説明

容器の気密性検査方法及び検査システム

【課題】精度の良い検査を効率的に行うことのできる容器の気密性検査方法及び検査システムを提供することである。
【解決手段】被検査容器10からの気体の漏れの有無を検出するリーク検査装置200を用いて液体を収容した容器の気密性を検査する容器の気密性検査システムであって、前記リーク検出装置200に前記容器10を被検査容器として投入する前に、前記容器10の所定部位を押し込むようにして押圧する容器押圧機構100を有する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容した容器の気密性を検査する気密性検査方法及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査容器からの気体の漏れの有無を検出するリーク検出装置が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この種のリーク検出装置は、被検査容器を被ったキャップ部材(容器)から吸引される気体に含まれる当該被検査容器に収容され得る気体の量をガス検出器によって検出している。この検査結果に基づいて被検査容器の気密性を判定することができる。
【0003】
また、別種のリーク検出装置として、被検査容器をチャンバ内に入れ、該チャンバ内を減圧した後に、該チャンバ内の圧力を測定し、その測定結果に基づいて前記被検査容器からの気体の漏れの有無を検査するバキューム式エアリーク検査装置が知られている。このバキューム式エアリーク検査装置は、被検査容器内に収容されている気体が外気と同じ空気であっても、当該被検査容器からの気体の漏れの有無を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−332088号公報
【特許文献2】特開2004−257917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した被検査容器から漏れる気体をガス検出器が直接検出するリーク検査装置(特許文献1、特許文献2参照)では、被検出容器に極めて小さい(例えば、数μmの大きさ)ピンホールしか開いていない場合、被検査容器を被うキャップ部材内に当該被検査容器から漏れた気体がガス検出器にて検出可能な量まで溜まるまでに時間がかかり、効率的な検査を行うことが難しい。そこで、感度の高いガス検出器を用いることが考えられる。しかし、感度の高いガス検出器が高価になるという問題のほか、ノイズを検出し易くなって、ガス検出器の出力から精度良く目的の気体を検出するための処理が難しくなるという別の問題が生じてしまう。
【0006】
また、前述したバキューム式エアリーク検査装置でも、被検出容器に極めて小さいピンホールしか開いていない場合には、同様に、被検出容器から漏れる気体がチャンバ内に圧力変化を検出することができるほど溜まるまでに時間がかかり、効率的な検査を行うことが難しい。そこで、チャンバ内の内圧を更に低くして被検査容器のピンホールからの気体の漏れを促進させることが考えられる。しかし、被検査容器の耐圧の問題もあり、チャンバ内の内圧を低くするのにも限度がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、精度の良い検査を効率的に行うことのできる容器の気密性検査方法及び検査システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る容器の気密性検査方法は、被検査容器からの気体の漏れの有無を検出するリーク検査装置を用いて液体を収容した容器の気密性を検査する容器の気密性検査方法であって、前記リーク検出装置に前記容器を被検査容器として投入する前に、前記容器の所定部位を押し込むようにして押圧する容器押圧ステップを有する構成となる。
【0009】
このような構成により、リーク検査装置に容器が被検査容器として投入される前に、当該容器の所定部位が押圧されて、その容器にあるピンホール等から内部の液体が僅かに漏れ出して当該容器の外面にその液体が付着した状態となり得る。この状態で、当該容器がリーク検出装置に被検査容器として投入されると、その容器の外面に付着した液体の蒸発により生じた気体がピンホール等から漏れる気体に加わって、実質的により多くの気体が当該容器から発せられるようになる。
【0010】
本発明に係る容器の気密性検査方法において、前記リーク検査装置として、被検査容器をチャンバ内に入れ、該チャンバ内を減圧した後に、該チャンバ内の圧力を測定し、その測定結果に基づいて前記被検査容器からの気体の漏れの有無を検査するバキューム式エアリーク検査装置を用いるように構成することができる。
【0011】
このような構成により、所定部位が押圧されて外面に液体が付着した状態となる容器がバキューム式エアリーク検査装置に被検査容器として投入されると、バキューム式エアリーク検査装置では、減圧されたチャンバ内で前記容器の外面に付着した液体の蒸発により生じた気体がピンホール等から漏れる気体に加わるので、チャンバ内での圧力変化が大きくなる。この変化の大きい圧力の測定結果に基づいて前記容器からの気体の漏れの有無を精度よく、より効率的に検出することができるようになる。
【0012】
また、本発明に係る容器の気密性検査方法において、予め定めたリーク検査部位を下方にするように前記容器の姿勢を変える容器姿勢変更ステップを有し、前記容器押圧ステップは、前記リーク検査部位を下方にした姿勢の前記容器の前記所定部位を押圧するように構成することができる。
【0013】
このような構成により、予め定めたリーク検査部位が下方に位置する姿勢にて容器の所定部位が押圧されるようになるので、容器のリーク検査部位にあるピンホール等から内部の液体を漏れ出させることができるようになる。従って、リーク検査装置において容器の前記リーク検査部位にあるピンホール等からの気体の漏れの有無を、精度良く効率的に検出することができるようになる。
【0014】
更に、本発明に係る容器の気密性検査方法において、前記容器姿勢変更ステップは、正立姿勢の前記容器を倒立姿勢に反転させる容器反転ステップを含むように構成することができる。
【0015】
このような構成により、容器の口部等の形成された上部が下側となる倒立姿勢にて当該容器の所定部位が押圧されるようになるので、正立姿勢で容器内の上方部に空間があっても、その容器の上部にあるピンホール等から内部の液体を漏れ出させることができるようになる。従って、リーク検査装置において容器の上部にあるピンホール等からの気体の漏れの有無を、精度良く効率的に検出することができるようになる。
【0016】
本発明に係る容器の気密性検査システムは、被検査容器からの気体の漏れを検出するリーク検査装置を用いて液体を収容した容器の気密性を検査する容器の気密性検査システムであって、前記容器の所定部位を押し込むように押圧する容器押圧機構を有し、該容器押圧機構にて押圧された後の前記容器が被検査容器として前記リーク検査装置に供給されるように構成される。
【0017】
このような構成により、リーク検査装置に容器が被検査容器として投入される前に、容器押圧機構が容器の所定部位を押圧してその容器にあるピンホール等から内部の液体が僅かに漏れ出して当該容器の外面にその液体が付着した状態となり得る。この状態で、当該容器がリーク検査装置に被検査容器として投入されると、その容器の外面に付着した液体の蒸発により生じた気体がピンホール等から漏れる気体に加わって、実質的により多くの気体が当該容器から発せられるようになる。
【0018】
本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記リーク検査装置は、被検査容器をチャンバ内に入れ、該チャンバ内を減圧した後に、該チャンバ内の圧力を測定し、その測定結果に基づいて前記被検査容器からの気体の漏れの有無を検査するバキューム式エアリーク検査装置であるよう構成することができる。
【0019】
前記容器押圧機構によって所定部位が押圧された容器は、作業者がリーク検査装置に提供することができる。また、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記容器押圧機構にて押圧された後の前記容器を前記リーク検査装置に搬送する搬送機構を有するように構成することができる。
【0020】
後者の場合、容器押圧機構によって押圧された後の容器が搬送機構によってリーク検査装置に自動的に提供することができるようになる。
【0021】
また、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記容器押圧機構は、容器を当該容器の前記所定部位を露出するように保持する容器保持部と、該容器保持部に保持された容器の前記所定部位を押し込むように押圧する押圧機とを有するように構成することができる。
【0022】
このような構成により、容器保持部が容器を保持すると、押圧機によってその容器の所定部位が押圧され得るようになる。
【0023】
更に、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記容器押圧機構は、前記容器保持部と前記押圧機とが一体化された複数の押圧ユニットと、前記複数の押圧ユニットを循環移動させる押圧ユニット移動機構とを有し、該押圧ユニット移動機構により循環移動する前記複数の押圧ユニットのうち予め定めた投入位置に位置する押圧ユニットの前記容器保持部に容器を投入セットする容器投入機構と、前記循環移動する複数の押圧ユニットのうち予め定めた取出し位置に位置する押圧ユニットの前記容器保持部から容器を取出す容器取出し機構とを有するように構成することができる。
【0024】
このような構成により、複数の押圧ユニットが循環移動する過程で、投入位置に位置する押圧ユニットの容器保持部に容器が容器投入機構によって投入され、取出し位置に位置する押圧ユニットの容器保持部から容器が容器取出し機構によって取出される。そして、各容器は、押圧ユニットの容器保持部に投入されてからその容器保持部から取出されるまでの間の所定期間、押圧機によってその所定部位が押圧され得るようになる。
【0025】
また、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記押圧ユニット移動機構は、前記複数の押圧ユニットを円状に循環移動させるように構成することができる。
【0026】
このような構成により、複数の押圧ユニットが円状に循環移動する過程で、投入位置に位置する押圧ユニットの容器保持部に容器が投入され、取出し位置に位置する押圧ユニットの容器保持部から容器が取出される。
【0027】
また、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記複数の押圧ユニットそれぞれの容器保持部は、予め定めたリーク検査部位を下方にして当該容器を保持する構造となり、前記容器投入機構は、前記リーク検査部位を下方にして容器が前記容器保持部に投入セットされるように前記容器の姿勢を変える第1容器姿勢変更機構を有し、前記容器取出し機構は、前記リーク部位を下方にして保持された容器を前記容器保持部から所定の取出し姿勢にて取出すように前記容器の姿勢を変える第2容器姿勢変更機構を有するように構成することができる。
【0028】
このような構成により、複数の押圧ユニットが循環移動する過程で、容器が投入位置に位置する押圧ユニットの容器保持部にリーク検査部が下方になる姿勢にて投入され、取出し位置に位置する押圧ユニットの容器保持部から容器が所定の取出し姿勢にて取出される。そして、各容器は、押圧ユニットの容器保持部に投入されてから取出されるまでの間の所定期間、押圧機によってその所定部位が押圧される際に、その容器のリーク検査部位にあるピンホール等から内部の液体を漏れ出させることができるようになる。そして、前記所定の取出し姿勢にて取出された容器がリーク検査装置に投入されると、当該リーク検査装置において容器の前記リーク検査部位にあるピンホール等からの気体の漏れの有無を、精度良く効率的に検出することができるようになる。
【0029】
更に、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記第1容器姿勢変更機構は、正立姿勢の前記容器を倒立姿勢に反転させる第1容器反転機構を含むように構成することができる。
【0030】
このような構成により、複数の押圧ユニットが循環移動する過程で、投入位置に位置する押圧ユニットの容器保持部に、容器がその口部等の形成された上部が下側となる倒立姿勢にて保持された状態で、その所定部位が押圧されるようになるので、正立姿勢で容器内の上方部に空間があっても、その容器の上部にあるピンホール等から内部の液体を漏れ出させることができるようになる。
【0031】
また、本発明に係る容器の気密性検査システムにおいて、前記第2容器姿勢変更機構は、倒立姿勢にて保持された容器を前記容器保持部から正立姿勢にて取出すように前記容器の姿勢を変える第2容器反転機構を含むように構成することができる。
【0032】
このような構成により、複数の押圧ユニットが循環移動する過程で、投入位置に位置する押圧ユニットの容器保持部に倒立姿勢にて投入セットされた容器が、その所定部位が押圧機によって押圧された後、取出し位置にてその押圧ユニットの容器保持部から正立姿勢にて取出されるようになる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る容器の気密性検査方法及び検査システムによれば、容器をリーク検査装置に被検査容器として投入する前にその容器の所定部位を押し込むように押圧することで、リーク検査装置に投入される前記容器の外面に漏れ出して付着した液体の蒸発により生じた気体がピンホール等から漏れる気体に加わって、実質的により多くの気体が当該容器から発せられるようになるので、精度の良い検査をより効率的に行うことができるようになる。
【0034】
なお、検査対象となる容器に収容される液体は、常温においてより精度の良い効率的な検査が可能になるという観点から、アルコール系の液体等、常温で揮発性の比較的高い液体であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】検査対象の一例となる容器の側面形状を示す側面図である。
【図1B】検査対象の一例となる容器の正面形状を示す正面図である。
【図2】本発明に係る容器の気密性検査システムの基本的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す検査システムにおける容器押圧機構、その容器押圧機構に容器を投入する容器投入機構及び、その容器押圧機構から容器を取出す容器取出し機構を示す平面図である。
【図4A】図3に示す容器押圧機構における各押圧ユニットの構造例を示す断面説明図である。
【図4B】図4Aに示す構造の押圧ユニットの動作例を示す断面説明図である。
【図5】図2に示す検査システムにおけるバキューム式エアリーク検査装置の構成例を示す図である。
【図6】図5に示すバキューム式エアリーク検査装置のチャンバ内の圧力変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0037】
検査対象となる容器は、例えば、燃料電池の燃料となるメタノール(揮発性液体燃料)が充填されたカートリッジであり、図1A及び図1Bに示すような外観構造となっている。なお、図1Aは、容器10の側面形状を示しており、図1Bは、容器10の正面形状を示している。
【0038】
図1A及び図1Bにおいて、この容器10(燃料カートリッジ)は、胴部11の上端にノズル構造となる口部12が形成されている。胴部11は、例えば、PETやオレフィン樹脂等の柔軟性のあるプラスチックにて形成され、口部12は、例えば、ポリカーボネイト等の硬質のプラスチックにて形成されている。胴部11と口部12とが、双方に形成された雄ネジと雌ネジとをその間にOリングを挟んでねじ込み結合する等によって、気密性が保持されるように接合されている。胴部11の上方に僅かに空間Sが形成されるように液体燃料(メタノール)が容器10内に収容されている。この容器10(燃料カートリッジ)から液体燃料の燃料電池への供給は、口部12(ノズル)を当該燃料電池の燃料口に接合させて胴部11を指等で押すことによってなされる。
【0039】
本発明の実施の一形態に係る容器の気密性検査システムの基本的な構成は図2に示すようになっている。この検査システムは、前述した構造の容器10(燃料カートリッジ)を検査対象としている。
【0040】
図2において、この検査システムは、容器押圧機構100と、リーク検査装置としてのバキューム式エアリーク検査装置(以下、単にエアリーク検査装置という)200とを備えている。容器押圧機構100には、容器投入機構130と容器取出し機構140とが機能的に結合し、エアリーク検査装置200にも、容器投入機構230と容器取出し機構240とが機能的に結合している。また、第1搬送機構310が容器押圧機構100の容器投入機構130に向かって延び、第2搬送機構300が容器押圧機構100の容器取出し機構140とエアリーク検査装置200の容器投入機構230との間に敷設され、更に、第3搬機構320がエアリーク検査装置200の容器取出し機構240から延びている。
【0041】
このような検査システムでは、前工程(例えば、液体燃料の入れられた胴部11に口部12を取り付ける工程)から第1搬送機構310によって容器投入機構130まで搬送された容器10は、容器投入機構130によって容器押圧機構100に投入される。容器押圧機構100では、その投入された容器10の胴部11が後述するように押圧される。その押圧された後の容器10が容器取出し機構140によって容器押圧機構100から取出されて第2搬送機構300に移される。容器10は、更に、第2搬送機構300によってエアリーク検査装置200の容器投入機構230まで搬送され、この容器投入機構230によってエアリーク検査装置200に投入される。エアリーク検査装置200では、投入された容器10が、後述するように、チャンバ内に入れられ、該チャンバ内が減圧された後に、該チャンバ内の圧力が測定され、その測定結果に基づいて容器10からの気体の漏れの有無が検査される。そして、その検査結果が当該容器10の気密性検査の結果として得られる。この検査後の容器10は、エアリーク検査装置200から容器取出し機構240によって取出されて第3搬送機構320に移される。良品の(気体漏洩が無いと判断された)容器10は、第3搬送機構320によって後工程(例えば、箱詰め工程)まで搬送される。一方、不良品の(気体漏洩があると判断された)容器10は、搬送途中にて第3搬送機構320から所定の不良品収容部に排出される。
【0042】
前述した検査システムについて更に詳述する。
【0043】
容器押圧機構100、容器投入機構130及び容器取出し機構140は、図3に示すように構成されている。
【0044】
図3において、容器押圧機構100は、円環状の支持リング体120と、支持リング体120の内側に所定間隔をもって配置固定された複数の押圧ユニット110とを有している。支持リング体120は、図示外の駆動機構によってその中心を軸にして回転させられるようになっており、その駆動機構及び支持リング体120(押圧ユニット移動機構)によって複数の押圧ユニット110が所定速度にて一定方向(矢印A方向)に円状に循環移動する。
【0045】
複数の押圧ユニット110のそれぞれは、図4A及び図4Bに示すように構成されている。図4A及び図4Bにおいて、押圧ユニット110は、保持ブロック113(保持部)とソレノイド・アクチュエータ112(押圧機)とを有している。保持ブロック113には、上方に開放して、容器10の口部12を下向きに収容する凹部113aと、側方面から凹部113aに至る側方孔113bが形成されている。ソレノイド・アクチュエータ112は、保持ブロック113の側方孔113bの形成された面に固定されるブラケット114によって、プランジャ112aが側方孔113bに挿通するように固定支持されている。プランジャ112aの先端部には大径の湾曲面が形成され、ソレノイド・アクチュエータ112の動作によって進出するプランジャ112の先端部(大径の湾曲面)が保持ブロック113の凹部113aにセットされた容器10の胴部11を押し込むように押圧するようになっている(図4B参照)。
【0046】
図3に戻って、第1搬送機構310の終端部と容器押圧機構100との間に設置された容器投入機構130は、把持部131が腕部132の先端に固定され、腕部132の他端部が回動機構133に結合した構造となっている。このような構造の容器投入機構130では、第1搬送機構310の終端部に正立姿勢(口部12を上方にした姿勢:図1A、図1B参照)で位置する容器10を把持部131が把持し、この状態で回動機構133が腕部132を水平面に平行な軸を中心にして容器押圧機構100に向けて回動させる。これにより、把持部131に把持された容器10が、正立姿勢から反転されて、容器押圧機構100の投入位置Sinに位置する押圧ユニット110の保持ブロック113に、口部l2を下方にした倒立姿勢にてセットされる(図4A参照)。
【0047】
容器押圧機構100と第2搬送機構300の始端部との間に設置された容器取出し機構140も、把持部141が腕部142の先端に固定され、腕部142の他端部が回動機構133に結合した構造となっている。このような構造の容器投入機構140では、容器押圧機構100の取出し位置Soutに位置する押圧ユニット110の保持ブロック113に倒立状態で保持された容器10(図4A参照)を把持部141が把持し、この状態で回動機構143が腕部142を水平面に平行な軸を中心にして第2搬送機構300に向けて回動させる。これにより、把持部141に把持された容器10が、倒立姿勢から反転され、容器押圧機構100の押圧ユニット110から取出されて正立姿勢(取出し姿勢)にて第2搬送機構300の始端部に移される。
【0048】
次に、エアリーク検査装置200は、図5に示すように構成されている。
【0049】
図5において、エアリーク検査装置200は、検査台220への載置及び検査台220からの除去が可能となるチャンバ201から延びてバキューム・ポンプにつながる配管202に、電磁弁203及び圧力センサ204が設けられた構造となっている。チャンバ201内の圧力を検出する圧力センサ204からの検出信号は、アナログ・デジタル変換器(A/D)212を介してコントローラ210に供給される。電磁弁203は、コントローラ210からの制御信号に従って動作する駆動回路211によって開閉駆動される。また、コントローラ210には表示部及び操作部を含む操作盤213が接続されており、コントローラ210は、操作盤213における操作部の操作に応じた処理を実行するとともに、圧力のモニタ情報や検査結果等の各種情報を操作盤213の表示部に表示させる。
【0050】
容器投入機構230(図2参照)は、第2搬送機構300の終端部から容器10をエアリーク検査装置200の検査台220に投入する。また、容器取出し機構240(図2参照)は、検査の終了後、チャンバ201が除去されて検査台220に残った容器10を取出して第3搬送機構320の始端部に移す。
【0051】
前述した検査システムの動作について詳述する。
【0052】
容器押圧機構100(図3参照)において、支持リング体120が回転することによって所定間隔をもって配列された複数の押圧ユニット110が循環移動している。その過程で、投入位置Sinに位置する押圧ユニット110の保持ブロック113に、第1搬送機構310の終端部に達した容器10が、容器投入機構130によって、図4Aに示すように、口部12を下方にした倒立姿勢にて投入セットされる。正立姿勢では、胴部11の上方部に僅かな空間Sがあって(図1A、図1B参照)、気密性を損なう可能性の高い口部12と胴部11との接合部分に液体燃料が当接していなくても、その容器10を倒立姿勢にすることで、容器10内の液体燃料が口部12と胴部11との接合部分に当接するようになる。
【0053】
このように容器押圧機構100の投入位置Sinで押圧ユニット110の保持ブロック113に容器10が順次投入セットされつつ、各押圧ユニット110が循環移動する過程で、容器10のセットされた押圧ユニット110が投入位置Sinから押圧開始位置Ssに移ると、その押圧ユニット110におけるプランジャ112aが進出するようにソレノイド・アクチュエータ112が動作する。これにより、押圧ユニット110の保持ブロック113に倒立姿勢で保持された容器10の胴部11が、図4Bに示すように、プランジャ112aによって押し込まれるように押圧される。容器10の胴部11がプランジャ111aによって押圧される状態は、押圧開始位置Ssの押圧ユニット110が移動して押圧終了位置Seに達するまで継続される。胴部11が押圧されることにより、胴部11、特に口部12と胴部11との接合部分にピンホール等、気密性を損なう欠陥があると、その欠陥から内部の液体燃料が漏れ出して胴部11の外面に付着した状態となる。
【0054】
なお、支持リング体120の回転速度は、押圧ユニット110が押圧開始位置Ssから押圧終了位置Seまで移動する時間、即ち、容器10が押圧されている時間が所定時間(例えば、数秒から数十秒の間の時間)となるように設定されている。
【0055】
プランジャ112aが退避するようにソレノイド・アクチュエータ112が動作して胴部11の押圧が終了する押圧終了位置Seから、押圧ユニット110が容器取出し位置Soutに移ると、容器取出し機構140によって、倒立姿勢の容器10がその押圧ユニット110の保持ブロック113から正立姿勢に反転されて取出され、第2搬送機構300の始端部に移される。すると、容器10は、第2搬送機構300によってエアリーク検査装置200の容器投入機構230まで搬送される。そして、容器投入機構230が第2搬送機構300の終端部に達した容器10をエアリーク検査装置200の検査台220に投入する。
【0056】
エアリーク検査装置200では、図5に示すように、検査台200に載置された容器10にチャンバ201が被せられる。この状態で、電磁弁303が開放され、バキューム・ポンプの吸引動作によってチャンバ201内が減圧される。所定時間のバキューム・ポンプによる吸引動作によって、チャンバ201内の圧力が図6に示すように、大気圧から徐々に低下する。そして、吸引開始から所定時間(真空引き時間)が経過した時刻toにて、コントローラ210は、圧力センサ204からの検出信号に基づいた圧力値を、開始圧力Pstartとして保存する。
【0057】
このとき(時刻to)、電磁弁204が閉鎖される。電磁弁204が閉鎖されると、チャンバ201内の減圧によって容器10の胴部11が多少膨張することにより、チャンバ201内の圧力は、図6に示すように僅かに上昇する。そして、電磁弁204が閉鎖したタイミングtoから所定時間(検査時間)が経過した検出時刻ttで、コントローラ210は、圧力センサ204からの検出信号に基づいた圧力値を、測定圧力Ptestとして取得する。
【0058】
コントローラ210は、測定圧力Ptestと前述したように保存した開始圧力Pstartとの差分(Ptest−Pstart)をリーク差圧Δとして取得する。そして、コントローラ210は、リーク差圧Δが基準値Pth以下であるか否かを判定する。前記リーク差圧Δが基準値Pth以下の場合(図6に示す検査時間帯における実線参照)、その容器10は良品であると判定され、前記リーク差圧Δが基準値Pthより大きい場合(図6に示す検査時間帯における破線参照)、その容器10は気体が漏れて気密性に問題がある不良品として判定される。前記基準値Pthは、開始圧力Pstart、検査時間、検査レベル(高精度、通常、低精度)等との関係に基づいて、予め設定される。
【0059】
なお、リーク差圧Δ及び検査結果は、コントローラ210の制御のもとに、操作盤213の表示部に表示される。検査員は、表示部に表示される各容器10に対するリーク差圧Δや検査結果を見ることにより、現在検査している容器10の気密性の判断を即座に行うことができるようになる。
【0060】
このようにして容器10からの気体の漏れの有無が検査されると、配管202が大気に開放される(図示外の他の弁が開放される)ことにより、チャンバ201内が大気圧に戻され、チャンバ201が検査台220から除去される。そして、容器取出し機構240が検査台220から検査済みの容器10を取出して第3搬送機構320に移す。その後、良品判定を受けた容器10は、第3搬送機構320により次の工程(例えば、箱詰め工程)に搬送される。一方、不良品判定を受けた容器10は、第3搬送機構320から所定の不良品収容部に排出される。
【0061】
前述した検査システムにおいては、容器10の口部12と胴部11との接合部分等にピンホール等の欠陥がある場合、容器10は、容器押圧機構100での押圧によって胴部11から漏洩した液体燃料が外面に付着した状態でエアリーク検査装置200に投入される。すると、エアリーク検査装置200において、減圧されたチャンバ201内には、容器10のピンホール等の欠陥から漏洩する気体に更にその外面に付着した液体燃料が蒸発して生ずる気体が加わって、実質的により多くの気体が容器10からチャンバ201内に発せられたものとなり、チャンバ201内の圧力は、検査開始時刻toから比較的急激に上昇する(図6に示す検査時間帯における破線部分参照)。その結果、その欠陥が極めて僅かなものであっても、例えば、極めて小さい(例えば、数μm)ピンホールであっても、その欠陥から漏洩する気体の有無をより短い時間で判定することができるようになる。従って、精度の良い検査をより効率的に行うことができるようになる。
【0062】
また、容器10の上方部分(例えば、口部12と胴部11との接続部)が欠陥の生じやすい構造であって、通常の正立姿勢では内部の液体燃料がその欠陥の生じやすい部分に当接していなくても、その欠陥が生じやすい部分(リーク検査部位)が下方に位置する倒立姿勢にて容器10の胴部11が押圧されるので、その欠陥が生じやすい部分にその欠陥があった場合には、確実に内部の液体燃料を漏洩させることができる。
【0063】
前述した検査システムでは、リーク検査装置としてエアリーク検査装置(バキューム式エアリーク検査装置)200が利用されたが、他の方式のもの、例えば、所定のガスを検出するガスセンサを用いたリーク検査装置(例えば、特許文献1、特許文献2参照)を用いることもできる。
【0064】
なお、容器10に収容される液体は、前述したメタノール(液体燃料)等のように揮発性が高いものが好ましいが、水等であってもよい。ただし、本件発明に係る検査システムでは、油等の揮発性が極めて低い液体を収容した容器は、検査対象容器として好ましいものとはいえない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上、説明したように、本発明に係る容器の気密性検査方法及び検査システムは、精度の良い検査を効率的に行うことができるという効果を有し、液体を収容した容器の気密性を検査する気密性検査方法及び検査システムとして有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 容器
11 胴部
12 口部
100 容器押圧機構
110 押圧ユニット
112 ソレノイド・アクチュエータ(押圧機)
112a プランジャ
113 保持ブロック(保持部)
113a 凹部
113b 側方孔
114 ブラケット
120 支持リング体
130 容器投入機構
131 把持部
132 腕部
133 回動機構
140 容器取出し機構
141 把持部
142 腕部
143 回動機構
200 バキューム式エアリーク検査装置(エアリーク検査装置)
201 チャンバ
202 配管
203 電磁弁
204 圧力センサ
210 コントローラ
211 駆動回路
212 アナログ・デジタル変換器(A/D)
213 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査容器からの気体の漏れの有無を検出するリーク検査装置を用いて液体を収容した容器の気密性を検査する容器の気密性検査方法であって、
前記リーク検出装置に前記容器を被検査容器として投入する前に、前記容器の所定部位を押し込むようにして押圧する容器押圧ステップを有する容器の気密性検査方法。
【請求項2】
前記リーク検査装置として、被検査容器をチャンバ内に入れ、該チャンバ内を減圧した後に、該チャンバ内の圧力を測定し、その測定結果に基づいて前記被検査容器からの気体の漏れの有無を検査するバキューム式エアリーク検査装置を用いる請求項1記載の容器の気密性検査方法。
【請求項3】
予め定めたリーク検査部位を下方にするように前記容器の姿勢を変える容器姿勢変更ステップを有し、
前記容器押圧ステップは、前記リーク検査部位を下方にした姿勢の前記容器の前記所定部位を押圧する請求項1または2記載の容器の気密性検査方法。
【請求項4】
前記容器姿勢変更ステップは、正立姿勢の前記容器を倒立姿勢に反転させる容器反転ステップを含む請求項3記載の容器の気密性検査方法。
【請求項5】
被検査容器からの気体の漏れを検出するリーク検査装置を用いて液体を収容した容器の気密性を検査する容器の気密性検査システムであって、
前記容器の所定部位を押し込むように押圧する容器押圧機構を有し、
該容器押圧機構にて押圧された後の前記容器が被検査容器として前記リーク検査装置に供給される容器の気密性検査システム。
【請求項6】
前記リーク検査装置は、被検査容器をチャンバ内に入れ、該チャンバ内を減圧した後に、該チャンバ内の圧力を測定し、その測定結果に基づいて前記被検査容器からの気体の漏れの有無を検査するバキューム式エアリーク検査装置である請求項5記載の容器の気密性検査システム。
【請求項7】
前記容器押圧機構にて押圧された後の前記容器を前記リーク検査装置に搬送する搬送機構を有する請求項5または6記載の容器の気密性検査システム。
【請求項8】
前記容器押圧機構は、容器を当該容器の前記所定部位を露出するように保持する容器保持部と、
該容器保持部に保持された容器の前記所定部位を押し込むように押圧する押圧機とを有する請求項5乃至7のいずれかに記載の容器の気密性検査システム。
【請求項9】
前記容器押圧機構は、前記容器保持部と前記押圧機とが一体化された複数の押圧ユニットと、
前記複数の押圧ユニットを循環移動させる押圧ユニット移動機構とを有し、
該押圧ユニット移動機構により循環移動する前記複数の押圧ユニットのうち予め定めた投入位置に位置する押圧ユニットの前記容器保持部に容器を投入セットする容器投入機構と、
前記循環移動する複数の押圧ユニットのうち予め定めた取出し位置に位置する押圧ユニットの前記容器保持部から容器を取出す容器取出し機構とを有する請求項8記載の容器の気密性検査システム。
【請求項10】
前記押圧ユニット移動機構は、前記複数の押圧ユニットを円状に循環移動させる請求項9記載の容器の気密性検査システム。
【請求項11】
前記複数の押圧ユニットそれぞれの容器保持部は、予め定めたリーク検査部位を下方にして当該容器を保持する構造となり、
前記容器投入機構は、前記リーク検査部位を下方にして容器が前記容器保持部に投入セットされるように前記容器の姿勢を変える第1容器姿勢変更機構を有し、
前記容器取出し機構は、前記リーク部位を下方にして保持された容器を前記容器保持部から所定の取出し姿勢にて取出すように前記容器の姿勢を変える第2容器姿勢変更機構を有する請求項9または10記載の容器の気密性検査システム。
【請求項12】
前記第1容器姿勢変更機構は、正立姿勢の前記容器を倒立姿勢に反転させる第1容器反転機構を含む請求項11記載の容器の気密性検査システム。
【請求項13】
前記第2容器姿勢変更機構は、倒立姿勢にて保持された容器を前記容器保持部から正立姿勢にて取出すように前記容器の姿勢を変える第2容器反転機構を含む請求項12記載の容器の気密性検査システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−191203(P2011−191203A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58226(P2010−58226)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】