説明

容量電圧変換回路、それを用いた入力装置、電子機器、ならびに容量電圧変換方法

【課題】複数のセンサ電極の容量を同時に検出可能な容量電圧変換回路を提供する。
【解決手段】C/I変換回路101〜nはそれぞれ、センサ容量Csごとに設けられ、対応するセンサ容量Csの容量値に応じた検出電流Isを生成する。電流平均化回路20は、複数のC/I変換回路101〜nにより生成される検出電流Is1〜nを平均化する。I/V変換回路301〜nは、それぞれがセンサ容量Csごとに設けられ、対応する検出電流Isと平均化された検出電流IAVEとの差分電流を検出電圧Vs1〜nに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の測定に用いられる容量電圧変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータや携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器は、指を接触あるいは近接することによって電子機器を操作するための入力装置を備えるものが主流となっている。こうした入力装置としては、ジョイスティック、タッチパッドなどが知られている。
【0003】
こうしたセンサとして、静電容量を利用した静電容量センサが知られている。静電容量センサは、センサ電極を含む。ユーザがセンサ電極に近接、接触すると、センサ電極が形成する静電容量(以下、単に容量ともいう)が変化する。この容量変化を容量電圧変換回路を用いて電気信号に変換することにより、ユーザによる接触の有無を判定する。
【0004】
タッチパネルは、複数のセンサ電極によって構成される。X−Yマトリクス型のタッチパネルは、マトリクスの行ごとに設けられた行センサ電極と、列ごとに設けられた列センサ電極を含む。複数のセンサ電極それぞれの容量変化を検出することにより、ユーザが接触した座標を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−325858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の容量検出回路は、複数のセンサ電極の容量を、時分割的に検出するのが一般的であった。たとえば上述のX−Yマトリクス型のタッチパネルでは、複数の列センサ電極それぞれの容量を順に検出し、複数の行センサ電極それぞれの容量を順に検出していた。この手法では、各センサ電極ごとに、容量検出のタイミングが異なっているため、センサ電極ごとに異なるノイズの影響を受けるという問題があった。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、複数のセンサ電極の容量を同時に検出可能な容量電圧変換回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する容量電圧変換回路に関する。容量電圧変換回路は、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、対応するセンサ容量の容量値に応じた検出電流を生成する、複数の容量電流変換回路と、複数の容量電流変換回路により生成される検出電流を平均化し、平均電流を生成する電流平均化回路と、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、対応する検出電流と平均電流との差分電流を電圧に変換する、複数の電流電圧変換回路と、を備える。
【0009】
この態様において、各検出電流は、対応するセンサ容量の容量値に応じており、平均電流は、複数のセンサ容量の容量値の平均値に応じている。したがって、各チャンネルの電流電圧変換回路により生成される電圧は、各チャンネルのセンサ容量とすべてのチャンネルの平均容量との差を示す。この構成によれば、複数のセンサ容量の容量値を同時に検出できる。
【0010】
本発明の別の態様もまた、容量電圧変換回路である。この容量電圧変換回路は、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、対応するセンサ容量の電荷を初期化する複数のリセットスイッチと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれの一端の電位が固定される、複数の積分用キャパシタと、複数の積分用キャパシタそれぞれの電圧を初期化する初期化回路と、それぞれがセンサ容量ごとに設けられた複数のカレントミラー回路であって、それぞれの入力側の第1トランジスタが、対応するセンサ容量と接続され、それぞれの出力側の第2トランジスタに流れる電流を、対応する積分用キャパシタに第1の向きで供給する、複数のカレントミラー回路と、複数のセンサ容量それぞれに流れる検出電流の平均電流を生成し、当該平均電流を複数の積分用キャパシタそれぞれに第2の向きで供給する電流平均化回路と、を備える。
【0011】
この態様によると、各チャンネルにおいて、積分用キャパシタを、そのチャンネルの検出電流で充電(または放電)し、平均電流によって放電(または充電)することにより、複数のセンサ容量の容量値を同時に検出できる。
【0012】
本発明のさらに別の態様もまた、容量電圧変換回路である。この容量電圧変換回路は、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれの一端の電位が固定されている、複数の積分用キャパシタと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応するセンサ容量と並列に接続された、複数のリセットスイッチと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれの一端が対応するセンサ容量と接続される、複数のセンススイッチと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応するセンススイッチの経路上に設けられる、複数のMOSFETである第1トランジスタと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれのゲートが対応する第1トランジスタのゲートと接続され、それぞれのドレインが対応する積分用キャパシタと接続される、複数のMOSFETである第2トランジスタと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれのゲートが対応する第1トランジスタのゲートと接続される複数のMOSFETである第5トランジスタと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応する第5トランジスタの経路上に設けられた、複数の第3トランジスタと、それぞれがセンサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応する第3トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続され、それぞれのドレインが対応する積分用キャパシタに接続される、複数の第4トランジスタと、を備える。
【0013】
この態様によると、複数のセンサ容量の容量値を同時に検出できる。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、入力装置である。この入力装置は、複数のセンサ容量と、複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する、上述のいずれかの態様の容量電圧変換回路と、を備える。複数のセンサ容量は、実質的にマトリクス状に配置されてもよい。
【0015】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る容量電圧変換回路によれば、複数のセンサ容量の容量値を同時に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る入力装置を備える電子機器の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る制御ICの構成を示すブロック図である。
【図3】制御ICの具体的な構成例を示す回路図である。
【図4】実施の形態に係る制御ICの動作を示す波形図である。
【図5】制御ICの第1の変形例を示す回路図である。
【図6】図5の制御ICの動作を示す波形図である。
【図7】第2の変形例に係る制御IC4aの構成を示すブロック図である。
【図8】図7の制御ICの具体的な構成例を示す回路図である。
【図9】図8の制御ICの、スタンバイモードの動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0020】
図1は、実施の形態に係る入力装置2を備える電子機器1の構成を示す図である。電子機器1は、入力装置2に加えて、DSP(Digital Signal Processor)6およびLCD(Liquid Crystal Display)7を備える。入力装置2は、タッチパネル3および制御IC4を備える。タッチパネル3は、規則的に配置された複数のセンサ容量Cs1〜nを含む。複数のセンサ容量Cs1〜nは、実質的にマトリクス状に配置される。制御IC4は、複数のセンサ容量Cs1〜nそれぞれと接続され、それぞれの容量値を検出し、それぞれの容量値を示すデータをDSP6に出力する。
【0021】
電子機器1のユーザが、指5あるいはペンなどでタッチパネル3に接触すると、接触した座標のセンサ容量Csの容量値が変化する。DSP6は、複数のセンサ容量Csの容量値にもとづき、ユーザが接触した座標を検出する。たとえばタッチパネル3は、LCD7の表面に設けられてもよいし、別の箇所に設けられてもよい。
【0022】
以上が電子機器1の全体の構成である。続いて入力装置2について詳細に説明する。
【0023】
図2は、実施の形態に係る制御IC4の構成を示すブロック図である。制御IC4は、C/V変換回路100、マルチプレクサ40、A/Dコンバータ50を備え、ひとつの半導体基板上に集積化されている。DSP6の機能の一部も、制御IC4に内蔵されてもよい。
【0024】
C/V変換回路100は、複数のセンサ容量Cs1〜nそれぞれの容量値を、それぞれに応じた検出電圧に変換する。後述のように、センサ容量Csごとの検出電圧は、同時に生成され、ホールドされる。バッファBUF1〜BUFnは、検出電圧Vs1〜nを受け、マルチプレクサ40に出力する。マルチプレクサ40は、時分割で複数の検出電圧Vs1〜nを順に選択していく。A/Dコンバータ50は、マルチプレクサ40により選択された検出電圧Vsを順にデジタル値DOUTに変換する。
【0025】
C/V変換回路100は、複数のセンサ容量Cs1〜nそれぞれの容量値を、検出電圧Vs1〜nに変換する。C/V変換回路100は、複数のC/I変換回路101〜n、電流平均化回路20、複数のI/V変換回路301〜nを備える。
【0026】
C/I変換回路101〜nはそれぞれ、センサ容量Cs1〜nごとに設けられる。C/I変換回路10(1≦i≦n)は、対応するセンサ容量Csの容量値に応じた検出電流Isを生成し、対応するI/V変換回路30および電流平均化回路20へと出力する。
【0027】
電流平均化回路20は、複数のC/I変換回路101〜nにより生成される検出電流Is1〜nを平均化する。平均化された検出電流(以下、平均電流ともいう)IAVEは、複数のI/V変換回路301〜nそれぞれへと供給される。
AVE=Σi=1:nIs/n …(1)
【0028】
複数のI/V変換回路301〜nはそれぞれ、センサ容量Cs1〜nごとに設けられる。I/V変換回路30は、対応する検出電流Isと、検出電流IAVEとの差分電流IDIFFi(=Is−IAVE)を電圧に変換し、検出電圧Vsとして出力する。
【0029】
図3は、制御IC4の具体的な構成例を示す回路図である。図3には、センサ容量Cs1、2に対応する部分のみが示される。
【0030】
C/I変換回路10は、リセットスイッチSW1、センススイッチSW2、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2を備える。
リセットスイッチSW1は、対応するセンサ容量Csの電荷を初期化するために設けられる。たとえばリセットスイッチSW1は、センサ容量Csと並列に設けられる。リセットスイッチSW1がオンすると、センサ容量Csの電荷が放電されて初期化される。つまりセンサ容量Csの両端間の電位差はゼロとなる。たとえばリセットスイッチSW1はNチャンネルMOSFETを含み、そのゲートに入力されるリセット信号RSTがアサート(ハイレベル)されるとオンする。
【0031】
センススイッチSW2および第1トランジスタM1は、センサ容量Csと固定電圧端子(ここでは電源端子)の間に順に直列に設けられる。センススイッチSW2は、PチャンネルMOSFETであり、そのゲートに入力されるセンス信号EVALBがアサート(ローレベル)されるとオンする。
【0032】
第1トランジスタM1は、PチャンネルMOSFETである。具体的にはそのドレインがセンススイッチSW2を介してセンサ容量Csと接続され、そのソースは電源端子と接続される。また、第1トランジスタM1のゲートドレイン間は結線される。第1トランジスタM1には、対応するセンサ容量Csの容量値に応じた充電電流ICHGiが流れる。
【0033】
第2トランジスタM2は、第1トランジスタM1と同型のPチャンネルMOSFETであり、第1トランジスタM1とカレントミラー回路を形成するように接続される。具体的には、第2トランジスタM2のゲートは第1トランジスタM1のゲートと接続され、そのソースは電源端子と接続される。第2トランジスタM2には、対応するセンサ容量Csの容量値に応じた検出電流Isが流れる。トランジスタM1とM2のミラー比(サイズ比)をK1とするとき、検出電流Isは式(2)で与えられる。
Is=ICHGi×K1 …(2)
【0034】
第1トランジスタM1および第2トランジスタM2が構成するカレントミラー回路は、第2トランジスタM2に流れる検出電流Isを、対応する積分用キャパシタCINTiに、第1の向き(図3では充電する向き)で供給する。
【0035】
電流平均化回路20は、複数の第3トランジスタM3、複数の第4トランジスタM4、複数の第5トランジスタM5を含む。
複数の第5トランジスタM5はそれぞれ、センサ容量Csごとに設けられる。第5トランジスタM5は、第1トランジスタM1と同型のMOSFETであり、対応する第1トランジスタM1とカレントミラー回路を形成するように接続され、対応する検出電流Isに応じた電流Is’を生成する。
【0036】
複数の第3トランジスタM3はそれぞれ容量センサCsごとに、対応する検出電流Isに応じた電流Is’の経路上に設けられる。複数の第3トランジスタM3の制御端子(ゲート)は共通に接続される。具体的には、第3トランジスタM3のソースは接地され、そのドレインは対応する第5トランジスタM5のドレインと接続される。
【0037】
複数の第4トランジスタM4はそれぞれ、センサ容量Csごとに設けられる。第4トランジスタM4は、対応する第3トランジスタM3とカレントミラー回路を形成するように接続される。全チャンネルの第3トランジスタM3と第4トランジスタM4のサイズは等しい。各第4トランジスタM4に流れる電流は、平均化された検出電流IAVEとして、対応するI/V変換回路30へと供給される。具体的には、電流平均化回路20は、平均電流IAVEをそれぞれ、積分用キャパシタCINTそれぞれに、第2の向き(図3では放電する向き)で供給する。
【0038】
I/V変換回路30はそれぞれ、積分用キャパシタCINTおよび初期化スイッチSW3を含む。積分用キャパシタCINTの一端は接地され、その電位が固定される。積分用キャパシタCINTiには、対応する検出電流Isが第1の向き(充電)で供給され、平均電流IAVEが第2の向き(放電)で供給される。その結果、積分用キャパシタCINTiは、差分電流IDIFFi(=Is−IAVE)によって充放電される。
【0039】
初期化スイッチSW3は、検出に先立ち、積分用キャパシタCINTの電圧を初期化する初期化回路として機能する。初期化スイッチSW3の一端は積分用キャパシタCINTと接続され、その他端にはバッファ(ボルテージフォロア)52によって基準電圧VCMが印加される。初期化スイッチSW3はトランスファゲートであってもよいし、その他のスイッチであってもよい。初期化スイッチSW3は、初期化信号VCM_SWがアサートされると、オン状態となる。基準電圧VCMは、たとえば電源電圧Vddと接地電圧Vssの中点付近の電圧であってもよい。
【0040】
図2のマルチプレクサ40は、図3において、チャンネルごとのスイッチSW41〜nとして示される。また、図2のA/Dコンバータ50は、図3において、2つのA/DコンバータADC1、ADC2に分割されている。A/DコンバータADC1には、奇数チャンネルの検出電圧Vs1,3,…が割り当てられ、A/DコンバータADC2には、偶数チャンネルの検出電圧Vs2,4,…が割り当てられる。奇数チャンネルのスイッチSW41,3,…の出力は共通に接続され、A/DコンバータADC1の入力と接続される。偶数チャンネルのスイッチSW2,4,…の出力は、共通に接続され、A/DコンバータADC2の入力と接続される。なお、単一のA/Dコンバータによって、全チャンネルの検出電圧Vsをデジタル値に変換してもよい。
【0041】
以上が制御IC4の具体的な構成である。続いてその動作を説明する。図4は、実施の形態に係る制御IC4の動作を示す波形図である。
【0042】
まずバッファ52がオン状態となり基準電圧VCMが所定レベルとなる。またすべてのチャンネルの初期化信号VCM_SWがアサートされ、初期化スイッチSW31〜nがオンする(時刻t0)。これにより、各チャンネルの積分用キャパシタCINT1〜nの電圧レベルが、基準電圧VCMに初期化される。積分用キャパシタCINTの初期化が終了すると、基準電圧VCMが0Vとなり、初期化信号VCM_SWがネゲートされ、初期化スイッチSW31〜nがオフする。
【0043】
続いて、リセット信号RSTがアサートされ、リセットスイッチSW11〜nがオンする。これによりセンサ容量Cs1〜nの電荷がゼロとなり、初期化される(時刻t1)。その後、リセット信号RSTがネゲートされ、リセットスイッチSW1〜nがオフする。
【0044】
続いてセンス信号EVALBがアサート(ローレベル)され、センススイッチSW21〜nがオンする。
第iチャンネルに着目する。センススイッチSW2がオンすると、センサ容量Csに対して、第1トランジスタM1およびセンススイッチSW2を介して充電電流ICHGiが流れ、センサ容量Csの電位が上昇する。そしてその電位Vxが(Vdd−Vth)まで上昇すると、第1トランジスタM1がオフし、充電が停止する。Vthは第1トランジスタM1のゲートソース間しきい値電圧である。この充電によってセンサ容量Csに供給される電荷量は、
Qs=C・V=Cs×(Vdd−Vth) …(3)
となり、センサ容量Csの容量値に依存する。つまりC/I変換回路10は、対応するセンサ容量Csの電位が所定レベル(Vdd−Vth)に達するまで、センサ容量Csに電流ICHGiを供給する。
【0045】
C/I変換回路10は、充電電流ICHGiをコピーし、容量値に応じた検出電流Isを生成して、積分用キャパシタCINTを充電する。Is=K1×ICHGiであるから、積分用キャパシタCINTiに供給される電荷量QINTiは、式(4)で与えられる。
INTi=Qs×K1 …(4)
【0046】
一方、電流平均化回路20は、各チャンネルの検出電流Is1〜nの平均電流IAVEによって、積分用キャパシタCINTiを放電する。電流平均化回路20によって積分用キャパシタCINTiから放電される電荷量QINTAVEは、式(5)で与えられる。
INTAVE=QsAVE×K1 …(5)
ここでQsAVEは、全チャンネルのセンサ容量Cs1〜nに供給される電荷量の平均値ΣQs/nであり、式(6)で与えられる。
QsAVE=ΣQs/n=ΣCs/n×(Vdd−Vth) …(6)
【0047】
センサ容量Csが、全チャンネルのセンサ容量Cs1〜nの平均値CsAVEより大きい場合、Is>IAVEとなるから、積分用キャパシタCINTiは充電され、検出電圧Vsは初期値である基準電圧VCMよりもΔVだけ高くなる。
ΔV=(QINTi−QINTAVE)/CINTi
=(Qs−QsAVE)×K1/CINTi
=(Cs−ΣCs/n)/CINTi×K1×(Vdd−Vth) …(7)
【0048】
反対に、センサ容量Csが平均値CsAVEより小さい場合、つまりQs<QsAVEのとき、Is<IAVEとなるから、積分用キャパシタCINTiは放電され、検出電圧Vsは初期値である基準電圧VCMよりもΔVだけ低くなる。
【0049】
センサ容量Csが平均値CsAVEと等しい場合、つまりQs=QsAVEのとき、Is=IAVEとなるから、積分用キャパシタCINTiの電荷量は変化せず、ΔV=0となる。
【0050】
最終的な検出電圧Vsは、式(8)で与えられる。
Vs=VCM+ΔV
=VCM+(Cs−ΣCs/n)/CINTi×K1×(Vdd−Vth)
…(8)
【0051】
このようにして、各チャンネルのセンサ容量Cs1〜nの容量変化が検出電圧Vs1〜nに変換され、積分用キャパシタCINT1〜nにホールドされる。
【0052】
その後、適切なシーケンスにてスイッチSW41〜nを制御することにより、2つのA/DコンバータADC1、ADC2によって、各チャンネルの検出電圧Vs1〜nをデジタル値に変換する。
【0053】
以上が制御IC4の動作である。
このC/V変換回路100によれば、センサ容量Cs1〜nそれぞれ容量値を、それらの平均値CsAVE(=ΣCs/n)との差に比例した電圧として検出できる。ここでチャンネル数nが十分大きく、各容量値の変化量が小さければ、CsAVEは一定とみなすことができ、検出電圧Vsはセンサ容量Csの変化量に実質的に線形に変化する。
【0054】
このC/V変換回路100では、複数チャンネルのセンサ容量Csの容量変化を、同時に検出できる。したがって、タッチパネル3が受けるノイズが、時々刻々と変化する状況においても、コモンモードノイズをキャンセルできるため、従来の方式に比べて、ノイズ耐性を高めることができる。
【0055】
また式(8)から明らかなように、容量変化に対する検出電圧Vsの感度は、C/I変換回路10および電流平均化回路20のミラー比K1と、積分用キャパシタCINTの容量値によって調節することができる。
【0056】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0057】
(第1の変形例)
図5は、第1の変形例に係る制御IC4の構成を示す回路図である。図5には、第1チャンネルの構成のみが示される。実際の回路では、制御IC4のセンサ容量Csが接続される端子Nsに、保護ダイオードやパッド(いずれも不図示)が接続されており、それらに起因する寄生容量Cpが存在する。
【0058】
具体的には、第1トランジスタM1には、センサ容量Csに対する充電電流に加えて寄生容量Cpに対する充電電流が流れることになる。寄生容量Cpに流れる電流は、式(9)で与えられる。
Qp=Cp×(Vdd−Vth) …(9)
この電荷は、内部キャパシタCINTに充電されてしまう。全チャンネルの寄生容量Cp1〜nが等しければ、それらの影響はキャンセルされるが、チャンネルごとに寄生容量が異なる場合、センサ容量Csの検出に悪影響を及ぼす
【0059】
そこで図5の制御IC4aは、チャンネルごとに、寄生容量Cpをキャンセルするためのオフセットキャンセル回路60をさらに備える。オフセットキャンセル回路60は、対応するセンサ容量Csが接続されるノード(ライン)Nsに所定の期間、所定の電流Irefを供給する。
【0060】
具体的には、オフセットキャンセル回路60は、所定の基準電流Irefを生成する電流源62と、基準電流Irefをコピーし、ノードNsに供給するカレントミラー回路64と、カレントミラー回路64の出力電流の経路上に設けられ、所定の期間オンするキャンセル用スイッチSW5と、を含んでもよい。キャンセル用スイッチSW5は、制御信号PWMB[1]がアサート(ローレベル)の期間、オンとなる。
【0061】
続いて図5のC/V変換回路100aの動作を説明する。図6は、図5の制御IC4aの動作を示す波形図である。
センス信号EVALBのアサートに先立ち、各チャンネルにおいて制御信号PWMB[i]があるキャリブレーション期間Tの間、アサート(ローレベル)される。キャリブレーション期間Tは、チャンネルごとに異なってもよい。キャリブレーション期間Tにおいて、ノードNsには、
Q=Iref×T
なる電荷が供給される。この電荷量が、Cp×(Vdd−Vth)と等しければ、寄生容量Cpの影響をキャンセルできる。このときのTは、
=Cp×(Vdd−Vth)/Iref
で与えられる。キャリブレーション期間Tを全チャンネルで共通の長さとし、チャンネルごとに基準電流Irefの値を調節してもよい。あるいは、キャリブレーション期間Tと基準電流Irefの両方を調節してもよい。
【0062】
このようにオフセットキャンセル回路60を設けることにより、寄生容量Cpの影響をキャンセルでき、センサ容量Csの容量変化を高精度で検出できる。
【0063】
(第2の変形例)
入力装置2が搭載される電子機器は、スタンバイ状態(スリープ状態)と通常状態の2つの状態が切りかえられる。入力装置2は、スタンバイ状態においてスタンバイモードに、通常状態において通常モードに設定される。通常モードでは、タッチパネル3の各センサ容量Csの容量変化が監視される。一方、スタンバイモードでは、電子機器1の消費電力を削減するため、タッチパネル3にユーザが接触したか否かが監視される。そして、スタンバイモードにおいて、ユーザがタッチパネル3に接触すると、通常モードに復帰し、通常の入力が可能となる。この変形例では、スタンバイモードにおいて、低消費電力でユーザによるタッチパネル3の接触の有無を検出するための技術を説明する。
【0064】
上述のように、各検出電流Isは、対応するセンサ容量Csの容量値に応じており、平均電流IAVEは、複数のセンサ容量Csの容量値の平均値に応じている。そして、ユーザがタッチパネル3のいずれかの箇所に接触すれば、センサ容量Csの平均値は変動する。この変形例に係る入力装置2aは、この原理を利用したものであり、平均電流IAVEにもとづいて、ユーザが複数のセンサ容量Csの少なくともひとつに接触したか否かを判定する。
【0065】
図7は、第2の変形例に係る制御IC4aの構成を示すブロック図である。制御IC4aは、図2の制御IC4に加えて、基準容量CREF、第2C/I変換回路11、第2I/V変換回路31、バッファBUFn+1を備える。
【0066】
第2C/I変換回路11は、C/I変換回路10と同様に構成され、基準容量CREFの容量値に応じた基準電流IREFを生成する。第2I/V変換回路31は、I/V変換回路30と同様に構成され、電流平均化回路20aにより生成される平均電流IAVEと、基準電流IREFの差分電流IDIFF(=IREF−IAVE)を、電圧Vsn+1に変換する。
【0067】
電流平均化回路20aは、複数の容量電流変換回路10により生成される検出電流Isに加えて、基準電流IREFを平均化することにより、平均電流IAVEを生成する。
【0068】
この構成において、基準容量CREFの容量値は固定されているため、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かによらずに、基準電流IREFは一定値をとる。したがって、第2I/V変換回路31において生成される差分電流IREF−IAVEは、平均電流IAVEに応じた値をとる。そこでスタンバイモードでは、第2電流電圧変換回路31の出力電圧Vsn+1にもとづき、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かを判定することができる。
【0069】
通常モードでは、マルチプレクサ40は、複数の電圧Vs〜Vsをサイクリックに選択する。そしてA/Dコンバータ50は、複数の電圧Vs〜Vsを順にデジタル値に変換する。これに対してスタンバイモードにおいては、マルチプレクサ40は、第2I/V変換回路31からのVsn+1を固定的に選択する。そしてA/Dコンバータ50は、電圧Vsn+1のみをデジタル値に変換する。これにより、スタンバイモードにおいて、マルチプレクサ40の切りかえ処理が不要となるため、消費電力を低減できる。
【0070】
また、A/Dコンバータ50も1チャンネルの電圧Vsn+1を変換すれば足りるため、全チャンネルをA/D変換する場合に比べて、消費電力を格段に削減できる。さらにA/Dコンバータ50の出力データを受けるDSP6は、1チャンネルの電圧Vsn+1のみを処理することにより、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かを検出するため、DSP6の演算量も格段に削減することができる。
【0071】
さらに消費電力を削減するために、スタンバイモードにおいて、I/V変換回路30〜30やバッファBUF〜BUFなど、不要な回路ブロックを停止することができる。
【0072】
図8は、図7の制御IC4aの具体的な構成例を示す回路図である。
第2リセットスイッチSW6、第2センススイッチSW7、第2カレントミラー回路(M6、M7)を含む。
第2リセットスイッチSW6は、基準容量CREFと並列に設けられ、そのオン状態において基準容量CREFの電荷を初期化する。第2センススイッチSW7の一端は、基準容量CREFと接続される。第6トランジスタM6および第7トランジスタM7は、第2カレントミラー回路を構成する。第6トランジスタM6は、第2センススイッチSW7の経路上に設けられ、第2センススイッチSW7を介して基準容量CREFと接続される。第2カレントミラー回路は、その出力側の第7トランジスタM7に流れる電流IREFを、第2積分用キャパシタCINTn+1に第1の向きで供給する。
【0073】
第2積分用キャパシタCINTn+1は、基準容量CREFに対して設けられ、その一端の電位が固定される。第2初期化回路である初期化スイッチSW3n+1は、第2積分用キャパシタCINTn+1の電圧を初期化するために設けられる。
【0074】
電流平均化回路20aは、複数のセンサ容量Cs1〜nそれぞれに流れる検出電流Is1〜n’に加えて、基準容量CREFに流れる基準電流IREF’を平均化することにより平均電流IAVEを生成し、平均電流IAVEを複数の積分用キャパシタCINT1〜nおよび第2積分用キャパシタCINTn+1それぞれに第2の向きで供給する。
【0075】
電流平均化回路20aは、図3の電流平均化回路20に構成に加えて、第8トランジスタM8、第9トランジスタM9、第10トランジスタM10を含む。第10トランジスタM10のゲートは、第6トランジスタM6のゲートと接続される。第8トランジスタM8は、第10トランジスタM10の経路上に設けられる。
【0076】
第9トランジスタM9は、第8トランジスタM8とカレントミラー回路を形成するように接続され、そのドレインは、第2積分用キャパシタCINTn+1に接続される。
【0077】
スタンバイモードにおいては、第2積分用キャパシタCINTn+1の電圧Vsn+1にもとづき、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かが判定される。
【0078】
基準容量CREFは、制御IC4に内蔵され、可変容量として構成されることが好ましい。後述のように、電圧Vsn+1は、基準容量CREFの容量値と、センサ容量Csの平均容量の差分に応じた値をとる。したがって基準容量CREFを可変とすることにより、電圧Vsn+1のレンジを、後段の回路に適合させることができる。
【0079】
以上が制御IC4aの構成である。続いてその動作を説明する。図9は、図8の制御IC4aの、スタンバイモードの動作を示す波形図である。
【0080】
スタンバイモードにおいて、時刻t2より前の動作は、図4の波形図と同様である。
まずバッファ52がオン状態となり基準電圧VCMが所定レベルとなる。またすべてのチャンネルの初期化信号VCM_SWがアサートされ、初期化スイッチSW31〜n+1がオンする(時刻t0)。これにより、各チャンネルの積分用キャパシタCINT1〜n+1の電圧レベルが、基準電圧VCMに初期化される。積分用キャパシタCINTの初期化が終了すると、基準電圧VCMが0Vとなり、初期化信号VCM_SWがネゲートされ、初期化スイッチSW31〜n+1がオフする。
【0081】
続いて、リセット信号RSTがアサートされ、リセットスイッチSW11〜nおよびSW6がオンする。これによりセンサ容量Cs1〜nの電荷がゼロとなり、初期化される(時刻t1)。その後、リセット信号RSTがネゲートされ、リセットスイッチSW11〜nおよびSW6がオフする。
【0082】
続いてセンス信号EVALBがアサート(ローレベル)され、センススイッチSW21〜nおよびSW7がオンする。その結果、C/I変換回路10および11は、対応するセンサ容量Csおよび基準容量CREFの電位が所定レベル(Vdd−Vth)に達するまで、センサ容量Csおよび基準容量CREFに電流ICHGiを供給する。
【0083】
n+1チャンネルに着目する。第2積分用キャパシタCINTn+1に第1の向きで供給される電流IREFは、ユーザがタッチパネル3に接触しているか否かにかかわらず一定値をとる。一方、第2積分用キャパシタCINTn+1に第2の向きで供給される電流IAVEは、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かに応じて変化する。
【0084】
基準容量CREFが、複数のセンサ容量Csの平均値と等しければ、第2積分用キャパシタCINTn+1の充電電流IREFと放電電流IAVEが等しくなるため、その電位Vsn+1は、基準電圧VCMと等しくなる。また基準容量CREFが、複数のセンサ容量Csの平均値より大きければ、IREF>IAVEとなり、その電位Vsn+1は、基準電圧VCMより高くなる。
反対に基準容量CREFが、複数のセンサ容量Csの平均値より小さければ、IREF<IAVEとなり、その電位Vsn+1は、基準電圧VCMより低くなる。
【0085】
ここで、ユーザがタッチパネル3に接触すると、複数のセンサ容量Csの少なくともひとつの容量値が増大するため、複数のセンサ容量Csの平均値も増大する。したがって、第2積分用キャパシタCINTn+1の電位Vsn+1は、ユーザがタッチパネル3に接触したか否かに応じて、異なるレベルをとる。
【0086】
センス信号EVALBをアサートした後、マルチプレクサ40aのスイッチAD_SWn+1がオンし、電圧Vsn+1がA/DコンバータADC2に入力され、デジタル値に変換される。DSP6は、このデジタル値にもとづき、ユーザがタッチパネル3に接触しているか判定し、接触を検出した場合、通常モードに移行する。
【0087】
図9に示すように、スタンバイモードでは、スイッチAD_SW1〜AD_SWnは常にオフしており、マルチプレクサ40aは電圧Vsn+1を固定的に選択する。したがってスイッチの切りかえが不要である。また、バッファBUF1〜nを動作させる必要がない。さらに、A/D変換も、(n+1)チャンネルの1回のみでよい。また、制御IC4からDSP6に対して送信するデータも、1チャンネル分である。これらのことから、制御IC4の消費電流を大幅に削減できる。
【0088】
さらにDSP6においても、1チャンネル分のデータに応じて、ユーザがタッチパネル3に接触しているかを判定できる。この判定は、DSP6からの電圧Vsn+1に応じたデジタルデータを、しきい値と比較すればよく、きわめて簡易な処理である。したがって、DSP6の演算量を大幅に削減できる。
【0089】
(その他の変形例)
実施の形態では、センサ容量Csが実質的にマトリクス状に配置されるタッチパネル3を例に説明したが、C/V変換回路100の適用はそれに限定されない。たとえばC/V変換回路100は、X−Y型のタッチパネルにも適用可能であり、この場合、複数の行センサ電極と、複数の列センサ電極の容量値を、同時に検出できる。
【0090】
実施の形態で示されるC/V変換回路100は、天地反転してもよい。当業者であれば、この際にPチャンネルMOSFETとNチャンネルMOSFETを適宜置換すればよいことが理解できる。このときの充電と放電は逆となるが、本質的な動作は同じである。一部のトランジスタを、MOSFETに代えて、バイポーラトランジスタに置換してもよい。
【0091】
実施の形態においては、容量電圧変換回路100を静電容量の変化を利用した入力装置に適用した場合について説明したが、容量電圧変換回路100の用途はこれに限定されるものではない。たとえば、キャパシタ型マイクロフォンなど、ダイアフラム電極とバックプレート電極によってキャパシタが形成され、音圧によりキャパシタの静電容量が変化するようなマイクロフォンに適用することができる。
また、容量電圧変換回路100は非常に小さな静電容量の変化を増幅して検出することができるため、その他の様々なアプリケーションに用いることができる。
【0092】
実施の形態においては、容量電圧変換回路100はひとつの半導体集積回路上に一体集積化される場合について説明したがこれには限定されず、各回路ブロックをチップ部品やディスクリート素子を用いて構成してもよい。いずれのブロックを集積するかは、採用する半導体製造プロセスや要求されるコスト、特性などに応じて決定すればよい。
【0093】
実施の形態に係る入力装置は、実施の形態で説明した携帯電話端末の他、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)、デジタルスチルカメラ、CDプレイヤなどのリモコンなど、さまざまな入力装置を備える電子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…電子機器、2…入力装置、3…タッチパネル、4…制御IC、5…指、6…DSP、7…LCD、100…C/V変換回路、10…C/I変換回路、20…電流平均化回路、30…I/V変換回路、BUF…バッファ、40…マルチプレクサ、50…A/Dコンバータ、Cs…センサ容量、CINT…積分用キャパシタ、60…オフセットキャンセル回路、M1…第1トランジスタ、M2…第2トランジスタ、M3…第3トランジスタ、M4…第4トランジスタ、M5…第5トランジスタ、SW1…リセットスイッチ、SW2…センススイッチ、SW3…初期化スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する容量電圧変換回路であって、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、対応するセンサ容量の容量値に応じた検出電流を生成する、複数の容量電流変換回路と、
前記複数の容量電流変換回路により生成される検出電流を平均化し、平均電流を生成する電流平均化回路と、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、対応する検出電流と前記平均電流との差分電流を電圧に変換する、複数の電流電圧変換回路と、
を備えることを特徴とする容量電圧変換回路。
【請求項2】
前記容量電流変換回路は、
対応するセンサ容量の電荷を初期化するリセットスイッチと、
対応するセンサ容量と固定電圧端子の間に順に直列に設けられた、センススイッチおよびMOSFETである第1トランジスタと、
前記第1トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続された第2トランジスタと、
を含み、前記第2トランジスタに流れる電流を、対応するセンサ容量の容量値に応じた検出電流として出力することを特徴とする請求項1に記載の容量電圧変換回路。
【請求項3】
前記電流平均化回路は、
それぞれが前記センサ容量ごとに、対応する検出電流に応じた電流の経路上に設けられ、それぞれの制御端子が共通に接続されている、複数の第3トランジスタと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、対応する前記第3トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続された、複数の第4トランジスタと、
を含み、各第4トランジスタに流れる電流を、前記平均電流として出力することを特徴とする請求項1または2に記載の容量電圧変換回路。
【請求項4】
前記電流平均化回路は、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、対応する第1トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続された、複数の第5トランジスタをさらに含み、
各第3トランジスタは、対応する第5トランジスタの経路上に設けられることを特徴とする請求項3に記載の容量電圧変換回路。
【請求項5】
前記電流電圧変換回路は、その一端の電位が固定され、前記差分電流によって充放電される積分用キャパシタを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項6】
前記電流電圧変換回路は、
その一端が対応する前記積分用キャパシタと接続され、その他端に基準電圧が印加された初期化スイッチを含むことを特徴とする請求項5に記載の容量電圧変換回路。
【請求項7】
スタンバイモードにおいて、前記平均電流にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項8】
基準容量と、
前記容量電流変換回路と同様に構成され、前記基準容量の容量値に応じた基準電流を生成する第2容量電流変換回路と、
前記電流電圧変換回路と同様に構成され、前記基準電流と前記平均電流との差分電流を電圧に変換する、第2電流電圧変換回路と、
をさらに備え、
前記電流平均化回路は、前記複数の容量電流変換回路により生成される検出電流に加えて、前記基準電流を平均化することにより、前記平均電流を生成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項9】
スタンバイモードにおいて、前記第2電流電圧変換回路の出力電圧にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項8に記載の容量電圧変換回路。
【請求項10】
前記複数の電流電圧変換回路の出力電圧と、前記第2電流電圧変換回路の出力電圧を受け、ひとつを選択するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサにより選択された電圧を、デジタル値に変換するA/Dコンバータと、
をさらに備え、
前記マルチプレクサは、前記スタンバイモードにおいて、前記第2電流電圧変換回路の出力のみを選択することを特徴とする請求項9に記載の容量電圧変換回路。
【請求項11】
前記複数の電流電圧変換回路は、前記スタンバイモードにおいて停止することを特徴とする請求項10に記載の容量電圧変換回路。
【請求項12】
前記基準容量は、可変に構成されることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項13】
複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する容量電圧変換回路であって、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、対応するセンサ容量の電荷を初期化する複数のリセットスイッチと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれの一端の電位が固定される、複数の積分用キャパシタと、
前記複数の積分用キャパシタそれぞれの電圧を初期化する初期化回路と、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられた複数のカレントミラー回路であって、それぞれの入力側の第1トランジスタが、対応するセンサ容量と接続され、それぞれの出力側の第2トランジスタに流れる電流を、対応する積分用キャパシタに第1の向きで供給する、複数のカレントミラー回路と、
前記複数のセンサ容量それぞれに流れる検出電流の平均電流を生成し、当該平均電流を前記複数の積分用キャパシタそれぞれに第2の向きで供給する電流平均化回路と、
を備えることを特徴とする容量電圧変換回路。
【請求項14】
前記電流平均化回路は、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、対応するカレントミラー回路の前記第1トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続された、複数の第5トランジスタと、
それぞれが対応する第5トランジスタそれぞれの経路上に設けられた、複数の第3トランジスタと、
それぞれが対応する第3トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続された、複数の第4トランジスタと、
を含み、各第4トランジスタに流れる前記平均電流を、対応する積分用キャパシタに供給することを特徴とする請求項13に記載の容量電圧変換回路。
【請求項15】
前記初期化回路は、
それぞれの一端が対応する前記積分用キャパシタと接続され、それぞれの他端に基準電圧が印加された、複数の初期化スイッチを含むことを特徴とする請求項13または14に記載の容量電圧変換回路。
【請求項16】
スタンバイモードにおいて、前記平均電流にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項17】
基準容量と、
前記基準容量の電荷を初期化する第2リセットスイッチと、
前記基準容量に対して設けられ、その一端の電位が固定される、第2積分用キャパシタと、
前記第2積分用キャパシタの電圧を初期化する第2初期化回路と、
その入力側の第1トランジスタが、前記基準容量と接続され、その出力側の第2トランジスタに流れる電流を、前記第2積分用キャパシタに第1の向きで供給する、第2カレントミラー回路と、
をさらに備え、
前記電流平均化回路は、前記複数のセンサ容量それぞれに流れる検出電流に加えて、前記基準容量に流れる基準電流を平均化することにより前記平均電流を生成し、当該平均電流を前記複数の積分用キャパシタおよび前記第2積分用キャパシタそれぞれに第2の向きで供給するよう構成されることを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項18】
スタンバイモードにおいて、前記第2積分用キャパシタの電圧にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項17に記載の容量電圧変換回路。
【請求項19】
前記複数の積分用キャパシタの電圧と、前記第2積分用キャパシタの電圧を受け、ひとつを選択するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサにより選択された電圧を、デジタル値に変換するA/Dコンバータと、
をさらに備え、
前記マルチプレクサは、前記スタンバイモードにおいて、前記第2積分用キャパシタの電圧のみを選択することを特徴とする請求項18に記載の容量電圧変換回路。
【請求項20】
前記基準容量は、可変に構成されることを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項21】
複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する容量電圧変換回路であって、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれの一端の電位が固定されている、複数の積分用キャパシタと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応するセンサ容量と並列に接続された、複数のリセットスイッチと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれの一端が対応するセンサ容量と接続される、複数のセンススイッチと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応するセンススイッチの経路上に設けられる、複数のMOSFETである第1トランジスタと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれのゲートが対応する第1トランジスタのゲートと接続され、それぞれのドレインが対応する積分用キャパシタと接続される、複数のMOSFETである第2トランジスタと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれのゲートが対応する第1トランジスタのゲートと接続される複数のMOSFETである第5トランジスタと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応する第5トランジスタの経路上に設けられた、複数の第3トランジスタと、
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応する第3トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続され、それぞれのドレインが対応する積分用キャパシタに接続される、複数の第4トランジスタと、
を備えることを特徴とする容量電圧変換回路。
【請求項22】
基準容量と、
前記基準容量に対して設けられ、その一端の電位が固定される、第2積分用キャパシタと、
前記基準容量と並列に接続された第2リセットスイッチと、
その一端が前記基準容量と接続される第2センススイッチと、
前記第2センススイッチの経路上に設けられる、MOSFETである第6トランジスタと、
そのゲートが前記第6トランジスタのゲートと接続され、それぞれのドレインが前記第2積分用キャパシタと接続される、MOSFETである第7トランジスタと、
そのゲートが前記第6トランジスタのゲートと接続されるMOSFETである第10トランジスタと、
前記第10トランジスタの経路上に設けられた第8トランジスタと、
前記第8トランジスタとカレントミラー回路を形成するように接続され、そのドレインが前記第2積分用キャパシタに接続される、第9トランジスタと、
をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の容量電圧変換回路。
【請求項23】
スタンバイモードにおいて、前記第2積分用キャパシタの電圧にもとづき、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かが判定されることを特徴とする請求項22に記載の容量電圧変換回路。
【請求項24】
前記複数の積分用キャパシタの電圧と、前記第2積分用キャパシタの電圧を受け、ひとつを選択するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサにより選択された電圧を、デジタル値に変換するA/Dコンバータと、
をさらに備え、
前記マルチプレクサは、前記スタンバイモードにおいて、前記第2積分用キャパシタの電圧のみを選択することを特徴とする請求項23に記載の容量電圧変換回路。
【請求項25】
前記基準容量は、可変に構成されることを特徴とする請求項22から24のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項26】
それぞれが前記センサ容量ごとに設けられ、それぞれが対応するセンサ容量が接続されるノードに所定の期間、所定の電流を供給する、複数のオフセットキャンセル回路をさらに備えることを特徴とする請求項1から25のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項27】
前記オフセットキャンセル回路は、
所定の基準電流を生成する電流源と、
前記基準電流をコピーし、前記ノードに供給するカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力電流の経路上に設けられ、前記所定の期間オンするキャンセル用スイッチと、
を含むことを特徴とする請求項26に記載の容量電圧変換回路。
【請求項28】
ひとつの半導体集積回路上に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から27のいずれかに記載の容量電圧変換回路。
【請求項29】
複数のセンサ容量と、
前記複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する、請求項1から28のいずれかに記載の容量電圧変換回路と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項30】
前記複数のセンサ容量は、実質的にマトリクス状に配置されることを特徴とする請求項29に記載の入力装置。
【請求項31】
請求項29または30に記載の入力装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項32】
複数のセンサ容量それぞれの容量値を電圧に変換する方法であって、
各センサ容量の電荷を初期化するステップと、
各センサ容量に対して、それぞれの電圧が所定レベルに達するまで第1電流を供給するステップと、
各センサ容量ごとに設けられた積分用容量に、対応する第1電流に応じた第2電流を第1の方向で供給するとともに、各積分用容量に、複数の第2電流の平均電流を第2の方向で供給するステップと、
各積分用容量に生ずる電圧を、対応する容量に応じた検出電圧とするステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項33】
スタンバイモードにおいて、前記複数の第2電流の平均電流にもとづいて、ユーザが複数のセンサ容量の少なくともひとつに接触したか否かを判定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項32に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate