説明

定電圧供給回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は定電圧供給回路に関し、特に、電源電圧が比較的低い直結回路で構成される集積回路に用いられる定電圧供給回路に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の定電圧供給回路の一例の回路図を図3に示す。この回路は、図に示すように、NPNバイポーラトランジスタ(以後単にトランジスタと記す)Q1 とNPNトランジスタQ2 のエミッタを共通に接続し、この接続点に第1の定電流源1を接続すると共に、NPNトランジスタQ1 のコレクタとNPNトランジスタQ2 のベース・コレクタに1:1のカレントミラー回路2を接続した構成となっている。この回路では、NPNトランジスタQ1 のベースが入力端子3になっており、NPNトランジタQ2 のベースが出力端子4になっている。
【0003】上述の従来の定電圧供給回路は、以下のように動作する。図3において、入力端子3への入力電圧をVi とし、NPNトランジスタQ1 のベース・エミッタ間電圧をVBE1 、NPNトランジスタQ2 のベース・エミッタ間電圧をVBE2 とすると、出力端子4に出力される出力電圧VO は下記の(1)式で与えられる。
O =Vi −VBE1 +VBE2 (1)
ここで、第1の定電流源1の電流値を2・iとすると、
【0004】


【0005】となる。
【0006】次に(2)式より、入出力間電圧ΔVは下記の(3)式で与えられる。
【0007】


【0008】ここで、(3)式において、温度が室温であると仮定してVT=26mVとすると、iO =iの時、ΔVは約−29mVとなる。また、iO =1.5iの時には、ΔVは約−50mVとなる。
【0009】尚、この従来の定電圧供給回路では、出力電流iO の範囲は、2i>iO >−2iでなければならない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の定電圧供給回路は、低電圧(例えば5V)の電源電圧で直結回路を用いるような集積回路などでは、周波数特性が安定で出力端子の動作点がずれないので、よく使われるものである。しかしながら、この回路は、(3)式から分るように、出力電流iO の変化に対する入出力間電圧ΔVの変化が比較的大きい。又、第1の定電流源1の電流値2・iより大きな出力電流を流すことができない。
【0011】従って、従来の定電圧供給回路では、出力端子4に接続される負荷としては、バイポーラトランジスタのベースなどの入力インピーダンスの大きいものに限られてしまう。
【0012】本発明は、上述のような従来の低電圧供給回路の欠点を解決するためになされたものであって、出力電流iO の変化による入出力間電圧ΔVの変化が少なく、しかも、出力電流iO の大きさが定電流源の電流の大きさに制限されることのない低電圧供給回路を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の定電圧供給回路は、エミッタが共通に接続された同一導電型の第1のバイポーラトランジスタ及び第2のバイポーラトランジスタと、ベースが第1のバイポーラトランジスタのコレクタに接続され、コレクタが第2のバイポーラトランジスタのベース及びコレクタに接続された、前記バイポーラトランジスタとは異なる導電型の第3のバイポーラトランジスタと、第1のバイポーラトランジスタのエミッタ及び第2のバイパーラトランジスタのエミッタに接続された第1の定電流源と、第1のバイポーラトランジスタのコレクタ及び第3のバイポーラトランジスタのベースに接続された第2の定電流源とを含み、第1の定電流源が、第2の定電流源のほぼ2倍の電流を供給することを特徴とする。
【0014】
【実施例】次に、本発明の最適な実施例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明による定電圧供給回路の動作を説明するための基本回路図であり、図2は、本発明の一実施例の具体的な回路図である。
【0015】本実施例が図3に示す従来の定電圧供給回路と異なるのは、NPNトランジスタQ1 のコレクタに接続された第2の定電流源5と、PNPトランジスタQ3 を設けた点である。
【0016】PNPトランジスタQ3 は、ベースがNPNトランジスタのコレクタに接続され、コレクタがNPNトランジスタQ2 のベース・エミッタに接続されている。エミッタは高位電源端子6に接続されている。
【0017】又、第2の定電流源5の電流値は、第1の定電流源1の電流値の約半分の値に設定されている。
【0018】図1において、第1の定電流源1の電流値を2・i、第2の定電流源5の電流値をi、PNPトランジスタQ3 の電流増幅率をβ、ベース電流をiB 、出力端子4の出力電流をiO とすれば、PNPトランジスタQ3 のベース電流iB は、下記の(4)式で表される。
B =(i+iO )/(β+1) (4)
ここで、従来の定電圧供給回路の場合と同様に、入出力間電圧ΔVを求めると以下のようになる。
【0019】


【0020】(5)式において、VT の値を従来の定電圧供給回路におけると同様に、VT =26mVとし、また、PNPトランジスタQ3 の電流増幅率βをβ=100とすると、iO =iの時、ΔVは約−1mVとなる。又、iO =2iの時はΔVは約−1.5mVとなる。この値は、従来のものに比べると約1/30であり、非常に小さい。
【0021】又、本実施例では、(5)式から明かなように、PNPトランジスタQ3 の電流増幅率βが十分に大きければ、出力電流iO は、定電流源の電流iに制限されることなく自由に設定することができる。
【0022】図2は、図1の基本回路図を具体的に表したものである。図2において、PNPトランジスタQ4 及びQ5 、NPNトランジスタQ6 ,Q7 及びQ8 並びに抵抗Rは、図1における第1の定電流源1及び第2の定電流源5を具体的に構成するものであり、カレントミラー回路をなしている。
【0023】図において、PNPトランジスタQ5 のコレクタ電流をICQ5 、NPNトランジスタQ7 及びQ8 のコレクタ電流をそれぞれICQ7 及びICQ8 とすると、2ICQ5 =ICQ7 +ICQ8となり、図1の基本回路と同じ動作をするものとなる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、出力電流の変化に対する出力電圧の変化の大きさが、従来の定電圧供給回路に比べて約1/βに抑えられるので、出力端子に接続される負荷のインピーダンスを小さくすることができる。
【0025】又、電流増幅率βが十分に大きければ、出力電流iO は、定電流源の電流iに制限されることなく自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路動作を説明するための基本的な回路図である。
【図2】本発明の一実施例の具体的な回路図である。
【図3】従来の定電圧供給回路の一例の回路図である。
【符号の説明】
1 第1の定電流源
2 カレントミラー回路
3 入力端子
4 出力端子
5 第2の定電流源
6 高位電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エミッタが共通に接続された同一導電型の第1のバイポーラトランジスタ及び第2のバイポーラトランジスタと、ベースが第1のバイポーラトランジスタのコレクタに接続され、コレクタが第2のバイポーラトランジスタのベース及びコレクタに接続された、前記バイポーラトランジスタとは異なる導電型の第3のバイポーラトランジスタと、第1のバイポーラトランジスタのエミッタ及び第2のバイパーラトランジスタのエミッタに接続された第1の定電流源と、第1のバイポーラトランジスタのコレクタ及び第3のバイポーラトランジスタのベースに接続された第2の定電流源とを含み、第1の定電流源が、第2の定電流源のほぼ2倍の電流を供給することを特徴とする定電圧供給回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2710471号
【登録日】平成9年(1997)10月24日
【発行日】平成10年(1998)2月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−17256
【出願日】平成3年(1991)2月8日
【公開番号】特開平4−256110
【公開日】平成4年(1992)9月10日
【出願人】(000232036)日本電気アイシーマイコンシステム株式会社 (72)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−190617(JP,A)
【文献】特開 昭58−169605(JP,A)
【文献】特公 平2−30047(JP,B2)