説明

密封筐体

【課題】高い密封性能を維持しつつ、液体密封材の注入が極めて容易である密封筐体を提供することを目的とする。
【解決手段】密封筐体を構成する収納部と蓋部との間に、外部溝と外部嵌合間隙と内部嵌合間隙とからなる一体的な溝を形成させる。このとき、外部溝は幅の広い開口部を備え、液体密封材が注入されやすい状態とさせる。これにより、開口部が広い開口部に液体密封材を注入することで、幅が狭い外部嵌合間隙や内部嵌合間隙へも液体密封材が充填され、密封筐体は良好な密封状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の密封構造に関し、特に、電装装置または機械装置を防水、防塵する密封筐体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電装装置または機械装置を室外に設置する場合や、湿度や粉塵濃度の高い室内環境の苛酷な場所へこれらの装置を設置する場合には、装置の外部に筐体を設け外部から隔離させることで装置の保護を図っている。筐体は主に収納部と蓋部から構成され、これら両者の接合部に用いられる密封材について多数検討、提案がされている。
【0003】
この一例として、特開平11−16997号公報(特許文献1)では、収納部と蓋部との嵌合部にガスケットを配置している。図10には特許文献1の構造図を示しているが、密封筐体は収納部10と収納部20とから構成されており、互いに嵌合できるように各々に嵌合部が形成され、かかる嵌合部の間にガスケット(ゴムパッキン30)を配置し内部に格納された装置が外気から保護されている。また、他の例として、実開平4−118833号公報(特許文献2)のように液体状密封材を用いるものも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−16997号公報
【特許文献2】実開平4−118833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、外気環境の苛酷な場所へ設置される場合に密封材の硬化が進み、密封性能の維持が困難になる。また、密封材に一定の圧力を付与して密封性能を確保させる場合には、収納部と蓋部とを係合させるネジや爪等の系止材が多数必要となる。当該系止材は筐体内部のスペースを確保させるため密封材の外部に設けられるので筐体が大型化してしまうといった問題も生じる。
【0006】
また、特許文献2では、収納部に設けられた溝部の全周にわたって液体密封材を充填させる際、溝部の幅が狭い場合には、適正な溝部への液体密封材の注入が困難であると共に、液体密封材が適正に注入されないことで密封筐体の密封性が低下する。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、高い密封性能を維持すると共に、液体密封材の注入が容易に行える密封筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では次のような密封筐体の構成とする。すなわち、請求項1では、各々に設けられた互いの嵌合部によって嵌合された少なくとも2つの密封部材と、前記互いの嵌合部によって形成される嵌合間隙に充填された液体密封材とを備えるとともに、前記密封部材の間に形成された密封空間に所定の装置を格納させる密封筐体において、前記密封部材を嵌合させることによって前記密封筐体の外部に外部溝が形成されていることを基本構成とし、前記密封部材のうち、一方の密封部材は溝型の嵌合部が成形され、他方の密封部材は突型の嵌合部が形成されており、前記嵌合間隙は、前記突型の嵌合部における外側面と前記溝型の嵌合部における内側面と前記外部溝に結合される結合面とによって外部嵌合間隙が形成されるように変更を加えても良い。また、前記外部溝は、該外部溝の断面における開口幅が、前記溝型の嵌合部における内側面と前記突型の嵌合部における外側面との離間幅より大きくなるように変更を加えてもよく、更に、前記外部溝は、該外部溝の断面における開口幅を最大値とさせ、前記結合面を基準面として連続的に増加するようにしても良い。
【0009】
また、請求項5での密封筐体では、前記突型の嵌合部は、前記外側面に少なくとも一つの凹状加工部が形成させている。更に、前記嵌合間隙は、前記突型の嵌合部における内側面と前記溝型の嵌合部における内側面とによって内部嵌合間隙が形成されており、前記突型の嵌合部は、少なくとも一つの切欠部が形成させても良い。また、前記嵌合間隙は、更に、前記突型の嵌合部における内側面と前記溝型の嵌合部における内側面とによって内部嵌合間隙が形成されており、前記一方の密封部材と前記他方の密封部材のうち少なくとも一方には、前記突型の嵌合部における端部と前記溝型の嵌合部における底部とが接触する前に当接され、前記端部と前記底部との間に連通路を形成させる当接面が設けられているようにしても良い。
【0010】
更に、請求項8での密封筐体では、前記突型の嵌合部と前記溝型の嵌合部とは系止材によって係合させても良く、前記一方の密封部材と前記他方の密封部材のうち少なくとも一方に設けられ、前記外部溝に結合された窪み形状とされている少なくとも一つの湯口を備え、前記湯口は、該湯口に供給された前記液体密封材が前記外部溝に誘導される状態で配置させても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、密封筐体に外部溝が形成され、かかる外部溝において溝幅の広い部分とされている開口幅が露出されるようにレイアウトされているので、液体密封材の注入が容易となる。そして、外部溝は溝幅が比較的に狭い外部嵌合間隙と一体的に結合されているので、嵌合溝に注入された液体密封材は、密封筐体の外部に溢れることなく、外部嵌合間隙に充填され良好な密封状態とされる。
【0012】
また、蓋部に形成された突型の嵌合部に切欠部が設けられた場合、かかる切欠部の近傍領域では、液体密封材への抵抗が抑制され、抵抗の低い領域に液体密封材が順次供給されるので、外部嵌合間隙71に効率よく液体密封材を充填することができる。また、切欠部によって外部嵌合間隙と内部嵌合間隙7を連通させ、外部溝と外部嵌合間隙と内部嵌合間隙とが略コの字状の一体的な溝を形成しているので、液体密封材は内部嵌合間隙の部分にも充填されて更に良好な密封状態とされる。
【0013】
更に、連通路によって外部嵌合間隙と内部嵌合間隙とを外部溝の全周にわたって連通させた場合、これに応じて、外部溝と外部嵌合間隙と内部嵌合間隙とが略コの字状の一体的な溝が形成されているので、液体密封材は内部嵌合間隙の部分にも充填されて更に良好な密封状態とされる。
【0014】
更に、湯口を設けることによって、液体密封材を供給する位置が所定箇所に統一させているので、密封筐体の外部に形成された外部溝の全周にわたり液体密封材を供給する際、かかる液体密封材の注ぎ口を外部溝に沿わせて移動させる必要が無くなり、液体密封材の注入動作が簡素化される。
【0015】
加えて、蓋部と収納部が嵌合された後、係止材によって、互いの部材が解かれない状態にて係合されると、液体密封材が溝部に充填された際、蓋部に浮力が作用によって蓋部が浮動することは無い。これにより、蓋部と収納部との所定の嵌合状態が保たれ、良好な密封状態が期待できる。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例につき図面を参照して説明する。図1には本実施例に係る密封筐体の構成が示されている。図1(a)に示す如く、密封筐体100は、溝型の嵌合部11が形成された収納部10(特許請求の範囲における、一方の密封部材)と、突型の嵌合部21が形成された蓋部120(特許請求の範囲における、他方の密封部材)と、時間経過によって液体から固体に状態変化する液体密封材31とから構成されている。
【0017】
密封筐体100は、密封筐体100の内部に所望の装置5を格納させる状態で、収納部10と蓋部120とが嵌合されている。また、これらに設けられた溝型の嵌合部11と突型の嵌合部21とによって形成された嵌合間隙には液体密封材31が充填されている。従って、収納部10と蓋部120との間に形成される空間では、外気との交換が行われないため、湿気や埃等の流出入を防止できる密封空間4が形成されている。また、かかる密封空間4には、所定の装置5が収納されているため、所定の装置5も同じく密封状態とされている。
【0018】
図1(b)及び図1(c)には溝型の嵌合部11と突型の嵌合部21との嵌合状態が示されている。図1(b)では、収納部10と蓋部120とが嵌合された際、蓋部120の面取加工面と溝型の嵌合部における内側面12と後述する外部嵌合間隙71に結合される結合面61とによって断面が台形形状の外部溝60を形成している。また、溝型の嵌合部における内側面12と突型の嵌合部における外側面22と外部溝60に結合される結合面61とによって断面が長方形となる外部嵌合間隙71が形成される。かかる外部嵌合間隙71の上部には外部溝60が結合されているので、外部溝61と外部嵌合間隙71は、仲介する仮想面の結合面61を介して一体的な溝を形成している。
【0019】
また本実施例では、図1(c)に示すように、図1(b)において説明した収納部10と蓋部120との嵌合状態に更なる変更が加えられたものを用いることもできる。具体的には、蓋部120を外部嵌合間隙71の方向に所定量シフトさせることにより、前述した溝を形成させつつ、溝型の嵌合部における内側面12と蓋部120内部の突型の嵌合部における内側面23とが離隔され、内部嵌合間隙72が新たに生じることとなる。これにより、蓋部20に設けられた突型の嵌合部21の両側面に隙間が生じるため、比較的ルーズな嵌合状態とされている。
【0020】
図2では、密封筐体に充填される液体密封材の遷移状態が示されている。尚、本図では図1(c)における嵌合レイアウトについて図示説明を行うが、図1(b)の嵌合レイアウトを用いても良い。また、図2(b)の嵌合部断面図には外部溝60の断面における開口幅62と、溝型の嵌合部における内側面12と突型の嵌合部における外側面22との離間幅63が示されている。本実施例では、蓋部20に形成された外部溝60の断面形状は開口幅62を底辺とする略三角形とされているので、外部溝60の断面は、結合面61を基準面として離間幅63から開口幅62まで連続的に増加することとなる。
【0021】
まず、図2(a)では、液体密封材31が外部溝60に注入された当初の状態が示されている。外部溝60に充填された液体密封材31は、自重によって徐々に降下していく。このとき、ほとんどの液体密封材31は外部溝60の付近に分布している。その後、図2(b)に示す如く、液体密封材31は結合面61を通過し、外部溝60から外部嵌合間隙71へ徐々に送られる。このとき、液体密封材31は外部溝60及び外部嵌合間隙71の両方に分布することになる。また、外部嵌合間隙71の離間幅63は外部溝60の断面の幅よりも狭くなるので、かかる液体密封材31は、所定の断面積を確保するために拡散され、先ほどよりも分布状態が広がる。しかる後、図2(c)に示す如く、液体密封材31は、更に下方に流動するとともに拡散され、分布状態もこれに応じて更に広がり、外部嵌合間隙71の領域が概ね埋め尽くされる。
【0022】
本実施例では、密封筐体100に外部溝60が形成され、かかる外部溝60において溝幅の広い部分とされている開口幅62が露出されるようにレイアウトされているので、液体密封材31の注入が容易となる。そして、外部溝60は溝幅が比較的に狭い外部嵌合間隙71と一体的に結合されているので、嵌合溝60に注入された液体密封材31は、密封筐体100の外部に溢れることなく、外部嵌合間隙71に充填され良好な密封状態とされる。
【実施例2】
【0023】
次に実施例2に係る密封筐体の変更例について説明する。尚、本実施例で用いられる密封筐体200の構成のうち、密封筐体100と同一箇所には同一符号を付し説明を省略する。
【0024】
図3(a)及び図3(b)を参照して、本実施例では実施例1にて説明した蓋部120の替わりに新たな蓋部220が設けられている。かかる蓋部220は、突型の嵌合部21の端部を含む状態で矩形の切欠部92が形成されている。従って、突型の嵌合部21の端面は、この切欠部92によって歯形状の輪郭が形成されている。
【0025】
図4(a)の嵌合部断面図を参照して、本実施例に係る溝型の嵌合部11と突型の嵌合部21との嵌合状態について、切欠部92が形成されていないC-C断面と、切欠部92が形成されているD-D断面とに分けて説明する。まず、C-C断面の場合、本実施例に係る突型の嵌合部21の断面は、実施例1において説明した突型の嵌合部21の断面と同様の形状とされている。このため、かかる場合の嵌合状態に相違点は無い。一方、D-D断面の場合、本実施例に係る突型の嵌合部21の断面は、実施例1において説明した突型の嵌合部21の断面と形状が異なる。具体的には、収納部10と蓋部220とが嵌合された際、前述同様、外部溝60と外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが形成される。但し、突型の嵌合部21の端部を含む状態で矩形の切欠部92が形成されているので、互いに隔離されていた外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とを空間的に接続させる連通路82が出現する。これにより、D-D断面において、外部溝60の断面は、外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが一体的に結合された略コの字状の溝を形成する。
【0026】
更に図4では、密封筐体に充填される液体密封材の遷移状態が示されている。まず、図4(a)では、液体密封材31が外部溝60に注入された当初の状態が示されている。外部溝60に充填された液体密封材31は、自重によって徐々に降下していく。このとき、ほとんどの液体密封材31は外部溝60の付近に分布している。その後、図4(b)に示す如く、液体密封材31は結合面61を通過し、外部溝60から外部嵌合間隙71へ徐々に送られる。このときC−C断面における蓋部220の断面は、蓋部220の突型の嵌合部21の断面と同様の形状を成しているため、液体密封材31の挙動は実施例1において説明した液体密封材31の挙動と同様とされる。このとき、液体密封材31が流動する際、外部の壁面と境界摩擦を生じて粘性抵抗を受けている。更に、かかる粘性抵抗は壁面間の離間距離に反比例する性質を有するため、液体密封材31はこの場合において流動速度が低く抑えられている。従って、液体密封材31の分布状態は、所定範囲で広がるものの、顕著な広がり方を示すことはない。一方、D-D断面における蓋部20の断面は、突型の嵌合部における端部24に切欠部92が加工されているので、仮想の結合面61を通過した液体密封材31は、前述同様に外部嵌合間隙71を低速で流動する。但し、切欠部92に到達した後の液体密封材31は、境界面が少なくなり、かつ、隙間の幅が広がった空間を流動するため、かかる粘性抵抗が減少し、切欠部92の近傍の空間内を速い速度にて顕著な広がり方を示す。これにより、同図(b)の蓋部側面図に示す如く、C-C断面とD-D断面との間に流動状態の差が生じ、D-D断面部では液体密封材31が溝型の嵌合部の低所まで略充填されているのに対し、C-C断面では液体密封材31が充填されていない領域が残存していることが観察できる。然る後、図4(c)に示す如く、液体密封材31が充填されていない領域へ、かかる領域の上部と切欠部92側の側部との双方から効率よく液体密封材31が補給され、これにより、液体密封材31は外部嵌合間隙71の全ての領域に効率よく充填される。更に、内部嵌合間隙72へも液体密封材31が充填される。
【0027】
本実施例では、蓋部30の突型の嵌合部21に切欠部92が設けられているので、かかる切欠部92の近傍領域では、液体密封材31への抵抗が抑制され、抵抗の低い領域に液体密封材31が順次供給されるので、外部嵌合間隙71に効率よく液体密封材31を充填することができる。また、切欠部92によって外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とを連通させ、外部溝60と外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが略コの字状の一体的な溝を形成しているので、液体密封材31は内部嵌合間隙72の部分にも充填されて更に良好な密封状態とされる。
【0028】
尚、図4(d)に示す如く、突型の嵌合部21の外側面のみに例えば矩形形状の凹状加工部91を設けても良い。この場合についても、かかる凹状加工部91が加工された断面では、結合面61を通過した液体密封材31は、狭い幅とされている外部嵌合間隙71を低速で流動し、その後、凹状加工部91に到達した液体密封材31は、広い溝幅とされた外部嵌合間隙71を通過するので、前述同様に外部嵌合間隙71に効率良く充填される。但しこの場合、液体密封材31は内部嵌合間隙72へ充填されることはない。尚、かかる凹状加工部91の加工形状は、矩形形状に限ることなく種々の条件に適合させて適宜変更されるものである。
【実施例3】
【0029】
次に実施例3に係る密封筐体の更なる変更例について説明する。尚、本実施例で用いられる密封筐体300の構成のうち、密封筐体100と同一箇所には同一符号を付し説明を省略する。
【0030】
図5(a)に示す如く、本実施例にあっても実施例1にて説明した蓋部120の替わりに新たな蓋部320が置き換えられている。かかる蓋部320は、突型の嵌合部21の内周部に突出部が設けられ、かかる突出部の下部には溝型の嵌合部11のうち内部の側壁に当接するように当接面81が形成されている。また、突型の嵌合部21における当接面81から端面までの距離Xの寸法は、溝型の嵌合部11の溝深さYより短くなるように設計されている。
【0031】
次に、本実施例に係る溝型の嵌合部11と突型の嵌合部21との嵌合状態について説明する。図5(b)に示す如く、収納部10と蓋部320とが嵌合されると、前述の如く溝型の嵌合部11と突型の嵌合部21との間に外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが形成される。また、突型の嵌合部21が溝型の嵌合部11の溝へ挿入されるとき、当接面81が突型の嵌合部における端部24よりも先に溝型の嵌合部11の内側壁に当接されるので、突型の嵌合部における端部24が溝型の嵌合部における底部13に当接されることはない。従って、実施例2の切欠部における説明と同様に、互いに隔離されていた外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とを空間的に接続させる連通路82が出現する。これにより、外部溝60と外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが一体的に結合された略コの字状の溝を形成する。
【0032】
また図5(b)から図5(d)では密封筐体に充填される液体密封材の遷移状態が示されている。まず、図5(b)では、液体密封材31が外部溝60に注入された当初の状態が示されている。外部溝60に充填された液体密封材31は、自重によって徐々に降下していく。このとき、ほとんどの液体密封材31は外部溝60の付近に分布している。その後、図5(c)に示す如く、液体密封材31は結合面61を通過し、前述の如く、外部溝60から外部嵌合間隙71へ徐々に送られる。その後、突型の嵌合部における端部24に到達した液体密封材31は、隙間の幅が広がった連通路82を流動するため、かかる空間を速い速度にて流動する。然る後、図5(d)に示す如く、液体密封材31は、内部嵌合間隙72に順次充填される。
【0033】
本実施例では、狭い幅とされた外部嵌合間隙71の距離が短く設計されているので、液体密封材31へ加えられる粘性抵抗が抑制され、液体密封材31は各々の溝の内部で効率良く流動することが可能となる。また、連通路82によって外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とを連通させ、外部溝60と外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが略コの字状の一体的な溝が形成されているので、液体密封材31は内部嵌合間隙72の部分にも充填されて更に良好な密封状態とされる。
【実施例4】
【0034】
次に実施例4に係る密封筐体の他の実施例について説明する。尚、本実施例で用いられる密封筐体400の構成のうち、密封筐体100と同一箇所には同一符号を付し説明を省略する。
【0035】
図6を参照して、蓋部420には、密封筐体400の外部に現れる状態で窪み形状の湯口110が新たに設けられている。また、かかる湯口110は、窪み形状の断面が外部溝60の一部に一体的に連結されている。
【0036】
液体密封材31を密封筐体400の外部に形成された外部溝60の全周にわたり供給する際、まず、液体密封材31を湯口110へ注ぎ込む。その後、湯口110へ注ぎ込まれた液体密封材31は、外部溝61に導かれ、外部溝60の辺A上を二手に分岐して流動する。尚、液体密封材31が供給されている外部溝60の下部では、前述の如く、外部嵌合間隙71や内部嵌合間隙72へ液体密封材31が順次充填されている。その後、液体密封材31は外部溝60の辺Bに到達し、流動方向を変えて順次下部の嵌合間隙71や内部嵌合間隙72へ液体密封材31を充填しつつ流動する。更に、液体密封材31は外部溝60の辺Cに到達し、流動方向を変え、辺Cの中点付近で先に分岐した他の液体密封材31と合流する。以上により、液体密封材31が外部溝60の全周にわたり供給され、それぞれの外部溝60の下部では嵌合間隙71や内部嵌合間隙72へ液体密封材31が順次充填される。尚、図6では、湯口110が1箇所のみ標記されているが、かかる湯口は、必要に応じて複数箇所に適宜設けられても良い。また、湯口110の形状についても適宜変更が可能である。
【0037】
本実施例では、湯口110を設けることによって、液体密封材31を供給する位置が所定箇所に統一させているので、密封筐体400の外部に形成された外部溝60の全周にわたり液体密封材31を供給する際、かかる液体密封材31の注ぎ口を外部溝60に沿わせて移動させる必要が無くなり、液体密封材31の注入動作が簡素化される。
【実施例5】
【0038】
次に実施例5に係る密封筐体の他の実施例について説明する。尚、本実施例で用いられる密封筐体500の構成のうち、密封筐体100と同一箇所には同一符号を付し説明を省略する。
【0039】
図7を参照して、まず、蓋部520には、係止材100を挿入させる挿通孔101が設けられている。また、収納部510には、かかる係止材100を系合させ蓋部520と収納部510とを固定させる。係合部102が設けられている。
【0040】
蓋部520と収納部510とのアセンブリ時には、蓋部520と収納部510とを嵌合した後、互いの嵌合状態が外れない状態で、係止材103によって両部材を固定させる。かかる後、前述の如く、密封筐体500の外部に形成された外部溝60に液体密封材31を充填させる。尚、本実施例において説明した係止材103とは、同図に示されるようなタップが形成されたボルトまたはネジ等に限定されるものではない。例えば、リベットを用いても良いし、接着剤を用いて仮止めを行っても良い。
【0041】
本実施例では、蓋部510と収納部520が嵌合された後、係止材103によって、互いの部材が解かれない状態にて係合されるので、液体密封材31が溝部に充填された際、蓋部20に浮力が作用し蓋部520が浮動することは無い。これにより、蓋部510と収納部520との所定の嵌合状態が保たれ、良好な密封状態が期待できる。
【0042】
尚、実施例1から実施例5では、図8に示す如く、収納部610に形成された溝部に予め液体密封材31を充填させた後、蓋部620を嵌合させても、密封筐体600を密封させることが可能である。このときにおける嵌合状態は、実施例1にて説明した嵌合状態と同様である。
【0043】
但し、その際の密封工程は図9(a)から図9(b)に示す如く行われる。まず図9(a)には液体密封材31が充填ざれている状態が示されている。その後、図9(b)に示す如く、収納部610に蓋部620が嵌合され始めると、溝型の嵌合部11に突型の嵌合部21が挿入されてゆき、液体密封材31は突型の嵌合部21の外部領域と内部領域とに分けられ始める。この時、各々の領域の液体密封材31は、徐々に上方へ分布を広げていく。その後、嵌合動作が進むと、各々の領域が完全に隔離され、外部嵌合間隙71と内部嵌合間隙72とが出現する。この時、各々の領域の液体密封材31は、徐々に上方へ分布を広げていき、更に、外部嵌合間隙71の領域における液体密封材31の余剰分は、外部溝部60まで到達する。このとき、液体密封材31の余剰分を予め算出しておき、外部溝60の断面形状の寸法を定めることで、外部溝60から余剰の液体密封材60が越流することを防ぐことが可能となる。
【0044】
以上の如く記された各実施の形態はあくまでも本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、前記実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。本実施例では、収納部10にアクリル板14を設けて密封筐体100の内部が観察できるようにされているが、かかるアクリル板14を設けずに、内部の見えない通常の密封筐体としても良い。また、本実施例では、所定の装置5の全部分を密封筐体内部に格納されているが、所定の装置5のうち密封を必要としない部分については外部に露出させるような密封筐体の設計変更が可能であり、更に、所定の装置5が電源を必要とする装置である場合には、密封状態を維持できる開口を設けて電源ラインによって所定の装置5に電源を供給するようにしても良い。また、所定の装置5を密封筐体外部から操作し得るよう、密封筐体外部にかかる装置に対応する操作ボタン等を設けても良い。更に、本発明で用いられる液体密封材は、UV樹脂、エポキシ樹脂、その他、種々の樹脂材料が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1に係る密封筐体の構成を示す図
【図2】実施例1に係る密封筐体に充填される液体密封材の状態遷移図
【図3】実施例2に係る密封筐体の構成を示す図
【図4】実施例2に係る密封筐体に充填される液体密封材の状態遷移図
【図5】実施例3に係る密封筐体の断面図及び液体密封材の状態遷移図
【図6】実施例4に係る密封筐体の構成を示す図
【図7】実施例5に係る密封筐体の構成を示す図
【図8】実施例5に係る密封筐体の構成を示す図
【図9】実施例5に係る密封筐体に充填される液体密封材の状態遷移図
【図10】従来例に係る密封筐体の構成を示す図
【図11】従来例に係る密封筐体の他の構成を示す図
【符号の説明】
【0046】
100 密封筐体
10 収納部
11 溝型の嵌合部
12 溝型の嵌合部における内側面
13 溝型の嵌合部における底部
14 アクリル板
120 蓋部
21 突型の嵌合部
22 突型の嵌合部における外側面
23 突型の嵌合部における内側面
24 突型の嵌合部における端部
30 ゴムパッキン
31 液体密封材
4 密封空間
5 所定の装置
60 外部溝
61 結合面
71 外部嵌合間隙
72 内部嵌合間隙
81 当接面
82 連通路
91 凹状加工部
92 切欠部
93 他の切欠部
101 挿通孔
102 系合部
103 系止材
110 湯口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に設けられた互いの嵌合部によって嵌合された少なくとも2つの密封部材と、前記互いの嵌合部によって形成される嵌合間隙に充填された液体密封材とから成り、前記密封部材の間に形成された密封空間に所定の装置を格納させる密封筐体において、
前記密封部材を嵌合させることによって前記密封筐体の外部に外部溝が形成されていることを特徴とする密封筐体。
【請求項2】
前記密封部材のうち、一方の密封部材は溝型の嵌合部が成形され、他方の密封部材は突型の嵌合部が形成されており、
前記嵌合間隙は、前記突型の嵌合部における外側面と前記溝型の嵌合部における内側面と前記外部溝に結合される結合面とによって外部嵌合間隙が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の密封筐体。
【請求項3】
前記外部溝は、該外部溝の断面における開口幅が、前記溝型の嵌合部における内側面と前記突型の嵌合部における外側面との離間幅より大きいことを特徴とする請求項2に記載の密封筐体。
【請求項4】
前記外部溝は、該外部溝の断面における開口幅を最大値とさせ、前記結合面を基準面として連続的に増加することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の密封筐体。
【請求項5】
前記突型の嵌合部は、前記外側面に少なくとも一つの凹状加工部が形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の密封筐体。
【請求項6】
前記嵌合間隙は、更に前記突型の嵌合部における内側面と前記溝型の嵌合部における内側面とによって内部嵌合間隙が形成されており、
前記突型の嵌合部は、少なくとも一つの切欠部が形成されていることを特徴とする請求項2至請求項4に記載の密封筐体。
【請求項7】
前記嵌合間隙は、更に前記突型の嵌合部における内側面と前記溝型の嵌合部における内側面とによって内部嵌合間隙が形成されており、
前記一方の密封部材と前記他方の密封部材のうち少なくとも一方には、前記突型の嵌合部における端部と前記溝型の嵌合部における底部とが接触する前に当接され、前記端部と前記底部との間に連通路を形成させる当接面が設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求4に記載の密封筐体。
【請求項8】
前記突型の嵌合部と前記溝型の嵌合部とは系止材によって係合されていることを特徴とする請求項2乃至請求項7に記載の密封筐体。
【請求項9】
前記一方の密封部材と前記他方の密封部材のうち少なくとも一方に設けられ、前記外部溝に結合された窪み形状とされている少なくとも一つの湯口を備え、
前記湯口は、該湯口に供給された前記液体密封材が前記外部溝に誘導される状態で配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項8に記載の密閉筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−49215(P2009−49215A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214296(P2007−214296)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】