説明

容器の蒸気相除染

【課題】複数の物品を除染するための蒸気除染システムを提供する。
【解決手段】フラッシュ蒸気発生器10は、高い容器スループットを有する大きな除染トンネル11を迅速に滅菌するために、気化した過酸化水素の一定の流れを提供する。気化器は、内側ボアを規定する、加熱されたブロックを備える。除染トンネル内の条件は、注意深くモニタリングされて、蒸気の凝縮を回避し、同時にこの蒸気を飽和限界に可能な限り近付けて維持する。本発明はさらに、規定された領域11において、コンテナ120を除染する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌の分野に関する。本発明は、パッケージング容器の滅菌のための過酸化水素気化システムと組み合わせた特定の適用を見出し、そして本発明に対する特定の参考文献と共に記載される。しかし、本発明はまた、過酢酸(paracetic acid)気化システムのような他の化学的気化システムにも適用可能であることが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
飲料、食物、医薬などを容器に充填するための充填ラインを使用するパッケージングプラントは、最終製品が、有害な微生物を含まないことを保証し、そして製品の保存期間を維持するために、無菌の処理技術へと移行している。無菌処理の一部として、容器は、充填前に微生物的に除染される。瓶または他の容器は、代表的に、しばしば上昇した温度で液体化学抗菌剤(液体過酸化水素および過酢酸を含む)を使用して、除染される。代替的アプローチは、充填直前に容器をブロー成形(ブロー処理、充填処理および密封処理として公知)することである。この概念は、成形処理に関与する熱が、使用される材料で滅菌容器を形成させることを想定する。
【0003】
近年、過酸化水素蒸気が、滅菌剤として使用されてきた。1つの方法において、液体過酸化水素は、容器上に噴霧される。容器を加熱して、液体を蒸気に変換する。別の方法において、過酸化水素蒸気は、容器の表面上で濃縮されて、液体過酸化水素の薄い層を形成する。液体および蒸気の両方の過酸化水素滅菌処理において、UV照射が、滅菌を促進するために使用されてきた。気化した過酸化水素は、低温で有効なので、これらの目的のための特に有用な滅菌剤である。エンクロージャーの温度を室温近くに維持することは、エンクロージャー内の滅菌されるべき関連する設備および物品の熱分解の可能性を排除する。さらに、過酸化水素は、水と酸素とに容易に分解し、これらはもちろん作業者に有害ではない。
【0004】
容器滅菌フィールドの外側で、積載物を滅菌するために気相滅菌剤をエンクロージャーへと送達するための、いくつかの異なる方法が開発されてきた。1つの選択肢、「深真空(deep vacuum)」アプローチにおいて、深真空は、加熱された気化器へと液体滅菌剤を引き込むために使用される。一旦気化すると、滅菌剤は、その気化圧によって、排出および密封チャンバへと推進される。別の選択肢、「フロースルー」アプローチにおいて、気化した滅菌剤は、チャンバの中へ、チャンバを通して、そしてチャンバの外へ滅菌剤を送達するように働くキャリアガス(例えば、空気)(これは、僅かに負圧または正圧であり得る)の流れと混合される。水中約35%の過酸化水素溶液は、注入ノズルを通して微細な液滴または霧として、気化器へ注入される。この液滴は、水と酸素とに分解されることなく、液滴を加熱して蒸気を形成する過熱された表面上に落ちる。加熱されたキャリアガスは、しばしば、熱転移表面が、過酸化水素の沸騰温度以上に維持されていることを確認するために使用される。
【0005】
食物パッケージングの際の微量過酸化水素は、製品の風味に影響を与え得るか、または他の所望でない変化(例えば、製品の変色)を生じ得る。食物パッケージング規制は、現在、米国において最大0.5ppmまでに、容器上の残留過酸化水素濃度を制限する。液体過酸化水素滅菌システムおよび濃縮蒸気滅菌システムは、現在、費用のかかる滅菌後の処理なしには、これらの厳しい規制を満たすことができない。例えば、リンスは、残留過酸化水素を除去するための試みにおいて使用される。しかし、高純度の水の供給(これは、費用がかさむ傾向がある)が確保され得ない限り、滅菌した容器の再汚染がおそらく生じる。熱(例えば、400℃の乾燥段階)はまた、残留レベルを減少させることを試みるために使用されているが、これは、処理時間および処理費用をかなり加算し、そして一般に薄い壁のプラスチック瓶と共には使用できない。
【0006】
さらに、現在の気化システムは、最新の高速瓶詰めプラントを扱うことができない。1分当たり1000本またはそれより多い瓶までの速度で処理および充填される瓶では、この要求を満たすのに十分な速度で滅菌した瓶を補給し得る滅菌システムを有することが所望される。現在の滴注気化器の能力は、キャリアガスの流れおよび気化工程が、加熱されたプレートの温度を下げる傾向があるので、限定される。
【0007】
1つの解決策は、気化器の大きさおよび気化器への過酸化水素の注入速度を増大させることであった。別の解決策は、複数の発火気化器を使用することであり、ここで、気化器プレートの異なる領域は、引き続いて過酸化水素溶液を供給される。有益ではあるが、より大きい気化器はなお、濃度の変動および濃縮の考慮に苦しむ。
【0008】
なお別の解決策は、複数の気化器を使用して、単一のエンクロージャーを供給することである。気化器は、各々、独立して制御されて、チャンバの特徴のバリエーションを可能にし得る。しかし、複数の気化器の使用は、システムの費用を加算し、そして各々の気化器が有効に作動していることを確認するために、注意深くモニタリングする必要がある。
【0009】
本発明は、新規かつ改善された気化システム、ならびに上記の問題および他の問題を克服する方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面に従って、複数の物品を除染するための蒸気除染システムが提供される。このシステムは、抗菌剤を含有する液体を蒸気へと気化させるためのフラッシュ気化器を備える。供給源からフラッシュ気化器へ液体を導入するための手段が提供される。キャリアガスがそれに沿って通過する第1の管は、少なくとも1つの充填ラインと流体接続され、このラインは、蒸気およびキャリアガスを少なくとも1つの物品に選択的に供給する。気化器の出口に流体接続された第2の管は、第1の管を通過するキャリアガスへと混合するために、蒸気を第1の管に供給する。
【0011】
本発明の別の局面に従って、規定された領域内で容器を除染する方法が提供される。この方法は、規定された領域を通して容器を運搬する工程、および管を通して規定された領域へとキャリアガスをポンピングする工程を包含する。抗菌性蒸気は、規定された領域の上流の混合領域にて、管へと導入される。
【0012】
本発明の別の局面に従って、物品を除染する方法が提供される。この方法は、規定された領域を通して物品を運搬する工程を包含する。第1および第2のキャリアガスのストリームが提供され、第1のストリームは、第2のストリームよりも低い流速を有する。第1のストリームは、通路に導入される。抗菌剤の水溶液の流れは、この通路に導入される。この水溶液を、第1のストリームと混合する。通路の壁は、この水溶液を気化するために加熱される。気化した水溶液および第1のキャリアガスのストリームを、この通路の下流の混合領域で、第2のキャリアガスのストリームと混合する。混合した気化した水溶液ならびに第1および第2のキャリアガスのストリームは、規定された領域に導入され、そしてこの物品は、抗菌剤に接触される。
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施形態の1つの利点は、気化した過酸化水素の高い出力が達成されることである。
【0014】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の利点は、これが、除染される容器の大きいスループットを可能にすることである。
【0015】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
複数の物品(120)を除染するための、蒸気除染システム(A)であって、該システムは、以下:
抗菌剤を含有する液体を蒸気に気化させるための、フラッシュ気化器(10);
該液体を源から該フラッシュ気化器に導入するための手段(12);
第1の管(86)であって、該第1の管に沿って、キャリアガスが通過し、該第1の管は、少なくとも1つの充填ライン(126、172、200、202)に流体接続されており、該充填ラインは、蒸気およびキャリアガスを、該物品の少なくとも1つに選択的に供給する、第1の管;
該気化器の出口(24)に流体接続された、第2の管(82)であって、該第1の管を通過する該キャリアガスに混合するために、該蒸気を該第1の管に供給するための、第2の管、
によって特徴付けられる、システム。
(項目2)
項目1に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記物品が、内側空間(130)を各々規定する容器を備え、そして前記少なくとも1つの充填ラインの排出出口(128)が、該物品の各々の該内側空間が前記蒸気を受容するように選択的に配置可能であること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目3)
項目2に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記少なくとも1つの充填ラインの前記排出出口が、前記物品の各々の前記内側空間内に選択的に配置可能であること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目4)
項目2および3のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記蒸気を前記容器の内側空間から引き出すための手段(112、176)、
によって特徴付けられる、システム。
(項目5)
項目4に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記物品を受容するエンクロージャー(11);および
減圧ポンプ(112)を備える引き出し手段であって、蒸気が前記容器の内側空間から引き出されるように、該エンクロージャーに減圧を引く、引き出し手段、
によって特徴付けられる、システム。
(項目6)
項目4に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記引き出し手段が、以下:
前記内側空間内に選択的に受容可能である、入口を有する排気ライン;および
該出口ライン(174)に減圧を適用して、該内側空間から前記蒸気を引き出すための、減圧ポンプ(176)、
を備えること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目7)
項目6に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記減圧ポンプ(176)を前記出口ラインと選択的に流体接続するための手段(180)であって、これによって、前記蒸気が、引き出しの前に、微生物除染をもたらすために十分な時間にわたって、前記内側空間に残ることが可能であること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目8)
項目3〜7のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記充填ライン(126、202)に付随するキャップ(196)であって、蒸気およびキャリアガスを前記内側空間に供給する間、前記物品の該内側空間に対する開口部(134)を選択的に閉じるキャップ、
によって特徴付けられる、システム。
(項目9)
項目8に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記キャップが、該キャップを通して、前記充填ライン(126)および排気ライン(174)を受容すること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目10)
項目1〜9のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記少なくとも1つの充填ラインを通して、前記物品を運搬する、コンベアシステム(122)、
によって特徴付けられる、システム。
(項目11)
項目10に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記物品が通過する際に、前記少なくとも1つの充填ライン(126、172、202)を連続的に上下させる、往復マニホルド(124)、
によって特徴付けられる、システム。
(項目12)
項目1〜11のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
蒸気引き出しシステムであって、該蒸気引き出しシステムは、少なくとも1つの排気ライン(174)を備え、該排気ラインは、少なくとも1つの物品内に選択的に配置され、これによって、蒸気が該物品から引かれる、蒸気引き出しシステム、
によって特徴付けられる、システム。
(項目13)
項目1〜12のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記物品が、部分的に固化したパリソンであること;
該システムが、さらに、鋳型(212、214)を備え、該鋳型内で、パリソンがコンテナに形成されること;および
前記キャリアガスが、該パリソンを成形するために十分な圧力で供給されること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目14)
項目1〜13のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記抗菌化合物が、過酸化水素を含有し、そして前記フラッシュ気化器が、以下:
金属ブロック(18);
該金属ブロックを、過酸化水素の気化温度以上でありかつ過酸化水素の解離温度より低い温度に加熱および維持するための、少なくとも1つのヒータ(72、74、76、78);ならびに
該ブロックを通って入口(22)から前記出口(24)へと延びる、通路(19)、
を備えること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目15)
項目14に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記通路が、前記入口と前記出口との間の断面に延びること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目16)
項目14〜15のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記通路が、前記入口と前記出口との間で、少なくとも180°折れ曲がっていること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目17)
項目16に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記通路が、約90°の少なくとも2つの折れ曲がりおよびその間の壁(46)を備え、その結果、該通路内の前記液体が該壁に衝突し、これによって、前記液体抗菌剤の気化速度が上昇すること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目18)
項目16および17のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記通路が、以下:
前記入口と前記出口との間で、前記ブロックを通って前後に延びる、相互接続した複数のボア(20、49、50、52、54、56)、
を備えること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目19)
項目1〜18のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記第2の管の上流で前記第1の管に接続された、ヒータ(96)および減湿器(98)、
によって特徴付けられる、システム。
(項目20)
項目1〜19のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記フラッシュ気化器の入口に接続された、キャリアガスの源(28)であって、キャリアガスのストリームを該気化器に供給するための、源、
によって特徴付けられる、システム。
(項目21)
項目1〜20のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
複数の充填ライン(126、172、202);ならびに
少なくとも1つのさらなるフラッシュ気化器(10)、および該複数の充填ラインの少なくとも1つに流体接続された、液体を導入するための手段(12)、
によって特徴付けられる、システム。
(項目22)
項目1〜21のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記物品の周囲の環境において、前記抗菌剤の状態をモニタリングするための、モニタ(153);および
該モニタに接続されたコントローラ(150)であって、モニタリングされた状態に従って、前記流体を導入するための手段を制御するための、コントローラ、
によって特徴付けられる、システム。
(項目23)
項目1〜22のいずれか1項に記載のシステムであって、さらに、以下:
前記導入するための手段(12)が、計量ポンプを備えること、
によって特徴付けられる、システム。
(項目24)
規定された領域(11)において、コンテナ(120)を除染する方法であって、該方法は、以下:
該規定された領域を通して、該コンテナを運搬する工程;
管(86)を通して該規定された領域へと、キャリアガスをポンピングする工程;および
該規定された領域の上流の混合ゾーン(87)において、該管内に抗菌蒸気を注入する工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目25)
項目24に記載の方法であって、さらに、以下:
前記抗菌蒸気が過酸化水素を含有し、そして該方法が、さらに、以下:
内側通路(19)を有するブロック(18)を、液体過酸化水素を気化させるために十分な温度であるが過酸化水素を解離させる温度よりは低い温度に、加熱する工程;
液体過酸化水素を、該ブロックを通る該通路内に通して、該液体過酸化水素を気化させる工程;
該過酸化水素蒸気を、該通路から前記混合ゾーン内へと通す工程;および
該過酸化水素蒸気を、前記キャリアガスの流れに混合させる工程、
を包含すること、
によって特徴付けられる、方法。
(項目26)
項目25に記載の方法であって、さらに、以下:
前記過酸化水素を含む前記通路を通して、キャリアガスを吹き込む工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目27)
項目26に記載の方法であって、さらに、以下:
前記通路を通るキャリアガスの流速が、前記管内でのキャリアガスの流速の半分未満であること、
によって特徴付けられる、方法。
(項目28)
項目24〜27のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記抗菌蒸気を含むキャリアガスを、前記規定された領域から引く工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目29)
項目24〜28のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記規定された領域において、前記蒸気内の前記抗菌化合物の濃度をモニタリングする工程;および
該モニタリングする工程に従って、該蒸気が該規定された領域に供給される速度を制御する工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目30)
項目24〜29のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記コンテナの内側空間が前記蒸気を受容するように、該コンテナの内側空間(138)内に、前記管と流体接続された少なくとも1つの充填ライン(126、172、202)を選択的に配置する工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目31)
項目24〜30のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記蒸気が前記内側空間から引き出されるように、前記容器の内側空間内に、減圧源と流体接続された少なくとも1つの排気ライン(174)を選択的に配置する工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目32)
項目30および31のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記少なくとも1つの充填ラインを選択的に配置する工程の間に、前記容器の開口部(134)を密封する工程であって、これによって、該開口部を通っての、収容された前記内側空間(138)からの蒸気の流れを抑止する、工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目33)
項目30〜32のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記コンテナが通過する際に、前記少なくとも1つの充填ライン(126、172、202)を連続的に上下させる工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目34)
項目24〜33のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、以下:
前記規定された領域を通して前記コンテナを運搬する前記工程の前に、該コンテナを加熱する工程であって、これによって、該コンテナでの前記蒸気の凝縮が低下する、工程、によって特徴付けられる、方法。
(項目35)
物品を除染する方法であって、以下:
規定された領域(11)を通して、該物品を運搬する工程;
第1のキャリアガスストリームおよび第2のキャリアガスストリームを提供する工程であって、該第1のストリームが、該第2のストリームより低い流速を有する、工程;
該第1のストリームを通路(19)に導入する工程;
抗菌剤の水溶液の流れを該通路に導入する工程であって、該水溶液が、該第1のストリームと混合し、該通路の壁(26)が、該水溶液を気化させるために加熱される、工程;
該通路の下流の混合ゾーンにおいて、気化した該水溶液および第1のキャリアガスストリームを、該第2のキャリアガスストリームと混合する工程;
該混合した気化した水溶液ならびに第1および第2のキャリアガスストリームを、該規定された領域に導入する工程;ならびに
該物品を該抗菌剤に接触させる工程、
によって特徴付けられる、方法。
(項目36)
項目35に記載の方法であって、以下:
前記第1のストリームの流速が、前記第2のストリームの流速の10%未満であること、
によって特徴付けられる、方法。
本発明のなおさらなる利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読み、理解する際に、当業者に明らかとなる。
本発明は、種々の構成要素および構成要素の配置の形態を取り得、そして種々の工程および工程の配置を取り得る。図面は、好ましい実施形態を例示する目的のためのみであり、本発明を限定するとは解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に従う過酸化水素除染システムの1実施形態の概略図である。
【図2】図2は、図1の気化器の1実施形態の側面断面図である。
【図3】図3は、図2の気化器の斜視図である。
【図4】図4は、第2の気化器実施形態の斜視図である。
【図5】図5は、第3の気化器実施形態の側面断面図である。
【図6】図6は、第4の気化器実施形態の側面断面図である。
【図7】図7は、第5の気化器実施形態の側面断面図である。
【図8】図8は、本発明に従う過酸化水素除染システムの別の実施形態の概略図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施形態に従う、容器キャップを用いる過酸化水素蒸気供給の側面断面図である。
【図10】図10は、本発明に従う過酸化水素除染システムの別の実施形態の概略図である。
【図11】図11は、本発明に従う過酸化水素除染システムの別の実施形態の概略図である。
【図12】図12は、本発明に従う過酸化水素除染システムの別の実施形態の概略図である。
【図13】図13は、同時過酸化水素蒸気除染のために使用されるブロー成形装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
図1を参照すると、蒸気の過酸化水素を無菌性充填プラントAに供給するためのシステムは、フラッシュ気化器10を備え、この気化器は、液体過酸化水素を、気化した過酸化水素に転換する。次いで、発生した蒸気は、キャリアガスに注入され、そしてこの気体中で、除染トンネル11のような部位まで運ばれ、ここで、この蒸気が使用される。あるいは、蒸気は、減圧下で、トンネル11に引き込まれる。気化器により、除染トンネルおよびその内容物の微生物を除染するための、蒸気の過酸化水素を連続的に発生させることが可能になる。本発明は、過酸化水素を特に参照して記載されているが、このシステムがまた、他の溶液および純粋な液体の気化(例えば、過酢酸溶液からの過酢酸蒸気の形成)にも適切であることは、明らかである。
【0018】
用語「微生物除染」および類似の用語は、本明細書中で使用される場合、滅菌形態、消毒形態、および小形態の抗菌処理(例えば、消毒)を含む。
【0019】
図1を続けて参照すると、液体過酸化水素を導入するための手段(例えば、注入ポンプ12、調節可能な定量ポンプ、加圧容器、重量供給システムなど)は、カートリッジまたはレザバ14(例えば、巨大ドラム)からの液体過酸化水素を、好ましくは、液体流動形態または噴霧形態で、供給ライン16から気化器10に蓄積する。
【0020】
図2もまた参照すると、気化器は、加熱ブロック18を備え、この加熱ブロックは、金属(例えば、陽極処理アルミニウム)または過酸化水素に耐性な他の材料から形成され得る。流路または通路19は、このブロック内に形成される一連のボア20によって規定されている。流路19は、供給ラインと接続された入口22、および出口24を有する。1つの実施形態において、このボア20は、入口22から出口24までに、その内径をだんだんと増加させ、それによって、単位長さあたりの接触面積および内部容量の増加が生じる。液体過酸化水素は、ボアの壁26に接触し、そして気化される。このボアを通過する蒸気/液体混合物の容量の増加は、このボアの断面積を増加させることによって達成される。
【0021】
液体過酸化水素は、希釈液(例えば、水)中の過酸化水素の混合物を含み、好ましくは、水中に約30〜40重量%の過酸化水素、より好ましくは、約35重量%の過酸化水素を含有する水性混合物を含む。必要に応じて、キャリアガス(例えば、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン)またはキャリアガスの組み合わせが、過酸化水素液と同時にフラッシュ気化器に供給されて、このフラッシュ気化器を通る過酸化物の気化を推進して、キャリアガス流中にこの蒸気を注入するのを補助する。好ましい実施形態において、このキャリアガスは、空気レザバ28からの加圧空気を含み、この空気は、液体過酸化水素と一緒にかまたは別個に、入口ライン30を介して気化器に導入される(図1)。入ってくるキャリアガスの正確な圧力は、このフラッシュ気化器内の通路での発生速度、この通路の長さおよび制限度などとともに変化し、代表的には、1.0〜2.0の気圧(絶対圧)(1.013×10〜2.026×10パスカル(絶対圧))、すなわち、約0〜1atm(ゲージ圧)(0〜1.013×10パスカル(ゲージ圧))、より好ましくは、約6〜14×10Paまで変化する。このようなキャリアガスを使用する利点は、液体過酸化水素が気化器内の同じ地点で連続的に衝突しそうにないという事実に集中する。液体過酸化水素が、この気化器内でより分散すればするほど、この過酸化物は、より迅速に気化される。さらに、十分に分散された過酸化水素の注入においては、気化器の特定の領域が過度の冷却を経験し、それによって、気化プロセスが妨げられるということは、ほとんどない。
【0022】
キャリアガスは、気化器を冷却する傾向にあり、過酸化水素水溶液が気化する速度を低下させる。結果として、過酸化物蒸気の有意な分解なしに、フラッシュ気化器10を通して、この気化した過酸化水素を輸送するのに必要な最低の流速またはこの流速よりわずかに高い流速であるが、キャリアガスによる、感知可能な気化器の冷却が生じないような十分に低い流速で、このキャリアガスを維持することが、望ましい。
【0023】
図3に示されるように、長手方向ボアは、接続部材34、36、38、40(これらは、図2に示されるように、ブロック内またはそれらの外部に形成され得る)によって接合されている。他の配置(例えば、断面積を増加させる螺旋状ボア、またはブロックの一方端から他方端までの断面積を各々増加させるボア)が、企図される。なお別の実施形態において、ボアの数は、ブロックを通る各通路とともに増加する。従って、第1通路用の単一の長手方向ボアは、第2通路用の2つ以上のボア部分と接続される。これらの第2ボアの各々はまた、第3通路用の2つ以上のボアと接続され、以下も同様である。この様式において、初期の実施形態に関して、ボアによって作製される流路19の断面積は、過酸化水素が入口から出口(この場合では、複数の出口)まで移動するにつれて、大きくなる。
【0024】
流体流路19における屈曲部または折れ曲がり42により、液体過酸化水素は、方向転換され、それによって、この液体は壁に衝突して、気化する。好ましくは、少なくとも2回の実質的に180°の折れ曲がりがこの流路に与えられ、接触が増加される(4回のこのような折れ曲がりが、図2に示される)。
【0025】
各実施形態において、ボアは、ブロック内で数回、折れ曲げられ得る。例えば、ボア入口22で始まり、ボアは、ブロックの出口端44に隣接したUターン42を作製し、ブロックの入口端46に戻り、そして出口24に到達する前に、2回以上このような折れ曲がりを行う。好ましくは、この折れ曲がりは、曲線的な折れ曲がりよりもむしろ、鋭い「L形状」により形成される。例えば、図2に示されるように、各折れ曲がりは、2つの約90°のコーナーおよび端壁46を備え、この端壁は、約180°でボアを折り曲げる。曲線的なコーナーよりもむしろ、一般的に鋭いコーナーにより、流動している液体/蒸気混合物は、壁と衝突し、それによって気化速度が改善される。
【0026】
他の配置(例えば、図4に示されるような、螺旋状ボア48)が、企図される。各折れ曲がりにおいて、慣性は、微細浮遊液滴を壁に推進する傾向があり、それによって、この液滴の気化が生じる。この様式において、ミストまたは霧(fog)のどんな微細液滴も、蒸気になる。好ましくは、少なくとも2回の実質的に180°の折れ曲がりが流路に与えられて、この接触の増加を補助する。
【0027】
直径の増加は、図2に示されるように、ボアの各セグメントの直径を徐々に増加させることによって与えられ得る。あるいは、ボアの長手方向部分49は、図5に示されるように、各々が、単一の連続的に大きい直径であり得る。ボア直径を徐々に増加させるための他の配置もまた、企図される。例えば、バッフルまたはフィンが、入口に隣接して備えられ、利用可能な流動空間は減少され得るが、加熱表面積は増加される。
【0028】
図6の実施形態において、ボア部分の数は、ブロックを通る各通路とともに増加する。例えば、単一の長手方向ボア50は、第1通路を規定し、2つ以上のボア部分52は、第2通路を規定する。第2ボアの各々は、好ましくは、第3通路用のより多くのボア54と接続され、以下も同様である。この様式において、初期の実施形態に関して、ボアによって作製される流路の断面積は、過酸化水素が入口から出口(この場合では、複数の出口)に移動するにつれて増加する。
【0029】
図7に示される代替の実施形態において、均一な断面積の、1つ以上のボア部分を含むボア56が、このボア全体またはこのボアの大部分が均一な断面積であるように、提供される。製造の容易さのために、例えば、ブロックを突き抜いて穿孔することによって、長手方向ボア部分は、ブロックを通って延び得ることもまた、企図される。この外側部分は、成形アルミニウム末端部57、58(図2)、接続チュービングなどによって、ブロックの主要本体の外側と規定されている。この末端部または接続チュービングは、ブロックの温度に維持され、そして加熱部品(例えば、断熱性の加熱テープなど)で取り囲まれ得る。
【0030】
図2および図3をもう一度参照すると、ブロック18は、液体過酸化水素を気化するのに適切な温度まで加熱される。例えば、加熱部品72、74、76、78は、ボアまたは通路80に受容され、好ましくは、ブロックのコーナーに隣接したブロックを通って長手方向に穿孔される。適切な加熱部品は、電気的カートリッジ加熱器である。このような加熱器は、各加熱部品が加熱器ボアに挿入され得、実質的に、このボアの一方端から他方端まで延びるような、通常の細長で薄いものと同程度の加熱部品を使用するのに、特に適切である。あるいは、ストリームまたは他の加熱流体が、この加熱器ボア内を通過して、ブロックを加熱する。このボア壁は、加熱器によって、過酸化水素の解離が起こる温度より低い温度で維持される。
【0031】
液体過酸化水素は、ボアの壁に接触し、そして徐々に液体から蒸気へと転換されるにつれて、気化する。この転換に通常起因している圧力増加は、ボアのサイズの増加によって実質的に排除され、その結果、ボアを通る流動が維持される。ブロックを通る一連の通路の末端において、過酸化水素は、好ましくは、完全に蒸気形態であり、温度および圧力は、蒸気の凝縮が起こらないように、露点の温度よりわずかに高い温度で維持される。
【0032】
次いで、蒸気の過酸化水素は、キャリアガスの流れに同伴される。詳細には、図1に示されるように、蒸気は、(必要に応じて、キャリアガスの第1ストリームと一緒に、管またはライン82に沿って、ノズル84(単数または複数)、または他の適切な注入デバイス(このデバイスは、蒸気をキャリアガスの管またはその混合領域87のライン86に注入する)まで移動する。蒸気は、ライン86を通る空気または他のキャリアガスの流動のストリームで、この混合領域にて同調される。キャリアガス流動レギュレータまたはバッフル88は、キャリアガスの流動を調整可能に制御する。定量ポンプ12の調整は、過酸化水素の蒸気が発生する速度を制御し、そしてキャリアガス流動レギュレータ88の調整は、キャリアガスの濃度を制御する。空気と蒸気との混合物は、トンネル11まで運ばれ、ここで、蒸気が使用される(この場合では、無菌性充填システムのチャンバ)。必要に応じて、2つ以上の気化器10が、単一のキャリアガスライン86に供給され得る。巨大な除染トンネルについて、いくつかの独立して制御可能な気化器10(各々が、空気ライン86を備える)が、除染トンネル11に供給され得る。
【0033】
このキャリアガスは、好ましくは、空気であるが、上述のように過酸化水素に対して不活性である他の気体もまた意図される。キャリアガス供給源92(例えば、加圧気体のポンプまたは容器)は、キャリアガスをライン86に供給する。大気がキャリアガスである場合、フィルタ94(例えば、HEPAフィルタ)が、汚染物を取り除く。好ましくは、予熱器96は、キャリアガスがインジェクタ84に到達するまえに、キャリアガスの温度を上昇させ、供給源ラインの濃度を下げ、そして過酸化水素の蒸気の飽和濃度を上げる。必要に応じて、乾燥機98などは、このキャリアガスの湿度を調節する。
【0034】
フラッシュ気化器10を通るキャリアガスの流速(すなわち、第1キャリアガス流の流速)は、好ましくは、フラッシュ気化器10を通過しない第2キャリアガス流の流速よりも遅い。従って、このキャリアガスの大部分は、この供給源92から気化器の下流の混合領域87へのライン86を通して移動し、ここで、第1キャリアガス流および第2キャリアガス流ならびに蒸気の両方は、エンクロージャーに入る前に合わせられる。この第1流の流速は、好ましくは、第2流の流速の10%未満である。例えば、この合わせられたキャリアガス流は、約20,000l/分の流速を有し得るが、フラッシュ気化器を流れるキャリアガス流は、100l/分以下、より好ましくは、約20l/分以下、最も好ましくは、約1〜10l/分である。第1キャリアガス流が使用されない場合、このキャリアガスの全てが、好ましくは、キャリアガスライン86を通過する。
【0035】
従って、記載されるフラッシュ気化器10が、このようなハイスループット適用に適合されるが、他の気化器もまた意図される。例えば、ドリップ式気化器または多重式気化器が使用され得る。このような気化器において、キャリアガスの流れは、加熱されたプレートを通過する。液体過酸化水素は、このプレート上にドリップされ、気化される。この蒸気は、通過する空気に同伴され、そしてその空気が除染トンネル11に運搬される。上記の実施形態におけるように、空気、または他のキャリアガスは、適切な温度まで加熱され得る。この空気は、好ましくは、この気化器を通過する前に乾燥され、所定の温度で維持され得る過酸化水素の濃度を上昇させる。
【0036】
供給ライン100、102は、キャリアガスと気化した過酸化水素の混合物を、トンネル11に輸送する。濃縮のリスクを減少させるために、供給ライン100、102の長さは、最小にされる。この濃縮のリスクをさらに減少させるために、断熱材104および/またはヒータ106が、供給ライン100、102を取り囲んでいる。必要に応じて、2つ以上の供給ラインは、各気化器をトンネル11の2以上の領域に連結している。
【0037】
排気口110は、除染トンネルからの制御された蒸気の放出を可能にする。ポンプ(例えば、減圧ポンプ112)は、このトンネルから使用された(すなわち部分的に、使用された)蒸気を引き出すために、トンネルに吸引を適用する。あるいは、送風機が使用される。必要に応じて、破壊装置(destroyer)(例えば、触媒114など)が、排出気体中の任意の残留過酸化水素を破壊する。このキャリアガスは、キャリアガスライン86に再利用され得る。
【0038】
必要に応じて、ヒータ116は、微生物の除染の間に、トンネル11の温度を維持する。周囲の温度または少なくともその表面よりも除染トンネル内の温度を上げることもまた、蒸気の濃縮を減少させる。
【0039】
図1および8を参照すると、ボトルまたはカートン120のような容器(例えば、プラスチック性飲料容器ならびにワックスでコーティングされた牛乳入れ容器およびジュース入れ容器)は、コンベアシステム122(例えば、整列用コンベアベルト)上の除染トンネルに運搬される。この容器の各々は、開口部123を有し、この開口部を通して、蒸気は、導入される。往復するマニホルド124は、供給ライン100、102の各々と接続され、そして引き続いて、ボトルまたはカートンが通過する際に、多数の充填ライン126を、そのボトルまたはカートンに上げ下げする(矢印Bの方向)。従って、この過酸化水素は、充填ラインの排出出口128から、この容器の内側空間130に直接流れる。あるいは、このマニホルドは、定常状態に保たれ、そしてこの容器は、それらが通過する際に、過酸化水素の蒸気を受容するように持ち上げられる。
【0040】
この溶液中の過酸化水素の濃度は、所望の蒸気の濃度に従って選択される。例えば、この過酸化水素の濃度は、過酸化水素水溶液の25%〜65%であり得る。1つの実施形態において、この過酸化水素の濃度は、過酸化水素水溶液の約30%〜35%である。このレベルで、過酸化水素の濃縮は限定されるが、微生物の除染は、短い期間で達成される。
【0041】
この実施形態において、この充填ラインは、好ましくは、この容器の底部端132付近に配置された結果、蒸気は、減圧器112によって、容器の頂部134またはその隣接部の開口部123から外に排出される前に、この容器の全ての内側表面と接触する。この過酸化水素の蒸気は、微生物の除染が完了するまで、この容器の各々において保持される。この減圧ポンプ112は、過酸化水素の蒸気を除染トンネルから外に排出し、微生物の除染後に、この容器を吸引して蒸気を容器の外に引き抜く。これにより、過酸化水素の散逸に必要とされる時間が減少される。
【0042】
例示の実施形態において、この気化器10は、好ましくは、除染トンネルの非常に近位に配置される。1つより多い気化器が使用される場合、個々の気化器による過酸化水素の導入速度は、除染トンネル11内の過酸化水素の蒸気分布を最適化するために調節される。
【0043】
除染トンネル11内の温度および物質の吸収性の違い、トンネル内の流れのパターン、およびトンネルの形状は、特に、導入の最適な速度に影響を与える因子である。このトンネルを通過する容器またはボトルのスループットの速度はまた、導入の最適速度に影響を与える。好ましくは、コントロールシステム150は、除染トンネル11内の検出された状態に従って、過酸化水素の気化器10への導入を制御する。複数のモニタ152、153は、トンネル内の状態をモニタリングする。このモニタとしては、例えば、1つ以上の温度センサ、1つ以上の露点センサもしくは湿度センサ、1つ以上の蒸気濃度センサ、1つ以上の空気流センサもしくは気流センサ、1つ以上の圧力センサなどが挙げられる。このコントロールシステムは、予め選択された理想的な過酸化水素の蒸気の濃度で、このモニタからモニタリングされた状態の信号と、参照信号によって示されるような他の状態とを比較するための比較器154を備える。好ましくは、この比較器は、各々のモニタリングされた状態の信号と、対応する参照信号または参照値の偏差を決定する。好ましくは、複数の状態が検出され、そして多重式比較器が提供される。プロセッサ156は、各偏差信号(または、異なる状態の偏差の組み合わせ)を含む、予めプログラム化されたルックアップ表158にアドレスし、各気化器10に対応する適合を検索する。より大きな偏差をより大きな調節に、そしてより小さな偏差をより小さな調節に変換するための他の回路がまた、意図される。あるいは、モニタリングされた状態が、参照点よりも低いかまたは高い場合、誤差の計算により、定数の大きさの上げ下げが非常に短い間隔でなされ得る。
【0044】
このルックアップ表からの調節値は、このモニタリングされた状態を参照値にするために、過酸化水素計量ポンプ12およびキャリアガス調節器88を調節する。例えば、蒸気注入速度は、より低い蒸気の濃度、より低い温度、より高い圧力などを有する領域に近い気化器によって上昇される。蒸気の発生速度は、より高く検出された蒸気の濃度、より高く検出された温度、より低い圧力などに応答して減少される。処理装置はまた、必要に応じて、トンネルヒータ116、除染トンネル中の循環ファン、減圧ポンプ112などを調節して、予め選択されたトンネル状態を維持する。必要に応じて、操作入力160により、操作者が各領域の参照信号を調節して、選択された領域でより高いかまたはより低い濃度を生じさせ得る。
【0045】
例えば、蒸気の露点は、送達点に配置されたセンサ152、および出口ライン110内またはそれに隣接するセンサ153でもまた測定され得る。この2つの測定を使用して、フィードバックコントロールが可能となり、そしてこの容器が、無菌性を提供するのに十分な状態下で、この蒸気の過酸化水素に十分曝されることを確実にする。個々の容器の温度はまた、このプロセスにより、十分な精度で、入ってくる容器の温度を制御しない場合、測定され得る。この情報は、制御システムに供給され得る。この制御システムは、気化器により、濃縮が生じないことを確実にするために発生される蒸気の露点を改変させ得る。あるいは、またはさらに、除染領域での容器の滞在時間が、例えば、コンベアシステムのスピードを下げることによって、改変され、微生物の除染の所望のレベルを提供する。この蒸気の過酸化水素排出ラインをモニタリングすることにより、このシステム内での最悪の場合/最も低い濃度領域を提供する。トンネル内の蒸気を連続的にリフレッシュする一方で、使用済みの蒸気を取り除くことによって、より大きなプロセスコントロールを提供し、そしてこの過酸化水素水が分解する際に、より高いバックグラウンドの水蒸気が経時的に発生するのを防止するのを可能にする。
【0046】
気化器10は、従来のドリップ型気化器よりも高い蒸気出力を達成することができる。例えば、穿孔に1653ワットを供給する加熱ブロックは、50gの過酸化水素/分(35%過酸化水素/65%水)を気化させることが可能である。なぜなら、その溶液の気化熱は、33.07ワット・分/gであるからである。明らかに、供給される熱が増加する程、対応して高い出力が達成され得る。このような気化器のうちの1つ以上を使用して、高速ボトリングライン(例えば、約1000ボトル/分)が、除染され得る。
【0047】
本発明者らは、容器上の蒸気過酸化水素のいかなる凝縮も、現在要求される食品容器上の低レベルの過酸化水素残留物を達成することを非常に困難にすることを、見出した。除染された容器上の過酸化水素残留物のレベルを減少させるために、その容器上の過酸化水素蒸気の凝縮が排除されるかまたは最小に維持されることを確実にすることが、望ましい。このことを達成するために、除染トンネル11内の条件およびボトル周囲の条件が注意深くモニタリングされ、そして、蒸気の露点温度よりわずかに上に蒸気を維持するように制御されて、凝縮の危険を減少させつつ除染速度が最大にされる。その露点温度は、好ましくは、チャンバの温度の90%を超えて、より好ましくはその露点温度の約90%と約95%との間で維持される。より制御されたアルゴリズムを用いると、その露点温度は、チャンバ温度の95%と100%との間であり得る。
【0048】
さらに、特に除染トンネルが上記の周囲温度まで加熱された場合、その容器は、好ましくは、蒸気を収容する前に事前加熱される。図8を参照すると、その容器は、除染トンネル11に入る前に加熱チャンバ170を通り、ここで、容器は、その容器の表面がこのトンネルに入った場合にその容器の表面がそのトンネルの温度であるかままたはその温度より高いよう十分な温度まで、加熱器171により加熱される。これにより、これらの容器上で生じる凝結が回避される。
【0049】
図8を参照し続けると、その容器の一端(図8の頂部134付近)に充填ライン172を通して蒸気過酸化水素を供給すること、そしてその容器のもう一端(図8における基部132)付近に位置する排出ライン174の入口173を通してポンプ176を使用してその蒸気を回収することによって、循環流路が、それらの容器の各々にて生成され得る。このようにして、この蒸気は、容器から引き出され、そして表面全体と速やかに接触する。約1〜2分間以内に、この容器の内側は、少なくとも1つの高レベル殺菌標準へと微生物除染される。必要に応じて、そのチューブは、連続して操作され得、第1弁178が、充填ライン172を通してその容器に過酸化水素の波動が入ることを可能にするように短い間開かれる。その後、この充填ライン弁178は閉じられる。短い除染期間(温度に依存して、おそらく、30秒〜1分)の後、第2弁180が開口され、そしてポンプ176は、排出ライン174を通してその容器から蒸気を引き出す。
【0050】
その容器から過酸化水素をさらに除去することは、除染トンネル11と連結されたエアレーションチャンバ182にて行われ得、このエアレーションチャンバは、減圧ポンプ184と連結した排出ライン183を解して負圧に供される。または、除染チャンバ中の排出ラインは、排除され得、そして容器は、それらがこのエアレーションチャンバを通るにつれて、除染され続ける。その後、蒸気が、そのエアレーションチャンバから除去される。
【0051】
あるいは、またはさらに、滅菌空気(これは、フィルタ186を通って来る)が、空気入口ライン188を通ってエアレーションチャンバ中に送られて、容器から残りのすべての蒸気を駆り立てる。圧力差および/またはフィルタ(例えば、除染トンネルとエアレーションチャンバとの間の境界領域中のHEPAフィルタ)を通る空気流れが、相互混入の危険を最小にするために使用され得る。その後、除染された容器は、無菌充填領域190に移動し、この領域にて、これらの容器は、製品を充填され、その後、蓋をされる。
【0052】
除染トンネルの長さ、コンベアシステムの速度、除染トンネルの温度、および蒸気の化学は、その蒸気が除去されるときまでにその容器が微生物的に除染されるのを確実にするように、選択される。好ましい高速ボトリングプラントにおいて、各容器は、それが微生物的に除染される間に、除染トンネルにおいて約1〜2分間費やす。
【0053】
充填ライン172および排出ライン174は、図8に示されるような、並行した管の形態であり得るか、または図9に示されるような、同心円状管であり得る。充填ラインの長さおよび排出ラインの長さは、当然逆にされ得、その結果、蒸気が容器の頂部付近から入り、そして底部近傍から引き出される。
【0054】
あるいは、図10に示されるように、充填ラインおよび排出ラインは、容器中に別個に導入され得る。第1に、一組の容器に、一組の充填ライン172に結合された入口マニホルド124から蒸気が充填される。その後、その容器は、一組の排出ライン174に結合された第2排出マニホルド192へと通る。その2つのマニホルド間の間隔は、排出マニホルドに容器が到達する前にその容器を蒸気が除染するに十分な滞留時間を可能にするように配置される。
【0055】
もう1度図9を参照すると、キャップ196は、蒸気の導入および除去の間に、その容器の頂部開口部198を、必要に応じて少なくとも部分的に閉じる。図9に示されるように、そのキャップは、そのキャップに形成された開口部を有し、その開口部を通って、充填ライン172および排出ライン174が通る。
【0056】
図11に示される別の実施形態において、過酸化水素蒸気が、入口ラインまたは充填ライン200を通って除染トンネルへと供給され、そして各容器中に挿入された排出ライン174に減圧を適用することによって、個々の容器中に引き込まれる。この排出ラインは、各容器の底部付近へと延び、その結果、蒸気が、除染を達成するためにその容器を通って引き出される。
【0057】
図12に示される別の実施形態において、各充填ライン202は、それ自体の専用気化器10を有し、この気化器10は、容器に非常に近くに位置し得、例えば、除染トンネル11中に位置し得る。排出ラインは、それらの容器から蒸気を引き出す。キャリアガスライン204が、入口ラインにキャリアガスを供給するために使用され得るか、または蒸気は、キャリアガスを使用することなくその容器へと直接通され得る。
【0058】
その容器は、ボトリングラインの他の領域中に蒸気が逃げることを限定するために、除染トンネルに入る前に、好ましくは減圧空間206を通る。
【0059】
図13に示される別の実施形態において、蒸気過酸化水素は、ブロー成形プロセスの間に容器に導入される。製品を充填するすぐ前に容器をブロー成形するボトリングプラントにおいて、その容器は、微生物的に除染され得、そして充填まで汚染されていないままであり得る。例えば、ブロー成形の間に部分設定パリソン中に、従来のように注入される気体とともにかまたはその代わりに、蒸気過酸化水素が導入される。この蒸気過酸化水素は、一旦そのパリソンが完全に設定されると、注入気体とともに除去される。
【0060】
このブロー成形は、2つの半型212、214を備え、これらの半型は、内側チャンバ216を規定する。成形された熱可塑性材料は、入口218を介してこのチャンバに導入される。その後、流体(慣習的には、気体)が、注射針220を通して、圧力下でこのチャンバに導入される。その流体は、この設定パリソンをこのチャンバの壁に押し、ここで、この設定パリソンはチャンバの形状に設定される。蒸気過酸化水素は、従来の流体の代わりにかまたは従来の流体とともに、導入され得る。なお温かいパリソンの熱は、この蒸気の状態中の過酸化水素を維持するために役立つ。また、この過酸化水素蒸気は、一旦このパリソンがほとんどかまたは完全に設定された後、同じ注射針を通ってチャンバに導入され得る。このパリソンを形作るために使用される流体は、蒸気が収容される前に引き出され得るかまたは部分的に引き出され得る。一旦除染が達成されると、その後、その蒸気は、ポンプ224を使用して注射針を介して引き出される。
【0061】
表1は、迅速な抗微生物除染を達成するための例示的プロセス条件を提供する。
【0062】
(表1)
【0063】
【表1】

表1中のD値は、Bacillus stearothermophilus胞子について決定した。除染時間は、3logの減少に基づいた。除染すべき食品容器は、一般的に、すでに比較的低い微生物汚染レベルであるので、3logの減少は、滅菌標準または高レベル殺菌標準を達成するために十分であることが予測される。
【0064】
上記の値は、100%飽和について決定した。100%飽和は、いくらかの凝縮の危険なしには実際には達成され得ないことが、認識されるべきである。従って、蒸気が、例えば、90〜95%飽和で維持される場合、除染時間は、上記に提供される時間より対応して長い。過酸化水素の露点は、好ましくは、操作温度のすぐ下に、すなわち、認知される凝縮の危険を伴わずに操作プラントが達成可能である程度に近くに、維持される。例えば、そのプラント制御システムが、約2℃以内までに温度を維持することが可能である場合、操作温度は、露点温度より約3℃高い程度にわずかであり得る。
【0065】
表1から理解されるように、過酸化水素が微生物を不活化する速度は、温度、および過酸化水素の濃度とともに増大する。持続可能な最大過酸化水素濃度は、温度が増加すると増加する。より高温になる程、より速い除染速度を達成することに加え、除染された容器上により低レベルの残留物しか生じないことも見出された。しかし、温度が上昇すると、過酸化水素分解速度もまた、増加する。これらの変数のバランスをとって最小の処理温度および蒸気曝露を得ることによって、最適な成績が達成され得る。過酸化水素蒸気の露点/濃度を制御することによって、そして液体過酸化水素蒸気の凝縮を予防することによって、容器上の残留物レベルが最小にされ、それにより、従来のリンス工程をエアレーション工程により置換することが可能になる。これにより、その容器の再汚染の危険が最小にされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−264251(P2010−264251A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133446(P2010−133446)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【分割の表示】特願2002−563966(P2002−563966)の分割
【原出願日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【出願人】(502042506)ステリス インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】