説明

家畜の飲水場型自動分離装置

【課題】家畜に塗布する薬液量を自動的に算出し、その薬液量の算出から薬液塗布までを自動的に行うことができ、飲水後適当な側の扉を開き家畜を仕分けることができる家畜の飲水場型自動分離装置を提供する。
【解決手段】家畜8の入り口2と家畜8が首を入れることができる開口31を有する家畜8の囲繞手段3と、その開口31の外側に設けられた給水手段4と、囲繞手段3内の家畜8に薬液9を塗布する薬液塗布手段5と、家畜8の体重を測定する体重測定器6とからなり、前記開口31に、水を飲みにきた家畜8を感知するセンサー11が設けられており、感知することにより薬液塗布システムが作動し、体重測定手段(体重測定器6)により塗布量か決定され、またこの塗布量と、その算出された体長から塗布ヘッド51の移動速度を決める家畜の飲水場型自動分離装置である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家畜の飲水場型自動分離装置に関し、特に家畜の飲水習性を利用して家畜の分離・仕分けを行い、また薬液塗布手段を有する飲水場型自動分離装置に関する。
【0002】
【従来技術と問題点】従来、放牧している家畜を薬液塗布または仕分けや一頭分離・捕獲のためには柵内に家畜群を追い込み、その中から目的の家畜を選定して群れから離し、必要に応じて固定を行っており、多大な労力と時間を要していた。また薬液散布のためには、家畜の飲水習性を利用して自動的に家畜に薬液散布を行う家畜薬液散布装置が考案されている(特願平07−299192)。
【0003】この薬液散布装置は一端に家畜の入口があり、他端に家畜が頭を入れて飲水できる開口を持つ囲いを設け、個体識別によって家畜に薬液の散布が必要と判断された家畜に対しては設置されている体重測定装置により測定された体重に応じて所定量の薬液を家畜が飲水している間に薬液を固定の散布ヘッドから散布するものである。しかし、この装置には下記の欠点がある。
【0004】・入口に扉がないため、家畜2頭以上が一緒に入り、各家畜が十分飲水が行えない惧れがあり、また目的の家畜に薬液の塗布・散布が充分行われない可能性がある。
・入口に扉がないため、十分な飲水ないし薬液散布が完了する以前に囲いの外に出てしまう可能性がある。
【0005】・散布が固定の散布ヘッドから行われるため、家畜への薬液散布の散布可能範囲が主として家畜の背中の中央部となり、害虫が多く寄生する尻部には薬液はかかりづらい。
・散布ヘッドは、散布範囲を広くするため、また、体高の高い家畜に合わせなくてはならないため、高い位置に設置する必要がある。このため、風により薬液の散布方向がずれてしまう可能性がある。
・家畜の体重に応じて所定の薬液を散布するとしているが、散布量を調整する具体的な方式は公開されていない。
【0006】
【目的】本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、飲水の習性を利用して家畜が1頭づつ飲水でき且つ適宜の場所への仕分けを行うことができ、また害虫等のつき易い家畜の尻まで薬液を塗布することができ、さらに家畜の個体に適した適量の薬液を塗布することができる家畜の薬液塗布手段を有する飲水場型自動分離装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【問題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは、一端に家畜の開閉扉付き入口と、他端に飲水のため家畜が首を入れることができる開口部と、左右側面に扉付き出口を有する家畜の囲繞手段からなり、家畜が1頭入ったとき、入口の開閉扉を閉じ、飲水後個体識別手段の情報に基づき左右いずれかの側の扉を開け、その開かれた出口から当該家畜を適宜の場所に出すことを特徴とするものである。
【0008】また本発明は、一端に家畜の開閉扉付き入口と、他端に飲水のため家畜が首を入れることができる開口部と、左右側面に扉付き出口とを有する家畜の囲繞手段と、その開口部の外側に設けられた給水手段と、家畜の体重測定手段と、囲繞手段に入った家畜の個体識別手段と、家畜の肩部または腰部から尻部までの間の距離を測定する手段を有すると共に開口部に首を入れた家畜の肩部と尻部との間を移動可能な薬液塗布ヘッドを有する薬液塗布手段とからなり、
【0009】前記個体識別手段で、家畜の個体識別を行って薬液塗布の必要があると判断された家畜に対して、その家畜が前記開口に首を入れて飲水している間に、薬液塗布ヘッドが、体重測定結果に基づいて決定された薬液の塗布量と算出された家畜の尾端から肩部までの距離とから決定される移動速度で、家畜の尻部端から肩部まで背線の近傍を移動して、一定流量で薬液を塗布することを特徴とするものである。
【0010】本発明の囲繞手段は、一方の側に家畜の入り口と、他方の側に家畜が外側に首を出して水を飲むための開口が設けられている。そして、家畜の入り口には開閉自在な柵が設けられ、また、家畜の入り口の付近には、家畜の全体が入ったことを感知するセンサーが設けられており、このセンサーが感知することにより入り口の柵が閉じるようになっている。また、家畜が外側に首を出して水を飲むための開口にも、家畜が首を出したことを感知するセンサーが設けられており、このセンサーが感知することにより薬液塗布システムが作動する。
【0011】さらに、家畜が外側に首を出して水を飲むための開口に、家畜に取り付けられた識別標識、また体内に埋め込まれたマイクロチップから個体情報を読み出すことができるアンテナを設けてもよく、そのアンテナも特に限定するものではなく好適なものを用いればよい。そして、読み出した個体情報の処理は、マイコンやパソコン等の好適手段によって処理すればよく、また、処理更新した情報を家畜の識別標識やマイクロチップに書き込むようにしてもよい。
【0012】囲繞手段の左右の扉も開閉自在に、また、左右単独に開けることができるように設けられており、薬液の塗布が終了した家畜を囲繞手段の左側、また、右側へ出すことができるようになっている。そして、囲繞手段の家畜の入り口や、左右に設けられている柵を開閉する手段も、公知の好適手段を用いて構成すればよく、特に限定するものではない。
【0013】例えば、モーターや圧力等を使用して柵の開閉を行うようにすればよい。囲繞手段の家畜の入り口と反対側に設けられている開口の外側には給水手段が設けられており、給水槽等に水が溜められている。この給水手段は、囲繞手段内の家畜が開口をくぐって給水手段から水を飲むことができる位置に設けられている。
【0014】囲繞手段に設けられる開閉扉及び扉は、引き戸形式が望ましいが、家畜の出入りを規制出来るのものであればいかなるものでもよい。個体識別手段は、家畜に取り付けられた個体データを記録したチップと、これを読み取り、その個体に関する体重や飲水行動等に関する蓄積情報に基づいて周辺装置を制御する適宜の制御信号を出すコンピュータを含む制御手段からなる。左右の扉から出される適宜の場所とは、柵内であったり、放牧地であったり、いろいろである。
【0015】薬液塗布は、薬液を家畜の身体に注ぐことであるが、ここでは霧状あるいは広幅状に散布することも本発明の「塗布」に含まれるものとする。この手段は、家畜の肩部または腰部から尻部までの間の距離を測定する手段を有すると共に開口部に首を入れた家畜の肩部と尻部との間を移動可能な薬液塗布ヘッドを有し、更に、薬液塗布ノズルと近接スイッチを上下及び可変速度で水平方向に移動でき、且つ家畜の腰部の高さ及び尻端位置を検出する手段を有する。
【0016】体重や体長の測定手段は機械式や電気式等特に限定するものではなく、マイコンやパソコン等の好適手段によって算出するようにすればよい。かくして、薬液の塗布量は、体重によって決まり、その量の薬液が、薬液塗布ヘッドで各家畜の家畜の尻端から肩部の背戦の近傍を移動する間に塗布される。体重が同一の場合体長の短い家畜の場合は、尻部から肩部までの塗布ヘッドの速度を遅くし、体長が長い家畜の場合には、速く移動する。
【0017】
【作用】本発明の家畜の飲水場型自動分離装置は以上のように構成されているので、囲繞手段の外側に設けた給水槽等に水を入れておくことにより、柵の中や放牧地に放されている家畜が、習性上水を求めて飲水場型自動分離装置の囲繞手段の中に入ってくる。
【0018】家畜が飲水のために囲繞手段内に進入し、尾端が入口に進入し終えると、入口が閉じ、後続の家畜の進入を遮断する。開口に家畜を感知するセンサーが設けられているので、首を入れ飲水を開始すると、そのセンサーが家畜を感知する。その感知によってアンテナが個体識別を開始し、体重測定手段により家畜の体重が測定される。識別された個体番号から、前回の塗布日などを確認し塗布時期であると判断すると薬液塗布手段が作動する。
【0019】薬液塗布手段に備えられた家畜の腰部高さを測定する手段により、家畜の腰の高さが測定され、その測定された高さから、塗布ノズルの高さが決定される。次に、塗布ノズルを家畜の尻部方向へ後退させ、センサによって、尻端位置を検出する。測定された体重から薬液塗布量を算出する。次いで、算出した尻端位置から家畜の肩部までの距離とノズルの流量から薬液塗布手段の移動速度を算出し、塗布作業を行う。塗布後、左右の所望の扉が開かれ、適宜の場所に退出する。
【0020】
【実施例】以下本発明の家畜の飲水場型自動分離装置の一実施例を図面に従って説明すると、図1は、本発明に係わる家畜の飲水場型自動分離装置を示す概略側面図であり、図中の1は本発明に係わる飲水場型自動分離装置、2は開閉自在の柵21を設けた家畜8が入る家畜用の入り口である。3は家畜8が首を出す開口31を設けた囲繞手段であり、33は囲繞手段3の左扉で、34は左扉33の開閉手段である。また、囲繞手段3の家畜の入り口側に向かって右側には、左側と同様に右扉35とその開閉手段36が設けられている。
【0021】4は飲料用の給水手段、5は害虫駆除の薬液9を塗布する薬液塗布手段、6は家畜8の体重を測定する体重測定器、7は家畜8が飲水場型自動分離装置内に入り易いように設けた踏み台、8は家畜、9は塗布される薬液である。図2は、飲水場型自動分離装置の家畜の入り口側を示す図であり、家畜用の入り口2に設けられている開閉自在の開閉扉21は、開閉手段22により開閉される。
【0022】また、開閉扉21は図のように左右に設けてもよいが、片側のみに設けるようにしてもよい。10は家畜8の全体が入ったことを感知するセンサーであり、これが感知することにより開閉扉21が閉まる。
【0023】図3は、飲水場型自動分離装置の家畜が首を出す開口側を示す図であり、家畜8が首を出す開口31には、家畜8が首を出したことを感知するセンサー11が設けられており、このセンサー11が感知することにより薬液塗布手段が作動する。また、この開口31に、家畜8に取り付けられた識別標識(図示せず)の個体情報を読み出すことができるアンテナ12(一点破線)を設ける。
【0024】図4は、薬液塗布手段を示す概略側面図であり、51は家畜8の前後方向に移動する薬液9の塗布ヘッド、52は薬液9が流出ないし噴出する塗布ノズル、53は家畜8の近接スイッチ腰の高さを検出する近接スイッチ、54は塗布ヘッド51が移動するアーム、55は近接スイッチ53等のケーブルが収納されるケーブルベア、56は塗布ヘッド51を移動させる駆動モーター、57は塗布ヘッド51の移動用のベルト、58は移動距離等を計測するエンコーダー、59は薬液9を送る送液ポンプである。
【0025】
【効果】本発明の家畜の飲水場型自動分離装置は、以上のように、装置内には1頭しか入れず、また飲水または薬液塗布が終わる前に出てしまうとこがなく、更に、飲水後適当な側の扉を開ければ自然にその扉から家畜は出るので、飲水の習性を利用して極めて面倒な仕分け作業を簡単に行える。
【0026】また、従来のように家畜の背部分に集中して多量の薬液が塗布されることがなく、害虫のつき易い家畜の尻から肩までの範囲に適量の薬液を確実に塗布することができる。この飲水場型自動分離装置は、薬液の塗布が完了した家畜を選別する場合でも、装置の左右の扉を単独で開けることができるため、本装置を柵と柵の間に設置することにより、所望の柵に容易に家畜を振り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる家畜の飲水場型自動分離装置を示す概略側面図
【図2】 飲水場型自動分離装置の家畜の入り口側を示す図
【図3】 飲水場型自動分離装置から家畜が首を出す開口側を示す図
【図4】 薬液塗布手段を示す概略側面図
【符号の説明】
1−飲水場型自動分離装置,2−入り口,21−開閉扉,22−開閉手段,3−囲繞手段,31−開口,33−左扉,34−開閉手段,35−右扉,36−開閉手段,4−給水手段,5−薬液塗布手段,51−塗布ヘッド,52−塗布ノズル,53−近接スイッチ,54−アーム,55−ケーブルベア,56−駆動モーター,57−ベルト,58−エンコーダー,59−送液ポンプ,6−体重測定器,7−踏み台,8−家畜,9−薬液,10−センサー,11−センサー,12−アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】一端に家畜の開閉扉付き入口と、他端に飲水のため家畜が首を入れることができる開口部と、左右側面に扉付き出口を有する家畜の囲繞手段からなり、家畜が1頭入ったとき、入口の開閉扉を閉じて飲水させ、飲水後個体識別手段の情報に基づき左右いずれかの側の扉を開け、その開かれた出口から当該家畜を適宜の場所に出すことを特徴とする家畜の飲水場型自動分離装置
【請求項2】一端に家畜の開閉扉付き入口と、他端に飲水のため家畜が首を入れることができる開口部と、左右側面に扉付き出口とを有する家畜の囲繞手段と、その開口部の外側に設けられた給水手段と、家畜の体重測定手段と、囲繞手段に入った家畜の無線による個体識別手段と、家畜の腰部から尻部までの間の距離を測定する手段を有すると共に開口部に首を入れた家畜の肩部と尻部との間を移動可能な薬液塗布ヘッドを有する薬液塗布手段とからなり、前記個体識別手段で、家畜の個体識別を行って薬液塗布の必要があると判断された家畜に対して、その家畜が前記開口に首を入れて飲水している間に、薬液塗布ヘッドが、体重測定結果に基づいて決定された薬液の塗布量と算出された家畜の尾端から肩部までの距離とから決定される移動速度で、家畜の尻端から肩部に移動して、一定流量で薬液を塗布することを特徴とする家畜の飲水場型自動分離装置
【請求項3】一端に家畜の開閉扉付き入口と、他端に飲水のため家畜が首を入れることができる開口部と、左右側面に扉付き出口を有する家畜の囲繞手段からなり、家畜が1頭入ったとき、入口の開閉扉を閉じて飲水させ、飲水及び薬液塗布後個体識別手段の情報に基づき左右いずれかの側の扉を開け、その開かれた出口から当該家畜を適宜の場所に出すことを特徴とする請求項2の家畜の飲水場型自動分離装置
【請求項4】前記薬液塗布手段が、薬液塗布ノズルと近接スイッチを上下及び可変速度で水平方向に移動でき、且つ家畜の腰部の高さ及び尾端を検出する手段を有することを特徴とする請求項2の家畜の飲水場型自動分離装置

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−50758(P2000−50758A)
【公開日】平成12年2月22日(2000.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−237968
【出願日】平成10年8月11日(1998.8.11)
【出願人】(591131833)農林水産省草地試験場長 (1)
【出願人】(598033804)
【出願人】(598115133)
【出願人】(598115144)
【出願人】(000237824)富士平工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】