説明

害虫防除剤含有樹脂組成物の製造方法およびフィラメントの製造方法

【課題】フィラメントに成形する際に発生するフィラメントの切断の発生頻度が低減した樹脂組成物を製造する方法、および、該方法で製造された樹脂組成物を用いてフィラメントを製造する方法を提供すること。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂100重量部と、害虫防除剤含有担体0.1〜100重量部と酸化防止剤0.01〜10重量部とを、180〜260℃の温度で溶融混合する害虫防除剤含有樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除剤含有樹脂組成物の製造方法およびフィラメントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
害虫防除剤とポリエチレン系樹脂とを混合してなる樹脂組成物は、各種成形体に加工され、ダニ、シラミ、カ、ハエ等の害虫防除用の材料に用いられている。例えば、特許文献1には、害虫防除剤と線状低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2には、害虫防除剤と低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−315332号公報
【特許文献2】特開平8−302080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
害虫防除剤とポリエチレン系樹脂とを混合した樹脂組成物の製造においては、担体と害虫防除剤と必要により他の添加剤とを混合することにより、害虫防除剤と必要により他の添加剤とを担体に担持した害虫防除剤含有担体を予め調製し、該害虫防除剤含有担体とポリエチレン系樹脂とを混合することがある。しかしながら、害虫防除剤含有担体とポリエチレン系樹脂とを混合する工程を有する従来の製造方法で製造された樹脂組成物をフィラメントに成形する場合、フィラメントが切断することがあり、該樹脂組成物は、フィラメントの成形性において、十分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、フィラメントに成形する際に発生するフィラメントの切断の発生頻度が低減した樹脂組成物を製造する方法、および、該方法で製造された樹脂組成物を用いてフィラメントを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の第一は、ポリエチレン系樹脂100重量部と害虫防除剤含有担体0.1〜100重量部と酸化防止剤0.01〜10重量部とを、160〜300℃の温度で溶融混合する害虫防除剤含有樹脂組成物の製造方法にかかるものである。
【0006】
本発明の第二は、ポリエチレン系樹脂と上記製造方法により製造された樹脂組成物とを180〜260℃の温度で溶融混合してなる樹脂組成物を、あるいは、上記製造方法により製造された樹脂組成物を溶融紡糸するフィラメントの製造方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、フィラメントに成形する際に発生するフィラメントの切断の発生頻度が低減した樹脂組成物を製造する方法、および、該方法で製造された樹脂組成物を用いてフィラメントを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
害虫防除剤含有担体は、害虫防除剤と担体とを混合することにより製造される。該害虫防除剤としては、殺虫剤、昆虫成長制御剤、忌避剤等の害虫防除性がある化合物があげられる。
【0009】
殺虫剤としては、ピレスロイド系化合物、有機燐系化合物、カーバメート系化合物、フェニルピラゾール系化合物等があげられる。ピレスロイド系化合物としては、ペルメトリン、アレスリン、d−アレスリン、dd−アレスリン、d−テトラメトリン、プラレスリン、サイフェノトリン、d−フェノトリン、d−レスメトリン、エムペントリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパスリン、シハロトリン、サイフルトリン、エトフェンプロクス、トラロメスリン、エスビオスリン、ベンフルスリン、テラレスリン、デルタメスリン、サイパーメスリン、フェノトリン、テフルトリン、ビフェントリン、シフルトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン等があげられ、有機燐系化合物としては、フェニトロチオン、ジクロルボス、ナレド、フェンチオン、シアノホス、クロロピリホス、ダイアジノン、カルクロホス、サリチオン、ダイアジノン等があげられ、カーバメート系化合物としては、メトキシジアゾン、プロポクスル、フェノブカーブ、カルバリル等があげられ、フェニルピラゾール系化合物としてはフィプロニル等があげられる。
【0010】
昆虫成長制御剤としては、ピリプロキシフェン、メソプレン、ヒドロプレン、ジフルベンズロン、シロマジン、フェノキシカーブ、ルフェニュロン(CGA184599)等があげられる。
【0011】
忌避剤としては、ジエチルトルアミド、ジブチルフタレート等があげられる。
【0012】
これらの害虫防除剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。害虫防除剤としては、殺虫剤が好ましく、ピレスロイド系化合物がより好ましく、25℃での蒸気圧が1×10-6mmHg未満であるピレスロイド系化合物がさらに好ましい。該25℃での蒸気圧が1×10-6mmHg未満であるピレスロイド系化合物としては、レスメスリン、ペルメトリン等があげられる。
【0013】
担体としては、害虫防除剤を担持できるものが用いられ、シリカ系化合物、ゼオライト類、粘度鉱物、金属酸化物、雲母類、ハイドロタルサイト類、有機担体等があげられる。シリカ系化合物としては、非晶性シリカと結晶性シリカがあり、例えば、粉末ケイ酸、微粉末ケイ酸、酸性白土、珪藻土、石英、ホワイトカーボン等があげられる。ゼオライト類としては、A型ゼオライト、モルデナイト等があげられ、粘度鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ベントナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、デッカイト、アノーキサイト、イライト、セリサイト等があげられ、金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン等があげられ、雲母類としては、雲母、バーミキュライト等があげられ、ハイドロタルサイト類としては、ハイドロタルサイト、スメクタイト等があげられ、有機担体としては、炭類(木炭、泥炭、草炭等)、ポリマービーズ(微結晶セルロース、ポリスチレンビーズ、アクリル酸エステル系ビーズ、メタクリル酸エステル系ビーズ、ポリビニルアルコール系ビーズ等)およびそれらの架橋ポリマービーズ等があげられる。その他にも、パーライト、石こう、セラミック、火山性岩等があげられる。
【0014】
担体としては、非晶性無機化合物が好ましく、非晶性シリカがより好ましい。
【0015】
担体と害虫防除剤との混合において、担体の混合量は、害虫防除剤100重量部あたり、通常10〜400重量部である。
【0016】
また、担体と害虫防除剤との混合においては、必要に応じて、他の添加剤を混合してもよい。
【0017】
害虫防除剤含有担体を溶融混合するポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
高圧法低密度ポリエチレンの製造方法としては、高温高圧下でラジカル発生剤によりエチレンを重合する方法が用いられる。
【0019】
ラジカル発生剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−アミルパーオキサイド、クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビバレート等の有機過酸化物類や、酸素等があげられる。
【0020】
高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンの製造方法としては、チーグラー・ナッタ系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒等の公知のオレフィン重合触媒を用いて、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法、高圧イオン重合法等の公知の重合方法によって製造する方法があげられる。また、該重合法は、回分重合法、連続重合法のいずれでもよく、2段階以上の多段重合法でもよい。
【0021】
上記のチーグラー・ナッタ系触媒としては、例えば、次の(1)または(2)の触媒などがあげられる。
(1)三塩化チタン、三塩化バナジウム、四塩化チタンおよびチタンのハロアルコラートからなる群から選ばれる少なくとも1種をマグネシウム化合物系化合物に担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒
(2)マグネシウム化合物とチタン化合物の共沈物または共晶体と共触媒である有機金属化合物からなる触媒
【0022】
上記のクロム系触媒としては、例えば、シリカまたはシリカ−アルミナにクロム化合物を担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒などがあげられる。
【0023】
メタロセン系触媒としては、例えば、次の(1)〜(4)の触媒などがあげられる。
(1)シクロペンタジエン形骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む成分と、アルモキサン化合物を含む成分からなる触媒
(2)前記遷移金属化合物を含む成分と、トリチルボレート、アニリニウムボレート等のイオン性化合物を含む成分からなる触媒
(3)前記遷移金属化合物を含む成分と、前記イオン性化合物を含む成分と、有機アルミニウム化合物を含む成分からなる触媒
(4)前記の各成分をSiO2、Al23等の無機粒子状化合物や、エチレン、スチレン等のオレフィン重合体等の粒子状ポリマーに担持または含浸させて得られる触媒
【0024】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常、0.1〜50g/10分である。該MFRが高すぎるとフィラメントの切断の発生頻度が高くなることがある。該MFRは、好ましくは40g/10分以下であり、より好ましくは30g/10分以下である。また、該MFRは、溶融混合時の押出機のモーター負荷を低減する観点から、好ましくは0.3g/10分以上であり、より好ましくは0.5g/10分以上である。該MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18Nおよび温度190℃の条件で測定される。
【0025】
ポリエチレン系樹脂の密度は、通常、900〜965kg/m3である。該密度は、フィラメントの害虫防除性を高める観点から、好ましくは905kg/m3以上であり、より好ましくは910kg/m3以上である。また、該密度は、フィラメントの切断の発生頻度をより低減する観点から、好ましくは960kg/m3以下であり、より好ましくは955kg/m3以下である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った試験片を用いて、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
【0026】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が用いられる。
【0027】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名Irganox1076、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(商品名Irganox1010、チバスペシャルティケミカルズ社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名Irganox3114、チバスペシャルティケミカルズ社製)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(商品名Sumilizer GA80、住友化学社製)等があげられる。
【0028】
リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト(商品名アデカスタブPEP8)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名Irgafos168、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト(商品名Sandostab P−EPQ、クラリアントシャパン社製)、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等があげられる
【0029】
フェノール構造とリン構造を併せ持つ酸化防止剤としては、例えば、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェビン(商品名Sumilizer GP、住友化学社製)等があげられる。
【0030】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、4、4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(商品名Sumilizer WXR、住友化学社製)、2,2−チオビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(商品名IRGANOX 1081、チバスペシャリティケミカル社製)等があげられる。
【0031】
その他の酸化防止剤としては、ビタミンE、ビタミンA等があげられる。
【0032】
酸化防止剤としては、好ましくは、フェノール構造を有する酸化防止剤であり、より好ましくはフェノール系酸化防止剤であり、さらに好ましくは、1〜2つのt−ブチル基と1つのヒドロキシ基を有するフェニル基を有するプロピオン酸エステルであり、最も好ましくは1〜2つのt−ブチル基と1つのヒドロキシ基を有するフェニル基を有するプロピオン酸と炭素数2以上のアルコールとのエステルである。
【0033】
ポリエチレン系樹脂と害虫防除剤含有担体と酸化防止剤との溶融混合において、害虫防除剤含有担体の混合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、通常0.1〜100重量部であり、酸化防止剤の混合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、通常0.01〜10重量部である。混合後の樹脂組成物が溶融紡糸用原料の主原料である場合、害虫防除剤含有担体の混合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部であり、酸化防止剤の混合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、好ましくは0.01〜1重量部である。また、混合後の樹脂組成物が害虫防除剤マスターバッチである場合、害虫防除剤含有担体の混合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、好ましくは5〜100重量部であり、酸化防止剤の混合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、好ましくは0.03〜10重量部である。
【0034】
樹脂組成物がフィラメント用である場合、樹脂組成物中の担体(害虫防除剤含有担体にあっては担体のみ)の含有量は、機械的強度を高める観点から、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは30重量部以下である。また、該含有量は、害虫防除性能を高める観点から、好ましくは0.3重量部以上であり、より好ましくは0.6重量部以上である。
【0035】
ポリエチレン系樹脂と害虫防除剤含有担体と酸化防止剤との溶融混合においては、必要に応じて、他の成分を混合してもよい。例えば、害虫防除性の効果を高める役割をもつ化合物を配合してもよい。該化合物としては、ピペロニルブトキサイド、MGK264、オクタクロロジプロピルエーテル等があげられる。また、抗ブロッキング剤、フィラー、滑剤、帯電防止剤、耐候安定剤、顔料、加工性改良剤、金属石鹸等の添加剤を配合してもよく、該添加剤は2種以上を併用されてもよい。
【0036】
ポリエチレン系樹脂と害虫防除剤含有担体と酸化防止剤とを溶融混合する温度は、通常160〜300℃であり、好ましくは180〜260℃である。
【0037】
ポリエチレン系樹脂と害虫防除剤含有担体と酸化防止剤との溶融混合は、公知の混合機、例えば、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール混練機などにより、行うことができる。
【0038】
ポリエチレン系樹脂と害虫防除剤含有担体と酸化防止剤とを溶融混合してなる樹脂組成物は、溶融紡糸用原料の主原料として使用され、フィラメントに成形される。また、該樹脂組成物は、害虫防除剤マスターバッチとして使用され、上述のポリエチレン系樹脂と溶融混合した後、フィラメントに成形される。
【0039】
害虫防除剤マスターバッチと上述のポリエチレン系樹脂とを溶融混合した樹脂組成物中の害虫防除剤含有担体の含有量は、ポリエチレン系樹脂の総量(マスターバッチ中のポリエチレン系樹脂およびマスターバッチと混合するポリエチレン系樹脂の総量)100重量部あたり、好ましくは1〜20重量部であり、酸化防止剤の含有量は、ポリエチレン系樹脂の総量(マスターバッチ中のポリエチレン系樹脂およびマスターバッチと混合するポリエチレン系樹脂の総量)100重量部あたり、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0040】
害虫防除剤マスターバッチと上述のポリエチレン系樹脂とを溶融混合する温度は、通常160〜300℃であり、好ましくは180〜260℃である。溶融混合は、公知の混合機、例えば、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール混練機などにより、行うことができる。
【0041】
フィラメントは、溶融紡糸により製造される。例えば、押出機等を用いて樹脂組成物を溶融し、ギアポンプを経るなどして、ダイ・ノズルから溶融押し出しし、押し出された樹脂組成物を引き取ってストランド状とし、該ストランド状の樹脂組成物を水や空気等の冷却媒体を用いて冷却して紡糸を行い、その後に、必要に応じて、加熱延伸、熱処理、オイル塗布等の処理を行い、巻き取る方法をあげることができる。
【0042】
フィラメントの断面形状としては、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、星型などがあげられる。
【0043】
モノフィラメントの用途としては、蚊帳、網戸、防虫網などのネット・網類;ロープ;糸;フィルター等があげられ、マルチフィラメントの用途としては、ロープ;ネット;カーペット;不織布;フィルター;靴;衣類等があげられる。特に害虫防除性を求められる用途、例えば、蚊帳、網戸、防虫網、フィルター、カーペット、靴、衣類などが好適である。
【0044】
フィラメントの防除の対象となる虫としては、クモ、ダニ、昆虫等の節足動物があげられる。更に例をあげて説明すると以下の通りである。蛛形綱では、例えばダニ目(Acarina)に属するトリサシダニ、ミカンハダニ、ケナガコナダニ等;真正蜘蛛目(Araneae)に属するジグモ、イエユウレイグモ等があげられる。唇脚綱では、例えばゲジ目(Scutigeromorpha)に属するゲジ等;イシムカデ目(Lithobiomorpha)に属するイッスンムカデ等があげられる。倍脚綱では、例えばオビヤスデ目(Polydesmoidea)に属するヤケヤスデ、アカヤスデ等があげられる。
【0045】
また、昆虫目としては、例えば以下のものがあげられる。シミ目(Thysanura)に属するヤマトシミ等;バッタ目(Orthoptera)に属するカマドウマ、ケラ、エンマコオロギ、トノサマバッタ、サバクトビバッタ、イナゴ等;ハサミムシ目(Dermaptera)に属するハサミムシ等;ゴキブリ目(Blattaria)に属するチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ等;シロアリ目(Isoptera)に属するヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ等;チャタテムシ目(Psocoptera)に属するカツブシチャタテ、ヒラタチャタテ等;ハジラミ目(Mallophaga)に属するイヌハジラミ、ネコハジラミ等;シラミ目(Anoplura)に属するコロモジラミ、ケジラミ、ヒトジラミ等;カメムシ目(Hemiptera)に属するトビイロウンカ、ツマグロヨコバイ、オンシツコナジラミ、モモアカアブラムシ、トコジラミ、クサギカメムシ等;コンチュウ目(Coleoptera)に属するカツオブシムシ、ウリハムシ、コクゾウムシ、ヒラタキクイムシ、ナガヒョウホンムシ、マメコガネ等;ノミ目(Siphonaptera)に属するネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ等;ハエ目(Diptera)に属するアカイエカ、ネッタイシマカ、ハマダラカ、ブユ、セスジユスリカ、チョウバエ、イエバエ、ヒメイエバエ、ツェツェバエ、ウシアブ、ヒラタアブ等;ハチ目(Hymenoptera)に属するスズメバチ、アシナガバチ、マツノミドリハバチ、クリタマバチ、クロアリガタバチ、イエヒメアリ等があげられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0047】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18Nおよび温度190℃の条件で測定を行った。
【0048】
(2)密度(単位:kg/m3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、測定試料片は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行い測定に用いた。
【0049】
実施例1
(1)害虫防除剤含有担体の調整
ペルメトリン(住友化学社製 商品名エクスミン)51重量部に、酸化防止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、AO−1と記す。)1.5重量部を溶解させた。次に、ペルメトリンとAO−1との混合物52.5重量部と非晶性シリカ(鈴木油脂製 商品名多孔質シリカ)47.5重量部(ペルメトリン100重量部あたり93.1重量部)とを攪拌混合し、害虫防除剤含有担体を調製した。
【0050】
(2)害虫防除剤マスターバッチの調整
高圧法低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン CE5502)(以下、LDと記す。)のペレット60.15重量部と、酸化防止剤(AO−1)0.05重量部(LD100重量部あたり0.08重量部)と、害虫防除剤含有担体31重量部(LD100重量部あたり51.54重量部)と、ステアリン酸亜鉛5重量部と、青色色材(住化カラー社製)4.52重量部とを、2軸押出機を用いて、温度200℃で溶融混練して、害虫防除剤マスターバッチを調製した。
【0051】
(3)フィラメント成形用樹脂組成物の調製
高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 商品名:ハイゼックス5000S;MFR=0.8g/10分、密度=948kg/m3)のペレット100重量部と害虫防除剤マスターバッチ16.5重量部とステアリン酸亜鉛7重量部とを、2軸押出機を用いて、温度260℃で溶融混練して、フィラメント成形用樹脂組成物を調製した。
【0052】
(4)フィラメントの製造
フィラメント成形用樹脂組成物を、0.8mmφ−150穴ダイ付の50mmφ押出機を用いて、吐出量20kg/hr、ダイ設定温度190℃で押し出し、ライン速度14m/分で引き取り、加熱水槽に通して112m/分で引き取り、200デニールのモノフィラメントに成形した。成形中のフィラメントの切断頻度は、1時間あたり2.7本であった。
【0053】
比較例1
害虫防除剤マスターバッチを調製する際に、高圧法低密度ポリエチレンのペレットを60.2重量部とし、酸化防止剤を加えないこと以外は、実施例1の方法に従いフィラメント成形用樹脂組成物を調製した。得られたフィラメント成形用樹脂組成物を、実施例1と同様にして、モノフィラメントに成形した。成形中のフィラメントの切断頻度は、1時間あたり5.1本であった。
【0054】
実施例2
害虫防除剤マスターバッチを調製する際に、高圧法低密度ポリエチレンのペレットを60.08重量部とし、酸化防止剤AO−1に替えてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバスペシャルティケミカルズ社製 商品名Irganox1010;以下、AO−2と記す。)0.12重量部とした以外は、実施例1の方法に従いフィラメント成形用樹脂組成物を調製した。得られたフィラメント成形用樹脂組成物を、実施例1と同様にして、モノフィラメントに成形した。成形中のフィラメントの切断頻度は、1時間あたり2.5本であった。
【0055】
実施例3
害虫防除剤マスターバッチを調製する際に、高圧法低密度ポリエチレンのペレットを60.11重量部とし、酸化防止剤AO−1に替えてn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャルティケミカルズ社製 商品名Irganox1076;以下、AO−3と記す)を0.09重量部とした以外は、実施例1の方法に従いフィラメント成形用樹脂組成物を調製した。得られたフィラメント成形用樹脂組成物を、実施例1と同様にして、モノフィラメントに成形した。成形中のフィラメントの切断頻度は、1時間あたり0.8本であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂100重量部と害虫防除剤含有担体0.1〜100重量部と酸化防止剤0.01〜10重量部とを、180〜260℃の温度で溶融混合する害虫防除剤含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリエチレン系樹脂と請求項1に記載の製造方法により製造された樹脂組成物とを180〜260℃の温度で溶融混合してなる樹脂組成物を、あるいは、請求項1に記載の製造方法により製造された樹脂組成物を溶融紡糸するフィラメントの製造方法。

【公開番号】特開2008−303348(P2008−303348A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153724(P2007−153724)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】