説明

定量方法

【課題】ポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体の定量的な分解量の定量方法を提供することを課題とする。
【解決手段】第一工程としてポリマーを第1溶媒に溶解させる工程、第二工程として第2溶媒を追加し、振とう、静置をし、分解生成物を抽出する工程、第三工程として、第2溶媒を取り出し、分解生成物を定量する工程を少なくとも経ることを特徴とする定量方法。また定量方法としてクロマトグラフィー法を用いることを特徴とする定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分解量、例えばポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体の分解量を定量する定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油などの限りある化石資源を原料として合成高分子化学がもたらした汎用プラスチック製品は、その物質の難分解性が廃棄物処理を困難なものとしており、様々な環境問題を引き起こすと考えられている。例えば、廃棄物自体の量が多くてかさばる、 埋め立てても腐食しないため埋立地の地盤が安定しない、焼却処理を行なう際に高温のため焼却炉を傷める、 焼却処理を行なう際に有毒ガスを発生する、海洋に流出した廃棄物により海洋汚染を引き起こす、自然景観を損なうといった問題が挙げられる。これらの問題の解決策として、近年では生分解性プラスチックの開発が進んでいる。生分解性プラスチックは使用後には土壌中の微生物の作用を受け分解し、最終的には二酸化炭素と水に分解されるプラスチックであり、環境低負荷型プラスチックである。その使用分野は農業資材、林業資材、土木資材、水産業資材、文具、日常品、衣服類、食品容器というように多岐に渡る。
【0003】
生分解性プラスチックは天然高分子または合成高分子に分類することができ、合成高分子にはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートといったものが挙げられる。その中で、ポリ乳酸はトウモロコシやじゃがいものデンプンなど植物由来の再生可能資源から生産される高分子であり、環境中の微生物の働きにより二酸化炭素と水に分解され、さらに発生した二酸化炭素は原料の植物に消費されるという点で、最も環境低負荷型プラスチックとして非常に有望視されている。その物性はポリスチレンに類似しており硬質系ポリマーであることから、近年では食品用トレーやフィルム、文房具等に利用されている。物性において足りない点は共重合体にすることや添加剤を加えることで補い、自動車内装材、電子機器筐体にも応用されている。また、ポリ乳酸は分解するとモノマーである乳酸を生成することから、体内で分解しても乳酸が代謝サイクルに組み込まれて吸収され、最終的には二酸化炭素と水に分解され体外に排出されるので、医療用材料としても用いることが可能であり、手術の縫合糸や骨接合材や、ドラッグデリバリーシステムとしても用いられている。
【0004】
上記のように多岐に渡って使用されているポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体は、使用後は分解される必要があるが、使用中は分解せずに安定した材料であることが望まれる。しかし、ポリ乳酸やその共重合体は乳酸中のカルボキシル基と水酸基がエステル結合することで高分子量体となっているため、環境中の水分によって加水分解反応がおき、分子量が低下することが懸念される。ポリマーが低分子量化すると、溶出するモノマーやオリゴマーの影響で材料物性が変化し、耐久性が悪く劣化していくと考えられる。また高温下での熱分解や紫外線による光分解による低分子量化による劣化を起こすこともありうる。
【0005】
従って、ポリ乳酸やその共重合体の環境条件による分解性を把握することは、材料の選定段階で耐久性の良し悪しを判断するために必要な情報であり、また、品質管理を行っていく上でも必要不可欠とされる。
【0006】
ポリ乳酸の加水分解性を把握する研究は数多く行われており、ポリマーの分解性を把握するには、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による分子量分布の測定が一般的に用いられている。分解していれば、分子量分布が低分子量側にシフトしていたり、ピークトップの位置は変わらなくても、分散が大きく低分子量側にまで広がっていたりすることで分解していると確認できる。しかし、この方法では分子量の変化のみを把握するだけで、定量的な分解量を把握することは不可能である。
【0007】
非特許文献1および非特許文献2では、リン酸緩衝液中にポリマーを浸し、経時でその重量変化や分子量変化を確認して分解挙動を追う研究について述べられている。この方法であれば緩衝液中にモノマーやオリゴマーが溶け出すことでポリマーの重量が変化するので定量的ではあるが、この方法は、実際にポリマーが製品となって使用される環境に即しておらず、製品になって使用されるときの耐久性を定量的に把握することにはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「植物由来ポリ乳酸の分解機構および速度」、色材協会誌、81(2)54−60(2008)
【非特許文献2】「ポリ乳酸グリーンプラスチックの開発と応用」、フロンティア出版、174−185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明においては、ポリ乳酸およびその共重合体の分解生成物の量を定量的に把握する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、ポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、
第一工程としてポリマーを第1溶媒に溶解させる工程、
第二工程として第2溶媒を追加し、振とう、静置させ、分解生成物を抽出する工程、
第三工程として、第2溶媒を取り出し、第2溶媒中の分解生成物を定量する工程
から成ることを特徴とする定量方法とした。
また、請求項2に係る発明としては、請求項1に記載のポリマーの分解を定量的に把握する方法であって、前記第1溶媒には非極性溶媒であり、且つ前記ポリマーを全て溶解する溶媒を使用することを特徴とする定量方法とした。
また、請求項3に係る発明としては、請求項1乃至2のいずれかに記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、第2溶媒としては極性溶媒であり、且つ前記ポリマーの分解生成物を溶解する溶媒を使用することを特徴とする定量方法とした。
また、請求項4に係る発明としては、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、前記ポリマーがポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体であることを特徴とする定量方法とした。
また、請求項5に係る発明としては、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、前記第2溶媒中の分解生成物をクロマトグラフィー法によって定量することを特徴とする定量方法とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、以下のような効果が期待される。第1の発明によると、本発明の方法を用いることでポリマーの分解量が定量的に把握することが可能であり、保管環境条件ごとに分解量を把握することで、ポリマーの材料としての劣化具合、保存環境における耐久性を定量的に確認することができ、適切な材料選定や品質管理を行うことが可能となる。
第2の発明によると、第1溶媒にポリマーを全て溶解する非極性溶媒を使用することによって、固体状のポリマーを溶液状にすることができるため、ポリマーの分解量をより正確に、定量的に把握することが可能となる。
第3の発明によると、第2溶媒にポリマーの分解生成物を溶解する極性溶媒を使用することによって、第1溶媒中からポリマーの分解生成物を移行させることができるため、ポリマーの分解量をより正確に、定量的に把握することが可能となる。
第4の発明によると、本発明を用いることによって、ポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体の分解量が定量的に把握することが可能となる。
第5の発明によると、第2溶媒中の分解生成物をクロマトグラフィー法によって定量することによって、ポリマーの分解量を更に正確に、定量的に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1〜4におけるポリ乳酸中に占める乳酸の割合[wt%]を経時で比較したグラフ。
【図2】実施例1〜4におけるポリ乳酸中に占める2量体の割合[wt%]を経時で比較したグラフ。
【図3】実施例1〜4におけるポリ乳酸中に占める3量体の割合[wt%]を経時で比較したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明においては、第1溶媒にポリマーを溶解させた溶液に、第2溶媒を加えて液液抽出を行うことで、ポリマーが分解した時に生成するモノマーやオリゴマーなどの第2溶媒に溶け易い分解生成物を第2溶媒に移行させ、第2溶媒中に移行した成分を定量することで、分解量を定量的に把握することが可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明において、ポリマーとしてはポリ乳酸とポリ乳酸共重合体が適応される。ポリ乳酸はL−乳酸のみが繰り返し構造となって構成されるポリマーであり、ポリ乳酸共重合体はL−乳酸とD−乳酸から構成されるランダム共重合体およびブロック共重合体、さらにはL−乳酸またはD−乳酸と異なる物質で構成される共重合体が含まれる。例えば、L−乳酸とグリコール酸、ε-カプロラクトン、ブチロラクトンから構成される共重合体が挙げられる。また本発明におけるポリマーは、どのような分子量のものでも適応可能である。本発明に用いるポリマー中に難燃剤、可塑剤、離型剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤といった添加剤が一種類以上含まれていても構わない。
【0015】
本発明において、ポリマーの形状は粉末状、顆粒状、ペレット状、繊維状、フィルム状、どのような形態でも適用可能である。射出成型により成型された状態のものでもよいし、これを断裁して使用してもよい。
【0016】
本発明の第一工程として、ポリマーを第1溶媒に全て溶解させる工程となる。ポリマーを溶解させるためには第1溶媒には有機溶媒を用いるが、用いる有機溶媒としては、非極性溶媒であり、かつポリマーを全て溶解可能なものが好ましい。ポリ乳酸の場合であれば、クロロホルム、塩化メチレンなどの溶媒を用いることができる。その中でもクロロホルムが最も溶解力が強いので10万以上の分子量のポリマーにも用いることができる。
【0017】
第1溶媒にポリマーを溶解させる工程において、その濃度は特に既定範囲があるものではないが、その濃度を既知にする必要はあるので、ポリマーの重量を電子天秤等で正確に測り、メスフラスコ等精度の高いガラス器具を用いて溶液を作成することが好ましい。
【0018】
本発明の第二工程としては、ポリマーを溶解させた第1溶媒に第2溶媒を加える工程となる。第2溶媒として用いる溶媒としては、極性溶媒であり、第1溶媒と混ざり合わない溶媒で、分解生成物であるモノマー、オリゴマー成分が溶解可能でポリマーは溶解しないような溶媒であることが好ましい。極性溶媒としては水やメタノール、エタノールが挙げられるが、第1溶媒と混ざり合わないという点からほとんどの場合、水が使用される。水のグレードとしては蒸留水、超純水を用いることが好ましい。
【0019】
本発明において、第1溶媒から分解生成物であるモノマーおよびオリゴマー成分を第2溶媒へと抽出する液液抽出法においては、第1溶媒から第2溶媒へ分解生成物が移行するような方法であればどのような方法で行っても構わない。液液抽出法において抽出容器は、分液ロートを用いることが一般的であるが、激しく振とう可能で、2層に分離することを確認できるような抽出容器であればどのようなものを用いても構わない。第1溶媒と第2溶媒を加える量については、抽出効率を最適なものにすることが望ましく、第1溶媒に対して第2溶媒がより多い方が一度に抽出される量は多くなるが、作業性の点から第1溶媒に対して5倍〜10倍の量の第2溶媒を加えることが好ましい。また回収率を上げるためには繰り返し抽出を行うことが好ましく、1回目に液液抽出を行った後、第2溶媒を取り除いて、再度新たに第2溶媒を加えて抽出を行うといった作業を繰り返し行うことが好ましい。この時、抽出の度に取り出した第2溶媒は各々分析する必要はなく、一つにまとめてよい。
【0020】
本発明において、第1溶媒と第2溶媒の液液抽出を行う際には、両者溶媒を加えた後、100回以上振とうする必要がある。攪拌器などを用いてもよい。
【0021】
本発明において、第1溶媒と第2溶媒の液液抽出を行う際には、振とう後、静置して2つの溶媒を2層に分離させる必要があるが、そのまま静置してもよいし、泡が生じて界面が明確にならない場合は遠心分離器を用いて消泡することも好ましく行われる。
【0022】
第2溶媒に抽出された成分はクロマトグラフィー法にて分析する。クロマトグラフィー法としては、高速液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー法が挙げられる。分析が簡便で分離が良好である点から、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析することが好ましい。
【0023】
クロマトグラフィー法の検出器としては、紫外線吸収検出器、ダイオードアレイ検出器、示差屈折率検出器、質量分析検出器、蛍光検出器、蒸発型光散乱検出器などが挙げられ、特に限定されるものではない。ポリ乳酸の場合は高速液体クロマトグラフィーと紫外線吸収検出器、ダイオードアレイ検出器、示差屈折率検出器、質量分析検出器のいずれかの組み合わせを用いることが可能である。特に質量分析検出器を用いることで、極微量の分解生成物も定量することができ、極わずかな分解挙動も把握することが可能である。
【0024】
再現性をよくするためには、液液抽出を行った後に即座にクロマトグラフィーによる分析を行うことが好ましい。これは、第2溶媒に抽出されたオリゴマーが第2溶媒中でさらに加水分解されてモノマーになってしまうことを極力防ぐためである。
【0025】
モノマーやオリゴマー成分の定量については、予め標準液を用いた検量線法による定量が行われる。モノマーについては市販の試薬を用いることでこれが可能となる。2量体や3量体のオリゴマーについては、これらを得られれば、合成またはポリマーを酸やアルカリを用いて強制的に分解させ、カラムクロマトグラフィーで分離し、分取して得る方法など手段は問わない。ポリ乳酸の場合においては、市販の乳酸試薬の純度が比較的低く、不純物として2量体、3量体が含まれており、試薬中のこれらの比率を予め高速液体クロマトグラフィー法を用いて算出しておくことで試薬中の各成分濃度を求め、それぞれの物質で検量線を作成して定量することも可能である。
【0026】
本発明の場合のモノマーとは、繰り返し構造であるポリマー鎖の1ユニット構造に相当する。オリゴマーとは、モノマーが数個重合している程度のもののことである。例えば、ポリ乳酸の場合のモノマーとはL−乳酸を指し、オリゴマーはL−乳酸が2つエステル結合を介してつながった2量体、3つつながった3量体、というようなもので乳酸が2〜6個程度縮合したものである。ポリ乳酸共重合体の場合においては、モノマーとしては乳酸および共重合しているもう一方の化合物の1ユニットを示すが、水溶性のものでないと第2溶媒に抽出されない可能性があり、その場合は乳酸および乳酸のみが縮合したオリゴマーのみを定量することで分解性を把握する。
【0027】
モノマーおよびオリゴマーの抽出液濃度と溶解させたポリマーの重量より、ポリマーに占めるモノマーおよびオリゴマーの割合に換算して分解の度合いを表現することが可能である。
【0028】
ポリマーを温度、湿度を何水準かで一定時間保管し、そのポリマーについて本発明の方法で分解生成物を定量することにより環境条件における分解性を把握することが可能である。本発明の方法に加えて、強度や引っ張り強さなどの物性値を測定することは分解挙動の確認につながり好ましい。
【0029】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【実施例1】
【0030】
温度25℃、湿度55%に30日、60日、150日保管した後のL−ポリ乳酸(保管前の分子量:Mw=3万、Mw/Mn=1.6)、ペレット状のものを、正確に重量を秤量し、10mlメスフラスコに入れ、特級グレードのクロロホルムを標線まで入れる。ポリマーが完全に溶解した後、50ml用の蓋付き遠心分離器用容器(PFA製)に5ml正確に入れる。そこに蒸留水を30ml加えて300回激しく振とうする。同じものを偶数個用意し、遠心分離器にかける。遠心分離器は回転数10000rpm、20分間行う。遠心分離終了後、遠沈管内の水層側(上側の層)より、1ml正確に抜き取り、別の容器に保管する。その後水層を全て取り除き、遠沈管内に残ったクロロホルム溶液に新たに蒸留水を30ml加えて同様に遠心分離器にかけ、終了後水層から1ml正確に抜き取り、先に取り分けた容器に加えて入れて保管する。この操作を5回繰り返す。1mlずつ抜き取った水の抽出液を、高速液体クロマトグラフィー(Agilent製)にて分離する。検出器には紫外線吸収検出器を使用した。測定条件は以下の通りとなる。
カラム:SHISEDO CAPCELLPACK MG
移動相:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=20/80
流量:1.0ml/min
注入量:10μL
検出器波長:230nm
標準液としては乳酸試薬を(東京化成工業製、純度85%)調整する。乳酸試薬には一定割合で2量体、3量体も含まれているので、その比率より各物質の検量線を作成しておく。抽出液の測定結果のピーク面積より各物質の定量を行う。さらに抽出液濃度より以下の式を用いてポリマー中に占める割合に換算する。

ポリマー中の乳酸(または2量体、3量体)の割合(wt%)= 抽出液濃度×30ml÷秤量したPLA量×100

【実施例2】
【0031】
温度40℃、湿度95%に30日、60日、150日保管したL−ポリ乳酸(保管前の分子量:Mw=3万、Mw/Mn=1.6)について実施例1と同様の方法でそれぞれ抽出を行い、乳酸、2量体、3量体の定量を行った。
【実施例3】
【0032】
温度25℃、シリカゲル入りデシケーターで減圧した状態で30日、60日、150日保管したL−ポリ乳酸(保管前の分子量:Mw=3万、Mw/Mn=1.6)について実施例1と同様の方法でそれぞれ抽出を行い、乳酸、2量体、3量体の定量を行った。
【実施例4】
【0033】
温度25℃、湿度55%に30日、60日、150日保管した後のL−ポリ乳酸(保管前の分子量:Mw=1万、Mw/Mn=1.6)について実施例1と同様の方法でそれぞれ抽出を行い、乳酸、2量体、3量体の定量を行った。
【0034】
図1〜図3に実施例1〜4における乳酸、2量体、3量体の定量値を比較した図を示す。乳酸、2量体、3量体いずれにおいても実施例2の40℃、95%環境下では経時で増加量が多く、加水分解反応が進行しやすいことがわかった。150日後はポリマーの形態もぼろぼろになっていたが、これは元のポリ乳酸に対して、数十%がモノマーやオリゴマーになっているため、相当量劣化しているためであることが定量的に示された。次に実施例4が増加傾向にあった。実施例4は実施例1〜3に比べてポリマーの分子量が低いものであり、ポリマーの分子量が低いと加水分解が起き易く、モノマーやオリゴマーが生成するが、実施例2に比べると半分程度の分解量であることが定量的に示され、環境中の水分がポリマーの耐性に大きく影響を及ぼすことが示された。一方実施例3では環境下にほとんど水分が存在しない状態であり、従って分解は進行していない。実施例1では150日間ではほとんど分解はしていないが、150日で実施例3と比べると若干量オリゴマーが生成していることから、まだポリマーとして劣化はしていないが、さらに日数を延ばして確認してみる必要があると考えられる。このように、本発明の定量方法によって、ポリ乳酸は高湿環境下では加水分解が進行しやすく、短期間で劣化する傾向にあることが定量的に示された。またポリ乳酸の分子量によっては一般環境下でも劣化する傾向にあることが定量的に示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、
第一工程としてポリマーを第1溶媒に溶解させる工程、
第二工程として第2溶媒を追加し、振とう、静置させ、分解生成物を抽出する工程、
第三工程として、第2溶媒を取り出し、第2溶媒中の分解生成物を定量する工程
を少なくとも経ることを特徴とする定量方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、前記第1溶媒には非極性溶媒であり、且つ前記ポリマーを全て溶解する溶媒を使用することを特徴とする定量方法。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、第2溶媒としては極性溶媒であり、且つ前記ポリマーの分解生成物を溶解する溶媒を使用することを特徴とする定量方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、前記ポリマーがポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体であることを特徴とする定量方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のポリマーの分解を定量的に把握する定量方法であって、前記第2溶媒中の分解生成物をクロマトグラフィー法によって定量することを特徴とする定量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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