容量センサー
【課題】タッチセンサーの検出精度を向上させ得る容量センサーを提供する。
【解決手段】電極11aと接地端GNDとの間の第一の容量Cs2の充電電圧の変化を検出する第一の充電電圧検出部12aと、複数の電極11a,11b間の第二の容量Cs1の充電電圧の変化を検出する第二の充電電圧検出部12bと、第一の充電電圧検出部12aと第二の充電電圧検出部12bからそれぞれ出力される検出信号F1,F2に基づいて判定信号OUTを生成する判定部13とを備えた。
【解決手段】電極11aと接地端GNDとの間の第一の容量Cs2の充電電圧の変化を検出する第一の充電電圧検出部12aと、複数の電極11a,11b間の第二の容量Cs1の充電電圧の変化を検出する第二の充電電圧検出部12bと、第一の充電電圧検出部12aと第二の充電電圧検出部12bからそれぞれ出力される検出信号F1,F2に基づいて判定信号OUTを生成する判定部13とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容量の充電電荷の変化を検出した検出信号を出力する容量センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサーに使用する容量センサーでは、複数の電極間の静電容量の変化を検出回路で検出することにより、人体等の被検出物の接触を検知するようになっている。
図18は、容量センサーの検出原理の一例を示す。検出素子として2つの電極1a,1bが同一平面上に所定の間隔を隔てて配設され、その電極1a,1bは絶縁体2で被覆されている。電極1a,1bは、図19に示すように、例えば電極1aの周囲に電極1bがレイアウトされ、さらに電極1bの周囲にはガード部材3がレイアウトされて、他の電極と電気的に隔離されている。そして、両電極1a,1bが絶縁体で被覆されている。
【0003】
そして、図18に示すように、電極1a,1b上の絶縁体2を指で接触すると、電極1a,1b間の容量Cs1あるいは各電極1a,1bとグランドGND間の容量Cs2,Cs3が変化するため、その容量の変化を検出回路で検出することにより、指の接触の有無が検出される。
【0004】
図20に示す容量センサーは、絶縁材4の取付孔5内に電極6が配設され、その電極6が可撓性を備えた導電材7で所定間隔を隔てて覆われている。そして、導電材7が押圧されて撓み、導電材7と電極6との間隔が狭くなると導電材7と電極6との間の容量が変化し、その容量の変化を検出回路で検出することにより、指の接触の有無が検出される。
【特許文献1】特開2000−65514号公報
【特許文献2】特表2006−58084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図18に示すような容量センサーにおいて、電極1a,1b間の容量Cs1の変化を検出回路で検出する構成とすると、指の接触による容量Cs1の変化は比較的大きく、寄生容量の影響を受け難いため、接触の有無を精度よく検出することができる。しかし、絶縁体2に水滴等の導電体が付着したような場合にも指の接触による検出信号と同様な検出信号を出力するため、誤動作しやすいという問題点がある。
【0006】
また、電極1aとグランドGNDとの間の容量Cs2あるいは電極1bとグランドGNDとの間の容量Cs3の変化を検出回路で検出する構成とすると、各電極1a,1bとグランドGND間の寄生容量や電極1a,1b間の寄生容量の影響を受けやすく、検出精度が低下する。
【0007】
そこで、検出回路に寄生容量を一定時間毎にキャンセルするような機能を備え、かつキャリブレーション動作により検出精度を向上させる構成を採用すると、検出回路の回路規模が増大するという問題点がある。
【0008】
特許文献1には、2つの電極間の容量変化を検出するセンサー回路が開示されているが、複数の電極を同一平面上に配設して電極間の容量変化を検出するタッチセンサーについては開示さていない。従って、上記のような問題点を解決する手段は開示されていない。
【0009】
特許文献2には、湿度の変化に応じて変化する容量を検出して、湿度を検出する湿度センサーが開示されている。しかし、複数の電極間の容量変化あるいは各電極とグランドGND間の容量変化を検出するタッチセンサーにおける上記問題点を解決する手段は開示されていない。
【0010】
この発明の目的は、タッチセンサーの検出精度を向上させ得る容量センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、電極と接地端との間の第一の容量の充電電圧の変化を検出する第一の充電電圧検出部と、複数の電極間の第二の容量の充電電圧の変化を検出する第二の充電電圧検出部と、前記第一の充電電圧検出部と第二の充電電圧検出部からそれぞれ出力される検出電圧に基づいて判定信号を生成する判定部とを備えた容量センサーにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
開示された容量センサーでは、タッチセンサーの検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第一の実施の形態)
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。図1は、この発明の容量センサーの原理を示す。電極11a,11bは、タッチセンサースイッチの電極であり、図19に示す電極1a,1bと同様な構成である。そして、電極11a,11b間に容量(第二の容量)Cs1が存在し、各電極11a,11bとグランドGND(接地端)との間にそれぞれ容量Cs2,Cs3が存在している。
【0014】
前記電極11aには同電極11aとグランドGNDとの間の容量(第一の容量)Cs2の充電電圧を検出する第一の充電電圧検出部12aが接続され、電極11bには電極11a,11b間の容量Cs1の充電電圧を検出する第二の充電電圧検出部12bが接続されている。
【0015】
前記第一の充電電圧検出部12aは、容量Cs2の充電電圧の変化を検出すると、検出フラグF1を判定部13に出力する。また、前記第二の充電電圧検出部12bは、容量Cs1の充電電圧の変化を検出すると、検出フラグF2を判定部13に出力する。
【0016】
判定部13は、両検出フラグF1,F2が入力されたとき、検出フラグF1,F2のAND論理に基づいて、電極11a,11b上が指で接触されたことを判定する判定信号OUTを出力する。
【0017】
図2は、前記第一及び第二の充電電圧検出部12a,12bの具体的構成を示す。前記電極11a,11bは、検出回路14に接続され、その検出回路14は容量Cs1,Cs2の充電電圧を時分割で検出して出力する。従って、この検出回路14は第一及び第二の充電電圧検出部12a,12bで共用される。
【0018】
前記検出回路14の出力信号Voutは、スイッチ15aを介してフィルター16aに出力されるとともに、スイッチ15bを介してフィルター16bに出力される。前記フィルター16a,16bはローパスフィルターであり、出力信号Voutから高周波成分のノイズを除去する。
【0019】
前記フィルター16aの出力信号はコンパレータ(第一のコンパレータ)17aに入力され、前記フィルター16bの出力信号はコンパレータ(第二のコンパレータ)17bに入力される。コンパレータ17a,17bは、図3に示すように、前記フィルター16a,16bから出力される後記検出電圧Vc1,Vc2をそれぞれしきい値Vth1,Vth2(Vth2:第一のしきい値、Vth1:第二のしきい値)とそれぞれ比較して、検出電圧Vc1,Vc2の電圧レベルがしきい値Vth1,Vth2を超えると、Hレベルの出力信号を出力する。
【0020】
前記コンパレータ17a,17bの出力信号は、それぞれカウンタ(第一のカウンタ、第二のカウンタ)18a,18bに出力される。カウンタ18a,18bはコンパレータ17a,17bの出力信号がHレベルとなる度にカウントアップ動作を行い、カウント数が所定数に達すると、前記検出フラグ(第一の検出フラグ、第二の検出フラグ)F1,F2を前記判定部13に出力する。
【0021】
前記検出回路14の具体的構成を図4に従って説明する。制御信号φ4で開閉制御されるスイッチ(第四のスイッチ)19aは、前記電極11aに接続され、その導通時には低電位側基準電圧−Vrefを前記電極11aに供給する。また、制御信号φ3で開閉制御されるスイッチ(第三のスイッチ)19bは、前記電極11aに接続され、その導通時には高電位側基準電圧+Vrefを前記電極11aに供給する。高電位側基準電圧+Vrefを電源電圧とし、低電位側基準電圧−VrefをグランドGND電位としてもよい。
【0022】
前記電極11a,11b間には制御信号φ2で開閉制御されるスイッチ(第二のスイッチ)19cが接続され、電極11bとオペアンプ20のマイナス側入力端子との間に、制御信号φ5で開閉制御されるスイッチ19eが接続されている。そして、スイッチ19cが導通状態となると、前記電極11a,11b間が短絡された状態となり、さらにスイッチ19eが導通状態となると、前記電極11aがオペアンプ20のマイナス側入力端子に接続される。
【0023】
前記電極11bは前記スイッチ19eを介してオペアンプ20のマイナス側入力端子に接続され、そのオペアンプ20のプラス側入力端子には基準電圧Vcomが入力される。また、オペアンプ20の入出力端子間には帰還容量Cfと、スイッチ(第一のスイッチ)19dが接続されている。
【0024】
前記スイッチ19dは制御信号φ1で開閉制御され、その導通時にはオペアンプ20の入出力端子が接続され、オペアンプ20にオフセットがなければ、出力信号Voutは基準電圧Vcomレベルとなる。
【0025】
このように構成された検出回路の動作を図5に従って説明する。前記各スイッチ19a〜19eは、制御信号φ1〜φ5がHレベルとなると導通状態となる。
検出動作が開始されると、まず制御信号φ2がHレベルとなってスイッチ19cが導通される。
【0026】
この状態で、制御信号φ1として一定の周期でHレベルとLレベルが切り替わる信号が供給され、その制御信号φ1と同相の制御信号φ4と逆相の制御信号φ5が供給される。
すると、制御信号φ1,φ4がHレベルとなり、制御信号φ5がLレベルとなると、帰還容量Cfの両端子が短絡されて帰還容量Cfが放電され、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。電極11aにつながる容量Cs2,Cs1が基準電圧−Vrefレベルまで放電される。
【0027】
次いで、制御信号φ1,φ4がHレベルとなり、制御信号φ5がLレベルとなると、スイッチ19a,19dが不導通状態となり、スイッチ19eが導通状態となる。すると、出力信号Voutとして容量Cs2の充電電荷に基づく検出電圧Vc2がオペアンプ20から出力され、Vc2=Cs2/Cf・Vrefとなり、容量Cs2と帰還容量Cfの容量値の比に基づく電圧が出力される。従って、容量Cs2の充電電荷が増大するほど、すなわち電極11a,11b上の絶縁体を指で触れたとき検出電圧Vc2が上昇する。
【0028】
次いで、制御信号φ1,φ4,φ5が切り替わると、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。そして、制御信号φ1,φ4,φ5の切り替わりに基づいて、出力信号Voutとして検出電圧Vc2を繰り返し出力する。
【0029】
前記検出電圧Vc2は、制御信号φ2に基づいて導通しているスイッチ15a及びフィルター16aを介してコンパレータ17aに出力される。そして、コンパレータ17aでは、図3に示すように、検出電圧Vc2がしきい値Vth1を超える場合にHレベルとなる出力信号をカウンタ18aに出力する。カウンタ18aはコンパレータ17aから出力されるパルス信号をカウントし、あらかじめ設定されたパルス数をカウントアップすると、Hレベルの検出フラグF1を判定部13に出力する。
【0030】
上記のような容量Cs2の充電電荷の検出動作では、スイッチ19cが導通状態であることから、実際には容量Cs2の充電電荷と、電極11bとグランドGNDとの間の容量Cs3の充電電荷とを合算した値を検出している。
【0031】
検出電圧Vc2の検出の後、制御信号φ2がLレベルとなって、容量Cs1の充電電荷の検出動作に移行する。この移行のタイミングは、上記のように検出フラグF1が出力された後に移行するようにするか、あるいはあらかじめ設定した所定時間後に移行するようにしてもよい。
【0032】
制御信号φ2がLレベルとなると、スイッチ19cが不導通となり、この状態で制御信号φ1として一定の周期でHレベルとLレベルが切り替わる信号が供給され、その制御信号φ1と同相の制御信号φ3と逆相の制御信号φ4と、Hレベルの制御信号φ5が供給される。
【0033】
すると、制御信号φ1,φ3がHレベルとなり、制御信号φ4がLレベルとなると、帰還容量Cfの両端出力が短絡されて帰還容量Cfが放電され、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。また、容量Cs2,Cs1が基準電圧+Vrefレベルまで充電される。
【0034】
次いで、制御信号φ1,φ3がLレベルとなり、制御信号φ4がHレベルとなると、基準電圧−Vrefが供給されるとともに、スイッチ19dが不導通状態となる。すると、出力信号Voutとして容量Cs1の充電電荷に基づく検出電圧Vc1が出力され、Vc1=2×Cs1/Cf・Vrefとなり、容量Cs1と帰還容量Cfの充電電荷の比に基づく電圧が出力される。従って、容量Cs1の充電電荷が増大するほど、すなわち電極11a,11b上の絶縁体を指で触れたとき検出電圧Vc1が上昇する。
【0035】
次いで、制御信号φ1,φ3,φ4が切り替わると、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。そして、制御信号φ1,φ3,φ4の切り替わりに基づいて、出力信号Voutとして検出電圧Vc1を繰り返し出力する。
【0036】
前記検出電圧Vc1は、制御信号φ2の反転信号である制御信号φ2バーに基づいて導通するスイッチ15b及びフィルター16bを介してコンパレータ17bに出力される。そして、コンパレータ17bでは、図3に示すように、検出電圧Vc1がしきい値Vth1を超える場合にHレベルとなる出力信号をカウンタ18bに出力する。カウンタ18bはコンパレータ17bから出力されるパルス信号をカウントし、あらかじめ設定されたパルス数をカウントアップすると、Hレベルの検出フラグF2を判定部13に出力する。
【0037】
上記のような検出動作において、容量Cs2の充電電位は電極11a,11bの寄生容量Cp1,Cp2の影響が大きいため、コンパレータ17aのしきい値Vth1を低く設定して、電極11a,11bに指が近づいたことをラフに検出できるようにする。
【0038】
また、容量Cs1の充電電位は寄生容量の影響が小さく、指を電極11a,11b間に近づけると、その充電電位が大きく変化する。例えば、電極11a,11bの面積を7mm×7mm程度とし、その電極11a,11bを覆う絶縁体の膜圧100μm程度とすると、指を電極11a,11bに近づけると10pFの充電電荷量の変化を得ることができる。そして、指で電極11a,11bから1mm以上遠ざけると、充電電荷量の変化は距離に反比例するので、1/10以下となる。
【0039】
従って、コンパレータ17bのしきい値Vth1を高く設定すると、指の接近を高精度に検出することが可能となる。
また、電極11a,11bを覆う絶縁体に弾力性のあるものを使用し、電極11a,11bと絶縁体との間に隙間を設けて絶縁体が撓むようにすると、容量Cs1の充電電荷の変化量を大きくして、検出精度の向上を図ることができる。
【0040】
図6は、前記スイッチ19a,19b,19dを開閉する制御信号φ1,φ3,φ4,φ5を生成する回路を示す。すなわち、帰還容量Cfに並列に接続されるスイッチ19dは、スイッチ19a,19bを不導通状態とした状態で開閉する必要があり、そのような制御信号φ1,φ3,φ4,φ5を生成する回路を示す。
【0041】
所定周波数のクロック信号である入力信号P1は第一の遅延回路21に入力され、第一の遅延回路21から入力信号P1を所定時間遅延させた信号P2が出力される。信号P2はバッファ回路23を介して前記制御信号φ1として出力される。従って、図8に示すように、制御信号φ1は入力信号P1を第一の遅延回路21で遅延させた信号となる。
【0042】
前記信号P2は第二の遅延回路22に入力され、第二の遅延回路22から信号P2を所定時間遅延させた信号P3が出力される。第一及び第二の遅延回路21,22の遅延時間を同一である。
【0043】
前記信号P3は、AND回路24a及びNOR回路25に入力され、AND回路24a及びNOR回路25には前記入力信号P1が入力される。前記AND回路24aの出力信号はAND回路24b,24cに入力され、AND回路24bには前記制御信号φ2の反転信号が入力され、AND回路24cには前記制御信号φ2が入力される。そして、AND回路24bから前記制御信号φ3が出力される。
【0044】
前記AND回路24cとNOR回路25の出力信号はOR回路29aに入力され、そのOR回路29aから前記制御信号φ4が出力される。
前記NOR回路25の出力信号はOR回路29bに入力され、そのOR回路29bには前記制御信号φ2が入力される。そして、OR回路29bから前記制御信号φ5が出力される。
【0045】
このような構成により、制御信号φ1,φ3,φ4,φ5は図8に示すタイミングで切り替わる。従って、スイッチ19dはスイッチ19a,19bがともに不導通となるときに、導通状態と不導通状態とが切り替えられ、スイッチ19a,19bは一方の切り替え動作時には他方が不導通となるように制御される。このような動作により、スイッチ19a,19b,19dの過渡状態での容量Cs1,Cs2,Cs3間の電荷移動による誤差を少なくすることができる。
【0046】
図7は、前記第一の遅延回路21の具体的構成を示す。第二の遅延回路22も同様な構成である。この遅延回路は、6段のインバータ回路26a〜26fが直列に接続され、インバータ回路26b,26c間及び26e,26f間に時定数回路27a,27bが介在されている。
【0047】
また、インバータ回路26cの入力端子はPチャネルMOSトランジスタTp1,Tp2を介して電源VDDに接続され、NチャネルMOSトランジスタTn1,Tn2を介してグランドGNDに接続されている。前記トランジスタTp1,Tn2のゲートはインバータ回路26aの出力端子に接続され、前記トランジスタTp2,Tn1のゲートはインバータ回路26cの出力端子に接続されている。
【0048】
また、インバータ回路26fの入力端子はPチャネルMOSトランジスタTp3,Tp4を介して電源VDDに接続され、NチャネルMOSトランジスタTn3,Tn4を介してグランドGNDに接続されている。前記トランジスタTp3,Tn4のゲートはインバータ回路26dの出力端子に接続され、前記トランジスタTp4,Tn3のゲートはインバータ回路26fの出力端子に接続されている。
【0049】
そして、インバータ回路26aの入力端子に入力信号P1が入力され、インバータ回路26fの出力信号がバッファ回路28を介して信号P2として出力される。
このように構成された第一の遅延回路21では、各インバータ回路26a〜26fの動作遅延時間と時定数回路27a,27bにより遅延時間が生成され、入力信号P1から遅延した信号P2が出力される。
【0050】
なお、トランジスタTp1,Tp2,Tn1,Tn2は、インバータ回路26cの入力信号がしきい値を低電位側あるいは高電位側に超えたとき、インバータ回路26cの出力信号に基づいて、インバータ回路26cの入力信号レベルをグランドGNDレベルあるいは電源VDDレベルまで速やかに移行させるように動作する。トランジスタTp3,Tp4,Tn3,Tn4も同様に動作する。
【0051】
図9は、前記検出回路14を備えた第一及び第二の充電電圧検出部12a,12bの動作を説明する。
制御信号φ2がHレベルとなると、容量Cs2の充電電荷の検出動作が開始され、カウンタ18aはリセットされる。そして、検出回路14では制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、出力信号Voutが出力される。制御信号φ2をHレベルとする期間は、例えば入力される制御信号φ1のパルス数がn個となるまでとする。
【0052】
すると、制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、検出電圧Vc2が出力され、その検出電圧Vc2がコンパレータ17aのしきい値Vth1を超えると、カウンタ18aでコンパレータ17aから出力されるパルス信号がカウントされる。そして、そのカウント値が所定数に達すると、カウンタ18aからHレベルの検出フラグF1が出力される。
【0053】
次いで、制御信号φ2がLレベルとなると、容量Cs1の充電電荷の検出動作が開始され、カウンタ18bはリセットされる。そして、検出回路14では制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、出力信号Voutが出力される。制御信号φ2をLレベルとする期間は、例えば入力される制御信号φ1のパルス数がm個となるまでとする。
【0054】
すると、制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、検出電圧Vc1が出力され、その検出電圧Vc1がコンパレータ17bのしきい値Vth1を超えると、カウンタ18bでコンパレータ17bから出力されるパルス信号がカウントされる。そして、そのカウント値が所定数に達すると、カウンタ18bからHレベルの検出フラグF2が出力される。
【0055】
そして、検出フラグF1,F2がともにHレベルとなると、電極11a,11b間が指で接触されたことを示す判定信号OUTが判定部13から出力される。
上記のような容量センサーでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)電極11a,11bとグランドGNDとの間の容量Cs2の充電電荷の変化を検出回路14でラフに検出し、次いで高精度の検出が容易な電極11a,11b間の容量Cs1の充電電荷の変化を検出回路14で検出し、その検出結果に基づいて電極11a,11b間が指で接触されたか否かを容易に判定することができる。
(2)電極11a,11bとグランドGNDとの間の容量Cs2の充電電荷の変化を検出した検出電圧Vc2と、電極11a,11bの容量Cs1の充電電荷の変化を検出した検出電圧Vc1とを共通の検出回路14で時分割により検出することができる。従って、検出電圧Vc2,Vc1を検出する検出回路14の回路規模を縮小することができる。
(3)スイッチ19a〜19eを制御信号φ1〜φ5で開閉制御することにより、検出電圧Vc2,Vc1を時分割で検出することができる。
(4)検出回路14のスイッチ19a,19b,19d,19eが同時に開閉されないので、検出精度を向上させることができる。
(5)スイッチ19a,19b,19d,19eを同時に開閉させない制御信号φ1、φ3,φ4,φ5を、遅延回路21,22とAND回路24a〜24c、NOR回路25及びOR回路29a,29bにより生成することができる。
(6)カウンタ17a,17bから出力されるパルス信号をカウンタ18a,18bでカウントし、そのカウント数があらかじめ設定した所定値に達したとき検出フラグF1,F2を出力するようにしたので、ノイズによる誤判定を防止することができる。
(第二の実施の形態)
図10〜図12は第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、3個の電極のいずれが接触されたかを検出する容量センサーを構成した場合を示す。
【0056】
図10に示すように、同一形状の3つの電極31b〜31dが並設され、各電極31b〜31d間及び各電極31b〜31dの周囲には、電極31aがレイアウトされている。そして、各電極31a〜31dが絶縁材で覆われている。
【0057】
図11は、この実施の形態の容量センサーの検出回路32を示す。前記第一の実施の形態の検出回路14と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
前記電極31aは、オペアンプ20のマイナス側入力端子に接続され、グランドGNDとの間に容量Cyが存在する。
【0058】
スイッチ19cの一方の端子はオペアンプ20のマイナス側入力端子に接続され、他方の端子と前記電極31b〜31dとの間には、それぞれスイッチ33a〜33cが接続されている。前記各スイッチ33a〜33cは、制御信号φ6〜φ8により開閉制御され、制御信号φ6〜φ8がHレベルとなると導通される。
【0059】
前記電極31aと各電極31b〜31cとの間には、それぞれ容量Cx1,Cx2,Cx3が存在する。
図12は、前記スイッチ19a〜19d,33a〜33cを開閉制御する制御信号φ1〜φ8のタイミング波形を示す。まず、制御信号φ2をHレベルとしてスイッチ19cを導通状態とした状態で制御信号φ1、φ4が一定の周期で同相で切り替わり、かつ制御信号φ5が逆相で切り替わると、電極31aとグランドGNDとの間の容量Cyの充電電圧が検出され、出力信号Voutとして出力される。
【0060】
次いで、制御信号φ2がLレベルとなってスイッチ19cが不導通となり、制御信号φ1、φ3が一定の周期で同相で切り替わり、かつ制御信号φ4が制御信号φ1、φ3と逆相で切り替わる状態で、制御信号φ6〜φ8が順次Hレベルとなる。
【0061】
すると、スイッチ31b〜31cが順次導通して、電極31aと各電極31b〜31dとの間の容量Cx1,Cx2,Cx3の充電電圧が順次検出され、出力信号Voutとして出力される。
【0062】
このような出力信号Voutに基づいて、容量Cyの充電電圧が所定のしきい値を超えたか否かを判定し、さらに容量Cx1,Cx2,Cx3の充電電圧のいずれかが所定のしきい値を超えたか否かを判定することにより、電極31b〜31d上のいずれの位置で指が触れたかを判定することが可能となる。
【0063】
例えば、容量Cyの検出電圧の上昇に続いて、容量Cx1の検出電圧の上昇を検知すれば、電極31b上が触れられた事を検出可能である。また、容量Cyの検出電圧の上昇に続いて、容量Cx2の検出電圧の上昇を検知すれば、電極31c上が触れられた事を検出可能である。同様に、容量Cyの検出電圧の上昇に続いて、容量Cx3の検出電圧の上昇を検知すれば、電極31c上が触れられた事を検出可能である。
【0064】
このような構成により、3つのタッチセンサー部が併設されるタッチセンサースイッチのための容量センサーを構成することができる。
(第三の実施の形態)
図13〜図15は、第三の実施の形態を示す。この実施の形態は図4に示す第一の実施の形態の検出回路14に、オペアンプ20のオフセット電圧をキャンセルする機能を付加した検出回路14aを構成したものである。第一の実施の形態と同一構成部分は同一符号を付して説明する。
【0065】
帰還容量Cfとオペアンプ20の出力端子との間にはスイッチ34aが接続され、そのスイッチ34aは前記制御信号φ4で開閉制御される。
また、帰還容量Cfとスイッチ34aの接続点には、スイッチ34bを介して基準電圧Vcomが供給される。スイッチ34bは、前記制御信号φ1で開閉制御される。
【0066】
このような検出回路14aでは、制御信号φ1がHレベルとなって、スイッチ19dが導通状態となるとき、オペアンプ20のゲインは1となり、オペアンプ20にオフセット電圧がなければ、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。
【0067】
このとき、スイッチ34bも導通状態となるため、オペアンプ20にオフセット電圧が存在すれば、そのオフセット電圧分が帰還容量Cfに充電される。そして、スイッチ19dが不導通状態となって、容量Cs2,Cs1の充電電荷を検出する時には、オペアンプ20のオフセット電圧をキャンセルした出力信号Voutが出力される。
【0068】
また、制御信号φ1が導通状態となっても、オペアンプ20の出力信号Voutが直ちに基準電圧Vcomにならないことがある。これは、オペアンプ20の入力端子につながる容量の充放電に時間がかかるためである。
【0069】
これを回避するために、オペアンプ20の負荷駆動能力を大きくすると、消費電力が増大する。また、オペアンプ20の負荷駆動能力を小さくすると、出力信号Voutの基準電圧Vcomへの収束が遅延する。
【0070】
そこで、この検出回路14aでは、オペアンプ20の入力端子に制御信号φ6で開閉制御されるスイッチ34cを介して基準電圧Vcomを供給するようにしている。
制御信号φ6は、前記制御信号φ1から図15に示す生成回路で生成される。すなわち、制御信号φ1は遅延回路35に入力され、その遅延回路35の出力信号はインバータ回路36を介してAND回路37に入力される。また、AND回路37には前記制御信号φ1が入力され、AND回路37から前記制御信号φ6が出力される。
【0071】
このような構成により、図14に示すように、制御信号φ6は制御信号φ1の立ち上がりとともに立ち上がってHレベルとなり、遅延回路35で設定された遅延時間後に、制御信号φ1の立ち下がりに先立ってLレベルに復帰する信号となる。
【0072】
従って、制御信号φ1がHレベルとなって、スイッチ19dが導通状態となると、制御信号φ6もHレベルとなってスイッチ34cが導通状態となり、オペアンプ20の入力端子が速やかに基準電圧Vcomレベルとなる。この結果、図14に示すように、オペアンプ20の出力信号Voutが速やかに基準電圧Vcomレベルとなる。
【0073】
上記のように構成された検出回路14aでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)オペアンプ20のオフセット電圧をキャンセルすることができる。
(2)出力信号Voutを基準電圧Vcomレベルにリセットするとき、そのリセット動作を高速化することができる。
(第四の実施の形態)
図16は、第四の実施の形態を示す。この実施の形態は、前記第一の実施の形態のコンパレータ17a,17b、カウンタ18a,18b及び判定部13の動作をマイコン38で行なうようにしたものである。第一の実施の形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0074】
フィルター16a,16bから出力される検出電圧Vc2,Vc1はそれぞれアンプ39a,39bを介してマイコン38に入力される。マイコン38は、アンプ39a,39bから入力されるアナログ信号をA/D変換器でデジタル信号に変換し、そのデジタル信号で検出電圧Vc2,Vc1が所定のしきい値を超えているか否かを判定し、電極11aが指で触れられたか否かを検出する。
【0075】
このような構成により、マイコン38を備えた装置では、第一の実施の形態のコンパレータ17a,17b、カウンタ18a,18b及び判定部13を備えることなく、容量センサーの検出信号を判定することができる。
【0076】
図17は、検出回路14での検出電圧Vc2,Vc1の検出動作をマイコン38から出力される制御信号φxに基づいて制御することにより、検出電圧Vc2,Vc1を共通のフィルター40及びアンプ41を介してマイコン38に出力するようにしたものである。
【0077】
このような構成により、図16に示す構成に比して、フィルター40及びアンプ41を共通化して容量センサーの回路規模を縮小することができる。
上記実施の形態は、以下に示す態様で実施することもできる。
・第一の実施の形態において、電極11a,11b間の容量Cs1の充電電圧の変化は、精度よく検出することができるので、コンパレータ17bの出力信号を検出フラグF2として判定部13に入力してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の容量センサーを示す原理説明図である。
【図2】第一の実施の形態の容量センサーを示すブロック図である。
【図3】コンパレータの動作を示す説明図である。
【図4】検出回路を示す回路図である。
【図5】検出回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図6】制御信号を生成する回路を示す回路図である。
【図7】遅延回路を示す回路図である。
【図8】制御信号を生成する回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図9】充電電圧検出部の動作を示すタイミング波形図である。
【図10】第二の実施の形態の電極を示すレイアウト図である。
【図11】第二の実施の形態の検出回路を示す回路図である。
【図12】検出回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図13】第三の実施の形態の検出回路を示す回路図である。
【図14】第三の実施の形態の検出回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図15】制御信号の生成回路を示す回路図である。
【図16】第四の実施の形態を示すブロック図である。
【図17】第四の実施の形態の変形例を示すブロック図である。
【図18】容量センサーの操作例を示す斜視図である。
【図19】電極の従来例を示すレイアウト図である。
【図20】電極の他の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
11a,11b 電極
12a 第一の充電電圧検出部
12b 第二の充電電圧検出部
13 判定部
14,14a,32 検出回路
Cs2 第一の容量
Cs1 第二の容量
GND 接地端
Vc1,Vc2 検出電圧
F1,F2 検出信号(検出フラグ)
【技術分野】
【0001】
この発明は、容量の充電電荷の変化を検出した検出信号を出力する容量センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサーに使用する容量センサーでは、複数の電極間の静電容量の変化を検出回路で検出することにより、人体等の被検出物の接触を検知するようになっている。
図18は、容量センサーの検出原理の一例を示す。検出素子として2つの電極1a,1bが同一平面上に所定の間隔を隔てて配設され、その電極1a,1bは絶縁体2で被覆されている。電極1a,1bは、図19に示すように、例えば電極1aの周囲に電極1bがレイアウトされ、さらに電極1bの周囲にはガード部材3がレイアウトされて、他の電極と電気的に隔離されている。そして、両電極1a,1bが絶縁体で被覆されている。
【0003】
そして、図18に示すように、電極1a,1b上の絶縁体2を指で接触すると、電極1a,1b間の容量Cs1あるいは各電極1a,1bとグランドGND間の容量Cs2,Cs3が変化するため、その容量の変化を検出回路で検出することにより、指の接触の有無が検出される。
【0004】
図20に示す容量センサーは、絶縁材4の取付孔5内に電極6が配設され、その電極6が可撓性を備えた導電材7で所定間隔を隔てて覆われている。そして、導電材7が押圧されて撓み、導電材7と電極6との間隔が狭くなると導電材7と電極6との間の容量が変化し、その容量の変化を検出回路で検出することにより、指の接触の有無が検出される。
【特許文献1】特開2000−65514号公報
【特許文献2】特表2006−58084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図18に示すような容量センサーにおいて、電極1a,1b間の容量Cs1の変化を検出回路で検出する構成とすると、指の接触による容量Cs1の変化は比較的大きく、寄生容量の影響を受け難いため、接触の有無を精度よく検出することができる。しかし、絶縁体2に水滴等の導電体が付着したような場合にも指の接触による検出信号と同様な検出信号を出力するため、誤動作しやすいという問題点がある。
【0006】
また、電極1aとグランドGNDとの間の容量Cs2あるいは電極1bとグランドGNDとの間の容量Cs3の変化を検出回路で検出する構成とすると、各電極1a,1bとグランドGND間の寄生容量や電極1a,1b間の寄生容量の影響を受けやすく、検出精度が低下する。
【0007】
そこで、検出回路に寄生容量を一定時間毎にキャンセルするような機能を備え、かつキャリブレーション動作により検出精度を向上させる構成を採用すると、検出回路の回路規模が増大するという問題点がある。
【0008】
特許文献1には、2つの電極間の容量変化を検出するセンサー回路が開示されているが、複数の電極を同一平面上に配設して電極間の容量変化を検出するタッチセンサーについては開示さていない。従って、上記のような問題点を解決する手段は開示されていない。
【0009】
特許文献2には、湿度の変化に応じて変化する容量を検出して、湿度を検出する湿度センサーが開示されている。しかし、複数の電極間の容量変化あるいは各電極とグランドGND間の容量変化を検出するタッチセンサーにおける上記問題点を解決する手段は開示されていない。
【0010】
この発明の目的は、タッチセンサーの検出精度を向上させ得る容量センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、電極と接地端との間の第一の容量の充電電圧の変化を検出する第一の充電電圧検出部と、複数の電極間の第二の容量の充電電圧の変化を検出する第二の充電電圧検出部と、前記第一の充電電圧検出部と第二の充電電圧検出部からそれぞれ出力される検出電圧に基づいて判定信号を生成する判定部とを備えた容量センサーにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
開示された容量センサーでは、タッチセンサーの検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第一の実施の形態)
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。図1は、この発明の容量センサーの原理を示す。電極11a,11bは、タッチセンサースイッチの電極であり、図19に示す電極1a,1bと同様な構成である。そして、電極11a,11b間に容量(第二の容量)Cs1が存在し、各電極11a,11bとグランドGND(接地端)との間にそれぞれ容量Cs2,Cs3が存在している。
【0014】
前記電極11aには同電極11aとグランドGNDとの間の容量(第一の容量)Cs2の充電電圧を検出する第一の充電電圧検出部12aが接続され、電極11bには電極11a,11b間の容量Cs1の充電電圧を検出する第二の充電電圧検出部12bが接続されている。
【0015】
前記第一の充電電圧検出部12aは、容量Cs2の充電電圧の変化を検出すると、検出フラグF1を判定部13に出力する。また、前記第二の充電電圧検出部12bは、容量Cs1の充電電圧の変化を検出すると、検出フラグF2を判定部13に出力する。
【0016】
判定部13は、両検出フラグF1,F2が入力されたとき、検出フラグF1,F2のAND論理に基づいて、電極11a,11b上が指で接触されたことを判定する判定信号OUTを出力する。
【0017】
図2は、前記第一及び第二の充電電圧検出部12a,12bの具体的構成を示す。前記電極11a,11bは、検出回路14に接続され、その検出回路14は容量Cs1,Cs2の充電電圧を時分割で検出して出力する。従って、この検出回路14は第一及び第二の充電電圧検出部12a,12bで共用される。
【0018】
前記検出回路14の出力信号Voutは、スイッチ15aを介してフィルター16aに出力されるとともに、スイッチ15bを介してフィルター16bに出力される。前記フィルター16a,16bはローパスフィルターであり、出力信号Voutから高周波成分のノイズを除去する。
【0019】
前記フィルター16aの出力信号はコンパレータ(第一のコンパレータ)17aに入力され、前記フィルター16bの出力信号はコンパレータ(第二のコンパレータ)17bに入力される。コンパレータ17a,17bは、図3に示すように、前記フィルター16a,16bから出力される後記検出電圧Vc1,Vc2をそれぞれしきい値Vth1,Vth2(Vth2:第一のしきい値、Vth1:第二のしきい値)とそれぞれ比較して、検出電圧Vc1,Vc2の電圧レベルがしきい値Vth1,Vth2を超えると、Hレベルの出力信号を出力する。
【0020】
前記コンパレータ17a,17bの出力信号は、それぞれカウンタ(第一のカウンタ、第二のカウンタ)18a,18bに出力される。カウンタ18a,18bはコンパレータ17a,17bの出力信号がHレベルとなる度にカウントアップ動作を行い、カウント数が所定数に達すると、前記検出フラグ(第一の検出フラグ、第二の検出フラグ)F1,F2を前記判定部13に出力する。
【0021】
前記検出回路14の具体的構成を図4に従って説明する。制御信号φ4で開閉制御されるスイッチ(第四のスイッチ)19aは、前記電極11aに接続され、その導通時には低電位側基準電圧−Vrefを前記電極11aに供給する。また、制御信号φ3で開閉制御されるスイッチ(第三のスイッチ)19bは、前記電極11aに接続され、その導通時には高電位側基準電圧+Vrefを前記電極11aに供給する。高電位側基準電圧+Vrefを電源電圧とし、低電位側基準電圧−VrefをグランドGND電位としてもよい。
【0022】
前記電極11a,11b間には制御信号φ2で開閉制御されるスイッチ(第二のスイッチ)19cが接続され、電極11bとオペアンプ20のマイナス側入力端子との間に、制御信号φ5で開閉制御されるスイッチ19eが接続されている。そして、スイッチ19cが導通状態となると、前記電極11a,11b間が短絡された状態となり、さらにスイッチ19eが導通状態となると、前記電極11aがオペアンプ20のマイナス側入力端子に接続される。
【0023】
前記電極11bは前記スイッチ19eを介してオペアンプ20のマイナス側入力端子に接続され、そのオペアンプ20のプラス側入力端子には基準電圧Vcomが入力される。また、オペアンプ20の入出力端子間には帰還容量Cfと、スイッチ(第一のスイッチ)19dが接続されている。
【0024】
前記スイッチ19dは制御信号φ1で開閉制御され、その導通時にはオペアンプ20の入出力端子が接続され、オペアンプ20にオフセットがなければ、出力信号Voutは基準電圧Vcomレベルとなる。
【0025】
このように構成された検出回路の動作を図5に従って説明する。前記各スイッチ19a〜19eは、制御信号φ1〜φ5がHレベルとなると導通状態となる。
検出動作が開始されると、まず制御信号φ2がHレベルとなってスイッチ19cが導通される。
【0026】
この状態で、制御信号φ1として一定の周期でHレベルとLレベルが切り替わる信号が供給され、その制御信号φ1と同相の制御信号φ4と逆相の制御信号φ5が供給される。
すると、制御信号φ1,φ4がHレベルとなり、制御信号φ5がLレベルとなると、帰還容量Cfの両端子が短絡されて帰還容量Cfが放電され、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。電極11aにつながる容量Cs2,Cs1が基準電圧−Vrefレベルまで放電される。
【0027】
次いで、制御信号φ1,φ4がHレベルとなり、制御信号φ5がLレベルとなると、スイッチ19a,19dが不導通状態となり、スイッチ19eが導通状態となる。すると、出力信号Voutとして容量Cs2の充電電荷に基づく検出電圧Vc2がオペアンプ20から出力され、Vc2=Cs2/Cf・Vrefとなり、容量Cs2と帰還容量Cfの容量値の比に基づく電圧が出力される。従って、容量Cs2の充電電荷が増大するほど、すなわち電極11a,11b上の絶縁体を指で触れたとき検出電圧Vc2が上昇する。
【0028】
次いで、制御信号φ1,φ4,φ5が切り替わると、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。そして、制御信号φ1,φ4,φ5の切り替わりに基づいて、出力信号Voutとして検出電圧Vc2を繰り返し出力する。
【0029】
前記検出電圧Vc2は、制御信号φ2に基づいて導通しているスイッチ15a及びフィルター16aを介してコンパレータ17aに出力される。そして、コンパレータ17aでは、図3に示すように、検出電圧Vc2がしきい値Vth1を超える場合にHレベルとなる出力信号をカウンタ18aに出力する。カウンタ18aはコンパレータ17aから出力されるパルス信号をカウントし、あらかじめ設定されたパルス数をカウントアップすると、Hレベルの検出フラグF1を判定部13に出力する。
【0030】
上記のような容量Cs2の充電電荷の検出動作では、スイッチ19cが導通状態であることから、実際には容量Cs2の充電電荷と、電極11bとグランドGNDとの間の容量Cs3の充電電荷とを合算した値を検出している。
【0031】
検出電圧Vc2の検出の後、制御信号φ2がLレベルとなって、容量Cs1の充電電荷の検出動作に移行する。この移行のタイミングは、上記のように検出フラグF1が出力された後に移行するようにするか、あるいはあらかじめ設定した所定時間後に移行するようにしてもよい。
【0032】
制御信号φ2がLレベルとなると、スイッチ19cが不導通となり、この状態で制御信号φ1として一定の周期でHレベルとLレベルが切り替わる信号が供給され、その制御信号φ1と同相の制御信号φ3と逆相の制御信号φ4と、Hレベルの制御信号φ5が供給される。
【0033】
すると、制御信号φ1,φ3がHレベルとなり、制御信号φ4がLレベルとなると、帰還容量Cfの両端出力が短絡されて帰還容量Cfが放電され、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。また、容量Cs2,Cs1が基準電圧+Vrefレベルまで充電される。
【0034】
次いで、制御信号φ1,φ3がLレベルとなり、制御信号φ4がHレベルとなると、基準電圧−Vrefが供給されるとともに、スイッチ19dが不導通状態となる。すると、出力信号Voutとして容量Cs1の充電電荷に基づく検出電圧Vc1が出力され、Vc1=2×Cs1/Cf・Vrefとなり、容量Cs1と帰還容量Cfの充電電荷の比に基づく電圧が出力される。従って、容量Cs1の充電電荷が増大するほど、すなわち電極11a,11b上の絶縁体を指で触れたとき検出電圧Vc1が上昇する。
【0035】
次いで、制御信号φ1,φ3,φ4が切り替わると、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。そして、制御信号φ1,φ3,φ4の切り替わりに基づいて、出力信号Voutとして検出電圧Vc1を繰り返し出力する。
【0036】
前記検出電圧Vc1は、制御信号φ2の反転信号である制御信号φ2バーに基づいて導通するスイッチ15b及びフィルター16bを介してコンパレータ17bに出力される。そして、コンパレータ17bでは、図3に示すように、検出電圧Vc1がしきい値Vth1を超える場合にHレベルとなる出力信号をカウンタ18bに出力する。カウンタ18bはコンパレータ17bから出力されるパルス信号をカウントし、あらかじめ設定されたパルス数をカウントアップすると、Hレベルの検出フラグF2を判定部13に出力する。
【0037】
上記のような検出動作において、容量Cs2の充電電位は電極11a,11bの寄生容量Cp1,Cp2の影響が大きいため、コンパレータ17aのしきい値Vth1を低く設定して、電極11a,11bに指が近づいたことをラフに検出できるようにする。
【0038】
また、容量Cs1の充電電位は寄生容量の影響が小さく、指を電極11a,11b間に近づけると、その充電電位が大きく変化する。例えば、電極11a,11bの面積を7mm×7mm程度とし、その電極11a,11bを覆う絶縁体の膜圧100μm程度とすると、指を電極11a,11bに近づけると10pFの充電電荷量の変化を得ることができる。そして、指で電極11a,11bから1mm以上遠ざけると、充電電荷量の変化は距離に反比例するので、1/10以下となる。
【0039】
従って、コンパレータ17bのしきい値Vth1を高く設定すると、指の接近を高精度に検出することが可能となる。
また、電極11a,11bを覆う絶縁体に弾力性のあるものを使用し、電極11a,11bと絶縁体との間に隙間を設けて絶縁体が撓むようにすると、容量Cs1の充電電荷の変化量を大きくして、検出精度の向上を図ることができる。
【0040】
図6は、前記スイッチ19a,19b,19dを開閉する制御信号φ1,φ3,φ4,φ5を生成する回路を示す。すなわち、帰還容量Cfに並列に接続されるスイッチ19dは、スイッチ19a,19bを不導通状態とした状態で開閉する必要があり、そのような制御信号φ1,φ3,φ4,φ5を生成する回路を示す。
【0041】
所定周波数のクロック信号である入力信号P1は第一の遅延回路21に入力され、第一の遅延回路21から入力信号P1を所定時間遅延させた信号P2が出力される。信号P2はバッファ回路23を介して前記制御信号φ1として出力される。従って、図8に示すように、制御信号φ1は入力信号P1を第一の遅延回路21で遅延させた信号となる。
【0042】
前記信号P2は第二の遅延回路22に入力され、第二の遅延回路22から信号P2を所定時間遅延させた信号P3が出力される。第一及び第二の遅延回路21,22の遅延時間を同一である。
【0043】
前記信号P3は、AND回路24a及びNOR回路25に入力され、AND回路24a及びNOR回路25には前記入力信号P1が入力される。前記AND回路24aの出力信号はAND回路24b,24cに入力され、AND回路24bには前記制御信号φ2の反転信号が入力され、AND回路24cには前記制御信号φ2が入力される。そして、AND回路24bから前記制御信号φ3が出力される。
【0044】
前記AND回路24cとNOR回路25の出力信号はOR回路29aに入力され、そのOR回路29aから前記制御信号φ4が出力される。
前記NOR回路25の出力信号はOR回路29bに入力され、そのOR回路29bには前記制御信号φ2が入力される。そして、OR回路29bから前記制御信号φ5が出力される。
【0045】
このような構成により、制御信号φ1,φ3,φ4,φ5は図8に示すタイミングで切り替わる。従って、スイッチ19dはスイッチ19a,19bがともに不導通となるときに、導通状態と不導通状態とが切り替えられ、スイッチ19a,19bは一方の切り替え動作時には他方が不導通となるように制御される。このような動作により、スイッチ19a,19b,19dの過渡状態での容量Cs1,Cs2,Cs3間の電荷移動による誤差を少なくすることができる。
【0046】
図7は、前記第一の遅延回路21の具体的構成を示す。第二の遅延回路22も同様な構成である。この遅延回路は、6段のインバータ回路26a〜26fが直列に接続され、インバータ回路26b,26c間及び26e,26f間に時定数回路27a,27bが介在されている。
【0047】
また、インバータ回路26cの入力端子はPチャネルMOSトランジスタTp1,Tp2を介して電源VDDに接続され、NチャネルMOSトランジスタTn1,Tn2を介してグランドGNDに接続されている。前記トランジスタTp1,Tn2のゲートはインバータ回路26aの出力端子に接続され、前記トランジスタTp2,Tn1のゲートはインバータ回路26cの出力端子に接続されている。
【0048】
また、インバータ回路26fの入力端子はPチャネルMOSトランジスタTp3,Tp4を介して電源VDDに接続され、NチャネルMOSトランジスタTn3,Tn4を介してグランドGNDに接続されている。前記トランジスタTp3,Tn4のゲートはインバータ回路26dの出力端子に接続され、前記トランジスタTp4,Tn3のゲートはインバータ回路26fの出力端子に接続されている。
【0049】
そして、インバータ回路26aの入力端子に入力信号P1が入力され、インバータ回路26fの出力信号がバッファ回路28を介して信号P2として出力される。
このように構成された第一の遅延回路21では、各インバータ回路26a〜26fの動作遅延時間と時定数回路27a,27bにより遅延時間が生成され、入力信号P1から遅延した信号P2が出力される。
【0050】
なお、トランジスタTp1,Tp2,Tn1,Tn2は、インバータ回路26cの入力信号がしきい値を低電位側あるいは高電位側に超えたとき、インバータ回路26cの出力信号に基づいて、インバータ回路26cの入力信号レベルをグランドGNDレベルあるいは電源VDDレベルまで速やかに移行させるように動作する。トランジスタTp3,Tp4,Tn3,Tn4も同様に動作する。
【0051】
図9は、前記検出回路14を備えた第一及び第二の充電電圧検出部12a,12bの動作を説明する。
制御信号φ2がHレベルとなると、容量Cs2の充電電荷の検出動作が開始され、カウンタ18aはリセットされる。そして、検出回路14では制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、出力信号Voutが出力される。制御信号φ2をHレベルとする期間は、例えば入力される制御信号φ1のパルス数がn個となるまでとする。
【0052】
すると、制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、検出電圧Vc2が出力され、その検出電圧Vc2がコンパレータ17aのしきい値Vth1を超えると、カウンタ18aでコンパレータ17aから出力されるパルス信号がカウントされる。そして、そのカウント値が所定数に達すると、カウンタ18aからHレベルの検出フラグF1が出力される。
【0053】
次いで、制御信号φ2がLレベルとなると、容量Cs1の充電電荷の検出動作が開始され、カウンタ18bはリセットされる。そして、検出回路14では制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、出力信号Voutが出力される。制御信号φ2をLレベルとする期間は、例えば入力される制御信号φ1のパルス数がm個となるまでとする。
【0054】
すると、制御信号φ1,φ3,φ4の切り替え動作により、検出電圧Vc1が出力され、その検出電圧Vc1がコンパレータ17bのしきい値Vth1を超えると、カウンタ18bでコンパレータ17bから出力されるパルス信号がカウントされる。そして、そのカウント値が所定数に達すると、カウンタ18bからHレベルの検出フラグF2が出力される。
【0055】
そして、検出フラグF1,F2がともにHレベルとなると、電極11a,11b間が指で接触されたことを示す判定信号OUTが判定部13から出力される。
上記のような容量センサーでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)電極11a,11bとグランドGNDとの間の容量Cs2の充電電荷の変化を検出回路14でラフに検出し、次いで高精度の検出が容易な電極11a,11b間の容量Cs1の充電電荷の変化を検出回路14で検出し、その検出結果に基づいて電極11a,11b間が指で接触されたか否かを容易に判定することができる。
(2)電極11a,11bとグランドGNDとの間の容量Cs2の充電電荷の変化を検出した検出電圧Vc2と、電極11a,11bの容量Cs1の充電電荷の変化を検出した検出電圧Vc1とを共通の検出回路14で時分割により検出することができる。従って、検出電圧Vc2,Vc1を検出する検出回路14の回路規模を縮小することができる。
(3)スイッチ19a〜19eを制御信号φ1〜φ5で開閉制御することにより、検出電圧Vc2,Vc1を時分割で検出することができる。
(4)検出回路14のスイッチ19a,19b,19d,19eが同時に開閉されないので、検出精度を向上させることができる。
(5)スイッチ19a,19b,19d,19eを同時に開閉させない制御信号φ1、φ3,φ4,φ5を、遅延回路21,22とAND回路24a〜24c、NOR回路25及びOR回路29a,29bにより生成することができる。
(6)カウンタ17a,17bから出力されるパルス信号をカウンタ18a,18bでカウントし、そのカウント数があらかじめ設定した所定値に達したとき検出フラグF1,F2を出力するようにしたので、ノイズによる誤判定を防止することができる。
(第二の実施の形態)
図10〜図12は第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、3個の電極のいずれが接触されたかを検出する容量センサーを構成した場合を示す。
【0056】
図10に示すように、同一形状の3つの電極31b〜31dが並設され、各電極31b〜31d間及び各電極31b〜31dの周囲には、電極31aがレイアウトされている。そして、各電極31a〜31dが絶縁材で覆われている。
【0057】
図11は、この実施の形態の容量センサーの検出回路32を示す。前記第一の実施の形態の検出回路14と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
前記電極31aは、オペアンプ20のマイナス側入力端子に接続され、グランドGNDとの間に容量Cyが存在する。
【0058】
スイッチ19cの一方の端子はオペアンプ20のマイナス側入力端子に接続され、他方の端子と前記電極31b〜31dとの間には、それぞれスイッチ33a〜33cが接続されている。前記各スイッチ33a〜33cは、制御信号φ6〜φ8により開閉制御され、制御信号φ6〜φ8がHレベルとなると導通される。
【0059】
前記電極31aと各電極31b〜31cとの間には、それぞれ容量Cx1,Cx2,Cx3が存在する。
図12は、前記スイッチ19a〜19d,33a〜33cを開閉制御する制御信号φ1〜φ8のタイミング波形を示す。まず、制御信号φ2をHレベルとしてスイッチ19cを導通状態とした状態で制御信号φ1、φ4が一定の周期で同相で切り替わり、かつ制御信号φ5が逆相で切り替わると、電極31aとグランドGNDとの間の容量Cyの充電電圧が検出され、出力信号Voutとして出力される。
【0060】
次いで、制御信号φ2がLレベルとなってスイッチ19cが不導通となり、制御信号φ1、φ3が一定の周期で同相で切り替わり、かつ制御信号φ4が制御信号φ1、φ3と逆相で切り替わる状態で、制御信号φ6〜φ8が順次Hレベルとなる。
【0061】
すると、スイッチ31b〜31cが順次導通して、電極31aと各電極31b〜31dとの間の容量Cx1,Cx2,Cx3の充電電圧が順次検出され、出力信号Voutとして出力される。
【0062】
このような出力信号Voutに基づいて、容量Cyの充電電圧が所定のしきい値を超えたか否かを判定し、さらに容量Cx1,Cx2,Cx3の充電電圧のいずれかが所定のしきい値を超えたか否かを判定することにより、電極31b〜31d上のいずれの位置で指が触れたかを判定することが可能となる。
【0063】
例えば、容量Cyの検出電圧の上昇に続いて、容量Cx1の検出電圧の上昇を検知すれば、電極31b上が触れられた事を検出可能である。また、容量Cyの検出電圧の上昇に続いて、容量Cx2の検出電圧の上昇を検知すれば、電極31c上が触れられた事を検出可能である。同様に、容量Cyの検出電圧の上昇に続いて、容量Cx3の検出電圧の上昇を検知すれば、電極31c上が触れられた事を検出可能である。
【0064】
このような構成により、3つのタッチセンサー部が併設されるタッチセンサースイッチのための容量センサーを構成することができる。
(第三の実施の形態)
図13〜図15は、第三の実施の形態を示す。この実施の形態は図4に示す第一の実施の形態の検出回路14に、オペアンプ20のオフセット電圧をキャンセルする機能を付加した検出回路14aを構成したものである。第一の実施の形態と同一構成部分は同一符号を付して説明する。
【0065】
帰還容量Cfとオペアンプ20の出力端子との間にはスイッチ34aが接続され、そのスイッチ34aは前記制御信号φ4で開閉制御される。
また、帰還容量Cfとスイッチ34aの接続点には、スイッチ34bを介して基準電圧Vcomが供給される。スイッチ34bは、前記制御信号φ1で開閉制御される。
【0066】
このような検出回路14aでは、制御信号φ1がHレベルとなって、スイッチ19dが導通状態となるとき、オペアンプ20のゲインは1となり、オペアンプ20にオフセット電圧がなければ、出力信号Voutは基準電圧Vcomとなる。
【0067】
このとき、スイッチ34bも導通状態となるため、オペアンプ20にオフセット電圧が存在すれば、そのオフセット電圧分が帰還容量Cfに充電される。そして、スイッチ19dが不導通状態となって、容量Cs2,Cs1の充電電荷を検出する時には、オペアンプ20のオフセット電圧をキャンセルした出力信号Voutが出力される。
【0068】
また、制御信号φ1が導通状態となっても、オペアンプ20の出力信号Voutが直ちに基準電圧Vcomにならないことがある。これは、オペアンプ20の入力端子につながる容量の充放電に時間がかかるためである。
【0069】
これを回避するために、オペアンプ20の負荷駆動能力を大きくすると、消費電力が増大する。また、オペアンプ20の負荷駆動能力を小さくすると、出力信号Voutの基準電圧Vcomへの収束が遅延する。
【0070】
そこで、この検出回路14aでは、オペアンプ20の入力端子に制御信号φ6で開閉制御されるスイッチ34cを介して基準電圧Vcomを供給するようにしている。
制御信号φ6は、前記制御信号φ1から図15に示す生成回路で生成される。すなわち、制御信号φ1は遅延回路35に入力され、その遅延回路35の出力信号はインバータ回路36を介してAND回路37に入力される。また、AND回路37には前記制御信号φ1が入力され、AND回路37から前記制御信号φ6が出力される。
【0071】
このような構成により、図14に示すように、制御信号φ6は制御信号φ1の立ち上がりとともに立ち上がってHレベルとなり、遅延回路35で設定された遅延時間後に、制御信号φ1の立ち下がりに先立ってLレベルに復帰する信号となる。
【0072】
従って、制御信号φ1がHレベルとなって、スイッチ19dが導通状態となると、制御信号φ6もHレベルとなってスイッチ34cが導通状態となり、オペアンプ20の入力端子が速やかに基準電圧Vcomレベルとなる。この結果、図14に示すように、オペアンプ20の出力信号Voutが速やかに基準電圧Vcomレベルとなる。
【0073】
上記のように構成された検出回路14aでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)オペアンプ20のオフセット電圧をキャンセルすることができる。
(2)出力信号Voutを基準電圧Vcomレベルにリセットするとき、そのリセット動作を高速化することができる。
(第四の実施の形態)
図16は、第四の実施の形態を示す。この実施の形態は、前記第一の実施の形態のコンパレータ17a,17b、カウンタ18a,18b及び判定部13の動作をマイコン38で行なうようにしたものである。第一の実施の形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0074】
フィルター16a,16bから出力される検出電圧Vc2,Vc1はそれぞれアンプ39a,39bを介してマイコン38に入力される。マイコン38は、アンプ39a,39bから入力されるアナログ信号をA/D変換器でデジタル信号に変換し、そのデジタル信号で検出電圧Vc2,Vc1が所定のしきい値を超えているか否かを判定し、電極11aが指で触れられたか否かを検出する。
【0075】
このような構成により、マイコン38を備えた装置では、第一の実施の形態のコンパレータ17a,17b、カウンタ18a,18b及び判定部13を備えることなく、容量センサーの検出信号を判定することができる。
【0076】
図17は、検出回路14での検出電圧Vc2,Vc1の検出動作をマイコン38から出力される制御信号φxに基づいて制御することにより、検出電圧Vc2,Vc1を共通のフィルター40及びアンプ41を介してマイコン38に出力するようにしたものである。
【0077】
このような構成により、図16に示す構成に比して、フィルター40及びアンプ41を共通化して容量センサーの回路規模を縮小することができる。
上記実施の形態は、以下に示す態様で実施することもできる。
・第一の実施の形態において、電極11a,11b間の容量Cs1の充電電圧の変化は、精度よく検出することができるので、コンパレータ17bの出力信号を検出フラグF2として判定部13に入力してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の容量センサーを示す原理説明図である。
【図2】第一の実施の形態の容量センサーを示すブロック図である。
【図3】コンパレータの動作を示す説明図である。
【図4】検出回路を示す回路図である。
【図5】検出回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図6】制御信号を生成する回路を示す回路図である。
【図7】遅延回路を示す回路図である。
【図8】制御信号を生成する回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図9】充電電圧検出部の動作を示すタイミング波形図である。
【図10】第二の実施の形態の電極を示すレイアウト図である。
【図11】第二の実施の形態の検出回路を示す回路図である。
【図12】検出回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図13】第三の実施の形態の検出回路を示す回路図である。
【図14】第三の実施の形態の検出回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図15】制御信号の生成回路を示す回路図である。
【図16】第四の実施の形態を示すブロック図である。
【図17】第四の実施の形態の変形例を示すブロック図である。
【図18】容量センサーの操作例を示す斜視図である。
【図19】電極の従来例を示すレイアウト図である。
【図20】電極の他の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
11a,11b 電極
12a 第一の充電電圧検出部
12b 第二の充電電圧検出部
13 判定部
14,14a,32 検出回路
Cs2 第一の容量
Cs1 第二の容量
GND 接地端
Vc1,Vc2 検出電圧
F1,F2 検出信号(検出フラグ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と接地端との間の第一の容量の充電電圧の変化を検出する第一の充電電圧検出部と、
複数の電極間の第二の容量の充電電圧の変化を検出する第二の充電電圧検出部と、
前記第一の充電電圧検出部と第二の充電電圧検出部からそれぞれ出力される検出電圧に基づいて判定信号を生成する判定部と
を備えたことを特徴とする容量センサー。
【請求項2】
前記第一の充電電圧検出部は前記第一の容量の充電電圧を検出する検出回路を備え、前記第二の充電電圧検出部は前記第二の充電電圧を検出する検出回路を備え、前記第一の容量の充電電圧を検出する第一の検出動作と、前記第二の容量の充電電圧を検出する第二の検出動作とを共通の検出回路により時分割で行なうことを特徴とする請求項1記載の容量センサー。
【請求項3】
前記第一の充電電圧検出部は、
前記検出回路の第一の検出動作による検出電圧を第一のしきい値と比較し、該検出電圧が第一のしきい値を超えたときHレベルの出力信号を出力する第一のコンパレータと、
前記第一のコンパレータのHレベルの出力信号をカウントしたカウント値に基づいて第一の検出フラグを出力する第一のカウンタと
を備え、
前記第二の充電電圧検出部は、
前記検出回路の第二の検出動作による検出電圧を第二のしきい値と比較し、該検出電圧が第二のしきい値を超えたときHレベルの出力信号を出力する第二のコンパレータと、
前記第二のコンパレータのHレベルの出力信号をカウントしたカウント値に基づいて第二の検出フラグを出力する第二のカウンタと
を備え、
前記第一及び第二の検出フラグに基づいて前記判定信号を生成する判定部と
を備えたことを特徴とする請求項2記載の容量センサー。
【請求項4】
前記第二のしきい値を前記第一のしきい値より高い電圧に設定したことを特徴とする請求項3記載の容量センサー。
【請求項5】
前記検出回路は、
入力端子と出力端子との間に帰還容量が接続されたオペアンプと、
前記帰還容量に並列に接続された第一のスイッチと、
前記オペアンプの入力端子に、前記第一の容量と第二の容量のいずれを接続するかを選択する第二のスイッチと、
導通時に前記第一の容量及び第二の容量に低電位側基準電圧を供給する第三のスイッチと、
導通時に前記第一の容量及び第二の容量に高電位側基準電圧を供給する第四のスイッチと、
前記第一のスイッチを導通させて前記オペアンプの出力信号をリセットするとき、前記第三のスイッチで前記第一及び第二の容量に前記低電位側基準電圧を供給し、前記第一のスイッチを不導通とするとき、前記第四のスイッチで前記第一及び第二の容量に前記高電位側基準電圧を供給することと
を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項6】
前記第一〜第四のスイッチをそれぞれ制御信号で開閉制御し、前記第三のスイッチを不導通とした後、第一のスイッチを導通させ、次いで前記第四のスイッチを導通させる制御信号を生成する生成回路を備えたことを特徴とする請求項5記載の容量センサー。
【請求項7】
複数の電極間の複数の前記第二の容量を前記オペアンプに接続するスイッチを備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の容量センサー。
【請求項8】
前記オペアンプの出力端子に、前記第一のスイッチの導通時に前記オペアンプに入力される基準電圧を供給するスイッチを備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項9】
前記オペアンプの入力端子に、前記第一のスイッチに同期して導通し、前記第一のスイッチの不導通に先立って不導通となるスイッチを介して前記基準電圧を供給することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項10】
前記判定部は、前記第一及び第二の充電電圧検出部から出力される検出電圧をデジタル信号にA/D変換し、前記デジタル信号に基づいて前記判定信号を生成するマイコンとしたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項1】
電極と接地端との間の第一の容量の充電電圧の変化を検出する第一の充電電圧検出部と、
複数の電極間の第二の容量の充電電圧の変化を検出する第二の充電電圧検出部と、
前記第一の充電電圧検出部と第二の充電電圧検出部からそれぞれ出力される検出電圧に基づいて判定信号を生成する判定部と
を備えたことを特徴とする容量センサー。
【請求項2】
前記第一の充電電圧検出部は前記第一の容量の充電電圧を検出する検出回路を備え、前記第二の充電電圧検出部は前記第二の充電電圧を検出する検出回路を備え、前記第一の容量の充電電圧を検出する第一の検出動作と、前記第二の容量の充電電圧を検出する第二の検出動作とを共通の検出回路により時分割で行なうことを特徴とする請求項1記載の容量センサー。
【請求項3】
前記第一の充電電圧検出部は、
前記検出回路の第一の検出動作による検出電圧を第一のしきい値と比較し、該検出電圧が第一のしきい値を超えたときHレベルの出力信号を出力する第一のコンパレータと、
前記第一のコンパレータのHレベルの出力信号をカウントしたカウント値に基づいて第一の検出フラグを出力する第一のカウンタと
を備え、
前記第二の充電電圧検出部は、
前記検出回路の第二の検出動作による検出電圧を第二のしきい値と比較し、該検出電圧が第二のしきい値を超えたときHレベルの出力信号を出力する第二のコンパレータと、
前記第二のコンパレータのHレベルの出力信号をカウントしたカウント値に基づいて第二の検出フラグを出力する第二のカウンタと
を備え、
前記第一及び第二の検出フラグに基づいて前記判定信号を生成する判定部と
を備えたことを特徴とする請求項2記載の容量センサー。
【請求項4】
前記第二のしきい値を前記第一のしきい値より高い電圧に設定したことを特徴とする請求項3記載の容量センサー。
【請求項5】
前記検出回路は、
入力端子と出力端子との間に帰還容量が接続されたオペアンプと、
前記帰還容量に並列に接続された第一のスイッチと、
前記オペアンプの入力端子に、前記第一の容量と第二の容量のいずれを接続するかを選択する第二のスイッチと、
導通時に前記第一の容量及び第二の容量に低電位側基準電圧を供給する第三のスイッチと、
導通時に前記第一の容量及び第二の容量に高電位側基準電圧を供給する第四のスイッチと、
前記第一のスイッチを導通させて前記オペアンプの出力信号をリセットするとき、前記第三のスイッチで前記第一及び第二の容量に前記低電位側基準電圧を供給し、前記第一のスイッチを不導通とするとき、前記第四のスイッチで前記第一及び第二の容量に前記高電位側基準電圧を供給することと
を備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項6】
前記第一〜第四のスイッチをそれぞれ制御信号で開閉制御し、前記第三のスイッチを不導通とした後、第一のスイッチを導通させ、次いで前記第四のスイッチを導通させる制御信号を生成する生成回路を備えたことを特徴とする請求項5記載の容量センサー。
【請求項7】
複数の電極間の複数の前記第二の容量を前記オペアンプに接続するスイッチを備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の容量センサー。
【請求項8】
前記オペアンプの出力端子に、前記第一のスイッチの導通時に前記オペアンプに入力される基準電圧を供給するスイッチを備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項9】
前記オペアンプの入力端子に、前記第一のスイッチに同期して導通し、前記第一のスイッチの不導通に先立って不導通となるスイッチを介して前記基準電圧を供給することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の容量センサー。
【請求項10】
前記判定部は、前記第一及び第二の充電電圧検出部から出力される検出電圧をデジタル信号にA/D変換し、前記デジタル信号に基づいて前記判定信号を生成するマイコンとしたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の容量センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−216506(P2009−216506A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59779(P2008−59779)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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