説明

容器蓋材用熱収縮性フィルムおよびこれを用いた容器蓋材

【課題】 優れた低温高収縮性を有して、収縮加工後においても、収縮による容器変形防止並びに優れた開封性を有する容器蓋材用熱収縮性フィルムおよびこれを用いた容器蓋材を提供する。
【解決手段】 乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムであって、80℃温水に浸けた際の、10秒間での収縮率が、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに25%以上50%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに4MPa未満であり、かつ、ヘーズ値(JIS K 7105)が5%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムに関し、その目的は鍋焼きうどん用等のアルミニウム容器、味噌スープ等のプラスチック系容器等の食品用蓋材、化粧品・トイレタリー関係の容器インナー用蓋材等の容器蓋材用のフィルムであって、収縮加工時の容器変形がしにくく、更に加工後も開封口が収縮変形少なく、開封性に優れ、本用途に適合した熱収縮性に優れる容器蓋材用熱収縮性フィルムおよびこれを用いた蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等で売られる鍋焼きうどん・味噌スープ等のアルミニウム容器及びPSP(ポリスチレンペーパー)等のプラスチック容器の蓋材用としてポリエステル系樹脂から成る延伸フィルムに印刷を施された熱収縮性蓋材が使用されている。
これらは、あらかじめ、延伸フィルムに印刷を施したあと、アルミニウムやプラスチックの容器に加熱収縮させて、商品として陳列されている。そして、ユーザーはこれを購入後、容器蓋材の一部に施されている開封口より開封して、利用するものである。
【0003】
又、化粧品・トイレタリー関係の容器インナー用蓋材としても同様の加工方法でポリエステル系樹脂から成る延伸フィルムに印刷を施された熱収縮性蓋材が使用されている。
これらの化粧品・トイレタリー関係のインナー用蓋材は無地が多く、又開封口もない場合もある。
【0004】
ところで、これらのポリエステル系樹脂からなる熱収縮性フィルムは、使用後に自然環境下に棄却された場合、安定性が高いが故に分解されることなく自然界に残留するため、景観を害する要因となったり、魚、野鳥その他の生物の生活環境を汚染したり、様々な環境問題の原因となりうることが懸念されている。
【0005】
又、ポリエステル系熱収縮フィルムを用いた容器蓋材は、収縮応力が大きいため、加工時の容器変形がしやすく、Vノッチ等の開封口が収縮加工時の変形が大きく、開封しにくい等の問題がある。
【0006】
一方、これらの環境上の問題を生じない、環境下で分解の生じる生分解性重合体からなる材料について、多くの研究や開発が行われている。その生分解性重合体の例として、ポリ乳酸があげられる。このポリ乳酸は、土壌中において自然に加水分解が進行し、土中に原形が残らず、ついで微生物による無害な分解物となることが知られている。
そこで、環境適性に優れた天然素材容器として、特に容器のフタ部分、窓部分、容器の表面防湿層部分、容器を形成する積層体の構成層部分、容器の結束帯部分、オーバーラップ包装シート状物、粘着ラベルなどに、乳酸系重合体シート状物を用いることが提案されている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−46116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような、現在使用されているポリエステル系熱収縮フィルムは、収縮率を高くした場合には、収縮応力も非常に高くなってしまうため、加工時の容器変形がしやすく、Vノッチ等の開封口が収縮加工時の変形が大きく、開封しにくい等の問題がある。
そこで、収縮応力を抑えるために収縮率を低めに設定する等の工夫がなされている。しかしながら、低収縮率とした場合、きれいに被せるためには収縮加工温度を高温にしたり、加工時間を長くすることが必要で、結局、容器変形を起こしたり、開封性(開封口が加工後残っているか)や容器の内容物に影響を及ぼす等という問題につながる。このようにポリエステル系熱収縮フィルムでは、収縮加工性と容器変形並びに開封性を両立させることが難しく、使いづらいものであった。
【0009】
また、前記特許文献1には、環境適性の観点から、弁当箱や、容器の結束帯として乳酸系重合体からなるシート状物を用いることが開示されているが、具体的な容器蓋材用途の要求品質については何ら開示されていない。
【0010】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決すべくなされたものであり、すなわち、本発明の目的は、優れた低温高収縮性を有して、収縮加工後においても、収縮による容器変形防止並びに優れた開封性を有する容器蓋材用熱収縮性フィルムおよびこれを用いた容器蓋材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の容器蓋材用熱収縮性フィルムは、乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムであって、80℃温水に浸けた際の、10秒間での収縮率が、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに25%以上50%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに4MPa未満であり、かつ、ヘーズ値(JIS K 7105)が5%以下であることを特徴とする。
(2)また、前記乳酸系重合体は、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であることができる。
(3)本発明の容器蓋材用熱収縮性フィルムは、アルミニウムまたはプラスチック製容器の蓋材として用いられることができる。
(4)本発明の容器蓋材は、上記いずれかの容器蓋材用熱収縮性フィルムを用いてなり、さらに開封用の切り込みを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた低温高収縮性を有して、収縮加工後においても、収縮による食品容器変形防止並びに優れた開封性を有し、さらに環境適性に優れた容器蓋材用熱収縮性フィルムおよびこれを用いた容器蓋材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また「乳酸系重合体を主成分とする」とは、熱収縮フィルムの主な機能を決定する成分の一つが乳酸系重合体であり、乳酸系重合体の機能を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよいという意を包含するものである。一般的には熱収縮性フィルム中の乳酸系重合体の含有割合は少なくとも50%以上、好ましくは80%以上である。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に含める意を包含するものである。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
(容器の加工工程)
本件発明を利用できる用途の一つである、食品容器用の加工工程について説明する。
まず、延伸フィルムに印刷を施して、断裁機で商品形状・大きさに併せて、カットする。この時に一面にVノッチ、Wノッチ等の開封用の切り込み等が施される。これを商品が入ったアルミニウム及びPSP等のプラスチック容器に手作業で上部に装着させ、上下挟み込みベルトコンベアーにフィルム毎容器を流し、サイドに組み込まれた熱風ノズルから加熱エアーを吹き出して、容器側面のフィルムを収縮させることにより容器のへりにフィルムが巻き付くように被せられる。更に、上部挟み込みコンベヤーから開放された上で上部に加熱エアーを当ててフィルムにタイト感をもたせるのが一般的な加工方法である。
【0016】
開封用の切り込みパターンはVノッチ、Wノッチ等の形状が一般的であるが商品によっては逆にU字型の突起をもたせて、開封口とする場合もある。本発明の熱収縮フィルムが、開封用の切り込みを設けた容器蓋材に適している理由として、収縮応力が低いことと、引き裂き性が良いことが挙げられる。収縮応力が低いと収縮加工時の加熱収縮においても開封用の切り込みが変形することが少なく、引き裂き性が良いと、スムーズな開封を実現できるからである。
【0017】
(乳酸系重合体)
本発明の乳酸系重合体は、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいう。即ち、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、或いは、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの二種類以上の混合体或いは共重合体を包含する。
【0018】
乳酸系重合体のDL構成比は、D−乳酸とL−乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85が好ましく、さらに、95:5〜85:15又は5:95〜15:85が好ましい。D−乳酸とL−乳酸の構成割合が100:0若しくは0:100である乳酸系重合体は、非常に高い結晶性樹脂となって融点も高く、耐熱性、機械的物性に優れる傾向となる。しかし、熱収縮性フィルムとして使用する場合には結晶性があまりに高いと、延伸時に延伸配向結晶化が進行してしまうため、熱収縮率を調整することが難しくなり、更には延伸条件において非結晶状態のフィルムを得ても、収縮時の熱によって結晶化が進み、収縮仕上がり性が低下してしまう。また、DL−乳酸の共重合体の場合、その光学異性体の割合が増えるに従って結晶性が低下することが知られている。よって、熱収縮性フィルムの材料として乳酸系重合体を使用する場合は、前述のDL構成比の範囲内で適度に結晶性を低下させることが好ましい。なお、上記D体、L体を調整する目的で、D−乳酸とL−乳酸の構成割合が異なる2種類以上の乳酸系重合体をブレンドすることも可能である。
【0019】
本発明の乳酸系重合体は、上記いずれかの乳酸と、他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であっても、また、脂肪族ジオールや脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。ポリ乳酸系重合体に共重合される上記の「他のヒドロキシ−カルボン酸単位」としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3、3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
【0020】
乳酸系重合体に共重合される上記「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、ポリ乳酸系重合体に共重合される上記「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸などが挙げられる。
【0021】
さらに、必要に応じ、少量共重合成分としてテレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いて共重合させてもよい。また、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを共重合させることもできる。
【0022】
乳酸系重合体の重合法としては、縮重合法、開環重合法、その他の公知の重合法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸或いはD−乳酸或いはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持った乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合して任意の組成をもつ乳酸系重合体を得ることができる。この際、ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成及び結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
【0023】
本発明に用いられる乳酸系重合体の重量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。5万以上の分子量であれば好適な実用物性を発揮し、また、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎることなく良好な成形加工性を発揮する。なお、ポリ乳酸系重合体の代表的なものとしては、島津製作所製ラクティシリーズ、三井化学製レイシアシリーズ、カーギル・ダウ製Nature Worksシリーズなどが挙げられる。
【0024】
(脂肪族ポリエステル)
本発明においては、乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステルをブレンドすることができる。使用される脂肪族ポリエステルとしては、乳酸系重合体を除く生分解性脂肪族ポリエステル、例えば、乳酸系重合体を除くポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。なお、本発明で用いる脂肪族ポリエステルは、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは分子量5万〜30万、更に好ましくは10万〜30万のポリマーとしての脂肪族ポリエステルであり、可塑剤として使用される低分子量の脂肪族ポリエステルとは区別される。両者の違いは、配合する乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)の低下の有無に現れる。
【0025】
乳酸系重合体以外の上記の「ポリヒドロキシカルボン酸」としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3、3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体を挙げることができる。
【0026】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、次に説明する脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類或いは2種類以上選んで縮合するか、或いは必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマー(高分子)として得ることができる。この際の「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等を代表的に挙げることができ、上記の「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等を代表的に挙げることができる。なお、適量の芳香族ジカルボン酸を共重合した芳香族脂肪族ポリエステルもこれらの範疇に含まれる。なお、芳香族脂肪族ポリエステルにおいて生分解性を発現させるためには芳香族の合間に脂肪族鎖が存在することが必要であり、この際の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0027】
環状ラクトン類を開環縮合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類又はそれ以上を選択して重合することにより得ることができる。
【0028】
合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイド等との共重合体等を挙げることができる。
【0029】
菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルとしては、アルカリゲネスユートロファスを始めとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックとしての実用特性向上のために、吉草酸ユニット(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。一般的には、HV共重合比は0〜40%である。さらに長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
【0030】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下に少なくとも一つあるのが好ましく、より好ましくは−20℃以下である。これによって、熱収縮性フィルムに適切な低温高収縮、低収縮応力性を付与することが可能となる。
【0031】
脂肪族ポリエステルの含有量は、透明性が求められる用途なので、当該脂肪族ポリエステルを含有する層において、5重量%〜15重量%程度であるのが好ましい。5重量%以上であれば充分な低温高収縮、低収縮応力性が得られ、また15重量%以下であれば透明性も充分に確保することができる。
【0032】
(可塑剤)
本発明の容器蓋材用熱収縮フィルムには、可塑剤を含有させることができる。可塑剤を含有させることによって、透明性を維持しつつ、適切な低温高収縮、低収縮応力性を付与させることが可能となる。特に乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)とを併有する場合には、特定の溶解パラメータ(SP値)を示す可塑剤を含ませることが好ましい。
【0033】
本発明に用いる可塑剤は、その溶解パラメータ(SP値)が、乳酸系重合体のSP値と、脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値の中間値よりも脂肪族ポリエステルのSP値寄りであることが好ましい。即ち、通常(理論的にも)乳酸系重合体のSP値が脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値よりも高いから、その中間値よりも低い値であるのが好ましく、中でも、乳酸系重合体のSP値と脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値との間ではなく、脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値を越えた範囲の値、即ち脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値よりも低い値であるのがより好ましい。
【0034】
具体的に言えば、一般的に乳酸系重合体のSP値は11.12(cal/cm3)1/2であり、脂肪族ポリエステルとしてポリカプロラクトンを用いる場合、そのSP値は10.18(cal/cm3)1/2であるから、可塑剤のSP値は、これらの中間値である10.65よりも低い値が好ましく、中でも10.18よりも低い値であることがより好ましい。その他の脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンサクシネートのSP値は10.87であり、ポリブチレンサクシネート/アジペートのSP値はサクシネートとアジペートの比率により変化するが、ポリブチレンサクシネートのSP値10.87よりも低くなることを考慮すると、本発明に用いることができる可塑剤のSP値の範囲は、8.5〜9.5(cal/cm3)1/2であるのが好ましい。SP値の範囲が、8.5〜9.5(cal/cm3)1/2である可塑剤の例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n―オクチル)アジペート、ジ(n―デシル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(n―ヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)ドデカンジオネート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、上記のSP値は、Fedors法[Polym.Eng.Sci.14(2)152、(1974)]によって算出される値である。
【0035】
上記範囲のSP値を有する可塑剤を添加することによって、脂肪族ポリエステルの量を低減しつつフィルムの低温高収縮、低収縮応力性を高めることができ、透明性の低下も最小限に抑えることができる。このような効果が得られる理由は明確ではないが、次のように考えることができる。即ち、乳酸系重合体に脂肪族ポリエステルを添加することによって低温高収縮、低収縮応力性は向上するが、添加する脂肪族ポリエステルの量が多いと乳酸系重合体が本来有する透明性が損なわれてしまう。そこで、可塑剤によって脂肪族ポリエステルを可塑化することにより、脂肪族ポリエステルを可塑化してその低温収縮性を高めて、より少ない配合量で収縮性を改良できるようにするのが好ましい。しかし、乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体以外)との混合系においては、乳酸系重合体が形成している海相に脂肪族ポリエステルの島が分散する、いわゆる海−島構造を形成するため、添加する可塑剤にの種類よっては乳酸系重合体相(海相)へ移行して乳酸系重合体相(海相)のガラス転移温度を低下させ、脂肪族ポリエステル相(島相)を可塑化しないことがある。これに対して、上記の特定の可塑剤であれば、そのSP値が脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値に近くて相溶性が高いため、海相への移行が抑えられ島相への移行が進み、海相のガラス転移温度の低下が抑えられ、島相を形成している脂肪族ポリエステルの軟質性が向上し、かつ屈折率を低下させることができ、その結果、乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとの屈折率差が小さくなり、透明性を維持しつつ低温高収縮、低収縮応力性を向上させることができるのではないか、と考えることができる。
【0036】
可塑剤の含有量は、乳酸系重合体及び脂肪族ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して3〜10質量部であるのが好ましく、さらに5質量部であるのが好ましい。3重量部以上の添加量であれば、充分な低温収縮性を得ることが出きる。
【0037】
(積層構成)
本発明の容器蓋材用熱収縮性フィルムは、単層だけでなく、積層構成からなることもできる。例えば、乳酸系重合体と、乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂もしくは可塑剤とを含有する中心層を備え、その外側に、乳酸系重合体を90質量%以上含有する外側層を積層してなる構成であることもできる。
【0038】
外側層は、乳酸系重合体を主成分として含有することが、透明性向上の観点から好ましい。乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルは、延伸時の変形挙動が互いに異なるので、両樹脂の混合体を延伸する場合に表面荒れを起こしてヘーズが大幅に上昇して透明性が失われてしまう可能性がある。これは、透過光の拡散が起きるためにヘーズが上昇して透明感が低下するためである。しかし、中心層の表面に透明性の高い乳酸系重合体を主成分とする外側層を積層することにより、透過光の拡散を抑えて透明性を確保することができる。
【0039】
外側層での乳酸系重合体量の含有量は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。ポリ乳酸系重合体量が90質量%以上であれば、延伸時の表面荒れが少なく外側層としての役割を充分に果たすことができる。また、外側層の乳酸系重合体は、中心層を構成する乳酸系重合体と同じ乳酸系重合体であっても、異なるものであってもよい。
【0040】
外側層は、中心層表面の表面荒れの凹凸の平均高さよりも厚くなるように形成するのが好ましい。具体的には、1μm以上、好ましくは2μm以上に形成するのが好ましい。中心層の両外側に外側層を形成する場合、両方の外側層は同一厚み、同一組成とすることが収縮特性やカール防止等の点からは好ましいが、必ずしもそのように限定するものではない。
【0041】
なお、中心層の両外側に外側層を備えていなくても、本発明の特性を阻害しない範囲で、外側層の更に外側に他の層が存在していてもよい。
【0042】
(無機粒子)
また、外層には、フィルム同士の滑り性を向上させる目的で、無機粒子を添加することができる。このような無機粒子は延伸時に表面に移行し、表面を荒らすことによって滑り性を付与する機能を有する。
具体的な無機粒子としては、シリカ、タルク、カオリンなどの無機粒子があげられる。平均粒径は0.5〜5μm程度が好ましい。添加量は、最外層樹脂100重量部に対して、0.01部以上5.0部以下添加する事が好ましく、0.05部以上3.0部以下添加することがより好ましい。
【0043】
(製造方法)
次に、本発明の容器蓋材用熱収縮性フィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明のフィルムの製造方法が下記製造法に限定されるものではない。
【0044】
乳酸系重合体、脂肪族ポリエステル及びその他の成分を所定配合して混合する。この際、諸物性を調整する目的で、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填剤、着色剤、顔料等を添加することができる。この混合物(混合体)を押出機で溶融させ、押出機の途中のベント溝や注入溝からの液添加によって可塑剤を所定量添加して押出す。但し、予め可塑剤を脂肪族ポリエステルに混合しておいてもよい。
押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法などの既存の方法を任意に採用することができる。その際、分解による分子量の低下を考慮して温度設定をする必要がある。
【0045】
溶融押出された樹脂は、冷却ロール、空気、或いは水等で冷却した後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱し、ロール法、テンター法、チューブラ法等によって1軸又は2軸に延伸する。本発明フィルムの用途では二方向に延伸されることが好ましい。この際、延伸温度は、混合比やポリ乳酸の結晶性など熱収縮性フィルムの要求用途に応じて調整する必要があるが、概ね70〜95℃の範囲で制御すればよい。延伸倍率は、混合比やポリ乳酸の結晶性等、容器蓋材用熱収縮性フィルムの具体的な要求用途に応じて調整する必要があるが、概ね主収縮方向においては1.5〜6倍の範囲で適宜決定すればよい。
【0046】
(収縮率と収縮応力)
本発明の容器蓋材用熱収縮フィルムは、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに80℃温水で10秒間の熱収縮率が25%以上50%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力がフィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに4MPa未満でなければならない。すなわち、80℃温水に浸けた際の10秒間での収縮率が25%未満の場合は充分な収縮特性が得られない。80℃温水に浸けた際の10秒間での収縮率が50%超過の場合や80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が4MPa超過の場合は容器変形並びに開封口の変形を抑えることが出来ない。上記の収縮率範囲は最近の内容物の保護、加工高速化に対応するには30%以上であることがより好ましく、容器変形並びに開封口変形の発生確率を抑えることを考慮すると48%以下が好ましい。又、収縮応力はより好ましくは3MPa以下である。
【0047】
(ヘーズ)
透明性については、内容物が綺麗に見えることが非常に要求される用途なので、ヘーズ値(JIS K 7105)を5%以下とすることが必要である。中でも特に3.5%以下とするのが好ましい。ヘーズ値が5%以下であれば、目視ではフィルムによる曇りを感じなく、意匠性としては問題ない。
【0048】
(容器蓋材の加工方法)
印刷を施したフィルムを断裁機で商品形状・大きさに併せて、個々に断裁カットする。この時の形状は八角形の形状にするのが一般的である。更に、八角形の一面に専用の断裁刃でVノッチ、Wノッチ等の形状に切り込みが施される。
【0049】
(生分解)
本発明の容器蓋材用熱収縮フィルムおよびこれを用いた容器蓋材は、埋め立て処分された場合には微生物による分解が可能で、廃棄に伴う種々の問題が生じない。乳酸系重合体を主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂は、土壌中で、エステル結合が加水分解されて分子量が1、000程度に低下し、引き続き土壌中の微生物等により生分解される。
【0050】
一方、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂は、分子内の結合安定性が高く、エステル結合部の加水分解が起こりにくい。したがって、芳香族ポリエステル系樹脂は、土壌中に埋められても分子量の低下は起こらず、微生物等による生分解も起こらない。その結果、長期にわたって土壌中に残存して、廃棄物埋め立て処理用地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なう等の問題が生じる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値および評価は以下に示すようにして行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0052】
(測定および評価方法)
(1)フィルムのMD・TDの収縮率
フィルムを測定方向に70mm、これに対する垂直方向に10mmの大きさに切り取りサンプルを作成した。そして、サンプル測定方向に50mm間隔の標線を付し、80℃の温水バスに10秒間浸漬させ、下記式により求めた。式中、Lは収縮後の標線間隔(単位mm)を表す。

収縮率=[(50−L)/50]×100(%)

【0053】
(2)収縮応力
各フィルムをMD・TDに幅10mm長さ70mmに切り出し、50mmにてチャックしロードセルにタルミが無い様に固定した。その後、80±0.5℃のシリコンバスに試料片を浸し、1分後の応力を測定した。収縮応力は下記の式に当てはめて計算した。

収縮応力(MPa)=ロードセルにかかる応力(N)/試料片の断面積(mm

【0054】
(3)ヘーズ
JIS K7105に準拠してヘーズを測定した。
【0055】
(4)収縮加工性、容器変形、開封性
半径約200mm、高さ約50mmのアルミニウム製の容器に500gの錘を入れて、上部に容器より少し大きい八角形のフィルムを乗せる。フィルムには開封口として八角形の一面にVノッチを入れておく。まず、鉄板を上部に乗せて熱風が当たらないようにして、鉄板を乗せた容器をキャタピラ式ハナガタ製熱風シュリンカー:形式T−350へ容器のサイドに熱風が当たるように流す。熱風温度190℃、時間5秒で通過させた後、鉄版を除去して再度同条件でシュリンカーの中に流して天部を収縮させてタイト感を出す。被覆した容器及びフィルムの状態を比較した。
(4−1)収縮加工性
○:蓋が開かずにタイトに被覆されている。
×:蓋が開くか、または天部に収縮不足によるシワが観察される。
(4−2)容器変形
○:容器変形していない。
×:若干容器が上部に反っている。
(4−3)開封性
○:開封用のVノッチが綺麗に残っていて、蓋が開けやすい。
×:開封用のVノッチが収縮により変形して、蓋を開けにくい。
【0056】
[実施例1]
乳酸系重合体(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、重量平均分子量:20万)を押出機にて190〜210℃で混練りし、200℃でTダイより溶融押出しし、溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に62℃で3倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターにて85℃で3.5倍延伸し、約25μmの熱収縮フィルムを得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
乳酸系重合体(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、重量平均分子量:20万)100質量%を中間層として、前記乳酸系重合体で粒径1.6μmのアルミナシリカが0.15%添加されている樹脂100質量%を外層原料として、中間層、外層の原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中間層を構成する混合樹脂100質量部に対してジ(2−エチルヘキシル)アゼレート(DOZ:SP値8.96)を5質量部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に62℃で3倍のロール延伸、次いで、幅方向に82℃で3.5倍延伸し、厚さ25μmの熱収縮フィルム(積層比:2.5μm/20μm/2.5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
乳酸系重合体(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、重量平均分子量:20万)90質量%、ポリカプロラクトン(ダイセル化学社製「セルグーリンPH−7」、融点:61℃、ガラス転移温度:−58℃)10質量%からなる樹脂を中間層として、前記乳酸系重合体で粒径1.6μmのアルミナシリカが0.15%添加されている樹脂100質量%を外層原料として、中間層、外層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に62℃で3.0倍のロール延伸、次いで、幅方向に82℃で3.5倍延伸し、厚さ25μmの熱収縮フィルム(積層比:2.5μm/20μm/2.5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
実施例1と同じ構成の樹脂を同様の方法で未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に62℃で3.0倍のロール延伸、次いで、幅方向に80℃で3.5倍延伸し、厚さ25μmの熱収縮フィルム(積層比:2.5μm/20μm/2.5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
実施例2と同じ構成の樹脂を同様の方法で未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に62℃で3.0倍のロール延伸、次いで、幅方向に78℃で3.5倍延伸し、厚さ25μmの熱収縮フィルム(積層比:2.5μm/20μm/2.5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例3]
乳酸系重合体(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、重量平均分子量:20万)80質量%、ポリカプロラクトン(ダイセル化学社製「セルグーリンPH−7」、融点:61℃、ガラス転移温度:−58℃)20質量%からなる樹脂を中間層として、前記乳酸系重合体で粒径1.6μmのアルミナシリカが0.15%添加されている樹脂100質量%を外層原料として、中間層、外層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に62℃で3.0倍のロール延伸、次いで、幅方向に82℃で3.5倍延伸し、厚さ25μmの熱収縮フィルム(積層比:2.5μm/20μm/2.5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
[比較例4]
以下の共重合ポリエステル樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を85:15の割合で混合して原料樹脂とし、押出機にて250℃で混練りし、250℃でTダイより溶融押出しし、溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に72℃で4倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターにて75℃で5倍延伸し、約25μmの熱収縮フィルムを得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
<共重合ポリエステル樹脂>
ジカルボン酸成分がテレフタル酸、ジオール成分がエチレングリコールであり、共重合成分がイソフタル酸10.8モル%(全ジカルボン酸成分に対する割合)と1、4−シクロヘキサンジメタノール19.2モル%(全ジオール成分に対する割合)である共重合ポリエステル樹脂に平均粒径2.4μmの無定形シリカ(富士シリシア社製「サイリシア320」)を0.3重量%加えて調製した。
【0063】
[比較例5]
比較例4と同じ構成の樹脂を同様の方法で未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に72℃で4.0倍のロール延伸、次いで、幅方向に90℃で5倍延伸し、厚さ25μmの熱収縮フィルム(積層比:2.5μm/20μm/2.5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実施例1、2、3はいずれも優れた低温高収縮性を有して、収縮加工後においても、収縮による食品容器変形防止並びに優れた開封性を有している。
本発明によれば、優れた低温高収縮性を有して、収縮加工後においても、収縮による食品容器変形防止並びに優れた開封性を有し、さらに環境適性に優れた食品容器蓋材用ポリ乳酸系熱収縮性フィルムを得ることができる。
【0066】
これに対して、比較例1は収縮応力が高く、又比較例2は収縮率が高いため、容器変形並びに開封部の変形が見られた。比較例3は加工適性は優れているがヘーズが高かった。比較例4は収縮応力が高いため、容器変形並びに開封部の変形が見られた。比較例5は、収縮率が低いため、蓋は開かないものの天部に収縮不足によるシワが観察された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムであって、80℃温水に浸けた際の、10秒間での収縮率が、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに25%以上50%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が、フィルムの引取り方向(MD)およびその直交方向(TD)ともに4MPa未満であり、かつ、ヘーズ値(JIS K 7105)が5%以下であることを特徴とする容器蓋材用熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記乳酸系重合体は、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であることを特徴とする請求項1に記載の容器蓋材用熱収縮性フィルム。
【請求項3】
アルミニウムまたはプラスチック製容器の蓋材として用いられることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の容器蓋材用熱収縮性フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の容器蓋材用熱収縮性フィルムを用いてなり、さらに開封用の切り込みを設けたことを特徴とする容器蓋材。



























【公開番号】特開2006−273346(P2006−273346A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92324(P2005−92324)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】