっても変わるので、処方変更や径変更などの場合には制御も同時に変更しなくてはならず、非常に開発負荷が大きかった。また、特許文献4のように熱膨張の少ない加圧ローラを用いるなどの対策も考えられているが、加圧ローラの構成もしくは処方において制限を生じることになるので設計自由度が減少していた。本発明はかかる点を鑑み、コスト増を最小限に抑え、かつ、加圧ローラの処方、径の変更が、画像伸び与える影響を極力押さえた定着装置を提供することを目的とする。
【0005】
さらに、特許文献5に説明されるように用紙の端部(非通紙部)昇温対策のため、加圧ローラに熱容量の小さい部材を当接させて、加圧ローラの熱分布を一様にするという発明がなされているが、この効果も同時に備えた定着器を提供することを目的とする。
【0006】
さらには、トナーの一部が駆動伝達手段に蓄積されていずれ、用紙を汚してしまうというような弊害が予想されるため、それらを防止する機能を持った定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.請求項1乃至2に記載される発明においては、加圧ローラより熱膨張率の小さい部材で構成された駆動伝達手段を用いることを特徴とする。
【0008】
2.請求項3に記載される発明においては、加圧ローラより熱伝導率の大きい部材で構成された駆動伝達手段を用いることを特徴とする。
【0009】
3.請求項4乃至5に記載される発明においては、導電性の部材で構成された駆動伝達手段と、高圧発生手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
1.従来例によって駆動する場合、加圧手段の回転数は一定に制御されるため、加圧手段の回転数をA[rot/sec]、径をB[mm]とすると、周速はA*Bπ[mm/sec]で表せる。このとき、加圧ローラの径がΔb[mm]だけ、膨張したとすると、周速度はA*(B+Δb)π[mm]となる、したがって、周速度の変化分はA*(B+Δb)π-A*Bπ=AΔbπとなっている。次に本発明を用いた場合、加圧手段は駆動伝達手段との当接部の摩擦力によって駆動させられるため、加圧手段の周速度は駆動伝達手段の周速度と同じと考えられる。したがって、駆動伝達手段の回転数をC、径をD、かつ熱膨張率が加圧手段の部材のk倍である部材を使用したとすると、加圧手段の径変化がΔbであった場合の駆動伝達手段の径変化はkΔbで表せ、周速度の変化分はC*kΔb[mm/sec]となる。したがって、加圧手段と駆動伝達手段に与える回転数が同じであればA=Cであるから、周速度の比はkとなる。したがって、熱膨張率の比kをk<1となる部材を選択すれば、加圧手段の周速度変化を減少させることができる。
【0011】
2.また、駆動伝達手段として、熱伝導率が高い部材を用いることで、前出の特許文献5で説明する効果を得ることができる。
【0012】
3.また、駆動伝達手段として、導電性の部材を用い、そこに高圧発生手段で生成するトナーと同極の高電圧を印加することにより、トナーが駆動伝達手段に付着することを防止できる。
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、装置の温度上昇に伴う画像の伸び、および、幅の狭い用紙を通紙させた場合の温度分布の偏り、および、駆動伝達手段にトナーが付着することを防止した定着装置が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】定着器ユニットの説明図。
【図2】駆動回路の説明図。
【図3】加熱時の径膨張を説明する図。
【図4】高圧回路の説明図。
【図5】従来例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
本発明に基づいた定着装置の例を図面を用いて説明する。図1は本発明に基づいた定着装置の構成を示したものである。ヒータ112はステー110上に支持されるとともに、不図示の手段によって図2に示す電気回路に接続される。ヒータ112は電気回路から電力を与えられ、定着に必要な温度になるよう制御される。図2は制御回路の例で、CPU202、サーミスタ204、ヒータ112、フォトトライアックカプラ203、トライアック201および周辺素子からなり、CPU202はサーミスタ204にかかる電圧をモニタし、フォトトライアックカプラ203およびトライアック201で電力の活断を行うことにより、サーミスタ204にかかる電圧が所定の値になるように制御を行う。ステー110は加圧ばね104によって上方より加圧されフィルム101を介して加圧ローラ102に圧接される。加圧ローラ102は加圧ローラ軸105を中心に回転するように構成され加圧ローラ軸受け107に接続される。加圧ローラ102に対してヒータ112と対抗する位置に駆動ローラ103が当接して配置される。駆動ローラ103は、駆動ローラ軸106を中心に回転するように鉄で構成され、駆動ローラ軸106は駆動ローラ軸受け108に接続される。加圧ローラ軸受け107と駆動ローラ軸受け108は軸受けガイド109上を上下に移動可能に構成される。また、駆動ローラ軸106にはギア111が取り付けられ、ギア111が駆動手段113に連結されることによって、回転力を得る。駆動ローラ103が図中矢印Aの方向へ回転しているとすると、加圧ローラ102は駆動ローラ103との間の摩擦力によって駆動され矢印B方向に回転する。同様にフィルム101もC方向に回転する。通紙される用紙は、加圧ローラ102、フィルム101の間を挟持搬送されることによって、熱と圧力を与えられ、用紙上のトナーを定着させることができる。また、加圧ローラ102は金属の芯金に円筒状のゴムを形成した構成になっている。芯金径とゴム層の厚みは各装置において設計されるが、今回はその全体の径をd2とする。駆動ローラ103は金属によって形成され、その径をd1とする。図3を用いて加熱時の各ローラの膨張について説明する。駆動ローラ103は駆動手段113により一定の角速度ω1で回転させられているとすると、駆動ローラ103の周速度はω1d1で表せる。加圧ローラ102は駆動ローラ103の外周に従動するので、加圧ローラ102の周速度もω1d1となる。したがって、用紙の搬送速度もω1d1である。加圧ローラ102の角速度ω2はω1d1÷d2となっている。次に、ヒータ112を加熱することにより、加圧ローラ102は加熱され、さらに加圧ローラ102によって駆動ローラ103が加熱される。加熱されることによって、それぞれの径が膨張する。駆動ローラ103の径の膨張率をα1、加圧ローラ102の径の膨張をα2とすると、温度がt℃上がった場合の搬送速度は、ω1が一定であるのでω1d1α1tとなる。いま、加圧ローラ102を直接角速度ω2で駆動することを考えると、温度がt℃上がった場合の搬送速度は、ω2d2α2tである。加圧ローラ102を駆動ローラ103で駆動した場合と、直接駆動した場合の搬送速度の比は、ω1d1α1÷ω2d2α2となる。欲しい搬送速度は駆動ローラ103を用いた場合と用いない場合で同じであるので、ω1d1=ω2d2となるようにω1とd1を設定する。したがって、前述の比はα1÷α2で表せる。
【0016】
加圧ローラ102は、主にゴムで構成され、ゴムの線膨張率は約80×10-6である。駆動ローラ103は線膨張率約12×10-6の鉄で構成されているため、搬送速度のずれは駆動ローラを用いない場合に比して12/80=20分の3になる。また、熱伝導率もゴムに比して大きいため、軸方向に対する温度ムラを減少させる効果がある。
【0017】
なお、一般の金属や合金のほとんどはゴムに比して線膨張率が小さいため、駆動ローラ103の主要な材質として鉄以外のものを用いることも考えられる。
【0018】
(実施例2)
実施例2はさらに駆動ローラ103に高圧を印加することを特徴とする。図4に高圧回路の例を示す。CPU202は高圧直流電源401と高圧交流電源402に接続され、高圧直流電源401と高圧交流電源の出力は重畳され、高圧抵抗403を介して駆動ローラ103に接続される。直流成分は-1KV程度、交流成分はVppで1KV程度が印加される。駆動ローラ103に当接する加圧ローラ102はその軸105が接地されている。加圧ローラ102の外周部分は導電ゴムで構成され、表層部分が絶縁体で構成される。加圧ローラ102は内部には抵抗404が存在するがほぼ接地の電位となる。トナーは主に-に帯電しているため電位が高い加圧ローラ102側に引き寄せられる力が大きい。したがって、駆動ローラ103にはトナーが蓄積しづらい。また、本実施例では加圧ローラ102を接地したが、加圧ローラ102にも駆動ローラ103よりは電位の高い電圧をかけ、定着フィルム101を接地することにより、トナーをフィルム101まで戻すことも考えられる。
【符号の説明】
【0019】
101 定着フィルム
102 加圧ローラ
103 駆動ローラ
104 加圧ばね
105 加圧ローラ軸
106 駆動ローラ軸
107 加圧ローラ軸受け
108 駆動ローラ軸受け
109 軸受けガイド
110 ヒータステー
111 ギア
112ヒータ
113 駆動手段
201 トライアック
202 CPU
203 フォトトライアックカプラ
204 サーミスタ
401 高圧直流電源
402 高圧交流電源
403 抵抗
404 加圧ローラの内部抵抗
501 定着フィルム
502 ヒータ
503 ヒータステー
504 加圧ローラ
505 加圧ローラ軸
506 用紙
507 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に形成される未定着の現像材像を前記記録媒体上に固定化するための加熱装置であって、
少なくとも前記現像材を加熱するための熱を発生させる加熱手段と、
少なくとも前記現像材に圧力を加えるために前記加熱手段に当接して配置され、回転可能に構成される加圧手段と、
前記加圧手段に当接し、前記加圧手段の回転軸に対し前記加熱手段と対称の位置に配接される駆動伝達手段と、
駆動手段とを備え、
前記駆動手段からの駆動力は前記駆動伝達手段に伝達され、前記駆動伝達手段は前記加圧手段へ前記駆動伝達手段と前記加圧手段との接触面の摩擦力によって前記駆動力を伝達し、
前記記録媒体が前記加熱手段と前記加圧手段に挟持されて搬送することによって、前記現像材像を固定化することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記駆動伝達手段は、前記加圧手段の主要部材の膨張率よりも低い膨張率の主要部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記駆動伝達手段は、前記加圧手段の主要部材の熱伝導率よりも高い熱伝導率の主要部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記駆動伝達手段は、導電部材で構成されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の定着装置。
【請求項5】
高電圧発生手段を備え、前記駆動伝達手段に高電圧を印加することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81239(P2011−81239A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234155(P2009−234155)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】