容器入り玉子焼並びにその製造装置及び製造方法
【課題】従来の厚焼玉子焼の製造工程における多くの問題点を解消することができ新規な容器入り玉子焼並びにその容器入り玉子焼を効率的に製造することのできる製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段と、前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填手段と、焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し手段と、半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填手段と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着手段と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却手段と、を具備するようにした。
【解決手段】複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段と、前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填手段と、焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し手段と、半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填手段と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着手段と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却手段と、を具備するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規に案出された容器入り玉子焼き並びにその容器入り玉子焼きを製造することのできる製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の玉子焼調理品としては、連続大量生産機械焼による玉子焼加工品や厚焼玉子等が知られている。ここでは作業工程が複雑な厚焼玉子を取り上げる。本来厚焼玉子とは、職人さんの手作りによって、高級割烹、弁当、高級寿司店の寿司ネタ等で使用されていた。40年前頃から、連続で厚焼玉子を焼成出来る焼成機が開発され、現在まで改良進化して来た。厚焼玉子(標準サイズ500g)を焼成成形する場合は、4〜6層に分けて充填焼成し、半生状態で重ね合わせて、加熱成形されるのが一般的である。液卵充填装置、油の塗布装置、攪拌装置、反転装置、厚焼玉子取出し装置等々も開発され、800本/時間程度の焼成機も出来ている。大型連続焼成機の開発が進んだことから厚焼玉子も安価になり、スーパー、回転寿司、外食産業、給食弁当産業等にも、広く厚焼玉子を食材として採用され、現在に至っている。
【0003】
各加工業者に、同じような性能の焼成機が行き渡ったことから、製品の差別化が難しくなり、関係企業が乱売へと走り、廃業淘汰されている、これが現状である。更に東日本大震災(3.11)以降、飼料工場、養鶏舎の崩壊等から、鶏卵価格の異常な高騰をまねき、このような状況で、我々加工業者も経験のない窮状に至っている。
【0004】
本発明者は二十数年前から焼成機を用いて厚焼玉子を製造している。玉子焼焼成機については、省力化、装置数の削減、焼成作業の簡素化を目的に自ら設計し、導入後改良を加えながら現在に至っている。装置数を減らした事から、焼成能力は厚焼玉子400g×500本程度/時間が限界である。
【0005】
上記焼成機は次のような装置を有している。
(1)鍋を固定する鋼鉄製移動枠:20個(鍋セット1〜20)
(2)油塗布装置:6箇所、同時塗布:二台
(3)液量充填装置:6箇所、同時充填:二台
(4)攪拌装置:6箇所、同時攪拌:二台
攪拌することにより、充填卵液の温度を平均化し、微泡を作り、生産性を高める。
【0006】
(5)押圧装置:6箇所
各層間の接着性を高める目的と、層間にある空気(微泡とは違う)が、焼成中に熱膨張を始め、接着面の剥離へと進むのを防止する為に、空気を排除する目的で、上から押圧する。しかし、全てを排除することは難しく、これが製品ロスを左右する。
【0007】
(6)反転装置:8箇所
層を積み重ねて焼成成形する為に、第一鍋を反転させて、第二鍋に移載、更に反転から第三鍋、そして第四鍋に積み重ねる目的で使用される。半生状態で反転させる事から、微妙な反転スピードの調整が要求される。その後も反転を繰り返しながら、両表面に好みの焦げ目を付ける事と、半生状態の中心部へ加温する為の装置である。最後の反転は、焼き上がった厚焼玉子を取り出す目的で使用する。
【0008】
稼働中の焼成機の作業の流れは次の通りである。
液面センサー付きの、充填機内に卵液の特殊ポンプによる移送開始、焼成作業中はセンサーにより自動補充される。エアー駆動で、鍋セットを移動しながら、手順に沿ってガスバーナーに点火、鍋温度を計測しながら、適正温度に達したら、その鍋セットをスタート1(仮称)として焼成作業を開始する。スタート1の鍋1,2へ液卵充填開始、順次移動、鍋1,2攪拌、鍋3,4充填、鍋1反転、鍋2押圧、鍋3,4攪拌、鍋2反転、鍋3押圧、鍋3反転、鍋4押圧、此の様な工程を経て、四層重ねの厚焼玉子に仕上がっていく。更に反転及び加熱を加えながら、取り出し口まで移動する。スタート2以降も、同じ工程で、順次焼成ラインをエンドレスに流れる作業工程となる。
【0009】
上記の説明は比較的簡単な四層焼工程に付いてであるが、厚焼玉子の質量等によっては、五層〜八層焼になる事から、それに合わせて当然各装置類も増え、難易度もリスクも増すことは明らかである。装置の故障は、焼成作業の中断を招く、つまり装置数が多いほど故障する確率が高まるのである。各装置類はシーケンサー等で制御された作業ロボットで、装置一台50万円〜150万円と言った価格で有り、それらを備えた焼成機は高価なものになるのは当然の事である。製品サイズによっては、更に違った高価な焼成機が必要となり、作業スペースの確保も必要となる。これは焼成ライン上で、焼成成形作業を完結しなければならないと言う、従来の固定観念に起因する。
【0010】
以下さらに従来技術について説明する。従来の連続厚焼玉子焼成機においては、一つのエンドレスの焼成ラインを用い、このエンドレスの焼成ラインに沿って焼成鍋を横向き(平行)に水平方向に移動させてこの焼成ラインを一周する間に玉子焼が焼成される(例えば、特許文献1)。この従来の連続厚焼玉子焼成機においては、焼成鍋は繰り返し反復使用される。この従来の玉子焼焼成機において、焼成ラインを一周する間の作業手順は大略次の通りである。1.焼成鍋の清掃、2.油ひき、3.計量充填、4.攪拌、5.反転、6.押し(エアー抜き)、7.反転、8.押し(エアー抜き)、9.反転、10.押し(エアー抜き)、11.反転、12.反転、13.反転、14.反転、15.玉子焼取り出し。サイズによって、四層から六層を重ね合わせて、一本の厚焼玉子(玉子焼)が焼成される。
【0011】
図7は、従来の連続厚焼玉子焼成機の一例を示す上面概略説明図である。図8は図7の一部を示す斜視説明図である。図7及び図8において、50は連続厚焼玉子焼成機で、多数の焼成鍋Wがエンドレスの焼成ライン54に沿って間欠的に移動する。焼成鍋Wの間欠的移動手段としては、焼成鍋Wをガイドレール(図示せず)上に摺動可能に設置し、焼成作業開始領域50a、第1折り返し領域50b、第2折り返し領域50c及び焼成作業終了領域50dにそれぞれエアシリンダー又はオイルシリンダー等の押圧手段55a,55b,55c,55dを設け、焼成鍋Wを押し動かすようにすればよい。図7及び図12に示した焼成鍋Wは3連で4層重ねの厚焼玉子Eを製造する場合に用いられるもので、第1焼成鍋W1、第2焼成鍋W2、第3焼成鍋W3、第4焼成鍋W4に分かれている。この焼成鍋Wとしては、図12に示した3連4層鍋の他に、図13に示した3連5層鍋(第1〜第4焼成鍋W1〜W4に加えて第5焼成鍋W5を有する)や図14に示した3連6層鍋(第1〜第5焼成鍋W1〜W5に加えて第6焼成鍋W6を有する)が用いられ、また図示しないが、4連4層鍋、4連5層鍋、4連6層鍋などを用いることもできる。
【0012】
上記した各焼成鍋Wの下方には焼成鍋W内の原料液卵を厚焼玉子に焼成するために加熱するための加熱手段、例えば棒ガスバーナー56が設置されている。
【0013】
58は油ひき装置で、焼成ライン54の作業開始領域50a近傍において空の焼成鍋Wの内部に油をひくためのものである。60は計量充填装置で、油のひかれた焼成鍋W1〜W4中に原料液卵を所定量ずつ供給充填するものである。62は攪拌装置で、焼成鍋W内の液卵を均一にかきまぜるものであるが、設置されない場合もある。64は天火バーナーで、上方から焼成鍋W内の液卵を加熱してその固化を促進するものであるが、設置されない場合もある。
【0014】
66aは第1反転装置で、第1焼成鍋W1において固化した液卵E1を反転させて隣接する第2焼成鍋W2中の固化した液卵E2上に重ね合わせる作用を行う(図11)。68aは第1押し装置で、第2焼成鍋W2中に2層に重ねられた玉子焼を押圧し、内部のエアーを抜くものである。
【0015】
この第2焼成鍋W2中の2層の玉子焼は第2反転装置66bによってさらに反転せしめられて隣接する第3焼成鍋W3中の固化した液卵E3上に重ね合わせられて、3層の玉子焼となる(図11)。この第3焼成鍋W3中の3層の玉子焼は第2押し装置68bによって押圧され、エアー抜きされる。
【0016】
この第3焼成鍋W3中の3層の玉子焼は第3反転装置66cによって反転せしめられて隣接する第4焼成鍋W4中の固化した液卵E4上に重ね合わせられて4層の玉子焼となる(図11)。この第4焼成鍋W4中の4層の厚焼玉子は第3押し装置68cによって押圧され、エアー抜きされる。
【0017】
この4層の厚焼玉子に対して、反転装置66d〜66gによって4回の反転及び押し装置68d〜68gによって押圧エアー抜きが行われ、最後に反転装置66hによって反転されて3個の厚焼玉子焼製品Eが同時に外部に取り出される(図11)。図11はこの4層の厚焼玉子Eの重ね合わせ手順のみを示す概略説明図である。
【0018】
上記した油ひき装置58としては、下端部に油ひき布を取り付けたロッドを上下動自在かつ水平方向に移動可能に設け、油ひき作業の際は油ひき布を降下させて焼成鍋W内を水平方向に移動して油ひきを行わせ、油ひき作業を行わない時は上昇させておく構造とすればよく、その機構自体はよく知られており、図示による詳細な説明は省略する。
【0019】
上記した計量充填装置60は、液卵を所定量ずつ計量して焼成鍋W内に供給すればよく、その機構自体はよく知られており、図示による詳細な説明は省略する。
【0020】
上記した攪拌装置62としては、攪拌ロッドを上下動自在かつ水平方向に移動可能に設け、攪拌の際は攪拌ロッドを降下させて焼成鍋W内の液卵中を水平方向に移動して液卵を攪拌し、攪拌作業を行わない時は攪拌ロッドを上昇させておく構造とすればよく、その機構自体はよく知られており、図示による詳細な説明は省略する。
【0021】
上記した反転装置66a〜66h及び押し装置68a〜68gとしても種々の構造が知られているが、例えば図9及び図10に示したものが用いられる。図9及び図10において、反転装置66はロータリーアクチュエーター70を有している。該ロータリーアクチュエーター70には反転用ハンドル72が取り付けられており、ロータリーアクチュエーター70の動きに従って回動するようになっている。該反転用ハンドル72の先端にはフック部74が形成されており、該フック部74によって焼成鍋Wの側面に突設された突部52を保持することができる。このフック部74によって突部52を保持した状態として反転用ハンドル72を回動させれば、焼成鍋Wは図示したように反転し、また元に戻すことができる。
【0022】
図9において、押し装置68はエアシリンダー76を設置した取付板78を有している。該取付板78にはエアシリンダー76によって駆動するロッド80が上下動自在に取り付けられている。該ロッド80の下端部には押圧用錘82が取り付けられており、該押圧用錘82を玉子焼の上面に降下させれば玉子焼が押圧されエアー抜きがなされる。押し作業を行わない時には押圧用錘82は上昇させておく。図9において、84は焼成鍋Wを取り付けるための取付枠台である。
【0023】
限られた作業スペースの中で、生産性を高める為に、大変高価な油ひき、計量充填、攪拌、天火バーナー等各装置を、数箇所に設置しているのが現状である。またそれぞれの装置を作業手順に合わせて作動させるために、大変高価で複雑な制御装置が必要となる。
【0024】
例えば、市販の焼成機(三連、四層、20セット)の場合、レシピや液卵温度によっても違うが、完全焼成されるのに一周約9分が必要である。60分÷9分×3連×20セットで約400本(1時間)生産できる。
【0025】
充填量は、第一鍋を多くし、第二鍋、第三鍋、第四鍋は徐々に少なくするのが、一般的である。その理由は次の通りである。第一鍋が反転し、第二鍋に焼成中の玉子を落下させるために、ある程度の重さが必要である。第一鍋、第二鍋の充填量が多いことから、攪拌し温度を平均化させ焼き付き及び生焼けを防止し、生産能力を高める。第一鍋、第二鍋で玉子焼の芯が形成され、第三鍋、第四鍋が表面となる。
【0026】
従って、表面をきれいに仕上げるために、第三鍋、第四鍋は攪拌しない場合も有り得る。第一鍋から第四鍋まで充填量の違いから、また第三鍋、第四鍋は厚焼玉子(玉子焼)の仕上り面になることから、それぞれ微妙な火力の調節が必要である。
【0027】
多数、例えば80本程度の棒状ガスバーナーによって、火力を個々に調節しており、鍋横送り(平行)型は水平移動中に、それぞれの鍋用に火力調整されたガスバーナー上を通過するために、温度調節には大変な熟練が必要となる。卵の卵白にはイオウが多く、卵黄には鉄分が含まれている。焼成中に加熱オーバーになると、化学反応し硫化鉄ができ、玉子焼内部が緑変しクレームになる。加熱不足であると、生焼けになり、また食中毒菌が死滅しない。その為に従来の焼成機では火加減は熟練を要する作業である。また、緑変、生焼けが発生した玉子焼は廃棄処分となる。したがって、生焼けや、過熱オーバーによる緑変を防ぐために、微妙な温度コントロールが必要となる。
【0028】
上述した従来の連続厚焼玉子焼成機における問題点は次の通りである。
(イ)固化した液卵を重ね合わせるために焼成作業の後半においては焼成鍋を反転させる必要があるが、反転後の焼成鍋は液卵の存在しない空鍋となり、この空鍋に対しても同様に加熱を行って移動させることとなり、熱効率が非常に悪くなる。
【0029】
(ロ)従来の焼成機では、前述したように、生焼けになった場合、不良品となる。わずかな生焼けは、検査漏れとなり誤って出荷されることもあるが、当然クレーム返品廃棄となる。このようなリスクを考慮し、安全率を高める為に、速度を遅くし焼成時間を長くするのが一般的であるが、その場合生産効率が低下する不利がある。
【0030】
(ハ)厚焼玉子内部の温度は必ずしも維持されているとはいえず、生産性(生産速度)を落とすことなく、一般細菌数(主に耐熱菌)の減少を図ることは困難であった。
【0031】
(ニ)焼成鍋の反転時にトラブルが多く発生するが、例えば一層目の液卵の質量が少ないため、最初の反転時には焼成鍋から剥離落下しにくい難点があった。
【0032】
(ホ)焼成鍋の反転時に焼成鍋の外側に飛散付着した液卵は、徐々に炭化し、反転時の衝撃によって厚焼玉子内部に異物となって混入する。
【0033】
(ヘ)従来の焼成機では、反転装置を含めた各装置が焼成ラインに分散設置されていることから、機械下部及び作業床全面に液卵が飛散落下し、清掃除去作業が容易でない。
【0034】
(ト)従来の焼成機では、焼成鍋の反転時などに人力の補助を必要とする場合があり、換気ダクト等で覆うことができず、排熱が困難であり、作業環境の向上を図ることが難しかった。
【0035】
(チ)卵焼きの差別化を図るために、色々の具材(野菜、肉、魚等)を入れた商品の需要は高まっているが、具材の投入は人力によってなされるため危険であり、特に反転押圧作業領域付近ではその危険性が大であった。
【0036】
(リ)焼成鍋内の液卵の攪拌反転時に飛散落下した液卵がガスバーナーに付着し、ガス穴を閉鎖し火力の低下、不安定化は避けられなかった。
【0037】
(ヌ)従来の焼成機では、前述したように空鍋率が高いので、その分だけ作業スペースを余分に必要とするという不利があった。
【0038】
(ル)前述したように、生焼けの場合、食中毒菌が生存する可能性があり、食中毒の原因となる。加熱オーバーでは、卵に含まれる鉄分とイオウが化学反応し硫化鉄となり、厚焼玉子表面及び断面が暗緑色になり、不良品となる。その為、熟練した作業員の技術が必要となる。
【0039】
(ヲ)例えば、三連四層の厚焼玉子を製造する場合、焼成鍋からの剥離落下を考えると、一層から四層までの充填量はそれぞれの量を調整するのが望ましいが、一層二層三層四層の火力は微妙な調整が必要となる。さらに、四層の重ね合わせ工程時は、それぞれある程度の凝固強度が必要であり、なおかつ、張り合わせるために、適量の液卵残留が条件となる。従来の横送型焼成機の場合は、各層は他層のガスバーナー上を必然的に通過するために、各ガスバーナーの火力の調整は困難であり、例えば寿司の握り用に薄くスライスする際の重ね合わせ部の割れが多く発生するなどの不利があった。
【0040】
(ワ)従来の焼成機においては、多量のガスバーナーを使用しているために、排気換気を行う必要があるが、その際従来の横送型焼成機では、空気の流れに左右され火力が不安全となり、三連の両サイドが火力不足となる傾向があった。
【0041】
(カ)生産量を上げるためには、四連や五連とするのが有効であるが、従来の横送型焼成機では、人力の補助、作業後の清掃を考えると、手が届かないことから鍋幅に限界が出てくる不都合があった。
【0042】
本願発明者の一人は、従来の連続厚焼玉子焼成機における上記した問題点(イ)〜(カ)を解決することを目的としかつさらに生産性を極めて高めることができるようにした連続厚焼玉子焼成機及び方法を既に提案した(特許文献2)。
【0043】
しかしながら、上記提案した連続厚焼玉子焼成機及び方法においても次のような問題が依然として残っているのが原状である。上記した厚焼玉子焼成機においては、製造工程上、油塗布―液卵充填―攪拌―反転重ねという工程を4〜6回繰り返すために、焼成鍋に充填された液卵の飛散、攪拌時の飛散や反転時の飛散を防ぐことは困難である。鍋外部に付着した液卵は、エンドレスで移動中、熱源によって次第に炭素固体化し、鍋反転時の衝撃等より剥離飛散落下し内部に混入、それらが異物混入事故に繋がる。内部に混入された炭化物は、金属探知器やX線装置でも探知することは難しい。それを防止する手立ては、焼成機周辺に作業員を配置し、目視点検以外に方法は無い。但し高速で移動する連続に繋がった鍋内を目視するには死角もあり、高温作業環境に有るために、集中力の持続に個人差もあり限界もある。また重ね合わせ一体化するには、片面は半生状でなければ接着しない理由があり、重ね合せの反転時に、正確に落下しない(半生状態であることや鍋底の離型性の差等)問題があり、手作業で修正するか、見落としとか高速移動の為に出来ない場合は、不良品となってしまうのである。経験上、正確な落下移載を求めるなら、離型性の良い油の種類の選択及び塗布量を増やすことが効果的ではあるが、緑変反応、角層の剥離を招き、製品ロスが増えることは避けられない。
【0044】
従来の連続焼成機による厚焼玉子の製造については次の問題点がある。4層〜6層に重ね焼成された厚焼玉子の用途としては、回転寿司の寿司ネタとしても多用されているが、殆どは取引先毎に違った厚さでカットされ、納品されているのが現状である。そのカット作業中に、層間が接着不良で剥がれてしまい、その結果としてロス率が高まってしまう。違う形状の厚焼玉子を作る場合は、夫々に違った金型(一般的にアルミの鋳物)の鍋と焼成機が必要である場合が多い。つまり充填量の調整により、厚み(重さ)は変更できても、幅及び長さは変更出来ないのである。
【0045】
さらに、連続焼成機の生産能力をあげようとすれば、焼成鍋を増やすことが必要不可欠で、その為に長い焼成ラインを作る必要があり、それに合った熱源(一般にはプロパンガス)も多くなり、作業環境は著しく高温になることは避けられない。目視点検や各種装置の調整等の役目を担う作業員は、過酷な作業環境に耐えなければならない。量産化を目指し、尚且つ省力化するためには、各種装置群(充填、攪拌、反転、押し)を焼成ライン上に複数台取付けることは必要不可欠である。鍋セットの移動時における装置群の動きは(特に反転時)かなり激しいもので、補助する作業員の怪我の原因にもつながるのである。焼成作業終了後は、衛生上その都度各種装置群を分解清掃して、それらを組立てる必要があり、大変な労力を必要とし、作業員の補助作業(目視による炭化固形物の除去等)を行う為の作業空間が必要であり、効率的なフードを用いた排熱は極めて困難である。一言に量産型玉子焼の焼成機とは言っても、焼成工程は類似するものの、各企業の理念 目的の違いもあり、焼成機本体の形状寸法、その焼成ライン上に取り付けられた焼成鍋も様々なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特公昭63−37613号公報
【特許文献2】特開2004−57104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
本発明者は、上記した従来の玉子焼の製造における種々の問題点について研究した結果、次の知見を得た。玉子焼の製造工程において、異物混入、怪我、製品ロス等を防ぐには、充填―攪拌―反転という繰返し作業を行う工程を減らすことが肝心である。本発明の具体的な構成については後述するが、一般的なフライパン状の焼成鍋を熱源上に取り付け移動させ、油塗布―充填―攪拌ライン上での焼成過程を経て、半生状に焼き上がった半生玉子焼を、次々保温可能なストックタンクに適量貯蔵し、この貯蔵した半生玉子焼を所定の容器に所定量ずつ充填し加熱―冷却することによって容器入りの玉子焼を製造することが可能であることを見出したものである。量産化を目指すなら、攪拌―充填―加熱―冷却―包装という連続ラインを設けることで解決できる。
【0048】
本発明は、従来の厚焼玉子焼の製造工程における多くの問題点を解消することができ新規な容器入り玉子焼並びにその容器入り玉子焼を効率的に製造することのできる製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0049】
本発明の容器入り玉子焼の製造装置は、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵手段と、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填手段と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成手段と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し手段と、前記反転取出し手段によって取出された半生玉子焼を貯蔵するストックタンクと、前記ストックタンクに貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填手段と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着手段と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却手段と、を具備し、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする。
【0050】
本発明装置においては、前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け手段及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生卵焼き調理味付け手段をさらに備えることもできる。
【0051】
本発明の容器入り玉子焼の製造方法は、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段を含む本発明の容器入り玉子焼の製造装置を用い、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵工程と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填工程と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成工程と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し工程と、前記反転取出し工程によって取出された半生玉子焼を貯蔵する貯蔵工程と、前記貯蔵工程で貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填工程と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着工程と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却工程と、を含み、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする。
【0052】
本発明方法においては、前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け工程及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生卵焼き調理味付け工程をさらに含むことも可能である。
【0053】
本発明の容器入り玉子焼は、本発明方法によって製造されかつ微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする。
【0054】
本発明の容器入り玉子焼は、微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする。
【0055】
半生状の半生玉子焼は、殺菌を兼ねて60℃以上の温度を保つことが望ましい。殺菌液卵や牛乳等は、低温殺菌法(60℃)を用いるのが一般的である理由による。細菌類は36℃付近が一番増殖しやすい事も知られているので、この温度帯を避けることが好ましい。例外としては酵母菌による発酵食品がある。食中毒菌は(大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモレナ菌等)は、50℃〜60℃で死滅することが知られている。一般細菌(耐熱菌 芽胞菌等)も死滅し菌数は減るが、300個以下/gが限界とされる。卵加工品の出荷基準(初発菌数)が300個以下/gが望ましいと言われる理由はここにある。尚、液卵は60℃付近から熱による凝固が始まる物性を持つ。
【0056】
半生玉子焼を攪拌タンクに移し、ここで必要なら再調理味付けを完成させる。予め卵液には調味料だし汁が調合されているので、中間生成体を容器に計量充填成形後、必要なら適度な再加熱工程(80℃〜90℃程度)、冷却工程、一次容器包装を経て、製品(容器入り玉子焼)が完成となる。但し、計量―充填―再加熱―包装等は作業環境 製品の目的によっても違うので順序は問わない。様々な容器形状を用いることによって、様々な商品が完成するのである。半生である卵の物的特性である半生玉子焼を用いることによって、熱調理された野菜類や肉類等を加えれば、商品の差別化も容易に出来、後成形が可能になるのである。焼き物の特徴である香ばしい焼き臭、食感も損なわれることはない。当然予め液卵に様々な食材を入れての焼成作業も可能であり、これが一般的な調理法で有るが、各食材の比重の違いから、均等に混入しない問題があることから、食材は手作業で各鍋に投入される場合が多いのが現状である。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、微泡及び焼き臭を有する新規な容器入り玉子焼製品を提供することができる上、従来の玉子焼の製造技術上の問題点をいずれも解決することができるという大きな効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の容器入り玉子焼製造装置の前半部分に設けられる焼成ラインの一つの実施の形態を示す概略上面説明図である。
【図2】図1の焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられた焼成鍋とストックタンクの配置を示す側面説明図である。
【図3】本発明の容器入り玉子焼製造装置における半生玉子焼を容器に充填し次いで加熱する工程の一例を示す図面で、(a)は半生玉子焼充填工程を示す側面的説明図、(b)は加熱工程を示す側面説明図である。
【図4】本発明の容器入り玉子焼製造装置における容器に充填されかつ加熱工程で加熱殺菌固化された玉子焼を冷却する冷却工程の一例を示す概略側面説明図である。
【図5】本発明の容器入り玉子焼製造方法の工程順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の容器入り玉子焼製品を示す図面で、(a)はプリン型の容器に玉子焼が充填され蓋体によって密封された状態を示す斜視説明図、(b)は(a)の蓋体を開封した状態を示す斜視説明図、(c)は豆腐型の容器に玉子焼が充填され蓋体によって密封された状態を示す斜視説明図、(d)は(c)の蓋体を開封した状態を示す斜視説明図である。
【図7】従来の連続厚焼玉子焼成機の一例を示す概略上面説明図である。
【図8】図7の一部を示す斜視説明図である。
【図9】反転装置及び押し装置の一例を示す概略正面説明図である。
【図10】図9の反転装置部分の側面説明図である。
【図11】4層の厚焼玉子の重ね合わせ手順のみを示す概略説明図である。
【図12】3連4層焼成鍋の一例を示す上面説明図である。
【図13】3連5層焼成鍋の一例を示す上面説明図である。
【図14】3連6層焼成鍋の一例を示す上面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に本発明の実施の形態を添付図面中図1〜図6に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0060】
図1は本発明の容器入り玉子焼の製造装置の前半部分に設けられる焼成ラインの一つの実施の形態を示す概略上面説明図である。図2は図1の焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられた焼成鍋とストックタンクの配置を示す側面説明図である。
図1において、100は本発明に係る容器入り玉子焼の製造装置で、図1には容器入り玉子焼製造装置100の前半部分に設けられる焼成ライン102,102が図示されている。該焼成ライン102は焼成セクション104として機能する。図示例では、焼成ライン102は2本のラインを並設した場合を示したが、1本のラインでもよいし、3本以上のラインを設置してもよいことは勿論である。
【0061】
上記焼成セクション104においては、従来の焼成鍋Wと同様の構造の複数の焼成鍋Wを焼成ライン102に沿って間欠的に移動せしめる。焼成鍋Wの間欠的移動手段としては、公知の手段を用いればよいが、例えば図7に示した従来例の場合と同様に、焼成鍋Wをガイドレール(図示せず)上に摺動可能に設置し、エアシリンダー又はオイルシリンダー等の押圧手段を設け、焼成鍋Wを押し動かすようにすればよい。図1の例では、2つの焼成鍋W、Wを2連1層として移動させる構成を示したが、図12〜図14に示したように、さらに多数の焼成鍋を同時に移動させるように構成することも可能である。
【0062】
上記した各焼成鍋Wの下方には、焼成鍋Wの原料液卵G0を焼成するための焼成加熱手段、従来と同様に、例えば一般的な市販のガスバーナー(図示せず)が焼成ライン102の略全長にわたって設置されている。
【0063】
前記焼成ライン102の作業開始領域近傍には、空の焼成鍋Wの内部に油をひく油塗布装置106及び油のひかれた焼成鍋Wに原料液卵G0を所定量ずつ供給充填する計量充填装置108が設置されている。この油塗布装置106及び計量充填装置108は図7の従来の焼成機に用いられるものと同様のものを用いればよく、再度の説明は省略する。従来の焼成機において、所望によって用いられた撹拌装置や天火バーナーは、本発明の焼成ライン102においても必要に応じて用いてもよいことはいうまでもない。図1では撹拌装置110を設置した場合が図示されている。なお、符号112は割卵し液卵G0として貯蔵する液卵貯蔵手段として作用する液卵貯蔵タンクである。
【0064】
上記焼成ライン102の焼成作業終了領域には焼成鍋Wに対応して反転取出し装置114が設置されている。該反転取出し装置114は、構造的には図9及び図10に示した反転装置と同様の構造であるが、作用的には異なるもので焼成鍋Wを反転させて部分的に焼成されている半生状態の玉子焼をストックタンク116内に落下投入させて貯蔵するように作動する。
【0065】
前記した計量充填装置108によって液卵貯蔵タンク112から焼成鍋Wに供給された液卵G0は、図8に示した加熱手段(例えば、焼成ラインの下面側に設けられた棒ガスバーナー)と同様の加熱手段によって加熱されつつ焼成ライン102を間欠的に移動し、焼成作業終了領域に到達する。この焼成作業終了領域に到達した焼成鍋W内の液卵G0は部分的に焼成された半生状態の玉子焼(半生玉子焼)G1となっている。この焼成作業終了領域において、図2に示すように、焼成鍋Wにおいて部分的に焼成された半生状態の玉子焼(半生玉子焼)G1は、図9及び図10に示した反転装置と同様の構造を有する反転装置(図示せず)によって反転せしめられ隣接するストックタンク116内に落下投入せしめられ貯蔵される。
【0066】
このストックタンク116に貯蔵された半生玉子焼G1に対して必要に応じて調理味付けを行うことも可能である。液卵G0の状態でも場合に応じて調理味付けを行うことは勿論可能であるが、後述するようにこのストックタンク116に貯蔵されている半生玉子焼G1に対して調理味付けができることは調理味付けの機会が増えることになり、それだけ優位性を有することになる。
【0067】
続いて、前記半生玉子焼G1を殺菌しかつ固化するための加熱手段及び加熱された玉子焼を冷却するための冷却手段について図3及び図4によって説明する。図3は本発明の容器入り玉子焼製造装置における半生玉子焼を容器に充填し次いで加熱する工程の一例を示す図面で、(a)は半生玉子焼充填工程を示す側面的説明図、(b)は加熱工程を示す側面説明図である。図4は本発明の容器入り玉子焼製造装置における容器に充填されかつ加熱工程で加熱殺菌固化された玉子焼を冷却する冷却工程の一例を示す概略側面説明図である。
【0068】
図3(a)において、118はベルトコンベヤ等のコンベヤ手段で、その上面には多数の容器120が列状に載置され、コンベヤ手段118の移動とともに各容器120が搬送されるように構成されている。122は半生玉子焼充填装置で、該コンベヤ手段118の上方に配置されている。
【0069】
前記ストックタンク116内に貯蔵された半生玉子焼G1は、図3(a)に示したように、半生玉子焼充填装置122に移送される。該半生玉子焼充填装置122は半生玉子焼G1を収容する収容部124を上部に設け、該収容部124の下部に連接して半生玉子焼G1を容器120に供給充填する供給充填部126が設けられている。該供給充填部126には半生玉子焼G1を容器120に一定量ずつ供給充填するように作動する定量ポンプが内蔵されている。
【0070】
図3(a)において、128は押圧成形手段で、該コンベヤ手段118の上方でかつ該半生玉子焼充填装置122の下流部分に設けられている。該押圧成形手段128は、基体部130と、該基体部130の下部に上下動自在に取付けられた押圧部材132と、該基体部130に内蔵されかつ該押圧部材132を上下動させるエアシリンダー等の加圧手段(図示せず)とを有している。該押圧成形手段128は、該半生玉子焼充填装置122によって容器120に充填された半生玉子焼G1を上方から押圧してその形を整える作用を行うものである。134は蓋被着手段で、充填され成形された半生玉子焼G1を収容する容器120の上面開口部に蓋体136を被せる作用を行う。
【0071】
ついで、前記した半生玉子焼G1が充填されるとともに成形されかつ蓋体136が被着された容器120は、図3(b)に示したように、コンベヤ手段118によって加熱セクション138に搬送される。該加熱セクション138に加熱手段140が設置されており、該加熱手段140は容器120に収容充填された半生玉子焼G1を殺菌及び固化するために必要な加熱を行う。該加熱手段140としては、電気ヒーター、水蒸気加熱手段、温水シャワー加熱手段、電磁波加熱手段等を適用することができる。加熱処理は60℃〜90℃、好ましくは75℃〜85℃で、10分〜30分程度の条件で行えばよい。
【0072】
前記加熱セクション138で加熱処理されて容器120内の半生玉子焼G1が玉子焼G2に固化し、そして本発明の容器入り玉子焼142が完成するが、この容器入り玉子焼142はいまだ熱を含んでいるので最終製品の容器入り玉子焼とするために冷却処理を行う必要がある。
【0073】
以下に、図4によって冷却処理を行う冷却工程について説明する。前記した容器入り玉子焼142は、図4に示したように、コンベヤ手段118によって冷却セクション144に搬送される。該冷却セクション144に冷却手段146が設置されており、該冷却手段146は容器入り玉子焼142を冷却するために必要な冷却を行う。該冷却手段146としては、公知の冷却手段を用いればよいが、例えば、公知の冷蔵庫機能をそのまま適用することができる。冷却処理は−2℃〜8℃、好ましくは−2℃〜0℃で、2時間〜5時間程度の条件で行えばよいが、最終的に0℃〜5℃程度の温度まで温度低下すればよい。このように温度低下した容器入り玉子焼142を包装して出荷する。
【0074】
以下に本発明の容器入り玉子焼の製造方法について図5によって説明する。図5は本発明方法の工程順を示すフローチャートである。
【0075】
本発明の容器入り玉子焼の製造方法は、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段を含む上記した本発明の容器入り玉子焼の製造装置を用いるものである。本発明方法は、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵工程を有している(図5のステップ200)。上記した液卵貯蔵工程の液卵は、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填工程(図5のステップ202)に用いられる。液卵が充填された焼成鍋は、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を部分的に焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与して半生玉子焼とする焼成工程(図5のステップ204)において焼成処理される。
【0076】
焼成ラインの作業終了領域近傍においては、前記焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を焼成鍋を反転させて取り出す反転取出し工程(図5のステップ206)が実施される。前記反転取出し工程によって取出された半生玉子焼はストックタンクに貯蔵される(図5のステップ208)。前記貯蔵工程で貯蔵された微泡及び焼き臭を有する半生玉子焼は次いで紙コップやプラスチックコップ等の所定の容器に充填される(図5のステップ210)。上記した半生玉子焼を収容した容器には蓋体が被着される(図5のステップ212)。
【0077】
前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋体が被着された容器は加熱処理される(図5のステップ214)。この加熱工程における加熱処理としては、電気ヒーター、水蒸気加熱手段、温水シャワー加熱手段、電磁波加熱手段等による加熱処理を適用することができる。加熱処理は60℃〜90℃、好ましくは75℃〜85℃で、10分〜30分程度の条件で行えばよい。次に、前記加熱工程において加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該被着した容器は冷却工程で冷却処理される(図5のステップ216)。冷却処理は−2℃〜8℃、好ましくは−2℃〜0℃で、2時間〜5時間程度の条件で行えばよいが、最終的に0℃〜5℃程度の温度まで温度低下すればよい。このように温度低下した容器入り玉子焼は微泡及び焼き臭を有する玉子焼製品となり、最終的に包装して出荷される。
【0078】
本発明の製造装置及び製造方法による利点を以下に述べる。
(1)本発明における容器入り玉子焼は容器形態で成形することから層が出来ない。
(2)容器は直火に触れる必要がないから、広範囲な資材料を用いることが出来る。
(3)仮に中間生成体である半生玉子焼の接着力が不足すると判断されるなら、液卵や接着性を持つ粉体等を適量補充攪拌することによって問題が解決できる。
(4)玉子焼の表面への焦げ目を求めるなら、焼成ライン上の焼成鍋への液卵の計量充填の調整によって可能である。
(5)要約すれば、一台の焼成機で、様々な味や形状の卵加工食品の製造が可能になるのである。
【0079】
以下に、玉子加工食品の概略を述べる。玉子の加熱方法は、お湯、蒸気、電磁波等が通常である。(1)ゆで玉子、温泉玉子、燻製玉子等は殻付きのままで加熱調理されるのが一般的である。(2)茶碗蒸や玉子豆腐というような食材は、卵液を容器に充填後、加熱器(蒸し器、レンジ、湯煎等)によって調理され、食感は滑らかであり、広く知れ渡っている。(3)厚焼玉子などの玉子焼加工品は、金属焼成機(フライパンや鍋)に入れて直火で調理されるのが一般的である。熱源としてはガス、電熱器、高温蒸気等である。
【0080】
玉子焼加工品においては、何故直火調理が必要なのかといえば、直火(強火)によって、上記(1)(2)の玉子加工食品の調理法の違いから、加熱工程で発生する蒸気が、焼成中の卵内部に発生し微泡を作り、また直火によって玉子、調味料、油等から焼き臭と言う独特な風味が加わり、大衆が好む食感と味が生まれるのである。適度な微泡と焼き臭を得るには、直火で焼くのが玉子焼加工品では一般的調理法であると言う理由がそこにある。
【0081】
玉子の鮮度、玉子の質や調合するだし汁の量等によって、焼成工程において可成の適正温度の差が有る。本発明者の経験では、鍋表面温度は摂氏130度〜170度程度と考えている。加熱温度が低過ぎれば、微泡及び焼き臭が少なくなる事から、食感や味は(1)(2)の玉子加工品に近づいてしまう。加熱温度が高すぎれば、金属調理器の底に焦げ付き、焦臭となり、また卵に含まれる鉄分と硫黄の科学反応により硫化鉄が出来て緑変し、食欲をそそる黄色が失われる。直火調理作業の量産の難易度の高さがそこにあり、経験と感性を求められる理由である。
【0082】
次に必要な場合に行われるストックタンクに貯蔵される半生玉子焼への再調理味付けの優位性について説明する。
(1)調味料やだし汁含まない液卵だけの焼成も当然可能で、その後味付けしスクランブルエッグ等への加工などは容易である。
(2)調味料やだし汁含む液卵は、水分が多いほど、塩分糖分が多いほど、添加物(例えば、pH調整剤、グリシン、酢酸系化合物等)が多いほど、鍋底部に焦げ付きやすくなり、連続焼成加工作業の難易度も製品ロスも増す。
【0083】
(3)得意先のレシピは様々であり、半生玉子焼の再調理味付けの優位性が証明される。仮にだし汁の多い玉子焼を希望する得意先には、半生玉子焼にだし汁を加え、攪拌、容器への充填、加温、成形によって本発明の容器入り玉子焼が得られる。取引先毎に異なる要求への対応や、糖分塩分等の調整も半生玉子焼の再調理味付けによって簡単に行うことができる。
【0084】
(4)最近の一般のお客は、健康志向から保存料を敬遠する傾向にあるが、コンビニ等の食材は、厳しい条件をクリアできなければ、採用されることはない。つまり、消費者の要求は益々多様化しているのである。厳しい条件とは以下の通りである。(A)包装内の食中毒菌の生息は当然許されない。(B)出荷前の一般細菌数は300個/g以下で有ること。(C)40時間で30℃の空間に放置後の増殖した一般細菌数は10万個/g(可食限界)以下であること。
【0085】
保存料(添加物)を使用する場合は、液卵に入れるか、半生玉子焼の再調理味付け工程において入れることも可能である。この条件をクリア出来る無添加自然食品とは、酢漬、塩漬、砂糖漬等しか思い浮かばない。つまり一般家庭で作る無添加料理、ご飯、味噌汁、天ぷら、焼きそば等々の殆どが、30℃、40時間以内で、10万個/g(可食限界)を超え、腐敗してしまうのである。半生玉子焼の再調理味付け工程によって、得意先に合った様々な商品群を作る優位性が証明できる。
【0086】
本発明の容器入り玉子焼製造装置は構造が簡単である利点がある。本発明装置においては、焼成鍋の形を問う必要は無いが、本発明者による実験では、むしろ一般に普及している丸いフライパン型が、油塗布や攪拌作業には、適していることが判明している。調理の利便性から、現在の丸型フライパンが普及したと言っても過言ではない。丸型フライパンは形も単純であり、当然安価に作れることは明白である。前記した図示例では、二個の丸型鍋を連ねた仕様になっているが、目的に合わせて一個でも複数個を連ねた構造でも問題はない。本発明装置は構造が簡単であり、諸装置類の少なくても十分な焼成作業をおこなうことができるものである。
【0087】
本発明の玉子焼製造装置の焼成ラインにおける各装置構成は次の通りである。
油塗布装置:一箇所
充填機:一箇所
攪拌機:一〜三箇所
押圧機:後成形の為必要ない(容器への半生玉子焼の充填後に押圧を行う)。
反転機:一箇所
【0088】
本発明によれば、焼成ラインを此の様に簡素化が出来、簡素化された構造からの補助作業員減は明らかであり、焼成ライン上部をフードで覆い、効率的な排熱が容易であり、作業環境の改善からの、大型エアコンの風量も必要とせず、消費電力の節約に繋げることができる。
【0089】
また、充填から半生玉子焼の取出しまで、空鍋(液卵が無い状態)が無いことからも、長い焼成ラインを必要とせず、作業効率、熱効率の高さを維持できる。半生玉子焼の攪拌装置、充填装置及び成形装置に付いては、様々な機械類が開発されており、公知の装置を使用することができる。
【0090】
ハンバーグ、ソーセージ、豆腐、ギョーザ、団子、練り製品等々、これらの製品は攪拌、計量充填、或いは加熱調理された成形体であって、これらの製品に適用される攪拌、計量充填、或いは加熱調理のための装置技術はいずれも本発明の容器入り玉子焼の製造についての装置技術に適用可能なものである。容器に充填した半生玉子焼の加熱工程についても、蒸気、電熱、ガス等熱源とした様々な公知の装置が知られており、これらの公知の装置を適用できることは勿論である。また冷却工程や包装工程に使用される冷却装置や包装装置は、従来種々知られており、これらの装置を同様に適用できることはいうまでもない。
【0091】
半生玉子焼の成形された厚焼玉子と、機械焼による厚焼玉子(4〜6層程度が一般的)の内外見は当然違ってくる。しかし、巻くか層を重ねる方法でしか製造出来ないとの固定概念にたって、開発進化してきた量産型焼成機であるから、現在の形状の厚焼玉子の外見が存在する訳で、半生玉子焼から成形された新規な外観を有する厚焼玉子が否定される理由は見当たらない。同じように、金型鍋で焼成した従来の卵加工食品と比較して、半生玉子焼から成形された卵加工食品が新規な外観を有するからといって、否定される理由は見当たらない。
【0092】
本発明によれば、プリンの容器を使用すればプリン型の容器入り玉子焼[図6の(a),(b)]がえられ、豆腐の容器を使用すれば豆腐型の容器入り玉子焼[図6の(c),(d)]がえられるものであって、大衆に好まれる従来の微泡と焼き臭を持った新規な玉子焼成形体が出来るものであって、従来と異なる新規な外観を呈するからといって、否定される理由は存在しないものである。
【符号の説明】
【0093】
50:従来の連続厚焼玉子焼成機、50a:焼成作業開始領域、50b:第1折り返し領域、50c:第2折り返し領域、50d:焼成作業終了領域、52:突部、54:焼成ライン、55a,55b,55c,55d:押圧手段、56:加熱手段、58:油ひき装置、60:計量充填装置、62:攪拌装置、64:天火バーナー、66、66d〜66h:反転装置、66a:第1反転装置、66b:第2反転装置、66c:第3反転装置、68、68d〜68g:押し装置、68a:第1押し装置、68b:第2押し装置、68c:第3押し装置、70:ロータリーアクチュエーター、72:反転用ハンドル、74:フック部、76:エアシリンダー、78:取付板、80:ロッド、82:押圧用錘、84:取付枠台、E:厚焼玉子、W:焼成鍋、W1:第1焼成鍋、W2:第2焼成鍋、W3:第3焼成鍋、W4:第4焼成鍋、W5:第5焼成鍋、W6:第6焼成鍋、100:本発明の容器入り玉子焼製造装置、102:焼成ライン、104:焼成セクション、106:油塗布装置、108:計量充填装置、110:撹拌装置、112:液卵貯蔵タンク、114:反転取出し装置、116:ストックタンク、118:コンベヤ手段、120:容器、122:半生玉子焼充填装置、124:収容部、126:供給充填部、128:押圧成形手段、130:基体部、132:押圧部材、134:蓋被着手段、136:蓋体、138:加熱セクション、140:加熱手段、142:容器入り玉子焼、144:冷却セクション、146:冷却手段、G0:原料液卵、G1:半生玉子焼、G2:玉子焼、E1〜E4:液卵。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規に案出された容器入り玉子焼き並びにその容器入り玉子焼きを製造することのできる製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の玉子焼調理品としては、連続大量生産機械焼による玉子焼加工品や厚焼玉子等が知られている。ここでは作業工程が複雑な厚焼玉子を取り上げる。本来厚焼玉子とは、職人さんの手作りによって、高級割烹、弁当、高級寿司店の寿司ネタ等で使用されていた。40年前頃から、連続で厚焼玉子を焼成出来る焼成機が開発され、現在まで改良進化して来た。厚焼玉子(標準サイズ500g)を焼成成形する場合は、4〜6層に分けて充填焼成し、半生状態で重ね合わせて、加熱成形されるのが一般的である。液卵充填装置、油の塗布装置、攪拌装置、反転装置、厚焼玉子取出し装置等々も開発され、800本/時間程度の焼成機も出来ている。大型連続焼成機の開発が進んだことから厚焼玉子も安価になり、スーパー、回転寿司、外食産業、給食弁当産業等にも、広く厚焼玉子を食材として採用され、現在に至っている。
【0003】
各加工業者に、同じような性能の焼成機が行き渡ったことから、製品の差別化が難しくなり、関係企業が乱売へと走り、廃業淘汰されている、これが現状である。更に東日本大震災(3.11)以降、飼料工場、養鶏舎の崩壊等から、鶏卵価格の異常な高騰をまねき、このような状況で、我々加工業者も経験のない窮状に至っている。
【0004】
本発明者は二十数年前から焼成機を用いて厚焼玉子を製造している。玉子焼焼成機については、省力化、装置数の削減、焼成作業の簡素化を目的に自ら設計し、導入後改良を加えながら現在に至っている。装置数を減らした事から、焼成能力は厚焼玉子400g×500本程度/時間が限界である。
【0005】
上記焼成機は次のような装置を有している。
(1)鍋を固定する鋼鉄製移動枠:20個(鍋セット1〜20)
(2)油塗布装置:6箇所、同時塗布:二台
(3)液量充填装置:6箇所、同時充填:二台
(4)攪拌装置:6箇所、同時攪拌:二台
攪拌することにより、充填卵液の温度を平均化し、微泡を作り、生産性を高める。
【0006】
(5)押圧装置:6箇所
各層間の接着性を高める目的と、層間にある空気(微泡とは違う)が、焼成中に熱膨張を始め、接着面の剥離へと進むのを防止する為に、空気を排除する目的で、上から押圧する。しかし、全てを排除することは難しく、これが製品ロスを左右する。
【0007】
(6)反転装置:8箇所
層を積み重ねて焼成成形する為に、第一鍋を反転させて、第二鍋に移載、更に反転から第三鍋、そして第四鍋に積み重ねる目的で使用される。半生状態で反転させる事から、微妙な反転スピードの調整が要求される。その後も反転を繰り返しながら、両表面に好みの焦げ目を付ける事と、半生状態の中心部へ加温する為の装置である。最後の反転は、焼き上がった厚焼玉子を取り出す目的で使用する。
【0008】
稼働中の焼成機の作業の流れは次の通りである。
液面センサー付きの、充填機内に卵液の特殊ポンプによる移送開始、焼成作業中はセンサーにより自動補充される。エアー駆動で、鍋セットを移動しながら、手順に沿ってガスバーナーに点火、鍋温度を計測しながら、適正温度に達したら、その鍋セットをスタート1(仮称)として焼成作業を開始する。スタート1の鍋1,2へ液卵充填開始、順次移動、鍋1,2攪拌、鍋3,4充填、鍋1反転、鍋2押圧、鍋3,4攪拌、鍋2反転、鍋3押圧、鍋3反転、鍋4押圧、此の様な工程を経て、四層重ねの厚焼玉子に仕上がっていく。更に反転及び加熱を加えながら、取り出し口まで移動する。スタート2以降も、同じ工程で、順次焼成ラインをエンドレスに流れる作業工程となる。
【0009】
上記の説明は比較的簡単な四層焼工程に付いてであるが、厚焼玉子の質量等によっては、五層〜八層焼になる事から、それに合わせて当然各装置類も増え、難易度もリスクも増すことは明らかである。装置の故障は、焼成作業の中断を招く、つまり装置数が多いほど故障する確率が高まるのである。各装置類はシーケンサー等で制御された作業ロボットで、装置一台50万円〜150万円と言った価格で有り、それらを備えた焼成機は高価なものになるのは当然の事である。製品サイズによっては、更に違った高価な焼成機が必要となり、作業スペースの確保も必要となる。これは焼成ライン上で、焼成成形作業を完結しなければならないと言う、従来の固定観念に起因する。
【0010】
以下さらに従来技術について説明する。従来の連続厚焼玉子焼成機においては、一つのエンドレスの焼成ラインを用い、このエンドレスの焼成ラインに沿って焼成鍋を横向き(平行)に水平方向に移動させてこの焼成ラインを一周する間に玉子焼が焼成される(例えば、特許文献1)。この従来の連続厚焼玉子焼成機においては、焼成鍋は繰り返し反復使用される。この従来の玉子焼焼成機において、焼成ラインを一周する間の作業手順は大略次の通りである。1.焼成鍋の清掃、2.油ひき、3.計量充填、4.攪拌、5.反転、6.押し(エアー抜き)、7.反転、8.押し(エアー抜き)、9.反転、10.押し(エアー抜き)、11.反転、12.反転、13.反転、14.反転、15.玉子焼取り出し。サイズによって、四層から六層を重ね合わせて、一本の厚焼玉子(玉子焼)が焼成される。
【0011】
図7は、従来の連続厚焼玉子焼成機の一例を示す上面概略説明図である。図8は図7の一部を示す斜視説明図である。図7及び図8において、50は連続厚焼玉子焼成機で、多数の焼成鍋Wがエンドレスの焼成ライン54に沿って間欠的に移動する。焼成鍋Wの間欠的移動手段としては、焼成鍋Wをガイドレール(図示せず)上に摺動可能に設置し、焼成作業開始領域50a、第1折り返し領域50b、第2折り返し領域50c及び焼成作業終了領域50dにそれぞれエアシリンダー又はオイルシリンダー等の押圧手段55a,55b,55c,55dを設け、焼成鍋Wを押し動かすようにすればよい。図7及び図12に示した焼成鍋Wは3連で4層重ねの厚焼玉子Eを製造する場合に用いられるもので、第1焼成鍋W1、第2焼成鍋W2、第3焼成鍋W3、第4焼成鍋W4に分かれている。この焼成鍋Wとしては、図12に示した3連4層鍋の他に、図13に示した3連5層鍋(第1〜第4焼成鍋W1〜W4に加えて第5焼成鍋W5を有する)や図14に示した3連6層鍋(第1〜第5焼成鍋W1〜W5に加えて第6焼成鍋W6を有する)が用いられ、また図示しないが、4連4層鍋、4連5層鍋、4連6層鍋などを用いることもできる。
【0012】
上記した各焼成鍋Wの下方には焼成鍋W内の原料液卵を厚焼玉子に焼成するために加熱するための加熱手段、例えば棒ガスバーナー56が設置されている。
【0013】
58は油ひき装置で、焼成ライン54の作業開始領域50a近傍において空の焼成鍋Wの内部に油をひくためのものである。60は計量充填装置で、油のひかれた焼成鍋W1〜W4中に原料液卵を所定量ずつ供給充填するものである。62は攪拌装置で、焼成鍋W内の液卵を均一にかきまぜるものであるが、設置されない場合もある。64は天火バーナーで、上方から焼成鍋W内の液卵を加熱してその固化を促進するものであるが、設置されない場合もある。
【0014】
66aは第1反転装置で、第1焼成鍋W1において固化した液卵E1を反転させて隣接する第2焼成鍋W2中の固化した液卵E2上に重ね合わせる作用を行う(図11)。68aは第1押し装置で、第2焼成鍋W2中に2層に重ねられた玉子焼を押圧し、内部のエアーを抜くものである。
【0015】
この第2焼成鍋W2中の2層の玉子焼は第2反転装置66bによってさらに反転せしめられて隣接する第3焼成鍋W3中の固化した液卵E3上に重ね合わせられて、3層の玉子焼となる(図11)。この第3焼成鍋W3中の3層の玉子焼は第2押し装置68bによって押圧され、エアー抜きされる。
【0016】
この第3焼成鍋W3中の3層の玉子焼は第3反転装置66cによって反転せしめられて隣接する第4焼成鍋W4中の固化した液卵E4上に重ね合わせられて4層の玉子焼となる(図11)。この第4焼成鍋W4中の4層の厚焼玉子は第3押し装置68cによって押圧され、エアー抜きされる。
【0017】
この4層の厚焼玉子に対して、反転装置66d〜66gによって4回の反転及び押し装置68d〜68gによって押圧エアー抜きが行われ、最後に反転装置66hによって反転されて3個の厚焼玉子焼製品Eが同時に外部に取り出される(図11)。図11はこの4層の厚焼玉子Eの重ね合わせ手順のみを示す概略説明図である。
【0018】
上記した油ひき装置58としては、下端部に油ひき布を取り付けたロッドを上下動自在かつ水平方向に移動可能に設け、油ひき作業の際は油ひき布を降下させて焼成鍋W内を水平方向に移動して油ひきを行わせ、油ひき作業を行わない時は上昇させておく構造とすればよく、その機構自体はよく知られており、図示による詳細な説明は省略する。
【0019】
上記した計量充填装置60は、液卵を所定量ずつ計量して焼成鍋W内に供給すればよく、その機構自体はよく知られており、図示による詳細な説明は省略する。
【0020】
上記した攪拌装置62としては、攪拌ロッドを上下動自在かつ水平方向に移動可能に設け、攪拌の際は攪拌ロッドを降下させて焼成鍋W内の液卵中を水平方向に移動して液卵を攪拌し、攪拌作業を行わない時は攪拌ロッドを上昇させておく構造とすればよく、その機構自体はよく知られており、図示による詳細な説明は省略する。
【0021】
上記した反転装置66a〜66h及び押し装置68a〜68gとしても種々の構造が知られているが、例えば図9及び図10に示したものが用いられる。図9及び図10において、反転装置66はロータリーアクチュエーター70を有している。該ロータリーアクチュエーター70には反転用ハンドル72が取り付けられており、ロータリーアクチュエーター70の動きに従って回動するようになっている。該反転用ハンドル72の先端にはフック部74が形成されており、該フック部74によって焼成鍋Wの側面に突設された突部52を保持することができる。このフック部74によって突部52を保持した状態として反転用ハンドル72を回動させれば、焼成鍋Wは図示したように反転し、また元に戻すことができる。
【0022】
図9において、押し装置68はエアシリンダー76を設置した取付板78を有している。該取付板78にはエアシリンダー76によって駆動するロッド80が上下動自在に取り付けられている。該ロッド80の下端部には押圧用錘82が取り付けられており、該押圧用錘82を玉子焼の上面に降下させれば玉子焼が押圧されエアー抜きがなされる。押し作業を行わない時には押圧用錘82は上昇させておく。図9において、84は焼成鍋Wを取り付けるための取付枠台である。
【0023】
限られた作業スペースの中で、生産性を高める為に、大変高価な油ひき、計量充填、攪拌、天火バーナー等各装置を、数箇所に設置しているのが現状である。またそれぞれの装置を作業手順に合わせて作動させるために、大変高価で複雑な制御装置が必要となる。
【0024】
例えば、市販の焼成機(三連、四層、20セット)の場合、レシピや液卵温度によっても違うが、完全焼成されるのに一周約9分が必要である。60分÷9分×3連×20セットで約400本(1時間)生産できる。
【0025】
充填量は、第一鍋を多くし、第二鍋、第三鍋、第四鍋は徐々に少なくするのが、一般的である。その理由は次の通りである。第一鍋が反転し、第二鍋に焼成中の玉子を落下させるために、ある程度の重さが必要である。第一鍋、第二鍋の充填量が多いことから、攪拌し温度を平均化させ焼き付き及び生焼けを防止し、生産能力を高める。第一鍋、第二鍋で玉子焼の芯が形成され、第三鍋、第四鍋が表面となる。
【0026】
従って、表面をきれいに仕上げるために、第三鍋、第四鍋は攪拌しない場合も有り得る。第一鍋から第四鍋まで充填量の違いから、また第三鍋、第四鍋は厚焼玉子(玉子焼)の仕上り面になることから、それぞれ微妙な火力の調節が必要である。
【0027】
多数、例えば80本程度の棒状ガスバーナーによって、火力を個々に調節しており、鍋横送り(平行)型は水平移動中に、それぞれの鍋用に火力調整されたガスバーナー上を通過するために、温度調節には大変な熟練が必要となる。卵の卵白にはイオウが多く、卵黄には鉄分が含まれている。焼成中に加熱オーバーになると、化学反応し硫化鉄ができ、玉子焼内部が緑変しクレームになる。加熱不足であると、生焼けになり、また食中毒菌が死滅しない。その為に従来の焼成機では火加減は熟練を要する作業である。また、緑変、生焼けが発生した玉子焼は廃棄処分となる。したがって、生焼けや、過熱オーバーによる緑変を防ぐために、微妙な温度コントロールが必要となる。
【0028】
上述した従来の連続厚焼玉子焼成機における問題点は次の通りである。
(イ)固化した液卵を重ね合わせるために焼成作業の後半においては焼成鍋を反転させる必要があるが、反転後の焼成鍋は液卵の存在しない空鍋となり、この空鍋に対しても同様に加熱を行って移動させることとなり、熱効率が非常に悪くなる。
【0029】
(ロ)従来の焼成機では、前述したように、生焼けになった場合、不良品となる。わずかな生焼けは、検査漏れとなり誤って出荷されることもあるが、当然クレーム返品廃棄となる。このようなリスクを考慮し、安全率を高める為に、速度を遅くし焼成時間を長くするのが一般的であるが、その場合生産効率が低下する不利がある。
【0030】
(ハ)厚焼玉子内部の温度は必ずしも維持されているとはいえず、生産性(生産速度)を落とすことなく、一般細菌数(主に耐熱菌)の減少を図ることは困難であった。
【0031】
(ニ)焼成鍋の反転時にトラブルが多く発生するが、例えば一層目の液卵の質量が少ないため、最初の反転時には焼成鍋から剥離落下しにくい難点があった。
【0032】
(ホ)焼成鍋の反転時に焼成鍋の外側に飛散付着した液卵は、徐々に炭化し、反転時の衝撃によって厚焼玉子内部に異物となって混入する。
【0033】
(ヘ)従来の焼成機では、反転装置を含めた各装置が焼成ラインに分散設置されていることから、機械下部及び作業床全面に液卵が飛散落下し、清掃除去作業が容易でない。
【0034】
(ト)従来の焼成機では、焼成鍋の反転時などに人力の補助を必要とする場合があり、換気ダクト等で覆うことができず、排熱が困難であり、作業環境の向上を図ることが難しかった。
【0035】
(チ)卵焼きの差別化を図るために、色々の具材(野菜、肉、魚等)を入れた商品の需要は高まっているが、具材の投入は人力によってなされるため危険であり、特に反転押圧作業領域付近ではその危険性が大であった。
【0036】
(リ)焼成鍋内の液卵の攪拌反転時に飛散落下した液卵がガスバーナーに付着し、ガス穴を閉鎖し火力の低下、不安定化は避けられなかった。
【0037】
(ヌ)従来の焼成機では、前述したように空鍋率が高いので、その分だけ作業スペースを余分に必要とするという不利があった。
【0038】
(ル)前述したように、生焼けの場合、食中毒菌が生存する可能性があり、食中毒の原因となる。加熱オーバーでは、卵に含まれる鉄分とイオウが化学反応し硫化鉄となり、厚焼玉子表面及び断面が暗緑色になり、不良品となる。その為、熟練した作業員の技術が必要となる。
【0039】
(ヲ)例えば、三連四層の厚焼玉子を製造する場合、焼成鍋からの剥離落下を考えると、一層から四層までの充填量はそれぞれの量を調整するのが望ましいが、一層二層三層四層の火力は微妙な調整が必要となる。さらに、四層の重ね合わせ工程時は、それぞれある程度の凝固強度が必要であり、なおかつ、張り合わせるために、適量の液卵残留が条件となる。従来の横送型焼成機の場合は、各層は他層のガスバーナー上を必然的に通過するために、各ガスバーナーの火力の調整は困難であり、例えば寿司の握り用に薄くスライスする際の重ね合わせ部の割れが多く発生するなどの不利があった。
【0040】
(ワ)従来の焼成機においては、多量のガスバーナーを使用しているために、排気換気を行う必要があるが、その際従来の横送型焼成機では、空気の流れに左右され火力が不安全となり、三連の両サイドが火力不足となる傾向があった。
【0041】
(カ)生産量を上げるためには、四連や五連とするのが有効であるが、従来の横送型焼成機では、人力の補助、作業後の清掃を考えると、手が届かないことから鍋幅に限界が出てくる不都合があった。
【0042】
本願発明者の一人は、従来の連続厚焼玉子焼成機における上記した問題点(イ)〜(カ)を解決することを目的としかつさらに生産性を極めて高めることができるようにした連続厚焼玉子焼成機及び方法を既に提案した(特許文献2)。
【0043】
しかしながら、上記提案した連続厚焼玉子焼成機及び方法においても次のような問題が依然として残っているのが原状である。上記した厚焼玉子焼成機においては、製造工程上、油塗布―液卵充填―攪拌―反転重ねという工程を4〜6回繰り返すために、焼成鍋に充填された液卵の飛散、攪拌時の飛散や反転時の飛散を防ぐことは困難である。鍋外部に付着した液卵は、エンドレスで移動中、熱源によって次第に炭素固体化し、鍋反転時の衝撃等より剥離飛散落下し内部に混入、それらが異物混入事故に繋がる。内部に混入された炭化物は、金属探知器やX線装置でも探知することは難しい。それを防止する手立ては、焼成機周辺に作業員を配置し、目視点検以外に方法は無い。但し高速で移動する連続に繋がった鍋内を目視するには死角もあり、高温作業環境に有るために、集中力の持続に個人差もあり限界もある。また重ね合わせ一体化するには、片面は半生状でなければ接着しない理由があり、重ね合せの反転時に、正確に落下しない(半生状態であることや鍋底の離型性の差等)問題があり、手作業で修正するか、見落としとか高速移動の為に出来ない場合は、不良品となってしまうのである。経験上、正確な落下移載を求めるなら、離型性の良い油の種類の選択及び塗布量を増やすことが効果的ではあるが、緑変反応、角層の剥離を招き、製品ロスが増えることは避けられない。
【0044】
従来の連続焼成機による厚焼玉子の製造については次の問題点がある。4層〜6層に重ね焼成された厚焼玉子の用途としては、回転寿司の寿司ネタとしても多用されているが、殆どは取引先毎に違った厚さでカットされ、納品されているのが現状である。そのカット作業中に、層間が接着不良で剥がれてしまい、その結果としてロス率が高まってしまう。違う形状の厚焼玉子を作る場合は、夫々に違った金型(一般的にアルミの鋳物)の鍋と焼成機が必要である場合が多い。つまり充填量の調整により、厚み(重さ)は変更できても、幅及び長さは変更出来ないのである。
【0045】
さらに、連続焼成機の生産能力をあげようとすれば、焼成鍋を増やすことが必要不可欠で、その為に長い焼成ラインを作る必要があり、それに合った熱源(一般にはプロパンガス)も多くなり、作業環境は著しく高温になることは避けられない。目視点検や各種装置の調整等の役目を担う作業員は、過酷な作業環境に耐えなければならない。量産化を目指し、尚且つ省力化するためには、各種装置群(充填、攪拌、反転、押し)を焼成ライン上に複数台取付けることは必要不可欠である。鍋セットの移動時における装置群の動きは(特に反転時)かなり激しいもので、補助する作業員の怪我の原因にもつながるのである。焼成作業終了後は、衛生上その都度各種装置群を分解清掃して、それらを組立てる必要があり、大変な労力を必要とし、作業員の補助作業(目視による炭化固形物の除去等)を行う為の作業空間が必要であり、効率的なフードを用いた排熱は極めて困難である。一言に量産型玉子焼の焼成機とは言っても、焼成工程は類似するものの、各企業の理念 目的の違いもあり、焼成機本体の形状寸法、その焼成ライン上に取り付けられた焼成鍋も様々なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特公昭63−37613号公報
【特許文献2】特開2004−57104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
本発明者は、上記した従来の玉子焼の製造における種々の問題点について研究した結果、次の知見を得た。玉子焼の製造工程において、異物混入、怪我、製品ロス等を防ぐには、充填―攪拌―反転という繰返し作業を行う工程を減らすことが肝心である。本発明の具体的な構成については後述するが、一般的なフライパン状の焼成鍋を熱源上に取り付け移動させ、油塗布―充填―攪拌ライン上での焼成過程を経て、半生状に焼き上がった半生玉子焼を、次々保温可能なストックタンクに適量貯蔵し、この貯蔵した半生玉子焼を所定の容器に所定量ずつ充填し加熱―冷却することによって容器入りの玉子焼を製造することが可能であることを見出したものである。量産化を目指すなら、攪拌―充填―加熱―冷却―包装という連続ラインを設けることで解決できる。
【0048】
本発明は、従来の厚焼玉子焼の製造工程における多くの問題点を解消することができ新規な容器入り玉子焼並びにその容器入り玉子焼を効率的に製造することのできる製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0049】
本発明の容器入り玉子焼の製造装置は、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵手段と、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填手段と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成手段と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し手段と、前記反転取出し手段によって取出された半生玉子焼を貯蔵するストックタンクと、前記ストックタンクに貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填手段と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着手段と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却手段と、を具備し、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする。
【0050】
本発明装置においては、前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け手段及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生卵焼き調理味付け手段をさらに備えることもできる。
【0051】
本発明の容器入り玉子焼の製造方法は、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段を含む本発明の容器入り玉子焼の製造装置を用い、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵工程と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填工程と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成工程と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し工程と、前記反転取出し工程によって取出された半生玉子焼を貯蔵する貯蔵工程と、前記貯蔵工程で貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填工程と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着工程と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却工程と、を含み、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする。
【0052】
本発明方法においては、前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け工程及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生卵焼き調理味付け工程をさらに含むことも可能である。
【0053】
本発明の容器入り玉子焼は、本発明方法によって製造されかつ微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする。
【0054】
本発明の容器入り玉子焼は、微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする。
【0055】
半生状の半生玉子焼は、殺菌を兼ねて60℃以上の温度を保つことが望ましい。殺菌液卵や牛乳等は、低温殺菌法(60℃)を用いるのが一般的である理由による。細菌類は36℃付近が一番増殖しやすい事も知られているので、この温度帯を避けることが好ましい。例外としては酵母菌による発酵食品がある。食中毒菌は(大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモレナ菌等)は、50℃〜60℃で死滅することが知られている。一般細菌(耐熱菌 芽胞菌等)も死滅し菌数は減るが、300個以下/gが限界とされる。卵加工品の出荷基準(初発菌数)が300個以下/gが望ましいと言われる理由はここにある。尚、液卵は60℃付近から熱による凝固が始まる物性を持つ。
【0056】
半生玉子焼を攪拌タンクに移し、ここで必要なら再調理味付けを完成させる。予め卵液には調味料だし汁が調合されているので、中間生成体を容器に計量充填成形後、必要なら適度な再加熱工程(80℃〜90℃程度)、冷却工程、一次容器包装を経て、製品(容器入り玉子焼)が完成となる。但し、計量―充填―再加熱―包装等は作業環境 製品の目的によっても違うので順序は問わない。様々な容器形状を用いることによって、様々な商品が完成するのである。半生である卵の物的特性である半生玉子焼を用いることによって、熱調理された野菜類や肉類等を加えれば、商品の差別化も容易に出来、後成形が可能になるのである。焼き物の特徴である香ばしい焼き臭、食感も損なわれることはない。当然予め液卵に様々な食材を入れての焼成作業も可能であり、これが一般的な調理法で有るが、各食材の比重の違いから、均等に混入しない問題があることから、食材は手作業で各鍋に投入される場合が多いのが現状である。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、微泡及び焼き臭を有する新規な容器入り玉子焼製品を提供することができる上、従来の玉子焼の製造技術上の問題点をいずれも解決することができるという大きな効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の容器入り玉子焼製造装置の前半部分に設けられる焼成ラインの一つの実施の形態を示す概略上面説明図である。
【図2】図1の焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられた焼成鍋とストックタンクの配置を示す側面説明図である。
【図3】本発明の容器入り玉子焼製造装置における半生玉子焼を容器に充填し次いで加熱する工程の一例を示す図面で、(a)は半生玉子焼充填工程を示す側面的説明図、(b)は加熱工程を示す側面説明図である。
【図4】本発明の容器入り玉子焼製造装置における容器に充填されかつ加熱工程で加熱殺菌固化された玉子焼を冷却する冷却工程の一例を示す概略側面説明図である。
【図5】本発明の容器入り玉子焼製造方法の工程順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の容器入り玉子焼製品を示す図面で、(a)はプリン型の容器に玉子焼が充填され蓋体によって密封された状態を示す斜視説明図、(b)は(a)の蓋体を開封した状態を示す斜視説明図、(c)は豆腐型の容器に玉子焼が充填され蓋体によって密封された状態を示す斜視説明図、(d)は(c)の蓋体を開封した状態を示す斜視説明図である。
【図7】従来の連続厚焼玉子焼成機の一例を示す概略上面説明図である。
【図8】図7の一部を示す斜視説明図である。
【図9】反転装置及び押し装置の一例を示す概略正面説明図である。
【図10】図9の反転装置部分の側面説明図である。
【図11】4層の厚焼玉子の重ね合わせ手順のみを示す概略説明図である。
【図12】3連4層焼成鍋の一例を示す上面説明図である。
【図13】3連5層焼成鍋の一例を示す上面説明図である。
【図14】3連6層焼成鍋の一例を示す上面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に本発明の実施の形態を添付図面中図1〜図6に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0060】
図1は本発明の容器入り玉子焼の製造装置の前半部分に設けられる焼成ラインの一つの実施の形態を示す概略上面説明図である。図2は図1の焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられた焼成鍋とストックタンクの配置を示す側面説明図である。
図1において、100は本発明に係る容器入り玉子焼の製造装置で、図1には容器入り玉子焼製造装置100の前半部分に設けられる焼成ライン102,102が図示されている。該焼成ライン102は焼成セクション104として機能する。図示例では、焼成ライン102は2本のラインを並設した場合を示したが、1本のラインでもよいし、3本以上のラインを設置してもよいことは勿論である。
【0061】
上記焼成セクション104においては、従来の焼成鍋Wと同様の構造の複数の焼成鍋Wを焼成ライン102に沿って間欠的に移動せしめる。焼成鍋Wの間欠的移動手段としては、公知の手段を用いればよいが、例えば図7に示した従来例の場合と同様に、焼成鍋Wをガイドレール(図示せず)上に摺動可能に設置し、エアシリンダー又はオイルシリンダー等の押圧手段を設け、焼成鍋Wを押し動かすようにすればよい。図1の例では、2つの焼成鍋W、Wを2連1層として移動させる構成を示したが、図12〜図14に示したように、さらに多数の焼成鍋を同時に移動させるように構成することも可能である。
【0062】
上記した各焼成鍋Wの下方には、焼成鍋Wの原料液卵G0を焼成するための焼成加熱手段、従来と同様に、例えば一般的な市販のガスバーナー(図示せず)が焼成ライン102の略全長にわたって設置されている。
【0063】
前記焼成ライン102の作業開始領域近傍には、空の焼成鍋Wの内部に油をひく油塗布装置106及び油のひかれた焼成鍋Wに原料液卵G0を所定量ずつ供給充填する計量充填装置108が設置されている。この油塗布装置106及び計量充填装置108は図7の従来の焼成機に用いられるものと同様のものを用いればよく、再度の説明は省略する。従来の焼成機において、所望によって用いられた撹拌装置や天火バーナーは、本発明の焼成ライン102においても必要に応じて用いてもよいことはいうまでもない。図1では撹拌装置110を設置した場合が図示されている。なお、符号112は割卵し液卵G0として貯蔵する液卵貯蔵手段として作用する液卵貯蔵タンクである。
【0064】
上記焼成ライン102の焼成作業終了領域には焼成鍋Wに対応して反転取出し装置114が設置されている。該反転取出し装置114は、構造的には図9及び図10に示した反転装置と同様の構造であるが、作用的には異なるもので焼成鍋Wを反転させて部分的に焼成されている半生状態の玉子焼をストックタンク116内に落下投入させて貯蔵するように作動する。
【0065】
前記した計量充填装置108によって液卵貯蔵タンク112から焼成鍋Wに供給された液卵G0は、図8に示した加熱手段(例えば、焼成ラインの下面側に設けられた棒ガスバーナー)と同様の加熱手段によって加熱されつつ焼成ライン102を間欠的に移動し、焼成作業終了領域に到達する。この焼成作業終了領域に到達した焼成鍋W内の液卵G0は部分的に焼成された半生状態の玉子焼(半生玉子焼)G1となっている。この焼成作業終了領域において、図2に示すように、焼成鍋Wにおいて部分的に焼成された半生状態の玉子焼(半生玉子焼)G1は、図9及び図10に示した反転装置と同様の構造を有する反転装置(図示せず)によって反転せしめられ隣接するストックタンク116内に落下投入せしめられ貯蔵される。
【0066】
このストックタンク116に貯蔵された半生玉子焼G1に対して必要に応じて調理味付けを行うことも可能である。液卵G0の状態でも場合に応じて調理味付けを行うことは勿論可能であるが、後述するようにこのストックタンク116に貯蔵されている半生玉子焼G1に対して調理味付けができることは調理味付けの機会が増えることになり、それだけ優位性を有することになる。
【0067】
続いて、前記半生玉子焼G1を殺菌しかつ固化するための加熱手段及び加熱された玉子焼を冷却するための冷却手段について図3及び図4によって説明する。図3は本発明の容器入り玉子焼製造装置における半生玉子焼を容器に充填し次いで加熱する工程の一例を示す図面で、(a)は半生玉子焼充填工程を示す側面的説明図、(b)は加熱工程を示す側面説明図である。図4は本発明の容器入り玉子焼製造装置における容器に充填されかつ加熱工程で加熱殺菌固化された玉子焼を冷却する冷却工程の一例を示す概略側面説明図である。
【0068】
図3(a)において、118はベルトコンベヤ等のコンベヤ手段で、その上面には多数の容器120が列状に載置され、コンベヤ手段118の移動とともに各容器120が搬送されるように構成されている。122は半生玉子焼充填装置で、該コンベヤ手段118の上方に配置されている。
【0069】
前記ストックタンク116内に貯蔵された半生玉子焼G1は、図3(a)に示したように、半生玉子焼充填装置122に移送される。該半生玉子焼充填装置122は半生玉子焼G1を収容する収容部124を上部に設け、該収容部124の下部に連接して半生玉子焼G1を容器120に供給充填する供給充填部126が設けられている。該供給充填部126には半生玉子焼G1を容器120に一定量ずつ供給充填するように作動する定量ポンプが内蔵されている。
【0070】
図3(a)において、128は押圧成形手段で、該コンベヤ手段118の上方でかつ該半生玉子焼充填装置122の下流部分に設けられている。該押圧成形手段128は、基体部130と、該基体部130の下部に上下動自在に取付けられた押圧部材132と、該基体部130に内蔵されかつ該押圧部材132を上下動させるエアシリンダー等の加圧手段(図示せず)とを有している。該押圧成形手段128は、該半生玉子焼充填装置122によって容器120に充填された半生玉子焼G1を上方から押圧してその形を整える作用を行うものである。134は蓋被着手段で、充填され成形された半生玉子焼G1を収容する容器120の上面開口部に蓋体136を被せる作用を行う。
【0071】
ついで、前記した半生玉子焼G1が充填されるとともに成形されかつ蓋体136が被着された容器120は、図3(b)に示したように、コンベヤ手段118によって加熱セクション138に搬送される。該加熱セクション138に加熱手段140が設置されており、該加熱手段140は容器120に収容充填された半生玉子焼G1を殺菌及び固化するために必要な加熱を行う。該加熱手段140としては、電気ヒーター、水蒸気加熱手段、温水シャワー加熱手段、電磁波加熱手段等を適用することができる。加熱処理は60℃〜90℃、好ましくは75℃〜85℃で、10分〜30分程度の条件で行えばよい。
【0072】
前記加熱セクション138で加熱処理されて容器120内の半生玉子焼G1が玉子焼G2に固化し、そして本発明の容器入り玉子焼142が完成するが、この容器入り玉子焼142はいまだ熱を含んでいるので最終製品の容器入り玉子焼とするために冷却処理を行う必要がある。
【0073】
以下に、図4によって冷却処理を行う冷却工程について説明する。前記した容器入り玉子焼142は、図4に示したように、コンベヤ手段118によって冷却セクション144に搬送される。該冷却セクション144に冷却手段146が設置されており、該冷却手段146は容器入り玉子焼142を冷却するために必要な冷却を行う。該冷却手段146としては、公知の冷却手段を用いればよいが、例えば、公知の冷蔵庫機能をそのまま適用することができる。冷却処理は−2℃〜8℃、好ましくは−2℃〜0℃で、2時間〜5時間程度の条件で行えばよいが、最終的に0℃〜5℃程度の温度まで温度低下すればよい。このように温度低下した容器入り玉子焼142を包装して出荷する。
【0074】
以下に本発明の容器入り玉子焼の製造方法について図5によって説明する。図5は本発明方法の工程順を示すフローチャートである。
【0075】
本発明の容器入り玉子焼の製造方法は、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段を含む上記した本発明の容器入り玉子焼の製造装置を用いるものである。本発明方法は、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵工程を有している(図5のステップ200)。上記した液卵貯蔵工程の液卵は、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填工程(図5のステップ202)に用いられる。液卵が充填された焼成鍋は、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を部分的に焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与して半生玉子焼とする焼成工程(図5のステップ204)において焼成処理される。
【0076】
焼成ラインの作業終了領域近傍においては、前記焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を焼成鍋を反転させて取り出す反転取出し工程(図5のステップ206)が実施される。前記反転取出し工程によって取出された半生玉子焼はストックタンクに貯蔵される(図5のステップ208)。前記貯蔵工程で貯蔵された微泡及び焼き臭を有する半生玉子焼は次いで紙コップやプラスチックコップ等の所定の容器に充填される(図5のステップ210)。上記した半生玉子焼を収容した容器には蓋体が被着される(図5のステップ212)。
【0077】
前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋体が被着された容器は加熱処理される(図5のステップ214)。この加熱工程における加熱処理としては、電気ヒーター、水蒸気加熱手段、温水シャワー加熱手段、電磁波加熱手段等による加熱処理を適用することができる。加熱処理は60℃〜90℃、好ましくは75℃〜85℃で、10分〜30分程度の条件で行えばよい。次に、前記加熱工程において加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該被着した容器は冷却工程で冷却処理される(図5のステップ216)。冷却処理は−2℃〜8℃、好ましくは−2℃〜0℃で、2時間〜5時間程度の条件で行えばよいが、最終的に0℃〜5℃程度の温度まで温度低下すればよい。このように温度低下した容器入り玉子焼は微泡及び焼き臭を有する玉子焼製品となり、最終的に包装して出荷される。
【0078】
本発明の製造装置及び製造方法による利点を以下に述べる。
(1)本発明における容器入り玉子焼は容器形態で成形することから層が出来ない。
(2)容器は直火に触れる必要がないから、広範囲な資材料を用いることが出来る。
(3)仮に中間生成体である半生玉子焼の接着力が不足すると判断されるなら、液卵や接着性を持つ粉体等を適量補充攪拌することによって問題が解決できる。
(4)玉子焼の表面への焦げ目を求めるなら、焼成ライン上の焼成鍋への液卵の計量充填の調整によって可能である。
(5)要約すれば、一台の焼成機で、様々な味や形状の卵加工食品の製造が可能になるのである。
【0079】
以下に、玉子加工食品の概略を述べる。玉子の加熱方法は、お湯、蒸気、電磁波等が通常である。(1)ゆで玉子、温泉玉子、燻製玉子等は殻付きのままで加熱調理されるのが一般的である。(2)茶碗蒸や玉子豆腐というような食材は、卵液を容器に充填後、加熱器(蒸し器、レンジ、湯煎等)によって調理され、食感は滑らかであり、広く知れ渡っている。(3)厚焼玉子などの玉子焼加工品は、金属焼成機(フライパンや鍋)に入れて直火で調理されるのが一般的である。熱源としてはガス、電熱器、高温蒸気等である。
【0080】
玉子焼加工品においては、何故直火調理が必要なのかといえば、直火(強火)によって、上記(1)(2)の玉子加工食品の調理法の違いから、加熱工程で発生する蒸気が、焼成中の卵内部に発生し微泡を作り、また直火によって玉子、調味料、油等から焼き臭と言う独特な風味が加わり、大衆が好む食感と味が生まれるのである。適度な微泡と焼き臭を得るには、直火で焼くのが玉子焼加工品では一般的調理法であると言う理由がそこにある。
【0081】
玉子の鮮度、玉子の質や調合するだし汁の量等によって、焼成工程において可成の適正温度の差が有る。本発明者の経験では、鍋表面温度は摂氏130度〜170度程度と考えている。加熱温度が低過ぎれば、微泡及び焼き臭が少なくなる事から、食感や味は(1)(2)の玉子加工品に近づいてしまう。加熱温度が高すぎれば、金属調理器の底に焦げ付き、焦臭となり、また卵に含まれる鉄分と硫黄の科学反応により硫化鉄が出来て緑変し、食欲をそそる黄色が失われる。直火調理作業の量産の難易度の高さがそこにあり、経験と感性を求められる理由である。
【0082】
次に必要な場合に行われるストックタンクに貯蔵される半生玉子焼への再調理味付けの優位性について説明する。
(1)調味料やだし汁含まない液卵だけの焼成も当然可能で、その後味付けしスクランブルエッグ等への加工などは容易である。
(2)調味料やだし汁含む液卵は、水分が多いほど、塩分糖分が多いほど、添加物(例えば、pH調整剤、グリシン、酢酸系化合物等)が多いほど、鍋底部に焦げ付きやすくなり、連続焼成加工作業の難易度も製品ロスも増す。
【0083】
(3)得意先のレシピは様々であり、半生玉子焼の再調理味付けの優位性が証明される。仮にだし汁の多い玉子焼を希望する得意先には、半生玉子焼にだし汁を加え、攪拌、容器への充填、加温、成形によって本発明の容器入り玉子焼が得られる。取引先毎に異なる要求への対応や、糖分塩分等の調整も半生玉子焼の再調理味付けによって簡単に行うことができる。
【0084】
(4)最近の一般のお客は、健康志向から保存料を敬遠する傾向にあるが、コンビニ等の食材は、厳しい条件をクリアできなければ、採用されることはない。つまり、消費者の要求は益々多様化しているのである。厳しい条件とは以下の通りである。(A)包装内の食中毒菌の生息は当然許されない。(B)出荷前の一般細菌数は300個/g以下で有ること。(C)40時間で30℃の空間に放置後の増殖した一般細菌数は10万個/g(可食限界)以下であること。
【0085】
保存料(添加物)を使用する場合は、液卵に入れるか、半生玉子焼の再調理味付け工程において入れることも可能である。この条件をクリア出来る無添加自然食品とは、酢漬、塩漬、砂糖漬等しか思い浮かばない。つまり一般家庭で作る無添加料理、ご飯、味噌汁、天ぷら、焼きそば等々の殆どが、30℃、40時間以内で、10万個/g(可食限界)を超え、腐敗してしまうのである。半生玉子焼の再調理味付け工程によって、得意先に合った様々な商品群を作る優位性が証明できる。
【0086】
本発明の容器入り玉子焼製造装置は構造が簡単である利点がある。本発明装置においては、焼成鍋の形を問う必要は無いが、本発明者による実験では、むしろ一般に普及している丸いフライパン型が、油塗布や攪拌作業には、適していることが判明している。調理の利便性から、現在の丸型フライパンが普及したと言っても過言ではない。丸型フライパンは形も単純であり、当然安価に作れることは明白である。前記した図示例では、二個の丸型鍋を連ねた仕様になっているが、目的に合わせて一個でも複数個を連ねた構造でも問題はない。本発明装置は構造が簡単であり、諸装置類の少なくても十分な焼成作業をおこなうことができるものである。
【0087】
本発明の玉子焼製造装置の焼成ラインにおける各装置構成は次の通りである。
油塗布装置:一箇所
充填機:一箇所
攪拌機:一〜三箇所
押圧機:後成形の為必要ない(容器への半生玉子焼の充填後に押圧を行う)。
反転機:一箇所
【0088】
本発明によれば、焼成ラインを此の様に簡素化が出来、簡素化された構造からの補助作業員減は明らかであり、焼成ライン上部をフードで覆い、効率的な排熱が容易であり、作業環境の改善からの、大型エアコンの風量も必要とせず、消費電力の節約に繋げることができる。
【0089】
また、充填から半生玉子焼の取出しまで、空鍋(液卵が無い状態)が無いことからも、長い焼成ラインを必要とせず、作業効率、熱効率の高さを維持できる。半生玉子焼の攪拌装置、充填装置及び成形装置に付いては、様々な機械類が開発されており、公知の装置を使用することができる。
【0090】
ハンバーグ、ソーセージ、豆腐、ギョーザ、団子、練り製品等々、これらの製品は攪拌、計量充填、或いは加熱調理された成形体であって、これらの製品に適用される攪拌、計量充填、或いは加熱調理のための装置技術はいずれも本発明の容器入り玉子焼の製造についての装置技術に適用可能なものである。容器に充填した半生玉子焼の加熱工程についても、蒸気、電熱、ガス等熱源とした様々な公知の装置が知られており、これらの公知の装置を適用できることは勿論である。また冷却工程や包装工程に使用される冷却装置や包装装置は、従来種々知られており、これらの装置を同様に適用できることはいうまでもない。
【0091】
半生玉子焼の成形された厚焼玉子と、機械焼による厚焼玉子(4〜6層程度が一般的)の内外見は当然違ってくる。しかし、巻くか層を重ねる方法でしか製造出来ないとの固定概念にたって、開発進化してきた量産型焼成機であるから、現在の形状の厚焼玉子の外見が存在する訳で、半生玉子焼から成形された新規な外観を有する厚焼玉子が否定される理由は見当たらない。同じように、金型鍋で焼成した従来の卵加工食品と比較して、半生玉子焼から成形された卵加工食品が新規な外観を有するからといって、否定される理由は見当たらない。
【0092】
本発明によれば、プリンの容器を使用すればプリン型の容器入り玉子焼[図6の(a),(b)]がえられ、豆腐の容器を使用すれば豆腐型の容器入り玉子焼[図6の(c),(d)]がえられるものであって、大衆に好まれる従来の微泡と焼き臭を持った新規な玉子焼成形体が出来るものであって、従来と異なる新規な外観を呈するからといって、否定される理由は存在しないものである。
【符号の説明】
【0093】
50:従来の連続厚焼玉子焼成機、50a:焼成作業開始領域、50b:第1折り返し領域、50c:第2折り返し領域、50d:焼成作業終了領域、52:突部、54:焼成ライン、55a,55b,55c,55d:押圧手段、56:加熱手段、58:油ひき装置、60:計量充填装置、62:攪拌装置、64:天火バーナー、66、66d〜66h:反転装置、66a:第1反転装置、66b:第2反転装置、66c:第3反転装置、68、68d〜68g:押し装置、68a:第1押し装置、68b:第2押し装置、68c:第3押し装置、70:ロータリーアクチュエーター、72:反転用ハンドル、74:フック部、76:エアシリンダー、78:取付板、80:ロッド、82:押圧用錘、84:取付枠台、E:厚焼玉子、W:焼成鍋、W1:第1焼成鍋、W2:第2焼成鍋、W3:第3焼成鍋、W4:第4焼成鍋、W5:第5焼成鍋、W6:第6焼成鍋、100:本発明の容器入り玉子焼製造装置、102:焼成ライン、104:焼成セクション、106:油塗布装置、108:計量充填装置、110:撹拌装置、112:液卵貯蔵タンク、114:反転取出し装置、116:ストックタンク、118:コンベヤ手段、120:容器、122:半生玉子焼充填装置、124:収容部、126:供給充填部、128:押圧成形手段、130:基体部、132:押圧部材、134:蓋被着手段、136:蓋体、138:加熱セクション、140:加熱手段、142:容器入り玉子焼、144:冷却セクション、146:冷却手段、G0:原料液卵、G1:半生玉子焼、G2:玉子焼、E1〜E4:液卵。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵手段と、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填手段と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成手段と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し手段と、前記反転取出し手段によって取出された半生玉子焼を貯蔵するストックタンクと、前記ストックタンクに貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填手段と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着手段と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却手段と、を具備し、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする容器入り玉子焼の製造装置。
【請求項2】
前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け手段及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生玉子焼調理味付け手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の容器入り玉子焼の製造装置。
【請求項3】
複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段を含む請求項1記載の容器入り玉子焼の製造装置を用い、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵工程と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填工程と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成工程と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し工程と、前記反転取出し工程によって取出された半生玉子焼を貯蔵する貯蔵工程と、前記貯蔵工程で貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填工程と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着工程と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却工程と、を含み、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする容器入り玉子焼の製造方法。
【請求項4】
前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け工程及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生玉子焼調理味付け工程をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の容器入り玉子焼の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の製造方法によって製造されかつ微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする容器入り玉子焼。
【請求項6】
微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする容器入り玉子焼。
【請求項1】
割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵手段と、複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填手段と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成手段と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し手段と、前記反転取出し手段によって取出された半生玉子焼を貯蔵するストックタンクと、前記ストックタンクに貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填手段と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着手段と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却手段と、を具備し、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする容器入り玉子焼の製造装置。
【請求項2】
前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け手段及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生玉子焼調理味付け手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の容器入り玉子焼の製造装置。
【請求項3】
複数の焼成鍋を焼成ラインに沿って間欠的に移動させる焼成鍋移動手段を含む請求項1記載の容器入り玉子焼の製造装置を用い、割卵し液卵として貯蔵する液卵貯蔵工程と、前記焼成ラインの作業開始領域近傍に設けられ前記焼成鍋内に液卵を計量充填する液卵充填工程と、前記焼成ラインの略全長にわたって設けられかつ前記焼成鍋内の液卵を焼成し微泡を発生させかつ焼き臭を付与する焼成工程と、前記焼成ラインの作業終了領域近傍に設けられ焼成されて微泡及び焼き臭を有する半生状態の半生玉子焼を反転させて取出すために前記焼成鍋を回動させる反転取出し工程と、前記反転取出し工程によって取出された半生玉子焼を貯蔵する貯蔵工程と、前記貯蔵工程で貯蔵された半生玉子焼を所定の容器に充填する半生玉子焼充填工程と、半生玉子焼を収容した容器に蓋体を被着する蓋被着工程と、前記容器に充填された半生玉子焼を殺菌しかつ固化するために該蓋被着した容器を加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱殺菌固化された玉子焼を収容した該蓋被着した容器を冷却する冷却工程と、を含み、容器に充填された微泡及び焼き臭を有する玉子焼を製造することができるようにしたことを特徴とする容器入り玉子焼の製造方法。
【請求項4】
前記液卵貯蔵手段に貯蔵されている液卵に所定の調味料等を添加して調理味付けする液卵調理味付け工程及び/又はストックタンクに貯蔵されている半生玉子焼に所定の調味料等を添加して調理味付けする半生玉子焼調理味付け工程をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の容器入り玉子焼の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の製造方法によって製造されかつ微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする容器入り玉子焼。
【請求項6】
微泡及び焼き臭を有するとともに所定の容器に充填されかつ加熱殺菌固化処理されたことを特徴とする容器入り玉子焼。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−239420(P2012−239420A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112236(P2011−112236)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511122341)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511122341)
【Fターム(参考)】
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