説明

定量的二重染色測光法による希釈効果測定

本発明は溶液希釈の影響を測定する手段を提供するものであり、その希釈はさまざまな目的のために実施されるものである。ある実施例においては、その手法によりメニスカス形状とは無関係に正確な投与量の算出が可能となる。他の実施例では、その手法によりプレートの洗浄効率の正確な測定が可能となる。さらに別の実施例では、その手法により複数の希釈ステップにわたる希釈率の正確な測定が可能となる。記載されたこれら手法はステップを実施するために準備された1つあるいはそれ以上のシステムを用いて実施できる。本発明のキットには各手法を実施するためのインストラクション、さらにオプションで光度測定を実施するのに適した1つあるいはそれ以上の溶液が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は本譲受人による2006年9月15日出願の米国特許仮出願番号60/825,744、「分配容量の精度及び対応するさまざまな液体の希釈率測定のための定量的二重染色光度手法」の優先権の利益を主張するものである。本出願はまた、本譲受人による2007年5月30日出願の米国特許仮出願番号60/940,766、「分配容量の精度及び対応するさまざまな液体の希釈率測定のための定量的二重染色光度手法」の優先権の利益を主張するものである。これら先願のすべての内容は、参照することにより援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は溶液の希釈効果測定法に関する。特に、本発明は希釈剤と混合された溶液の容量測定法に関する。本発明はさらに、洗浄液を用いた容器からの試薬除去効率測定法に関する。本発明はさらに、希釈溶液の希釈率測定法に関する。
【背景技術】
【0003】
メイン州ウェストブルックのアーテル・インク(以下アーテル)より販売されている米国特許番号6,741,365号及び7,187,455号の対象である現行版のマルチチャネル・ベリフィケーション・システム(MVS)(登録商標)は、分配装置の指定容量範囲全体における精度測定のための機器及び水性サンプル溶液の使用を含んでいる。さらに、水性前躯体より生成される非水性サンプル溶液の容量測定に用いられることもある現行手法は、米国特許公開番号2007/0141709号の対象である。米国特許番号6,741,365号、7,187,455号、米国特許公開番号2007/0141709号の内容全体は、参照することにより援用される。公開番号2007/0141709号では、水性MVS(登録商標)原液から試験溶液を生成する一般的手法及び、米国特許番号6,741,365号、7,187,455号に記載された計算手順に対応する主要計算手順が記載されている。現行版のMVS(登録商標)において提供される水溶液は多くのユーザーの要求に合致し、公開番号2007/0141709号に記載された非水性溶媒から試験溶液を生成する手法もまた多くのユーザーが要求する試験手法を提供している。
【0004】
しかし、MVS(登録商標)及び公開番号2007/0141709号の手法には限界がある。たとえば、米国特許番号6,741,365号、7,187,455号に記載された数学的手法に従った正確な計算を維持しながらMVS(登録商標)の原液から試験溶液を生成するために使われる溶媒のタイプには制限がある。つまり、マイクロタイタープレートの窪みでの溶液メニスカスを大きく変更するどのような溶媒も前記のやり方による計算の結果に有害な効果を持ち得る。米国特許番号6,741,365号、7,187,455号に記載されたMVS(登録商標)法は、ほぼフラットなメニスカス、再生可能なメニスカスを生み出す制御されたあるいは既知の溶液化学、メニスカス形状における軽微な変位の主原因となる補正係数を基にしている。
【0005】
MVS(登録商標)原液からの新たな試験溶液に特性化されていない溶媒(公開番号2007/0141709に記載)と既存のMVS(登録商標)法(米国特許番号6,741,365及び7,187,455に記載)が適用されると、メニスカスの湾曲度合いによって多大な誤差が起こりうる。既存のMVS(登録商標)法は液溜めプレートの窪みに滴下された容量の正確な結果を得るためにこのメニスカス湾曲の知識に依存しており、補正係数の適用を通じてのみ正確な計測が可能である。そのため、溶液メニスカスに対する影響を特性化されていない溶媒のために、既存のMVS(登録商標)法により得られる結果は、得られるはずの結果より正確性が低い。
【0006】
さまざまなタイプの分析試験が生命科学や製薬研究室で実施され、反応容器から不要なあるいは使用済みの試薬を洗浄するステップが必要とされている。たとえば、酵素免疫測定法(ELISA法)では標識配位子の導入が必要である。この標識配位子は興味のある分子化合物が存在し、測定できるならば、それと結合する。測定は使用される標識のタイプに応じて蛍光分析測定、光度分析測定、放射分析測定が良く用いられる。ところが、測定ステップに入る前に、結合しなかった標識配位子は反応容器からすすぎ、あるいは洗浄により、多くの場合緩衝用水から成る洗浄溶液を使った方法ですべて除去しなければならない。
【0007】
マイクロタイタープレートで行われる分析試験には、洗浄措置は通常窪み内で溶液を取り替えることで行われる。この洗浄措置はプレートウォッシャーと呼ばれる特殊器具を使って実施される。プレートウォッシャーの例としては、テカンパワーウォッシャー 384(Tecan US,Durham,NC)や、バイオテックELx405マイクロプレートウォッシャー(Bio Tek Instruments,Winooski,VT)がある。
【0008】
プレートウォッシャーは一般的に、洗浄溶液をマイクロタイタープレートの液溜め(窪み)に投与し、同時に溶液を除去する。そのため、それらウォッシャは投与チューブと吸引チューブを多くの場合並べて内蔵している。溶液は液溜めに流れ込み、高速で液溜めから流れ出すことで不要な試薬を効果的に洗い流す。洗浄溶液は液溜めに投与口から投与される。投与口はチューブで未使用洗浄溶液の大容量タンク(多くの場合1リットル以上)に接続されている。吸入口はチューブで廃液タンクに接続されている。投与口は液溜めの底近くまで挿入されることが多く、それにより液溜めの底部まで溶液を導入する。逆に、吸入口は液溜めの深さの上から3分の1程の浅い部分に挿入される。吸入口をこの高さに位置させることにより、液溜め内の内容物を洗浄液で押し出し、液溜めの底部近くまで流し、そこから上方へ流し、吸入口によって除去される。洗浄工程が終了すると、溶液の総高さはプレート底部に対して吸入口の高さと等しい(か、あるいは高くなる)。そのためこの高さにより液溜めに残る溶液の総容量が測定できる。
【0009】
洗浄工程を含むマイクロタイタープレートによる分析試験の多くは、定量的な洗浄効率の理解を必要とはしていない。ただし、いくつかの状況においては、プレート洗浄によって試薬が液溜めからどれほどの効率で除去できるかを理解しておく必要がある。洗浄効率を測定する一つの方法は、液溜め内の試薬になされた希釈度を測定することである。そのようなテストには、既存の手法から教えられる希釈試験計画が使える。ただ、それら既存の手法では、洗浄液タンクに希釈溶液を添加する必要がある。多くの場合、そのように多量の希釈剤を添加するのは不便であり、費用もかかる。そのため、試験プレートの洗浄効率を高める手法が求められている。
【0010】
生命科学や製薬研究室で実施されている多くの試験手順が用量反応分析や検出限界分析試験といった希釈ベースの容量移動手順を必要としている。これら手順の多くで、定量的測定結果が収集され、測定された希釈率ではなく、仮定による希釈率に基づいて判断が下されている。これら仮定は自動的に液体を分配する機器の動作への根拠のない信頼に基づいていることが多い。サンプル濃度を正確に知ることは実験結果を適切に理解するのに重要であり、これは実験の希釈率を知り制御できている場合にのみ得られるものである。そのため、適切な分析試験解析のためには、複数の希釈ステップを持つ希釈手順の中で各希釈ステップを正確に計測する能力が求められる。
【0011】
必要なのは投与される溶液の正確な容量を、メニスカスとは無関係に計算可能とする手法である。プレートウォッシュルーティンの効率を測定する効果的な手法もまた必要とされている。さらに、複数の希釈ステップを含む希釈手順において、希釈精度を測定する手法も必要である。

発明の概要
【0012】
本発明の目的は、投与された溶液の容量をメニスカスとは無関係に正確に計算することを可能とする手法及び関連システムを提供することである。また、本発明の目的は、プレートウォッシュルーティンの効率を測定するシステム及び関連手法を提供することである。さらに、本発明の目的は複数の希釈ステップを含む希釈手順において、希釈精度を測定する手法を提供することである。
【0013】
本発明の第一の手法は二重染色測光法であり、メニスカス形状とは無関係に結果を得られることから特性化されていない溶媒タイプに使用することができる。そのため、この新手法はさまざまな溶媒の容量テストにさらに幅広く適用可能である。本手法において、希釈剤の量は通過する光の光路長を測定する際に最初に使用される。光路長は単独で容器内のメニスカス形状を説明するために用いられる。その後テストをする溶液が容器内に投入され、希釈剤と混合される。溶液は混合液のメニスカスに未知の影響を及ぼす溶媒タイプであってもかまわず、容量計算はメニスカス形状には影響されない。そのため、この手順は米国特許出願11/305,301に記載された手順よりさらに幅広い範囲の溶媒タイプをテストするオプションを提供している。
【0014】
本発明の第二の手法は、プレートウォッシュ効率を示す結果を提供するプレートウォッシュ効率二重染色測光法である。本手法において、溶液は非常に高濃度で第一の波長の光を吸収するが別の発色団を必要としない第一の発色団(ここにおいて時折染料ともいう)の既知の濃度を含み、また希釈剤は第二の波長の光を吸収する第二の発色団の既知の濃度を含んでいる。この手法は容器への希釈剤投入を含み、希釈剤の量はプレートウォッシャーによる洗浄後に残される量より多い。その後このプレートウォッシャーは希釈剤をウォッシャの吸入口の高さと等しい高さまで吸入し除去するのに使われる。それから希釈剤の吸光度が計測され、容器内の希釈剤高さに対応した光の光路長が測定に利用される。この情報はその後第一の発色団を持つ溶液について、プレートウォッシュ器の希釈効果を測定するのに利用される。
【0015】
第三の手法は複数の希釈プロセスの各希釈ステップを正確に測定するための二重染色測光法である。この手法は容器に溶液を投入し、希釈剤と混合することにより希望する希釈手順を実施することに基づいており、その溶液は第一の発色団及び第二の発色団を備え、その希釈剤は第二の発色団のみを備えている。光度測定は二つの異なる波長で行われる。この手法により得られる測定はシングルあるいはマルチポイント希釈をNISTにまで追跡可能で、2000分の1までの希釈範囲がテスト可能である。この手法は米国特許6,741,365に記載された標準の二重染色MVS(登録商標)法にほぼ同じであるが、一つの溶液を第二の溶液へ投入することで経験される希釈度の測定のさらに精密な手法を提供し、マルチポイント希釈スキームにより非分析物濃度のさらに正確な計算を可能としている。
【0016】
本発明の一つの実施例は、(1)容器に第二波長の光を吸収する希釈剤発色団の既知の濃度を持つ希釈剤を加え、(2)第二波長の希釈剤発色団の吸光度を測定し、(3)容器に、第一波長の光を吸収するサンプル溶液発色団の既知の濃度を含むサンプル溶液であり、希釈剤の発色団を含まないサンプル溶液をある量加え、(4)希釈剤とサンプル溶液を容器内で混合してサンプル溶液と希釈剤の混合物を作り、(5)サンプル溶液と希釈剤の混合物の第一波長及び第二波長での吸光度を測定し、(6)第一波長及び第二波長における吸光度の測定に基づき容器に加えられたサンプル溶液の量を計算する、というステップを含む手法である。サンプル溶液の量を計算するステップは、第二波長における希釈剤の光路長における吸光度に基づいて容器に加えられた希釈剤の容量の第一計算、サンプル溶液を容器に加える前に第二波長における希釈剤発色団の吸光度測定結果を用いて決定された、希釈剤を通過した光の光路長、及び容器の形状を含むこともある。さらに、容器に加えられたサンプル溶液の容量計算のステップはモル吸光係数の変化の説明となる補正係数を含む場合がある。
【0017】
本発明の別の実施例では、(1)サンプル溶液が複数の容器の中の第一容器に収められている際に、サンプル溶液の第一波長における第一の発色団の吸光度及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(2)サンプル溶液の目標容量を複数の容器の中の第一容器から第二容器へ移動、(3)第二容器内のサンプル溶液に目標容量の希釈剤を混合し、希釈剤はサンプル溶液中の第二の発色団とほぼ同等の濃度の第二の発色団を含む、(4)第二容器内の、第一波長における第一の発色団の吸光度及び第二波長における第二の発色団の吸光度の測定、(5)第二容器内のサンプル溶液の希釈率の計算で、希釈率は第二容器内へ混入される希釈剤によるサンプル溶液の希釈範囲を表す、というステップを含む手法が提供される。この手法はさらに、(1)第二容器内の混合液の目標容量を複数の容器中の第三容器へ移動、(2)目標容量の希釈剤を第三容器内の混合液と混合、(3)第三容器内の第一波長における第一の発色団及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(4)第三容器内のサンプル溶液と希釈剤の混合液の希釈率の計算で、希釈率は第三容器内へ混入される希釈剤による、サンプル溶液と希釈剤の混合液の希釈範囲を表す、というステップを含むこともある。
【0018】
この手法はオプション的に、(1)次のステップをさらにX回以上繰り返す i )サンプル溶液と希釈剤の混合液を移動する、ii )希釈剤中で混合、iii )吸光度の測定、ここでXは1以上で、複数の容器の中でサンプル溶液と希釈剤の混合液と希釈剤を含む最後の容器は容器n、先行する容器を容器mとする、(2)容器n中のサンプル溶液と希釈剤の混合液の希釈率の計算で、この希釈率は容器n内へ混入される希釈剤による、サンプル溶液と希釈剤の混合液の希釈範囲を表す、というステップを含むこともある。
【0019】
本発明のさらに別の実施例では、(1)目標容量のサンプル溶液を供給元から容器へ移動、(2)容器内のサンプル溶液に目標容量の希釈剤を混合し、この希釈剤はサンプル溶液中の第二の発色団の既知の濃度と略同等の濃度の第二の発色団を含む、(3)容器内の第一波長における第一の発色団及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(4)供給元からのサンプル溶液の希釈率の計算で、この希釈率は容器内に混合される希釈剤による供給元のサンプル溶液の希釈範囲を表す、というステップを含む手法が提供される。この手法は、(1)目標容量のサンプル溶液と希釈剤の混合液をその容器から第二容器へ移動、(2)目標容量の希釈剤を第二容器へ混合し、この希釈剤はサンプル溶液中の第二の発色団の既知の濃度と略同等の濃度の第二の発色団を含む、(3)容器内の第一波長における第一の発色団及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(4)供給元からのサンプル溶液の希釈率の計算で、この希釈率は全混合ステップを通じ、希釈剤による供給元のサンプル溶液の希釈範囲を表す、というステップを含むこともある。
【0020】
本発明のこの第3の実施例はオプション的に、(1)次のステップをさらにX回繰り返す i )サンプル溶液と希釈剤の混合液を移動する、ii )第二の発色団の既知の濃度の希釈剤をサンプル溶液と希釈剤の混合液へ加える、iii )吸光度の測定、ここでXは1以上で、供給元以外の容器は容器m、供給元の容器を容器0とする、(2)供給元からのサンプル溶液の希釈率の計算で、この希釈率は全混合ステップを通じて希釈剤による、供給元のサンプル溶液の希釈範囲を表す、というオプションのステップを含むこともある。
【0021】
本発明の第4の実施例では、(1)目標容量の第一サンプル溶液を複数の容器の第一セットの第一容器へ加えるステップで、第一サンプル溶液は第一の発色団の第一既知濃度及び第二の発色団の既知濃度を含む、(2)第一の発色団の第二既知濃度及び第二の発色団の既知濃度を含む目標容量の第二サンプル溶液を複数の容器の第二セットの第一容器へ加えるステップで、第二サンプル溶液の第一の発色団の第二既知濃度は第一サンプル溶液の第一の発色団の第一既知濃度より高く、第二セットの第一容器へ加えられる目標容量の第二サンプル溶液は第一セットの第一容器へ加えられる目標容量の第一サンプル溶液と略同等である、(3)以下の手順から成る第一希釈プロトコルを実行する、 ( i )第一セットの第一容器への目標容量の希釈剤の混合で、この希釈剤は濃度が第一サンプル溶液および第二サンプル溶液中の第二の発色団の既知濃度と略同等の第二の発色団を含む、( ii )第一目標容量の希釈剤を第二セットの第一容器へ混合する、( iii )第一セットの第一容器内の、第一波長における第一の発色団の吸光度及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(4)以下の手順から成る第二希釈プロトコルを実行する、( i )第一サンプル溶液と第一セットの第一容器の希釈剤の目標容量の混合液を第一セットの第二容器へ移動、( ii )第二目標容量の希釈剤を第一セットの第二容器へ混合、( iii )第二サンプル溶液と第二セットの第一容器の希釈剤の目標容量の混合液を第二セットの第二容器へ移動、( iv )第二目標容量の希釈剤を第二セットの第二容器へ混合、( v )第二セットの第二容器内の、第一波長における第一の発色団の吸光度及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(5)ステップ3( iii )及びステップ4( v )で実施した吸光度測定に基づく希釈プロトコルの希釈率の計算で、この希釈率は第一希釈プロトコルステップと第二希釈プロトコルステップの間で起こる希釈の範囲を表す、というステップを含む手法が提供される。
【0022】
本発明の第5の実施例では、(1)第一容器内の希釈剤を希釈剤の高さを確定するレベルに置き、希釈剤は第二波長における光を吸光する希釈剤発色団の既知の濃度を含み、第一容器の寸法は既知である、(2)第二波長における第一容器内の希釈剤発色団の吸光度を測定、(3)第一容器内の希釈剤を通過する光の光路長の、測定済み希釈剤発色団の吸光度及び希釈剤発色団の光路長毎の既知の吸光度に基づく計算で、希釈剤を通過する光の光路長は希釈剤の高さに等しい、(4)目標容量のサンプル溶液を第二容器へ加え、サンプル溶液は第一波長における光を吸光するサンプル溶液発色団の既知の濃度を含み、第二容器の寸法は第一容器の既知の寸法に略等しい、(5)洗浄溶液を第二容器へ加え、第二容器から洗浄溶液とサンプル溶液の混合液を少なくともいくらかの量取り出して第二容器内の混合液の高さを確定し、混合液の高さは希釈剤の高さと略等しい、(6)第一波長における第二容器内のサンプル溶液発色団の吸光度を測定、(7)サンプル溶液の第二容器に含まれる希釈率の計算で、希釈率は第二容器へ加えられた洗浄溶液により希釈されたサンプル溶液の範囲を表す、というステップを含む手法が提供される。この手法は第二容器へ洗浄溶液を加え、第二容器から洗浄溶液とサンプル溶液をサンプル溶液の吸光度を測定するステップの前に複数回にわたり少なくともいくらかの量取り出す、という手順の実行について選択肢を含んでいる。あるいは、 i )洗浄溶液を第二容器へ加え、第二容器から洗浄溶液とサンプル溶液を少なくともいくらかの量取り出す、及び、 ii )サンプル溶液発色団の吸光度の測定は引き続き複数回にわたり実施されることもある。
【0023】
本発明のこれら及びその他の特徴並びに効果は、以下の詳細な説明、図面、請求項を見れば明白である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1、2、3において5種類のMVS(登録商標)サンプル溶液それぞれで測定可能なおおよその希釈範囲を示す表。
【図2】本発明の実施例1においてマイクロタイタープレートのそれぞれのコラムに加えられた内容物を定義付ける実験的設計を示す表。
【図3】本発明の実施例1の実験証明を示す表。
【図4】本発明の実施例2を実施して得られたデータを示す表。
【図5】本発明の実施例3において2つのステップ的希釈計算を示す表。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、溶液の希釈による影響を測定するために投与される溶液の容量を正確に測定する、あるいは生じた総希釈量を正確に測定する手法及び関連システムである。本発明の第一のシステム実施例は以下の構成物を含む。(1)複数の液溜めを持ち、それぞれの液溜めの形状は幾何学的寸法が既知であるマイクロタイタープレート、(2)マイクロタイタープレートの液溜めに投与された液体の吸光値を測定するマイクロタイタープレートリーダー、(3)第一波長における光を吸光する第一の発色団の、可変であるが既知の濃度のサンプル溶液(以下「λ1」という)、(4)第二波長における光を吸光する第二の発色団の既知で固定の濃度の希釈剤溶液(以下「λ2」という)。ただし、システムはこれらの構成物を持つものだけに限定されるのではないことを理解されたい。したがって、システムはこれより多くのあるいは少ない構成物を持ち得、また他の構成物をこの第一の実施例の構成物のいずれかあるいはすべての代替物とすることができる。システムの好適な例は援用文献に記載されている。
【0026】
本発明の第一の一次的手法の実施例は以下のステップを含む。1)希釈剤をマイクロタイタープレートの液溜めへ加える、この液溜めの形状は幾何学的寸法が既知である、2)第二波長における液溜め内の第二の発色団の吸光度を測定、3)液溜めにある量のサンプル溶液を加える、このサンプル溶液は第一波長における光を吸光するサンプル溶液発色団の濃度を含む、4)液溜め内の希釈剤とサンプル溶液を混合し、サンプル溶液と希釈剤の混合液を作る、5)第一波長及び第二波長におけるサンプル溶液と希釈剤の混合液の吸光度を測定、6)液溜めに加えられたサンプル溶液の容量を計算する。
【0027】
本発明の手法が基礎とする中核的数学モデルはランベルト・ベールの法則である。簡単に述べると、この法則は光がある濃度の発色団(すなわち染料)を通過した際に、その染色溶液に吸収される光の量が発色団の濃度及び染色溶液による光の相互光路長と比例している。
数学用語では、本法則はこのように書き表す。
【0028】
【数1】

【0029】
ここでAλは特定の波長λにおける発色団の吸光度であり、ελはモル吸光係数として知られる波長λにおける発色団の物理定数であり、lは染色溶液を通過した光の光路長であり、Cは染色溶液中の発色団のモル濃度である。この比例は、測定波長におけるモル吸光係数が既知であり染色溶液を通過した光の光路長が既知あるいは固定である場合に、染色溶液中の発色団の未知濃度の測定に最も一般的に使われる。
【0030】
あるいは、方程式(1)は測定された吸光度が染色溶液を通過した光の光路長と比例していることも表している。モル吸光係数と染色溶液中の発色団の濃度が共に既知であれば、方程式(1)は測光光線により妨害される未知の光路長測定に使用できる。ランベルト・ベールの法則をこのように使うには、モル吸光係数と濃度(C)項を組み合わせると便利である。
【0031】
【数2】

【0032】
ここで新たな項aλは、染色溶液の波長λにおける単位光路長毎の吸光度を表す。
この新たな項を方程式(1)へ代入するとこうなる。
【0033】
【数3】

【0034】
方程式(3)は本発明の手法に使用されるランベルト・ベールの法則の基本形である。
【0035】
記載したとおり、第一の一次的手法の第一ステップはある量の希釈剤(Vd)を液溜めに加えることである。希釈剤の量はサンプル溶液(後に液溜めに加えられる)と希釈剤の総容量が使用するプレートの液溜めに定義された使用容量を超えないように決定される。たとえば、96穴マイクロタイタープレートのそれぞれの液溜めに定義された使用容量は200 μLであり、一方384穴のプレートでのそれぞれの液溜めの容量はわずか55 μLである。
【0036】
希釈剤を投与した後、軌道混合を用いて液溜めの底部表面全体に希釈剤を拡散させ、メニスカスを平坦にする。この拡散はたとえば本発明の装置に備わる混合液を撹拌するための混合器を使うことでも達成可能である。試験中のサンプル溶液が平坦なメニスカスとならない場合、そのメニスカスの曲線は特徴付けておかなければならない。また、吸光度測定は投与される希釈剤により行われるため、液溜め全体に拡散させることは必須であり、さもなければ定量的吸光度測定は実施不可能である。現実には、これは使用する希釈剤容量の総量に下限を設定する必要もあるということである。96穴プレートではこの下限は~ 50 μLである。
【0037】
混合の後、λ2における吸光度(以下「Aλ2」という)が希釈剤を保有するすべての液溜めについて測定される。希釈剤は第二の発色団の既知の濃度を有しているため、λ2における希釈剤(以下「ad」という)の光路長毎の吸光度を特徴付けするためには方程式(2)が使用される。そのため、希釈剤のための既知のadと測定された吸光度Aλ2を方程式(3)に組み込むことにより、希釈剤(ld)を通過した光の光路長はこの方程式を使用して決定することができる。
【0038】
【数4】

【0039】
ldをマイクロタイタープレートの液溜めの既知の幾何学的寸法と組み合わせることにより、各液溜め内の希釈剤の容量が算出できる。希釈剤総容量(Vd)の決定に使用する実際の方程式は使用するマイクロタイタープレート特有の液溜め形状によって決まる。たとえば、一般的に使われる丸型液溜め、平底プレートではVdは逆裁頭円錐形として表される。
【0040】
【数5】

【0041】
ここでDはマイクロタイターの液溜め底部の直径であり、θは側壁のテーパー角度である。Vdを決定するに当たり、同様の式(提示しない)を角型液溜めのマイクロタイタープレートを利用する際に使用できる。
【0042】
希釈剤容量Vdが決定すると、サンプル溶液の容量Vsが希釈剤を有する液溜めに投与される。希釈剤と同様に、方程式(2)に示すとおり、第一の発色団の既知濃度に基づき、サンプル溶液もλ1における光路長毎の特徴的な吸光度(以下「as」という)を有している。本手法の第一実施例において、サンプル溶液は第一の発色団のみを有しており、第二の発色団は有していないことに再度注意されたい。
【0043】
希釈剤を有する液溜めにサンプル溶液を投与後、プレートは好ましくはサンプルと希釈剤の均質な混合物が得られるまで混合され、λ1とλ2の両方において吸光度が測定される。特定の液溜めにおけるサンプル溶液と希釈剤の混合液の総容量は下記により得られる。
【0044】
【数6】

【0045】
各サンプル溶液及び希釈剤それぞれは一つの発色団のみを有しており、またそれぞれの発色団の濃度はサンプル溶液及び希釈剤それぞれにより混合前に既知であるため、混合液の各光路長、λ1及びλ2における測定された吸光度値を表すために、方程式(3)が利用できる。
【0046】
【数7】

【0047】
【数8】

【0048】
ここでlはサンプル溶液と希釈剤の均質な混合物を通過した光の総光路長を示し、項(Vs/VT)及び(Vd/VT)はサンプル溶液及び希釈剤のそれぞれに生じた希釈率に対応している。
【0049】
総光路長lはメニスカス形状及び溶液総容量VTのどちらか、あるいは両方によって決まることに注意することが肝要である。ただし、希釈値の比率を算出するのであれば、算出値はl及びVTとは無関係である。方程式(7)を方程式(8)で割ると、項l及びVTは以下に示すとおり削除されることとなる。
【0050】
【数9】

【0051】
サンプル容量Vsを得るために方程式(9)を解くと以下となる。
【0052】
【数10】

【0053】
希釈剤容量は別のステップで決定されるため、これはそのメニスカス形状の説明が重要である唯一の測定である。別な言い方をすると、希釈剤溶液はマイクロタイタープレートの液溜めに投与される際に比較的平坦なメニスカス、あるいは十分な補正が可能な少なくとも制御された再現可能なメニスカスを有している必要がある。メニスカス形状により溶液が液溜めの理想的な幾何学的形状に適合しなくなるため、そのような補正が必要となる。言い換えると、光度的に測定された溶液光路長は理想的な液溜め形状の高さに適合しなくなり、低過ぎ(凹形メニスカス曲線)または高過ぎ(凸形メニスカス曲線)となるそのようなメニスカス曲線への補正は、重量法により液溜め内の希釈剤容量を測定し、次に測光分析法により容量測定をすることにより実施できる。補正係数はその後、液溜め内の総溶液光路長の機能としての重量法による容量と測光法による容量との差として決定できる。メニスカス曲線を補正する別の方法としては、実際の曲率半径を測定し、液溜めの寸法とメニスカス曲線により定義される、囲まれた幾何学的形状の容量を算出することも可能である。
【0054】
本発明の第一の一次的手法実施例では、サンプル溶液はサンプル溶液と希釈剤の混合液のメニスカスにおいて未知の効果を生み出す溶媒となり得る。メニスカス曲線はいつ希釈剤容量を測定するかによって決まる一方、サンプル容量の算出は方程式(10)で示すとおりメニスカス形状の影響を受けない。
【0055】
第一の一次的実施例は、メニスカスに特徴化されない変化を引き起こすさまざまなタイプのサンプル溶媒に適用可能である一方、対象となる溶媒により生み出される可能性のある他の干渉特性についてはその原因とはならない。たとえば、試験中のサンプル溶液がλ1またはλ2どちらか、あるいは両方において、光を吸光あるいは散乱させるある被分析物濃度を有しているとする。そのような状況では、総容量VT中に存在しているのと同一の濃度の干渉被分析物を有するブランク溶液がそれら両波長においてゼロ表示を集めるために準備、使用される。ブランク溶液がこのように使用される際、このゼロ表示は各波長において無加工の全吸光度測定値より方程式(10)で使用される前に差し引かれる。当業者であればこのような実務は光度測定において一般に行われていることが分かるであろう。
【0056】
時には、第一の一時的手法実施例は対象となる溶媒がサンプル溶液と希釈剤の混合液の発色団のいずれかあるいは両方に与える化学的あるいは物理的変化に影響を受けることもある。たとえば、あるタイプの溶媒はいずれかあるいは両方の発色団に析出を発生させることがあるこの場合、対象となる溶媒に可溶性の別の発色団を使用しなければならない。他の例としては、対象となる溶媒がいずれかあるいは両方の発色団の特徴化されたモル吸光係数(ε)を変化させることもあるこの物理的スペクトル変化を克服するには、方程式(10)に使用された測定吸光度値に補正を加えることができるよう、与えられた変化の大きさを特徴化する必要がある。
【0057】
この後述べるとおり、プレートウォッシュの効率の定量的測定は、試薬の希釈度を測定することにより実施できる。ここに記載する既存の希釈手法及び本発明の手法の第三の一次的実施例は、ユーザーが希釈剤溶液を数百ミリリットル消費する気があれば、この目標を達成するために使用できる。投与チューブを満たすために必要な溶液の量はほとんどの場合200乃至500mLであり、各洗浄ステップではプレート毎に約150乃至250mLが必要となるただしこれはかなりの量で、多くのユーザーは使いたがらない。
【0058】
本発明の第二の一次的手法実施例では、ユーザーが洗浄タンクを希釈剤で満たす必要がない。この第二の実施例は二つの異なる発色団(染色)溶液を使用する。第一染色溶液(たとえば「赤色」染色溶液)は第一波長における光(λ1)を吸光する非常に高濃度における既知濃度の第一の発色団を含むが、他の発色団は一切含まない。第二染色溶液は(たとえば「青色」染色溶液)は第二波長における光(λ2)を吸光する既知濃度の第二の発色団を含む。第一染色溶液が高濃度の第一の発色団を持ち、その高い濃度では無限の吸光度を持つ一方、第二染色溶液は分光光度法で測定可能な吸光度における既知の濃度の第二の発色団を含む。第一の一次的手法の実施例のために先に記載されたサンプル溶液及び希釈剤はこの手法のために不可欠な特性を有しており、本発明の第二の一次的手法をさらに記述するために用いられる。各発色団の濃度は希釈剤及びサンプル溶液それぞれにより既知であり、希釈剤及びサンプル溶液共に方程式(2)で示されるとおり光路長値毎の吸光度により特徴化される。第一の発色団におけるサンプル溶液の光路長毎の吸光度(as)は、第二の発色団における希釈剤と同様既知であり下記により求められる。
【0059】
【数11】

【0060】
【数12】

【0061】
ここで、λ1とλ2は、第一波長における第一の発色団及び第二波長における第二の発色団それぞれを表す。
【0062】
第二の一次的手法実施例は、リキッド・ハンドリング装置(たとえば手持ちピペットや自動リキッド・ハンドラー等)を使い、既知の濃度の第二の発色団の希釈剤をマイクロタイタープレートの液溜めへ投与することを含む。第二の一次的手法実施例に関し、希釈剤の容量はプレートウォッシャーによる洗浄後に残る量より多く、これは溶液の高さがプレートウォッシャーの吸入口の高さより高いことを意味する。その後マイクロタイタープレートはプレートウォッシャーに装てんされ、吸入口が希釈剤の入った液溜めへ挿入される。希釈剤高さは吸入口高さより高いため、吸入口は部分的に希釈剤中に浸されることとなる。その後プレートウォッシャーを利用して希釈剤を溶液高さが吸入口高さと等しくなるまで吸入し、除去する。この時点でマイクロタイタープレートは取り外されてプレートリーダーに挿入され、λ2における希釈剤の吸光度が測定される。このステップから総溶液高さが測定できる。方程式(4)は液溜め内の希釈剤高さ(ld )を測定するために用いられ、この高さはプレートウォッシャーの洗浄工程完了後に残る溶液の高さに等しい。
【0063】
次に別のマイクロタイタープレートにサンプル溶液が投与される。このサンプル溶液は既知の濃度の第一の発色団を有し、方程式(11)に示される光路長毎の吸光度により特徴化される。液溜めに投与するに当たりどのようなタイプの液体投与装置も使用できるが、液溜めに投与する量は分析試験中通常に存在する溶液の量と同量であるべきである。これはテストされる分析試験を模倣すべきステップである。そのため、たとえばELISA分析試験中の洗浄効率がテストされているのであれば、液溜め内のサンプルの量はプレートが洗浄のためにプレートウォッシャーに入れられている際に存在する溶液容量と同じでなければならない。プレートは希望する量のサンプル溶液が投与され、次にプレートウォッシャーに挿入され、希望する洗浄サイクルが実施される。このウォッシュサイクルはサンプル溶液の希釈を発生させ、液体高さが希釈剤テストステップで事前に測定された高さと等しい高さの総溶液容量を残す(ld = lsolution )。
【0064】
マイクロタイタープレートの液溜め内の希釈されたサンプル溶液はその後プレートリーダーにより光度的に測定される。この希釈済みサンプル溶液の光路長毎の吸光度(as,diluted)は下記により算出できる。
【0065】
【数13】

【0066】
ここで溶液光路長ldは希釈剤の投与されたプレートから決定できる。
【0067】
いったんas,dilutedが決定すると、サンプル溶液に実施された希釈範囲の決定によりプレートウォッシュ効率が算定可能となる。この希釈範囲は希釈率として算出でき、ニートであり濃縮されたサンプル溶液の光路長毎の既知の吸光度(as)と洗浄サイクル後に液溜めに残る希釈サンプル溶液の光路長毎の吸光度(as,diluted)を比較することにより決定され、以下の式で表すことができる。
【0068】
【数14】

【0069】
ここでRWEは、ニート対希釈済みサンプル溶液の希釈率であり、プレート洗浄サイクルの洗浄効率の度合いの尺度として扱われる。「ニートであるサンプル溶液」とは非希釈サンプル溶液のことである)
【0070】
方程式(14)は測定した希釈率を希望する希釈レベルと比較することでプレートウォッシュの効率を決定する方法を提供する。理想的なプレートウォッシャーの動作とは、不要な構成物の完全除去をもたらす。ただし、適切な動作とは、最小希釈の観点から表される、ある所定の閾値を越えた不要な試薬のみを除去するものである。本発明の手法の第二の実施例ではそのような希釈閾値に対するプレートウォッシュテストを可能とする。
【0071】
本発明の代替システム実施例においては、システムは次を含む。1)液体体積を保持する液溜めを有するマイクロタイタープレート、2)マイクロタイタープレートの液溜めに投与された溶液の吸光度値を測定するマイクロタイタープレートリーダー、3)λ1における光を吸光する第一の発色団の可変であるが既知の濃度を有するサンプル溶液及びλ2における光を吸光する第二の発色団の固定で既知の濃度を有するサンプル溶液、4)λ2における光を吸光する第二の発色団の既知で固定の濃度を有する希釈剤、5)マイクロタイタープレート混合装置。米国特許6,741,365に記載された標準のMVS法とここに書かれた本発明の手法との間の顕著な差異は、本発明の手法ではマイクロタイタープレートの液溜めの寸法が不要であることに注意されたい。標準のMVS法においてはプレート寸法が容量算出に用いられるため、これは標準のMVS法との重要な違いである。
【0072】
本発明の第三の一次的手法実施例において、ステップは以下の手順を含む。(1)目標容量のサンプル溶液を供給元から容器へ移動、(2)容器内のサンプル溶液への目標容量の希釈剤混合で、希釈剤はサンプル溶液中の第二の発色団の既知濃度と略同等の濃度の第二の発色団を含む、(3)容器内の第一波長における第一の発色団の吸光度及び第二波長における第二の発色団の吸光度を測定、(4)供給元からのサンプル溶液の希釈率算出で、希釈率は供給元のサンプル溶液が容器へ混入される希釈剤により希釈される範囲を表す。第三の一次的実施例の目的は、定義されたターゲットとの比較において各希釈ステップの精度を算出することである。
【0073】
第一の一次的手法実施例と同様、第三の一次的手法実施例が基礎とする中核的数学モデルは、方程式(1)で表されているランベルト・ベールの法則である。各発色団の濃度はそれぞれの溶液において既知であり、サンプル(as)中の第一の発色団及び希釈剤(ad)中の第二の発色団のために方程式(11)及び(12)により定義される。サンプル溶液中の第二の発色団の濃度は希釈剤中の第二の発色団の濃度と等しい値に固定されていることに注意されたい。このため、サンプル及び希釈剤の全溶液の第二の発色団における光路長毎の吸光度は固定であり、adと表すことができる。実際には、サンプル溶液と希釈剤がどのような割合の混合液でも第二の発色団の濃度は同じであり、第一の発色団の濃度は変動することを意味する。これは実質的に第二の発色団を内部標準として使用してよいということである。
【0074】
第三の一次的手法実施例の最初のステップはサンプル溶液体積Vs1の液溜め1への投与、続いて容量Vs2を液溜め1から取り出し、液溜め2へ投与する。
液溜め1に残るサンプル溶液の正味容量(V1)は以下により求められる。
【0075】
【数15】

【0076】
液溜め1中の第一及び第二の発色団の濃度は既知であるため、液体(l1)の深さは第二の発色団の吸光度を測定し、上記の方程式(3)を使って決定することができる。さらに直接的に表すと、液体の深さは以下により求められる。
【0077】
【数16】

【0078】
ここでA1,λ2は第二波長λ2における液溜め1内の測定吸光度を表し、またadは第二の発色団の光路長毎の吸光度である。
【0079】
液溜め1内の第一の発色団の吸光度を求めるベールの法則の式は以下となる。
【0080】
【数17】

【0081】
ここでC1,λ1は第一の発色団の液溜め1内の濃度を示すために使用される。
方程式(11)及び(16)を(17)に代入すると以下のようになる。
【0082】
【数18】

【0083】
次にある容量の希釈剤(Vd2)がすでに液溜め2にあるサンプル溶液容積(Vs2)に加えられる。サンプル溶液と希釈剤は均質となるまで混合され、次にサンプル溶液と希釈剤の混合液の容積Vs3が取り出され、液溜め3に投与される。液溜め2に残る正味容量は以下により求められる。
【0084】
【数19】

【0085】
第二の発色団の濃度が全サンプル溶液及び希釈剤で固定であるため、液溜め2で知られており、溶液深さは第二の発色団の測定吸光度により下記のごとく決定できる。
【0086】
【数20】

【0087】
液溜め2内の第一の発色団の濃度は希釈され、下記により求められる。
【0088】
【数21】

【0089】
ここで(VS2 / VS2+Vd2)は液溜め1から液溜め2へ移動する第一の発色団の希釈係数を表す。
【0090】
液溜め2内の第一の発色団の吸光度を求めるベールの法則の式は下記の通りである。
【0091】
【数22】

【0092】
方程式(11)、(20)、(21)を(22)へ代入すると、以下の誘導方程式となる。
【0093】
【数23】

【0094】
次に第一希釈剤容積(Vd3)が液溜め3にあるサンプル溶液と希釈剤の混合液容積(Vs3)へ加えられる。サンプル溶液と希釈剤の混合液は混合され、次に容積Vs4が取り出され、液溜め4に投与される。液溜め2で発生したとおり、液溜め3の正味容量及び溶液深さは以下の式より求められる。
【0095】
【数24】

【0096】
【数25】

【0097】
液溜め3内の第一の発色団の濃度は(VS3 / VS3+Vd3)の割合で希釈され、次の式により求められる。
【0098】
【数26】

【0099】
液溜め2内の第一の発色団濃度の式を方程式(21)から方程式(26)へ代入すると以下となる。
【0100】
【数27】

【0101】
液溜め3内の第一の発色団の吸光度を求めるベールの法則の式は次となる。
【0102】
【数28】

【0103】
方程式(11)、(26)、(27)を(28)へ代入すると、以下の誘導方程式となる。
【0104】
【数29】

【0105】
上記ステップは液溜め4及びそれ以降の引き続きの解析において計算式を作る際にもそのままたどればよい。
【0106】
この解析の目的は、各ステップにおける希釈率の算出手法を記述することである。液溜め1から液溜め2へ移動する際の希釈率は、以下により定義される。
【0107】
【数30】

【0108】
液溜め2内の第一の発色団の濃度を求める式を方程式(21)から方程式(30)へ挿入すると以下の方程式となる。
【0109】
【数31】

【0110】
液溜め2と比較した液溜め1内の第一の発色団の希釈率を求めるベールの法則の式は、方程式(18)を方程式(23)で割ることにより得られる。
【0111】
【数32】

【0112】
方程式(31)を代入して単純化する。
【0113】
【数33】

【0114】
希釈率を求めるよう式を解く。
【0115】
【数34】

【0116】
同様に、液溜め2から液溜め3へ移動する際の希釈率を求める。
【0117】
【数35】

【0118】
希釈ステップの一般的な方程式は以下により求められる。
【0119】
【数36】

【0120】
これまでに記載した解析は、各液溜めの希釈率が、各液溜め内の第一及び第二の発色団の吸効率を測定することにより求められることを証明している。この解析においては、染料濃度及び液溜め寸法のどちらもが必要とされない点に注目することが重要である。方程式(36)で証明されるとおり、一つの液溜めから別の液溜めへ移動する際の希釈率の算出に必要な量のみが第一及び第二の発色団の測定吸光度値となる。また、別々の液溜めmと液溜めnの間でメニスカス曲線に顕著な差異がない限り、この解析はメニスカス形状とも関係がない。方程式(36)により表される希釈テストの逐次分析の唯一の制限は、両発色団の吸光度値が使用される分光光度計の測定吸光度範囲内でなければならないという点である。言い換えると、この希釈算出が有効であるためには、液溜めm及び液溜めn共に、第一及び第二の両発色団 の吸光度が一次でベールの法則の吸光度範囲内でなければならない。
【0121】
述べてきたとおり、方程式(36)はプロトコルの一連の希釈におけるどの二つの希釈ステップ間における希釈度の算出も可能とするが、これは両発色団の吸光度値が両液溜め内において測定可能範囲内である場合に限られる。この要件は開始時の液溜めと終了時の液溜めとの間に1,000倍以上の希釈を対象とする、一般に用いられる希釈プロトコルに大きな制限をもたらす。上記方法は、両発色団の濃度が既知である限り、そのような制限を克服する手段を提供する。たとえば、液溜め1から液溜め3へ移動する際の希釈率を求めるとする。そのような希釈は次のように表される。
【0122】
【数37】

【0123】
方程式(37)を単純化することで、液溜め1と液溜め3の間の希釈ステップは、液溜め2を測定することなく、直接算出できる。
【0124】
【数38】

【0125】
液溜め1の内容は定義されているため、方程式(18)は方程式(38)に組み込むことができ、以下の式となる。
【0126】
【数39】

【0127】
これはより一般的に表すと、
【0128】
【数40】

【0129】
であり、ここでR0mは第一及び第二の両発色団の既知の濃度を持ち、希釈剤を有する液溜めm内に投与される原料溶液に実施された希釈を参照している。
この希釈算出は、第一の液溜めが両発色団の既知の濃度を有し、第二の液溜めが第一及び第二の両発色団の測定可能な吸光度値をもたらす希釈剤を有する、二つの液溜め間に適用できる。
【0130】
液溜め1に濃縮溶液が投与されている場合、方程式(40)を用いて液溜め1から液溜めmへ移動する希釈率を算出する。ここで液溜め1は非希釈溶液を有する。希釈ステップが非常に多い場合、プレートリーダーの吸光度測定可能範囲を超える高濃縮発色団溶液でステップを開始し、液溜めm内の発色団の濃度を測定可能にする必要があるかもしれない。そのような希釈ステップでも第一及び第二の両発色団の濃度がこの溶液において既知である限り、測定は可能である。そのため、方程式(40)は非常に多くの希釈ステップの精度を算出する手段を提供する。
【0131】
方程式(36)及び(40)は、第三の一次的手法実施例がどう使われて二つの異なるタイプの希釈ステップを測定するかを示している。方程式(36)は、溶液が液溜めmから液溜めnへと希釈されるところの液溜めm及びn内の吸光度値が測定可能となる、より少ない希釈ステップを測定するのに用いられる。方程式(40)は原料溶液が非希釈サンプル溶液である多ステップ希釈の測定のためのものである。方程式(40)の場合、非希釈溶液の光路長値毎の吸光度と共に、液溜めmから得られる吸光度が使用される。
【0132】
第三の一時的手法の使用に際し考えられる別のタイプの希釈プロトコルステップは、各液溜めmまたはnの吸光度が測定不能な多ステップ手法を必要とするものである。方程式(40)により両染料の各光路長値毎の既知の濃度のサンプル溶液を用いてそのようなプロトコルを開始することにより、その第一ステップで希釈率の算出が可能となる。適切な濃度のサンプル溶液を選択することにより、第一希釈ステップにおいて520nm及び730nmの双方で測定可能な吸光度の希釈溶液が生成され、方程式(40)により発生した希釈を正確に算出できる。一方、その後、希釈工程は赤色染料吸光度が小さ過ぎて測定できなくなる第二の大希釈率ステップを必要としたとしてみる。この第二希釈ステップの評価方法は異なるマイクロタイタープレートでこの希釈手法を繰り返すことによるが、より濃縮されたサンプル溶液で始めるものである。その後両プレートからのデータは、液溜めmから液溜めnへ移動する間に発生する希釈ステップの測定に用いられ、次のように定義される。
【0133】
【数41】

【0134】
ここでRminjは実行された希釈プロトコルにおいて液溜めmと液溜めnの間で起きた希釈を参照し、液溜めmのデータはプレートiから採取、液溜めnのデータはプレートjから採取される。方程式(41)を使用するには、同一の希釈プロトコルを異なるプレートで行う必要がある。すなわち、1)プレートiは液溜めm内で測定可能な吸光度となるサンプル溶液を使用、2)プレートjは液溜めn内で測定可能な吸光度となる、異なった、より高濃縮のサンプル溶液を使用する。方程式(41)は、プレートi内の液溜めm及びプレートj内の液溜めnの方程式(40)からの希釈算出の商であることに留意しておくと良い。
【0135】
上記二重染色、二重波長法を用いることにより、希釈体系の全ステップの希釈率が方程式(36)、(40)、(41)を用いて測定可能となる。ただし、すべての希釈がプレートリーダーの測定範囲内に納まるわけではない。この制限を取り払うために、溶液中の発色団の初期濃度は特徴化され、既知である必要がある。また、多ステップ希釈において、一つの原料溶液が全希釈ステップに対応できるものでもない。そのような事象においては、その後の希釈プロトコルの多段ステップに異なる原料濃度の異なる原料溶液が投与される必要がある。ある原料溶液が最初の数ステップを越えると測定可能な吸光度値を示さなくなる一方、別の原料溶液は希釈体系中の複数ステップが経過するまで測定可能な吸光度値を示さない。それにより、異なる原料溶液を使用して希釈手法が実施される場合、各ステップの精度は判定可能となる。
【0136】
多ステップ希釈プロトコルにおける各ステップの精度を完全に理解するには、使用するサンプル溶液の測定可能吸光度範囲を考慮する必要がある。たとえば、各ステップが1:4の希釈からなる4ステップ連続希釈プロトコルを考えてみる。第一の発色団の原料濃度が、略すべての分光光度計で測定可能な吸光度範囲内となる2.5の吸光度を生じると仮定すると、方程式(1)では係数1/64により吸光度は3回目の希釈後には減少となり、これは吸光度値0.039に相当する。そのような微小吸光度が多くの分光光度計で測定可能である一方、そのような微小数値のノイズ成分は顕著となりうる。そのため、この場合に用いられるサンプル溶液はこのプロトコルの希釈ステップの最初の2ステップでのみ測定可能な量を提供する。第一の発色団濃度は分光光度計によりそのような測定が可能であれば、同等濃度75を生じるさらに濃縮されたサンプル溶液のためにプロトコルが繰り返されると仮定する。第一の発色団の吸光度は第一及び第二の希釈ステップが終了した後もなお測定範囲を超える。しかしながら、第三(1:64)及び第四(1:256)希釈ステップの吸光度は1.17及び0.29となるであろう。そのため、このプロトコルは二回に分けて実施される。一回は第一の発色団の初期吸光度が2.5のサンプル溶液を使い、もう一回は第一の発色団の初期吸光度が75のより高濃縮サンプル溶液を使う。各光路長値(as)毎の第一の発色団吸光度が各原料サンプル溶液に対して決定できると仮定して、これら二つの第一の発色団の濃度が異なる別々のサンプル溶液を使用し、また各溶液に対し希釈プロトコルを繰り返すことにより、1:4の連続希釈プロトコル全4ステップを方程式(36)、(40)、(41)を使い、評価することができる。
【0137】
本発明の第三の一次的手法実施例は3つの例を参照してより詳細に記載されるが、それら3例に制限されるものではない。

実施例1
【0138】
実施例1の作業は液体取り扱い器具、具体的にはRainin, 20-200 μL LTSマルチチャンネルピペットの投与精度を判定するために実施された。
【0139】
実施例1の作業には複数のMVS(登録商標) 希釈剤及びサンプル溶液(すなわち、「レンジA」、「レンジB」、「レンジC」、「レンジD」、「レンジE」の各サンプル溶液)の使用が含まれ、それらはメイン州ウェストブルックのArtel,Inc.より一般に販売されている。MVS(登録商標) サンプル溶液には一般的な固定青色染料(発色団)濃縮液及び可変赤色染料(発色団)濃縮液が含まれている。MVS(登録商標) 希釈剤にはMVS(登録商標) サンプル溶液に含まれているのと同じ青色染料が含まれている。サンプル溶液及び希釈剤のそれぞれに含まれる赤色及び青色染料の濃縮液は厳密な品質コントロール工程により知られ、適切に管理されている。
【0140】
MVS(登録商標) 希釈剤及びサンプル溶液は、方程式(11)及び(12)に定義されるとおり、その赤色及び青色染料に対する光路長毎の吸光度により特徴化されている。各MVS(登録商標)サンプル溶液中の赤色染料(as)の光路長毎の既知の吸光度を考慮すると、図1の表は各溶液により実施され得るおおよその希釈範囲を示している。これらの希釈範囲はサンプル溶液及び希釈剤の混合液の測定可能な0.3から2.4の間の吸光度を維持することが基本となっている。各MVS(登録商標) サンプル溶液中のasは大容量重量希釈法により判定される。大容量希釈は各MVS(登録商標) サンプル溶液に対し、小数点以下5桁表示の分析用天秤(Mettler-Toledo, AX205)を用いた重量測定法で行われ、この希釈剤の吸光度は水平ビームUV-Vis分光光度計(Varian, Cary 5000)を用いて既知の光路長を持つキュベット内で行われた。分光光度計の測定範囲内の吸光度を含む正確な重量測定希釈を行うことで、高濃縮のMVS(登録商標)サンプル溶液等価物as値が判定された。
【0141】
200μLの未希釈(ニート)MVS(登録商標) サンプル溶液が試験中のマルチチャンネルピペットからSBS標準の96穴マイクロタイタープレート(Costar 3631)の第一列へ投与された。100μLのサンプル溶液がマルチチャンネルピペットにより第一列の各液溜めから吸引され、サンプル溶液のこれらアリコートはそれぞれ第二列の別の液溜めへ投与された。この第二列の液溜めには100μLのMVS(登録商標) 希釈溶液が投与されていた。第二列の各液溜めの内容物は100μLを3回吸引及び投与することにより混合された。第二列の各液溜めから67μLが吸引され、希釈剤とサンプル溶液のこれら各混合液は第三列に投与された。この第三列には133μLのMVS(登録商標) 希釈剤が投与されており、第三列の全液溜めの内容物に対し、同様の混合ステップが繰り返された。図2の表に示されるように、異なる容量の希釈剤とサンプル溶液の混合液が各列の液溜めに投与される以外、このプロセスは第三列から第七列まで続けられた。溶液が投与された各液溜めの吸光度はマイクロタイタープレートリーダ(Bio-Tek Instruments, ELx800nb)により520nmと730nmで測定された。
【0142】
5つのサンプル溶液すべてにおいてこのプロトコルが用いられた。これは5枚のマイクロタイタープレートが各MVS(登録商標)サンプル溶液に1枚ずつ用意されたということである。5つすべてのMVS(登録商標)サンプル溶液は、定義されたプロトコルの各ステップにおいて測定可能な吸光度を確保し、図2の表中で定義された多ステップ希釈ステップの個別ステップをテスト可能とするために用いられた。
【0143】
図3の表は定義された希釈プロトコルを実行時のマルチチャンネルピペットの動作を要約したものであり、この実験プロトコルに用いられた5枚すべてのプレートから集められたデータから成っている。平均希釈率の誤差は、n=8つの各列の液溜めの平均希釈に基づき報告される。測定された希釈誤差は標的希釈と対比して次の式で算出された。誤差=(測定値−標的値)/標的値。ここでは平均誤差のみが報告される一方、吸引/投与口間ベースの誤差も判定され、これによりマルチチャンネルピペットのチャンネル間再現性の分析が可能となる。
【0144】
誤差の算出は、方程式(34)を使った希釈率算出に基づいている。図3の「総希釈の誤差」は第一列に対する特定の列の全体希釈率と関連のあるエラーを表し、方程式(38)からの希釈率を用いて算出されている。
【0145】
実施例1は、本発明の第三の一次的手法実施例を用いることにより、可変ステップ希釈プロトコルの各ステップの精度が判定できることを示している。さらにMVS(登録商標)サンプル溶液を使用すると、収集されたデータにより想定された1:2000の終点希釈率が達成可能であることが示される。実のところ、レンジE溶液の許容吸光度範囲を0.19まで引き下げると、測定可能希釈率はおよそ1:3000にまで広がる。吸光度0.19はほとんどの分光光度計で測定可能ではあるが、測定中のノイズは無視できない。
【0146】
蛍光ベースの手法により1:10,000を越える希釈率のテストが可能となったが、MVS(登録商標)サンプル溶液が対象とする範囲は多くの一般的に実施されている希釈分析試験のテストを可能とするべきである。より高いモル吸光係数を備える染料が用いられる場合、テスト可能な希釈範囲は著しく広がる。たとえば、多くのヘムポルフィリンは100,000M-1cm-1を超えるモル吸光係数(ε)を備えており、これはMVS(登録商標)サンプル溶液中に使用されている赤色染料におけるεの5倍の大きさである。そのような染料を使用すると、この吸光度ベースの手法ではテスト可能な希釈幅はほぼ1:10,000へと増加する。
【0147】
この手法の結果は、i ) 液溜めサイズ、ii ) 液溜めの形状、iii ) 液溜めの材質、iv ) メニスカスとエアポケット、溶液とプレート素材の間の交互作用効果等を含むいくつかの要素とは、光線が遮断されないかぎり独立している点に注意されたい。また、このプロセスは希釈ベースのすべての手法と同様、混合の徹底に大きく依存している点にも注意されたい。希釈スキーマ、光分析あるいは蛍光分析測定に基づくどのような分析試験も、最高の能力を発揮するにはそれ単独で評価される完璧な混合が必要である。

実施例2
【0148】
実施例2のプロセスは実施例1に記載されたMVS(登録商標)希釈剤及びサンプル溶液が複数使用され、図4の表中に代表形態で要約されている。一般的に、200μLの未希釈(ニート)MVS(登録商標)サンプル溶液が96穴プレートの第一列の各液溜め(すなわち全部で8個の液溜めに)に投与された。実施例1のマルチチャンネルピペットを使用して100μLのサンプル溶液が第一列の各液溜めから吸引され、あらかじめ100μLの希釈溶液が投与された第二列の対応する液溜めに投与された。その後第二列の液溜めの内容物は100μLの吸引及び投与を3回繰り返すことで混合された。第二列の各液溜めの内容物100μLが吸引され、あらかじめ100μLの希釈溶液が投与された第3列の対応する液溜めに投与された。その後第3列においても混合ステップが繰り返された。これらステップはプレート上を移動しながら各液溜めにおいて1:2の希釈ステップとなるよう繰り返された。第12列(すなわち液が投与されたプレートの最後の列)から吸引された100μLのサンプルは不要なので切捨てとした。次にプレートはオービタルシェーカーにかけられ、1300rpmで1分間混合された。同一のプロトコルが計5つのMVS(登録商標)サンプル溶液に対し、それぞれ新たなプレートを使用して実施された。これら5つのMVS(登録商標)サンプル溶液は、維持された吸光度反応により微量測定が可能なように濃度が高くなっている(すなわち「レンジA」から「レンジE」にかけて)ため、すべての希釈ステップがテスト及び測定できるようになっていた。
【0149】
既知の濃度のMVS(登録商標)サンプル溶液に基づき、吸光度反応を0.3から2.4吸光度単位の間に維持しながら以下の希釈範囲が可能であった。1)レンジA=1から1/4希釈、2)レンジB=1/4から1/20希釈、3)レンジC=1/20から1/100希釈、レンジD=1/100から1/400希釈、5)レンジE=1/400から1/2000希釈。
【0150】
計5つのサンプル溶液は1:2希釈を96穴マイクロタイタープレート全体にかけて実行することにより、ニート状態から始まる分析を受けた。それぞれのプレートには各溶液が投与された。上記の通り、各希釈には適したサンプル溶液が使われ、算出された溶液の希釈範囲に基づく適切な希釈反応が確保された。平均値についてはここで報告されている。ただし、吸引/投与口間ベースの誤差が測定され、図4の表中「%CV吸引/投与口間」で表示されているチャンネル間の再現性分析が可能となっている。「原料溶液からの誤差」は、方程式(38)で算出された第一列の初期投与と特定の列についての全体希釈率に付随するエラーを表している。「移動による誤差」は方程式(34)で算出したように1つの列から次の列へ移動することの不確実性を示している。実施例2は、本発明の第三の一次的手法実施例を用いることで、1:2000終点率までの連続希釈プロトコルの各ステップにおける精度の判定が可能であることを示している。

実施例3
【0151】
実施例3では方程式(36)及び(41)で提示される二つの段階的希釈算出が実証され、図5の表に示されている。実施例3の手法は、マイクロタイタープレート上で一つの液溜めから次の液溜めへ移動して希釈する前2例と同じやり方では実施されなかった。そうではなく、希釈に付随するエラーを最小限にとどめるため、MVSレンジCサンプル溶液による重量測定希釈が行われた。ここでは3つの希釈が重量測定法により行われた。第一の希釈はレンジCの1:20倍希釈で、希望する量のレンジCを測定してボトルに投入し、次に希望する量のMVS希釈剤を測定して投入することにより行われた。構成物は混合された。混合後、混合済みサンプル溶液の1:2希釈が重量測定法により実施されて新たなボトルに入れられ、構成物は混合された。第三の1:2希釈がさらに別のボトル内で実施された。これによりレンジCの1:20、1:40、1:80という三つの希釈が行われた。
【0152】
レンジCの三つの希釈液はそれぞれ3枚の96穴マイクロタイタープレートの全液溜めにマルチチャンネルピペットにより投与され、レンジCの各希釈液が個々のプレートに含まれるようにされた。各液溜めに投与された各希釈液の総容量は200μLであった。全液溜めに投与後、3枚のプレートはそれぞれオービタルミキサーにより混合された。その目的は溶液のメニスカスを均等に広げることにあった。混合後、各プレートの全液溜めの吸光度が520nm及び730nmにおいて測定された。
【0153】
各プレートの希釈ステップは図5の表に示されたとおり、方程式(36)及び(41)を用いて算出された。前述の実施例と異なり、方程式(36)により算出された段階的希釈はあるプレートの一つの列と同じプレートの別の列との測定吸光度の比較を含まなかった。代わりに各プレートの96の液溜めすべての平均吸光度が算出され、一つのプレートから次のプレートへの段階的希釈が算出された。
【0154】
この例で注目すべき重要な点は次の通りである。1)レンジCの最初の1:20希釈ステップは、図1で示すとおり、レンジCサンプル溶液の吸光度が高すぎて直接測定することができず、方程式(36)を使った測定ができない。ただし、この1:20希釈ステップは、予想されるとおり、方程式(41)により測定可能である。2)方程式(36)及び(41)で示された段階的希釈手法の直接比較は可能であり、この中で行われる実験と等価であるべきである。そのデータはこれら二つの計算が等価であることを示し、両手法の有効性を示している。
【0155】
本願発明はまたひとつあるいはそれ以上の形態のキットで具現される。この本願発明のキットは、本発明のシステムの1つあるいはそれ以上の構成要素を含む。たとえば、そのキットはサンプル溶液、希釈剤、第一発色団、第二発色団、希釈剤発色団、サンプル溶液発色団、マイクロタイタープレート、容器を含むものとすることができる。そのキットが希釈剤、第一発色団第二発色団、希釈剤発色団、サンプル溶液発色団を含み、さらにマイクロタイタープレートまたは容器を含む場合、含まれる希釈剤、第一発色団、第二発色団、希釈剤発色団、サンプル溶液発色団はマイクロタイタープレートあるいは容器に包含されたものとすることができる。
【0156】
さらに、キットはここに記載された1つあるいはそれ以上のシステムまたは記載された手法のステップを実行するのに適した他のシステムを用いる、ここに記載された1つあるいはそれ以上の手法を実施する指示を含む。本願発明のキットはさらにコンピュータで読み取り可能なメディアに記録されたコンピュータで実行可能なソフトウエアを含むこともできる。このソフトウエアは ここに記載された1つあるいはそれ以上の計算ステップ、または記載された1つあるいはそれ以上のステップを自動実行可能とすることができる。
【0157】
たとえば、コンピュータで実行可能なソフトウエアは明白に具現化されたコンピュータで読み取り可能な信号をコンピュータで読み取り可能なメディアに含み、その信号は本発明の手法を実施することで得られるデータの処理についての指示を定義している。そのような指示はJava(登録商標)、XML、ビジュアルベーシック、CまたはC++、フォートラン、パスカル、エッフェル、ベーシック、コボル等といったプログラミング言語のいずれか、あるいはそれらをさまざまに組み合わせて書くことができる。そういった指示が書き込まれるコンピュータで読み取り可能なメディアはコンピュータシステムの中央演算処理装置と互換性を持つ。さらに、データ処理のステップは二者択一、平行、逐次実行が可能である。
【0158】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、これら手法、システム、キットにはさまざまな変更が可能である。たとえば、これら手法のステップは異なる順序にて実施でき、1つあるいはそれ以上のステップが省略でき、1つあるいはそれ以上のステップを代替形態に置き換えることができる。それゆえ、他の実施例についても本出願において提出されている請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内のサンプル溶液の液量を測定する方法であって、前記容器は底部と既知の容量を備え、前記方法は次のステップから成る。
a. 第一波長の光を吸収する発色団の濃度は既知である希釈剤を容器に投入する、
b. 第一波長における希釈剤の発色団の吸収を測定する、
c. ある容量の前記サンプル溶液を容器に加えるが、ここで前記サンプル溶液は第一波長の光を吸光する既知の濃度サンプル溶液発色団を含み、前記サンプル溶液は前記希釈剤発色団を含まない、
d. 前記希釈剤と前記サンプル溶液を前記容器内で混合し、前記サンプル溶液と前記希釈剤の混合液を生成する、
e. 前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液の吸光度を第一波長及び第二波長において測定する、
f. 前記容器に加えられた前記サンプル溶液の容量を第一波長及び第二波長において測定された吸光度に基づき算出する。
【請求項2】
前記サンプル溶液の容量を算出するステップは、第二波長における前記希釈剤の光路長毎の吸光度に基づく前記容器に加えられた前記希釈剤の容量、前記容器に前記サンプル溶液を加える前に第二発色団において測定した前記希釈剤発色団の吸光度を用いて判定した前記希釈剤を通過した光の前記光路長、容器の寸法、を算出するステップを含む請求項1の手法。
【請求項3】
前記容器に加えられた前記サンプル溶液の容量を算出するステップは方程式
【数1】

の利用を含み、(Vs)は容器に加えられたサンプル溶液の容量、(Vd)は容器に加えられた希釈剤の容量、(ad)は希釈剤中の希釈剤発色団の光路長毎の吸光度、(as)はサンプル溶液中のサンプル溶液発色団の光路長毎の吸光度、(Aλ1)は容器内で測定された第一波長における第一発色団の吸光度、(Aλ2)は容器内で測定された第二波長における第二発色団の吸光度である請求項2の手法。
【請求項4】
前記容器はマイクロタイタープレートの液溜めである請求項1の手法。
【請求項5】
前記希釈剤は、前記希釈剤が容器に加えられた後、容器の底略全面に渡り拡散された請求項1の手法。
【請求項6】
前記拡散は容器を振動させることにより成される請求項5の手法。
【請求項7】
容器に加えられたサンプル溶液の容量を算出するステップはモル吸光係数の変化の主原因となる補正係数を含む請求項1の手法。
【請求項8】
複数の容器を用いる希釈中のサンプル溶液の希釈を測定する手法であって、前記サンプル溶液は第一波長における光を吸光する第一発色団及び第二波長における光を吸光する第二発色団を含み、次のステップから成る。
a. 前記サンプル溶液中の第一波長における第一発色団の吸光度及び第二波長における第二発色団の吸光度の測定であって、前記サンプル溶液は複数の容器の中の第一容器に含まれている、
b. 目標容量の前記サンプル溶液を前記第一容器から複数の容器の中の第二容器に移動する、
c. 前記第二容器中の前記サンプル溶液への目標容量の希釈剤の混合であって、前記希釈剤は前記サンプル溶液中の第二発色団の濃度と略同等の濃度を持つ第二の発色団を含む、
d. 前記第二容器中の第一波長における第一発色団の吸光度及び第二波長における第二発色団の吸光度を測定し、
e. 前記第二容器中の前記サンプル溶液の希釈率算出であって、前記希釈率は前記サンプル溶液が前記第二容器内に混合される希釈剤により希釈される範囲を表す。
【請求項9】
希釈率の算出は方程式
【数2】

を含み、ここで(A1,λ1)は前記第一容器中の第一波長における第一発色団の吸光度、(A2,λ1)は前記第二容器中の第一波長における第一発色団の吸光度、(A1,λ2)は前記第一容器中の第二波長における第二発色団の吸光度、(A2,λ2)は第二容器中の第二波長における第二発色団、(R12)は希釈率である請求項8の手法。
【請求項10】
次のステップをさらに含む請求項8の手法。
a. 目標容量の第二容器内の前記混合液を前記第二容器から複数の容器の中の第三容器に移動する、
b. 前記第三容器内の前記混合液に目標容量の希釈剤を混合する、
c. 前記第三容器中の第一波長における第一発色団の吸光度及び第二波長における第二発色団の吸光度を測定し、
d. 前記第三容器中の前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液の希釈率算出であって、前記希釈率は前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液が前記第三容器内に混合される前記希釈剤により希釈される範囲を表す。
【請求項11】
次のステップをさらに含む請求項10の手法。
a. 次のステップをさらにX回以上繰り返す。 i )前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液を移動する、ii )希釈剤中で混合、iii )吸光度の測定、ここでXは1以上で、複数の容器の中で前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液と前記希釈剤を含む最後の容器は容器n、先行する容器を容器mとする、
b. 容器n中のサンプル溶液と希釈剤の混合液の希釈率の計算で、この希釈率は容器n内へ混入される希釈剤による、サンプル溶液と希釈剤の混合液の希釈範囲を表す。
【請求項12】
請求項11の手法であって、容器n内の前記希釈剤と混合後の容器m内の前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液の希釈率の算出ステップは次の方程式を含む。
【数3】

ここで(Rmn)は容器n内の前記希釈剤と混合後の容器m内の前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液の希釈率、(Am,λ1)は容器m内で測定された第一波長における第一発色団の吸光度、(An,λ1)は容器n内で測定された第一波長における第一発色団の吸光度、(Am,λ2)は容器m内で測定された第二波長における第二発色団の吸光度、(An,λ2)は容器n内で測定された第二波長における第二発色団の吸光度である。
【請求項13】
希釈剤により希釈されるサンプル溶液の希釈を測定する手法であって、前記サンプル溶液は第一波長における光を吸光する既知の濃度の第一発色団及び第二波長における光を吸光する既知の濃度の第二発色団を含み、次のステップから成る。
a. 目標容量の前記サンプル溶液を供給元から容器へ移動、
b. 前記容器内の前記サンプル溶液への目標容量の希釈剤の混合であって、前記希釈剤は前記サンプル溶液中の第二発色団の既知の濃度と略同等の濃度を持つ第二の発色団を含む、
c. 前記容器中の第一波長における第一発色団の吸光度及び第二波長における第二発色団の吸光度を測定し、
d. 前記供給元からの前記サンプル溶液の希釈率算出であって、前記希釈率は前記供給元の前記サンプル溶液が前記容器内に混合される希釈剤により希釈される範囲を表す。
【請求項14】
次のステップをさらに含む請求項13の手法。
a. 目標容量の前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液を前記容器から第二容器に移動する、
b. 前記第二容器内への目標容量の前記希釈剤の混合であって、前記希釈剤は前記サンプル溶液中の第二発色団の既知の濃度と略同等の濃度を持つ第二の発色団を含む、
c. 前記第二容器中の第一波長における第一発色団の吸光度及び第二波長における第二発色団の吸光度を測定し、
d. 前記供給元からの前記サンプル溶液の希釈率算出であって、前記希釈率は前記供給元の前記サンプル溶液が全混合ステップを通じて前記希釈剤により希釈される範囲を表す。
【請求項15】
次のステップをさらに含む請求項14の手法。
a. 次のステップをさらにX回以上繰り返す。 i )前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液を移動する、ii )前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液に既知の濃度の第二発色団の前記希釈剤を加える、iii )吸光度の測定、ここでXは1以上で、供給元以外の容器は容器m、供給元の容器は容器0として表される、
b. 前記供給元からの前記サンプル溶液の希釈率算出であって、前記希釈率は前記供給元の前記サンプル溶液が全混合ステップを通じて前記希釈剤により希釈される範囲を表す。
【請求項16】
容器m内の前記希釈剤を加えた後の容器0の前記サンプル溶液希釈率の算出ステップは方程式
【数4】

の使用を含み、ここで(R0m)は全希釈添加後の容器0の前記サンプル溶液の希釈率、(ad)は前記希釈剤中の第二波長における第二発色団の光路長毎の吸光度、(as)は前記サンプル溶液中の第一波長における第一発色団の光路長毎の吸光度、(Am,λ1)は容器m内で測定される第一波長における第一発色団の吸光度、(Am,λ2)容器m内で測定される第二波長における第二発色団の吸光度、である請求項15の手法。
【請求項17】
サンプル溶液及び希釈剤を用いた希釈プロトコルの実施により得られる希釈の測定手法であって、前記サンプル溶液は第一波長における光を吸光する第一発色団及び第二波長の光を吸光する既知の濃度の第二発色団を含み、前記手法は次のステップから成る。
a. 複数の容器の第一セットの第一容器に目標容量の第一サンプル溶液の添加であって、前記第一サンプル溶液は第一既知濃度の前記第一発色団及び既知濃度の前記第二発色団から成る、
b. 前記複数の容器の第二セットの第一容器に第二既知濃度の前記第一発色団を含む目標容量の第二サンプル溶液及び前記既知濃度の前記第二発色団の添加であって、前記第二サンプル溶液の前記第二既知濃度の前記第一発色団は前記第一サンプル溶液の前記第一既知濃度の前記第一発色団より高濃度であり、前記第二セットの前記第一容器に加えられた前記第二サンプル溶液の前記目標容量は、前記第一セットの前記第一容器に加えられた前記第一サンプル溶液の前記目標容量と略同等であり、
c. 以下のステップから成る第一希釈プロトコルを実施。
1.前記第一セットの前記第一容器への目標容量の希釈剤混合で、前記希釈剤は前記第一サンプル溶液および前記第二サンプル溶液中の前記既知濃度の前記第二発色団と略同等濃度の前記第二発色団を含む
2.前記第二セットの前記第一容器に前記第一目標容量の前記希釈剤を混合
3.前記第一セットの前記第一容器中の、前記第一波長における前記第一発色団の吸光度及び前記第二波長における前記第二発色団の吸光度を測定
d. 以下のステップから成る第二希釈プロトコルを実施。
1.前記第一セットの前記第一容器の、前記第一サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液の目標容量を前記第一セットの第二容器へ移動
2.前記第一セットの前記第二容器内へ第二目標容量の前記希釈剤を混合
3.前記第二セットの前記第一容器の、前期第二サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液の目標容量を前記第二セットの第二容器へ移動
4.前記第二セットの前記第二容器内へ第二目標容量の前記希釈剤を混合
5.前記第二セットの前記第二容器中の、前記第一波長における前記第一発色団の吸光度及び前記第二波長における前記第二発色団の吸光度を測定
e. ステップc.3.及びステップd.5.で行った吸光度測定に基づく前記希釈プロトコルの希釈率算出であって、前記希釈率は前記第一希釈プロトコルステップと前記第二希釈プロトコルステップの間に起こる希釈の範囲を表す。
【請求項18】
希釈率の算出は方程式
【数5】

を含み、ここで(R'12)は前記第二希釈プロトコルステップ完了後に得られる前記希釈率を表し、(as1)は前記第一サンプル溶液中の前記第一波長における前記第一発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(as2)は前記第二サンプル溶液中の前記第一波長における前記第一発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(ad1)は前記第一セットの前記希釈剤中の前記第二波長における前記第二発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(ad2)は前記第二セットの前記希釈剤中の前記第二波長における前記第二発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(A1,λ1)は前記第一セットの前記第一容器中で測定された、前記第一波長における前記第一発色団の前記吸光度であり、(A1,λ2)は前記第一セットの前記第一容器中で測定された、前記第二波長における前記第二発色団の前記吸光度であり、(A2,λ1)は前記第二セットの前記第二容器中で測定された、前記第一波長における前記第一発色団の前記吸光度であり、(A2,λ2)は前記第二セットの前記第二容器中で測定された、前記第二波長における前記第二発色団の前記吸光度である、請求項17の手法。
【請求項19】
次のステップをさらに含む請求項17の手法。
a. 次のステップをさらにX回以上繰り返す。 i )前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液を前記第一セット及び前記第二セットそれぞれにおいて次の容器に移動する、 ii )次の容器中に目標容量の前記希釈剤を混合、iii )前記第一発色団及び前記第二発色団の吸光度の測定、ここでXは1以上で、最後の希釈プロトコルステップは希釈プロトコルステップn、先行する希釈プロトコルステップを希釈プロトコルステップmとする、また希釈プロトコルステップm完了後の前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液を含む前記第一セット及び前記第二セットの容器は容器mとし、希釈プロトコルステップn完了後の前記サンプル溶液と前記希釈剤による前記混合液を含む前記第一セット及び前記第二セットの容器は容器nとし、
b. 希釈プロトコルステップm及び希釈プロトコルステップn完了後に行う吸光度測定に基づく前記希釈プロトコルの希釈率算出であって、前記希釈率は希釈プロトコルステップmと希釈プロトコルステップnの間に起こる希釈の範囲を表す。
【請求項20】
希釈率の算出は方程式
【数6】

を含み、ここで(Rminj)は希釈プロトコルステップn完了後に得られる前記希釈率を表し、(asi)は前記第一サンプル溶液中の前記第一波長における前記第一発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(asj)は前記第二サンプル溶液中の前記第一波長における前記第一発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(adi)は前記第一セットの前記希釈剤中の前記第二波長における前記第二発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(adj)は前記第二セットの前記希釈剤中の前記第二波長における前記第二発色団の光路長毎の前記吸光度であり、(Ami,λ1)は前記第一セットの容器m中で測定された、前記第一波長における前記第一発色団の前記吸光度であり、(Ami,λ2)は前記第一セットの容器m中で測定された、前記第二波長における前記第二発色団の前記吸光度であり、(Anj,λ1)は前記第二セットの容器n中で測定された、前記第一波長における前記第一発色団の前記吸光度であり、(Anj,λ2)は前記第二セットの容器n中で測定された、前記第二波長における前記第二発色団の前記吸光度である、請求項19の手法。
【請求項21】
前記希釈剤の前記第一目標容量と前記希釈剤の前記第二目標容量が等しくない請求項17の手法。
【請求項22】
次のステップを含むプレート洗浄効率の測定法。
a. 希釈剤の希釈高さを達成するレベルまでの第一容器への投与であって 、前記希釈剤は第二波長における光を吸光する既知濃度の希釈剤発色団を含み、前記第一容器の寸法は既知である、
b. 前記第二波長における前記第一容器中の前記希釈発色団の前記吸光度を測定、
c. 前記希釈剤発色団の前記測定吸光度及び前記希釈剤発色団の光路長毎の既知の吸光度に基づく、前記第一容器中の前記希釈剤を通過した光の光路長の算出であって、前記希釈剤を通過した光の前記光路長は前記希釈剤高さに等しい、
d. 第二容器への目標容量のサンプル溶液添加であって、前記サンプル溶液は第一波長における光を吸光する既知濃度のサンプル溶液発色団を含み、前記第二容器の寸法は第一容器の前記既知寸法と略同等である、
e. 前記第二容器内で混合液高さを達成するための前記第二容器への洗浄溶液の添加及び前記第二容器からの前記洗浄溶液及び前記サンプル溶液の混合液の除去であって、前記混合液高さは前記希釈剤高さと略同等である、
f. 前記第一波長における前記第二容器中の前記サンプル溶液発色団の前記吸光度の測定、
g. 前記第二容器に含まれる前記サンプル溶液の希釈率の算出であって、前記希釈率は前記第二容器に加えられる洗浄溶液により前記サンプル溶液が希釈される範囲を表す。
【請求項23】
前記サンプル溶液と前記洗浄溶液による前記混合液中の前記サンプル溶液の前記希釈率の算出ステップは方程式
【数7】

を含み、ここで(RWE)は前記サンプル溶液と前記洗浄溶液による前記混合液中の前記サンプル溶液の前記希釈率、(as)は前記洗浄溶液を加える前の前記サンプル溶液の光路長毎の前記吸光度、(as, diluted)は前記サンプル溶液と前記洗浄溶液による前記混合液中の前記サンプル溶液の光路長毎の前記吸光度、である請求項22の手法。
【請求項24】
前記方程式に用いられる光路長毎の前記吸光度は前記サンプル溶液発色団及び前記混合液高さの測定吸光度を元に判定される、請求項23の手法。
【請求項25】
前記第一容器及び前記第二容器はマイクロタイタープレートの液溜めである請求項23の手法。
【請求項26】
前記第二容器への洗浄溶液の添加及び前記第二容器からの少なくともいくらかの量の前期洗浄溶液及び前記サンプル溶液の除去は、前記サンプル溶液発色団の吸光度測定ステップが実施される前に複数回実施される、請求項23の手法。
【請求項27】
ステップ i )前記第二容器へ洗浄溶液を添加及び前記第二容器から少なくともいくらかの量の前記洗浄溶液及び前記サンプル溶液の除去、ii )前記サンプル溶液発色団の吸光度測定は複数回連続して実施される、請求項23の手法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−503859(P2010−503859A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528312(P2009−528312)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/020036
【国際公開番号】WO2008/033521
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(504226065)アーテル インク (1)
【Fターム(参考)】