説明

定量注出可能な注出器

【課題】定量注出の可能な新規な注出器を提供する。
【解決手段】シリンジ110は、その内側に突出部151を有する回転可能なリング部材150を備え、各プランジャ131は、プランジャ軸線に沿って間隔ΔCを空けて、複合プランジャ130の押し込みに伴い当該突出部151と接触してそのストローク量を制限する複数の制限部133を有し、制限部133はそれぞれ、複合プランジャ130の押し込みを許容すべく、リング部材150を回転操作したときに、予め突出部151よりもプランジャ後端側にある制限部が突出部151と整列して、その後のプランジャ130の押し込みに伴うストローク量を制限し、引き続いて、プランジャ130の更なる押し込みを許容すべく、リング部材150を回転操作して、突出部151をずらしたときも、予め突出部151よりもプランジャ後端側にて当該突出部151と整列して、その後のプランジャ130の押し込みに伴うストローク量を制限するように順次繰り返しに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を充填する充填空間が形成されたシリンジと、充填空間に摺動可能に配置されるピストンと、ピストンを先端で支持するプランジャとを備える注出器であって、内容物の定量注出を可能にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は既に、こうした注出器として、異なる内容物を別個に収納し、これらを同時に注出するにあたり、ラチェット機構を用いて定量注出を可能した二連式の注出器を提案済みである(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2003−341749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした注出器の内容物には、医薬品、化粧料、接着剤等、様々なものが挙げられ、その利用分野も多岐にわたる。
【0004】
このため、注出器からの定量注出を行うための操作方法も、用途や使用者の好み等に応じて使い分けできることが好ましい。
【0005】
本発明は、こうした事実認識に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、用途や使用者の好み等に応じて適宜使い分けができるように、定量注出の可能な新規な注出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の定量注出可能な多連式注出器は、内容物を充填する充填空間が形成されたシリンジと、充填空間に摺動可能に配置されるピストンと、ピストンを先端で支持するプランジャとを備える注出器であって、シリンジは、プランジャが通る開口部を有し当該プランジャの周りを回転可能なリング部材を備え、このリング部材は、その内側に突出部を有し、プランジャは、その軸線に沿って間隔を空けて、先端側への押し込みに伴いリング部材の突出部と接触してそのストローク量を制限する複数のストローク量制限部を有し、これらのストローク量制限部はそれぞれ、プランジャの押し込みを許容すべく、リング部材を回転操作したときに、予めリング部材の突出部よりもプランジャ後端側にて当該突出部と整列して、その後のプランジャの押し込みに伴うストローク量を制限し、引き続いて、プランジャの更なる押し込みを許容すべく、リング部材を回転操作して、リング部材の突出部をずらしたときも、予めリング部材の突出部よりもプランジャ後端側にて当該突出部と整列して、その後のプランジャの押し込みに伴うストローク量を制限するように、順次繰り返しに配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
ストローク量制限部の配置としての具体例としては、例えば、当該ストローク量制限部を、リング部材の中心を挟んで対向する位置にそれぞれ、互い違いになるように配置する。
【0008】
詳細には、本発明に従う注出器がプランジャを1つ以上備える場合、プランジャの軸線を挟んで対向する位置にそれぞれ、互い違いになるようにする。
【0009】
更に、本発明に従う注出器が、シリンジの充填空間を並列的に複数形成し、各充填空間に配置されるピストンをそれぞれ、複数のプランジャの後端を一体に連結した複合プランジャにより同期操作を可能とする多連式注出器であれば、かかる配置は、
複合プランジャが、ストローク量制限部を有した2つの同一のプランジャを、当該プランジャのストローク量制限部の向き及び高さがそれぞれ一致するように並置してなるものとすることで実現される。
【0010】
また、かかる配置は、
各プランジャがそれぞれストローク量制限部を有し、
当該ストローク量制限部を、隣り合うプランジャに対して互い違いになるように配置することでも実現される。
【0011】
加えて、本発明によれば、プランジャは、リング部材の回転操作をその突出部との接触によって規制して当該突出部とストローク量制限部とを整列させる回転規制部を有することが好ましい。
【0012】
本発明に従う回転規制部は、プランジャが、その軸線から放射状に突出すると共に当該軸線に沿って延在する複数のフィンを有する場合、当該フィンを回転規制部とすることができる。
【0013】
本発明に従う回転規制部をフィンとする場合、リング部材の回転によって、その突出部の側縁を、当該フィンの側面に接触させる構成とすることができる。
【0014】
しかしながら、突出部がフィンの側面と接触する場合、プランジャに、当該フィンと異なるフィンが存在すると、この異なるフィンがリング部材の突出部と干渉することがある。このため、こうした場合、リング部材の回転にあたって異なるフィンと接触するのを回避するため、当該突出部に円弧状に形作られた内縁部を設けることが好ましい。
【0015】
また、本発明に従う回転規制部をフィンとし、リング部材の突出部を接触させるにあたっては、この突出部をフィンの側面に接触させる以外に、当該突出部に片持ち支持片を設け、この片持ち支持片を回転規制部と着脱可能に係合させてもよい。
【0016】
また、本発明によれば、少なくとも、回転規制部にスリットを形成し、このスリット間に、リング部材の突出部を通過させてもよい。
【0017】
更に、本発明に従う回転規制部は、フィン以外にも、リング部材に弾性舌片を形成し、この弾性舌片に設けた突部又は凹部を回転規制部として、シリンジに設けた凹部又は突部と着脱可能に係合させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリンジに設けたリング部材を回転操作して、このリング部材の内側に設けた突出部を、任意のストローク量制限部からずらしてプランジャの押し込みを許容させれば、この任意のストローク量制限部よりもプランジャ後端側にあるストローク量制限部が予めリング部材の突出部と整列するため、その後、プランジャを先端(シリンジ)側に押し込むにあたってのストローク量は、このプランジャ後端側にあるストローク量制限部により制限される。即ち、本発明によれば、プランジャをシリンジに押し込むだけでストローク量制限部の配置間隔に応じた定量注出が可能となる。
【0019】
加えて、その後、本発明は、プランジャの更なる押し込みを許容するべく、リング部材を回転操作して、その突出部を、プランジャ後端側にあるストローク量制限部からずらせば、このプランジャ後端側にあるストローク量制限部よりも更にプランジャ後端側にあるストローク量制限部にリング部材の突出部が予め整列するため、1回の定量注出が完了した後、再び複合プランジャを押し込んでも、ストローク量制限部の配置間隔に応じた定量注出が可能となる。
【0020】
従って、本発明によれば、リング部材を回転させる度に、シリンジの各充填空間からは、連続的に、ストローク量制限部の配置間隔に応じた内容物を定量注出することができる。
【0021】
本発明において、プランジャに設けるストローク量制限部を、プランジャの軸線を挟んで対向する位置にそれぞれ、互い違いになるように配置すれば、本発明に従う注出器が、シリンジの充填空間とプランジャとを1つとするシングルタイプの注出器は勿論、シリンジの充填空間を並列的に複数形成し、各充填空間に配置されるピストンをそれぞれ、複数のプランジャの後端を一体に連結した複合プランジャにより同期操作を可能とする多連式注出器にも適用できる。
【0022】
また、本発明によれば、複合プランジャの各プランジャにそれぞれストローク量制限部を設け、当該ストローク量制限部を、隣り合うプランジャに対して互い違いになるように配置することでも、多連式注出器に適用できる。
【0023】
加えて、本発明によれば、ストローク量制限部を有するプランジャに、リング部材の回転操作をその突出部との接触によって規制して当該突出部とストローク量制限部とを整列させる回転規制部を設けることで、突出部とストローク量制限部との位置決めが容易になるため、使い勝手がよい。
【0024】
本発明に従う回転規制部は、プランジャが、その軸線から放射状に突出すると共に当該軸線に沿って延在する複数のフィンを有する場合、当該フィンを回転規制部とすれば、既存の構成を用いることで別途回転規制部を設ける必要がないから、プランジャの軽量化が図られて使い勝手がよい。
【0025】
本発明に従う回転規制部をフィンとする場合、リング部材の回転によって、その突出部の側縁を、当該フィンの側面に接触させれば、当該突出部の側縁が接触する領域として、比較的広範に広がるフィンの側面を用いるため、リング部材の突出部はフィンとの接触により確実に停止し、当該突出部とストローク量制限部との位置決めを高い確実性をもって実現できる。
【0026】
また本発明によれば、突出部がフィンの側面と接触する場合、プランジャに、当該フィンと異なるフィンが存在する場合、リング部材の回転にあたってその異なるフィンと接触するのを回避すべく、当該突出部に円弧状に形作られた内縁部を設ければ、こうした異なるフィンが存在しても、リング部材の突出部が当該フィンと干渉することなく、リング部材を回転させることができるから、更に使い勝手がよい。
【0027】
また、本発明に従う回転規制部をフィンとし、リング部材の突出部を接触させるにあたっては、この突出部をフィンの側面に接触させる以外に、当該突出部に片持ち支持片を設け、この片持ち支持片を回転規制部と着脱可能に係合させれば、係合に際して使用者にクリック感を与えるため、突出部とストローク量制限部とが位置決めされたことを確実に認識させることができる。
【0028】
また、本発明において、少なくとも回転規制部にスリットを形成し、このスリット間に、リング部材の突出部を通過させれば、リング部材の回転操作に自由度を与えるために使い勝手がよい。特に、プランジャにフィンが存在する場合、この回転規制部として用いられるフィン以外にも同様のスリットを設ければ、リング部材の突出部が当該残部フィンと干渉することなく、リング部材を回転させることができるから、更に使い勝手がよい。
【0029】
更に、本発明に従う回転規制部は、径方向外向きフィン以外にも、リング部材に弾性舌片を形成し、この弾性舌片に設けた突部又は凹部を回転規制部として、シリンジに設けた凹部又は突部と着脱可能に係合させれば、片持ち支持部を設けた場合と同様、係合に際して使用者にクリック感を与えられるため、突出部とストローク量制限部とが位置決めされたことを確実に認識させることができる。
【0030】
このように、定量注出の可能な新規な注出器を提供すれば、使用者は、ラチェット機構を用いた従来の注出器と併せて、用途や好み等に応じて適宜使い分けができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0032】
図1(a),(b)はそれぞれ、本発明の第一の形態である二連式注射器100を一部断面で示す正面図と、それをX−X断面及びY−Y断面から示す要部側面図である。
【0033】
図2(a),(b)はそれぞれ、注射器100の内容物を定量注出するにあたって用いられる操作部分を示す斜視図及びその要部断面図である。
【0034】
また、図3(a),(b)はそれぞれ、後述するリング部材150を回転操作したときの状態を注射器100の後端側から示す断面図である。
【0035】
更に、図4(a)〜(c)はそれぞれ、注射器100から定量注出を行う際の各工程を説明するため、後述の複合プランジャ130を模式的に示す側面図である。
【0036】
符号110は、液状の内容物を充填する2つの充填空間Rが並列的に形成されたシリンジである。シリンジ110は、その後端部(以下、「シリンジ後端部」という)111よりも先端側に、指を引っ掛けるためのフィンガーフランジ112を有する。フィンガーフランジ112は、図2(a)及び図3に示すように、楕円に近い形状をし、また、充填空間Rは、図1に示すように、シリンジ110の後端から長手方向に沿って延在する円筒形をし、その先端側にそれぞれ開口している。
【0037】
符号120は、各充填空間Rに摺動可能に配置されるピストンである。符号130は、各ピストン120を先端で支持する複数のプランジャ131を有しその後端を一体に連結して押圧部130aとした複合プランジャである。これにより、使用者が複合プランジャ130の押圧部130aをシリンジ110内部に向かって押圧すると、2つのプランジャ131(ピストン120)の同期操作が可能となる。
【0038】
図1に示す符号140は、各充填空間Rから押し出された2つの内容物を混合しつつ外部に注出するためのミキシングノズルである。ミキシングノズル140は、その外観形状を形作る外形パーツ141と、この外形パーツ141の内部に着脱可能に保持されるミキシングパーツ142からなり、外形パーツ141を介してシリンジ110に着脱可能に保持される。
【0039】
これにより、シリンジ110内の2つの内容物はそれぞれ、複合プランジャ130のストローク量に応じて同量ずつ、ミキシングノズル140内に圧送・混合された後、ミキシングノズル140から注出される。
【0040】
符号150は、シリンジ後端部111に設けられたリング部材である。このリング部材150は、図3に示すように、複合プランジャ130が通る開口部を有し、その内側に、シリンジ後端部111の外周面に沿って形成された環状溝111aと摺動可能に嵌合する突条150aが設けられている。これにより、リング部材150は、フィンガーフランジ112に対して複合プランジャ130の周りを回転することができる。
【0041】
更に、リング部材150は、その内側にその中心軸Oに向かって延在する2つの突出部151を有する。突出部151は、中心軸Oを挟んで対向配置されている。突出部151の形状は問わないが、好適には、図2(b)に示すような平板状に構成する。
【0042】
これに対し、複合プランジャ130の各プランジャ131には、プランジャ131の長手方向軸線(以下、「プランジャ軸線」という。)Opから放射状に突出すると共に当該軸線Opに沿って延在する4つのフィン132が形成されている。
【0043】
4つのフィン132のうち、2つのフィン132aは、リング部材150の中心Oから径方向外向きに指向する径方向外向きフィン(以下、「ストッパフィン」という。)を構成し、残り2つのフィン132bはそれぞれ、ストッパフィン132aと直交する方向に沿って外向きに突出する残部フィンを構成する。
【0044】
また、各プランジャ131には、プランジャ軸線Opに沿って一定の間隔ΔCを空けて、リング部材150の回転操作によってその突出部151が整列することで、複合プランジャ130の先端側への押し込みに伴いリング部材150の突出部151と接触して複合プランジャ130のストローク量を制限する複数のストローク量制限部(以下、「制限部」)133が設けられている。
【0045】
複数の制限部133はそれぞれ、複合プランジャ130の押し込みを許容すべく、リング部材150を回転操作したときに、予めリング部材150の突出部151よりもプランジャ後端側にて当該突出部151と整列して、その後の複合プランジャ130の押し込みに伴うストローク量を制限し、引き続いて、複合プランジャ130の更なる押し込みを許容すべく、リング部材150を回転操作して、その突出部151をずらしたときも、予め突出部151よりもプランジャ後端側にて当該突出部151と整列して、その後のプランジャの押し込みに伴うストローク量を制限するように順次繰り返しに配置されている。
【0046】
更に、詳細には、本形態の複合プランジャ130は、図1(b)に示すように、各プランジャ131に対して、制限部133を、プランジャ軸線Opに沿って一定の間隔ΔCを空けて、プランジャ軸線Opを挟んで対向する位置にそれぞれ、互い違いになるように設け、こうしたプランジャ131を、制限部133の向き及び高さがそれぞれ一致するように並置することで構成されている。
【0047】
なお、制限部133は、突出部151との接触が可能なの形状であれば、その形状は問わないが、本形態では、図2に示すような半円形のフランジ形状に構成している。
【0048】
加えて、本形態では、各プランジャ131は、図2,3に示すように、リング部材150の回転操作を、その突出部151との接触によって規制して当該突出部151と制限部133とを整列させるべく、ストッパフィン132aを回転規制部としている。
【0049】
そして、本形態の場合、図3に示すように、リング部材150の回転操作によって、その突出部151の側縁(以下、「突出部側縁」という。)151aを、ストッパフィン132aの側面(以下、「フィン側面」という。)fに接触させる構成としている。
【0050】
しかしながら、突出部151がフィン側面fと接触する場合、本形態の如く、プランジャ131に、ストッパフィン132aと異なる残部フィン132bが存在すると、この残部フィン132bが突出部151に干渉することがある。
【0051】
このため、本形態では、リング部材150の回転にあたって残部フィン132bと接触するのを回避するため、突出部151に円弧状に形作られた内縁(以下、「突出部内縁」という)151bを設けている。詳細には、内縁151bは、図3の一点鎖線で示すように、残部フィン132bを取り囲む半径rのピッチ円に沿った円弧状に形成されている。
【0052】
本形態によれば、図3(a)の矢印に示すように、シリンジ110に設けたリング部材150を回転させて、その突出部151を、図4(a)の符号Aに示すように、任意の制限部133aから破線に示す位置にずらして複合プランジャの押し込みを許容させれば、この制限部133aよりも後端側の制限部133bに予め突出部151が整列するため、その後、同図(b)の符号Bに示すように、複合プランジャ130を先端(シリンジ)側に押し込むにあたってのストローク量は、突出部151と制限部133bとの接触により制限される。即ち、本形態によれば、複合プランジャ130をシリンジ110に押し込むだけで、制限部133の配置間隔ΔCに応じた定量注出が可能となる。
【0053】
加えて、その後、本発明は、図3(b)に示すように、複合プランジャ130の更なる押し込みを許容するべく、リング部材150の回転を逆向き操作することによって、突出部151を、図4(b)の符号Cに示すように、制限部133bから破線に示す位置にずらして複合プランジャ130の更なる押し込みを許容させれば、この制限部133bよりも更にプランジャ後端側にある制限部133cが予め突出部151と整列するため、1回の定量注出が完了した後、同図(c)の符号Dに示すように、再び複合プランジャ130を押し込んでも、制限部133の配置間隔ΔCに応じた定量注出が可能となる。
【0054】
従って、本形態によれば、リング部材150を回転させる度に、シリンジ110の各充填空間Rからは、連続的に、制限部133の配置間隔ΔCに応じた内容物を定量注出することができる。
【0055】
また、本形態にように、プランジャ131に設ける制限部133を、プランジャ軸線Opを挟んで対向する位置にそれぞれ、互い違いになるように配置すれば、本発明に従う注射器100が、シリンジ110の充填空間Rとプランジャ131とを1つとするシングルタイプの注出器は勿論、同形態のように、シリンジ110の充填空間Rを並列的に2つ形成し、各充填空間Rに配置されるピストン120をそれぞれ、2つのプランジャ130の後端を一体に連結した複合プランジャ130により同期操作を可能とする2連式注出器にも適用できる。
【0056】
加えて、本形態によれば、制限部133を有するプランジャ131に、リング部材150の回転操作を、その突出部151との接触によって規制して当該突出部151と制限部133とを整列させる回転規制部としてストッパフィン132aを備えることで、突出部151と制限部133との位置決めが容易になるため、使い勝手がよい。
【0057】
特に、本形態では、ストッパフィン132aを回転規制部として既存の構成を用いることで、別途回転規制部を設ける必要がないから、プランジャ131、即ち、複合プランジャ130の軽量化が図られて使い勝手がよい。
【0058】
更に、本形態のように、リング部材150の回転操作によって、その突出部側縁151aを、フィン側面fに接触させれば、突出部側縁151aが接触する領域として、比較的広範に広がるフィン側面fを用いるため、突出部151はストッパフィン132aとの接触により確実に停止し、突出部151と制限部133との位置決めを高い確実性をもって実現できる。
【0059】
また、本形態によれば、同形態のように、ストッパフィン132aと異なる残部フィン132bが存在する場合、リング部材150の回転にあたって残部フィン132bと接触するのを回避すべく、突出部151に円弧状に形作られた内縁151bを設けることで、こうした残部フィン132bが存在しても、図3に示すように、突出部151が残部フィン132bと干渉することなく、リング部材150を回転させることができるから、更に使い勝手がよい。
【0060】
図5(a),(b)はそれぞれ、本発明の第二の形態である二連式注射器200を一部断面で示す正面図と、それをX−X断面及びY−Y断面から示す要部側面図であり、図6(a),(b)はそれぞれ、注射器200の内容物を定量注出するにあたって用いられる操作部分を示す斜視図及びその要部断面図である。
【0061】
また、図7(a),(b)はそれぞれ、リング部材150を回転操作したときの状態を注射器200の後端側から示す断面図及び、その要部拡大図である。更に、図8(a)〜(c)はそれぞれ、注射器200から定量注出を行う際の各工程を説明するため、複合プランジャ130を模式的に示す側面図である。なお、図7は、図8のZ−Z断面である。
【0062】
なお、以下の説明において、第一の形態と同一部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
【0063】
第一の形態と同様の定量注出は、各プランジャ131がそれぞれ制限部133を有し、各プランジャ131の制限部133を、隣り合うプランジャ131に対して互い違いになるように配置することでも実現される。
【0064】
更に、詳細には、本形態の複合プランジャ130は、図5(a)や図8に示すように、各プランジャ131のリング部材中心Oから径方向外向きの位置にそれぞれ、制限部133を有し、こうしたプランジャ131を、当該プランジャ131のストローク量制限部130の向き及び高さがそれぞれ互い違いになるように並置することで構成されている。
【0065】
また、本形態の各プランジャ131は、図6,7に示すように、リング部材150の回転操作を規制するにあたり、残部フィン(以下、「ストッパフィン」という。)132bを回転規制部としている。
【0066】
そして、突出部151を接触させるにあたっては、この突出部151を残部フィン132bの側面に接触させるのではなく、突出部151に弾性的に変形及び復元の可能な片持ち支持片152を一体に設け、この片持ち支持片152を残部フィン132bの先端132b(e)と着脱可能に係合させる構成としている。
【0067】
しかしながら、本形態も、リング部材150を回転させるにあたり、ストッパフィン132bと異なる径方向外向きフィン132aが突出部151に干渉することがある。
【0068】
このため、本形態では、リング部材150の回転操作にあたって径方向外向きフィン132aと接触するのを回避するため、第一の形態と同様、図7に示すように、突出部151に円弧状に形作られた突出部内縁151bを設けると共に、径方向外向きフィン132aをその根元付近まで欠落させている。
【0069】
本形態によれば、図7(a)の矢印に示すように、シリンジ110に設けたリング部材150を回転させて、図8(a)に示す突出部151を、任意の制限部133aから同図(b)の位置にずらして複合プランジャの押し込みを許容させれば、この制限部133aよりも後端側の制限部133bに予め突出部151が整列するため、その後、図8(b)の符号Bに示すように、複合プランジャ130を先端(シリンジ)側に押し込むにあたってのストローク量は、図8(c)に示すように、突出部151と制限部133bとの接触により制限される。即ち、本形態によっても、複合プランジャ130をシリンジ110に押し込むだけで制限部133の配置間隔ΔCに応じた定量注出が可能となる。
【0070】
加えて、その後、本発明は、図7(a)に示すに、複合プランジャ130の更なる押し込みを許容するべく、リング部材150の回転を更に進める向き(同方向)に操作することによって、その突出部151を、図8(c)の符号Cに示すように、制限部133bから破線に示す位置にずらして複合プランジャ130の更なる押し込みを許容させれば、この制限部133bよりも更にプランジャ後端側にある制限部133cが予め突出部151と整列するため、1回の定量注出が完了した後、図8(c)の符号Dに示す方向に、再び複合プランジャ130を押し込んでも、制限部133の配置間隔ΔCに応じた定量注出が可能となる。
【0071】
従って、本形態によっても、リング部材150を回転させる度に、シリンジ110の各充填空間Rからは、連続的に、制限部133の配置間隔ΔCに応じた内容物を定量注出することができる。
【0072】
即ち、本形態にように、複合プランジャ130の各プランジャ131にそれぞれ制限部133を設け、当該制限部133を、隣り合うプランジャ131に対して互い違いになるように配置しても、2連式注出器に適用できる。
【0073】
また、本形態のように、突出部151に片持ち支持片152を設け、この片持ち支持片152を残部フィン132bの先端132b(e)と着脱可能に係合させれば、係合に際して使用者にクリック感を与えるため、突出部151と制限部133とが位置決めされたことを確実に認識させることができる。
【0074】
更に、本発明に従う回転規制部としては、フィン132以外にも、図9(a),(b)に示すように、リング部材150に変形及び復元の可能な弾性舌片153を形成し、この弾性舌片153に設けた突部153aを回転規制部として、同図(b)に示すように、シリンジ110の後端部111に設けた凹部112と着脱可能に係合させる構成としてもよい。
【0075】
この場合、第二の形態で、片持ち支持部152を設けた場合と同様、係合に際して使用者にクリック感を与えられるため、突出部151と制限部133とが位置決めされたことを確実に認識させることができる。なお、突部と凹部との関係は、シリンジ110とリング部材150とで逆の構成としてもよい。
【0076】
図10(a),(b)はそれぞれ、本発明の第四の形態である二連式注射器400の内容物を定量注出するにあたって用いられる操作部分を示す斜視図及びその要部断面図である。
【0077】
また、図11(a),(b)はそれぞれ、リング部材150を回転操作したときの状態を注射器400の後端側から示す断面図であり、更に、図12(a)〜(c)はそれぞれ、注射器400から定量注出を行う際の各工程を説明するため、複合プランジャ130を模式的に示す側面図である。なお、図11は、図12のZ−Z断面である。
【0078】
なお、以下の説明において、他の形態と同一部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
【0079】
定量注出は、第二の形態と同様、各プランジャ131がそれぞれ制限部133を有し、各プランジャ131の制限部133を、隣り合うプランジャ131に対して互い違いになるように配置することで実現される。
【0080】
また、本形態では、図10,11に示すように、第一の形態と同様、リング部材150の回転操作を規制すべく、径方向外向きフィン(以下、「ストッパフィン」という。)132aを回転規制部としている。
【0081】
しかしながら、本形態には、図12に示すように、ストッパフィン132aのうち、制限部133と先端側で隣接部分には、突出部151が通過可能なスリットSが形成されている。即ち、各プランジャ131のスリットSも、同図に示すように、隣り合うプランジャ131に対して互い違いになるように配置されている。
【0082】
本形態によれば、図11(a)の矢印に示すように、リング部材150を回転操作して、図12(a)の位置にある突出部151を、任意の制限部133aから同図(b)に示す位置にずらして複合プランジャ130の押し込みを許容させれば、同図(b)に示すように、この制限部133aよりも後端側の制限部133bに予め突出部151が整列するため、その後、同図の符号Aに示すように、複合プランジャ130を先端(シリンジ)側に押し込むにあたってのストローク量は、同図(c)に示すように、突出部151と制限部133bとの接触により制限される。即ち、本形態によっても、複合プランジャ130をシリンジ110に押し込むだけで、制限部133の配置間隔ΔCに応じた定量注出が可能となる。
【0083】
加えて、その後、本発明は、図11(b)に示すに、複合プランジャ130の更なる押し込みを許容するべく、リング部材150の回転を更に進める向き(同方向)又は逆向きに操作することによって、その突出部151を、図12(c)の符号Bに示すように、制限部133bから破線に示す位置にずらして複合プランジャ130の更なる押し込みを許容させれば、この制限部133bよりも更にプランジャ後端側にある制限部133cが予め突出部151と整列するため、1回の定量注出が完了した後、図12(c)の符号Cに示す方向に、再び複合プランジャ130を押し込んでも、制限部133の配置間隔ΔCに応じた定量注出が可能となる。
【0084】
従って、本形態によっても、リング部材150を回転させる度に、シリンジ110の各充填空間Rからは、連続的に、制限部133の配置間隔ΔCに応じた内容物を定量注出することができる。
【0085】
即ち、本形態のように、ストッパフィン132aにスリットSを形成し、このスリットS間に、突出部151を通過させれば、リング部材150の回転操作に自由度を与えるために使い勝手がよい。特に、本形態のように、プランジャ131に残部フィン132bが存在する場合、この残部フィン132bにも同様のスリットを設ければ、ストッパ部151が残部フィン132bと干渉することなく、リング部材150を回転させることができるから、更に使い勝手がよい。
【0086】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、用途に応じて様々に設計変更することができる。例えば、本発明によれば、各形態にて説明した個々の要素は、用途等に応じて適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第一の形態である二連式注射器を一部断面で示す正面図と、それをX−X断面及びY−Y断面から示す要部側面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、同注射器の内容物を定量注出するにあたって用いられる操作部分を示す斜視図及びその要部断面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、リング部材を回転操作したときの状態を同注射器の後端側から示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ、同注射器から定量注出を行う際の各工程を説明するため、複合プランジャを模式的に示す側面図である。
【図5】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第二の形態である二連式注射器を一部断面で示す正面図と、それをX−X断面及びY−Y断面から示す要部側面図である。
【図6】(a),(b)はそれぞれ、同注射器の内容物を定量注出するにあたって用いられる操作部分を示す斜視図及びその要部断面図である。
【図7】(a),(b)はそれぞれ、リング部材を回転操作したときの状態を同注射器の後端側から示す断面図及び、その要部拡大図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、同注射器から定量注出を行う際の各工程を説明するため、複合プランジャを模式的に示す側面図である。
【図9】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第三の形態として、二連式注射器の回転規制部として採用されるリング部材の要部を示す斜視図及び、これをシリンジに組み合わせて係合させた状態を示す要部斜視図である。
【図10】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第四の形態である二連式注射器の内容物を定量注出するにあたって用いられる操作部分を示す斜視図及びその要部断面図である。
【図11】(a),(b)はそれぞれ、リング部材を回転操作したときの状態を同注射器の後端側から示す断面図である。
【図12】(a)〜(c)はそれぞれ、同注射器から定量注出を行う際の各工程を説明するため、複合プランジャを模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0088】
100 二連式注射器
110 シリンジ
111 シリンジ後端部
112 フィンガーフランジ
120 ピストン
130 複合プランジャ
131 プランジャ
132 プランジャフィン
132a 径方向外向きフィン
132b 残部フィン
133 ストローク規制部
140 ミキシングノズル
150 リング部材
151 突出部
151a 突出部側縁
151b 突出部内縁
152 片持ち支持部
R 充填空間
S スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填する充填空間が形成されたシリンジと、充填空間に摺動可能に配置されるピストンと、ピストンを先端で支持するプランジャとを備える注出器であって、
シリンジは、プランジャが通る開口部を有し当該プランジャの周りを回転可能なリング部材を備え、
このリング部材は、その内側に突出部を有し、
プランジャは、その軸線に沿って間隔を空けて、先端側への押し込みに伴いリング部材の突出部と接触してそのストローク量を制限する複数のストローク量制限部を有し、
これらのストローク量制限部はそれぞれ、プランジャの押し込みを許容すべく、リング部材を回転操作したときに、予めリング部材の突出部よりもプランジャ後端側にて当該突出部と整列して、その後のプランジャの押し込みに伴うストローク量を制限し、引き続いて、プランジャの更なる押し込みを許容すべく、リング部材を回転操作してリング部材の突出部をずらしたときも、予めリング部材の突出部よりもプランジャ後端側にて当該突出部と整列して、その後のプランジャの押し込みに伴うストローク量を制限するように、順次繰り返しに配置されていることを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項2】
請求項1において、プランジャは、リング部材の回転操作をその突出部との接触によって規制して当該突出部とストローク量制限部とを整列させる回転規制部を有することを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項3】
請求項2において、プランジャは、その軸線から放射状に突出すると共に当該軸線に沿って延在する複数のフィンを有し、当該フィンを回転規制部としたことを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項4】
請求項2又は3において、リング部材の突出部は、回転規制部と着脱可能に係合して当該突出部とストローク量制限部とを整列させる片持ち支持片を有することを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項において、少なくとも、回転規制部は、リング部材の突出部を通過させるためのスリットを有することを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項6】
請求項2において、リング部材は、弾性舌片を備え、
当該弾性舌片は、シリンジに形成した凹部又は突部と着脱可能に係合して当該突出部とストローク量制限部とを整列させる突部又は凹部を有し、この突部又は凹部を回転規制部としたことを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、ストローク量制限部は、リング部材の中心を挟んで対向する位置にそれぞれ、互い違いになるように配置したことを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、注出器は、シリンジに1つの充填空間を形成し、この充填空間に配置されるピストンを一体に連結した1つのプランジャにより操作可能なシングルタイプであって、このプランジャに、ストローク量制限部を有することを特徴とする定量注出可能な注出器。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項において、注出器は、シリンジの充填空間を並列的に複数形成し、各充填空間に配置されるピストンをそれぞれ、複数のプランジャの後端を一体に連結した複合プランジャにより同期操作を可能とする多連式であって、少なくとも1つのプランジャに、ストローク量制限部を有することを特徴とする定量注出可能な注出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−35291(P2009−35291A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200198(P2007−200198)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】