説明

密閉構造、特にガス圧縮機あるいはガス膨張機の密閉構造の監視

【課題】本発明は、ガス圧縮機あるいはガス膨張機の密閉構造の監視に関する。
【解決手段】シャフト導体面構造を有するシャフトシールリング(3)と、当該シャフト導体面構造から電気的に絶縁された固定子導体面構造を有する固定子シールリング(4)と、容量測定装置とを有する、固定部分(1)に対してシャフト(2)を密閉するためのシール構造であって、固定子導体面構造は、第1固定子導体面(8.1)と、第1固定子導体面(8.1)から電気的に絶縁された少なくとも1つの第2固定子導体面(8.2)とを備え、シャフト導体面構造は、少なくとも1つのシャフト導体面(9)を備えており、測定装置は、固定子導体面構造の2つの固定子導体面(8.1,8.2)の間の電気容量(C)を検出するための装置を備えているシール構造を監視するために、運転中に、固定子導体面構造の2つの固定子導体面(8.1,8.2)の間の電気容量(C)が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトシールリングと固定子シールリングと容量測定装置とを有しているシール構造であって、固定部分に対してシャフトを密閉するための監視可能なシール構造と、当該シール構造を監視するための方法と、当該シール構造を有する流体機械特にガス圧縮機あるいはガス膨張機に関する。
【背景技術】
【0002】
特に流体力を用いた機械あるいは流体で作動する機械、例えばガス圧縮機もしくはガス膨張機において、運転中に回転する1つあるいは複数のシャフトは、高圧容積部を低圧容積部に対して密閉するために、固定部分、例えばハウジングに対して密閉されなくてはならない。そのために、運転中に可動するシャフトシールリングと固定子シールリングとの間にシール間隙が形成され、作用媒体が常に当該シール間隙を貫流し、その結果、シール間隙の薄いガスの膜が高圧容積部と低圧容積部とを互いに密閉するようなスライドシールが知られている。
【0003】
そのようなシール構造を監視するために、特許文献1は、シール間隙の幅を検出する熱エレメントを固定子リングに設けるよう提案している。
【0004】
特許文献2は、シール間隙に潤滑油の膜が形成される流体シールのために、とりわけシャフトシールリングのセンサーと固定子シールリングとが、それぞれ1つずつ平板コンデンサーの平板電極を形成している容量測定装置を提案している。不利なことに、液体シールのための当該解決法は、回転するシャフトシールリングに測定タップが必要である。
【0005】
特許文献3は、漏出を受容するための貯蔵室を有するガスシールあるいは液体シールを提案しており、当該貯蔵室の幅は固定子リングの両側に形成された平板コンデンサーによって検出される。可動するシャフトシールリングと固定子シールリングとの間に、シール間隙は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4643437号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19723327号明細書
【特許文献3】独国特許第10314924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、当該分野に係る密閉構造の監視を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該課題は、請求項1の特徴を有するシール構造もしくは請求項10の特徴を有する方法によって解決され得る。請求項9は、本発明に係るシール構造を有する流体機械を保護し、従属請求項は有利なさらなる形態に関する。
【0009】
シャフト、特に流体機械の回転子を、例えばハウジングあるいは軸受などのような固定部分に対して密閉するための、本発明に係るシール構造は、シャフトシールリングと固定子シールリングとを備えている。
【0010】
シャフトシールリングは、シャフトと回転方向に固定されかつ軸方向に固定されて接続されていてよく、例えばシャフトカラーとしてシャフトと一体的に形成されていてよく、分離可能にシャフトと接続されていてよく、例えば螺合されていてよく、あるいは分離不可能にシャフトと接続されていてよく、例えば固着されていてよい。固定子シールリングも、固定部分と回転方向に固定されかつ軸方向に固定されて接続されていてよく、例えばブロックとして固定部分と一体的に形成されていてよく、分離可能に固定部分と接続されていてよく、例えば螺合されていてよく、あるいは分離不可能に固定部分と接続されていてよく、例えば固着されていてよい。
【0011】
同様に、シャフトシールリングおよび/あるいは固定子シールリングは、回転方向に固定されているが、軸方向には移動可能に固定されてよく、例えばマシンキーあるいはスプラインシャフトなどによって運用されてよく、シャフトシールリングおよび/あるいは固定子シールリングは、好適にはそれぞれ別のリングに対して、例えば液圧式、空圧式、あるいはスプリング装置によって、プレストレスが加えられ、その結果、シール間隙は、当該シール間隙を貫流するガスの膜とプレストレスとの間の力の均衡下にある。好ましいさらなる形態においては、例えばシャフトシールリングおよび/あるいは固定子シールリングは、これに関する開示を引き合いに出した既述の特許文献1に記載されているように、アクチュエータによって、それぞれ別のリングに向かって移動させられることにより、シール間隙は、本発明に従って検出された当該シール間隙の幅に応じて、能動的に制御されることができる。
【0012】
シャフトシールリングおよび/あるいは固定子シールリングは、結局回転方向および軸方向に移動可能に運用されていてもよい。例えば、回転方向および軸方向に移動可能なシャフトシールリングは、シャフトカラーと、軸方向にプレストレスがかけられた固定子シールリングとの間に設けられていてよく、当該固定子シールリングによってシャフトカラーに対して応力をかけられてよい。
【0013】
シャフトシールリングに接して、好適にはシャフトシールリングの内部に、コンデンサー電極として用いられる1つあるいは複数のシャフト導体面を有する、シャフト導体面構造が設けられている。固定子シールリングに接して、好適には固定子シールリングの内部に、第1固定子導体面と、当該第1固定子導体面から電気的に絶縁されている第2固定子導体面とを有する固定子導体面構造が設けられており、第1固定子導体面と第2固定子導体面とは、シャフト導体面構造から電気的に絶縁されており、かつ同様にコンデンサー電極として用いられる。導体面とは、目下のところ、例えば金属や炭素などから成る、導電性を有している面を指す。
【0014】
容量測定装置によって、固定子導体面構造の少なくとも2つの固定子導体面間の電気容量を検出することができる。第1固定子導体面と、当該第1固定子導体面から電気的に絶縁されているシャフト導体面とは第1のコンデンサーを形成し、シャフト導体面と、2つの導体面に対して電気的に絶縁されている第2固定子導体面とは、第1のコンデンサーと直列接続されている第2のコンデンサーを形成している。その結果、第1固定子導体面と第2固定子導体面とは、容易にタップ可能な直列接続の連結を形成している。シール間隙の幅が変化し、かつそれによってシャフトシールリングと固定子シールリングとの間の軸方向の距離が変化するに従って、第1固定子導体面とシャフト導体面との間の距離、およびシャフト導体面と第2固定子導体面との距離も変化する。それによって第1コンデンサーと第2コンデンサーの容量も変化し、連結を介してタップ可能な、直列接続の容量が変化する。このとき有利なことに、距離の変化に伴って、2つのコンデンサーの容量も変化する。シール間隙の拡大と、シャフトシールリングあるいは固定子シールリングの破損と、かつそれによるシールの悪化は、例えば検出された直列接続の容量の減少に基づいて認識することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、固定子導体面構造および/あるいはシャフト導体面構造の2つあるいはそれ以上の導体面は、互いによって実質的にそれぞれ1つの環を作る。有利なことには、それによってシールは、実質的にシャフトの円周全体にわたって検出され得る。さらにそのような環の切片状の導体面は、例えば完全な環を2つあるいはそれ以上の絶縁バーで遮断することによって、容易に製造可能である。しかも、環の切片状の導体面から成るそのような導体面構造は、ほとんど半径方向の構成空間を必要としない。
【0016】
付加的にあるいは選択的に、固定子導体面構造および/あるいはシャフト導体面構造の2つの導体面は、互いに対してもしくはシャフトの回転軸に対して、それぞれ同心円状に設けられてもよい。それによってシールは、実質的にシャフトの円周全体にわたって検出され得る。
【0017】
導体面構造は、別のシールリングに対向する、1つのシールリングのスライド面上に設けられてよく、例えば薄い金属膜として塗布されてよく、特に蒸着されてよい。スライド面のシールを阻害しないようにするために、例えば金属膜がノッチに設けられ、好適には引き続いてその他のスライド面とともに平坦に加工され、例えば磨かれ、研磨され、および/あるいは磨き上げられることによって、導体面構造は実質的に、まさにスライド面とともに設けられてよい。特に同質のスライド面を実現し、かつ機械による阻害から導体面構造を保護するために、対応するシールリングのスライド面の下方に当該導体面構造を設けることが特に好ましい。そのために例えば、対応する金属リングもしくは当該金属リングの切片は、好適には焼結された土台とともに、原型が作られ、あるいはその後、スライド面と向かい合っている端面から対応する凹所に挿入されるか、あるいはスライド面から凹所に挿入されてよい。当該凹所は、その後に閉ざされる。それぞれの導体面構造の個々の導体面を互いに対して電気的に絶縁するために、このような土台は、好適には非導電性材料、例えば炭化ケイ素から製造される。
【0018】
本発明に係るシール構造は、特にガス圧縮機あるいはガス膨張機の回転子を密閉するために適しており、当該シール構造においては、部分的に高い圧力をかけられているガスがシール間隙を常に貫流するため、シールを監視することが特に重要であるが、部分的に回転数が高いため、回転するシールリングにタップをつけることは難しい。
【0019】
さらなる利点と特徴とは、従属請求項と実施例とからもたらされる。それについて、部分的に概略化されて、示されるのは以下である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態によるシール構造を有するガス膨張機の部分縦断図である。
【図2】図1のII−II線に沿った、シャフトシールリングの横断図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った、固定子シールリングの横断図である。
【図4】シャフトシールリングと固定子シールリングにおける導体面構造によって形成されている、直列接続されたコンデンサーの電気等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、ガス圧縮機のハウジング1の部分縦断面を示しており、当該ハウジング1に回転子2の形状でシャフトが回転可能に受容されている。本発明に係るシール構造は、ガス圧縮機内部の高圧容積部6を、低圧容積部7に対して密閉する。そのために、シャフトシールリング3と固定子シールリング4の、互いに対向するスライド面の間に、狭いシール間隙が形成されており、当該シール間隙は運転中常に薄いガス膜に貫流されている。シール間隙は絞りとして作用し、高圧容積部6内の深刻な圧力損失を防ぐ。
【0022】
シャフトシールリング3は、回転子2のシャフトカラーに受容されており、当該回転子2と螺合されており(図示せず)、その結果、シャフトシールリング3は、回転子2と回転方向に固定されかつ軸方向に固定されて接続されており、当該回転子2とともに、ハウジング1に対して相対的に回転する。
【0023】
固定子シールリング4は、ハウジングの環状のノッチに、軸方向に移動可能かつ回転方向に固定されて(図示せず)運用されている。固定子シールリング4は、バネ5によってシャフトシールリング3に対してプレストレスを加えられ、その結果、シール間隙は運転中、当該シール間隙を貫流するガス膜とバネ5との力の均衡下で、所定の幅に合わさる。
【0024】
シール間隙のこの幅、すなわちシャフトシールリング3と固定子シールリング4の、互いに対向するスライド面の軸方向における距離を監視するために、シャフトシールリング3には環状のシャフト導体面9が形成され(図2参照)、固定子シールリング4には、第1固定子導体面8.1と、当該第1固定子導体面から電気的に絶縁された第2固定子導体面8.2とを有する固定子導体面構造が形成されており、当該第2固定子導体面8.2は、第1固定子導体面8.1と実質的に環を作る(図3参照)。金属製の導体面8.1,8.2,9は、シールリング3,4の原型を作る際に、当該シールリングの、電気的に絶縁された土台にともに形成され、その結果導体面8.1,8.2,9は、互いに対向するスライド面の下方に設けられ、互いに電気的に絶縁される。
【0025】
2つの回転子導体面8.1,8.2は、軸方向の滑り接触を介して、固定子シールリング4の軸方向の動きを配線10によって補償するために、外部から電気的にタップ可能であり、その結果第1固定子導体面8.1と第2固定子導体面8.2との間の容量Cが検出可能である。
【0026】
特に図4の等価回路から分かるように、第1固定子導体面8.1は、当該第1固定子導体面8.1と向かい合っており、第1固定子導体面8.1に対して電気的に絶縁されているシャフト導体面9とともに、第1コンデンサーC1を形成しており、当該第1コンデンサーC1は、第2コンデンサーC2と直列接続されている。当該第2コンデンサーC2は、シャフト導体面9と、当該シャフト導体面9と向かい合っておりシャフト導体面9に対して電気的に絶縁されている第2固定子導体面8.2とによって形成されている。2つのコンデンサーの容量と、2つの固定子導体面8.1,8.2の間の配線10でタップされた直列接続の容量Cとは、シール間隙が拡大した場合に、あるいはシールリングが破損した場合に減少するので、当該容量Cに基づいてシールを監視することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ハウジング(固定部分)
2 シャフト(回転子)
3 シャフトシールリング
4 固定子シールリング
5 バネ
6 高圧容積部
7 低圧容積部
8.1 第1固定子導体面
8.2 第2固定子導体面
9 シャフト導体面
10 電気接続配線
C コンデンサー
C1 コンデンサー
C2 コンデンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト導体面構造を有するシャフトシールリング(3)と、前記シャフト導体面構造から電気的に絶縁された固定子導体面構造を有する固定子シールリング(4)と、容量測定装置とを有しているシール構造であって、固定部分(1)に対してシャフト(2)を密閉するための前記シール構造において、前記固定子導体面構造は、第1固定子導体面(8.1)と、該第1固定子導体面(8.1)から電気的に絶縁された少なくとも1つの第2固定子導体面(8.2)とを備えており、前記シャフト導体面構造は、少なくとも1つのシャフト導体面(9)を備えており、前記測定装置は、前記固定子導体面構造の2つの固定子導体面(8.1,8.2)の間の電気容量(C)を検出するための装置を備えていることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記固定子導体面構造および/あるいは前記シャフト導体面構造の少なくとも2つの導体面(8.1,8.2)が、実質的に環を作ることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記固定子導体面構造および/あるいはシャフト導体面構造の少なくとも2つの導体面が、互いに対して同心円状に設けられていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記シャフト導体面構造が、前記固定子シールリングに対向する前記シャフトシールリングのスライド面の下方に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項5】
前記固定子導体面構造が、前記シャフトシールリングに対向する前記固定子シールリングのスライド面の下方に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項6】
前記シャフトシールリングおよび/あるいは前記固定子シールリングが、特に炭化ケイ素を含む非導電性材料から成る土台を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項7】
前記固定子シールリングが、前記固定部分に対して回転方向に固定されかつ/あるいは軸方向に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項8】
前記シャフトシールリングが、前記シャフトに対して回転方向に固定されかつ/あるいは軸方向に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項9】
ハウジング(1)と、シャフト(2)と、前記ハウジングに対して前記シャフトを密閉するための、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシール構造とを有する流体機械、特にガス圧縮機あるいはガス膨張機において、運転中に、シャフトシールリング(3)と固定子シールリング(4)との間に、作用媒体が貫流するシール間隙が形成されていることを特徴とする流体機械。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシール構造を監視するための方法において、運転中に、前記固定子導体面構造の2つの固定子導体面(8.1,8.2)の間の電気容量(C)が検出されることを特徴とする方法。
【請求項11】
シールの悪化が、検出された前記容量の減少に基づいて認識されることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−159752(P2010−159752A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−641(P2010−641)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(501473888)マン ターボ アーゲー (21)
【氏名又は名称原語表記】MAN TURBO AG
【Fターム(参考)】