説明

容器充填システム

【課題】殺菌ボックス18内の雰囲気がフィラ用チャンバー44側に行かないようにするとともに、フィラ42の雰囲気が殺菌ボックス18側に流入しないようにする。
【解決手段】容器2に電子線を照射して殺菌を行う殺菌ボックス18と、殺菌された容器2に内容物を充填するフィラ42を配置したチャンバー44との間に中間チャンバー40を設ける。この中間チャンバー40の圧力を、前記殺菌ボックス18内の圧力よりも高く、かつ、フィラ42のチャンバー44内の圧力以上となるように、圧力制御手段によってコントロールする。中間チャンバー40の圧力が最も高いので、上流側の殺菌ボックス18内の雰囲気がフィラ42側に流れず、フィラ用チャンバー44内の雰囲気が殺菌ボックス18側に流入することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線照射装置を備えた容器充填システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子線を照射することにより容器を殺菌した後、この容器内に液体等の充填を行う容器充填システムはすでに知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、ボトルの流れの上流側から順に、導入室R0、殺菌前室R1、電子線殺菌が行われる殺菌室R2、ボトルの中のエアブローが行われるリンサ室R3、ボトルに内容物が充填される充填室R4、ボトルにキャップを装着するキャッパ室R5を備えた電子線殺菌システムが記載されている。
【0003】
電子線による殺菌が行われる殺菌室では、電子線が照射されることによりオゾンが発生する。電子線の照射により殺菌されたボトルは、内部にオゾンが残留した状態で殺菌室R2からリンサ室R3に送られ、リンサ室R3において内部に空気が吹き込まれると、前記オゾンが外部に押し出される。このようにリンサ室R3でボトルから押し出されたオゾンが、その上流側の殺菌室R2と下流側の充填室R4に流れることを防止するために、特許文献1の発明では、殺菌室R2内の圧力P2、リンサ室R3の圧力P3および充填室R4の圧力P4が、P3<P2<P4の関係になるように制御している。つまり、中間のリンサ室R3の圧力P3が最も低く、このリンサ室R3の上流側の殺菌室R2の圧力がこれよりも高く、さらに、リンサ室R3よりも下流側の充填室R4の圧力P4が、殺菌室R2の圧力P2よりもさらに高くなるように圧力制御をしている。
【特許文献1】特願2006−314407号公報(第4−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載された発明の構成では、リンサ室R3の圧力P3が、上流側の殺菌室R2の圧力P2および下流側の充填室R4の圧力P4よりも低くなっている。ところが、前記殺菌室R2は、外部から搬入されてきた容器の殺菌を行うもので、無菌状態を維持してはいない。従って、この殺菌室R2の雰囲気が、下流側の充填室R4に隣接するリンサ室R3流れ込むと、充填室R4の入口近くまで外気が流入してくる危険性がある。充填室R4は最も高度な無菌状態を維持する必要があるので、たとえ、充填室R4の圧力P4を最も高くしてあっても、清浄でない雰囲気が接近することは好ましくない。
【0005】
また、充填室R4の圧力P4が殺菌室R2の圧力P2よりも高くなっているので、充填室R4の雰囲気がリンス室R3に流入し、さらに殺菌室R2まで流入するおそれがある。殺菌室における電子線の照射環境では、窒素酸化物が生成され、この窒素酸化物が水と反応すると硝酸を発生させる。従って、湿気を含んだ充填室の雰囲気が殺菌室に流入したり、リンサ室に容器を水洗いするリンサを備えた場合にあっては、充填室からの気流によって、リンサ室に設けたリンサの飛沫が殺菌室に流入すると、殺菌室内に硝酸が発生して、室内の設備が腐食する危険性がある等の問題があった。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、外部の汚染された雰囲気が殺菌室から充填室側に流れることを阻止するとともに、充填室の湿気等の水分が殺菌室に流れ込むことを阻止することができるように、各室内の圧力を制御した容器充填システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、容器に電子線を照射して殺菌を行う殺菌室と、殺菌された容器に内容物を充填する充填手段を配置した充填室と、これら各室間の圧力状態をコントロールする圧力制御手段とを備えた容器充填システムにおいて、前記殺菌室と充填室との間に中間室を設け、この中間室の圧力を、前記殺菌室の圧力よりも高く、かつ、充填室の圧力以上となるようにコントロールすることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、容器に電子線を照射して殺菌を行う殺菌室と、殺菌された容器に内容物を充填する充填手段を配置した充填室と、これら各室間の圧力状態をコントロールする圧力制御手段とを備えた容器充填システムにおいて、前記殺菌室と充填室との間に、殺菌室で殺菌された容器を洗浄する洗浄室を設けるとともに、前記殺菌室と洗浄室との間に中間室を設け、この中間室の圧力を前記殺菌室の圧力および前記洗浄室の圧力よりも高くなるようにコントロールすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
殺菌室と充填室との間に中間室を設け、この中間室の圧力を殺菌室の圧力よりも高く、かつ、充填室の圧力と同じかまたは充填室よりも高く設定し、あるいは、殺菌室と洗浄室との間に中間室を設け、中間室の圧力を殺菌室よりも高く、かつ、洗浄室よりも高く設定したことにより、殺菌室の雰囲気が充填室や洗浄室に流れることを阻止し、また、充填室や洗浄室の湿気を含んだ雰囲気や水滴、飛沫等が、電子線の照射を行う殺菌室側に侵入することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
電子線を照射して容器を殺菌する殺菌室と、殺菌された容器に内容物を充填する充填手段を配置した充填室との間に中間室を設け、これら各室内の圧力を、圧力制御手段によって、中間室の圧力が殺菌室の圧力よりも高く、かつ、充填室の圧力と同じかまたは高くなるようにコントロールするという構成で、充填室側の雰囲気が殺菌室に流入することを阻止するとともに、殺菌室の雰囲気が中間室を経て下流側に流れることを防止するという目的を達成する。
【実施例1】
【0011】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る容器充填システムの全体の構成を示す平面図である。この実施例に係る容器充填システムにおいて殺菌され液体等の内容物が充填される容器2はペットボトルであり(図2参照)、この容器2はエア搬送コンベヤ4によって連続的に搬送され、インフィードスクリュー6によって所定の間隔に切り離されつつ導入チャンバー内に搬入される。導入チャンバーは2つのチャンバー(第1導入チャンバー8と第2導入チャンバー10)に分かれており、各チャンバー8、10内にそれぞれ、容器保持手段(図示せず)を備えたロータリホイール(第1ロータリホイール12と第2ロータリホイール14)が配置されている。これら導入チャンバー8、10内に搬入された容器2は、各導入チャンバー8、10内のロータリホイール12、14に順次受け渡されて回転搬送される。前記エアコンベヤ4から第1導入チャンバー8内へ容器2が搬入される部分のチャンバー壁面には、容器2が通過可能な開口(図示せず)が形成され、また、第1ロータリホイール8から第2ロータリホイール10への受渡部の仕切壁16には、容器2の受け渡しが可能な開口(図示せず)が形成されている。
【0012】
第2導入チャンバー10に続いて、容器2を電子線の照射により殺菌する際に、X線(制動X線)や電子線が外部に漏れないように遮蔽する鉛製壁面から成る殺菌ボックス(殺菌室)18が設置されている。この殺菌ボックス18内は、供給ホイール20が配置されている入口側の供給室22と、供給ホイール20から受け取った容器2を搬送するとともに上下を反転させる容器搬送装置24が設けられたメイン室26と、電子線照射装置28の前面側に位置し、搬送される容器2が電子線の照射を受ける照射室30と、この照射室30の出口側(図1の右側)に連続して設けられ、電子線の照射により殺菌された容器2を無菌状態を維持したまま下流側に送る排出室32に区画されている。
【0013】
殺菌ボックス18の壁面の、第2導入チャンバー10のロータリホイール14から供給室22内の供給ホイール20へ容器2の受け渡しを行う部分には、容器2が通過可能な開口(図示せず)が形成されている。第2ロータリホイール14から容器2を受け取った供給ホイール20は、メイン室26の容器搬送装置24に容器2を引き渡す。供給室22とメイン室26との間の仕切壁34にも、容器2の受け渡しが可能な開口(図示せず)が形成されている。メイン室26に設置された容器搬送装置24は、詳細な図示および説明は省略するが、多数の容器保持手段としての容器グリッパが連続して設けられた無端状の容器搬送体である容器保持帯24aと、この無端状の容器保持帯24aが掛け回されて容器グリッパを循環搬送させる移送回転体として2つのスプロケット24b、24cを備えている。各容器グリッパは、上下一対の容器保持部を有しており、同時に2個の容器2を保持して搬送するとともに、搬送方向に沿った軸線を中心に180°回転して反転することができる。そして、この容器搬送装置24は、容器グリッパが両スプロケット24bと24cの間で直線的に移送される直線経路と、各スプロケット24b、24cに沿って周回される周回経路から構成され、スプロケット24cから24bへ至る直線経路に反転位置Aが設定され容器2を1周搬送する間に、1回反転させて容器2の上下を入れ替えるようになっている。一方のスプロケット24cの周回経路には、容器グリッパの移送方向で下流側に容器2の供給位置Bが設定され。上流側に排出位置Cが設定されており、一つの容器2は、供給位置Bで一方の容器保持部に保持されて2周搬送され、その間に2回上下が反転され、供給時の状態に戻った後、排出位置Cから排出室32の受け渡しホイール36に引き渡される。前記第1導入チャンバー8、第2導入チャンバー10、供給室22およびこのメイン室26内は、外部から殺菌前の容器2が導入され搬送されているので、外部よりも陽圧に管理されているが完全な無菌状態が維持されてはいない。
【0014】
鉛製の殺菌ボックス18に隣接して電子線照射装置28が配置されている。この電子線照射装置28は、容器2に電子線を照射する照射ユニット29を備えており、載置台38に載置されている。電子線照射装置28の構成は周知であるので図示および詳細な説明は省略するが、照射ユニット29内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにしてから、照射窓29aに取り付けたTi等の窓箔29bを通して大気中に取り出して被処理物(容器2)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う装置である。
【0015】
この実施例では、電子線照射装置28に載置した載置台38はレール38a上を移動可能になっており、殺菌ボックス18に対して接近、離隔させることができる。この容器充填システムを運転する際には、載置台38を殺菌ボックス18に接近させ、照射ユニット29の照射窓29aを殺菌ボックス18の壁面に形成された開口18aに一致させて、これら両者18、29を連結する。殺菌ボックス18の内部に、前記照射ユニット29が取り付けられている開口18aを囲むようにして照射室30が設けられている。前記容器搬送装置24はスプロケット24bから24cへ至る直線経路が照射室30を貫通しており、この貫通する部分に照射位置Dが設定され、容器グリッパに保持された2本の容器2は、上下に垂直な状態でこの照射室30内を通過し、各容器2は、電子線照射装置28から電子線の照射を受けて殺菌される。
【0016】
照射室30の入口側と出口側の壁面には容器グリッパに保持された上下2本の容器2が通過可能な開口(図示せず)が形成されている。この照射室30の出口側の壁面に連続して排出室32が形成されている。容器搬送装置24の一方のスプロケット(図1の右側のスプロケット24c)は、排出室32の内部に入り込んでおり、容器グリッパに保持されて上下位置で1回ずつ2回の電子線照射を受けた容器2は、排出室32内で、容器グリッパの下方に位置する容器保持部からこの排出室32に設置された受け渡しホイール36に引き渡される。排出室32は、スプロケット24cの回転を妨げずに、照射室30の出口側の開口から受け渡しホイール36までの容器搬送装置24の搬送経路、および受け渡しホイール36の搬送経路を、メイン室26および供給室22から区画する仕切壁32aと、仕切り壁32aと対向し受け渡しホイール36の上下空間から区画する仕切壁32b、および殺菌ボックス18の床面と天面とで取り囲んで覆っている。この排出室32以降の各チャンバーは、電子線の照射により殺菌された容器2の処理を行うので、無菌状態が維持されている。なお、さらに照射室30の出口側の開口から受け渡しホイール36までの容器搬送装置24の搬送経路を、容器2の搬送を妨げないようにして上方の搬送空間と下方の搬送空間とに仕切壁を設けて区画し、受け渡しホイール36の搬送経路についても、容器2を受け取る下方の搬送空間と連通させて上方の搬送空間とは仕切壁により区画するようにしても良い。この場合には、下方の搬送空間と受け渡しホイール36の搬送経路を取り囲む空間が排出室32となる。
【0017】
殺菌ボックス18内の最も下流側に位置している排出室32に隣接して中間チャンバー40が設置されている。そして、この中間チャンバー40の下流側に、フィラ(充填手段)42を収容したチャンバー(充填室)44が設置されている。中間チャンバー40内には、容器保持手段46a(図2参照)を備えたロータリホイール(ネックホイール)46が設けられており、このネックホイール46が前記排出室32内の受け渡しホイール36から受け取った容器2を、回転搬送した後、フィラ42が設置されたチャンバー44内の供給ホイール48に引き渡す。
【0018】
中間チャンバー40内のネックホイール46に円周方向等間隔で設けられている各容器保持手段46aの上方に、ぞれぞれエアー噴射ノズル50が設置されており、これらネックホイール46、容器保持手段46aおよびエアー噴射ノズル50等によりエアブロー装置52が構成されている。エアブロー装置52は、前記容器保持手段46aによって容器2のネック部に形成されたフランジ2aの下面側を支持して回転搬送する間に、前記エア噴射ノズル50から容器2内に無菌エアを吹き込む。このように、前記電子線照射装置28から電子線の照射を受けて殺菌された容器2の内部に無菌エアを吹き込むことにより、電子線の照射によって発生したオゾンを容器2内から排気させる。なお、このネックホイール46に容器2を引き渡す受け渡しホイール36および、ネックホイール46から容器2を受け取る下流側の供給ホイール48には、それぞれ容器2のフランジ2aの上方をグリップするグリッパ55(図2中に想像線で示す)が設けられている。
【0019】
エアブロー装置52でエアブローが済んだ容器2は、フィラ42が設置されたチャンバー44内の入口側に配置されている供給ホイール48に受け渡された後、フィラ42に供給される。供給ホイール48から容器2を受け取ったフィラ42は、この容器2を保持して回転搬送する間に液体等の内容物の充填を行う。充填が終了した容器2は、フィラ42のチャンバー44に隣接して配置されているキャッパ54用のチャンバー56内に搬入される。このキャッパ54用のチャンバー56内の入口側には、フィラ42から容器2を受け取ってキャッパ54にこの容器2を引き渡す中間ホイール58が配置されている。また、キャッパ54の下流側には、キャッピングが終了した容器2を排出コンベヤ60に引き渡す排出ホイール62が設けられている。
【0020】
この容器充填システムでは、エア搬送コンベヤ4によって搬送されてきた容器2が、殺菌ボックス18内で電子線照射装置28から電子線の照射を受けて殺菌された後、フィラ42で内容物が充填され、キャッパ54でキャッピングが行われ、その後、排出コンベヤ60によって排出されて次の工程に送られる。なお、殺菌ボックス18内の排出室32に配置された受け渡しホイール36から中間チャンバー40のロータリホイール46に容器2を受け渡す位置、中間チャンバー40内のロータリホイール46からフィラ42の設置されたチャンバー44内の供給ホイール48へ容器2を受け渡す位置、フィラ42からキャッパ54の設置されたチャンバー56内の中間ホイール58に受け渡す位置等のチャンバー壁面には、それぞれ容器2が通過可能な開口が形成されている。また、殺菌ボックス18の各開口にはシャッタが備えられており、連通する他のチャンバー内を洗浄する際に閉鎖して水滴や湿気の流入を防止するようになっている。
【0021】
前記第1の導入チャンバー8と、鉛製の殺菌ボックス18のメイン室26およびキャッパ54の設けられたチャンバー56には、それぞれ排気ブロア64、66、68が接続されて各チャンバー8、26、56内のエアを排出できるようになっている。また、エアブロー装置52が設置されている中間チャンバー40と、フィラ42が設置されているチャンバー44には、それぞれ加圧エアの供給手段70、72がフィルター74、76を介して接続されており、各チャンバー40、44内に無菌エアを供給できるようになっている。これら各排気ブロア64、66、68、加圧エア供給手段70、72およびこれらの排気量と給気量を制御する制御装置(図示せず)によって圧力制御手段が構成されており、この圧力制御手段によって、前記各チャンバー8、10、22、26、32、40、44、56内の圧力を制御できるようになっている。
【0022】
この実施例では、電子線の照射により容器2の殺菌を行う照射室30を含む殺菌ボックス18と、フィラ42が設置されたチャンバー44との間に配置されている中間チャンバー40内が最も高圧になるようにコントロールされている。そして、フィラ42の設置されているチャンバー44内は、中間チャンバー40と同圧かあるいはやや低い圧力になっている。このフィラ42が設置されたチャンバー44の下流側の、キャッパ54が設置されているチャンバー56は、フィラ42のチャンバー44よりも低圧になっている。一方、中間チャンバー40よりも上流側の、殺菌ボックス18内の排出室32は、中間チャンバー40よりも低圧であり、さらに、照射室30、メイン室26は排出室32よりも低圧になっている。また、メイン室26よりもさらに上流側の供給室22、第2導入チャンバー10および第1導入チャンバー8は、外部よりは陽圧であるが上流側に向かうほど次第に低い圧力になるように制御されている。なお、請求項1および請求項2に記載した殺菌室は、殺菌ボックス18を指しているが、中間チャンバー40は、この殺菌ボックス18内で最も高い圧力に維持されている下流側の排出室32よりも高圧となるようにコントロールされている。
【0023】
以上の構成に係る容器充填システムの作動について説明する。このシステムで殺菌、充填される容器2はペットボトルであり、エア搬送コンベヤ4によって、ネック部に形成されたフランジ2aの下面側を支持され、後方からエアを吹き付けられて搬送される。エア搬送コンベヤ4によって搬送されてきた容器2は、第1導入チャンバー8内に入り、インフィードスクリュー6によって一定の間隔に切り離されて、第1ロータリホイール12の容器保持手段に引き渡される。第1ロータリホイール12によって回転搬送された後、第2導入チャンバー10内の第2ロータリホイール14に引き渡される。
【0024】
容器2は第2ロータリホイール14から鉛製の殺菌チャンバー18の供給室22内に設置された供給ホイール20に引き渡され、供給ホイール20の容器保持手段に保持されて回転搬送されて、容器搬送装置24のグリッパに引き渡される。グリッパは上下二つの容器保持部を有しており、その下側の容器保持部に保持された容器2は、グリッパが反転することにより上方に移動して倒立した状態になる。倒立した容器グリッパがスプロケット24bの周囲を回転移動して照射室30に入る。照射室30には、その外側に配置されている電子線照射装置28から電子線が照射されるようになっており、搬送されているこの容器2は、照射ユニット29の窓箔29bの前方を通過する間に、電子線が照射されて殺菌される。
【0025】
照射室30を抜け出した1回目の照射を終えた容器2は、排出室32内を移動し、スプロケット24cの周囲を回転移動して再び供給ホイール20からの受け渡し位置に戻る。前回この供給ホイール20から下側の容器保持部が受け取った容器2は、反転して上方に移動しており、下方に位置している他方の容器保持部が供給ホイール20から容器2を受け取る。その後、グリッパが再度反転して、上下が入れ替わり、前回上方で電子線の照射を受けた容器2が下側に移動し、電子線の照射を受けていない面が容器搬送装置24の回転移動方向の外側を向く。再び照射室30に入ると、すでに1回目の照射を受けた容器2は前回とは逆側から2回目の電子線の照射を受けて内外面全域が殺菌される。また、同時に他方の新たに保持された上方の容器2は1回目の照射を受ける。
【0026】
照射室30で2回目の電子線の照射を受けて内外面全体が殺菌された容器2は、排出室32内で受け渡しホイール36に引き渡され、さらに、次の中間チャンバー40内のネックホイール46に引き渡されて鉛製の殺菌ボックス18から排出される。中間チャンバー40内に設置されたネックホイール46の容器保持手段46aに保持された容器2は、回転搬送される間に上方のエア噴射ノズル50から内部に無菌エアが吹き込まれ、電子線の照射により生成されて内部に残留していたオゾンが排出される。
【0027】
中間チャンバー40のネックホイール46から、次のフィラ42を収容したチャンバー44内に設置された供給ホイール48に受け渡しが行われ、その後、この供給ホイール48からフィラ42に供給される。フィラ42で回転搬送される間に内容物が充填された容器2は、中間ホイール58によってフィラ42から取り出され、次のキャッパ54が配置されたチャンバー56内に搬入される。中間ホイール58からキャッパ54に受け渡されてキャッピングが行われた後、排出ホイール62を介して排出コンベヤ60上に排出されて次の工程に送られる。
【0028】
この実施例に係る容器充填システムでは、鉛製の殺菌ボックス18内の中間チャンバー40と隣接している排出室32と、フィラ42が設置されたチャンバー44との間に配置されている中間チャンバー40内の圧力が、圧力制御手段によって最も高い圧力に維持されているので、外部から容器2が搬入される殺菌ボックス18内の雰囲気が中間チャンバー40の圧力にブロックされて、中間チャンバー40内に流入することがなく、これより先(下流)のフィラ42の設置されたチャンバー44内に侵入し、あるいは接近することを阻止できる。また、逆にフィラ42を設置したチャンバー44内の湿気を含んだ雰囲気が中間チャンバー40の圧力にブロックされて、中間チャンバー40内に流入することがなく、これより手前(上流)の電子線の照射を行う殺菌ボックス18内に入り込むことを防止することができる。
【実施例2】
【0029】
図3は第2の実施例に係る容器充填システムの全体の構成を示す平面図である。この実施例は前記第1実施例と基本的な構成は共通であるので、同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、相違する部分についてだけ説明する。この実施例に係る容器充填システムは、中間チャンバー40とフィラ42を設置したチャンバー44の間に、リンサ(洗浄手段)80を設置したチャンバー(洗浄室)82が配置されている。このリンサ80用のチャンバー82内には、中間チャンバー40内のネックホイール46から容器2を受け取ってリンサ80内に供給する供給ホイール84と、リンサ80で洗浄した容器2を取り出してフィラ42のチャンバー44内の受け渡しホイール86に引き渡す排出ホイール88を備えている。また、このリンサ80用のチャンバー82には、排気ブロア90が接続されており、前記実施例と同様の排気ブロア64、66、68、エア供給手段70、72および図示しない制御装置とともに圧力制御手段を構成している。なお、この実施例の中間チャンバー40には、前記実施例で設けられていたエアブロー装置52を構成するエア噴射ノズルは配置していない。
【0030】
この実施例では、中間チャンバー40内の圧力が最も高く、上流側の殺菌ボックス18内の圧力(特に、中間チャンバー40に隣接する排出室32の圧力)が中間チャンバー40の圧力よりも低くなっている。また、排出室32の上流側のメイン室26、供給室22、第2導入チャンバー10および第1導入チャンバー8内の圧力は、前記第1実施例と同様に、外部よりは陽圧であるが上流側に向かって順に低くなっている。一方、中間チャンバー40の下流側はリンサ80が設置されたチャンバー82内の圧力が外部よりは陽圧であるが中間チャンバー40の圧力よりも低く、しかも、フィラ42用のチャンバー44内の圧力よりも低くなっている。この実施例でも、外部から容器2が搬入される殺菌ボックス18側の雰囲気が中間チャンバー40の圧力にブロックされて、これより先(下流)の各チャンバーへ流入することを阻止できる。また、リンサ80からの飛沫や水滴、これを設置したチャンバー82内やチャンバー82に流入するチャンバー44内の湿気を含んだ雰囲気が、中間チャンバー40の圧力にブロックされ、中間チャンバー40内に流入することがなく、さらに手前(上流)の電子線の照射を行う殺菌ボックス18内に入り込むことを防止することができる。なお、リンサ80は、電子線を照射して殺菌した容器2を充填室に搬入するに際して、粉塵や埃等の付着物および容器2内の異物の除去を目的に、容器2の内外面に無菌水を噴射して洗い流すように構成しているが、このようなチャンバー82(洗浄室)に設置するリンサ等の洗浄手段としては、容器2の内外面に無菌気体を吹き付け、また、容器2を反転させたり内部を吸引する等して、粉塵や埃、異物の除去を行うエアリンサやエアクリーナであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】電子線照射装置を備えた容器充填システムの全体の構成を示す平面図である。(実施例1)
【図2】エアブロー装置の要部を示す正面図である。
【図3】第2の実施例に係る容器充填システムの平面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0032】
2 容器
18 殺菌室(殺菌ボックス)
42 充填手段(フィラ)
44 充填室(フィラ用チャンバー)
40 中間室(中間チャンバー)
82 洗浄室(リンサ用チャンバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に電子線を照射して殺菌を行う殺菌室と、殺菌された容器に内容物を充填する充填手段を配置した充填室と、これら各室間の圧力状態をコントロールする圧力制御手段とを備えた容器充填システムにおいて、
前記殺菌室と充填室との間に中間室を設け、この中間室の圧力を、前記殺菌室の圧力よりも高く、かつ、充填室の圧力以上となるようにコントロールすることを特徴とする容器充填システム。
【請求項2】
容器に電子線を照射して殺菌を行う殺菌室と、殺菌された容器に内容物を充填する充填手段を配置した充填室と、これら各室間の圧力状態をコントロールする圧力制御手段とを備えた容器充填システムにおいて、
前記殺菌室と充填室との間に、殺菌室で殺菌された容器を洗浄する洗浄室を設けるとともに、前記殺菌室と洗浄室との間に中間室を設け、この中間室の圧力を前記殺菌室の圧力および前記洗浄室の圧力よりも高くなるようにコントロールすることを特徴とする容器充填システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−162652(P2008−162652A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354654(P2006−354654)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】