説明

定量注出器

【課題】注出される内容物の量を容易に変更できかつ構成が簡素である定量注出器を提供すること。
【解決手段】容器の口部に配設され、内容物を一時的に収容して注出する注出器本体2と、注出器本体2に上方付勢状態で下方移動自在に設けられた押下ヘッド3と、押下ヘッド3と共に上下移動するストッパ4と、を備え、注出器本体2は、押下ヘッド3の上下移動によって内圧が増減されるシリンダ5と、口部に配設され、シリンダ5に連設されてシリンダ5の内圧に応じてシリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる吸上筒6と、シリンダ5から側方に向けて延び、シリンダ5の内圧に応じてシリンダ5との連通及び遮蔽が切り替えられる注出筒7と、を有し、ストッパ4には、注出器本体2のうちストッパ4に下方から対向する基端部18に当接可能な当接凹部35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量注出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定量注出器として、注出される内容物を一時的に収容するシリンダと、シリンダ内に下方付勢状態で設けられると共に上下移動によってシリンダの内圧を増減させるピストンロッドと、ピストンロッドを引き上げる操作ハンドルと、シリンダに連設されると共に容器の口部内に配設され、シリンダの内圧の増減に応じてシリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる吸上筒と、シリンダに直結されて側方に向けて延び、シリンダの内圧の増減に応じてシリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる注出筒と、を備える構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この定量注出器では、レバーを用いてピストンロッドを引き上げると、シリンダ内が負圧になって吸上筒とシリンダとが連通し、吸上筒から内容物がシリンダ内に吸入される。そして、シリンダと注出筒とが連通してシリンダ内に吸入された内容物が注出筒から注出される。
【0003】
定量注出器では、正確な量を繰り返し注出させることが求められている。そこで、特許文献1に記載された定量注出器では、定量注出器の軸方向に階段状に形成された複数の突当段部を有する変更部材がシリンダに対して上下動不能に取り付けられている。変更部材は、ピストンロッドの下端外周面に設けられた係止駒と当接可能であり、突当段部は、ピストンロッドの上方移動時に係止駒と当接することによってピストンロッドのさらなる上方移動を規制しており、変更部材を軸回りで回転させて係止駒と当接する突当段部を切り替えることによって、変更部材によって規制される上方移動量を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−28452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の定量注出器では、注出される内容物の量を変更する構成をより容易にすることについて改善の余地があった。本発明は、注出される内容物の量を容易に変更できかつ構成が簡素である定量注出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の定量注出器は、内容物が収容される容器の口部に配設され、前記内容物を一時的に収容して注出する注出器本体と、前記注出器本体に上方付勢状態で下方移動自在に設けられた押下ヘッドと、前記押下ヘッドに設けられ、前記押下ヘッドと共に上下移動するストッパと、を備え、前記注出器本体は、前記押下ヘッドの上下移動によって内圧が増減されるシリンダと、前記口部に配設され、前記シリンダに連設されて前記シリンダの内圧の増減に応じて前記シリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる吸上筒と、前記シリンダに直結されて側方に向けて延び、前記シリンダの内圧の増減に応じて前記シリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる注出筒と、を有し、前記ストッパには、前記注出器本体のうち当該ストッパに下方から対向する対向部分に当接可能な当接段部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、押下ヘッドが上下移動しているときに対向部分と当接することによって押下ヘッドの下方移動を規制する当接段部を有するストッパが押下ヘッドに設けられているので、注出量を変更する構成が簡素化される。このストッパでは、当接段部を対向部分に対して上方から対向させて当接段部による規制を行う状態と対向させずに当接段部による規制を行わない状態とを選択することによって、押下ヘッドの下方移動量を変更している。したがって、シリンダや押下ヘッドの内部構成を複雑化することなく押下ヘッドの下方移動量を変更できる。
【0008】
また、本発明の定量注出器は、前記当接段部は、前記押下ヘッドの周方向に沿って、上下方向の位置が互いに異なるように複数設けられていることが好ましい。
この発明では、複数の当接段部の中から対向部分に対して上方から対向させる当接段部を変更することによって、押下ヘッドの下方移動量を多段階に変更できる。
【0009】
また、本発明の定量注出器は、前記ストッパ及び前記押下ヘッドには、それぞれ互いに係合することで相対的な周方向の位置を決めて複数の前記当接段部のうち前記対向部分に当接可能な当接段部が1つ決められる係合部が形成されていることが好ましい。
この発明では、ストッパを押下ヘッドに対して周方向で位置決めすることで、対向部分と対向させる当接段部の周方向の位置合わせがより確実に行える。
【0010】
また、本発明の定量注出器は、前記ストッパには、それぞれの前記当接段部における前記周方向の両端部から下方に向けて延在して前記対向部分を両側から挟み込み可能な案内突部が突設されていることが好ましい。
この発明では、一対の案内部間で対向部分を挟み込んでストッパが上下方向に案内されることで、ストッパ及び対向部分による押下ヘッドの下方移動の規制が安定して行われる。
【0011】
また、本発明の定量注出器は、前記ストッパには、前記注出器本体のうち当該ストッパに径方向内側から対向する部分に向けて膨出変形可能な変形部が形成されていることが好ましい。
この発明では、変形部を径方向内側に向けて膨出変形させてストッパと注出器本体との間の径方向における間隙を小さくする、またはなくすことで、押下ヘッドを注出器本体に対して下方移動させるときや当接段部が注出器本体の対向部分と当接したときに、ストッパが注出器本体に対して径方向でぐらつくことが抑えられる。これにより、当接段部による規制をより確実に行え、注出量の計量精度が向上する。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる定量注出器によれば、押下ヘッドの下方移動を規制する当接段部を有するストッパが押下ヘッドに設けられているので、シリンダや押下ヘッドの内部構成を複雑化することなく押下ヘッドの下方移動量を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態における定量注出器を示す側面図である。
【図2】図1の定量注出器を示す上面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における定量注出器を示す側面図である。
【図4】図3の定量注出器を示す上面図である。
【図5】本発明の第3実施形態における定量注出器を示す側面図である。
【図6】本発明の第4実施形態における定量注出器を示す部分断面側面図である。
【図7】図6のストッパを示す側面図である。
【図8】図6のストッパを示す裏面図である。
【図9】本発明の第5実施形態における定量注出器を示す部分断面側面図である。
【図10】図9のストッパを示す側面図である。
【図11】図9のストッパを示す裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による定量注出器の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能とするために縮尺を適宜変更している。
本実施形態における定量注出器1は、内容物を収容した容器の口部に配設され、内容物を一時的に収容して注出する注出器本体2と、注出器本体2に上方付勢状態で下方移動自在に設けられた押下ヘッド3と、押下ヘッド3に被着され、押下ヘッド3と共に上下移動するストッパ4と、を備えている。
【0015】
注出器本体2は、押下ヘッド3の上下移動によって内圧が増減されるシリンダ5と、シリンダ5に連設されて上記口部に配設される吸上筒6と、シリンダ5に直結されて側方に向けて延びる注出筒7と、を備えている。なお、上記容器内に収容される内容物としては、例えば水や酒類などの飲料液体のように比較的粘度の低い液体が挙げられるが、低粘度の液体に限られない。
図示の例では、押下ヘッド3、シリンダ5及び吸上筒6は、それぞれ共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を軸線Oと称し、軸線O方向に沿って押下ヘッド3側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、軸線O方向を軸方向、軸線Oに直交する方向を径方向、軸線O回りの方向を周方向とする。
【0016】
シリンダ5は、有底円筒状をなしており、有底円筒状のシリンダ本体部11と、シリンダ本体部11の下面から下方に向けて突出する突出筒部12と、シリンダ本体部11の下面から径方向外方に向けて延びる連結筒部13と、を備えている。シリンダ本体部11の底面には、中央に吸上筒6に連通する吸上連通口(図示略)が形成され、中央から径方向外方に離間した位置に連結筒部13に連通する注出連通口(図示略)が形成されている。
突出筒部12の下端には、径方向外側に向けて突出するフランジ部(図示略)が形成されており、このフランジ部には、上記口部に着脱自在に螺着される装着筒部14が係合している。
連結筒部13の内部には、シリンダ本体部11の内圧の増減に応じてシリンダ5と注出筒7との連通及び遮蔽を切り替える注出弁(図示略)が設けられている。この注出弁は、シリンダ本体部11の内圧が増大すると、開放されてシリンダ5と注出筒7とを連通し、シリンダ本体部11の内圧が減少すると、閉塞されてシリンダ5と注出筒7とを遮蔽する。
【0017】
吸上筒6は、円筒状をなしており、基端がシリンダ本体部11の底面に形成された上記吸上連通口に接続されており、シリンダ本体部11の下方に向けて延びている。
また、吸上筒6の内部には、シリンダ本体部11の内圧の増減に応じてシリンダ5と吸上筒6との連通及び遮蔽を切り替える吸上弁(図示略)が設けられている。この吸上弁は、シリンダ本体部11の内圧が減少すると、開放されてシリンダ5と吸上筒6とを連通し、シリンダ本体部11の内圧が増大すると、閉塞されてシリンダ5と吸上筒6とを遮蔽する。
【0018】
注出筒7は、押下ヘッド3及びストッパ4の上下移動時には上下移動せず、連結筒部13に連結されて径方向外側に向けて延びる基端部(対向部分)18と、基端部18の先端に接続されて径方向外側に向かうにしたがって漸次下方に向けて延びる先端部19と、を備えている。基端部18は、ストッパ4の後述する複数の当接凹部35のうち選択された1つと下方から対向した状態でストッパ4を押下ヘッド3と共に押し下げた際に、この当接凹部35と当接可能となっている。また、注出筒7の先端には、内容物を注出する注出口7Aが形成されている。
【0019】
押下ヘッド3は、シリンダ5の上端部に装着されており、有頂円筒状をなす押下筒部21と、シリンダ本体部11の内周面に沿って上下摺動自在なピストン部(図示略)と、を備えている。
押下筒部21は、シリンダ本体部11の上端部の外側を囲んでおり、押下ヘッド3の上下移動に伴ってシリンダ本体部11の外側を上下移動する。また、押下筒部21の内側には、軸方向に沿って延在し、上端が押下筒部21の天面の裏面に当接しかつ下端がシリンダ本体部11に対して不動に固定されているバネ(図示略)が配置されている。そのため、押下ヘッド3は、上記バネによって上方付勢状態でシリンダ5に配設される。
上記ピストン部は、押下ヘッド3を押し下げない状態においてシリンダ本体部11の上端部を気密に閉塞しており、シリンダ本体部11の内側に貯留空間を形成する。
【0020】
ストッパ4は、押下ヘッド3に被着されており、有頂円筒状をなす被着部31と、被着部31の一部から下方に向けて突出するストッパ本体部32と、を備えている。
被着部31は、下端が押下ヘッド3の押下筒部21の下端よりも下方まで位置しており、押下ヘッド3全体を覆っている。
ストッパ本体部32は、被着部31の下端から下方に向けて突出する板状部33と、板状部33の下端から径方向外側に向けて突出する複数の当接突出部34と、を有している。
【0021】
板状部33は、周方向に沿って円弧状に湾曲する板状をなしている。そして、板状部33の下端部には、上方に向けて陥没する扁平な半円状の当接凹部(当接段部)35が周方向に沿って複数(図1及び図2では3つ)形成されている。当接凹部35は、基端部18の外形に合わせて形成されている。本実施形態では、当接凹部35の曲率半径は、基端部18の外周面の半径と同等になっており、各当接凹部35は、軸方向に沿った配置位置が互いに異なっている。
当接突出部34は、扁平の半円筒状をなしており、当接凹部35の縁部から径方向外側に向けて突出している。当接突出部34の内周面における曲率半径は、当接凹部35の曲率半径と同等になっている。なお、当接突出部34は、基端部18の傾斜に合わせて、径方向外側に向かうにしたがって下方に向けて若干傾斜している。
【0022】
次に、以上のような構成の定量注出器1を用いた内容物の注出方法について説明する。 まず、装着筒部14を内容物が収容された上記容器の口部に螺着させ、定量注出器1を上記容器の口部に取り付ける。ここで、複数の当接凹部35のうちの1つが上方から基端部18と対向するようにストッパ4を押下ヘッド3に被着する。続いて、上記バネによる上方付勢力に対抗して押下ヘッド3及びストッパ4を押し下げる。押下ヘッド3及びストッパ4を押し下げると、押下ヘッド3及びストッパ4の上下移動時に基端部18に当接凹部35が当接することにより、押下ヘッド3のさらなる下方への移動が規制される。当接凹部35及び当接突出部34の形状が基端部18の外形に合わせられているため、当接凹部35が基端部18に当接した状態で押下ヘッド3をさらに押し下げようとした際に当接凹部35及び当接突出部34にかかる力が分散される。
【0023】
そして、押下ヘッド3の押し下げを解除すると、押下ヘッド3は、上記バネによる上方付勢力によって上方に移動し、押下ヘッド3のストローク量に応じた負圧をシリンダ本体部11の上記貯留空間に発生させる。これにより、吸上筒6の内部に配置された上記吸上弁が開放されてシリンダ5と吸上筒6とを連通し、吸上筒6からシリンダ本体部11内に上記容器内の内容物を流入させる。なお、この際、連結筒部13の内部に配置されている上記注出弁が閉鎖されてシリンダ5と注出筒7とを遮蔽している。
【0024】
このときの内容物の流入量は、上記貯留空間内に発生した負圧、すなわちストローク量に対応している。ストローク量を変更する際には、ストッパ4を押下ヘッド3に対して軸線O回りに回転させ、他の当接凹部35を上方から基端部18と対向させる。これにより、ストローク量の変更が行われる。
また、被着部31の下端が押下ヘッド3の最下降位置において基端部18に到達しない上下方向位置に形成されているため、板状部33が形成されていない被着部31の下端部分を基端部18に対向させた状態で押下ヘッド3を押し下げると、フルストロークによる吐出が可能となる。本実施形態では、図2に示すように、ストッパ4において板状部33の径方向反対側が、フルストローク可能な上記下端部分となっている。
【0025】
シリンダ本体部11内に内容物を流入させた後、押下ヘッド3を再び押し下げると、シリンダ本体部11内が正圧になり、連結筒部13の上記注出弁が開放されてシリンダ5と注出筒7とを連通し、シリンダ本体部11内の内容物が注出筒7の注出口7Aから注出される。この際、上記吸上弁が閉鎖されてシリンダ5と吸上筒6とを遮蔽している。そのため、シリンダ本体部11内の内容物は、吸上筒6に戻されない。
以上のようにして、内容物を注出する。
【0026】
以上より、本実施形態における定量注出器1によれば、基端部18に当接可能である複数の当接凹部35によって押下ヘッド3のストローク量を規制するストッパ4を押下ヘッド3に設けることで、シリンダ5や押下ヘッド3の内部構成を複雑化することなく押下ヘッド3のストローク量を変更できる構成を採用できる。
【0027】
次に、本発明による定量注出器の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図3及び図4においては、図1及び図2と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0028】
第2実施形態における定量注出器100は、押下ヘッド101及びストッパ102の形状が異なる点で、第1実施形態における押下ヘッド3及びストッパ4と異なっている。
押下ヘッド101の押下筒部103の天壁部104には、図3及び図4に示すように、軸線Oを径方向で挟むように一対の位置決め突部(係合部)105が形成されている。一対の位置決め突部105は、平面視で注出筒7の延在方向と直交する方向に沿って延びる長円状をなしている。
【0029】
ストッパ102の被着部106の上壁部107には、一対の位置決め突部105と各別に係合可能な位置決め孔部(係合部)108が周方向で間隔をあけて複数対(図3及び図4では3対)形成されている。3つの位置決め孔部108は、位置決め突部105と同様に平面視で長円状をなしており、後述する複数の当接凹部(当接段部)110と対応して形成されている。また、各対の位置決め孔部108は、周方向に均等間隔で形成されている。この場合、前記位置決め突部105もこれに対応するように同数形成してもよい。
ストッパ本体部109の下端縁には、上方に向けて陥没する半円状の当接凹部(当接段部)110が周方向に沿って複数(図3及び図4では3つ)形成されている。
【0030】
以上のような構成の定量注出器100においても、上述した第1実施形態における定量注出器1と同様にして内容物を注出するが、3つの位置決め孔部108のうちの一対を一対の位置決め突部105と係合させると、3つの当接凹部110のうち係合させた一対の位置決め孔部108に対応する1つが注出筒7の基端部18と上方から対向する。これにより、基端部18と対向させる当接凹部110の周方向の位置合わせが行われる。
【0031】
また、ストローク量を変更する際には、ストッパ102を若干引き上げて位置決め孔部108と位置決め突部105との係合を解除した状態でストッパ102を軸線O回りで回転させ、上面視で新たに選択する当接凹部110に対応する一対の位置決め孔部108と一対の位置決め突部105とを位置合せする。そして、ストッパ102を再度押下ヘッド101に被着させ、この位置決め孔部108と位置決め突部105とを係合させる。これにより、新たに選択した当接凹部110は、基端部18に対して上方から対向する。
【0032】
このような定量注出器100においても、上述した第1実施形態における定量注出器1と同様の効果を奏するが、所望の当接凹部110に対応する位置決め孔部108を位置決め突部105と係合させてストッパ102を押下ヘッド101に対して周方向で位置決めすることで、基端部18と対向させる当接凹部110の周方向の位置合わせがより確実に行える。
【0033】
次に、本発明による定量注出器の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第2実施形態と同様であり、上述の第2実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図5においては、図3及び図4と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0034】
第3実施形態における定量注出器120は、ストッパ121の当接凹部(当接段部)122の周方向両側に案内部123が設けられている点で、第2実施形態におけるストッパ102と異なっている。
ストッパ本体部124には、図5に示すように、上方に向けて陥没する半円状の当接凹部122が周方向に沿って複数(図5では3つ)形成されている。そして、ストッパ本体部124の当接凹部122を周方向で挟む両端部には、ストッパ121を軸方向に案内する案内部123が設けられている。
案内部123は、当接凹部122の周方向両側から下方に向けて延びており、基端部18を周方向で挟んでいる。
【0035】
以上のような構成の定量注出器120では、上述した第1及び第2実施形態における定量注出器1、100と同様にして内容物を注出するが、押下ヘッド3及びストッパ121を押し下げると、案内部123が基端部18を周方向で挟んでいるため、周方向で隣り合う一対の案内部123がこの一対の案内部123間にある基端部18に沿って軸方向に案内される。これにより、基端部18に対するストッパ121の軸方向の移動が安定する。
また、ストローク量を変更する際には、ストッパ121を若干引き上げて基端部18を案内部123の下端から離間させた後にストッパ121を軸回りに回転させ、他の当接凹部122を上方から基端部18と対向させた状態で再度ストッパ121を押下ヘッド3に被着させる。
【0036】
このような構成の定量注出器120においても、上述した第1及び第2実施形態における定量注出器1、100と同様の効果を奏するが、周方向で隣り合う案内部123間に基端部18を挟んでいるため、基端部18に対するストッパ121の軸方向の移動が安定し、ストッパ121及び基端部18による押下ヘッド3の下方移動の規制が安定して行われる。
【0037】
次に、本発明による定量注出器の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第3実施形態と同様であり、上述の第3実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図6から図8においては、図5と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0038】
第4実施形態における定量注出器130におけるストッパ131のストッパ本体部132には、図6から図8に示すように、注出器本体2のシリンダ本体部11のうちこのストッパ131に径方向内側から対向する部分に向けて膨出変形可能な変形部133が形成されている。
【0039】
変形部133は、ストッパ本体部132において当接凹部(当接段部)134に上方から連なる部分に形成されており、上記径方向外側から見て下方に向けて開口する三日月状をなしている。そして、ストッパ本体部132のうち変形部133は、この変形部133を除く他の部分よりも薄肉となっている。
また、変形部133は、図7及び図8に示すように、ストッパ131を押下ヘッド3に装着する前の状態では径方向外側に向けて膨出しており、図6に示すように、ストッパ131を押下ヘッド3に装着した後に変形部133を径方向内側に向けて膨出するように反転変形される。このように、変形部133が反転変形された状態で、変形部133の径方向内側の端部は、押下筒部21の下端縁よりも径方向内側に位置しており、シリンダ本体部11に当接または近接する。
【0040】
以上のような構成の定量注出器130では、上述した第1から第3実施形態における定量注出器1、100、120と同様にして内容物を注出するが、変形部133を径方向内側に向けて反転変形させているので、ストッパ131の径方向内面とシリンダ本体部11の径方向外面との間の間隙が小さくなる、またはなくなる。また、変形部133が薄肉となっており、変形部133の外周縁を起点として変形部133が径方向内側に変形されるので、反転変形された変形部133が径方向外側に向けて再度膨出変形されにくくなり、変形部133の反転変形形状が安定する。
【0041】
この状態で押下ヘッド3及びストッパ131を押し下げると、ストッパ本体部132とシリンダ本体部11との間の径方向における間隔が小さい、またはなくなるので、ストッパ131を押し下げるときや当接凹部134が基端部18と当接するときに、ストッパ131が注出器本体2に対して径方向でぐらつきにくくなる。これにより、押し下げ動作が安定する。
なお、変形部133を径方向内側に膨出変形させないで使用することも可能である。
【0042】
このような構成の定量注出器130においても、上述した第1から第3実施形態における定量注出器1、100、120と同様の効果を奏するが、変形部133を径方向内側に膨出変形させることでストッパ本体部132とシリンダ本体部11との径方向における間隔が小さくなる、またはなくなって径方向におけるぐらつきが抑制されるため、当接凹部134による規制がより確実に行われる。
【0043】
次に、本発明による定量注出器の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第4実施形態と同様であり、上述の第4の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図9から図11においては、図6から図8と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0044】
第5実施形態における定量注出器140のストッパ141では、図9から図11に示すように、変形部142が上記径方向外側から見て周方向に長い長方形状に形成されている。
変形部142の上端縁は、周方向に延在するスリット143によってストッパ本体部144から分断されており、変形部142の下端縁は、当接凹部(当接段部)145となっている。また、変形部142は、周方向に互いに連結された一対の連結壁部146と一対の連結壁部146間に位置するツマミ部147とを有している。
ストッパ本体部144の連結壁部146は、この連結壁部146を除く他の部分より薄肉に形成されており、周方向両端部それぞれが連結壁部146よりも薄肉のヒンジ部148を介してストッパ本体部144におけるこの変形部142を除く他の部分とツマミ部147とに接続されている。
ツマミ部147は、一対の連結壁部146同士の間から径方向外側に突出している。
【0045】
また、変形部142は、図10及び図11に示すように、ストッパ141を押下ヘッド3に装着する前の状態においてストッパ本体部144におけるこの変形部142を除く他の部分よりも径方向外側に位置しており、図9に示すように、ストッパ141を押下ヘッド3に装着した後に変形部142が径方向内側に向けて膨出するように反転変形される。このように、変形部142が反転変形された状態で、変形部142の径方向内側の端部は、押下筒部21の下端縁よりも径方向内側に位置しており、シリンダ本体部11に当接または近接する。
【0046】
このような構成の定量注出器140においても、上述した第4実施形態における定量注出器130と同様の作用、効果を奏する。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、シリンダは、注出筒が取り付けられる連結筒部を有しているが、連結筒部を設けずにシリンダ本体部に注出筒を直接取り付けるなど他の構成を有してもよい。
吸上弁及び注出弁は、シリンダの内圧の増減に応じて同様の作用効果を奏すれば、他の位置に設けられていてもよい。
【0048】
ストッパは、押下ヘッドの全体を被覆しているが、一部を覆う構成であってもよい。また、ストッパは、押下ヘッドに被着されているが、押下ヘッドと共に軸方向に移動できれば、他の方法によって押下ヘッドに取り付けられてもよく、押下ヘッドの下端部に一体成形で設けてもよい。
形成される当接凹部の数は、3つに限られず、1つや2つ、あるいは4つ以上形成してもよい。当接凹部が1つのみ形成されている場合には、上述のように、当接凹部を基端部に対向させて当接凹部による下方移動の規制を行う状態と、当接凹部を基端部に対向させずに当接凹部による下方移動の規制を行わない状態とを切り替えて押下ヘッドの下方移動量を変更する。
【0049】
そして、当接凹部は、周方向に沿って形成位置が階段状をなすように配置されているが、軸方向における形成位置が異なっていれば、階段状に限られない。また、当接段部は、注出筒の基端部分に当接することによって押下ヘッドの下方移動が規制できれば、半円状の凹部に限らず、凸部など他の形状であってもよい。さらに、対向部分は、押下ヘッド及びストッパの上下移動時に押下ヘッド及びストッパと共に上下移動しない部分であれば、注出筒の基端部分に限らず、他の部分であってもよい。
【0050】
第1、第3から第5実施形態においても、第2実施形態と同様に、ストッパに複数対の位置決め孔部を形成すると共に押下ヘッドに一対の位置決め突部を形成してもよい。また、ストッパに形成される係合部は、位置決め孔部に限らず、位置決め凸部と係合できれば凹部であってもよい。さらに、ストッパに位置決め凸部を形成し、押下ヘッドに位置決め孔部または凹部を形成してもよい。そして、係合部の形状は、互いに係合して当接段部を対向部分に対して周方向で位置合せすることができれば、凸部と孔部または凹部に限らず、他の形状であってもよい。また、係合部の形成位置は、ストッパ及び押下ヘッドの上面に限らず、側面など他の箇所であってもよい。
同様に、第1及び第2実施形態においても、第4及び第5実施形態と同様に、変形部を設けてもよい。また、変形部の形状は、径方向内側に向けて膨出変形できれば、例えばツマミ部を設けない形状など、他の形状であってもよい。
変形部は、ストッパのうち注出器本体のシリンダ本体部に径方向外側から対向する部分に形成されているが、ストッパのうち注出器本体に径方向外側から対向する部分に設ければよく、シリンダ本体部に対向する部分に限られない。
変形部は、当接段部に上方から連なる部分に形成されているが、当接段部と周方向でずらした部分に形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明によれば、注出される内容物の量を容易に変更できかつ構成が簡素である定量注出器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0052】
1,100,120,130,140 定量注出器、2 注出器本体、3,101 押下ヘッド、4,102,121,131,141 ストッパ、5 シリンダ、6 吸上筒、7 注出筒、18 基端部(対向部分)、35,110,122,134,145 当接凹部(当接段部)、105 位置決め突部(係合部)、108 位置決め孔部(係合部)、123 案内部、134,142 変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器の口部に配設され、前記内容物を一時的に収容して注出する注出器本体と、
前記注出器本体に上方付勢状態で下方移動自在に設けられた押下ヘッドと、
前記押下ヘッドに設けられ、前記押下ヘッドと共に上下移動するストッパと、
を備え、
前記注出器本体は、
前記押下ヘッドの上下移動によって内圧が増減されるシリンダと、
前記口部に配設され、前記シリンダに連設されて前記シリンダの内圧の増減に応じて前記シリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる吸上筒と、
前記シリンダに直結されて側方に向けて延び、前記シリンダの内圧の増減に応じて前記シリンダとの連通及び遮蔽が切り替えられる注出筒と、
を有し、
前記ストッパには、前記注出器本体のうち当該ストッパに下方から対向する対向部分に当接可能な当接段部が設けられていることを特徴とする定量注出器。
【請求項2】
前記当接段部は、前記押下ヘッドの周方向に沿って、上下方向の位置が互いに異なるように複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定量注出器。
【請求項3】
前記ストッパ及び前記押下ヘッドには、それぞれ互いに係合することで相対的な周方向の位置を決めて複数の前記当接段部のうち前記対向部分に当接可能な当接段部が1つ決められる係合部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の定量注出器。
【請求項4】
前記ストッパには、それぞれの前記当接段部における前記周方向の両端部から下方に向けて延在して前記対向部分を両側から挟み込み可能な案内突部が突設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の定量注出器。
【請求項5】
前記ストッパには、前記注出器本体のうち当該ストッパに径方向内側から対向する部分に向けて膨出変形可能な変形部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の定量注出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−95444(P2013−95444A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237816(P2011−237816)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】