説明

実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス装置、システム及び方法

【課題】実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス装置、システム及び方法を提供する。
【解決手段】自動血管アクセス装置(700)は、プローブと、プローブに結合された制御装置と、制御装置に結合された少なくとも1つのモータとを有する。制御装置は、実時間ボリューム測定超音波走査VOI画像に基づいて少なくとも1つの制御パラメータを決定し、該パラメータに基づいてモータの動作を駆動する。本発明によって開示した自動血管アクセス装置、システム及び方法を用いることによって、針の挿入経路をより正確かつ確実にすることができ、従って、血管アクセス処置の成功率を改善し、且つオペレータの負担を大幅に軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、自動血管アクセス装置、システム及び方法に関し、より詳しく云えば、実時間ボリューム測定(volumetric)超音波に基づいた自動血管アクセス装置、システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、新生児についての血管アクセス(例えば、PIV、PAC、PICCなど)は、一般に、最終的には手動操作で行われている。しかしながら、このような手動操作に基づいた新生児についての血管アクセスは、血管アクセス・オペレータにとって困難である。その理由は、新生児が非常に細く且つ弱いので、オペレータが、新生児の血管を観察し且つ手動の血管アクセスを遂行するのに充分な臨床経験を持っていなければならないからである。また更に、このような困難さは、血管が余り明白でない大人にも存在することに気付かれよう。
【0003】
1992年12月31日に出願されて1995年5月16日に特許された米国特許第5415177号には、誘導線配置装置が開示されている。該装置は、オペレータが針(needle)によって血管の壁を手動で貫通させたときに、針の空洞内の誘導線を対象血管の中へ移動させることができる自己推進装置を有している。
【0004】
2004年12月10日に出願されて2005年8月18日に公開された米国特許出願第11/009699号(公開番号US2005/0182295A1)には、気管支鏡処置の際に肺の中の所定の関心のあるボリュームに到達するように内視鏡を誘導するために用いられる視覚補助型誘導装置が開示されており、この場合、HRCTのような非侵襲性イメージング技術が適用される。
【0005】
2008年5月7日に出願されて2010年8月19日に公開された米国特許出願第12/598053号(公開番号US2010/0210934A1)には、静脈内カテーテルを誘導線の補助により配置する方法及び装置が開示されており、これは、カテーテル挿入及び採血に用いられる。
【0006】
上述の特許及び出願は血管アクセス操作のための特定の補助装置を用いた機能及び考え方を提供しているが、それらは、血管を視認して、針を手動で血管壁の中に挿入する必要があり、その後に誘導線を進んだ位置へ自動的に移動させている。これは、新生児についての血管アクセスにとって未だ問題がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、血管を視認することなく針を正確に挿入すること、すなわち、PIV、PAC及びPICCのような異なる種類の血管アクセス処置を自動的に(例えば、全自動式に又は半自動式に)達成することを目的とする。
【0008】
上記及び他の問題に対処するために、本発明では、周知の又は新しい血管選択法を用いることによって適切な対象血管を決定した後、対象血管の中に挿入するように針を自動的に制御して、血管アクセス操作を達成するようにした、実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス装置、システム及び方法を提供する。
【0009】
本発明の一面によれば、実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス装置を提供する。本装置は、実時間ボリューム測定超音波走査モードで対象血管のVOI画像を生成するように構成されたプローブと、前記プローブに結合された制御装置であって、VOI画像に従って少なくとも1つの制御パラメータを決定するために使用される少なくとも1つの処理モジュールを含む制御装置と、自動血管アクセスを達成するために前記制御装置に結合された少なくとも1つのモータとを有し、前記制御装置が更に、前記少なくとも1つの処理モジュールに結合された駆動モジュールを含み、該駆動モジュールは、前記少なくとも1つの制御パラメータに従って前記少なくとも1つのモータの動作を駆動するように構成されている。
【0010】
本発明の別の面によれば、実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス・システムを提供する。本システムは、それに結合されたプローブを使用して、実時間ボリューム測定超音波走査モードで対象血管のVOI画像を生成するように構成された超音波スキャナ・モジュールと、前記超音波スキャナ・モジュールに結合された制御モジュールであって、VOI画像に従って少なくとも1つの制御パラメータを決定するために使用される少なくとも1つの処理モジュールを含む制御モジュールと、前記制御モジュールに結合されたモータ駆動モジュールであって、少なくとも1つの制御パラメータに従って自動血管アクセスを達成するために少なくとも1つのモータの動作を駆動するように構成されているモータ駆動モジュールとを有する。
【0011】
本発明の更に別の面によれば、実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス方法を提供する。本方法は、a)プローブを実時間ボリューム測定超音波走査モードに設定する段階と、b)前記プローブを使用することによって対象血管のVOI画像を生成する段階と、c)前記VOI画像に従って少なくとも1つの制御パラメータを決定する段階と、d)前記少なくとも1つの制御パラメータを用いて血管アクセスを自動的に制御する段階とを有する。
【0012】
上記の技術的解決手法は手動操作を自動操作に置き換えるので、血管アクセス処置は、本発明の装置、システム及び方法を使用することによって、手動の監視をしながら又は手動の監視をしないでも、達成することができる。本発明の装置、システム及び方法の使用により、針の挿入経路をより正確かつ確実にすることができ、従って、血管アクセス処置の成功率を改善することができる。換言すると、本発明の技術的解決手法は、少なくとも、以下の技術的効果、すなわち、血管アクセスの時間消費を短くすること、血管アクセスを受ける患者の苦痛を低減すること、及び血管アクセス・オペレータの負担を軽減することを達成できると考えられる。
【0013】
また更に、本発明の好ましい実施形態による、実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス装置、システム及び方法は、全自動の血管アクセスを可能にするので、医療従事者が少ないとき、例えば、災害が起こったときのような環境では、特に有用である。
【0014】
また更に、本発明による自動血管アクセスは市販の普通のモータを使用しており、従って、コストが低い。
【0015】
本発明のこれらの及び他の特徴、面及び利点は、以下の説明を添付の図面を参照して読めばより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実時間ボリューム測定走査モードをセットアップする際の概略図である。
【図2A】図2Aは、血管の側面画像を生成する模範的な手順を示す。
【図2B】図2Bは、血管の上面画像を生成する模範的な手順を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従って血管位置を用いることによって血管アクセスのための装置制御パラメータを計算する際の概略図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に従って針が挿入された血管の画像の概略図であり、この場合、血管アクセス処置が図3で計算されたパラメータに従って少なくとも部分的に調節されている。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従って実時間血管アクセス画像を用いることによって半自動血管アクセスを達成する半自動血管アクセス装置の概略図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従って実時間血管アクセス画像を用いることによって全自動血管アクセスを達成する全自動血管アクセス・システムの概略図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に従った全自動血管アクセス装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本書における用語「血管アクセス」とは、限定するものではないが、静脈注射、動脈注射、及び血管内に材料及び装置を入れる任意の処置を含む。また更に、本書における用語「自動」とは、「全自動」(すなわち、殆ど人手による介在が存在しない)及び「半自動」(すなわち、ある程度の人手による介在が存在する)の両方を含む。すなわち、本書において「自動」が単独で用いられるとき、それは、血管アクセス処置中にある程度の人手による介在があるか又は全く人手による介在がないことを意味する。また更に、本書における用語「針(needle)」には、限定するものではないが、注射針、カテーテルのような器具を備えた中空の針、及び血管アクセスを行うために人体組織に挿入するのに適切である任意の物体が含まれる。
【0018】
図1について説明すると、図は実時間ボリューム測定走査を遂行する方法を示している。図1の右側には、プローブ10の略図、及び実時間ボリューム測定走査を遂行するために超音波走査CF(カラー血流)モード及びBモードでプローブ10を用いた結果の概要を示す。詳しく述べると、各々の所与の時点に、実時間ボリューム測定走査が、Bモード又はCFモードでプローブ10を用いてターゲット(例えば、乳幼児の腕の血管13)について遂行され、この場合、プローブ10の走査方向は好ましくは血管13の長さ軸の方向と実質的に平行である。好ましい一実施形態では、プローブ10の走査範囲の殆どの部分がBモードで走査され、その結果、血管及び/又は針の画像を表示するための一群のグレースケール画像が得られる(これについては後でより詳しく説明する)。また更に、CFモード(CFM)の走査はプローブ10の最大走査角度にわたって遂行されるだけであり、その結果のカラー画像は、血管内の血流についての情報を表示するために用いられ(例えば、青色は、プローブから遠ざかる方向の流れを意味し、また赤色は、プローブへ近づく方向の流れを意味する)、そして血管の種類(動脈、静脈など)を決定することができる。
【0019】
図1の左側には、本発明の好ましい一実施形態に従った2次元(2D)CFM平面画像11を示しており、該平面画像は、図1のプローブ10によるCFモードでの実時間ボリューム測定走査から平面14で画像を取得することによって形成される(この事については後で図2A〜図2Bを参照してより詳しく説明する)。投影11の真ん中に示されている血管13は(例えば、赤色又は青色に)着色されているので、血管の種類を色に従って決定することができる。関心のあるボリューム(VOI)は、平面投影11についての分析及び計算により血管13の位置及び厚さ(太さ)を決定することによって定めることができる。VOI内の走査データのみが意味がある。好ましくは、VOI内のデータのみが保存され且つ表示される。
【0020】
次に、図2A〜図2Bを参照して、血管を含むVOI画像を2D平面に投影する方法について簡単に説明する。図2Aには、決定されたVOIを左側へ投影することによって血管の側面図を形成する手順を示しており、この場合、横方向に最小強度投影が適用される。図2Bには、決定されたVOIを上から下へ投影することによって血管の上面図を形成する手順を示しており、この場合、上下方向の最小強度投影が適用される。
【0021】
上記の説明では、プローブを使用して所望の血管の上面画像及び側面画像を得るための模範的な手順を例示するために一例として実時間ボリューム測定超音波走査のBモード及びCFモードを用いている。しかしながら、当業者には、上記の説明が模範的なものであるに過ぎず、走査モードの選択、血管の種類の決定、具体的な投影の種類などについて、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な改善及び修正を行うことができることを理解されたい。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に従って血管位置をそれぞれ表示する血管側面図及び血管上面図に基づいて血管アクセスのための装置制御パラメータを計算する方法を示す概略図である。図3の各々の図において、太い点線30は、血管アクセスを遂行するときの針誘導線を表しており、この誘導線は、針又は針先端(図4に示す)を血管の中に挿入するときに追従されるべきであり、また、血管内の同心の円は針挿入のための参照位置を表す。より詳しく述べると、図3の左側の図(血管の側面図)は、針に関連したパラメータ、すなわち、針挿入角度31及び針挿入距離32を決定する方法を示している。図3の右側の図(血管の上面図)は、プローブに関連したパラメータ、すなわち、プローブ・シフト・オフセット33及びプローブ回転角度34を決定する方法を示している。プローブ回転角度34は、プローブを制御して、プローブによって出力された実時間ボリューム測定超音波画像の中の血管を誘導線30と平行にするために、図示のように選択される。また、プローブ・シフト・オフセット33は、プローブから出力された血管画像の中の血管の真ん中に誘導線30を位置決めするように選択され、プローブはシフト・オフセット33だけ動かされる。他方、針挿入角度31は、針を制御して、所望の挿入角度(図4に示す)まで回転させるために、図示のように選択される。また、針挿入距離32は、所望の挿入距離に達することができるように針の移動を制御する。当業者には、針に関連した選択されたパラメータ及びプローブに関連した選択されたパラメータは模範的なものであるに過ぎないこと、並びにそれらのパラメータが一緒に又は別々に用いられるときに対応するプローブ/針を所望の位置へ制御することができる限り、実際の需要に従って、より多数の又はより少数の又は変更した針に関連したパラメータ及び/又はプローブに関連したパラメータを選択できることを理解されたい。例えば、プローブの一端が検出すべきターゲット(例えば、乳幼児の腕)の直ぐ上方に固定されているとき、プローブの制御パラメータとしてプローブ回転角度のみを選択することが可能である。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態に従って針が挿入された血管の上面図及び側面図を示す。図4の右側の図(上面図)から分かるように、誘導線30(及び誘導線30に沿って挿入している針)は、図3で計算されたプローブに関連したパラメータに従ってプローブが既に調節されているので、プローブから出力された2D血管上面図の中の血管の真ん中に位置する。他方、図4の左側の図(側面図)は、血管と誘導線に沿って挿入している針との間の相対的な位置を明瞭に示している。実際の操作では、同時に針を含んでいる血管上面図及び血管側面図を表示し保存することが好ましい。
【0024】
これまで図3〜図4を参照して、実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス処置について説明した。この処置では、プローブ及び針の位置が、正確な血管アクセスの目的を達成するように、VOI画像中の制御パラメータに従って調節される。以下に、図5〜図7を参照して、自動血管アクセス・システム及び装置の例を説明する。
【0025】
図5は、本発明の一実施形態に従って実時間血管アクセス画像を用いることによって半自動血管アクセスを達成する半自動血管アクセス装置の概略図である。図5の上側部分は、プローブ51を使用することによって出力された血管走査画像の側面図(左側)及び上面図(右側)をそれぞれ示しており、この場合、針は所定の誘導線に沿って血管へ向かって挿入されている。また、図5の下側部分は、ブラケット53上に配置されたプローブ51及び針52の側面図(左側)及び上面図(右側)をそれぞれ示す。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態では、図5の半自動血管アクセス装置を使用することにより、半自動血管アクセスの操作を遂行することができる。より詳しく述べると、先ずオペレータにより、実時間血管上面図に従って、プローブ51の位置を調節して(例えば、回転させ、シフトさせて)、図5の右上の図に示されているように、調節されたプローブ51によって出力された実時間血管上面図の中の血管の真ん中に誘導線を確実に位置するようにする。次いで、オペレータにより、プローブ51によって出力された実時間血管上面図に従って、針52を調節し挿入して、針が誘導線30に沿って所望の位置まで挿入されるようにする。図5の左上の図は、針が誘導線30に沿って或る距離にわたって挿入されたときの概略図を示しており、また黒丸の点54は、針が最終的に血管の中に挿入される場所を表す。
【0027】
これまで図5を参照して、オペレータの介在により半自動血管アクセスを達成する方法の手順を説明した。当業者には、上述のアクセス法が模範的なものであるに過ぎず、幾つかのアクセス段階を要望通りに調節し、追加し、削除できることが理解されよう。例えば、ステッピング・モータ(図示せず)のような位置決め装置を使用して、プローブ・シフト・オフセット33及びプローブ回転角度34(図3に示す)に従ってプローブ51の位置を制御することができ、これにより、実時間血管上面図に従ってオペレータによってプローブ51の位置を調節する段階を省略して、より素早く且つより精密にプローブ位置決めを行うことができる。このような状況では、実時間血管上面図は表示する必要はない。また更に、上記の機能を実施する実行可能なコード(例えば、コンピュータ・プログラム)並びに実時間血管上面図をメモリ(図示せず)に記憶させることができ、またメモリには、位置決め装置を制御するための任意の適切な制御システムを結合することができる。制御システムは、メモリ内の実行可能なコードを、必要な場合は記憶された実時間血管上面図と共に使用して、計算を行って、プローブ・シフト・オフセット及びプローブ回転角度に従ってプローブを所望の位置へ調節する。メモリには、限定するものではないが、ROMメモリ、RAMメモリなどが含まれる。他の同様な変形は当業者には明らかであろう。
【0028】
図5と比べて、図6は、本発明の一実施形態に従って実時間血管アクセス画像を用いることによって全自動血管アクセスを達成する全自動血管アクセス・システム600の機能ブロック図である。図6に示されたシステムは、4Dプローブ601を備えていて、実時間超音波走査画像を生成するために使用されるホスト602を有する。ホスト602は、USBバス603のようなリンクを介して自動血管アクセス・システム604に結合されていて、自動血管アクセス・システム604へ実時間超音波走査画像を伝送する。より詳しく述べると、自動血管アクセス・システム604の制御モジュール605が、インターフェース装置(図示せず)を介してUSBバス603から実時間超音波走査画像を受け取って、針に関連したパラメータ及びプローブに関連したパラメータ(一般的に、パラメータと呼ぶ)を得るために制御モジュール605の処理モジュール(図示せず。限定するものではないが、DSP、MCU、CPUなどを含む。)によって超音波走査画像を計算する。当業者には、インターフェース装置を介して受け取る行為が、更に、制御モジュール605が認識し且つ更に処理するのに適したデータを得るために、実時間超音波走査画像について、アナログ−ディジタル変換、フィルタリング等々のような信号処理を遂行することを含むことが理解されよう。本発明の別の好ましい実施形態によれば、VOIは、帯域幅を節約するようにUSBバス603を介してのみ伝送することができる。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、制御モジュール605は更に選択モジュールを含むことができ、該選択モジュールは、(例えば、制御モジュール605に結合された入力装置(図示せず)を介して)ユーザーによって入力された命令に従って超音波モジュール602を、該超音波モジュールがBモード及び/又はCFモードでボリューム測定超音波走査を遂行するように構成するために使用することができる。また更に、上記の制御パラメータの具体的な種類、計算法については図3に関連して説明したので、繰り返さない。
【0030】
制御モジュール605内の処理モジュールにより対応する制御パラメータを計算した後、制御モジュール605に結合されたモータ駆動モジュール(例えば、ステッピング・モータ駆動モジュール606)が、上記の制御パラメータに従って対応するモータを制御し、従って、プローブ601及び針(図示せず)の空間位置及び挿入深さを制御する。好ましくは、ステッピング・モータ駆動モジュール606は自動血管アクセス・システム604内に組み込まれるが、しかし別個の装置とすることもできる。本発明の好ましい一実施形態では、ステッピング・モータ駆動モジュール606は、プローブの回転607、プローブのシフト608、針の回転609及び針の挿入610をそれぞれ制御するように、4つのステッピング・モータを駆動する。
【0031】
図7は、本発明の一実施形態に従った全自動血管アクセス装置700の概要を示す。全自動血管アクセス装置700は、実時間ボリューム測定超音波走査モードで対象血管の実時間超音波走査画像(好ましくは、VOI画像)を生成するように構成されたプローブ703と、プローブ703に結合されていて、実時間超音波走査画像に従って全自動血管アクセスのための複数の制御パラメータを決定するために用いられる複数の処理モジュールを含んでいる制御装置(図示せず)と、制御装置に結合されていて、制御装置の制御の下に全自動血管アクセスを遂行する複数のモータとを有する。
【0032】
図7を参照して説明する好ましい実施形態では、処理モジュール及びモータのそれぞれの数は4つであり、それらの間では一対一で対応する。4つの処理モジュールは、4つの制御パラメータ、すなわち、プローブ回転角度、プローブ・シフト・オフセット、針挿入角度、及び針挿入距離を計算する。より詳しく述べると、4つの処理モジュールは、それぞれ対応するモータに結合されて、該モータを制御する。すなわち、プローブ回転角度を計算するための処理モジュールは、プローブの回転を制御するためにプローブ回転モータ702に結合されて該モータを制御する。また、プローブ・シフト・オフセットを計算するための処理モジュールは、プローブのシフトを制御するためにプローブ・シフト・モータ701に結合されて該モータを制御する。また、針挿入角度を計算するための処理モジュールは、針の回転を制御するために針回転モータ706に結合されて該モータを制御する。また、針挿入距離を計算するための処理モジュールは、針の挿入を制御するために針挿入モータ708に結合されて該モータを制御する。
【0033】
本発明の一実施形態に従った全自動血管アクセス処置の具体的な一実施例を、図7に示された全自動血管アクセス装置700の概要図を参照して以下に説明する。先ず、プローブに関連したパラメータを(その計算法は図3に関連して説明したが、例えば、好ましくは、4つの処理モジュールによってそれぞれ上述したように)用いることによって、プローブ・シフト・モータ701及びプローブ回転モータ702の動作を制御して、4Dプローブ703を腕保持器705上に配置した乳幼児の腕704に対して位置決めする(位置決めの詳しい要件は、図3〜図4を参照して説明した通りである)。次いで、首尾よく位置決めされた4Dプローブ703から出力された実時間ボリューム測定超音波画像に従って、制御装置(図示せず)により、針に関連したパラメータ(例えば、針挿入角度31及び針挿入距離32を含む)を求める。次いで、右側の拡大図に示されているように、針回転モータ706を針挿入角度31に従って制御して、針707を針誘導線と一致するように回転させる。最後に、針挿入モータ708を針挿入距離32に従って制御して、針707を最終的に所望の位置まで挿入させる。
【0034】
当業者に理解されるように、上述したような全自動血管アクセス処置は、制御装置に結合されたメモリ(図示せず)に、制御装置によって認識し且つ処理することのできる実行可能なコード(例えば、コンピュータ・プログラム)の形態で、前もって記憶させることができ、この結果、必要なときに制御装置を介してメモリ内の実行可能なコードを呼び出すことによって全自動血管アクセス処置を行うことができる。メモリには、限定するものではないが、ROMメモリ、RAMメモリなどが含まれる。
【0035】
図7の全自動血管アクセス装置700は、金属を含む材料で製作することができ、或いは実質的にプラスチックで製作することができる。本発明の好ましい一実施形態によれば、回転用のモータ(すなわち、プローブ回転モータ702及び針回転モータ706)は、2°未満の制御精度が得られるように、1サイクル当り200ステップのステッピング・モータであり、他方、シフト及び挿入用のモータ(すなわち、プローブ・シフト・モータ701及び針挿入モータ708)は、0.2mm未満の制御精度が得られるように、1サイクル当り50ステップのステッピング・モータである。上記の材料及びモータの選択は単に模範的な例に過ぎず且つモータはステッピング・モータに限定されないことが理解されよう。当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、全自動血管アクセス装置700に対して必要に応じて多数の修正をなすことができよう。
【0036】
また更に、本発明の別の実施形態によれば、半自動血管アクセス装置700’(図示せず)を形成するように全自動血管アクセス装置700に対して変更を行うことができる。例えば、プローブ・シフト・モータ701及びプローブ回転モータ702を全自動血管アクセス装置700から除去することができ、また実時間血管上面図を表示するためのモニタ(図示せず)を付け加えて、オペレータがモニタ上の表示に従ってプローブ703の位置を乳幼児の腕704に対して所望の位置へ調節できるようにすることができる。同様に、針回転モータ706及び針挿入モータ708を全自動血管アクセス装置700から除去することができ、また実時間血管側面図を表示するためのモニタ(図示せず)を付け加えて、オペレータがモニタ上の表示に従って針707を乳幼児の腕704の対象血管の中へ正確に挿入できるようにすることができる。
【0037】
本明細書は、最良の実施形態を含めて、本発明を開示するために、また当業者が任意の装置又はシステムを作成し使用し、任意の採用した方法を遂行すること含めて、本発明を実施できるようにするために、幾つかの例を使用した。本発明の特許可能な範囲は「特許請求の範囲」の記載に定めており、また当業者に考えられる他の例を含み得る。このような他の例は、それらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から実質的に差異のない構造的要素を持つ場合、或いはそれらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から実質的に差異のない等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0038】
10 プローブ
11 2次元CFM平面画像
13 血管
14 平面
30 針誘導線
31 針挿入角度
32 針挿入距離
33 プローブ・シフト・オフセット
34 プローブ回転角度
52 針
54 針の最終挿入位置
600 全自動血管アクセス・システム
700 全自動血管アクセス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス装置(700)であって、
実時間ボリューム測定超音波走査モードで対象血管のVOI画像を生成するように構成されたプローブ(703)と、
前記プローブ(703)に結合された制御装置であって、VOI画像に基づいて少なくとも1つの制御パラメータを決定する少なくとも1つの処理モジュールを含む制御装置と、
自動血管アクセスを達成するために前記制御装置に結合された少なくとも1つのモータ(701,702,706,708)と、を有し、
前記制御装置が更に、前記少なくとも1つの処理モジュールに結合された駆動モジュールを含み、該駆動モジュールが、前記少なくとも1つの制御パラメータに従って前記少なくとも1つのモータ(701,702,706,708)の動作を駆動するように構成されていること、
を特徴とする自動血管アクセス装置(700)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのモータ(701,702,706,708)が、以下の複数の行為、すなわち、前記プローブのシフトを制御する行為、前記プローブの回転を制御する行為、針の回転を制御する行為、及び前記針の挿入を制御する行為の内の少なくとも1つの行為を遂行するために使用されることを特徴とする、請求項1記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項3】
前記VOI画像が対象血管の関心のあるボリュームの側面図及び上面図を含んでおり、これらの側面図及び上面図が最小強度投影を用いることによって取得されることを特徴とする、請求項2記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項4】
前記実時間ボリューム測定超音波走査モードがBモード及びCFモードの内の少なくとも1つを含み、前記制御装置が更に、ユーザーの要件に従って対応する実時間ボリューム測定超音波走査モードに前記プローブ(703)を構成する選択モジュールを含んでいることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項5】
前記制御装置が更に、血流方向に従って対象血管を決定する決定モジュールを含んでいることを特徴とする、請求項4記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項6】
前記対象血管が静脈又は動脈であることを特徴とする、請求項5記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの制御パラメータが、プローブに関連したパラメータ及び針に関連したパラメータを含んでいることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項8】
前記プローブに関連したパラメータがプローブ回転角度及びプローブ・シフト・オフセットを含み、且つ前記針に関連したパラメータが針挿入角度及び針挿入距離を含んでいることを特徴とする、請求項7記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのモータが、前記プローブのシフトを制御するためのプローブ・シフト・モータ(701)、及び前記プローブの回転を制御するためのプローブ回転モータ(702)を含んでおり、
前記プローブ・シフト・モータ(701)及び前記プローブ回転モータ(702)を用いることによって前記プローブを所望の位置までシフト及び回転させた後、前記所望の位置までシフト及び回転した前記プローブが前記針に関連したパラメータを計算することを特徴とする、請求項8記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのモータが更に、前記針の回転を制御するための針回転モータ(706)、及び前記針の挿入を制御するための針挿入モータ(708)含んでおり、
前記プローブ・シフト・モータ(701)及び前記プローブ回転モータ(702)を用いることによって前記プローブを所望の位置までシフト及び回転させた後、前記針回転モータ(706)及び前記針挿入モータ(708)の動作を前記針に関連したパラメータに従って制御することを特徴とする、請求項9記載の自動血管アクセス装置(700)。
【請求項11】
実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス・システム(600)であって、
それに結合されたプローブ(601)を使用して、実時間ボリューム測定超音波走査モードで対象血管のVOI画像を生成するように構成された超音波スキャナ・モジュール(602)と、
前記超音波スキャナ・モジュール(602)に結合された制御モジュール(605)であって、VOI画像に従って少なくとも1つの制御パラメータを決定する少なくとも1つの処理モジュールを含む制御モジュール(605)と、
前記制御モジュール(605)に結合されたモータ駆動モジュール(606)であって、少なくとも1つの制御パラメータに従って自動血管アクセスを達成するために少なくとも1つのモータ(607〜610)の動作を駆動するように構成されているモータ駆動モジュール(606)と、
を有する自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのモータ(607〜610)が、以下の複数の行為、すなわち、前記プローブのシフトを制御する行為、前記プローブの回転を制御する行為、針の回転を制御する行為、及び前記針の挿入を制御する行為の内の少なくとも1つの行為を遂行するために使用されることを特徴とする、請求項11記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項13】
前記VOI画像が対象血管の関心のあるボリュームの側面図及び上面図を含んでおり、これらの側面図及び上面図が最小強度投影を用いることによって取得されることを特徴とする、請求項12記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項14】
前記実時間ボリューム測定超音波走査モードがBモード及びCFモードの内の少なくとも1つを含み、前記制御モジュール(605)が更に、ユーザーの要件に従って対応する実時間ボリューム測定超音波走査モードに前記超音波スキャナ・モジュール(602)を構成する選択モジュールを含んでいることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項15】
前記制御モジュールが更に、血流方向に従って対象血管を決定する決定モジュールを含んでいることを特徴とする、請求項14記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項16】
前記対象血管が静脈又は動脈であることを特徴とする、請求項15記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの制御パラメータが、プローブに関連したパラメータ及び針に関連したパラメータを含んでいることを特徴とする、請求項11乃至12のいずれか1項に記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項18】
前記プローブに関連したパラメータがプローブ回転角度及びプローブ・シフト・オフセットを含み、且つ前記針に関連したパラメータが針挿入角度及び針挿入距離を含んでいることを特徴とする、請求項17記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項19】
前記少なくとも1つのモータが、前記プローブのシフトを制御するためのプローブ・シフト・モータ(608)、及び前記プローブの回転を制御するためのプローブ回転モータ(607)を含んでおり、
前記プローブ・シフト・モータ(608)及び前記プローブ回転モータ(607)を用いることによって前記プローブを所望の位置までシフト及び回転させた後、前記所望の位置までシフト及び回転した前記プローブが前記針に関連したパラメータを計算することを特徴とする、請求項18記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項20】
前記少なくとも1つのモータが更に、前記針の回転を制御するための針回転モータ(609)、及び前記針の挿入を制御するための針挿入モータ(610)含んでおり、
前記プローブ・シフト・モータ(608)及び前記プローブ回転モータ(607)を用いることによって前記プローブを所望の位置までシフト及び回転させた後、前記針回転モータ(609)及び前記針挿入モータ(610)の動作を前記針に関連したパラメータに従って制御することを特徴とする、請求項19記載の自動血管アクセス・システム(600)。
【請求項21】
実時間ボリューム測定超音波に基づいた自動血管アクセス方法であって、
a)プローブを実時間ボリューム測定超音波走査モードに設定する段階と、
b)前記プローブを使用することによって対象血管のVOI画像を生成する段階と、
c)前記VOI画像に従って少なくとも1つの制御パラメータを決定する段階と、
d)前記少なくとも1つの制御パラメータを用いて血管アクセスを自動的に制御する段階と、
を有する自動血管アクセス方法。
【請求項22】
前記VOI画像が対象血管の関心のあるボリュームの側面図及び上面図を含んでいることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記側面図及び上面図が最小強度投影を用いることによって取得されることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記実時間ボリューム測定超音波走査モードがBモード及びCFモードの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項21乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象血管が血流方向に従って決定されることを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記対象血管が静脈又は動脈であることを特徴とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの制御パラメータが、プローブに関連したパラメータ及び針に関連したパラメータを含んでいることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記プローブに関連したパラメータがプローブ回転角度及びプローブ・シフト・オフセットを含み、且つ前記針に関連したパラメータが針挿入角度及び針挿入距離を含んでいることを特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記段階d)が更に、前記プローブに関連したパラメータに従って前記プローブの位置を自動的に調節した後、前記針に関連したパラメータに従って前記針の挿入を自動的に調節する段階を含んでいることを特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記段階d)が更に、前記プローブ回転角度及び前記プローブ・シフト・オフセットに従って前記プローブの位置を自動的に調節した後、前記針挿入角度及び前記針挿入距離に従って前記針の挿入を自動的に調節する段階を含んでいることを特徴とする、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78574(P2013−78574A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−209038(P2012−209038)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】