説明

密封性を有する紙トレー

【課題】フランジが重なる部分の段差を解消した、一つの部材からなる二重フランジ式の紙トレーを提供すること。
【解決手段】紙トレーブランク部(10)と紙トレーブランク部の各側面板を谷折りし各フランジを山折りして組み立ててなる紙トレー本体(2)の上面を覆う大きさの、中央に紙トレー本体の開放面(4)と同形の開放空間を有し、その外側に紙トレー本体の組み立てられたフランジ部(5)を覆うフランジ補強板(21)が形成されたフランジブランク部(20)とかなるシートブランク(50)の、紙トレーブランク部を紙トレー本体に組み立てた後、フランジブランク部を折り曲げ線(a)に沿って紙トレー本体の内面側に折り込み、紙トレー本体の組み立てられたフランジ部に、フランジ補強板を重ね合わせ熱融着して二重フランジ(6)にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙トレーに関するものであり、特には、内面に熱可塑性プラスチックフィルムを圧空成形法、真空成形法等のシート成形法により積層して複合トレーとしたり、この複合トレーに食品等の内容物を入れて蓋材で密封シールして流通させる複合トレー状容器等に使用する密封性を有する紙トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フランジ部を有する紙製のトレーの内面に熱可塑性プラスチックフィルムを圧空成形法、真空成形法、圧空真空成形法などのシート成形法を用いて積層させた複合トレーが流通している。また、この複合トレーに内容物を充填し、蓋材で密封シールした複合トレー状容器が流通している。
【0003】
この複合トレー状容器に使用される紙製のトレーは、例えば、図4(a)、(b)に示すように、ブランクシートをトレーに組み立てるに際しては、横方向のフランジ部(101)と縦方向のフランジ部(102)が重なってしまい、紙厚程度の段差(D)が発生している。
【0004】
この段差(D)は上から熱可塑性プラスチックフィルム(30)を積層して複合トレーにした段階でも完全に解消されることはなく、複合トレーに内容物を充填後蓋材(40)を被せてフランジ部を密封シールした時など、紙製トレーの上に被せた熱可塑性樹脂フィルム(30)と、その上の蓋材(40)との間にフランジ部とフランジ部の段差部分などで隙間(S)が発生してしまい、しわやピンホールが発生したりして密封状態が劣る要因の一つをつくっていた(図5参照)。
【0005】
それを補う方法としてフランジ部を別部材にしてトレーに取り付ける方法もあるが、二つの部材からなるため、フランジ供給装置等の新たな装置が必要となり、しわやピンホールの発生という問題は解決されるものの作業が煩雑になり、コスト高になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複合トレー状容器などの使用する紙製のトレーに関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、フランジが重なる部分の段差を解消した、一つの部材からなる二重フランジ式の紙トレーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の発明は、方形の底面板の一方の相対向する二辺に折り曲げ線を介して側面板とフランジがそれぞれこの順序で連設され、もう一方の相対向する二辺に折り曲げ線を介して側面板とフランジがそれぞれこの順序で連設され、一方の側面板の底面板やフランジが連設されていない方の相対向する二辺には折り曲げ線を介して舌片が連設され、もう一方の相対向する二辺に形成されたフランジの左右端は、外方向に延びてフランジより内方に広幅のフランジ舌片が形成され、てなる紙トレーブランク部と、該紙トレーブランク部の各側面板を谷折りし、各フランジを山折りして組み立ててなる紙トレー本体の上面を覆う大きさの、中央に紙トレー本体の開放面と同じ形の開放空間を有し、その外側に紙トレー本体の組み立てられたフランジ部を覆うフランジ補強板が形成されたフランジブランク部と、からなるシートブランクの、紙トレーブランク部を紙トレー本体に組み立てた後、フランジブランク部を折り曲げ線に沿って紙トレー本体の内面側に折り込み、紙
トレー本体の組み立てられたフランジ部に、折り込んだフランジブランク部のフランジ補強板を重ね合わせて熱融着して二重フランジとしたことを特徴とする、密封性を有する紙トレーである。
【0008】
このように請求項1記載の発明によれば、紙トレーブランク部を紙トレー本体に組み立てた後、フランジブランク部を折り曲げ線に沿って紙トレー本体の内面側に折り込み、紙トレー本体の組み立てられたフランジ部に、折り込んだフランジブランク部のフランジ補強板を重ね合わせて熱融着して二重フランジとしているので、紙トレー本体において、横方向のフランジと縦方向のフランジが重なって生じる紙厚程度の段差、すなわち、図3(a)、(b)において、フランジ(13)とフランジ舌片(151)が重なって生じる紙厚程度の段差(D)は、紙トレー本体の組み立てられたフランジ部の上に重ね合わされて熱融着される二重フランジにより、直線的傾斜となって、紙トレーの内面に熱可塑性プラスチックフィルムをシート成形法により積層し、複合トレーとし、その上に蓋材を被せて密封シールしてトレー状容器とした際に、隙間が発生しない状態で密封シールすることができる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記フランジブランク部のフランジ補強板の開放空間寄りに、折り曲げ線を介して側面板に密着可能な補助板が連設されていることを特徴とする、密封性を有する紙トレーである。
【0010】
このように請求項2記載の発明によれば、フランジブランク部のフランジ補強板の開放空間寄りに、折り曲げ線を介して側面板に密着可能な補助板が連設されているので、より高度の密封性、バリア性を得ることができる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記シートブランクは、少なくとも内面側に熱可塑性樹脂層が形成された紙を基材とする積層シートから構成されていることを特徴とする、密封性を有する紙トレーである。
【0012】
このように請求項3記載の発明によれば、紙トレーは少なくとも内面側に熱可塑性樹脂層が形成された紙を基材とする積層シートから構成されているシートブランクを使用しているので、接着剤等を使用せずに熱圧着するのみで製函が可能になる。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の発明において、前記積層シートがバリア層を含んでいることを特徴とする、密封性を有する紙トレーである。
【0014】
このように請求項4記載の発明によれば、バリア層を含んでいる積層シートを使用しているので、さらにバリア性に優れた密封性を有する紙トレーにすることができる。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4に記載の紙トレーの内面に熱可塑性プラスチックフィルムをシート成形法により積層した複合トレーである。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明の密封性を有する紙トレーを使用することによりフランジが二重になったトレー状容器をワンパーツで作製することができる。
二重になったフランジ部分を作製するためのフランジ供給装置を必要としないため、設備費用を抑えることがきる。
フランジ部分を二重構造にすることでバリア性能が高いレベルで安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の密封性を有する紙トレーの展開説明図である。この紙トレーのシートブランク(50)は、紙トレーを形成する紙トレーブランク部(10)と、紙トレーのフランジに折り曲げ線(a)を介して連設され、紙トレーのフランジに重ねられるフランジブランク部(20)とから構成される。
【0018】
すなわち、紙トレーブランク部(10)は、つぎのような構成からなる。
方形の底面板(11)の一方の相対向する二辺には、折り曲げ線を介して側面板(12)とフランジ(13)がそれぞれこの順序で連設されている。
【0019】
もう一方の相対向する二辺にも、折り曲げ線を介して側面板(14)とフランジ(15)がそれぞれこの順序で連設されている。
【0020】
一方の側面板(12、12)の底面板やフランジが連設されていない方の相対向する二辺には折り曲げ線を介して舌片(121、121)が連設され、もう一方の相対向する二辺に形成されたフランジ(15)の左右端は、外方向に延びてフランジより内方に広幅のフランジ舌片(151、151)が形成されている。
【0021】
フランジブランク部(20)は、紙トレーブランク部(10)の各側面板を谷折りし、各フランジを山折りして組み立ててなる紙トレー本体(2)の上面を覆う大きさで、中央に紙トレー本体(2)の開放面(4)と同じ形の開放空間(22)を有し、その外側に紙トレー本体の組み立てられたフランジ部(5)を覆うフランジ補強板(21)が形成された構成からなる。
【0022】
フランジブランク部(20)のフランジ補強板(21)の開放空間寄りに、折り曲げ線を介して紙トレーブランク部(10)の各側面板に密着可能な補助板(23)を連設した構成としても良い。このような構成にした場合には、寄り高度の密封性、バリア性を得ることができる。
【0023】
本発明の密封性を有する紙トレー(1)は、このような構成からなるシートブランク(50)の、紙トレーブランク部(10)を紙トレー本体(2)に組み立て(図2(b)参照)、その後、フランジブランク部(20)を折り曲げ線(a)に沿って紙トレー本体(2)の内面側に折り込み(図2(c)参照)、紙トレー本体の組み立てられたフランジ部(5)に、折り込んだフランジブランク部のフランジ補強板(21)を重ね合わせて熱融着して二重フランジ(6)としたものである(図2(d)参照)。
【0024】
シートブランク(50)には、少なくとも内面側に熱可塑性樹脂層が形成された紙を基材とする積層シートを使用する。
熱可塑性樹脂層は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましく使用できる。なかでもポリエチレンは作業適性の面から好適に使用できる。なお、必要に応じて、積層シートの外側面にも熱可塑性樹脂層を形成させても良い。
【0025】
積層シートには、必要に応じてバリア層を設けることもできる。バリア層は、一軸ないし二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなどの延伸フィルム上に酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により20〜100nm程度の厚さに設けた無機化合物蒸着プラスチックフィルム等が使用できる。なかでもポリエチレンテレフタレートフィルム上に無機化合物の薄膜を蒸着した蒸着フィルムがより好ましく使用できる。
【0026】
シート成形法により密封性を有する紙トレー(1)の内面に積層する熱可塑性プラスチ
ックフィルム(30)としては、深絞り成形可能な、100〜400μm程度のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムや、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムや、これらのプラスチックフィルムに酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により20〜100nm程度の厚さに設けた無機化合物蒸着プラスチックフィルム等が好ましく使用できる。
また、これらの単体フィルムを適宜選択して複合した積層フィルムを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の密封性を有する紙トレーの展開したシートブランクの一実施例を示す、平面説明図である。
【図2】(a)〜(d)は、 図1のシートブランクから密封性を有する紙トレーに組み立てる手順を示す、斜視説明図である。
【図3】本発明の密封性を有する紙トレーの内面に熱可塑性プラスチックフィルムをシート成形法により積層して複合トレーとし、さらにこの複合トレーに蓋材を密封シールしてトレー状容器とした状態を示す、(a)は斜視説明図であり、(b)は(a)のA部断面の模式説明図である。
【図4】従来の紙トレーの一例を示す、(a)は展開説明図であり、(b)は成形後の断面説明図である。
【図5】従来の紙トレーの内面に熱可塑性プラスチックフィルムをシート成形法により積層して複合トレーとし、さらにこの複合トレーに蓋材を密封シールしてトレー状容器とした状態を示す、(a)は斜視説明図であり、(b)は(a)のB部断面の模式説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1‥‥密封性を有する紙トレー
2‥‥紙トレー本体
3‥‥複合トレー
4‥‥紙トレー本体の開放面
5‥‥紙トレー本体の組み立てられたフランジ部
6‥‥二重フランジ
10‥‥紙トレーブランク部
11‥‥底面板
12‥‥側面板
13‥‥フランジ
14‥‥側面板
15‥‥フランジ
20‥‥フランジブランク部
21‥‥フランジ補強板
22‥‥開放空間
23‥‥補助板
30‥‥熱可塑性プラスチックフィルム
40‥‥蓋材
50‥‥シートブランク
101‥‥横方向のフランジ部
102‥‥縦方向のフランジ部
121‥‥舌片
151‥‥フランジ舌片
a‥‥折り曲げ線
D‥‥段差
S‥‥隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の底面板の一方の相対向する二辺に折り曲げ線を介して側面板とフランジがそれぞれこの順序で連設され、
もう一方の相対向する二辺に折り曲げ線を介して側面板とフランジがそれぞれこの順序で連設され、
一方の側面板の底面板やフランジが連設されていない方の相対向する二辺には折り曲げ線を介して舌片が連設され、
もう一方の相対向する二辺に形成されたフランジの左右端は、外方向に延びてフランジより内方に広幅のフランジ舌片が形成され、
てなる紙トレーブランク部と、
該紙トレーブランク部の各側面板を谷折りし、各フランジを山折りして組み立ててなる紙トレー本体の上面を覆う大きさの、中央に紙トレー本体の開放面と同じ形の開放空間を有し、その外側に紙トレー本体の組み立てられたフランジ部を覆うフランジ補強板が形成されたフランジブランク部と、からなるシートブランクの、
紙トレーブランク部を紙トレー本体に組み立てた後、フランジブランク部を折り曲げ線に沿って紙トレー本体の内面側に折り込み、紙トレー本体の組み立てられたフランジ部に、折り込んだフランジブランク部のフランジ補強板を重ね合わて熱融着して二重フランジにしたことを特徴とする、密封性を有する紙トレー。
【請求項2】
前記フランジブランク部の二重フランジの開放空間寄りに折り曲げ線を介して側面板に密着可能な補助板が連設されていることを特徴とする、請求項1記載の密封性を有する紙トレー。
【請求項3】
前記シートブランクは、少なくとも内面側に熱可塑性樹脂層が形成された紙を基材とする積層シートから構成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の密封性を有する紙トレー。
【請求項4】
前記積層シートがバリア層を含んでいることを特徴とする、請求項1,2又は3記載の密封性を有する紙トレー。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の密封性を有する紙トレーの内面に熱可塑性プラスチックフィルムをシート成形法により積層した複合トレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−290368(P2006−290368A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109608(P2005−109608)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】