説明

容器入り食品と調理用トマト系ソース

【課題】容器内の乾麺に調理用トマト系ソースをかけて、電子レンズ加熱することにより、予め茹でて冷凍した麺と比べて、優れた風味を有するトマト系ソースパスタを提供すること。
【解決手段】電子レンジ加熱用の容器と、該容器に収容された乾麺と、前記容器内に前記乾麺とともに適用される調理用トマト系ソースであって、前記乾麺を茹で加工することが可能な成分を含んでおり、調理後は、食するに適した通常のトマト系ソースの性状を呈するように調整された調理用トマト系ソースとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な容器に収容された乾麺に調理ソースを添加して加熱することによりパスタとして食することができるようにした容器入り食品とこれに好適に使用される調理用トマト系ソースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手軽に食することができる食品として、予め茹でたパスタ等の麺類を冷凍し、それを電子レンジ加熱用容器に収納して、調理用のソースを添付して販売されている。
このような食品は、予め茹でた麺を解凍し、調理ソースをあえることにより食するようにしたものであるから、麺は、冷凍前、あるいは冷凍中に水分を吸収して、パサパサとした食感になりやすい。
【0003】
そこで、本出願人は、茹でパスタをソテーし、得られたソテーパスタの上にソースを添加してから冷凍するようにした食品を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−186852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した文献に記載の食品では、加熱解凍するだけで食することができるという手軽さもあり、パスタのパサパサ感も改善されているという利点があるものの、予め調理したパスタを冷凍して、それを再加熱して食する以上、どうしても風味の上で劣る点があり、特に茹でたてのパスタと比較すると、風味の違いは出てしまう。
そこで、本発明は、電子レンジで加熱するだけで、茹でたてのパスタと同等の風味を得ることができるようにした容器入り食品と、それに利用するための調理用トマト系ソースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容器入り食品は、電子レンジ加熱用の容器と、該容器に収容された乾麺と、前記容器内に前記乾麺とともに適用される調理用トマト系ソースであって、前記乾麺を茹で加工することが可能な成分を含んでおり、調理後は、食するに適した通常のトマト系ソースの性状を呈するように調整された調理用トマト系ソースとを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、電子レンジ加熱用容器に収容されているので、家庭内で電子レンジを使用するだけで簡便に調理することができる。容器には乾麺が収容され、該乾麺は、前記調理用トマト系ソースの前記成分で茹で加工される。これにより、予め茹でて冷凍した冷凍麺によるパスタと比べて格段に優れた茹でたての風味のパスタを味わうことができるものである。
本発明で、「トマト系ソース」とは、トマト由来の成分を含有するソース全般を指すものであり、典型的には、実施例記載の「ミートソース=ボロネーゼソース」のほか、ナポリタンのソース等を挙げることができる。
【0007】
本発明の容器入り食品は、前記乾麺が、その長さ方向と直行する断面が円もしくは楕円であり、当該断面においてその外面から内方に向かって徐々に縮径する溝が形成された溝付麺であることを特徴とする。
上記構成によれば、乾麺が前記溝を備えていることにより、表面積が増大しているので、その分短時間に茹で上げることができる。
【0008】
本発明の調理用トマト系ソースは、調理用のソースであって、乾麺を茹で加工することが可能な成分を含んでおり、調理後は、食するに適した通常のトマト系ソースの性状を呈するように調整されていることを特徴とする。
上記構成によれば、調理用トマト系ソースから前記成分の少なくとも一部が前記乾麺に吸収されることにより、通常のトマト系ソースと同じ粘性や水分量を呈することになる。
【0009】
本発明の調理用トマト系ソースは、少なくともミートソースを形成するために含有される油分、必要な野菜、牛肉等の具材と、トマトペースト、水等の基本要素を含み、これらの基本要素の配合量を調整することにより、前記乾麺を茹でるのに要する分だけ、通常のミートソースよりも水分量を多くしたことを特徴とする。
上記構成によれば、茹で加工に使われる水分は、調理用トマト系ソースに含まれるミートソースの基本要素の配合量に関して、一部増加させた成分を使うようにされているので、従来のミートソースの味や風味等を大幅に変更することなく、実現することができる。
【0010】
本発明の調理用トマト系ソースは、少なくともミートソースを形成するために含有される油分、必要な野菜、牛肉等の具材と、トマトペースト、水等の基本要素を含み、これらの基本要素に加えて、他の添加物を含有させることにより、前記乾麺を茹でるのに要する分だけ、通常のミートソースよりも水分量を多くしたことを特徴とする。
上記構成によれば、茹で加工に使われる水分は、調理用トマト系ソースに含まれるミートソースの基本要素に加えて添加された他の添加物を使うようにされているので、従来のミートソースの製法を大幅に変更することなく、当該添加物を加えるだけで実現することができる。
【0011】
本発明の調理用トマト系ソースである前記ミートソースは、レトルト容器入り調理用ソースであって、前記基本要素の配合量を調整することにより、通常のミートソースよりも粘度を低くしたことを特徴とする。
上記構成によれば、水分量等が従来よりも多い調理用ミートソースをレトルト容器に充填する作業に必要とされる粘度を調理用ミートソースの基本要素の配合量に関して、一部増加させた成分により増加するようにされているので、従来のミートソースの味や風味等を大幅に変更することなく、実現することができる。
【0012】
本発明の調理用トマト系ソースである前記ミートソースは、レトルト容器入り調理用ソースであって、前記基本要素に他の添加物を添加することにより、通常のミートソースよりも粘度を低くしたことを特徴とする。
上記構成によれば、水分量等が従来よりも多い調理用ミートソースをレトルト容器に充填する作業に必要とされる粘度を調理用ミートソースの基本要素の配合量に関して、一部増加させた成分により増加するようにされているので、従来のミートソースの製法を大幅に変更することなく、当該添加物を加えるだけで実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、容器内の乾麺に調理用トマト系ソースをかけて、電子レンジ加熱することにより、予め茹でて冷凍した麺と比べて、優れた風味を有するトマト系ソースパスタを得ることができる容器入り食品と、それに利用するための調理用トマト系ソースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の容器入り食品の好ましい実施形態の構成を示す概略斜視図。
【図2】図1の容器入り食品に使用される乾麺の一例を示す断面図。
【図3】図1の容器入り食品に使用される乾麺の他の例を示す断面図。
【図4】図2の乾麺を茹でる過程についての説明図。
【図5】本発明に使用される容器の実施形態を示す図。
【図6】図5のA−A線概略部分断面図。
【図7】本発明に使用される容器の他の実施形態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
(容器入り食品の全体構成)
図1において、符号11は、容器であり、この場合電子レンジによる加熱に耐える合成樹脂製の容器とされている。
容器11は、販売に供される状態では、薄いフィルムなどで気密封止されているが、説明の便宜のために該フィルムを除いて、収容物を示している。
容器11の内部には、乾麺12が収容されている。乾麺12はパスタ用乾麺であり、その詳しい形態は後述する。乾麺12は細長い線状の乾麺であり、例えば、デュラム小麦のセモリナと水を混練して製麺されたもので、予め所定長さに切りそろえて、この実施形態の場合、容器11の長手方向に、該乾麺12の長さ方向をそろえるようにして所定量、すなわち、この場合、例えば、大人の1食分として80グラム程度が収容されている。
【0016】
符号13は、レトルト容器であり、好ましくは、容器11に同封されている。
このレトルト容器13は、電子レンジによる加熱が可能で、手により、引き破くことが容易なように、例えば、延伸ポリエチレン等のラミネートフィルムを利用して形成されたパウチを利用することができ、内部に調理用ソースである調理用トマト系ソースが収容されている。
この調理用トマト系ソースは従来のトマト系ソースとは大きく異なる。
【0017】
すなわち、本実施形態の調理用トマト系ソースは、少なくともミートソースを形成するために含有される油分、必要な野菜、牛肉等の具材と、トマトペースト、水等の基本要素を加熱調理して、茹でたパスタにかけてそのまま食するようにした従来のミートソースではなく、乾麺12を茹でるために使用される材料を兼ねている。
すなわち、乾麺12を加熱しただけでは、当然に水分が不足するので、乾麺12を茹で上げることができない。
【0018】
ここで、調理用トマト系ソースに乾麺12を茹でるための水分量を持たせるだけでなく、その粘性も配慮しなければならない。
すなわち、容器11内に乾麺12を図1のように収容した状態において、電子レンジ加熱した際に、これに加えられる調理用トマト系ソースに、茹で上げるだけの水分量が含有されていたとしても、ソース自体の粘性が必要以上に高いと、加熱中に乾麺12の水和が適切に行われない。つまり、ソースの摩擦抵抗が高くなり、加熱中にソース(水分)が適切に対流しなくなってしまう。
【0019】
このことから、粘性増加の原因となる材料をできるだけ使用しないことが好ましい。
具体的には、澱粉類を使用しないことにより、粘性の増加を抑制できる。澱粉類を使用しないことにより不足する食感等の上で必要とされる最低限の粘性は、このトマトペーストに含まれるトマトの粒分により生じるようにしている。
さらに好ましくは、トマトペーストの使用を制限することで、粘性の増加を抑制できる。トマトペーストは、トマト系ソース、とりわけミートソースの味を形成するために基本的要素のひとつとなるものであるが、その含有量をできるだけ制限する。
あるいはこれを使用しないで、トマトピューレで置き換えるか、トマト味を出すために、トマトペーストだけでなく、トマトペーストとともにトマトピューレ適量をともに使用することで、粘性の増加を抑制し、加熱時に乾麺12の水和を適切に行うことができる。
【0020】
本発明者等の研究によれば、乾麺12を茹でる機能を備えた調理用ミートソースとしては、その粘度をブルックフィールド型粘度計(所謂、B型粘度計)による粘度(cps、センチポアズ)で、5.0ないし50.0cpsの範囲に設定することが可能である。特に、5.0ないし20.0cpsの範囲が、より好ましく適正である。
ソースの粘度が5.0未満であると、乾麺12を茹でることはできるが、所謂「ゆるい」ソースになってしまい、水っぽくて、風味に劣る。
ソースの粘度が50.0cpsを超えると、乾麺12は加熱後も硬くて、食べにくいものになってしまう。
なお、この乾麺12としては、断面ほぼ円形の「丸麺」で、1.7ミリ径のものを使用し、調理条件としての電子レンジ出力は500ワットで、加熱時間は約10分であった。
【0021】
次に、図1の容器11に収容される乾麺について説明する。
本実施形態の容器入り食品は、電子レンジ加熱により、簡便に調理して食することをねらいとするものであるから、乾麺12についても短時間の茹で時間で茹であがるものが好ましい。
図2に示す乾麺20は、その断面22が、直径X1の円を幅Y1の平行線で左右均等に裁断して、幅Y1の外側部分を切り落とし、かつ、上部に左側から切れ込んだV字型の溝24aを、下部に右側から切れ込んだV字形の溝24bを設けた形状を有している。
断面22は、最大径が直径X1であり、主外形が直径X1の円弧となっている。直径X1は、1.2mm〜3.0mmとする。裁断する平行幅Y1は、乾麺20の茹で上がりの断面が略円形となるように、直径X1の円弧を1/2以上残す幅とするのが好ましい。
【0022】
2つの溝24a,24bは、断面22の中心について点対称となる位置に、互いに隣接する辺がほぼ平行になるように配されている。図2の符号A4は、2つの溝24a,24b間の麺線部分の肉厚を示している。溝24a,24bの間の平行部において、肉厚A4は一定である。肉厚A4は、好ましくは0.3mm〜0.8mmの範囲に設定される。
なお、肉厚A4が0.3mm〜0.8mmの範囲であれば、溝24aおよび溝24bは、それらの隣接する辺は平行に配置されなくてもよいが、図2の例のように、溝24aおよび溝24bを、それらの隣接する辺が平行になるように配置する形態は、肉厚A4を一定にできる点で好ましい。また、肉厚A4の寸法が一定でない場合には、その変化は小さい方が好ましい。
【0023】
溝24a,24bのそれぞれは、断面22の中央よりも深くまで形成されている。図2中、A3は、溝24aの先端と幅Y1の直線による切り落とし面との間の麺線部分の肉厚を示している。なお、溝24aと溝24bとは点対称な形状なので、溝24bの先端における麺線部分の肉厚も同じくA3である。
溝24a,24bの深さT1、すなわち、溝の先端から開口端面までの垂線の長さT1は、断面22の溝24a,24bの形成方向における径である幅Y1の1/2よりも大きいことが好ましい。それにより、肉厚A3を小さくすることができるとともに、図1においてA1およびA2で示す、断面22の円弧と溝24a,24bの円弧側の辺との間の肉厚を小さくすることができる。肉厚A3は、好ましくは0.3mm〜0.8mmの範囲に設定される。
【0024】
溝24a,24bの先端部は角度P1を有し、円弧側の辺が途中で鈍角に屈曲している。先端部側の辺と円弧との間の肉厚A2と、屈曲部における肉厚A1とは、共に好ましくは0.3mm〜0.8mmの範囲に設定される。
なお、肉厚A1およびA2を含む、溝24a,24bの先端部から開口部までの肉厚を0.3mm〜0.8mmの範囲にすることができれば、溝24a,24bの円弧側の辺は屈曲していなくてもよい。しかし、図2のように、溝24a,24bの円弧側の辺が途中で鈍角に屈曲した形状を有していることにより、溝24a,24bの先端部から開口部までの肉厚の変化を小さくすることができる点で好ましい。また、溝24a,24bの円弧側の辺は、2箇所以上で屈曲していてもよい。
【0025】
上述したように、A1〜A4で示した断面22の各部の肉厚は、0.3mm〜0.8mmの範囲とされている。ここで、麺線の横断面における麺線部分の肉厚を0.3mm以上とするのは、肉厚が0.3mm未満であると、食感が弱く、また、強度が小さいため乾麺20の製造が困難であるからである。一方、麺線の横断面における麺線部分の肉厚を0.8mm以下とするのは、0.8mmを超えると、茹で時間が長くなり、短時間での電子レンジ調理は難しいからである。また、断面22の各部の肉厚は、上記範囲でも特に、0.5mm〜0.6mmとするのが好ましい。この範囲とすることで、製造の安定性と茹で時間の短縮との両立のバランスが最も適当となるからである。
【0026】
ここで、麺線の横断面における麺線部分の肉厚とは、製造的見地から見て麺強度の骨格となる主要な部分の肉厚を意味し、溝を設けたことにより生じる、麺線の断面形状における端部を含まない。すなわち、製造的見地から見て麺強度の骨格となる麺の主要部(中心部)では、0.3mm以上の肉厚が必要であるが、麺線の断面形状における端部は、製造面での麺強度を大きく左右する部分ではないので、0.3mm以下であっても構わない。言い換えれば、麺線の断面形状において、製造面での麺強度を大きく左右する部分、例えば中心から構成面積約80%の部分を主要部と呼び、この主要部においては、肉厚を0.3mm〜0.8mmとすることが重要である。しかし、この主要部よりも外側の、例えば構成面積約20%(片側で約10%)の端部においては、肉厚は上記範囲でなくともよい。
【0027】
麺線部分の肉厚は、乾麺20の断面22におけるA4のように2直線で挟まれた部分では、2直線間の距離とし、A2およびA3のように外縁の一方が直線で他方が曲線または屈曲点の部分では、曲線または屈曲点から直線へ降ろした垂線の長さとし、A1のように外縁の一方が曲線で他方が屈曲点の場合には、それらの距離の最小値として得ることができる。
他の方法として、麺線部分の肉厚は、断面形状の中央線、すなわち向かい合う2つの外縁の中央の点を結んだ線を取り、この中央線に立てた垂線の断面内の長さとしてもよい。
【0028】
麺線部分の肉厚、すなわちA1〜A4で示した断面22の各部の肉厚は、その差が小さいことが好ましい。これは、乾麺20の各部の肉厚を略均等にすることにより、均質な茹で上がり状態が得られるからである。
【0029】
乾麺20は、茹でることで吸水し、麺線部分が膨張しつつ変形して溝24a,24bが塞がる。したがって、溝24a,24bのそれぞれは、先端部を境とする左右の辺の長さがほぼ同一であることが好ましい。溝24a,24bの左右の辺の長さをほぼ同一にすることで、溝24a,24bが塞がったときに、断面22の外周に大きな段差が生じることがなく、乾麺20の良好な外観、食味および食感を得ることができる。
【0030】
ここで、溝24a,24bを断面22の中心について点対称に設けて、断面22を点対称な形状とすることで、安定した製造性を得ることができるとともに、茹で上がりの麺の断面形状を略円形または略楕円形にすることができ、乾麺20の良好な外観、食味および食感を得ることができる。
【0031】
さらに、溝24a,24bの先端部の角度P1は、20度〜70度とするのが好ましい。
角度P1を20度以上とするのは、20度未満では、茹で時間短縮効果が少ないからであり、70度以下とするのは、70度を超えると、溝24a,24bの幅が大きすぎて茹で上がり後であっても溝が適切に閉じない場合があるからである。なお、溝24a,24bの先端部は丸みを帯びていてもよい。
【0032】
また、断面22において、麺線部分の肉厚に対する溝部分の幅の比を1.0:0.5〜2.0とするのが好ましい。
図2を参照して具体的に説明すると、溝24aに隣接する、溝24aの両側の麺線部分のうち、少なくとも一方の肉厚、例えばA4と、溝24aの開口部の幅W1との比が、1.0:0.5〜2.0(開口幅W1が、肉厚の0.5〜2.0倍)であるのが好ましい。ここで、開口幅を麺線部分の肉厚の0.5倍以上とするのは、0.5倍未満であると、茹で時間短縮効果が少ないからであり、開口幅を麺線部分の肉厚の2.0倍以下とするのは、2.0倍を超えると、茹で上がり後であっても溝が適切に閉じない場合があるからである。
【0033】
以上のような断面形状を有する乾麺20は、断面22の肉厚が全体的に小さいため、茹で時間が大幅に短縮される。例えば、直径1.5mm〜1.7mm相当のスパゲティの乾麺であれば、溝なしの麺では茹で時間が5分〜8分のところ、断面22を有する本発明の乾麺20では茹で時間を1分〜3分程度にまで短縮することができる。電子レンジで調理においては、麺重量に対して約2倍量の水を使用して、3〜5分で喫食可能となる。
また、乾麺20は、断面22の全体において肉厚の変化が小さく、ほぼ均等であるため、麺全体を均等な固さに茹で上げることができ、良好な食味および食感を得ることができる。さらに、乾麺20に形成された溝24a,24bは、茹で上がったときに溝が適切に閉じ、かつ、閉じた部分に大きな段差も無い、良好な外観を得ることができる。
【0034】
なお、図2の例では、溝24a,24bを略V字形としているが、溝24a,24bは、先端部を境とする左右の辺が平行または略平行な、U字形としてもよい。溝をU字形とする場合にも、麺類の断面を、先端部の角度の条件を適用しない以外は、上記のV字形の場合と同様に構成することで、上記の例と同様の作用効果を得ることができる。
また、図2の例では、乾麺20の横断面の主外形を1つの円の円弧としているが、麺線の断面の主外形は、楕円の円弧としてもよい。
【0035】
図2の乾麺20では、2本の溝を形成し、かつ、2つの溝を断面において点対称に設けることにより、断面形状を点対称としている。この形態は、製造時における麺の強度バランスがよく、良好な茹で上がり形状、ひいては良好な食味及び食感を得られる点で特に好ましい。しかし、これに限らず、乾麺20には、溝を3本以上設けてもよい。この場合には、溝を断面の左右(向かい合う位置)から交互に設け、溝の寸法および各部の肉厚の寸法を、上述の条件を満たすように設定すればよい。このとき、断面形状を点対称または線対称とすることが好ましい。
【0036】
図3の溝付き麺30は、乾麺の他の形態を示している。
この乾麺30は、直径X10の略円形の断面32を有し、その一箇所に断面の半径よりもやや深い二等辺三角形状のV字形の溝34を有している。
図3において、符号J1およびJ2は、断面32の肉厚寸法を示している。このような溝付き乾麺30は、溝なしの麺に対して茹で時間が最大1/2に短縮されている。この溝付き麺の茹で時間は、直径1.7mmとした場合、電子レンジで調理すると、約7〜10分程度で茹でることができる。
したがって、この乾麺30を使用した場合にも、茹で上がったときに溝が適切に閉じ、かつ、閉じた部分に大きな段差も無い、良好な外観を得ることができる。
【0037】
図4は、図2の乾麺20を茹でる過程についての説明図であり、容器内で乾麺20を重ねた状態で、調理用トマト系ソースを容器に入れ、電子レンジ加熱して茹でる場合の問題点を示す模式図である。
乾麺20の溝24aどうしが噛み合うと、茹でる過程で乾麺32の表面の澱粉成分が「のり化」(α化)することとあいまって、互いに接した面が癒着してしまう。
したがって、できるだけこのような事態を回避できるような容器を使用することが好ましい。
【0038】
そこで、図1で示した容器11について詳しく説明する。
図5は容器11の平面図、図6は図5のA−A線に沿った断面で容器底部を示す図である。
容器11は、例えば、ポリプロピレン樹脂発泡シート、あるいはそれと他のシートとを積層し、加熱して金型により押出し成形してなるものである。
容器11は、全体として矩形の箱型であり、上部は大きな開口47となっている。
また、容器11の長手方向の上縁部には、長手方向に沿って棚状もしくはフランジ状の僅かな突出部が形成されていて、取手部44,44とされている。
また、容器11の長手方向に沿った内側の側面には、縦方向に平行に複数の突起もしくはリブを形成し、容器11の補強が図られている。
【0039】
また、この容器11の最も大きな特徴は、底部41も矩形としたことである。
図1から理解されるように、矩形容器の利点は、線状の乾麺12を収容した場合において、各乾麺12の端部同士が重なりにくいということである。特に、上部だけでなく、底部41も矩形であると、容器11の長手方向に、麺線の長さ方向をそろえて多数本乾麺12を並べる場合、容器11の内側の幅寸法Nが、容器11の長さ方向端部で徐々に縮小するような形状、すなわち、楕円形の底部とされている場合には、乾麺12の長さ方向に中央付近では平坦並べることができても、長さ方向の両端で幅が窄まることで、乾麺12の端部同士が重なってしまう。そうすると、電子レンジ加熱の過程で図4にて説明したような現象が生じやすく、麺同士がくっついて適切に茹でることができない。この点は、図2の乾麺20を使用した場合も同じである。
【0040】
図6を参照する。
容器の底部41では、好ましくは、長さ方向(図5のL方向)の両端部には、幅方向(図5のN方向)に延びる浅い溝42,42が形成されていて、図1のように収容される乾麺12の両端部を、それぞれ受容し位置決めする役割を果たす。
また、好ましくは、底部41の例えば中央部に、内方に僅かに突出するボスないし凸部45を形成している。
これにより、底部41と収容された乾麺12との間に僅かな距離ができて、熱の伝達と、ソースの対流が促されると考えられる。
【0041】
さらに、容器の側壁46は、好ましくは、上方へ向かって徐々に拡開する傾斜面とされると、電子レンジ加熱中にソースが吹きこぼれしにくい。
さらに好ましくは、側壁は符号46a,46aで示すように、僅かに内方に曲線的に突出されて、しかも上方へ向かって徐々に拡開する傾斜面とされると、さらに吹きこぼれしにくい。
【0042】
図7は、容器の他の実施形態を示す概略斜視図である。
この容器51は、図5の容器11と比較すると、上部開口52の形状が異なることである。すなわち、図5の容器11では、上部開口47は矩形であったが、この容器51では、上部開口52は楕円もしくは長楕円形とされている。そして、容器51の長さ方向の両端部には、容器11の短手方向の上縁部には、該短手方向に沿って棚状もしくはフランジ状の僅かな突出部が形成されていて、取手部54,54とされている。
容器51は、上記の形態が容器11と異なるものの、底部41は全く同じ形状である。
したがって、容器11と同様に、電子レンジ加熱中に乾麺の両端部がくっつく事態を有効に回避しつつ、通常用いられるパスタ容器の持つ楕円形態を取り入れて、意匠的にも優れたものとすることができる。
【0043】
本発明の具体例について説明するため、以下にいくつかの実施例を示す。
しかしながら、本発明は、これら実施例の構成によりその範囲を制限されるものではない。
【実施例1】
【0044】
調理用トマト系ソースとしての調理用ミートソース(ソース全量240グラム)
炊き用し蒸気釜(調理釜)に、サラダ油と、ニンニクのみじん切りとを入れ、攪拌しながら加熱した。ニンニクが薄く色付いた時点で、人参のみじん切りと、玉ねぎのみじん切りを加え、玉ねぎの色が半透明になるまで攪拌しながら加熱した。そこに牛挽肉、豚挽肉を加え、肉に熱が通り色が変わるまで攪拌しながら加熱した。トマトペースト、食塩、砂糖、香辛料を加え、更に水を加え、炊き上げた。炊き上がった時点で、赤ワインを加えた。レトルトパウチに240gずつ充填し、シール後、120℃で20分間レトルト殺菌した。
トマトペーストの量、水の量を調節することによって、乾麺を茹でることが可能な調理用ミートソースとしている。
以上の手法により、調理用ミートソースの粘度を5.0ないし20.0cpsとした場合に、直径1.7mm幅の乾麺を、設定出力500Wの電子レンジで10分間加熱することより、好ましく炊き上げることができた。
ここで、調理用ミートソースの粘度が5.0cps未満であると、乾麺を茹でることができるが、水っぽい食感のわるいものであった。
調理用ミートソースの粘度が50.0cpsを超えると、乾麺は硬くて、実質的に食せない状態であった。
【0045】
【表1】

【実施例2】
【0046】
乾麺
デュラム小麦のセモリナ100部と水30部とを混練して押出し成形機に供給した。
押出しダイには、内径2.45mmの円形状のダイ穴の縦方向に、楔形(V字形)の2辺のうち円形の外周側の辺が屈曲部を有する変形楔形突起を、向かい合わせに2個有するものを用いた。このダイにより得られる麺は、図1と同様の断面形状を有するものとなる。
【0047】
この押出し成形機より得られた生スパゲティを調湿乾燥して乾物スパゲティを得た。得られた乾物スパゲティの形状寸法は、図1の麺10の図に対応させて説明すると、直径X1=2.30mm、幅Y1=1.75mm、楔形溝の先端部の角度P1=45度、溝の開口幅W1=0.9mm、肉厚A1〜A4の最大値=0.55mm、最小値=0.45mm、平均値=0.50mmであった。
これを調理用トマト系ソースで電子レンジ加熱した場合、設定出力500Wで6分30秒間加熱することにより適切に炊き上げることが出来た。得られた食感は、溝のない乾麺の場合と同等であった。
【実施例3】
【0048】
容器
図5、図6で説明した容器11をポリプロピレン樹脂発泡シートを加熱して金型により押出し成形することにより形成した。
ここで、図5における容器11の短手方向の寸法Nが95mm、長手方向の寸法Lが170mmである。茹で上がった乾麺は、互いにくっつくことなく、良好な食感を有していた。
【0049】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
容器の形状は図示したものに限られない。特に底部の構造を上記実施例と同様にしていれば上記と同等の作用効果がある。
乾麺の断面形状も図2、図3のものに限らず、種々の形態のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10・・・容器入り食品、11・・・容器、12,20,30・・・乾麺、13・・・レトルト容器(レトルトパウチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ加熱用の容器と、
該容器に収容された乾麺と、
前記容器内に前記乾麺とともに適用される調理用トマト系ソースであって、前記乾麺を茹で加工することが可能な成分を含んでおり、調理後は、食するに適した通常のトマト系ソースの性状を呈するように調整された調理用トマト系ソースと
を備えることを特徴とする、容器入り食品。
【請求項2】
前記乾麺が、その長さ方向と直行する断面が円もしくは楕円であり、当該断面においてその外面から内方に向かって徐々に縮径する溝が形成された溝付麺であることを特徴とする請求項1に記載の容器入り食品。
【請求項3】
調理用のソースであって、乾麺を茹で加工することが可能な成分を含んでおり、調理後は、食するに適した通常のトマト系ソースの性状を呈するように調整されていることを特徴とする調理用トマト系ソース。
【請求項4】
前記トマト系ソースのうち、少なくともミートソースを形成するために含有される油分、必要な野菜、牛肉等の具材と、トマトペースト、水等の基本要素を含み、これらの基本要素の配合量を調整することにより、前記乾麺を茹でるのに要する分だけ、通常のトマト系ソースよりも水分量を多くしたことを特徴とする請求項3に記載の調理用トマト系ソース。
【請求項5】
前記トマト系ソースのうち少なくともミートソースを形成するために含有される油分、必要な野菜、牛肉等の具材と、トマトペースト、水等の基本要素を含み、これらの基本要素に加えて、他の添加物を含有させることにより、前記乾麺を茹でるのに要する分だけ、通常のミートソースよりも水分量を多くしたことを特徴とする請求項3に記載の調理用トマト系ソース。
【請求項6】
前記ミートソースがレトルト容器入り調理用ソースであって、前記基本要素の配合量を調整することにより、通常のミートソースよりも粘度を低くしたことを特徴とする請求項4または5に記載の調理用トマト系ソース。
【請求項7】
前記ミートソースがレトルト容器入り調理用ソースであって、前記基本要素に他の添加物を添加することにより、通常のミートソースよりも粘度を低くしたことを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の調理用トマト系ソース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−233516(P2010−233516A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86045(P2009−86045)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】