説明

容器蓋およびその製造方法

【課題】 閉蓋時および開蓋時に、シーリング材のカスが発生しないようにする。
【解決手段】 嵌合凹部1c に配設されたシーリング材3には、蓋1の径方向外方側となるかしめ部1dの内側に、 缶胴カール部と略同形状の凹部3aが 全周に亘って形成されている。このため、 蓋1 の嵌合凹部1c を缶本体の上端縁に設けた缶胴カール部に嵌合させたとき 、シーリング材3に形成された凹部3aに 缶胴カール部が嵌合し、 缶胴カール部がシーリング材3を極度に圧縮することがない。従って、 蓋1 のかしめ部1d を缶本体 側に絞り込んでかしめる際に、シーリング材3が かしめ部1dと 缶胴カール部の間に巻き込まれてシーリング材3が破断することがない。加えて、シーリング材3の径方向内方側は、 全周に亘って凸部3bが形成されているので、シーリング材3と 缶胴カール部との密着領域が拡大し、従来に比べて気密にシールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキなど各種の液状またはペースト状等の内容物を気密に保管する密閉容器の蓋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化重合型のインキなど、空気に触れると酸化するなどして変質する内容物を密閉容器に保管する場合、内容物を充填した容器内の空気を窒素などの不活性ガスに置換した後、蓋を閉めて密閉している(例えば、特許文献1参照)。
この種の密閉容器として用いられる2ピース缶あるいは3ピース缶では、缶本体と嵌合する蓋の周縁部に発泡性のシーリング材が配設されており、閉蓋時にシーリング材を缶本体の上縁部で圧縮することにより気密に封止している。例えば、特許文献2では、容器蓋殻体の溝に施されるシーラントに、容器口部との係合方向に突出した凸部を 形成することで 密封性を向上させた 容器蓋の技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−104569号公報
【特許文献2】特開2002−308315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の容器蓋では、閉蓋時や開蓋時にシーリング材が缶本体の上縁部で圧縮され、あるいは擦られたりする際に、圧縮荷重や摩擦でシーリング材が破断して微粉等のカスが発生する。そして、このカスが開蓋時に、インキなどの内容物中または印刷機内に落下し、印刷物の品質を損なったり、内容物に混入してその品質を劣化させることがあった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、閉蓋時および開蓋時に、シーリング材のカスが発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、胴部と底部からなる容器本体の上縁部と嵌合する嵌合凹部が周縁部に形成され、前記嵌合凹部に発泡性のシーリング材が配設された容器蓋であって、前記シーリング材は、前記容器蓋の径方向外方側に比べて径方向内方側が厚く形成されていることを特徴とする。
ここで、シーリング材の厚さとは、嵌合凹部の深さ方向の厚さのことである。
本発明では、容器蓋の径方向外方側に比べて径方向内方側が厚く形成されているので、容器本体の上縁部がシーリング材を極度に圧縮することがなく、容器蓋をかしめる際にシーリング材を巻き込むことがない。このため、シーリング材が破断せず、シーリング材からカスが発生することがない。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る容器蓋によれば、容器蓋の径方向外方側に比べて径方向内方側が厚く形成されているので、 閉蓋時および 開蓋時にシーリング材が破断せず、シーリング材からカスが発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る容器蓋は、容器蓋の径方向外方側に比べて径方向内方側を厚く形成することを特徴としており、以下の方法により実現することができる。
【0008】
液状のシーリング材を嵌合凹部に塗布した後、容器本体と略同じ径を有するリング状の突条部を備えた治具の当該突条部を液状のシーリング材に挿入した状態で当該シーリング材を発泡させるようにする。
本製造方法では、液状のシーリング材にリング状の突条部を挿入した状態で、当該シーリング材を加熱発泡して固化させ、固化後にシーリング材から治具を取り外すことにより、容器蓋の径方向外方側に比べて径方向内方側が厚いシーリング材を容易に形成することができる。
【0009】
また、容器蓋の径方向内方側に向いた吐出口を有するノズルから液状のシーリング材を吐出して嵌合凹部にシーリング材を塗布し、当該シーリング材を発泡させるようにしてもよい。
本製造方法では、容器蓋の径方向内方側に向いた吐出口を有するノズルを利用して、嵌合凹部の径方向内方側にシーリング材を厚く塗布した後、当該シーリング材を加熱発泡して固化させるものである。従って、本製造方法による場合、後述するように、ある程度高い粘度を有するシーリング材を用いて、発泡時にシーリング材の表面が平坦にならないようにする必要がある。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面に基いて説明する。
図1は、本発明に係る容器蓋の周縁部を示した部分側断面図であり、容器蓋の裏を上向きにして示している。また、図2は、本発明に係る容器蓋をかしめた状態を示した部分側断面図である。
本実施例における容器は、いわゆる2ピース缶または 3ピース缶と呼ばれる金属缶である。 2ピース缶は、打ち抜き で缶胴と底部を 一体成形した 容器本体と容器 蓋の2部品で構成され、 3ピース缶は、容器本体が、平板を筒状に 丸めて両端縁部 を接合した缶胴 と当該缶胴の一方の開口部 を閉塞する 底部とからなり、容器蓋を加えた 3部品で構成される。
【0011】
容器蓋1(以下では、単に蓋と呼ぶ。)は、 円形平面部からなる天面1a と、 その周囲に形成された天面凹部1bと、さらに その周り に形成された リング状の嵌合凹部1c とから 構成されている。嵌合凹部1c は天面凹部1b と上下逆方向に凹陥部を形成した略逆U字状を呈しており、その内奥部に発泡性の シーリング材3 が嵌合凹部1c に沿ってリング状に配設されている。また、 嵌合凹部1c の外側側部は天面凹部1b より下方(図1では、上方) に延びており、その端部には 外側にカールした 蓋カール部1e が全周に亘って 形成されている。嵌合凹部1c の外側側部のうち、シーリング材3 と蓋カール部1e との間の領域がかしめ部1d に相当する。
【0012】
他方、缶本体(容器本体)2の 上端縁の外部側には、 外側にカールした 缶胴カール部(上縁部)2a が全周に亘って形成されている。また、 缶胴カール部2aの下方 には、 外側に略V字状に突出するビード部2b が全周に亘って形成されており、 ビード部2bを支点として 開蓋工具(オープナ)を用いて 蓋1 を開けることができるようになっている 。
【0013】
嵌合凹部1c に配設されたシーリング材3には、蓋1の径方向外方側となるかしめ部1dの内側に、 缶胴カール部2aと略同形状の凹部3aが 全周に亘って形成されている。このため、 蓋1 の嵌合凹部1c を缶本体2の上端縁に設けた缶胴カール部2a に嵌合させたとき 、シーリング材3に形成された凹部3aに 缶胴カール部2aが嵌合し、 缶胴カール部2aがシーリング材3を極度に圧縮することがない(図2参照)。従って、 蓋1 のかしめ部1d を缶本体2 側に絞り込んでかしめる際に、シーリング材3が かしめ部1dと 缶胴カール部2aの間に巻き込まれてシーリング材3が破断することがない。
加えて、シーリング材3の径方向内方側は、 全周に亘って凸部3bが形成されているので、シーリング材3と 缶胴カール部2aとの密着領域が拡大し、従来に比べて気密にシールすることができる。
【0014】
次に、上記の構成を有する蓋の製造方法のうち、本発明の特徴的部分であるシーリング材の形成過程について説明する。
図3にシーリング材塗布装置4の概略構成図を示す。蓋は裏返しにされた状態でコンベア4g上を搬送され、仮置き部4fに積層される。そして、最下層の蓋が裏返しにされた状態で順次、回転しているターンテーブル4e上にセットされ、ノズル5から液状のシーリング材を滴下して蓋の嵌合凹陥部内にシーリング材を塗布する。シーリング材が塗布された蓋はコンベア4hによりドライヤー(図示省略)まで搬送され、ドライヤーで加熱され、シーリング材は発泡・固化する。
タンク4aに蓄えられた液状のシーリング材は、ポンプ4bからヒーター4c、レギュレータ4dを経由してノズル5に供給され、余ったシーリング材がポンプ4bに戻されるという循環路Hを構成している。ここで、ヒーター4cはシーリング材の液温調節、レギュレータ4dは塗布圧の調節を行っている。
なお、シーリング材としては、液状で流動性があり、加熱により発泡・固化する材料であればよく、例えば塩化ビニールあるいはシリコーン樹脂を主成分とするシーリング材を利用することができる。
【0015】
図4はシーリング材の形成過程を説明した図である。先ず、裏返しにされた蓋1の嵌合凹部1c内にノズル5を挿入して、ノズル5から液状のシーリング材13を滴下し、シーリング材13を全周に塗布する(図4(a)参照)。次いで、リング状の突条部6aを備えた治具6の当該突条部6aをシーリング材13に挿入し(図4(b)参照)、この状態でドライヤーで加熱し、シーリング材13を発泡・固化させる。そして、固化後にシーリング材13から治具6を取り外すことにより、蓋1の径方向外方側に比べて径方向内方側が厚いシーリング材13が形成される。
図5に治具6の形状を示す。治具6は、蓋1の内径とほぼ同じ径を有する円板状の基部6bと、当該基部6bの一方の面の周縁部に沿って形成されたリング状の突条部6aとから形成されている(図5(a)(b)参照)。突条部6aは缶本体2の缶胴カール部2aとほぼ同じ形状とされており、これにより 缶本体2 の缶胴カール部2aと 嵌合する凹部を有するシーリング材を形成することができる。また、突条部6aの表面には、ポリ4フッ化エチレン等のコーティングが施されており、シーリング材13から治具6を容易に取り外せるようになっている。
なお、リング状の突条部6aに代えて、基部6bの一方の面の周縁部に沿ってOリング6cを固着してもよい(図6(c)参照)。
【0016】
次に、シーリング材を形成する他の方法について説明する。
図6は他の方法において使用するノズル5の縦断面を示したものである。ノズル先端部7の吐出口7aは蓋1の径方向内方側を向いている。ノズル5内のニードル7bは上下方向に移動可能とされており、吐出口7aからシーリング材を吐出する場合はニードル7bが上方に移動して吐出口7aを開放し、シーリング材を吐出しない場合はニードル7bが下方に移動して吐出口7aを塞ぐようになっている。
図7は、このノズル先端部7を用いて嵌合凹部1c内にシーリング材23を塗布する方法を示したものである。ノズル先端部7の吐出口7aが蓋1の径方向内方側を向いているので、シーリング材23は蓋1の径方向内方側に厚く塗布され、かしめ部1d側に薄く塗布される。表1に、本方法によるシーリング材の塗布条件の一例を、塩化ビニール系およびシリコーン系のシーリング材について示す。
【0017】
【表1】

【0018】
なお、上表の条件における蓋の内径は140mmであり、また粘度計測時の回転数は20rpmである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る容器蓋の部分側断面図である。
【図2】本発明に係る容器蓋をかしめた状態を示す部分側断面図である。
【図3】シーリング材塗布装置の概略構成図である。
【図4】シーリング材の形成過程を説明するための図である。
【図5】シーリング材の形成過程において使用する治具を示し、(a)はその平面図、(b)はA−A矢視断面図、(c)は他の例を示すA−A矢視断面図である。
【図6】シーリング材を形成する他の方法において使用するノズルの縦断面図である。
【図7】シーリング材を形成する他の方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0020】
1 蓋(容器蓋)
1a 天面
1b 天面凹部
1c 嵌合凹部
1d かしめ部
1e 蓋カール部
2 缶本体(容器本体)
2a 缶胴カール部(上縁部)
2b ビード部
3、13、23 シーリング材
3a 凹部
3b 凸部
4 シーリング材塗布装置
5 ノズル
6 治具
6a 突条部
6b 基部
6c Oリング
7 ノズル先端部
7a 吐出口
7b ニードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と底部からなる容器本体の上縁部と嵌合する嵌合凹部が周縁部に形成され、前記嵌合凹部に発泡性のシーリング材が配設された容器蓋であって、
前記シーリング材は、前記容器蓋の径方向外方側に比べて径方向内方側が厚く形成されていることを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
請求項1に記載の容器蓋を製造する方法であって、
液状のシーリング材を前記嵌合凹部に塗布した後、前記容器本体と略同じ径を有するリング状の突条部を備えた治具の当該突条部を前記液状のシーリング材に挿入した状態で当該シーリング材を発泡させるようにした容器蓋の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の容器蓋を製造する方法であって、
前記容器蓋の径方向内方側に向いた吐出口を有するノズルから液状のシーリング材を吐出して前記嵌合凹部にシーリング材を塗布し、当該シーリング材を発泡させるようにした容器蓋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−91263(P2007−91263A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281859(P2005−281859)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(599132580)ディックテクノ株式会社 (20)
【出願人】(000207540)大日製罐株式会社 (13)
【Fターム(参考)】