説明

容器受け渡し装置

【課題】従来と比較して簡単な構成の供給スターホイールを提供する。
【解決手段】供給スターホイール6の各クランプ機構5は、一対の回転軸の上端に取り付けられたアーム43A,43Bを備えている。各アーム43A,43Bは、回転体42の回転に伴って両カム機構によって各々独立して開閉されるようになっている。把持位置Aにおいて、回転方向前方側のアーム43Aのみが閉鎖方向に揺動されることで、両アーム43A、43Bにより容器3が把持される。他方、解放位置Bにおいては、両アーム43A,43Bがともに開放方向に揺動されるので、両アーム43A、43Bは容器3との干渉を回避して、該容器3の把持状態を解放することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器受け渡し装置に関し、より詳しくは、例えば搬送コンベヤ上から回転式リンサなどの容器処理装置へ容器を受け渡す、または、回転式リンサなどの容器処理装置から搬送コンベヤへ容器を受け渡すように構成された容器受け渡し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器を把持する複数のクランプ機構を備えて、搬送コンベヤ上から回転式リンサ(洗浄装置)のグリッパへ容器を受け渡すようにした容器受け渡し装置は公知であり、さらに、大きさが異なる容器を把持可能なクランプ機構を備えた容器受け渡し装置が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2)。
こうした従来の容器受け渡し装置のクランプ機構は、開閉可能な左右一対のアームを備えており、それら各アームは相互に連動して左右対称に同量だけ開閉されるようになっている。それによって、異なる大きさの容器であっても、各アームで容器を把持する際に、常に容器の中心を一致させて把持できるようになっている。
【特許文献1】特開平2−117515号公報
【特許文献2】実公平7−43052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のクランプ機構において、種々の容器径に対応するためには、上記一対のアームの開閉幅を容器の径に応じた寸法にする必要がある。そこで、上記2件の特許文献1、特許文献2の装置においては、各クランプ機構毎にクランプアームの開閉量を変動させるための調整機構が配置されていたものである。
このように、上記従来の容器受け渡し装置においては、各クランプ機構毎に調整機構を設ける必要があったので、容器受け渡し装置の構成が複雑になるとともに製造コストが高くなるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、回転自在に設けられた回転体と、この回転体に設けられるとともに容器を把持する複数のクランプ機構とを備え、上記各クランプ機構は、上記回転体に回転自在に設けられた一対の回転軸と、上記回転軸のうち上記回転体の回転方向前方側に取り付けられた第1アームと、上記回転軸のうち上記回転体の回転方向後方側に取り付けられた第2アームとを備え、上流側機器から容器を受け取る把持位置で上記クランプ機構の両アームによって容器を把持するとともに、下流側機器へ容器を受け渡す解放位置で両アームによる容器の把持状態を解放して下流側機器に容器を受け渡すようにした容器受け渡し装置において、
上記クランプ機構が備える一対の回転軸を上記回転体にそれぞれ独立して回転可能に取り付けるとともに、上記回転軸を介して上記第1アームを開閉方向に揺動させる第1駆動手段と、上記回転軸を介して上記第2アームを開閉方向に揺動させる第2駆動手段とを設け、上記把持位置においては、上記第1駆動手段によってクランプ機構の第1アームのみが閉鎖方向に揺動されて両アームにより容器が把持されるとともに、上記解放位置では、上記第1駆動手段と第2駆動手段とによってクランプ機構の第1アームと第2アームがともに容器との干渉を回避する位置まで開放方向に揺動されて容器の把持状態が解放されるようにしたものである。
また、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明の構成に加え、上記回転体は、上記クランプ機構が設けられたベース体と回転軸からなり、該回転軸に対する回転体の位相を調節可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に係る構成によれば、複数のクランプ機構が備える各アームを、それぞれ独立して異なる開閉量で開閉させることができる。そのため、容器を把持する際、回転方向後方側に取付けられた第2アームを先に容器に当接させた後、回転方向前方側に取付けられた第1アームを閉鎖方向へ揺動させて容器を把持することが可能となる。これに対し、上述した従来の装置では、各アームは左右対称に同量だけ開閉される。従って、上述した構成によれば、受け渡しの際の容器の把持を安定して行うことができる。また、上述した従来の装置のように各クランプ機構毎にアームの開閉量を調整する調整機構を設ける必要がないので、上述した構成によれば、容器受け渡し装置の構成を簡略化することができる。
また、請求項2に係る構成によれば、上記クランプ機構が設けられる回転体は、ベース体と回転軸からなり、該回転軸に対する回転体の位相を調節可能である。従って、上述した請求項1の効果に加え、次のような効果を有する。すなわち、容器の径が変更されることによって、容器と第2アームとの当接する位置と容器中心位置との間の距離が変わった場合であっても、上記回転体の上記回転軸に対する回転体の位相を前後に調節することによって、上記把持位置及び解放位置において大きさが異なる各容器の中心を同じ位置に一致させて容器を把持することができるというものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において、容器処理システム1は従来公知の回転式リンサ2を備えており、この回転式リンサ2によって容器3を搬送しながらその内外を洗浄できるようになっている。
本実施例の容器処理システム1は、図示しない複数のグリッパGによって空の容器3の首部を把持して搬送しながら容器3の内外を洗浄する上記回転式リンサ2と、回転式リンサ2の近くに配置されて容器3を縦一列の状態で搬送する搬送コンベヤ4と、搬送コンベヤ4上となる把持位置Aでクランプ機構5によって容器3を把持した後に解放位置Bで回転式リンサ2へ容器3を受け渡す供給スターホイール6と、回転式リンサ2側の把持位置Cにおいてクランプ機構5によって容器3を把持してから搬送コンベヤ4上の解放位置Dへ容器3を受け渡す排出スターホイール7とを備えている。
【0007】
回転式リンサ2の構成は従来公知のものと同じであり、図1、図2、図7に示すように、この回転式リンサ2は、水平面において反時計方向に回転される回転体11を備えており、この回転体11における外周部の等間隔位置に容器3の首部を着脱自在に把持する従来公知のグリッパGが配置されている。
上記回転体11は駆動軸12の上端に連結されており、この駆動軸12は複数のベアリング13と円筒部材14を介して支持フレーム15に回転自在に軸支されている。駆動軸12の下端部には大径のギヤ16が取り付けられており、このギヤ16は、隣接位置に配置されたモータ17側のギヤ18に噛合させている。
【0008】
モータ17側のギヤ18は、その隣接位置に配置されたディファレンシャルギヤボックス21における出力軸22のギヤ23に噛合されている。
ディファレンシャルギヤボックス21の入力軸24に取り付けられたスプロケット25は、無端状チェーン26を介して両スターホイール6、7を回転させるための駆動用のスプロケット27、28およびタイミングスクリュー31を回転させるためのスプロケット32と連動している。
そのため、モータ17が回転されると、ギヤ18、16を介して回転式リンサ2の駆動軸12と回転体11が反時計方向に回転されるとともに、該回転体11の回転と同期してディファレンシャルギヤボックス21と無端状チェーン26を介して両スターホイール6、7およびタイミングスクリュー31が所定方向に回転されるようになっている。
【0009】
そして、本実施例においては、ディファレンシャルギヤボックス21は、回転式リンサ2の回転体11に対して両スターホイール6,7およびタイミングスクリュー31の、それぞれの回転軸に対する位相を調節する位相調節手段として構成されている。つまり、処理対象となる容器3の径を変更する際には、モータ17の停止状態において作業者がハンドル33を介してディファレンシャルギヤボックス21の調整軸34を所要量だけ正逆に回転させると、調整軸34に形成された調整ギヤ34Aが回転される。すると、入力軸24は固定されたままの状態でディファレンシャルギヤボックス21の出力軸22とギヤ23が回転され、それに連動してギヤ18、16を介して駆動軸12と回転体11が所要回転角度だけ回転されるようになっている。
それによって、回転式リンサ2の回転体11に対する両スターホイール6,7およびタイミングスクリュー31の、それぞれの回転軸に対する位相を調節できるようになっている。ここで、後述するように、本実施例において供給スターホイール6のクランプ機構5は、容器3を把持する一対のアーム43A、43Bのうち閉鎖位置で停止状態にあるアーム43Bに対し、他方のアーム43Aのみ閉鎖方向に揺動して容器3を把持するものである。そのため、大きさが異なる容器3を把持した場合、両アーム43A、43B間で把持される容器3の中心3Cの位置が変動することとなる。しかし、上記位相調節手段によれば、クランプ機構5が把持徹置Aにおいて大きさが異なる容器3であっても、容器3の中心3Cを同じ位置に一致させて各容器3の胴部を把持できる(図2、図8参照)。つまり、本実施例において両スターホイール6、7およびタイミングスクリュー31の、それぞれの回転軸に対する位相を調節するとは、把持位置および解放位置に容器3の中心3Cが一致するように、スターホイール6、7に設けられるクランプ機構5の位置を、円周方向に沿って前後方向にずらすことをいう。
なお、上記ディファレンシャルギヤボックス21の構成は従来公知のものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0010】
図2に示すように、本実施例の搬送コンベヤ4上には、容器3の搬送方向に沿って左右一対の可動ガイド35が配置されており、走行中の搬送コンベヤ4上に正立状態で供給された容器3は、その胴部の両側を可動ガイド35に案内されながら縦1列となって矢印方向に搬送されるようになっている。
また、供給スターホイール6とは反対側であって、その隣接上流側の可動ガイド35上となる位置にタイミングスクリュー31が配置されている。このタイミングスクリュー31は、水平な状態でコ字形の可動フレーム36に回転自在に軸支されるとともに、ユニバーサルジョイント37などを介して上記スプロケット32を嵌着した回転軸38と連動している。
これにより、上記モータ17によって回転式リンサ2の回転体11が回転される際にはタイミングスクリュー31も所定方向に回転され、可動ガイド35によって案内されながら搬送されてきた相前後する容器3がタイミングスクリュー31の外周部と係合するようになっている。そして、相前後する容器3はタイミングスクリュー31によって前後に所定距離だけ離隔された状態において順次把持位置Aへ送り込まれるようになっている。
その際、時計方向に回転される供給スターホイール6の各クランプ機構5が順次把持位置Aまで移動されてから閉鎖されることにより、各クランプ機構5によって容器3の胴部が両側から把持される。その後、各クランプ機構5に把持された各容器3は解放位置Bまで移送されてからクランプ機構5による把持状態を解放される一方、回転式リンサ2のグリッパGによって首部を把持されるようになっている。
【0011】
上記タイミングスクリュー31を軸支した可動フレーム36は、搬送コンベヤ4の幅方向に移動可能となっており、また、上記一対の可動ガイド35も搬送コンベヤ4の幅方向に移動可能となっている。
処理対象となる容器3の大きさを変更する際には、図示しない駆動源によって可動ガイド35が変更後の容器3の大きさに適合するように搬送コンベヤ4の幅方向に所要量だけ移動されるとともに、タイミングスクリュー31を軸支した可動フレーム36も搬送コンベヤ4の幅方向に所要量だけ移動されるようになっている。
このように、本実施例においては、上記左右一対の可動ガイド35とタイミングスクリュー31によって、搬送コンベヤ4上の容器3は正立状態に維持され、かつ相前後する容器3が所定間隔に離隔されるようになっている。そして、その後、把持位置Aにおいて供給スターホイール6の各クランプ機構5によって容器3の胴部が確実に把持されるようになっている。
【0012】
また、供給スターホイール6と排出スターホイール7との間となる搬送コンベヤ4と回転体11とにわたって水平な状態で渡し板41が配置されている。この渡し板41の上面は搬送コンベヤ4の載置面と同じ高さに設定されている。供給スターホイール6のクランプ機構5によって搬送コンベヤ4から回転式リンサ2に容器3が受け渡される際、および排出スターホイール7によって把持位置Cから解放位置Dへ容器3が排出される際には、各容器3の底部が渡し板41によって支持されるようになっている。
【0013】
しかして、本実施例は、供給スターホイール6および排出スターホイール7のクランプ機構5を以下のように改良することによって、大きさが異なる容器3であっても支障なく把持して一方の位置から他方の位置へ受け渡すことができるようにしたものである。また、本実施例は、処理対象となる容器3の大きさに応じて、回転式リンサ2の回転体11に対する両スターホイール6、7およびタイミングスクリュー31の、それぞれの回転軸に対する位相を変更し、調節できるようにしたものである。
供給スターホイール6は、搬送コンベヤ4から回転式リンサ2のグリッパGへ、排出スターホイール7は回転式リンサ2のグリッパGから搬送コンベヤ4へと容器3を受け渡す点で、後述するクランプ機構5のアーム43A、43Bの動作は多少異なるが、その構成は実質的に同一であるので本実施例においては供給スターホイール6の構成についてのみ詳細に説明し、排出スターホイール7の説明は省略する。
すなわち、図2ないし図4に示すように、供給スターホイール6において、クランプ機構5は、回転軸46を中心に回転自在に設けられた回転体42をベース体として、その外周部に等ピッチで5つのクランプ機構5が配置されており、各クランプ機構5は、それぞれ独立して開閉可能な一対のアーム43A、43Bを備えている。
【0014】
支持フレーム15にブラケットを介して円筒部材44を鉛直方向に取り付けてあり、この円筒部材44の内方に上下一対のベアリング45を介して回転軸46を回転自在に軸支している。この回転軸46の上端に上記回転体42の中央部を連結して水平に支持してあり、他方、回転軸46の下端には上記無端状チェーン26と噛合した上記スプロケット27が取り付けられている。これにより、前述したモータ17により回転式リンサ2が回転される際には、上記ディファレンシャルギヤボックス21と無端状チェーン26を介して供給スターホイール6が時計方向に回転されて、各クランプ機構5のアーム43A,43Bが順次把持位置Aから解放位置Bに移動されるようになっている。
本実施例においては、各クランプ機構5が回転体42の回転にともなって移動される際に、第1カム機構51によって移動方向前方側のアーム43Aを開閉方向に揺動させるとともに、第2カム機構52によって移動方向後方側のアーム43Bを干渉回避位置Eのみで開放方向に揺動させるようになっている。それにより、各クランプ機構5の一対のアーム43A、43Bにより把持位置Aで容器3の胴部を把持する一方、解放位置Bで容器3の把持状態を解放して回転式リンサ2へ容器3を受け渡すようになっている。
【0015】
回転体42の外周部近くには、各一対の回転軸53A、53Bをそれぞれ独立して回転自在に取り付けてあり、一方の回転軸53Aの上端に上記回転体42の回転方向前方側のアーム43Aを外周方向に向けて連結してあり、他方の回転軸53Bの上端に上記回転体42の回転方向後方側のアーム43Bを連結している。
各アーム43A、43Bは長方形の板状部材から構成されるとともに、それらの先端部分は閉鎖方向に折り曲げられているので、全体として概略く字形に形成されている。移動方向後方側となるアーム43Bの方が前方側のアーム43Aよりも上下方向寸法が大きく設定されている(図3参照)。アーム43Bの隣り合う内方側の平面が容器3の胴部と当接する当接部43Cとなっている(図4参照)。他方、移動方向前方側のアーム43Aは、先端部分を僅かに円弧状に反らせた形状となっており、その部分の内面が容器3の胴部と当接する当接部43Cとなっている。つまり、図4に示すように、本実施例においては、クランプ機構5のアーム43A、43Bによって容器3の胴部を両側から把持する際には、上記3箇所の当接部43Cが容器3の胴部と当接するようになっている。そのため、本実施例においては、例えば胴部の外径が80mm〜110mmの範囲の容器3であれば、アーム43A、43Bを異なる寸法のものと交換することなく、大小の容器3を兼用して把持できるようになっている。また、このように胴部の外径が異なる容器3を把持した際において、供給スターホイール6の回転中心から各容器3の中心3Cまでの距離(半径方向寸法)は同一となるように構成されている。
これにより、解放位置Bにおいてクランプ機構5のアーム43A、43Bによって回転式リンサ2のグリッパGへ容器3を受け渡す際に、大きさの異なる容器3であっても、常に容器3の中心3Cが同じ位置となるようにして受け渡されるようになっている。
【0016】
つぎに、各クランプ機構5のアーム43A、43Bを開閉方向に揺動させる駆動手段としての両カム機構51,52とその周辺部分について説明する。
図2から図5に示すように、アーム43Aを連結した回転軸53Aの下端部にはカムレバー54Aが水平に取り付けられており、このカムレバー54Aの先端部にカムフォロワ55Aが回転自在に取り付けられている。後方側のアーム43Bを連結した回転軸53Bの下端部にもカムレバー54Bが水平に取り付けられており、このカムレバー54Bの先端部にカムフォロワ55Bが回転自在に取り付けられている。
アーム43A側のカムフォロワ55Aよりもアーム43B側のカムフォロワ55Bの高さは少し低く設定されており、それらのカムフォロワ55A、55Bの高さに合せて、リング状のカム部材57A、57Bが円筒部材44の外周部に取り付けられている。
回転軸53Aの外周部と回転体42の底面とにわたっては引張りばね56が取り付けられているので、回転軸53Aは反時計方向に回転するように付勢されるとともにアーム43Aは常に閉鎖方向(反時計方向)に付勢されており、またカムフォロワ55Aはカム部材57Aのカム面に押し付けられている。
また、回転軸53Bの外周部と回転体42の底面とにわたっても引張りばね56が取り付けられているので、回転軸53Bは反時計方向に回転されるように付勢されるとともにアーム43Bは常に開放方向(反時計方向)に付勢されており、カムフォロワ55Bはカム部材57Bのカム面に押し付けられている。
各クランプ機構5のカムフォロワ55Aと上記カム部材57Aによってアーム43Aを開閉方向に揺動させる第1カム機構51が構成されている。そして、回転体42が時計方向に回転される際には、カムフォロワ55Aがカム部材57Aのカム面上を転動し、それに伴ってカムレバー54Aと回転軸53Aを介してアーム43Aが回転体42の回転角度位置に応じて開閉方向に揺動されるようになっている。
【0017】
より詳細には、図2および図5に示すように、把持位置Aから解放位置Bまでの回転体42の移動区間においては、カム部材57Aのカム面が最も後退した位置にあり、従って、その移動区間では引張りばね56によってアーム43Aが閉鎖状態に維持される。
また、解放位置Bとそこを少し過ぎた回転体42の移動区間においては、カム部材57Aのカム面がそれまでよりも半径方向外方へ徐々に膨出させてあるので、この区間においては、引張りばね56に抗してアーム43Aが徐々に開放方向に揺動されるようになっている。
さらに、その後の回転体42の移動区間においては、カム部材57Aのカム面が最も半径方向外方へ膨出されているので、この移動区間においては、アーム43Aが最大に開放された状態となる。そして、把持位置Aにおいては、カム部材57Aのカム面の膨出量は最大から最小に切り換えられ、アーム43Aが閉鎖方向に最大量だけ揺動されるようになっている。
他方、各クランプ機構5のカムフォロワ55Bと上記カム部材57Bとによってアーム43Bを開閉方向に揺動させる第2カム機構52が構成されており、回転体42が時計方向に回転される際には、カムフォロワ55Bがカム部材57Bのカム面上を転動し、それに伴ってカムレバー54Bと回転軸53Bを介して後方側のアーム43Bが回転体42の回転角度位置に応じて開放する方向(反時計方向)に揺動されるようになっている。図5に示すように、カム部材57Bのカム面は、解放位置Bおよびその隣接箇所からなる干渉回避区間Eのみ半径方向外方側へ膨出させてあるので、この干渉回避区間Eにおいてだけ、移動方向後方側のアーム43Bが開放方向(反時計方向)に揺動され、回転体42の他の移動区間ではアーム43Bは揺動されずに閉鎖位置にある状態が維持されるようになっている。
【0018】
本実施例においては、第1カム機構51により、回転方向前方側のアーム43Aは把持位置Aから解放位置Bまでの回転体42の移動区間では閉鎖された状態に維持される。また、第2カム機構52により、回転方向後方側のアーム43Bを上記干渉回避区間Eだけ開放方向(反時計方向)に揺動させるとともに、その他の回転体42の移動区間ではアーム43Bを揺動させないようにしている。
つまり、回転体42が時計方向に回転される際には、把持位置Aにおいて後方側のアーム43Bが容器3の胴部の後方側に当接してそこを支持するとともに、閉鎖方向に揺動される前方側のアーム43Aが容器3の胴部に当接して、結果的に両アーム43A、43Bによって容器3の胴部の前後両側が把持されるようになっている(図4、図6(a)参照)。
すなわち、本実施例のクランプ機構5は、後方側のアーム43Bは揺動せずに、前方側のアーム43Aの閉鎖作動のみによって容器3の胴部が把持されるようになっている。
このように、クランプ機構5の一対のアーム43A、43Bによって胴部を把持された容器3は、回転体42の回転にともなって解放位置Bまで搬送され、そこでは、回転方向前方側のアーム43Aが第1カム機構51によって開放方向(時計方向)に揺動され、また、後方側のアーム43Bも第2カム機構52によって開放方向(反時計方向)に揺動される(図6(b)参照)。
これにより、アーム43A,43Bによる容器3の把持状態が解放されるとともに、解放された容器3の胴部に第1アーム43A及び第2アーム43Bの先端が干渉することなく解放位置Bを通過することができる(図6(b))。
【0019】
このようにして、容器3の把持状態が解放されると、回転体42の回転に伴って第1カム機構51によってアーム43Aは最大の開放位置まで開放され、また、第2カム機構52によって後方側のアーム43Bも閉鎖位置に復帰する。つまり、アーム43Aは最大開放位置となり、他方のアーム43Bは閉鎖位置となり、その状態で両アーム43A、43Bが搬送コンベヤ4上の把持位置Aに位置するので、タイミングスクリュー31により該把持位置Aに送り込まれる容器3が両アーム43A,43Bの間に挿入される(図2参照)。
その後、前述したように、容器3の胴部の搬送方向後方側にアーム43Bが当接し、第1カム機構51により前方側のアーム43Aが閉鎖方向に揺動されて胴部の搬送方向前方側に当接して、両アーム43A、43Bにより容器3の胴部が把持されるようになっている。
【0020】
本実施例における供給スターホイール6は以上のように構成されている。そして、処理対象となる容器3の大きさを変更する場合には、モータ17の作動を停止させた状態において、前述した位相調節手段であるディファレンシャルギヤボックス21の調整軸34を作業者がハンドル33により所要量だけ正逆に回転させると、ディファレンシャルギヤボックス21の入力軸21は固定されたままディファレンシャルギヤボックス21の出力軸22とギヤ16,18を介して回転式リンサ2の回転体11が所要角度だけ回転される。これにより、回転式リンサ2の回転体11に対して、両スターホイール6,7およびタイミングスクリュー31のそれぞれの回転軸に対する位相が同期して一斉に変更されたことになる。
上述したように、本実施例においては、移動方向後方側のアーム43Bを揺動させないで容器3の胴部に当接させる一方、前方側のアーム43Aを閉鎖方向に揺動させることにより、両アーム43A、43Bにより容器3の胴部を把持するようにしている。そのため、位相調節手段としてのディファレンシャルギヤボックス21を介して、上述したように位相を変えることにより、変更前後の容器3の半径の差の分だけクランプ機構5が把持位置Aで容器3を把持する際の回転体42の回転軸に対する位相を変更することができる。つまり、把持位置Aにおいてクランプ機構5のアーム43Bが容器3の胴部と当接する位置を、位相調節手段としてのディファレンシャルギヤボックス21によって変更することができる。これにより、処理対象となる容器3の大きさを変更した際に、異なる大きさの容器3であっても、把持位置Aにおいて常に容器3の中心3Cが同じ位置となって両アーム43A、43Bにより容器3が把持されるようになっている(図2、図8参照)。
【0021】
以上のように、本実施例の両スターホイール6,7のクランプ機構5は、各アーム43A、43Bがそれぞれ両カム機構51,52によって独立して開閉方向に揺動されるようになっている。そして、把持位置Aにおいては第1カム機構51によりクランプ機構5の一方のアーム43Aのみが閉鎖されることで、両アーム43A、43Bにより容器3が把持されるようになっている。他方、解放位置Bにおいては、両カム機構51,52によってクランプ機構5の両アーム43A,43Bが開放方向に揺動されることで、容器3との干渉を回避して該容器3の把持状態が解放されるようになっている。
さらに、処理対象となる容器3の大きさを変更する際には、位相調節手段としてのディファレンシャルギヤボックス21によって両スターホイール6,7とタイミングスクリュー31のそれぞれの回転軸に対する位相を回転式リンサ2に対して変更し、調節することができる。
そのため、本実施例においては、クランプ機構5のアーム43A,43Bの開閉量を変更する調整手段を各クランプ機構5に配設する必要がなく、そのような調整手段を設けていた従来の装置と比較すると、両スターホイール6,7の構成を簡略化することができる。また、そのように構成を簡略化できる分だけ、従来と比較して両スターホイール6,7の製造コストを安くすることができる。
さらに、処理対象となる容器3の大きさを変更した際に、両スターホイール6,7他の各部の型替作業を簡略化することができる。
【0022】
なお、上記実施例のクランプ機構5は、胴部の外径が80mm〜110mmの容器3を兼用して把持可能なアーム43A、43Bを用いているが、胴部の外径が上記寸法よりも小さな容器3を把持するためのアームとして、図9に示したものを採用しても良い。つまり、この図9に示したクランプ機構5においては、移動方向後方側となるアーム43Bの形状を改良したものであり、より詳細には、上記実施例のアーム43Bの中央部分をさらにV字状となるように他方のアーム43Aに向けて折り曲げた形状となっている。
外径が80mmよりも小さな容器3を把持する場合には、上記図2におけるクランプ機構5のアーム43A、43Bを図9に示したアーム43A、43Bと交換することで、外径が小さな容器3であっても両スターホイール6,7のクランプ機構5により支障なく把持して、一方の位置から他方の位置へ受け渡すことができる。また、この図9に示したアーム43A、43Bを備えたクランプ機構5においても、中心3Cが常に同じ位置となるようにして径が異なる容器3を把持することができる。なお、この場合、カム部材57A、57Bは変更する必要がなく、アーム43A、43Bを交換するのみで外径80mm以下の容器3を支障なく把持できる。
【0023】
また、上記実施例においては、回転式リンサ2用の供給スターホイール6および排出スターホイール7に本発明を適用した場合について説明しているが、回転式リンサ2の代わりに回転式キャッパやフィラ用の供給スターホイールおよび排出スターホイールとして本発明を適用することができる。また、上記実施例においては、供給スターホイール6および排出スターホイール7について、タイミングスクリュー31を備える搬送コンベヤ4から容器3を受け取り、または、受け渡す場合について説明しているが、タイミングスクリューを備える搬送コンベヤ間の受け渡しに本発明を適用しても良いし、グリッパ等の容器把持装置を備える回転体間での受け渡しに適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例の概略を示す概略の平面図。
【図2】図1に示した両スターホイール6,7とその周辺の平面図。
【図3】図2の要部の縦断面図。
【図4】図2のクランプ機構5の要部を拡大した平面図。
【図5】図3に示したカム部材57A、57Bとその関連部材の配置状態を示す平面図。
【図6】クランプ機構5により容器3を把持・解放する際の作動工程を示す図。
【図7】図1のVII−VII線に沿う要部の断面図。
【図8】図2に示した供給スターホイール6のクランプ機構5を交換して小さな容器3を受け渡す際の状態を示す平面図。
【図9】クランプ機構5に関する別の実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0025】
5‥クランプ機構 6‥供給スターホイール(容器受け渡し装置)
7‥排出スターホイール(容器受け渡し装置) 42‥回転体
43A‥アーム 43B‥アーム
51‥第1カム機構(駆動手段) 52‥第2カム機構(駆動手段)
53A‥回転軸 53B‥回転軸
A‥把持位置 B‥解放位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に設けられた回転体と、この回転体に設けられるとともに容器を把持する複数のクランプ機構とを備え、上記各クランプ機構は、上記回転体に回転自在に設けられた一対の回転軸と、上記回転軸のうち上記回転体の回転方向前方側に取り付けられた第1アームと、上記回転軸のうち上記回転体の回転方向後方側に取り付けられた第2アームとを備え、
上流側機器から容器を受け取る把持位置で上記クランプ機構の両アームによって容器を把持するとともに、下流側機器へ容器を受け渡す解放位置で両アームによる容器の把持状態を解放して下流側機器に容器を受け渡すようにした容器受け渡し装置において、
上記クランプ機構が備える一対の回転軸を上記回転体にそれぞれ独立して回転可能に取り付けるとともに、上記回転軸を介して上記第1アームを開閉方向に揺動させる第1駆動手段と、上記回転軸を介して上記第2アームを開閉方向に揺動させる第2駆動手段とを設け、上記把持位置においては、上記第1駆動手段によってクランプ機構の第1アームのみが閉鎖方向に揺動されて両アームにより容器が把持されるとともに、上記解放位置では、上記第1駆動手段と第2駆動手段とによってクランプ機構の第1アームと第2アームがともに容器との干渉を回避する位置まで開放方向に揺動されて容器の把持状態が解放されることを特徴とする容器受け渡し装置。
【請求項2】
上記回転体は、上記クランプ機構が設けられたベース体と回転軸からなり、該回転軸に対する回転体の位相を調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の容器受け渡し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−89848(P2010−89848A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258508(P2008−258508)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【Fターム(参考)】