説明

密封装置

【課題】シール機能を発揮しつつ、反発力の低下を図った密封装置を提供する。
【解決手段】先端の周縁に沿って環状の切欠21が設けられた第1部材20と、第1部材20の切欠21の周面部21aと対向する周面部31を有する第2部材30と、第1部材20の切欠21の平面部21bと対向する平面部41を有する第3部材40の各部材間の隙間を封止する密封装置10において、第2部材30の周面部31に密着する第1シール部11と、第1シール部11から第3部材40の平面部41に向かって、第2部材30の周面部31から離れる方向に伸び、第3部材40の平面部41に密着する、可撓性を有する第2シール部12と、第1シール部11から切欠21の平面部21bに向かって、第2部材30の周面部31から離れる方向に伸び、切欠21の平面部21bに密着する、可撓性を有する第3シール部13と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3部材における各部材間の隙間を封止する密封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例に係る密封装置ついて、図4及び図5を参照して説明する。図4は従来例に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。図5は従来例に係る密封装置のメカニズム説明図である。
【0003】
従来例に係る密封装置100は、第1部材20と第2部材30と第3部材40の各部材間の隙間(すなわち、第1部材20と第2部材30との間の隙間,第2部材30と第3部材40との間の隙間、及び第3部材40と第1部材20との間の隙間)を封止するために用いられるものである。
【0004】
第1部材20は、図中下方に中心軸を有する円柱部又は円筒部を備える部材であり、先端の周縁(具体的には外周縁)に沿って環状の切欠21が設けられている。第2部材30は、第1部材20が挿通される挿通孔が形成された円筒部を備える部材である。第3部材40は、第1部材30の円筒部の先端面及び第2部材30の円筒部の先端面に対向する平面部を備える部材である。
【0005】
密封装置100は、第1部材20の切欠21の周面部(具体的には外周面部)と、これに対向する第2部材30の周面部(具体的には内周面部)と、第1部材20の切欠21の平面部と、これに対向する第3部材40の平面部によって形成される断面形状が略矩形の環状隙間に配置される。
【0006】
そして、密封装置100における本体部101の第1シール面101aが第2部材30の周面部に密着し、第2シール面101bが第3部材40の平面部に密着し、第3シール面101cが第1部材20の切欠21の平面部に密着することによって、3部材(第1部材20,第2部材30,第3部材40)の各部材間の隙間を封止する。
【0007】
ここで、従来例に係る密封装置100の本体部101においては、図5に示すように、第2シール面101bと第3シール面101cが矢印P方向に押されて、本体部101が軸方向に圧縮する。そして、これに伴って本体部101は矢印Yに示すように径方向(内径側及び外径側)に膨張する。従来例に係る密封装置100においては、この本体部101の膨張を利用して、第1シール面101aが第2部材30の周面部に密着するようにしている。
【0008】
このように、本体部101における軸方向の圧縮に伴う径方向の膨張により、シール機能を発揮させるようにしているため、本体部101は、径方向の厚みに比べて軸方向の長さが大きな形状となる。そのため、本体部101のみでは、密封装置自体が環状隙間内で倒れ易くなってしまうため、倒れを防止するための突起102が設けられている。
【0009】
以上のように構成される密封装置100の場合、第1シール面101aによるシール機能を十分に発揮させるためには、本体部101の径方向の膨張量を大きくしなければならない。そして、この膨張量を大きくするためには、本体部101の軸方向の圧縮量を大きくしなければならず、本体部101の軸方向の反発力を大きくする必要がある。
【0010】
以上のように、従来例に係る密封装置100の場合、シール機能を十分に発揮させるた
めに、本体部101の軸方向の反発力を大きくしなければならない。そのため、密封装置100が密着する各部材(特に、第1部材20と第3部材40)には、大きな反発力が作用する。従って、各部材が変形してしまったり、変形を防止するために各部材の素材や形状寸法の制約が大きくなってしまったり、各部材の組み込み作業性が低下してしまったりすることが問題となっている。
【0011】
なお、関連する技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2005−289165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、シール機能を発揮しつつ、反発力の低下を図った密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0014】
すなわち、本願発明の密封装置は、
先端の周縁に沿って環状の切欠が設けられた第1部材と、第1部材の切欠の周面部と対向する周面部を有する第2部材と、第1部材の切欠の平面部と対向する平面部を有する第3部材の各部材間の隙間を封止する密封装置において、
第2部材の周面部に密着する第1シール部と、
第1シール部から第3部材の平面部に向かって、第2部材の周面部から離れる方向に伸び、第3部材の平面部に密着する、可撓性を有する第2シール部と、
第1シール部から前記切欠の平面部に向かって、第2部材の周面部から離れる方向に伸び、該切欠の平面部に密着する、可撓性を有する第3シール部と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
本願発明によれば、第2シール部と第3シール部は、いずれも各密着面に向けて、第2部材の周面部から離れる方向に伸び、かつ、可撓性を有する構成のため、第2シール部と第3シール部に対して圧縮するように力が作用した場合の反発力を抑制することができる。また、これらの撓み変形に伴って、第1シール部が第2部材の周面部に向かって移動するように変形するため、第1シール部によるシール機能を発揮させることができる。
【0016】
また、前記切欠の周面部に当接可能に設けられ、密封装置自体の倒れを防止する突起を備えるとよい。
【0017】
これにより、シール機能を安定的に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、シール機能を発揮しつつ、反発力の低下を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例)
図1〜図3を参照して、本発明の実施例に係る密封装置について説明する。図1は本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。図2は本発明の実施例に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。図3は本発明の実施例に係る密封装置のメカニズム説明図である。
【0021】
<密封装置の構成>
図1に示すように、本実施例に係る密封装置10は、ゴム状弾性体から構成されるもので、第1シール部11と、第1シール部11の両側に対称的にそれぞれ設けられる第2シール部12及び第3シール部13と、第1シール部11の反対側に設けられる倒れ防止用の突起14とを備えている。第2シール部12及び第3シール部13は可撓性を有している。
【0022】
<密封装置の使用状態>
図2を参照して、本実施例に係る密封装置10の使用状態について説明する。本実施例に係る密封装置10は、第1部材20と第2部材30と第3部材40の各部材間の隙間(すなわち、第1部材20と第2部材30との間の隙間,第2部材30と第3部材40との間の隙間、及び第3部材40と第1部材20との間の隙間)を封止するために用いられるものである。
【0023】
第1部材20は、図中下方に中心軸を有する円柱部又は円筒部を備える部材であり、先端の周縁(具体的には外周縁)に沿って環状の切欠21が設けられている。第2部材30は、第1部材20が挿通される挿通孔が形成された円筒部を備える部材である。第3部材40は、第1部材30の円筒部の先端面及び第2部材30の円筒部の先端面に対向する平面部41を備える部材である。
【0024】
本実施例に係る密封装置10は、第1部材20の切欠21の周面部(具体的には外周面部)21aと、これに対向する第2部材30の周面部(具体的には内周面部)31と、第1部材20の切欠21の平面部21bと、これに対向する第3部材40の平面部41によって形成される断面形状が略矩形の環状隙間に配置される。
【0025】
そして、密封装置10における第1シール部11の先端面11aが第2部材30の周面部31に密着し、第2シール部12の先端面12aが第3部材40の平面部41に密着し、第3シール部13の先端面13aが第1部材20の切欠21の平面部21bに密着することによって、3部材(第1部材20,第2部材30,第3部材40)の各部材間の隙間を封止する。
【0026】
ここで、図2から分かるように、第2シール部12は、第1シール部11から第3部材40の平面部41に向かって、第2部材30の周面部31から離れる方向に伸び、第3部材40の平面部41に密着するように構成される。また、第3シール部13は、第1シール部11から切欠21の平面部21bに向かって、第2部材30の周面部31から離れる方向に伸び、切欠21の平面部21bに密着するように構成される。
【0027】
なお、図2においては、突起14は切欠21の周面部(具体的には、外周面部)21aに当接している様子を示している。しかしながら、突起14は、密封装置10が倒れようとした場合に、この周面部21aに当接して、密封装置10の倒れを防止すればよい。従って、密封装置10が倒れていない状態においては、突起14の先端は周面部21aから多少離れていても良い。
【0028】
<密封装置のメカニズム>
特に、図2及び図3を参照して、本実施例に係る密封装置10のメカニズムについて説
明する。
【0029】
密封装置10が所定の装着位置に装着されると、密封装置10に対しては、軸方向に圧縮力が作用する。すなわち、第3部材40の平面部41と第1部材20の切欠21の平面部21bによって、第2シール部12と第3シール部13を圧縮するように(図3中、矢印P方向に)力が作用する。これにより、可撓性を有する第2シール部12及び第3シール部13は、それぞれ図3中矢印Q方向に撓むように変形する。
【0030】
そして、密封装置10が装着される状態においては、第2シール部12の先端面12aと第3シール部13の先端面13aは、摩擦力によって、それぞれ第3部材40の平面部41と切欠21の平面部21bに対して殆ど滑りが生じない。従って、第1シール部11が、図3中矢印X方向に移動するように密封装置10は変形する。
【0031】
このように、本実施例に係る密封装置10においては、第2シール部12と第3シール部13の撓み変形によって、第1シール部11を、その先端方向(矢印X方向)に移動させて、第1シール部11の先端面11aを第2部材30の周面部31に押し付けることで第1シール部11のシール機能を発揮させている。なお、第2シール部12及び第3シール部13については、その弾性復元力によってシール機能が発揮されることは言うまでもない。
【0032】
ここで、第1シール部11によるシール機能を十分に発揮させるためには、上記の通り、第2シール部12と第3シール部13の撓み変形によって、第1シール部11が先端方向に十分に移動するように、密封装置10を変形させなければならない。そのため、第2シール部12及び第3シール部13は、第1シール部11の先端面11aに対して、傾きを有するように構成される必要がある。この傾きα(図1参照)は、密封装置10の材質,形状,大きさなどによって適正値が異なるが、例えば15°以上にすると好適である。
【0033】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係る密封装置10によれば、第2シール部12及び第3シール部13は、撓んだ状態における弾性復元力によってシール機能を発揮し、第1シール部11は、第2シール部12及び第3シール部13の撓み変形に伴う移動によりシール機能が発揮される。従って、密封装置10は好適にシール機能が発揮される。
【0034】
そして、密封装置10に対して、軸方向に圧縮力が作用しても、第2シール部12及び第3シール部13は撓むため、軸方向への反発力を抑制することができる。これにより、密封装置10が密着する各部材、特に、第1部材20と第3部材40に対して、大きな反発力が作用してしまうことを防止できる。従って、各部材の変形を防止することができ、各部材の変形を防止するために各部材の素材や形状寸法の制約を少なくすることができ、各部材の組み込み作業性の低下を防止することができる。例えば、第1部材20や第3部材40がアルミや樹脂など剛性の低い素材から構成されている場合でも、これらの部材の変形を効果的に抑制できる。
【0035】
また、突起14によって密封装置10の倒れが防止されるため、安定したシール機能を発揮させることができる。
【0036】
なお、具体例として、従来例に係る密封装置100の構成の場合に、第2シール面101bと第3シール面101cの面圧が約3MPa,第1シール面101aの面圧が約0.8MPa,軸方向の反発力が約2100Nであるのに対して、本実施例に係る密封装置10の構成によって、第2シール部12と第3シール部13の面圧を約1.6MPa,第1シール部11の面圧を約0.2MPa,軸方向の反発力を約165Nにすることができた
。すなわち、本実施例に係る密封装置10により、所望のシール機能を発揮させつつ、軸方向の反発力を非常に小さくすることが可能となった。
【0037】
<その他>
上記実施例においては、径方向の内側の部材の先端の周縁(外周縁)に沿って切欠を設けて、密封装置を装着するための環状隙間を形成する場合を示したが、径方向の外側の部材の先端の周縁(内周縁)に沿って切欠を設けて、密封装置を装着するための環状隙間を形成することも可能である。この場合には、第1シール部は、内側の部材の周面(外周面)に対して密着することになることは言うまでもない。
【0038】
本実施例に係る密封装置10は、3部材間の各隙間を封止することが求められる各種装置に適用可能である。具体的な適用例としては、特許文献1に示すようなモータに適用することができる。この場合、第1部材20はモータヨークであり、第2部材30はフロントカバーであり、第3部材40はポンプボディ(アルミボディ)である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の実施例に係る密封装置の模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係る密封装置のメカニズム説明図である。
【図4】図4は従来例に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。
【図5】図5は従来例に係る密封装置のメカニズム説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 密封装置
11 第1シール部
11a 先端面
12 第2シール部
12a 先端面
13 第3シール部
13a 先端面
14 突起
20 第2部材
21 切欠
21a 周面部
21b 平面部
30 第3部材
31 周面部
40 第4部材
41 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の周縁に沿って環状の切欠が設けられた第1部材と、第1部材の切欠の周面部と対向する周面部を有する第2部材と、第1部材の切欠の平面部と対向する平面部を有する第3部材の各部材間の隙間を封止する密封装置において、
第2部材の周面部に密着する第1シール部と、
第1シール部から第3部材の平面部に向かって、第2部材の周面部から離れる方向に伸び、第3部材の平面部に密着する、可撓性を有する第2シール部と、
第1シール部から前記切欠の平面部に向かって、第2部材の周面部から離れる方向に伸び、該切欠の平面部に密着する、可撓性を有する第3シール部と、
を備えることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記切欠の周面部に当接可能に設けられ、密封装置自体の倒れを防止する突起を備えることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−211799(P2007−211799A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29524(P2006−29524)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】