説明

容器

【課題】 溶着不良があるか否かを目視により確認でき、その結果として製造効率を改善できるインクカートリッジなどの容器を提供すること。
【解決手段】 インクカートリッジ1は、、透明又は半透明な樹脂材料で構成される本体ケース1bの当接部22bのテーパ面と着色された樹脂材料で構成される蓋部材1aの挿入部10の下端角部Eとが当接されて超音波溶着される。よって、その溶着部Aを、蓋部材1aの色によって、透明又は半透明である本体ケース1bを介して目視することができる。つまり、インク漏れを生じないように溶着されていれば、溶着部Aが全周にわたって連続した線又は帯として観察され、一部に溶着されなかった箇所があれば、溶着部Aが不連続に観察され、不良品として排除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部に開口を有する部材と、その開口を覆って装着される部材とで構成され、その接合部にシール性が要求される容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一部に開口を有する部材と、その開口を覆って装着される部材とで構成され、その接合部にシール性が要求される容器として、例えば、特開平9−94977号公報に開示されているインクカートリッジ(容器)が挙げられる。この特開平9−94977号公報に開示されているインクカートリッジは、インク収容部を有し一面例えば上部が開放された箱形状のインクカートリッジ本体(ケース)と、該インクカートリッジ本体の上部に超音波による溶着などによって接合されインクカートリッジ本体の上部開口を閉塞する蓋体(蓋部材)とにより主に構成されており、インク収容部にインクが収容されている。このようなインクカートリッジにおけるインクカートリッジ及び蓋体は不透明な共通の材料で作製されるのが通常である。
【特許文献1】特開平9−94977号公報(第5図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インクカートリッジ本体と蓋体との接合は、上部開口の全周にわたって連続して行われる必要があり、一部でも不良があると、インクカートリッジの運搬などの取り扱い中にインクが漏れることがある。しかし、インクカートリッジ本体と蓋体とが不透明な共通の部材で構成されているために、これらの部材が接合された段階で、その接合状態を目視によって確認することは不可能であった。よって、一般的には、インクカートリッジ内部からリークがあるか否かを確認するリークチェックは、製造された全てのインクカートリッジに対して、リークチェック用の設備を用いて行われるので、製造効率が悪いという問題点があった。
【0004】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、接合不良があるか否かを目視により確認でき、その結果として製造効率を改善できるインクカートリッジなどの容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために請求項1に記載の容器は、一部に開口を有する第1の部材と、その開口を覆って前記第1の部材に装着される第2の部材とで、流体を内部に収容するものであって、前記第1の部材と第2の部材とが相互に溶着可能な樹脂材料で構成されるとともに、前記第1の部材が透明または半透明の樹脂材料で、第2の部材が着色された樹脂材料で構成され、前記第2の部材は、前記開口に挿入される挿入部を備え、前記第1の部材は、前記開口を囲む側壁の内面の、前記開口から前記挿入部の挿入方向に間隔を置いた位置に、前記挿入部が前記開口の全周に対応して連続して当接する当接部を備え、前記第1の部材と第2の部材とは、前記挿入部と前記当接部との当接部分を溶着させて接合されている。
【0006】
請求項2記載の容器は、請求項1に記載の容器において、前記当接部は、前記第1の部材の側壁の内面に、前記開口と平行な面に沿って環状に連続して設けられた段状部であり、前記挿入部は、前記段状部と当接する先端部を前記段状部に対応して環状に連続し備える。
【0007】
請求項3記載の容器は、請求項2に記載の容器において、前記段状部と前記挿入部の先端部との一方は、両者の当接方向に対して傾斜するテーパ面である。
【0008】
請求項4記載の容器は、請求項1から3のいずれかに記載の容器において、前記挿入部と前記当接部との当接部分と、前記開口の端面との間の、前記挿入部と前記第1の部材の側壁の内面との間は、非溶着状態にある。
【0009】
請求項5記載の容器は、請求項1から4のいずれかに記載の容器において、前記第1の部材は、一つの面を開口したケースであり、前記第2の部材はその開口を覆う蓋部材である。
【0010】
請求項6記載の容器は、請求項5記載の容器において、前記収容する流体は、インクであり、記録装置本体に着脱可能に装着されてそのインクを記録装置本体に供給する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の容器によれば、透明又は半透明な樹脂材料で構成される第1の部材の当接部において、着色された樹脂材料で構成される第2の部材の挿入部が、第1の部材の開口の全周に対応して連続して当接して溶着される。よって、その溶着された部分を、第2の部材の色によって、透明又は半透明である第1の部材を介して目視することができる。
【0012】
そのため、当接部と挿入部とが部分的に溶着されない箇所、すなわち、溶着不良部分を、明確な色の掠れや不連続部分として目視し、不良品として排除することができる。
【0013】
請求項2に記載の容器によれば、請求項1に記載の容器の奏する効果に加えて、第1の部材の側壁の内面に開口と平行な面に沿って環状に連続して設けられた段状部と、その段状部に対応して環状に連続する先端部とが当接するので、当接部と挿入部とが適切に溶着されていれば、溶着部分は、第1の部材の側壁に沿って環状に連続する線や帯などとして目視されることになる。よって、溶着不良部分が存在するか否かの判断を、第1の部材の側壁に沿って目視される溶着部分に、明確な色の掠れや不連続部分があるか否かを確認するだけで容易に行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の容器によれば、請求項2に記載の容器の奏する効果に加えて、互いに当接する段状部と挿入部の先端部との一方が、両者の当接方向に対して傾斜するテーパ面に構成されているので、開口の全周において、挿入部の先端部がテーパ面にほぼ均一に当接しやすく、また、溶着の進行に伴い、第1及び第2の部材を相互に接近する方向に押圧させる力により、挿入部の先端部がテーパ面に対して潰れ、全周にわたって溶着不良を少なくすることができる。
【0015】
請求項4に記載の容器によれば、請求項1から3のいずれかに記載の容器の奏する効果に加えて、挿入部と当接部との当接部分と、開口の端面との間の、挿入部と第1の部材の側壁の内面との間が、非溶着状態とされている。よって、溶着に伴い発生する溶着ばりが非溶着領域にとどまり、外部へはみ出すことが防止される。また、溶着状態の確認のために第1の部材の側壁を外側から目視した場合に、第1の部材の開口側から溶着部分までの部分で第2の部材の色が空間を介して目視され、その部分に隣接して、挿入部と当接部との溶着部分が、上記部分の色よりも濃い色として目視される。従って、挿入部と当接部との溶着部が開口の縁から所定間隔を置いた線や帯として観察でき、溶着状態の判断を適切に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の容器によれば、請求項1から4のいずれかに記載の容器の奏する効果に加えて、第1の部材が一つの面を開口したケースであり、第2の部材がその開口を覆う蓋部材であるので、ケースに設けられた開口を蓋部材で覆った場合に、その蓋部材とケースとの溶着状態を、ケースの側面を介して判断することができるという効果がある。
【0017】
請求項6に記載の容器によれば、請求項5記載の容器の奏する効果に加えて、記録装置本体に着脱可能なインクカートリッジにおいて、ケースと蓋部材との溶着部が、インク漏れを生じないか否かを、ケースの側面を介して判断することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例におけるインクカートリッジ1の断面図である。インクカートリッジ1は、インクを記録媒体に向けて吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に着脱自在に装着され、その記録ヘッドに供給するインクを収納するためのものである。
【0019】
インクカートリッジ1は、インクを貯留する空間となる貯留室20を内部に有している。インクカートリッジ1は、その貯留室20を形成する底壁21と周壁22とを有し上面が開口した本体ケース1bと、その本体ケース1bの開口上面を覆う蓋部材1aとにより主に構成されている。蓋部材1aと本体ケース1bとは、超音波溶着などの方法によって溶着(固着)され、それによって、貯留室20内部が密閉される。
【0020】
底壁21には、貯留室20内のインクを外部に供給するために外部に開口したインク供給口25が形成されている。このインク供給口25は、底壁21の下面から一体に突出形成された筒状壁25a内に形成されている。また、底壁21には、貯留室20内に大気を導入するために外部に開口した大気導入口26が形成されている。この大気導入口26は、底壁21の下面から一体に突出形成された筒状壁26a内に形成されている。各筒状壁25a,26a内には、常態では閉塞状態にある弁27がそれぞれ設けられ、インクカートリッジ1がインクジェット記録装置における所定位置に装着されると、大気導入口26には、インクカートリッジ1内に大気を導入するための大気導入管(非図示)が挿入され、一方で、インク供給口25にはインクをインクジェット記録装置に導出するためのインク供給管(非図示)が挿入され、それぞれ弁27を開放してインクカートリッジ1の内部と連通される。
【0021】
次に、図2から図4を参照して、蓋部材1a及び本体ケース1bについて説明する。図2は、図1におけるX部分の拡大図である。また、図3は、図2の矢印III方向から見たインクカートリッジ1の側面図であり、図3(a)は、蓋部材1aと本体ケース1bとが貯留室20からのリークを生じないように溶着されている状態を示した側面図であり、図3(b)は、蓋部材1aと本体ケース1bとの溶着が不十分である状態を示した側面図である。また、図4は、図1におけるX部分について、蓋部材1aと本体ケース1bとが溶着される前の状態を示した断面図である。
【0022】
上述したように蓋部材1aと本体ケース1bとは溶着されることによって接合されるので、蓋部材1a及び本体ケース1bは、相互に溶着可能な樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂など)から構成されている。本実施例では、本体ケース1bが、透明もしくは半透明な熱可塑性樹脂材料により構成される一方で、接合部Aに対してインクカートリッジ1の内側に配置される蓋部材1aが、例えば黒色に着色された熱可塑性樹脂材料により構成されている。
【0023】
蓋部材1aは、本体ケース1bの周壁22の内周に沿って連続した環状に形成される挿入部10を備えており、挿入部10を本体ケース1bの開放された上面から挿入することによって、本体ケース1bに装着される。
【0024】
一方で、本体ケース1bは、周壁22の内面に、本体ケース1bの開口上面から深さ方向に周壁22の外面と平行に所定幅で形成された内面22aと、その面22aの深さ方向下端から本体ケース1bの内方へ段状に突出した当接部22bとを本体ケース1bの開口の全周にわたって連続した環状に形成して備えている。当接部22bは、挿入部10の外周10aの下端角部Eと前記挿入方向に対向する段状部をなし、本体ケース1bの内側でかつ底部方向に向け傾斜したテーパ面に形成されている。
【0025】
挿入部10を本体ケース1bに挿入したとき、挿入部10の下端角部Eが当接する当接部22bのテーパ面上の位置の本体ケース1bの開口上面からの深さH1は、挿入部10の本体ケース1bへの挿入深さH2よりも小さく形成されている。
【0026】
図4に示すように、本体ケース1bと蓋部材1aとの接合は、挿入部10を本体ケース1bの開口上面から挿入し、その挿入方向(矢印Y方向)に治具により挿入部10の外周10aの下端角部Eを当接部22bのテーパ面に押しつけ、超音波振動をかけて下端角部Eと当接部22bとを溶融させることで行う。このとき、テーパ面が下端角部Eの挿入方向に対して傾斜しているので、開口の全周において、テーパ面と下端角部Eとが良好に当接し、また、溶着の進行にともない、前記Y方向の押圧力により下端角部Eがテーパ面に対して潰れ、溶着部Aが本体ケース1bの深さ方向に所定幅の線又は帯となって開口の全周にわたり形成される。このため、開口の全周にわたって溶着不良が少なく接合される。
【0027】
また、その溶着部Aよりも本体ケース1bの開口側において、挿入部10の外周10aと周壁22の内面22aとの間に、非溶着状態の隙間50が形成されており、この隙間50により、溶着の際に生成された溶着ばりが、インクカートリッジ1の外部にはみ出すことが防止されるので、インクカートリッジの外観を損ねることがない。
【0028】
本実施例では、本体ケース1bが透明もしくは半透明材料により形成されているから、上記のように溶着された溶着部Aを、本体ケース1bの外側から目視することができる。
【0029】
この場合、蓋部材1aと本体ケース1bとが、その両者間からインクが漏れることなく全周にわたって溶着されていれば、図3(a)に示すように、接合部Aは、開口に沿って環状に連続するほぼ一様の濃度の線又は帯として、本体ケース1bの周壁22を介して目視される。一方、蓋部材1aと本体ケース1bとが溶着されなかった箇所がある場合には、図3(b)に示すように、接合部Aが一部に不連続部Bや色の掠れを有する線又は帯として目視される。
【0030】
従って、蓋部材1aと本体ケース1bとの溶着が不十分であることに起因して貯留室20からリークを生じ得るインクカートリッジ1を、専用の設備を用いる最終的なリークチェックを行う前に、作業者の目視によって不良品として予め除外することができる。よって、溶着不良の有る無しにかかわらず、製造された全てのインクカートリッジ1に対して最終的なリークチェックを行なうことが避けられるので、製造効率を向上させることができる。また、インクの充填前に溶着不良を確認することができるので、リークを生じ得るインクカートリッジ1に対してインクが無駄に充填されることが防止され、その結果として、インクコストが無駄に消費されることを防止できる。
【0031】
また、上記のように、本体ケース1bの開口と溶着部Aとの間に隙間50すなわち非溶着領域が形成されている。そのため、非溶着領域から溶着部Aまで、本体ケース1bの内側に蓋部材1aが位置しているとしても、溶着部Aは、蓋部材1aと本体ケース1bとが密着しているために蓋部材に由来する黒色が、濃い黒色として本体ケース1b外から観察されるのに対し、非溶着領域は、蓋部材1aと本体ケース1bとの間に空間が介在するため、上記よりも淡い黒色として観察される。
【0032】
即ち、インクカートリッジ1の側面を目視した場合に、開口上面から所定間隔を置いて濃い黒色の線又は帯として目視される。よって、作業者が接合部Aを目視する場合に、蓋部材1a自体の色が邪魔にならず、不連続部Bや色の掠れがあるか否かの判断を適切に行うことができる。
【0033】
このため、本体ケース1bは、ほぼ完全な透明材料よりも、乳白色に近い半透明材料で構成する方が、非溶着領域と溶着部Aとが区別して観察されやすい。
【0034】
本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0035】
例えば、上記実施例では、本体ケース1bに、その本体ケース1bの内側でかつ底部方向に向け傾斜したテーパ面である当接部22bが形成されるものとしたが、この当接部22bに換えて、非接触壁22aの下端から貯留室20側に向かって略直角に形成された段状部を形成し、一方で、蓋部材1aの挿入部10におけるその段状部が当接する部分に内周側から外周側に向かって広がるテーパ部を形成し、そのテーパ部と段状部とを溶着させるように構成してもよい。この場合も、本体ケース1bに当接部22bを形成した場合と同様の効果を奏する。
【0036】
また、本体ケース1bの開口は、平面視において円形、矩形など任意の形状において実施することができる。
【0037】
以上、インクカートリッジ1を用いて本発明を例示したが、内部に流体を収容する容器全般に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施例におけるインクカートリッジの断面図である。
【図2】図1のX部分におけるインクカートリッジの拡大図である。
【図3】図2の矢印III方向から見たインクカートリッジの側面図であり、図3(a)は、蓋部材と本体ケースとが貯留室からのリークを生じないように溶着されている状態を示した側面図であり、図3(b)は、蓋部材と本体ケースとの溶着が不十分である状態を示した側面図である。
【図4】図1のX部分におけるインクカートリッジについて、蓋部材と本体ケースとが溶着される前の状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 インクカートリッジ(容器)
1a 蓋部材(第2の部材)
1b 本体ケース(第1の部材)
10 挿入部
22 周壁(側壁)
22b 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に開口を有する第1の部材と、その開口を覆って前記第1の部材に装着される第2の部材とで、流体を内部に収容する容器であって、
前記第1の部材と第2の部材とが相互に溶着可能な樹脂材料で構成されるとともに、前記第1の部材が透明または半透明の樹脂材料で、第2の部材が着色された樹脂材料で構成され、
前記第2の部材は、前記開口に挿入される挿入部を備え、前記第1の部材は、前記開口を囲む側壁の内面の、前記開口から前記挿入部の挿入方向に間隔を置いた位置に、前記挿入部が前記開口の全周に対応して連続して当接する当接部を備え、
前記第1の部材と第2の部材とは、前記挿入部と前記当接部との当接部分を溶着させて接合されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記当接部は、前記第1の部材の側壁の内面に、前記開口と平行な面に沿って環状に連続して設けられた段状部であり、前記挿入部は、前記段状部と当接する先端部を前記段状部に対応して環状に連続し備えることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記段状部と前記挿入部の先端部との一方は、両者の当接方向に対して傾斜するテーパ面であることを特徴とする請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記挿入部と前記当接部との当接部分と、前記開口の端面との間の、前記挿入部と前記第1の部材の側壁の内面との間は、非溶着状態にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
前記第1の部材は、一つの面を開口したケースであり、前記第2の部材はその開口を覆う蓋部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記収容する流体は、インクであり、記録装置本体に着脱可能に装着されてそのインクを記録装置本体に供給することを特徴とする請求項5に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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