説明

容器詰めミルク入りコーヒー飲料

【課題】乳化剤が添加された容器詰めミルク入りコーヒー飲料において、開栓時の噴出しを抑制する技術を提供する。
【解決手段】乳化剤と水酸化ナトリウムとミルク成分を含有する容器詰めコーヒー飲料において、ミルク成分による脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)を一定の範囲とすることによって、起泡性や開栓時の噴出しが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミルク成分を含有する陽圧容器詰め飲料、特にミルク入りコーヒー飲料に関する。より詳細には、振盪直後の開栓時に噴出しが抑制された陽圧容器詰めミルク入りコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコーヒー分を原料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造される容器詰コーヒー飲料が数多く開発されており、容器の形態で分類すると、缶入り、ペットボトル入り、紙パック入りなどが挙げられる。これら容器詰コーヒー飲料のうち、缶入りコーヒー飲料、特に陽圧缶入りコーヒー飲料は、内圧を高くすることによって缶容器の変形を防ぐことができるため、缶容器として比較的軟質な材料を用いることができるという利点がある。一方で、自動販売機からの取り出し、車による運搬などの要因で振盪された場合や消費者が開缶前に缶を振盪した場合に、缶内のヘッドスペースに相当量の泡が発生し、開缶と同時に泡が飛沫となり、開口部より周辺に飛散して消費者に不快感を与えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−186425号公報
【特許文献2】特開2009−268397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年になって、飲用しやすい容器形態として、再栓可能な蓋部を有する容器、具体的には、ペットボトルやボトル缶などの需要が高まっており、コーヒー飲料では、その芳香を楽しむために、口径を大きくしたボトル缶が開発されている。ボトル缶飲料では、口径が広く開栓部が広いために、陽圧缶の中でも特に、開栓時に飲料が噴出しやすいことが問題となっている。また、コーヒー飲料の製造工程や製造後の流通・貯蔵、さらには自動販売機などにおける加温時の沈殿を防止するため、コーヒー飲料には乳化剤が一般に使用されるが、この乳化剤によって開栓時に噴出しやすくなることがある。
【0005】
乳化剤を添加したコーヒー飲料において、pH調整剤である重曹(炭酸水素ナトリウム)の使用量を減らしてNaOHを添加すると開栓時の噴出しが抑制されることが見出されている(特許文献2)。しかし、ミルク成分を添加したコーヒー飲料では、この技術による開栓時の噴出し抑制効果がミルク成分によって打ち消され、陽圧缶(特にボトル缶)を採用する際の大きな障害となっていた。
【0006】
本発明の目的は、乳化剤が添加された容器詰めミルク入りコーヒー飲料において、開栓時の噴出しを抑制する技術を提供することにある。また、本発明の目的は、開栓時の噴出しが防止された陽圧缶(特にボトル缶)入りのミルク入りコーヒー飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、乳脂肪分を増やすことによって噴出しが極めて抑制されることを見出した。さらに、乳脂肪分の添加量に比例して噴出しが抑制されるであろうという予想に反して、驚くべきことに無脂乳固形分と乳脂肪分が一定の比率の場合に大きな噴出抑制効果が見られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
これに限定されるものではないが、本発明は以下を提供する。(1) 乳化剤と水酸化ナトリウムとミルク成分を含有し、ミルク成分による脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)が以下の範囲:
1.29X+0.17≧Y≧3.1X−2.1
である、容器詰めコーヒー飲料。
(2) 乳化剤と水酸化ナトリウムの重量比が1:1〜1.5である、(1)に記載の飲料。
(3) 陽圧容器に充填されている、(1)または(2)に記載の飲料。
(4) 飲料の内容量が250mL以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料。
(5) 飲料のpHが5.0〜7.0である、(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料。
(6) 乳化剤、水酸化ナトリウム、ミルク成分をコーヒー分に添加して調合液を得る工程、調合液を容器に充填する工程、を含み、飲料に含まれる脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)が以下の範囲:
1.29X+0.17≧Y≧3.1X−2.1
である、容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
(7) 乳化剤、水酸化ナトリウム、ミルク成分をコーヒー分に添加することを含み、飲料に含まれる脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)が以下の範囲:
1.29X+0.17≧Y≧3.1X−2.1
である、容器詰めコーヒー飲料における開栓時の噴出しを抑制する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、乳化剤が添加されたコーヒー飲料であって、ミルク成分を添加したにもかかわらず開栓時の噴出しが抑制された容器詰めミルク入りコーヒー飲料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、無脂乳固形分と乳脂肪分の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、コーヒー飲料とは、コーヒー分を原料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造される飲料製品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0重量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これも、本発明における乳入りコーヒー飲料として挙げられる。
【0012】
コーヒー分とは、コーヒー豆由来の成分を含有する溶液のことをいい、例えば、コーヒー抽出液、すなわち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水などを用いて抽出した溶液が挙げられる。また、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒーなどを、水や温水などで適量に調整した溶液も、コーヒー分として挙げられる。
【0013】
原料のコーヒー豆の栽培樹種は、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが挙げられ、また、品種名も特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられる。焙煎の度合い(浅煎り、中煎り、深煎りの順に基本的に3段階で表現される)についても特に限定されず、また、コーヒーの生豆も用いることができる。さらに、複数品種のコーヒー豆をブレンドして用いることもできる。
【0014】
焙煎されたコーヒー豆の粉砕度合い(粗挽き、中挽き、細挽きなどに分類される)についても特に限定されず、各種の粒度分布の粉砕豆を用いることができ、水や温水などを用いて、各種コーヒー抽出装置(ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、連続式など)で抽出することができる。また、コーヒー焙煎豆の抽出温度やコーヒー分の抽出度合いが高いほど加熱殺菌後の沈殿物が発生し易い傾向にあるが、温度条件や抽出度合いは特に限定されない。
【0015】
本発明のミルク入りコーヒー飲料におけるコーヒー分の含有量は、特に限定されないが、コーヒー固形分換算で0.5〜2重量%程度である。近年、容器詰コーヒー飲料として、コーヒー本来の風味を楽しむことを目的に、コーヒー固形分が比較的高いものが多く流通されている。ここでコーヒー固形分とは、コーヒー分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させ水分を除いた後の、乾固物の重量のことをいう。
【0016】
本発明のミルク入りコーヒー飲料には乳化剤が添加される。ここで、乳化剤とは、乳化の効果を持つ添加物のことをいい、広義の界面活性剤の一種である。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、コーヒー飲料の製造時の加熱殺菌工程およびその後の流通、貯蔵もしくは自動販売機の加温時に生じうる沈殿を防止するために一般的に使用されるものを全て含む。
【0017】
本発明のミルク入りコーヒー飲料における乳化剤の量は、使用する乳化剤の種類や目的によって選択されるものであるが、通常、飲料全体に対し、0.001〜0.05重量%程度である。乳化剤の含有量が0.001重量%程度より少ないと沈殿防止作用が十分ではない。一方、一定量以上の乳化剤を添加してもその効果は増大されないため経済的に不利であり、コーヒー飲料の風味を大きく損なうことがある。特に、コーヒー固形分が多いコーヒー飲料では、沈殿防止のため乳化剤が添加されるが、乳化剤特有の香味がコーヒー本来の風味を低下されることがある。そのため、乳化剤含有量の上限は、0.05重量%、好ましくは0.015重量%程度である。
【0018】
本発明のミルク入りコーヒー飲料には水酸化ナトリウムが添加されるが、これにより、乳化剤を含有するコーヒーにおける香味の問題、具体的には乳化剤特有の雑味をマスキングし、後味に感じるぬめり(後味のキレの悪さ)等を改善することができる。本発明で使用する水酸化ナトリウムは食品添加物であり、固形物や水溶液の状態で、市販品として入手できる。純度は、食用に適する限り特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの結晶物では70.0〜75.0重量%、水酸化ナトリウムの無水物では95.0重量%以上のものなどがある。結晶物の性状は、粉末状、粒状、小球状、片状、棒状などがあり、特に限定されない。
【0019】
水酸化ナトリウムを添加するタイミングは、コーヒー分を抽出した後でコーヒー分に添加することが好ましいが、コーヒー分を抽出する工程にて、使用する水や温水などに事前に添加しておいてもよい。
【0020】
水酸化ナトリウムの添加量は特に制限されず、使用する乳化剤の種類や量により適宜調節することができる。好ましい態様において、水酸化ナトリウムの添加量は、乳化剤に対し、1〜5倍量(重量比)程度、好ましくは2.5〜3.5倍量程度である。このような添加量であれば、乳化剤特有の味(雑味)をマスキングでき、後味に感じるぬめり(後味のキレの悪さ)を改善できる。
【0021】
本発明のコーヒー飲料はミルク入りであり、ミルク成分が添加される。本発明においてミルク成分とは、コーヒー飲料にミルク風味やミルク感を付与するために添加する成分を指し、主に乳、牛乳及び乳製品のことをいう。例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料などが挙げられ、乳製品としては、クリーム、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳などが挙げられる。また、発酵乳や乳酸菌飲料も乳分として挙げられる。ミルク成分としては、風味の面から、牛乳またはクリームを使用することが好ましい。クリームとは、乳脂肪含量(以下、「脂肪率」ということがある)が18質量%以上のものである。
【0022】
本発明においては、噴出し抑制効果の面から、脂肪分の量(%)をX、無脂乳固形分の量(%)をYとした場合、XおよびYを一定範囲とすることが好ましい。具体的には、Y≧3.1X−2.1かつY≦1.29X+0.17(ただし、X、Y≧0)とすると、開栓時の噴出しを効果的に抑制することができるため望ましい。
【0023】
本発明の乳入りコーヒー飲料における脂肪分の含有量は特に制限されないが、噴出し抑制の観点から、0.1〜1.1重量%含有していることが望ましく、0.12〜0.84重量%含有していることがより望ましく、0.12〜0.66重量%含有していることがさらに望ましく、0.30〜0.50重量%含有していることがより一層望ましく、0.36〜0.42重量%含有していることが最も好ましい。
【0024】
本発明において無脂乳固形分とは、ミルク成分の全固形分から乳脂肪分の固形分を差引いた成分を意味し、全固形分は常圧加熱乾燥法、乳脂肪分はゲルベル法によって測定することができる。本発明における無脂乳固形分の量は特に制限されないが、噴出し抑制の観点から、0〜1.6重量%であることが望ましく、0.06〜0.86重量%であることがより望ましく、0.10〜0.45重量%であることがさらに望ましく、0.25〜0.40重量%であることがより一層望ましく、0.31〜0.37重量%であることが最も好ましい。
【0025】
さらに本発明のミルク入りコーヒー飲料には、所望する嗜好や設計に応じて、適宜、甘味成分及びpH調整剤等の成分を添加してもよい。
甘味成分とは、甘味を呈する成分のことをいう。例えば、ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチンなどが挙げられる。
【0026】
pH調整剤とは、殺菌時におけるpH低下を緩和しうる成分で、水に溶解した時にアルカリ性を示す物質を指す。具体的には、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムなどが挙げられる。pH調整剤として重曹を用いる場合には、その添加量は、飲料全体に対し0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下がよい。0.1重量%を超えると、陽圧缶入りコーヒー飲料において、開栓時の噴出し頻度および噴出し量が多くなる傾向にある。
【0027】
本発明は、水酸化ナトリウムをコーヒー飲料の香味改善剤として使用するものであるが、上記pH調整剤の一部又は全部として用いることもできる。本発明のミルク入りコーヒー飲料においては、水酸化ナトリウム及び/又は上記に例示したpH調整剤を用い、殺菌後の製品のpH値が5.0〜7.0、好ましくは5.3〜6.5となるように調整する。
【0028】
また、本発明のミルク入りコーヒー飲料には、上記成分の他、酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウムなど)、及び香料(コーヒーフレーバー、ミルクフレーバーなど)など、コーヒー飲料に通常用いられる成分を添加してもよい。
【0029】
本発明の容器詰ミルク入りコーヒー飲料は、水酸化ナトリウム及び乳化剤を含有するコーヒー分を殺菌し容器に充填して製造する。より具体的には、コーヒー分に乳化剤及び水酸化ナトリウムを添加して、必要に応じて上記各種成分(乳分、甘味成分、pH調整剤など)を添加して調合液を得、この調合液を容器に充填して加熱殺菌するか、又は調合液を加熱殺菌した後に容器に充填して、製造する。
【0030】
加熱殺菌及び充填方法は、特に限定されないが、例えば、レトルト殺菌、ホットパック、無菌充填などを用いることができ、内容物の性状や容器等によって殺菌条件を適宜設定すればよい。調合液が充填される容器の形態も、特に限定されず、缶、ペットボトル、ガラス瓶、紙容器などを用いることができる。特に、本発明のミルク入りコーヒー飲料は、陽圧容器における噴出しを防止するという効果を有するので、陽圧容器の形態、例えば口径を大きくしたボトル缶入り飲料の形態は、本発明の好ましい態様である。本発明の好ましい態様において容器内の陽圧は、0.04〜2.5kg/cm程度であり、より好ましくは0.06〜1.0kg/cm程度である。すでに述べたように、本発明のミルク入りコーヒー飲料は、水酸化ナトリウムの添加により乳化剤に起因する風味低下を抑制し、後味のキレの悪さを改善しており、後味のさっぱり感がより要求される比較的大容量の飲料、具体的には内容量が250mL以上、好ましくは300mL以上の容器詰飲料に本発明を適用すると、本発明の効果を大きく享受できるため好ましい。内容量の条件は特に限定されないが、2L以下であることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、容器内のヘッドスペースを小さくすることができる。従来、噴出し防止の観点から、陽圧容器入り飲料においてヘッドスペースを大きくする方法がとられることもあったが、本発明のコーヒー飲料では、容器内のヘッドスペース率が27%以下とすることができ、例えば、25%以下や16%以下の容器詰コーヒー飲料として提供することができる。ここで、ヘッドスペース率とは、コーヒー飲料の容量に対するヘッドスペースの割合(ヘッドスペース率=(ヘッドスペース容量)/(コーヒー飲料容量)×100)として算出される値である。また、本発明のコーヒー飲料は、広口(口径がΦ28〜38mm)のボトル缶に充填しても、開栓時の噴出しを抑制することができる。
【0032】
なお、本発明における泡噴きの抑制とは、容器詰コーヒー飲料を激しく振盪し、振盪後一定時間における液面からの泡の高さ(起泡距離)によって評価することができる。また、開栓時の噴出し抑制は、容器詰飲料を激しく振盪し、振盪直後に開栓した際の飲料の噴出しを確認することによって評価することができる。
【0033】
ある観点からは、本発明は、容器詰めミルク入りコーヒー飲料の製造方法である。本発明の製造方法は、乳化剤、水酸化ナトリウム、ミルク成分をコーヒー分に添加して調合液を調製する工程、調合液を加熱殺菌する工程、調合液を容器に充填する工程を含む。また別の観点からは、本発明は、容器詰めミルク入りコーヒー飲料における開栓時の噴出しを抑制する方法であって、乳化剤、水酸化ナトリウム、ミルク成分をコーヒー分に添加する工程を含む。
【0034】
以下、本発明を実施例を示しつつ具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明において、濃度等は重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【実施例】
【0035】
コーヒー飲料の製造
ミルク入りコーヒー飲料を以下の方法により製造した。まず、インスタントコーヒー(イグアス社製)に適量の温水を添加してコーヒー分(コーヒー固形分:1.3重量%)を得た。これに乳化剤(消泡剤)としてアワブレークG109(太陽化学株式会社製)を飲料全体に対し0.008重量%添加、ミルク成分として成分無調整牛乳(高梨乳業社製)を飲料全体に対し5.53重量%添加した。さらに、pH調整剤として、飲料全体に対し0.03重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、pH6.0のコーヒー飲料を得た。
【0036】
また、同様の手順により、乳固形分は同等になるように段階的に成分無調整牛乳を47%生クリーム(明治乳業社製)に置き換え、ミルク成分を表1に示すように配合して種々のミルク入りコーヒー飲料を製造した。
【0037】
振盪による起泡しやすさの評価
上記のように製造したミルク入りコーヒー飲料190gを、500mlの透明な耐熱圧ストレートボトル(株式会社吉野工業所製)に充填して密封した。この容器詰コーヒー飲料を上下に10回激しく振盪し、液面からの泡の高さ(起泡距離)を経時的に写真撮影し、振盪後30秒の時点における起泡距離を画像解析によって評価した。
【0038】
その結果を表1および図1に示すが、飲料全体に対する脂肪分の量(%)をX、無脂乳固形分の量(%)をYとして各サンプルをプロットした場合、Y≧3.1X−2.1かつY≦1.29X+0.17(ただし、X、Y≧0)で示される領域のサンプルは、起泡距離が2cm以下と特に小さく、起泡が効果的に抑制されていた。
【0039】
開栓時の噴出しの評価
上記のように製造したミルク入りコーヒー飲料300gを、広口ボトル缶(ボトル容量343mL、口径(内径)Φ31mm)に缶内圧が0.09kg/cm、ヘッドスペース率が約13%となるように充填し、レトルト加熱殺菌(120〜125℃、5〜15分)して、容器詰ミルク入りコーヒー飲料を得た。得られた容器詰飲料を上下に10回激しく振盪し、振盪直後に開栓して噴出しを観察した。
【0040】
結果を表1に示すが、飲料全体に対する脂肪分の量(%)をX、無脂乳固形分の量(%)をYとした場合、Y≧3.1X−2.1かつY≦1.29X+0.17(ただし、X、Y≧0)の範囲では開栓直後の噴出しが観察されなかった。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤と水酸化ナトリウムとミルク成分を含有し、ミルク成分による脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)が以下の範囲:
1.29X+0.17≧Y≧3.1X−2.1
である、容器詰めコーヒー飲料。
【請求項2】
乳化剤と水酸化ナトリウムの重量比が1:1〜1.5である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
陽圧容器に充填されている、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
飲料の内容量が250mL以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
飲料のpHが5.0〜7.0である、請求項1〜4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
乳化剤、水酸化ナトリウム、ミルク成分をコーヒー分に添加して調合液を得る工程、
調合液を容器に充填する工程、
を含み、飲料に含まれる脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)が以下の範囲:
1.29X+0.17≧Y≧3.1X−2.1
である、容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
【請求項7】
乳化剤、水酸化ナトリウム、ミルク成分をコーヒー分に添加することを含み、飲料に含まれる脂肪分の重量%(X)と無脂乳固形分の重量%(Y)が以下の範囲:
1.29X+0.17≧Y≧3.1X−2.1
である、容器詰めコーヒー飲料における開栓時の噴出しを抑制する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−191922(P2012−191922A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60349(P2011−60349)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】