説明

家具用複合板の構造

【課題】軽くて構造が強く製造が容易な家具用複合板を提供するべく、家具用複合板の構造を提供する。
【解決手段】適当な形状の基板表面には熱凝固性樹脂の塗布、繊維層の被覆を交互に施し、該繊維層が該熱凝固性樹脂に浸漬した後、熱固化処理を行い、該繊維層を該熱凝固性樹脂中にて凝固させ、該基板表面に堅牢な表層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合板の構造に係り、特に家具に用いられる複合板及びその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
板材は多くの家具に使用されており、現有の技術では既に多くの種類の板材が開発されており、板財の強度や重量が必要に応じて選択できるようになっている。しかしこういった従来の木板やパーティクルボード等では克服しがたい欠点がある。例えば大量の木材を用いることから森林破壊に繋がること、また加工手順が複雑であり所望の形状に作るのが容易でなく品質と性能が空気の湿度と温度の影響を受けやすいことがある。
【0003】
よって現在は木板やパーティクルボードは徐々に使用されなくなる傾向にあり、反対に家具においてよく用いられるようになってきているのがプラスティックを用いた複合板である。中国特許第02135460.X号公開の「複合板及びその加工工藝」では、複合板をハニカムボード、プラスティック発泡充填体、内嵌合部より構成し、ハニカムボードにはペーパーハニカム、表面紙、底紙を含み、該ペーパーハニカムを該表面紙と底紙の間に挟み、該表面紙や底紙と粘着するのではなく、プラスティック発泡充填体により被覆する、或いはハニカムボードと内嵌合部の外面の局部のみを被覆し、ハニカムボードと内嵌合部と発泡充填体とを一体化する。
【0004】
また同じく中国の特許第0226887.0号公開の「複合板」では、表面板、底板、ハニカムボード、プラスティック発泡充填体より構成し、表面板と底板はブロー或いはヒートプレスで直接形成されるプラスティック板であり、ペーパーハニカムを該表面板と底板の間に挟み、該表面板の縁と相対する底板の縁は超音波溶接或いは接着剤で粘着密閉して固定し、プラスティック発泡充填体を該ペーパーハニカムと表面板、底板の接触していない隙間に充填する。
【0005】
また中国特許第200320106050号公開の「ハニカム架を具有するプラスチック複合板」では複合板、縁連結部より構成し、該複合板には底板、表面板及びペーパーハニカムを含み、該ペーパーハニカムを表面板と底板の間に粘着固定することで該複合板を強化するためのフレームや連結部品となる縁連結部には、ペーパーハニカムの四周や一部の周囲を被覆い、該縁連結部と表面板、底板の重合個所に粘着或いは溶接にて連結を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上述のような現在使用されている複合板には以下のような欠点がある。
第一に完成品に強度が足りないことであり、底板と表面板は独立したパーツであり、それらを粘着固定することで連結しているが、こういった連結方法では固定が堅牢でなく、底板と表面板の両者の間の充填物は粘着されないことも強度に影響する。
また使用するボードの重量自体が既に重い上に充填物の重量が加わることから全体が重くなってしまうことで運搬費用もかさむこと、更に製造プロセスが煩雑であると同時にブローやバキュームに必要な設備を設ける必要があること、並びに所望の各種形状に成形するのが容易でないこと等が挙げられる。
そこでこれらの欠点に鑑み、軽くて構造が強く製造が容易な複合板を提供するべく、本発明の家具用複合板の構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板、熱凝固性樹脂層、繊維層より構成し、該基板には一定の材質を用いて所望の形状に成形し、該基板の表面は複数層の熱凝固性樹脂及び繊維層により被覆し、熱固化の過程を経ることで該繊維層と該熱凝固性樹脂層を溶解させて一体化する。また該繊維層は一層から八層とするが、実際の層数は強度の必要性に応じて決定する。強度の必要性から、基本的には該複合板の上部に位置する繊維層の数は二層から八層とし、該複合板の底部に位置する繊維層の数は一層から二層とするが、底部も必要に応じては局部を二層から八層に設定しても構わない。最後に熱凝固性樹脂塗装を終了した後の表面には更に装飾層を設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、繊維層と熱凝固性樹脂層が溶解して結合することでしっかりと一体化し、また熱凝固性樹脂層も該基板と十分に結合して優れた強度が提供される他、重い石や木材を用いなくとも装飾層により石や木材を模倣した文様を提供することで重量を軽減でき、基板においては所望の形状に成形するのが容易であることから簡単な設備で様々な形状の製品を製造し易くなるなど、多くの利点を提供することに成功した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示すように、本発明の家具用複合板の構造には基板1と熱凝固性樹脂層2並びに繊維層3を含む。
該基板1はEVAや発泡スチロール等の発泡材質により形成され、所望の形状に成形される。該熱凝固性樹脂層2は該基板1の表面を被覆するものであるが、凝固性樹脂を該基板1表面に塗布して熱により凝固することで形成する。 該繊維層3においては化学繊維によるものであり、該基板1の表面を被覆し、該熱凝固性樹脂層2と共に熱凝固の過程で溶解並びに結合することでこれらと一体になるものであり、該繊維層3はグラスファイバーやカーボン繊維等の無機化学繊維とするが、これに限られるものではなく、例えばデュポン社のKEVLAR,NOMEX等を始めとした各種有機合成繊維を採用してもよい。
【0010】
該繊維層3においては、部位の違いにより層の数も異なるものとし、通常強度の必要性に応じ、一層から八層までとし、テーブル面として使用する際は、上表面の繊維層は二層以上とする。また同様に底面では一層か二層で足りるようになっている。またある特定の局部のみ強度の増強が必要である場合は、該繊維層3は二層以上八層以内に増やされ、且つ該繊維層3は皆該熱凝固性樹脂層2中に溶解及び凝結し、各該繊維層3の上部、底部はそれぞれ熱凝固性樹脂で被覆され、これにより強度の増強を図る。
【0011】
図1から3に示すように、該複合板の上表面には三層の繊維層3を具有し、底面には単層の繊維層3の構造を具有する。また図2に示すように、該複合板底面の縁付近のテーブルの脚挿入溝11内壁位置には三層の繊維層3の構造を具有する。再び図3に示すように、該複合板底面のテーブルの脚嵌合溝12の内壁位置にも三層の繊維層3の構造を具有する。これらの繊維構造は強度を高めるためであるが、三層に限られるものではなく、強度やコスト面を考慮した上で所望の層数に決定する。
【0012】
該複合板の製造方法には以下の手順を含む。
1.先ず発泡剤質により所望の形状を形成し、これを複合板の基板1とする。該発泡剤質の成型は鋳造や切削等を始めとする各種方式によるものとする。
2.更に流体状の熱凝固性樹脂を該基板1の表面に塗布し、該繊維層3を被覆したら該繊維層3上に更に熱凝固性樹脂を塗布し、こうすることで該繊維層3が該熱凝固性樹脂層2中に浸漬される。更に強化の必要のある上表面や底部の局部の位置には多層の繊維層3を被覆し、多層の熱凝固性樹脂を塗布することで該繊維層3を被覆するが、即ち強化の場合には繊維層3を被覆したら熱凝固性樹脂を塗布する手順を交互に繰り返す。
3.該熱凝固性樹脂層2と該繊維層3により被覆された該基板1に対し加熱を行い、該熱凝固性樹脂を固化させ、該基板1表面にてしっかりと粘着及び結合させる。作業場所内にて加熱並びにドライを行うか、或いは該熱凝固性樹脂層2と繊維層3により被覆された該基板1を金型に装入し、金型に加熱する方式でこれを行うものとする。加熱温度は100度〜150度、加熱時間は1時間〜2時間を最適とする。
4.表面処理を行うが、熱により固化が完成したら、該複合板表面に対し磨きや色づけ、塗装等を行う。但し上述の手順2における熱凝固性樹脂を最後に塗布する工程が完成した後、その外側に更に装飾層を被覆して熱固化処理を行うことにより、該装飾層を該複合板の表面に粘着及び結合させる方式を採ってもよい。
【0013】
また本発明の第二実施例では、第一実施例である上述と構造上は等しいが、製造方法が異なる。第二実施例の製造方法を以下に記す。
1.先ず発泡材質を所望の形状に形成し、これを複合板の基板1とする。該発泡剤質の形状形成の方式は鋳造や切削等の各種方式によるものとする。
2.熱凝固性樹脂に予め浸漬しておいた繊維布を該基板1の表面に被覆し、該複合板の上表面及び底面局部等の強度を強化する必要のある個所には熱凝固性樹脂に浸漬した繊維布を多層で被覆する。
3.該熱凝固性樹脂に予め浸漬された繊維布で被覆された基板1に対し加熱を行い、該熱凝固性樹脂を固化することで該基板1表面に粘着及び結合させる。作業場所内にて加熱並びにドライを行うか、或いは熱凝固性樹脂に浸漬された繊維布で被覆された基板1を金型に装入し、金型に対し加熱をする方法を採る。加熱温度は100度〜150度、加熱時間は1時間〜2時間を最適とする。
4.表面処理を行うが、熱固化が完了したら該複合板表面に対し磨きや色づけ、及び塗装等の表面処理を行う。若しくは上述の2の手順にて表面に更に装飾層を被覆し、更に熱固化処理を施することで該装飾層を該複合板の表面に粘着及び結合させてもよい。
【0014】
上述のように第二実施例では熱凝固性樹脂に浸漬した繊維布を用いており、第一実施例の製造方法で熱凝固性樹脂を直接塗布する方式と比較すると、製造過程は更に簡便化されるのと同時に、熱凝固性樹脂の含量もコントロールしやすくむらがないといった利点があることから複合板の品質を高めることに繋がるが、コストにおいてはやや高めになる。
実施例で述べるテーブルやテーブルの脚及びその連結方式は例に過ぎず、本発明は各種家具類に適応するものであるばかりか、例えば材質に金属を用い、石の文様を加工すれば低価格で重量感のある花崗岩を模倣した製品となり、また発泡材質に木目を加工すれば木目ではあるが重量は本物の三分の一程度の製品を提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の複合板の断面図である。
【図2】図1におけるAの局部拡大図である。
【図3】図1におけるBの局部拡大図である。
【符号の説明】
【0016】
1 基板
2 熱凝固性樹脂層
3 繊維層
11 テーブルの脚入用溝
12 テーブルの脚嵌合溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、熱凝固性樹脂層、繊維層より構成される複合板の構造において、
所望の形状に形成される該基板と、
該基板の表面を被覆すべく、熱凝固性樹脂を該基板表面に塗布して熱を加えることで固化させることで形成される該熱凝固性樹脂層と、
該基板の表面を被覆するものであり且つ化学繊維により形成される該繊維層と、
を含み、加熱及び固化の過程で該繊維層が該熱凝固性樹脂層と共に溶解して一体となることを特徴とする家具用複合板の構造。
【請求項2】
該繊維層は部位により層数が異なるが、通常では強度の必要性から一層から八層までとし、テーブル等として使用する際は、上表面の該繊維層は二層以上八層以内、また底面においては一層か二層であることを特徴とする請求項1記載の家具用複合板の構造。
【請求項3】
局部の強度増強のため、更に該繊維層も二層から八層設けるが、各該繊維層は該熱凝固性樹脂層中に溶解し、各繊維層の上表面及び底部には熱凝固性樹脂が被覆されることで増強を図ることを特徴とする請求項1記載の家具用複合板の構造。
【請求項4】
発泡材質を所望の形状に形成して複合板の該基板を形成するが、該発泡材質の成型は各種成型方式によるものであることを特徴とする請求項1記載の家具用複合板の構造。
【請求項5】
流体状の熱凝固性樹脂を該基板の表面に塗布した後、繊維層により被覆するが、更に該繊維層に熱凝固性樹脂を塗布することにより、該繊維層が該熱凝固性樹脂層に浸漬し、複合板の上表面や底面の局部の位置等を必要に応じて多層の繊維層で被覆すると共に多層の熱凝固性樹脂を塗布するべく、一層の繊維層で被覆したら一層の熱凝固性樹脂を塗布することを特徴とする請求項1又は4記載の家具用複合板の構造。
【請求項6】
熱凝固性樹脂層と繊維層で被覆された基板に対し加熱を行い、該熱凝固性樹脂を固化させることで該基板表面に粘着及び結合させることを特徴とする請求項1、4、5いずれか1項に記載の家具用複合板の構造。
【請求項7】
熱凝固が完了した後には、該複合板表面に対し磨きや色づけ、及び塗装を行うことを特徴とする請求項1、4、5,6いずれか1項に記載の家具用複合板の構造。
【請求項8】
熱凝固性樹脂の塗布が完了した後、更に表面に装飾層を被覆し、熱固化処理を施すことで、装飾層を該複合板の表面に粘着及び結合させることを特徴とする請求項1又は4記載の家具用複合板の構造。
【請求項9】
熱凝固性樹脂に予め浸漬した繊維布を該基板の表面に被覆し、必要に応じて該複合板の上表面と底面の局部の強化が必要な部分に、多層の該熱凝固性樹脂に予め浸漬された繊維布を被覆することを特徴とする請求項1から8いずれか1項に記載の家具用複合板の構造。
【請求項10】
該熱凝固性樹脂をに予め浸漬された繊維布に被覆された基板に対し加熱を行い、該熱凝固性樹脂を固化させて該基板表面に粘着及び結合させることを特徴とする請求項9記載の家具用複合板の構造。
【請求項11】
表面には更に装飾層を被覆した上で熱固化処理を施し、該装飾層を該複合板表面に粘着及び結合させることを特徴とする請求項9記載の家具用複合板の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−229439(P2007−229439A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194111(P2006−194111)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(506243242)
【Fターム(参考)】