説明

容器内の充填媒質の非侵襲性容量式充填レベル測定装置および方法

【課題】外部からの影響による干渉にそれほど左右されない、容器内の充填媒質の非接触式で容量式の充填レベル測定装置を提供する。
【解決手段】a)互いに異なる水平面に配置され、垂直方向に延びる測定面を形成する少なくとも2つの測定電極(103〜112)と、
b)垂直方向に延びる基準面を形成する少なくとも1つの基準電極(113)とを備え、
各測定電極(103〜112)がそれぞれ基準電極(113)と共にコンデンサを形成し、それによってそれぞれ電界を生じさせ、基準面の垂直方向の延びが測定面の垂直方向の延びと少なくとも一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲性で非接触式の容量式充填レベル測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充填レベル測定において、容器内の液体及び粉粒体の充填レベル(直立高さ)は、充填レベル計によって検出される。
【0003】
従来の充填レベル測定法では、フロート本体を含むフロートが、液体を収容するタンク内に入れられる。このフロートは、例えば、磁界がタンクの壁を透過してアレイとして構成された磁気リレーを起動する磁石を含む。それによって、タンク内の充填レベルを測定することが可能になる。これに関する問題は、液体の密度次第でフロート本体の浸没程度に相違が生じ、そのため測定結果が誤差を含むことである。これらの装置の場合、フロートは必然的に液体と接触し、その結果、液体が汚染されるか、または、液体の特性に応じて、フロートが液体の影響を受ける可能性がある。
【0004】
他の既知の充填レベル測定方法には、導電率測定、圧力測定、超音波を用いた測定(この場合、充填高さは信号伝搬時間によって測定される)、容器の重量測定、差圧測定、光学測定、または、容量測定が含まれる。
【0005】
容量式充填レベル測定では、ガスまたは空気と比べて異なる充填材料の誘電率εが利用される。
【0006】
非侵襲性で容量式の充填レベル測定法の場合、容器内に配置されたプローブと、例えば導電性容器の壁とによってコンデンサが形成される。プローブが空気中にある場合、特定の低い初期容量が測定される。容器が充填されると、プローブの覆われる率が増すにつれて、コンデンサの容量が増大する。プローブ電子装置によって、容量が電気的パルス列に変換され、増幅される。評価電子装置によって、パルス繰返し数から測定値が算出される。媒質の容量変化が、充填レベルに比例した信号に変換され、充填レベルの表示が可能になる。
【0007】
この方法には、前述のフロートとちょうど同じように、液体の特性に応じて、プローブが液体の影響を受けるという欠点がある。さらに、容器がシステムの一部である場合、容器の変更毎に、プローブが機械的または電気的損傷を被る恐れがある。
【0008】
さらに、容量式センサは、非侵襲性で容量式の充填レベル測定法にも利用することが可能である。これらの方法は、充填レベルセンサのどの部分も、充填高さを測定される充填媒質と接触しないという点で際立っている。
【0009】
容量式センサの活性表面は電極を含み、それらを用いて、付近の誘電状態が感知される。例えば、容量式センサは、展開された平板コンデンサのように配置された2つの電極を含む。これらの電極間に高周波交番電界が発生する。この電界は、測定される材料を破壊することなく透過する。
【0010】
コンデンサの容量は、充填材料の誘電率によって決まる。用語「誘電率」(記号:ε)は、電界に対する材料の透明度を表わしている。真空においても、電界を生じさせることもできあるいは電磁界の伝搬も可能であるので、真空も誘電率を有している。
【0011】
誘電率数(比誘電率)εr=ε/ε0は、電気定数ε0(真空誘電率)に対する誘電率εの比である。無次元量εrは、電気絶縁材料内における誘電分極の電界減衰効果の特性を示し、電気感受率χに密接に関係する。誘電率に関する用語「誘電定数」は、廃れており、もはや用いられることはない。
【0012】
ほとんどの媒質は空気または真空と比べて異なる誘電率を有しており、容量式充填レベルセンサが設けられたタンクに充填すると、電極間の容量が増大する。
【0013】
導電性または非導電性物体が接近するや否や、周囲に対するまたは基準電極に対する測定電極の静電容量が測定物体の距離及び材料に応じて変化するという事実が利用される。容量式センサは、従って、電気スイッチング信号によって物体の接近に非接触で(すなわち直接接触することなく)反応する。容量式センサは、こうして、非金属分割壁を介して検出することができるので、液体、ペースト、または、粉粒体の充填レベル監視にとりわけ適している。
【0014】
コンデンサの容量を測定するために、一般にコンデンサの個々の電極間におけるオーム放電電流が測定される。この場合、コンデンサは、交流ミリアンペア計と直列で交流電源に接続されている。従って、この計測器を流れ、それによって表示される電流Iは、コンデンサの容量インピーダンスによって決まる。このため、両媒質における容量式電流に対してオーム抵抗が優勢になるほどに低い測定周波数を選択するのが望ましい。
【0015】
代替案として、コンデンサ両端における電圧が特定の値(例えば33%)まで降下するのに要した時間を測定することが可能である。この時間が経過すると、例えば、カウント事象を生じるカウンタを起動することもでき、あるいは、経過時間を測定値として出力することも可能である。
【0016】
非侵襲性で容量式の充填レベル測定のために、この場合は、下記の手順が採用される。電極の1つが、誘電率の低い例えば空気のような媒質に隣接している場合、最初は、低い初期容量が測定される。容器が、誘電率の高い例えば水のような媒質で充填されると、コンデンサ電極の近接領域が増すにつれてコンデンサの容量は上昇する。従って、上述のように、コンデンサ電極の近接領域に比例した測定値を感知することができる。
【0017】
充填レベル測定に用いられる容量式センサの一例として、Sensortechnics(http://www.sensortechnics.com/download/DS_Standard−CLC_E_11663.pdf)製のセンサ「CLC」(容量式レベルセンサ)がある。このセンサは、単一の測定電極と単一の基準電極とを備え、容器の壁の外面に固定されている。
【0018】
しかしながら、このセンサ及び他の公知の方法、並びに、それらに関連した装置の欠点として、測定結果に誤差を含ませる外部干渉作用に対する過敏性がある。干渉作用は、例えば、高周波電圧源、操作員、または、充填レベルが可変である空間的にごく近接した他の液体容器から生じることがある。高周波電圧源が用いられている複数の機器及び自動分析器が空間的にごく近接して配置された実験室では、こうした外部干渉作用が、比較的頻繁にかつ激しく生じる可能性が極めて高い。(ほぼ)空の容器に固定されたこうしたセンサは、物体、例えば手または機械部品が測定電極に近づくと、例えば、容器が満杯かまたは部分的に充填されていると誤って表示することになる。
【0019】
さらに、この種のセンサは、外部からの他の作用にも影響を受けやすい。例えば、測定電界と測定容器との間のエアギャップは、測定信号を弱める。
【0020】
充填レベルセンサが、例えば臨床用患者検体を調べるための自動分析器のようなシステムの一部であれば、この誤った測定のために、後続の作業ステップの過程でかなり面倒な事態に陥る可能性がある。
【0021】
さらに、この種のセンサの測定精度は、正確な較正にきわめて大きく左右されるので、大幅な測定誤差を生じる可能性があり、使い勝手の良さが大幅に制限されることになる。
【0022】
従って、外部作用による干渉にそれほど影響されない装置は大いに有利になる。
【0023】
さらに、測定の質が較正の質にそれほど左右されない装置は大いに有利になる。
【0024】
先行技術文献の1つには、他の容量式充填レベルセンサの記載がある(例えば、特許文献1参照)。このセンサは、金属板の垂直方向配置を含み、それぞれ2つの金属板が1つのコンデンサを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1312897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の課題は、前述の欠点を回避し、とりわけ、外部からの影響による干渉にそれほど左右されない、容器内の充填媒質の非接触式かつ容量式の充填レベル測定装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
装置に関する課題は、とりわけ、非接触式容量式充填レベル測定装置が、少なくとも2つの測定電極と少なくとも1つの基準電極とからなる特定の構成を有していることによって解決される。
【0028】
本発明は、従って、容器内の充填媒質の非接触式すなわち非侵襲性の容量式充填レベル測定装置に関し、この装置は、
a)互いに異なる水平面に配置され、垂直方向に延びる測定面を形成する少なくとも2つの測定電極と、
b)垂直方向に延びる基準面を形成する少なくとも1つの基準電極とを備え、
各測定電極がそれぞれ基準電極と共にコンデンサを形成し、各測定電極と各基準電極の間にそれぞれ電界を生じさせることができ、
基準面の垂直方向の延びが測定面の垂直方向の延びと少なくとも一致することを特徴とする。
装置に関する本発明の実施態様は次の通りである。
・基準面が少なくとも2つの基準電極によって形成され、基準電極が互いに異なる水平面に配置され、1つの水平面上にある1つの測定電極が、同じ水平面上にある1つの基準電極と共にそれぞれ1つのコンデンサを形成する(請求項2)。
・装置は、測定電極とちょうど同じ数の基準電極を有し、各測定電極に、同じ水平面上の1つの基準電極が正確に割り当てられる(請求項3)。
・少なくとも2つの測定電極は互いに異なるサイズを有している(請求項4)。
・装置は、少なくとも3個、できれば少なくとも5個、とりわけ望ましくは少なくとも10個の測定電極を有している(請求項5)。
・装置はさらに評価装置を含んでいる(請求項6)。
・装置は上位制御システムと連係する、従って上位制御システムに接続されている(請求項7)。
・装置は、さらに、容器壁を備えた容器を有し、基準電極が容器壁の1つの領域によって形成されている(請求項8)。
【0029】
この装置が容器に取り付けられると、測定電極と基準電極との間に生じる電界は、容器の壁を破壊することなく透過し、充填媒質の充填レベルによって測定可能な影響を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による装置の1つの望ましい実施形態の概略図である。
【図2】本発明による装置によって測定誤差を抑えることが可能な方法を例示した図である。
【図3】本発明による装置によって測定誤差を抑えることが可能な方法を例示した図である。
【図4】本発明による装置によって測定誤差を抑えることが可能な方法を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
用語「電界」は、相互に吸引しかつ反発し合う電荷によって生じる見えない力場を表わすことを意図したものである。電界強度の単位はボルト/メートル(V/m)であり、電界の強度は電源からの距離が増すにつれて低下する。
【0032】
コンデンサの容量は平板間の物質の誘電率によって決まる。従って、コンデンサの容量は、もともと平板間に配置されている物質とは異なる誘電率を有する物体が、接近するかまたは遠ざかると変化する。その結果、容器を充填するかまたは空にすると、電極が充填媒質の影響を受け、それらの電極が形成しているコンデンサの容量が変化する。
【0033】
用語「充填媒質」は、充填レベルを測定すべき物質を表わすことを意図したものである。充填媒質は、液体、ペースト、または、粉粒体(bulk material)が望ましい。
【0034】
用語「容器」は、測定される充填媒質を収容する入れ物を表わすことを意図したものである。容器は、キャニスタ、タンク、または、ボトルが望ましい。
【0035】
用語「測定電極」は、それぞれ基準電極と共にコンデンサを形成する電極を表わすことを意図したものである。1つの装置の全ての測定電極の全表面が、その装置の測定面を形成している。
【0036】
用語「基準電極」は、以下において、それぞれ1つ又は複数の測定電極または全ての測定電極と共にコンデンサを形成する電極を表わすことを意図したものである。さらに、基準電極は、連続測定のための基準点としても利用される。1つの装置の1つの基準電極の二次元の広がりまたは全基準電極の全表面が、その装置の基準面を形成している。
【0037】
1つの実施形態において、装置は、基準面を形成する少なくとも2つの基準電極を備えている。複数の基準電極がさらに互いに異なる水平面に配置され、1つの水平面上の1つの基準電極が、それぞれ同じ水平面上の1つの測定電極と共にコンデンサを形成している。
【0038】
代替案として、本発明による装置は、測定電極とちょうど同じ数の基準電極を備え、各測定電極に、同じ水平面上の1つの基準電極が正確に割り当てられる。
【0039】
1つの実施形態において、本発明による装置は、少なくとも3個、できれば少なくとも5個、とりわけ望ましくは少なくとも10個の測定電極を備えることが可能である。この装置は、3、4、5、6、7、8、9、または、10個の測定電極を備えることができるが、原理上は、2個以上の任意の数の測定電極が考えられる。
【0040】
基準電極及び測定電極は、導電性材料、望ましくは金属材料、例えば銅箔から構成される。測定電極は、同じかまたは異なるサイズ及び/または形状を有することが可能である。原理上、測定電極の形状及び寸法は重要ではない。測定電極は、例えば、楕円、正円といった円形状、正方形または長方形の形状を有することが可能である。寸法は、便宜上、充填レベルを測定される充填媒質が収容される容器のサイズに関連している。
【0041】
1つの望ましい実施形態において、測定電極は、それぞれ、50×18mmまたは35×12mmのサイズを有する長方形形状に形成されている。
【0042】
1つの望ましい実施形態において、少なくとも2つの測定電極が、互いに異なる大きさの表面を有している。これは、容器の異なる位置において異なる精度で充填レベルを測定することができるという利点がある。非接触式容量式充填レベル測定によって例えば容器内の充填媒質の残留量を測定する場合、より正確な測定結果を保証するために、測定電極のサイズは容器の底部に向かって縮小させることが可能である。
【0043】
1つ又は複数の基準電極によって形成される基準面の寸法は、その垂直方向の延びが測定電極の垂直配列によって形成される測定面の垂直方向の延びに少なくとも一致するか、または、これを超えるように選択される。
【0044】
意外にも、1つの基準電極と共にコンデンサをそれぞれ形成する複数の測定電極の本発明による利用法によって、外部干渉要因の干渉作用を軽減し、測定結果が誤差を含むことを回避できることが判明した。つまり、本発明による装置が、充填レベルの測定のために、少なくとも2つのコンデンサの容量を測定して、これらを互いに相関させるように構成されている。
【0045】
本発明による装置がさらに評価装置を含んでいると望ましい。これによって、全ての電極に対する外部作用の影響が同じになるように測定値を互いに相関させ、測定結果の損なわれるのが最小限で済むようにする。これは、例えば、比率決定及び/または信憑性検査(plausibility check;プラウジビリティチェックとも言われている)によって実施される。
【0046】
用語「評価装置」は、電界の容量変化を測定して、充填レベルを算出する装置を表わすことを意図したものである。測定はファラッドを単位として実施することが可能である。代替案として、測定値は容量変化の尺度として用いられる他の量であってもよい。
【0047】
1つの望ましい実施形態では、少なくとも2つの容量の測定と後続の計算とによって得られた測定値が、単位のない測定値として(例えばパーセントで)提示される。評価装置は、さらに、測定値と記憶されている較正値との比較及び測定値の相互比較とによって測定値の有効性を確認できるようにする。
【0048】
評価装置は独立した装置として設けることができるが、上位制御システムの一部とすることも可能である。
【0049】
評価装置は、主プロセッサ(CPU)及び/またはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を有するのが望ましい。
【0050】
本発明による装置は、上位制御システムと連係するのが望ましい。上位制御システムとの通信を確立するために、本発明による装置は、他の構成要素として直列周辺インタフェース(例えばRS−232またはRS−485)を有するのが望ましい。本発明による装置はさらに電圧源を有することが可能である。これらの他の構成要素の存在には、装置を独立したユニットとして任意に利用できるという利点がある。
【0051】
本発明による装置は、例えば、臨床用の患者検体を調べるための自動分析器のような、他の作業ステップが充填レベル測定の結果によって決まる分析システムの一部であることが望ましい。上位制御システムは、分析器における個々のプロセスを監視し、それらを互いに適合させる。1つの望ましい実施形態では、本発明による装置の評価装置は上位制御システムの一部である。
【0052】
1つの望ましい実施形態において、本発明による装置は、容器に直接配置されるのではなく、本発明による充填レベル測定装置を容器から決められた距離で位置決めできるようにする保持装置上に配置される。これにより、評価装置への損傷の恐れをなくして、容器を簡単に交換できるようになる。
【0053】
本発明による装置は、例えば、水、有機溶剤、または、粉末状もしくは顆粒状の固形物質のような粉粒体といった多種多様な充填媒質の充填レベルの非接触測定に適している。しかしながら、原理上、容器の充填状態の際または容器の空状態の際に評価装置が充填レベルを測定することができるような容量変化が明らかに生じる程に、充填媒質の充填前または充填後に容器内に存在する物質の誘電率とは明らかに異なる誘電率を有する全ての充填媒質を用いることができる。
【0054】
次の表には、18℃の温度及び50Hzの周波数におけるいくつかの物質の比誘電率が示されている。
【0055】
【表1】

【0056】
本発明による装置は、多種多様な容器内の充填媒質の充填レベルの非接触測定に適している。容器は、少なくとも部分的に、ガラス、プラスチック、及び、木のグループからの材料で構成することが可能である。容器は、約500ml〜約20lの任意の所望の容積を有することが可能である。
【0057】
1つの望ましい実施形態では、容器は本発明による装置の構成要素であり、容器の壁の一部によって基準電極が形成される。この場合、容器の壁は少なくとも基準面として設けられた領域が少なくとも部分的に導電性でなければならない。
【0058】
容器の充填レベルに関連した高さを完全にカバーする測定面を形成するために、容器の高さに応じて、測定電極の表面の大きさが異なるか、あるいは、使用する測定電極の数が増減する。
【0059】
本発明は、容器内の充填媒質の非侵襲性容量式充填レベル測定方法に関し、この方法は、
a)本発明による装置を容器の外壁にまたはそのすぐ近くに配置して、少なくとも2つの測定電極が配置された複数の水平面が充填媒質の表面に対して平行に延びるようにするステップと、
b)少なくとも2つのコンデンサの容量を測定するステップと、
c)測定値と記憶されている較正値とを比較しかつ測定値を互いに比較することによって測定値の有効性を確認するステップとを含んでいる。
【0060】
充填媒質の充填レベルを正確に測定できるようにするために、空の容器と満杯の容器とを測定することによって求められた少なくとも2つの較正値が必要になる。
【0061】
個々の測定電極の測定値が、充填レベルを計算するのに直接用いられるのではなく、記憶されている較正値と比較されかつ相互に比較されることによって、装置全体に影響する外部作用が、全ての電極を均等に干渉することになるため、充填レベル測定に極めてわずかな影響しか及ぼさない。
【0062】
例えば、容器と装置の測定電極との間の局部的エアギャップによって誤差を含む測定値の補正が可能になる。
【0063】
さらに、3つ以上の測定電極を用いると、信憑性検査を実施することが可能になり、明らかに誤った測定値を発生している測定電極のデータがその評価時に無視されるので、外部作用に対する本発明による充填レベル測定のロバスト性(頑強性)が強化される。
【0064】
さらに、電極を相互に関連させることによって、本発明による装置の有意義な自己試験を実施することが可能になり、誤った測定をできる限り大幅に減らすことが可能になる。
【0065】
1つの望ましい実施形態では、少なくとも2つのコンデンサの容量は連続して測定される。用語「連続」は、アナログ方式またはデジタル方式によって高サンプリングレートで実施される持続的な測定を表わすことを意図したものである(=「擬似連続」)。
【0066】
もう1つの望ましい実施形態の場合、測定値の有効性確認には比率測定が含まれる。この場合、少なくとも2つの測定電極の測定値が互いに比較されかつ互いに相関させられる。従って、測定にとって重要なことは、生の個別絶対値ではなく、他の測定値との比較から得られる相対値である。図4には、いわゆる比率測定が示されている。10個の測定電極を備える装置が容器に取り付けられている。容器内の充填媒質の充填レベルは、一番下側にある3個の測定電極が完全にすなわち100%覆われ、下から4番目の測定電極が70%覆われている。従って、測定面の37%が覆われており、充填レベルは37%または0.37になる。例えば、測定電極と容器との間に形成されるエアギャップがかなり大きい場合、測定電極はより低い生の絶対値を測定することになる。完全に覆われた測定電極を利用して、補正率が決定され、この補正率が他の測定電極の全ての測定値に掛算される。こうして、エアギャップの影響が排除される。例えば、測定される充填媒質の特性が未知(未知の混合液)である場合、誘電率が一定値でない充填媒質の影響もこのようにして最小限に抑えることが可能である。
【0067】
必要な較正値は、空の状態で1回、充填媒質が充填された状態で1回容器を測定することによって決定するのが望ましい。しかしながら、較正値を決定するために、満杯状態で1回、空の状態で1回同じ容器を測定するのではなく、一方が空であり他方が満杯である同じ構造の2つの容器を測定することも可能である。較正に用いられる容器のどれもが、充填媒質を入れる容器である必要はないが、求められた較正データによって充填レベルを引続いて正確に決定できるようにするために、十分に似た容器でなければならない。
【0068】
本発明による方法が、さらに、測定電極の個々の絶対測定値が論理的評価によって確かめられる信憑性検査を含むと望ましい。図4に示すように、10個の測定電極を備える装置が容器に取り付けられる場合、下から4番目の測定電極の測定値と下から3番目の測定電極の測定値とを比較すると、4番目の測定電極の測定値が3番目の測定電極の測定値より小さいことが明らかになる。下から5番目の測定電極と下から4番目の測定電極を比較して、5番目の測定電極の測定値が4番目の測定電極の測定値より大きいことが明らかになる場合、より高い位置に配置された測定電極が充填媒質で覆われる率が、もっと下方に配置された測定電極よりも大きくなることはあり得ないので、これには信憑性がない。従って、評価装置は、2つの測定値の一方には信憑性がなく、従って間違っているに違いないと判断する。他の測定電極の測定値との比較及び測定値の論理的評価によって、例えば一時的または局部的干渉作用(エアギャップ、物体の接近)に起因する誤った測定を識別し表示することが可能になる。代替案として、1つの単一の測定電極の値に誤りがあるが、他に信憑性のある測定値が十分に得られることが分かれば、充填レベル測定においてその誤りのある測定値を無視することが可能である。
【0069】
図1は、本発明による装置100の1つの望ましい実施形態に関する概略平面図を示す。この実施形態の場合、この装置は、直列周辺インタフェース101、電圧調整器102、10個の測定電極(103〜112)、1つの基準電極113、及び、ここではCPUである評価装置114が含まれている。測定電極はそれぞれ基準電極113に相互接続され、各測定電極103〜112はそれぞれ基準電極113と共にコンデンサを形成している。従って、容量を測定される電界は1つの測定電極と基準電極113との間にそれぞれ存在する。この実施形態の場合、充填媒質の充填レベルによって変化する容量を有する全部で10個の電界が存在する。
【0070】
評価装置114は、容量変化の測定に加えて、充填レベル測定中に信憑性検査を実施するのが望ましい。
【0071】
容量変化の測定は、例えば、まず個々の測定電極103〜112の測定データを計算することによって行われる。これによって、例えば、測定電極112〜109が充填レベルの下に位置し、それに対して測定電極107〜103は充填レベルの上に位置することが明らかになる。測定電極108は、ちょうど充填レベルの高さに位置している。
【0072】
信憑性検査において、評価装置は、測定電極の1つが信憑性のない測定結果を発信しているか否かを判定する。これは、例えば、物体が測定電極104の電界内にあり、近傍の測定電極103,105の測定結果と調和させることのできない容量を生じさせる場合に起こり得る。近傍の測定電極103,105の測定結果によって、3つの全ての測定電極103,104,105が、充填レベルの上に位置し、これらの電極の容量が類似していることが示される。この情報を考慮することにより、評価装置は、正しい測定結果を誤った測定結果から見分けて、充填レベルを正しく計算することができる。
【0073】
図2には、例えば実験室研究者の接近に起因する外部干渉によって、従来の装置を用いた測定結果に誤差を含ませる影響が示されている。
【0074】
図2Aには、単一の測定電極と1つの基準電極とから成るセンサ202が、液体221が部分的に充填された容器220の近くに配置されている測定装置が示されている。容器220はあらかじめ空気が充填されているので、液体221が充填されると、センサ202のすぐ周辺の誘電特性が変化する。これは、容量の変化によって、従って例えば放電時間の変化によって明らかになる。評価装置214において、測定値が決定され、表示される。
【0075】
図2Bには、実験室研究者の手222の接近による干渉作用が示されている。このため、容器220の、液体の充填されていない領域において、媒質の誘電特性が同様に変化し、評価装置214における測定値が誤差を含ませられる。こうした干渉作用は、電極の短絡または汚染によっても生じる可能性がある。
【0076】
図3には、本発明による装置によって前記誤りを防ぐことができる方法が示されている。図3には、複数の測定電極303と、1個の基準電極(不図示)とから構成され、液体321が部分的に充填された容器320の近くに配置された測定装置が示されている。この装置は2つ以上の測定電極303を、従って2つ以上の電界を有しているので、個々の測定電極の測定値は、信憑性検査を受けることが可能である。この場合、上方の測定電極(図3Bの円)によって生じる測定値には、実験室研究者の手322の接近による干渉作用のために誤りがある。というのは、それらの値は充填値を表わすことができないからである。評価装置314は、これを認識して、当該測定値を無視することが可能である。
【0077】
こうして、外部作用に対する本発明による装置のロバスト性(頑強性)が強化される。
【0078】
図4は、10個の測定電極403と、1つの基準電極(不図示)とから構成され、液体421が部分的に充填された容器420の近くに配置された本発明による測定装置を示す。図4Aには、容器420に対する本発明による装置の意図された位置決めが示されている。この装置は、容器420からわずかなエアギャップ423によってしか隔てられていない。この理想のレイアウトの場合、評価装置414は、37%すなわち0.37の充填レベルを測定する。図4Bには、容器420に対する本発明による装置の位置決めが示されているが、この場合、装置は意図する幅より広いエアギャップ423によって容器から隔てられている。このため、全ての絶対測定値が全般的に減少し、実際の液位の下に位置し、従って、実際には完全応答(100%)を生じるはずの最下位の測定電極407が、より小さい値の信号(例えば80%)を生じる。
【0079】
下から2番目と3番目の測定電極も液体によって100%覆われているが、80%の測定値しか示さない。下から4番目の測定電極406は、70%覆われているが、56%の測定値しか示さない。絶対測定値を評価すると、あまりに低い誤った充填レベルを算定することになる。しかしながら、完全に覆われた測定電極の1つを利用して、例えば、測定電極407を利用して、この場合は80%である補正率を求めることができる。次に、この補正率を全ての測定値が掛算される。こうして、エアギャップの影響が排除され、充填レベルが正しく算定される。従って、全ての測定電極に同じ影響を及ぼす干渉作用を排除することが可能になる。
【符号の説明】
【0080】
100 装置
101 直列周辺インタフェース
102 電圧調整器
103〜112 測定電極
113 基準電極
114 評価装置
202 センサ
214 評価装置
220 容器
221 液体
222 手
303 測定電極
314 評価装置
320 容器
321 液体
322 手
403 測定電極
406 測定電極
407 測定電極
414 評価装置
420 容器
421 液体
423 エアギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)互いに異なる水平面に配置され、垂直方向に延びる測定面を形成する少なくとも2つの測定電極(103〜112)と、
b)垂直方向に延びる基準面を形成する少なくとも1つの基準電極(113)とを備え、
各測定電極(103〜112)がそれぞれ基準電極(113)と共にコンデンサを形成し、これによってそれぞれ電界を生じさせる、
容器内の充填媒質の非侵襲性容量式充填レベル測定装置(100)であって、
基準面の垂直方向の延びが測定面の垂直方向の延びと少なくとも一致する、
容器内の充填媒質の非侵襲性容量式充填レベル測定装置。
【請求項2】
基準面が少なくとも2つの基準電極によって形成され、基準電極が互いに異なる水平面に配置され、1つの水平面上にある1つの測定電極が、同じ水平面上にある1つの基準電極と共にそれぞれ1つのコンデンサを形成する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
装置は、測定電極とちょうど同じ数の基準電極を有し、各測定電極に、同じ水平面上の1つの基準電極が正確に割り当てられる請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
少なくとも2つの測定電極は互いに異なるサイズを有している請求項1から3の1つに記載の装置。
【請求項5】
装置は、少なくとも3個の測定電極を有している請求項1から4の1つに記載の装置。
【請求項6】
装置はさらに評価装置(114)を含んでいる請求項1から5の1つに記載の装置。
【請求項7】
装置は上位制御システムに接続されている請求項1から6の1つに記載の装置。
【請求項8】
装置は、さらに、容器壁を備えた容器を有し、基準電極が容器壁の1つの領域によって形成されている請求項1または4から7の1つに記載の装置。
【請求項9】
容器内の充填媒質の非侵襲性容量式充填レベル測定方法であって、この方法が、
a)請求項1から7の1つに記載の装置を容器の外壁にまたはそのすぐ近くに配置して、少なくとも2つの測定電極が配置されている水平面が充填媒質の表面に対して平行に延びるようにするステップと、
b)少なくとも2つのコンデンサの容量を測定するステップと、
c)測定値と記憶されている較正値とを比較しかつ測定値を互いに比較することによって測定値の有効性を確認するステップとを含む、
容器内の充填媒質の非侵襲性容量式充填レベル測定方法。
【請求項10】
測定された容量が、比率決定によって互いに相関させられる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
信憑性検査が実施される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
容量が連続して測定される請求項9から11の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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