説明

家畜用人工乳の製造方法

【課題】原料の品質を下げることなく、性能の優れた家畜用人工乳を低コストで提供できる手段を提供すること。
【解決手段】本発明の家畜用人工乳の製造方法は、穀物原料を粉砕して粒径0mm〜0.355mmの粒子が重量比で60%〜90%含まれる微粉を得る工程と、得られた微粉を加熱加圧処理により固形化する工程と、得られた固形化物を破砕し、粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が重量比で40%〜80%含まれるクランブルを得る工程とを含むクランブル化処理により、1種類又は2種類以上の穀物原料クランブルを調製し、次いで、前記穀物原料クランブルを合計で25重量%〜70重量%配合した家畜用人工乳原料組成物を調製することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用人工乳の製造方法及び該方法により製造された家畜用人工乳に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、豚人工乳原料が高騰している。特に、バイオエタノール用原料や新興工業国の需要増などが理由となり世界的に需給が逼迫している小麦、トウモロコシ、大豆などの穀物原料の価格が高騰している。その結果、豚人工乳製品の価格競争が激化し、コストを抑えた製品の提供が重要な課題となっている。一方、単純に安価な原料を使用することで飼料としての品質や栄養的価値を下げることは、ナイーヴな飼養管理が求められる幼齢期の子豚にとって、発育停滞、事故率増加の原因となり、農家の生産成績の低下が危惧される。従って、飼料としての性能を向上させつつ低コスト化を図る方法が求められている。
【0003】
従来、豚人工乳の飼料形態には、ペレットや顆粒状など様々な形態が存在する。そのうち連続式の撹拌造粒機を用いて製造される顆粒状の人工乳は、ペレットと比較して大量製造が比較的容易なため、製造コストを低く抑えられる点で優れている。また、ペレットと比較して製造時の加熱条件が温和であることから、熱に弱い飼料添加物や機能性原料を添加しやすいという利点がある。
【0004】
一方、課題としては、製造時に原料品質の影響を受けて顆粒の粒度が変動しやすく、製品粒度がロット間で安定しないという問題がある。また、哺乳期後期の豚人工乳は自動給餌機を用いて給与する場合が多いので、給餌機からスムースに落下する流動性が求められるが、連続式の撹拌造粒機で作られた豚人工乳は顆粒化が十分に進まず、給餌機からの流動性が安定しないという問題がある。
【0005】
近年の養豚事業は大規模化が進み、少数の大規模養豚農家に対する顧客満足度を如何に向上させるかが、飼料事業を展開する上での重要なポイントの一つとなっている。
【0006】
特許文献1には、澱粉質原料の含有量を所定の割合にすることで、豚用人工乳の流動性を向上させることができる旨が記載されている。しかしながら、特許文献1の実施例では、澱粉質原料の含有量と人工乳の流動性についての検討は全くなされていない。上記問題点を低コストで解決できる手段として満足できるものは知られていないのが現状である。
【0007】
飼料原料のエクストルージョンが子豚の発育に及ぼす効果を検討した報告は従来よりあるが、発育改善効果は原料穀物の種類に依存しており、エクストルージョンによって子豚の増体を促進できるとは必ずしもいえない。例えば、非特許文献1では、小麦及びトウモロコシではエクストルージョンにより増体効果は得られなかった。非特許文献2では、炭水化物源の違い及びエクストルージョンについて、早期離乳子豚の発育に及ぼす効果を検討している。炭水化物源としてはトウモロコシ、コーンスターチ、米、小麦粉、マイロが用いられており、炭水化物源の種類によって早期離乳子豚の発育は異なっていたが、エクストルージョン自体による発育改善効果は認められなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−210936号公報
【非特許文献1】X. Serrano; The extrusion-cooking process in animal feeding. Nutritional implications. Cahiers Options Mediterraneennes, vol.26, p.107-114, 1997 (South European Feed Manufactures Conference, Reus (Spain), 9-11 May 1996)
【非特許文献2】Hongtrakul K et al., Swine Day 1996, p. 43-46
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、原料の品質を下げることなく、性能の優れた家畜用人工乳を低コストで提供できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、家畜用人工乳に配合する穀物原料を、一旦微粉化した後に加熱加圧処理して固形化し、これを所定の粒径組成のクランブルとして調製し、このクランブル化穀物原料を所定の配合割合で用いて人工乳とすると、子豚の増体を有意に促進できること、並びに撹拌造粒機で造粒して顆粒状の人工乳とした場合には、粒径のばらつきが少なく、消化吸収性及び流動性に優れた家畜用人工乳を低コストで提供できることを見出した。さらに、上記方法により小麦、トウモロコシ及び大豆粕のクランブル化穀物原料を混合して用いた場合には、相乗的な増体効果が得られることを見出し、本願発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、穀物原料を粉砕して粒径0mm〜0.355mmの粒子が重量比で60%〜90%含まれる微粉を得る工程と、得られた微粉を加熱加圧処理により固形化する工程と、得られた固形化物を破砕し、粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が重量比で40%〜80%含まれるクランブルを得る工程とを含むクランブル化処理により、1種類又は2種類以上の穀物原料クランブルを調製し、次いで、前記穀物原料クランブルを合計で25重量%〜70重量%配合した家畜用人工乳原料組成物を調製することを含む、家畜用人工乳の製造方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法により製造された家畜用人工乳を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、使用する原料を変更することなく、従来用いられる原料を用いて、品質・性能が安定した家畜用人工乳を低コストで製造できる方法が提供された。本発明は以下のような効果を奏する。
(1) 微粉化後に加熱加圧処理した穀物原料が用いられるので、家畜の消化吸収性が向上する。
(2) 穀物原料を工場内で原粒から処理することで、従来のようにパン粉や小麦粉等を購入するよりも原料コストを圧縮することが可能となる。
(3) 本発明の人工乳の粒度は、中間原料である穀物原料クランブルの粒度の影響が強いため、撹拌造粒機で造粒した際にも粒度が非常に安定化し、同一製造ロット内及び異なるロット間での粒度のばらつきが大幅に解消される。粒度が粗く且つ均一である本発明の人工乳は、流動性が非常に良く、給餌機から安定的に供給されるようになる。
(4) 一定の粒度の豚人工乳を大量製造することが可能となり、顧客の要望に応じて粒度を調節した品質の安定した豚人工乳製品を提供することが可能となり、大規模農家に対する顧客満足度を向上させることが可能となる。
(5) 穀物原料は単独で用いた場合でも家畜の増体を促進できるが、複数種類の穀物原料を配合すると相乗的な効果が得られ、家畜の増体促進効果がより高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の人工乳製造方法は、(A) 穀物原料をクランブル化処理する工程、及び(B) (A)で得られた穀物原料クランブルを、脱脂粉乳、アミノ酸等の他の原料に所定割合で混合して家畜用人工乳原料組成物を調製する工程を含む。さらに、(C) (B)で調製した人工乳原料組成物を撹拌造粒機により顆粒化する工程を含んでもよい。
【0014】
用いる穀物原料は、従来人工乳の原料に用いられているいかなる穀物原料であってもよく、特に限定されないが、具体的に例示すると、小麦、トウモロコシ、大豆粕、米等が挙げられる。1種類のみでもよく、2種類以上の穀物原料を用いてもよい。下記実施例に記載されるように、穀物原料は1種類のみでも好ましく家畜の増体を促進できるが、複数種類の穀物原料を用いた場合には相乗的な効果が得られ、増体促進効果がさらに高まる。本発明においては、上述の通り、穀物原料は、所定のクランブル化処理(工程(A))を施してクランブル状にして用いる。特に限定されないが、複数の穀物原料を用いる場合には、穀物原料の種類ごとにクランブル化処理を行なってもよく、あらかじめ複数の穀物原料を混合した原料にクランブル化処理(工程(A))を施してもよい。
【0015】
クランブル化処理(工程(A))は、(1)穀物原料を粉砕して粒径0mm〜0.355mmの粒子が重量比で60%〜90%含まれる微粉を得る工程、(2)(1)で得られた微粉を加熱加圧処理により固形化する工程、(3)(2)で得られた固形化物を破砕し、粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が重量比で40%〜80%含まれるクランブルを得る工程を含む。
【0016】
上記(1)の工程は、市販の粉砕機を用いて容易に行うことができる。穀物原料を微粉化することが重要であり、通常は粒径0mm〜0.355mmの粒子が重量比で60%〜90%含まれる程度であればよい。この穀物粉末の粒度分布が上記範囲内であるかどうかは、目開き0.355mmの篩を用いて粉末を篩分して、0.355mmの篩を通過する粒子の重量が、粉末全体の重量に占める割合を計算することにより確認することができ、公知の超音波篩い分け測定器等を用いて容易に調べることができる。
【0017】
(1)で得られた穀物の微粉は、次いで、加熱加圧処理を行なって固形化する(工程(2))。加熱温度は100℃〜140℃程度、圧力は15bar〜35bar程度であればよい。その他のパラメータとしては、特に限定されないが、水添加量は10%〜25%程度であればよい。このような加熱加圧処理は、市販のペレット製造機、エキスパンダーやエクストルーダー等を用いて容易に行うことができる。
【0018】
工程(3)では、(2)で得られた穀物の固形化物を、直ちにドライヤー等を用いて乾燥させ、市販のローラーミル、ハンマーミル、スクリーン式粉砕機等を用いて破砕してクランブルを得る。このクランブルから、粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が重量比で40%〜80%、好ましくは55%〜75%含まれるクランブルを得る。本発明の人工乳製造方法では、このような粒度組成を有するクランブル(以下、「穀物原料クランブル」という)が用いられる。かかる穀物原料クランブルは、例えば、破砕後のクランブルを目開き1.0mm〜2.0mm程度のふるいで篩分し、篩下したものを用いることで、容易に得ることができる。クランブルの粒度分布が上記範囲内であるかどうかは、目開き0.355mmの篩と目開き1.000mmの篩とを用いてクランブルを篩分して、0.355mmの篩を通らず且つ1.000mmの篩を通過する粒子の重量が、クランブル全体の重量に占める割合を計算することにより確認することができ、公知の超音波篩い分け測定器等を用いて容易に調べることができる。このようにして調製した穀物原料クランブルを配合して造粒を行なうと、後述するとおり、一定した粒度の人工乳を容易に製造することが可能になる。
【0019】
上記したクランブル化処理工程(A)により、1種類ないし2種類以上の穀物原料クランブルを調製する。工程(B)では、これらの穀物原料クランブルと公知の他の人工乳原料とをミキサー等を用いて十分に混合し、人工乳原料組成物を調製する。穀物原料クランブルの配合率は、人工乳原料組成物全体に対して25重量%〜70重量%、好ましくは35重量%〜60重量%である。複数種類の穀物原料クランブルを用いる場合には、それらの合計の配合率が上記範囲内であればよい。他の人工乳原料は、公知の人工乳に原料として用いられる成分であればいかなるものであってもよく、特に限定されない。具体例を挙げると、一般に、脱脂粉乳及びホエーパウダー等の乳成分、大豆タンパク質及び魚粉等のタンパク質成分、リジン及びトレオニン等のアミノ酸成分、砂糖、ブドウ糖等の糖成分が用いられる。また、他の人工乳原料の形態も特に限定されず、例えば撹拌造粒機等で造粒された形態のものを上記穀物原料クランブルと混合して人工乳原料組成物を調製してもよい。この他、該組成物には、家畜用人工乳に使用し得る公知の飼料添加物等を加えてもよい。
【0020】
工程(B)で調製した人工乳原料組成物は、造粒せずにそのまま人工乳として用いることができる。下記実施例に記載されるように、本発明の方法に従って製造された穀物原料クランブルを所定割合で含有する人工乳原料組成物は、造粒せずにマッシュ形態のままで家畜に給与しても望ましい増体促進効果を得ることができる。
【0021】
あるいは、上記したように、該原料組成物を撹拌造粒機を用いて顆粒化し(工程(C))、顆粒状の人工乳として調製してもよい。顆粒化すると、さらに増体促進効果を高めることができる。必要に応じ、造粒した顆粒は、例えば目開き2.0mm程度の適当な篩で篩分して、過剰に大きなサイズの顆粒を除去してもよい。該顆粒化工程(工程(C))は、市販の撹拌造粒機を用いて容易に行なうことができる。連続式の撹拌造粒機を用いて製造される顆粒状の人工乳は、ペレットと比較して大量製造が比較的容易であり、製造コストを低く抑えることができる。また、ペレットと比較して製造時の加熱条件が温和であることから、上記工程(B)において熱に弱い機能性原料や飼料添加物等を添加しても、その機能が損なわれるおそれがないため、このような熱に弱い物質を配合し易いという利点もある。顆粒化する際の原料組成物への水添加量は、当業者の経験則により任意に定めることができ、特に限定されないが、原料組成物重量に対しておおよそ5%〜12%程度の添加量で好ましく造粒することができる。この水添加量は、穀物原料を上記クランブル化処理を行なうことなく用いて調製される従来法による原料組成物よりも低いが(下記実施例参照)、これは、工程(B)で得られる原料組成物が、従来法による原料組成物と比較して造粒が進み易いことによる。造粒後には添加した水を乾燥させる必要があるが、水添加量が低いということは、乾燥に要する熱量コストも削減できる可能性があり、かかる点も低コスト化に有利である。
【0022】
上記工程(A)ないし(C)を含む方法により製造される家畜用人工乳は、従来法により製造される家畜用人工乳と比較して、粒度分布の分布幅が狭く、粒子サイズが均一である。具体的には、粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が全体の60重量%以上、好ましくは80重量%以上を占め、粒径0.150mm未満の粒子は15重量%以下、好ましくは5重量%以下である。粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が占める割合の上限は特に限定されないが、通常95重量%以下である。なお、ここでいう粒径とは、工程(3)において上述したのと同様に、種々のサイズの目開きの篩を用いて篩分する方法により測定されるものである。従って、「粒径0.355mm〜1.000mm」とは、目開き0.355mmの篩は通過せず、且つ、目開き1.000mmの篩は通過するサイズをいい、「粒径0.150mm未満」とは、目開き0.150mmの篩を通過するサイズをいう。また、例えば「粒径0.150mm以上」といった場合には、目開き0.150mmの篩を通過しないサイズをいう。ただし、上述した通り、「粒径0mm〜0.355mm」のように下限が0mmで示される場合には、目開き0.355mmの篩を通過する全てのサイズを指し、「粒径0.355mm未満」と同じ意味を表すものとする。また、本発明の方法で製造される人工乳は、従来法による人工乳と比較して、安息角及び圧縮度が小さく、流動性に優れる。ここで、安息角とは、粉末を平面に堆積させた時に、平面と粉末の稜線が作る角度のことであり、JIS R 9301-2-2に規格化された方法等により測定されるものである。また、圧縮度とは、((密比重−粗比重)/(密比重)×100)により計算される値である。粗比重とは粉体を容器中に圧密せずにゆるやかに充填することにより得られる見かけの密度のことであり、密比重とは粉体試料を入れた測定容器を機械的にタップすることによって得られる見かけの密度のことである。粗比重、密比重は、「第15改正日本薬局方、一般試験法3-01」に記載された「かさ密度」および「タップ密度」に対応し、かかる文献に記載された方法等により、公知の自動粉体測定器等を用いて容易に調べることができる。
【0023】
本発明により製造される家畜用人工乳は、牛、豚、羊等のいずれの家畜用であってもよいが、好ましくは豚用である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1 原料の調製
(1) 小麦の原粒(カナダ産Hard Red Winter)を粉砕機(ホソカワミクロン(株)製ACM-200)を用い、製造能力3トン/h、粉砕ロータ回転数1900rpmという条件で粉砕した。粉砕後の粒度を超音波フルイ分け測定器((株)セイシン企業製ロボットシフターRPS-105)で測定したところ、0.355mm未満の粒子の重量比が67.9%となり、非常に細かく微粉化されていた。
【0026】
(2) 微粉砕した小麦原料は、一軸のエクストルーダーを用い、ダイ径6mm×60穴、ダイ圧力20bar、バレル温度118〜122℃、水添加量750リットル/時間、製造能力5トン/時間という条件で加熱加圧処理を行なった。加熱加圧処理したサンプルは、直ちにドライヤーで乾燥後、ローラーミル(CPM Roskamp社製)でクランブル化した。クランブル品は目開き1.0mmのフルイで篩分し、篩下したものを供試原料とした。供試原料の粒度を超音波フルイ分け測定器で測定したところ、0.355mm以上の粒子の重量比が62.8%となった。
【0027】
(3) 小麦以外に、トウモロコシおよび大豆粕についても上記と同様の方法で調製を行った。トウモロコシは微粉砕後の0.355mm未満の粒子の重量比が73.4%となり、加熱加圧・クランブル後の0.355mm以上の粒子の重量比が79.3%となった。また大豆粕は微粉砕後の0.355mm未満の粒子の重量比が84.2%となり、加熱加圧・クランブル後の0.355mm以上の粒子の重量比が69.9%となった。
【0028】
実施例2 子豚への給与試験1
(1) 試験方法
ア. 試験区分を表1に示した。対照区は市販の小麦粉を多配(32重量%)した飼料とした。粉砕小麦区は、小麦粉に替えて上記実施例1(1)で調製した小麦微粉を配合(28.4重量%)した飼料とし、EXT小麦区は、小麦粉に替えて上記実施例1(2)で調製した小麦クランブルを配合(28.4重量%)した飼料とした。なお、これら3種類の飼料間の粗タンパク質(CP)と可消化養分総量(TDN)およびリジンの水準は統一した(CP:23%、TDN:87%、リジン:1.6%)。飼料形態はいずれもマッシュとした。
【0029】
【表1】

混合プレミックス:ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の飼料添加物、トウモロコシ、魚粉等を含む基礎配合飼料である。
乳原料ミックス:脱脂粉乳、ホエー等の乳原料を含む基礎配合飼料である。
【0030】
イ. 試験農場で生産した三元交配豚LWD又はWLDの離乳直後(約21日齢、体重約6kg)の子豚を用いた。各区4頭として表1に示した飼料を与え、2週間の発育試験を行なった(5反復、計60頭)。その他の飼養管理は試験農場の慣行に従った。
【0031】
ウ. 調査項目として、発育成績および飼料摂取量を測定した。
【0032】
(2) 試験結果
表2に発育試験成績を示した(各区4頭×5反復の平均値)。試験開始時の体重は全区共に5.8kgと揃えた。結果、増体量は対照区(277g/日)、粉砕小麦区(285g/日)、EXT小麦区(294g/日)であり、EXT小麦を使用した区は対照の小麦粉に比較し発育成績が6%向上した。飼料摂取量は対照区(411g/日)、粉砕小麦区(431g/日)、EXT小麦区(428g/日)であり、粉砕小麦区、EXT小麦区が多くなる傾向を示した。飼料要求率は対照区(1.52)、粉砕小麦区(1.54)、EXT小麦区(1.48)であり、EXT小麦区で改善する傾向を示した。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例3 子豚への給与試験2
(1) 試験方法
ア. 次に、上記実施例1 (3)で調製したトウモロコシクランブルの子豚に与える影響を調査するため、試験を実施した。試験区分を表3に示した。対照区はEXT小麦に加えて、市販のトウモロコシなどの穀物を使用(14%)した飼料とした。EXTメーズ区は、対照区をベースに、市販の穀物の6%を上記実施例1(3)に示したトウモロコシクランブル(EXTメーズ)に代替した配合割合とした。なお、これら2種類の飼料間の粗タンパク質(CP)と可消化養分総量(TDN)およびリジンの水準は統一した(CP:23%、TDN:87%、リジン:1.6%)。飼料形態はいずれもマッシュとした。
【0035】
【表3】

動物性原料:乳原料や魚粉等の動物性原料を含む基礎配合飼料である。
穀類:トウモロコシ、濃縮大豆たん白を含む基礎配合飼料である。
混合プレミックス:ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の飼料添加物や糖類、油脂および酵素等を含む基礎配合飼料である。
【0036】
イ. 試験農場で生産した三元交配豚LWD又はWLDの離乳直後(約21日齢、体重約6kg)の子豚を用いた。各区4頭として表3に示した飼料を与え、2週間の発育試験を行なった(6反復、計48頭)。その他の飼養管理は試験農場の慣行に従った。
【0037】
ウ. 調査項目として、発育成績および飼料摂取量を測定した。
【0038】
(2) 試験結果
表4に発育試験成績を示した(各区4頭×6反復の平均値)。試験開始時の体重は全区共に6.5kgと揃えた。結果、増体量は対照区(319g/日)、EXTメーズ区(337g/日)であり、EXTメーズを使用した区は対照区と比較し発育成績が6%向上した。飼料摂取量は対照区(423g/日)、EXTメーズ区(423g/日)であり、試験区間で差はなかった。飼料要求率は対照区(1.33)、EXTメーズ区(1.26)であり、EXTメーズ区で改善する傾向を示した。
【0039】
【表4】

【0040】
実施例4 子豚への給与試験3
(1) 試験方法
ア. 次に、上記実施例1 (3)で調製した大豆粕クランブルの子豚に与える影響を調査するため、試験を実施した。試験区分を表5に示した。対照区はEXT小麦、EXTメーズに加えて、市販の濃縮大豆たん白を8%使用した飼料とした。EXT大豆粕区は、対照区をベースに、濃縮大豆たん白の全量を上記実施例1(3)に示した大豆粕クランブル(EXT大豆粕)11.6%に置換した配合割合とした。なお、これら2種類の飼料間の粗タンパク質(CP)と可消化養分総量(TDN)およびリジンの水準は統一した(CP:23%、TDN:89%、リジン:1.6%)。飼料形態はいずれもマッシュとした。
【0041】
【表5】

動物性原料:乳原料や魚粉等の動物性原料を含む基礎配合飼料である。
混合プレミックス:ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の飼料添加物や糖類、油脂および酵素等を含む基礎配合飼料である。
【0042】
イ. 試験農場で生産した三元交配豚LWD又はWLDの離乳直後(約21日齢、体重約6kg)の子豚を用いた。各区4頭として表5に示した飼料を与え、2週間の発育試験を行なった(5反復、計40頭)。その他の飼養管理は試験農場の慣行に従った。
【0043】
ウ. 調査項目として、発育成績および飼料摂取量を測定した。
【0044】
(2) 試験結果
表6に発育試験成績を示した(各区4頭×5反復の平均値)。試験開始時の体重は全区共に6.6kgと揃えた。結果、増体量は対照区(337g/日)、EXT大豆粕区(350g/日)であり、EXTメーズを使用した区は対照区と比較し発育成績が4%向上した。飼料摂取量は対照区(467g/日)、EXTメーズ区(493g/日)であり、EXT大豆粕区で増加する傾向となった。飼料要求率は対照区(1.40)、EXT大豆粕区(1.42)であり、試験区間に差はなかった。
【0045】
【表6】

【0046】
実施例5 子豚への給与試験4
(1) 試験方法
ア. 次に、市販の穀物原料を用いた飼料と、上記実施例1(2)〜(3)で調製した穀物クランブル(EXT小麦、EXTメーズ及びEXT大豆粕)を混合使用した飼料の子豚に対する効果を比較するため、以下の給与試験を実施した。試験区分を表7に示した。対照区は市販の穀物原料(小麦粉、トウモロコシ、濃縮大豆たん白)を多配(55.2重量%)した飼料とした。EXT区は、市販の穀物原料に替えて上記実施例1(2)〜(3)で調製したEXT小麦、EXTメーズおよびEXT大豆粕を含む穀物クランブルを配合(合計53.8重量%)した飼料とした。なお、これら2種類の飼料間の粗タンパク質(CP)と可消化養分総量(TDN)およびリジンの水準は統一した(CP:22%、TDN:85%、リジン:1.6%)。飼料形態はいずれもマッシュとした。
【0047】
【表7】

動物性原料:乳原料や魚粉等の動物性原料を含む基礎配合飼料である。
穀類:トウモロコシ、小麦粉、濃縮大豆たん白を含む基礎配合飼料である。
EXT穀類:EXT小麦、EXTメーズ及びEXT大豆粕を含む基礎配合飼料である。
混合プレミックス:ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の飼料添加物や糖類、油脂および酵素等を含む基礎配合飼料である。
【0048】
イ. 試験農場で生産した三元交配豚LWD又はWLDの離乳直後(約21日齢、体重約7kg)の子豚を用いた。各区4頭として表7に示した飼料を与え、2週間の発育試験を行なった(1反復、計8頭)。その他の飼養管理は試験農場の慣行に従った。
【0049】
ウ. 調査項目として、発育成績および飼料摂取量を測定した。
【0050】
(2) 試験結果
表8に発育試験成績を示した(各区4頭×1反復の平均値)。試験開始時の体重は両区共に7.0kgと揃えた。給与試験の結果、増体量は対照区(255g/日)、EXT区(288g/日)であり、EXT区は対照に比較し発育成績が13%向上した。飼料摂取量は対照区(369g/日)、EXT区(378g/日)であり、EXT区が対照区と比較して多くなる傾向を示した。飼料要求率は対照区(1.45)、EXT区(1.31)であり、EXT区は対照区と比較し改善する傾向であった。
【0051】
【表8】

【0052】
実施例6 人工乳製品の物性比較試験
(1) 試験方法
ア. 次に、実施例1(2)〜(3)で調製した穀物クランブルが、顆粒化した人工乳製品の物性にどのような影響を与えるか検討するため、以下の試験を実施した。試験区分を表9に示した。対照区は穀物原料として、小麦粉、パン粉、濃縮大豆たん白等を多く含む配合割合とし、試験区は上記実施例1(2)〜(3)で調製したEXT小麦、EXTメーズ、EXT大豆粕を多配した配合割合とした。
【0053】
【表9】

混合プレミックス:ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の飼料添加物、トウモロコシ、魚粉等を含む基礎配合飼料である。
乳原料ミックス:脱脂粉乳、ホエー等の乳原料を含む基礎配合飼料である。
【0054】
イ. 対照区、試験区の原料はそれぞれ4トン分用意し、あらかじめミキサーで混合した後、連続攪拌造粒機(ホソカワミクロン(株)製シュギミキサー)へ製造能力4トン/hの速度で供給し、水を添加しながら原料を高速で攪拌しながら造粒を行った。造粒後は直ちにドライヤークーラーに導入し室温まで冷却され、目開き1.4mmのフルイにて篩分し、篩下したものを試作品とした。
【0055】
ウ. 試作品の調査は、超音波フルイ分け測定器による粒度分布、安息角、自動粉体測定器(ホソカワミクロン(株)製Powder Tester)による粗比重、密比重および圧縮度((密比重−粗比重)/(密比重)×100)を測定した。
【0056】
(2) 試験結果
製造時、対照区は水添加率を原料重量に対して15%(600リットル/時)で製造したが、試験区は造粒が非常に進みやすいため、水添加率を原料重量に対して10%(400リットル/時)で製造した。これらの水は造粒後の乾燥工程で乾燥しなければならないため、試験区は製造時の熱量コストも削減できる可能性が示唆された。試作人工乳の粒度分布を図1に示した。対照区の粒度分布は分布が広く、微粉域が多い傾向が見られたが、試験区の粒度分布は分布幅が狭く、顆粒化が十分進行したことがわかった。表10に試作品の物性測定結果を示した。試験区は対照区に比べ、安息角および圧縮度が小さくなり、対照区に比べて流動性に優れた。流動性が良いという特長は自動給餌機を用いて人工乳を給与する場合に重要であり、この点においても試験区は対照区よりも優れることが分かった。
【0057】
【表10】

【0058】
実施例7 子豚への給与試験5
(1) 試験方法
ア. 子豚への給与試験4では、子豚に給与した試験飼料はいずれもマッシュ(各原料を単純に混合して調製した飼料)であった。そこで、この原料組成物を攪拌造粒機にて造粒し、顆粒状にした人工乳組成物の子豚に対する効果を確認するため、以下の給与試験を実施した。試験区分を表11に示した。対照区は市販の穀物原料(小麦粉、トウモロコシ、パン粉)を配合(36.5重量%)した飼料とした。EXT区は、市販の穀物原料の大部分を上記実施例1(2)〜(3)で調製したEXT小麦、EXTメーズおよびEXT大豆粕を含む穀物クランブルに置換(35.7重量%)した飼料とした。なお、これら2種類の飼料間の粗タンパク質(CP)と可消化養分総量(TDN)およびリジンの水準は統一した(CP:22%、TDN:87%、リジン:1.6%)。次いで、各区の原料混合物はそれぞれ上記実施例6に記載した方法により造粒処理を行い、飼料形態が顆粒状になるように調製した。
【0059】
【表11】

動物性原料:乳原料や魚粉等の動物性原料を含む基礎配合飼料である。
穀類:小麦粉、トウモロコシ、パン粉を含む基礎配合飼料である。
EXT穀類:EXT小麦、EXTメーズおよびEXT大豆粕を含む基礎配合飼料である。
混合プレミックス:ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の飼料添加物や糖類、油脂および酵素等を含む基礎配合飼料である。
【0060】
イ. 試験農場で生産した三元交配豚LWD又はWLDの離乳直後(約21日齢、体重約6kg)の子豚を用いた。各区5頭として表11に示した飼料を与え、2週間の発育試験を行なった(1反復、計10頭)。その他の飼養管理は試験農場の慣行に従った。
【0061】
ウ. 調査項目として、発育成績および飼料摂取量を測定した。
【0062】
(2) 試験結果
表12に発育試験成績を示した(各区5頭×1反復の平均値)。試験開始時の体重は両区共に6.6kgと揃えた。給与試験の結果、増体量は対照区(274g/日)、EXT区(342g/日)であり、EXT区は対照区に比較し発育成績が25%向上した。飼料摂取量は対照区(371g/日)、EXT区(441g/日)であり、EXT区が対照区と比較して多くなる傾向を示した。飼料要求率は対照区(1.35)、EXT区(1.28)であり、EXT区は対照区と比較し改善する傾向を示した。
【0063】
【表12】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例6において試作した人工乳の粒度分布を示す図である。横軸の数値は篩の目開きを示す(単位:μm)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物原料を粉砕して粒径0mm〜0.355mmの粒子が重量比で60%〜90%含まれる微粉を得る工程と、得られた微粉を加熱加圧処理により固形化する工程と、得られた固形化物を破砕し、粒径0.355mm〜1.000mmの粒子が重量比で40%〜80%含まれるクランブルを得る工程とを含むクランブル化処理により、1種類又は2種類以上の穀物原料クランブルを調製し、次いで、前記穀物原料クランブルを合計で25重量%〜70重量%配合した家畜用人工乳原料組成物を調製することを含む、家畜用人工乳の製造方法。
【請求項2】
前記家畜用人工乳原料組成物を撹拌造粒機により顆粒化することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記穀物原料は小麦、トウモロコシ、大豆粕及び米からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記家畜が豚である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法により製造された家畜用人工乳。
【請求項6】
請求項4記載の方法により製造された豚用人工乳。

【図1】
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