説明

密閉膜を用いる貯留槽システム

皮膚投与又は経皮投与の治療システム(100)は、少なくとも1種類の活性物質(4)を含む貯留槽(5)と、該活性物質の貯留槽を画する活性物質−透過性膜(3)と、密閉層(2)とを含み、該密閉層(2)は、少なくとも1種類の活性物質を皮膚温度よりも低い温度では透過できないが、皮膚温度又はそれよりも高い温度では透過できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、皮膚投与又は経皮投与の治療システムであり、該システムは、少なくとも1種類の活性物質を含む貯留槽と、該活性物質の貯留槽を画する活性物質−透過性膜と、密閉層とを含み、該密閉層は、少なくとも1種類の活性物質を皮膚温度よりも低い温度では透過できないが、皮膚温度又はそれよりも高い温度では透過できる。
【背景技術】
【0002】
皮膚を介する吸収によって活性物質を投与する(皮膚投与又は経皮投与の)ための治療システムは、ここ数十年間に非常に重要になってきた。この間に、皮膚的又は経皮的に適用可能な薬物として知られるようになった薬物が増えつづけてきた。この投与剤形の長所は、消化管を回避することによって血管に活性物質を移入することである。したがって、前記活性物質がその目的臓器に到達する前に肝臓システムを経由することが避けられる。
【0003】
貼付剤のような前記システムは、動作様式に関して2種類の主なグループ、いわゆるマトリクスシステム及び貯留槽システムに分類される場合がある。第1グループは粘着層中に前記活性物質又は該活性物質の処方を含み、第2グループ中には、貯留槽中に前記活性物質又は活性物質の処方を含むシステムがあり、前記貯留槽の充填材中の前記活性物質は分散状態で通常存在する。前記貯留槽システムの充填材は、重合体及び/又は液体からなる場合がある。前記活性物質を含む液体の漏出を避けるために、前記貯留槽タイプの皮膚投与又は経皮投与の治療システムは、皮膚に面する粘着層とともに提供される活性物質−透過性膜によって通常画される。かかるシステムは、例えば、特許文献1と、特許文献2と、特許文献3と、特許文献4とで説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4 379 454号明細書
【特許文献2】国際公開第WO03/011 291号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 366 240号明細書
【特許文献4】ドイツ国特許689 29 533号明細書
【0005】
使い方に有利な場合があるかもしれないが、既知の貯留槽システムは短所もある。多くの場合には、液体の存在下では皮膚に面する粘着層の安定性が低いことだけが原因で、貯蔵安定性にしばしば問題が起きる。液体との接触による前記粘着層の不安定化は、前記貯留槽からの漏出を起こして、システムが使用不可能になる場合がある。さらに、前記皮膚に面する粘着層は、前記貯留槽からの活性物質の透過に関して該活性物質に対するさらなる障壁であり、これは、特に高い服用量が必要とされる活性物質にとっての制限要因の場合がある。治療指数が狭くて非常に強力な活性剤の場合には、前記粘着層での前記活性物質の蓄積が、前記システムの適用後、前記活性剤の所望されない初期高濃度放出をもたらす場合がある。さらに、透過可能な活性剤の多くは、酸素の存在下か、あるいは酸素の接近可能な粘着層末端でしばしば不安定であるために、前記システムは単に耐久性が短い。
【0006】
特許文献5は、活性化剤が前記活性物質の放出を起こす経皮投与又は局部投与のシステムを開示する。1つの実施態様では、皮膚及び活性物質層の間の障壁は改変される場合がある。当該実施態様では、前記透過性膜は、活性物質か、その/それらの水和物中の活性成分の処方成分のみかを透過可能なキセロゲル又はイオンゲルである。機能を有するシステムは、活性化後に、前記キセロゲルの水和反応か、水分量の増加かをもたらす水又は緩衝液を含む追加の区画を含むので、前記膜の孔を前記活性剤が透過できるようにする。膜材料として架橋されたポリアクリル酸が、活性化剤として塩基が、言及される。説明された実施態様は製造するのに非常に手がこんでおり、前記機能的メカニズムはたいていの場合は再現性のあまりよくない放出動態の原因となる。
【0007】
【特許文献5】欧州特許第0 273 004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、説明された短所を含まない改善された皮膚投与又は経皮投与の治療システムを提供することである。
【0009】
本目的は皮膚投与又は経皮投与のシステムに関する本発明によって達成され、該システムは、少なくとも1種類の活性物質を含む貯留槽と、該活性物質の貯留槽を画する活性物質−透過性膜と、密閉層とを含み、該密閉層は少なくとも1種類の活性物質を皮膚温度よりも低い温度では透過できないが、皮膚温度又はそれよりも高い温度では透過できる。この点について「皮膚温度よりも低い」とは、個人及び環境条件に依存して変化し、かつ、30°Cから35°Cまでの範囲の場合があるヒト肌の温度を意味する。特に、前記皮膚温度は31°Cから33°Cまでの範囲にあり、約32°Cが特に好ましい。
【0010】
本発明は、貯蔵の安定性がより高く、したがって製造物の安全性がより高い皮膚投与及び経皮投与の治療システムを製造することを可能にするので、これを通じて、前記システムに適切な活性物質の範囲を拡張することを可能する。
【0011】
本発明による前記システムでは、前記膜の皮膚に面する側で提供される追加の粘着層が回避される場合があるために、高い服用量でも活性物質を投与可能である。
【0012】
本発明による前記システムのさらなる長所は、前記活性物質の初期高濃度放出が避けられるために、前記活性物質が貯蔵期間中に粘着層に蓄積する場合がない皮膚投与又は経皮投与のシステムを製造することにある。
【0013】
本発明による皮膚投与又は経皮投与の前記治療システムは、密閉被覆層と、液体又は固体の貯留槽層との同一サイズ又は異なるサイズの構成要素を含み、前記密閉被覆層は前記活性物質の処方成分を透過できないようにし、前記液体又は固体の貯留槽層は1種類又は複数の活性物質を含み、該活性物質を含む貯留槽は皮膚側で密閉層とともに提供される活性物質−透過性膜によって制限されている。貯留槽マトリクスは、液体か、ゲル状か、自立型固体物質(self−supporting solid material)かとして存在することが可能なことが原則である。当然、液性又は流動性のマトリクスの場合には、当業者は、前記マトリクスか、含まれる活性物質かの「漏出」を避けるための適切な対策をとるであろう。このための例は、例えば、皮膚に面する側で活性物質−透過性膜によって画されている固体、液体−非透過性コーティングを提供することか、あるいは適切なゲル化剤によるマトリクスを厚くすることである。前記マトリクスは重合体を利用したマトリクスであることが好ましい。
【0014】
貯留槽マトリクスを製造するために、経皮投与システムの製造で用いられ、かつ、生理的に無害である重合体の全てが基本的に適切である。前記重合体は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体と、ポリエチレンと、塩素化ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ポリウレタンと、ポリカーボネートと、ポリアクリル酸エステルと、ポリアクリル酸塩と、メタクリル酸塩と、ポリビニルアルコールと、ポリ塩化ビニルと、ポリ塩化ビニリデンと、ポリビニルピロリドンと、ポリエチレンテレフタレートと、ポリテトラフルオロエチレンと、エチレン/プロピレンの共重合体と、エチレン/アクリル酸エチルの共重合体と、エチレン/酢酸ビニルの共重合体と、エチレン/ビニルアルコールの共重合体と、塩化ビニル/酢酸ビニルの共重合体と、ビニルピロリドン/エチレン/酢酸ビニルの共重合体と、ゴムと、ゴム様のものと、合成のホモ重合体、共重合体又はブロック重合体と、シリコーンと、シリコーン誘導体と、これらの混合物とを含むグループから選択される場合がある。代表的には、スチレン−ブタジエン−スチレンのブロック共重合体、ポリイソブチレン等を利用する重合体が用いられる場合もある。
【0015】
活性物質を含む貼付剤の貯留槽は、皮膚透過増強剤、(酸化亜鉛又はシリカのような)フィルター、可溶化剤、架橋化剤、安定化剤、乳化剤、防腐剤、抗酸化剤及び/又は溶媒も含む。当然、当業者は前記添加剤によって影響されない安定な密閉層を提供するであろう。
【0016】
必要な場合には、前記システムは(皮膚に面する)適用表面上で剥離可能な保護フィルムを有する。
【0017】
使用者の行為によって、前記密閉層が非透過性の状態から透過性の状態に転換され、該転換は前記システムが皮膚に適用される際に生じる。皮膚によって生じる温度上昇は密閉層の透過性を増大するので、皮膚層へ前記活性物質−透過性膜を介する前記活性物質の放出を起こす。さらなる場合には、前記密閉層は浸透性増強剤の機能をもたらす場合があるので、前記活性物質の放出を促進する場合がある。皮膚温度よりも低い温度では透過できなくしている前記密閉層は、酸素を透過できないことが好ましい。
【0018】
さらに、密閉層はその表面全部で前記皮膚に前記システムを固定するための自己粘着の場合がある。
【0019】
酸化的変質を受けやすい活性剤の安定性を向上するために、前記密閉層は1種類又は多数の抗酸化剤を用いて提供される場合がある。
【0020】
貼付剤の担体層又は被覆層は、前記活性物質を含む層と、粘着層とに含まれる物質、特に、前記活性物質を透過できず、かつ、不活性であることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンか、ポリプロピレンか、ポリブチレンかのようなポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンのポリエステルのような重合体、及び/又は、紙繊維、織物繊維をおそらく含むアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンの共重合体のような共重合体、及び/又は、これらの混合物を利用する場合があり、必要な場合には、金属化又は着色化される場合がある。貼付剤の前記担体層又は被覆層は、金属箔及び重合体の層の組み合わせからなる場合もある。担体層の厚さは3μmないし100μmであることが好ましい。
【0021】
さらなる実施態様では、前記システムは、被覆貼付剤(オーバーテープ(overtape))によって前記皮膚に固定される場合がある。
【0022】
本発明のさらなる特徴は、請求の範囲及び図面に関連する本発明の明細書の代表的な実施態様から推測される場合がある。1つの特徴は、本発明の実施態様を個別的にか、あるいはそれぞれを組み合わせて理解される場合がある。本発明のある代表的な実施態様の以下の説明で、参照符号が、本発明による前記システムの概念図を示す添付図面に付される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】活性物質を制限する透過性膜と、密閉層とを有する液体で満たされた貯留槽システム100の形状の本発明の好ましい代表的な実施態様の概観を示す図。最下層1は、システムが皮膚に適用される前に、使用者又は別人によって除去される剥離可能な保護層である。適用可能な貼付剤は、全体として前記皮膚に固定される。前記皮膚側の密閉層2は前記活性物質−透過性膜3と結合され、患者の皮膚に面する。前記活性物質4を含む貯留槽5は、透過できない被覆層6によって前記皮膚と反対側で制限される。被覆層6は膜3に結合されるか、あるいはそこに溶着されることが好ましい。その後、自由表面に面する前記被覆層は、経皮投与システム100の皮膚に面する表面と称される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
経皮投与システム100の説明された構造は、前記システムが固定される前記皮膚表面上に、前記活性物質−透過性膜3と、その次の皮膚に面する密閉層2とを通じて、貯留槽5に含まれた活性物質4の1種類又は2種類以上を十分な濃度で、かつ、制御されたやり方で長期間にわたって送達することを達成する。
【0025】
適切な活性剤の例は、鎮痛薬、ミューオピオイド−受容体拮抗薬、麻酔薬、副交感神経作動模倣薬、副交感神経遮断薬、制吐薬、催吐薬、交感神経作動模倣薬、ホルモン、抗片頭痛薬、抗アレルギー薬、抗痙攣薬、抗認知症薬、抗うつ薬、ベータ遮断薬、アルファ遮断薬及び興奮薬である。
【0026】
前記鎮痛薬は、言及される場合がある完全作動薬と、混合された作動薬/拮抗薬と、部分拮抗薬と、完全拮抗薬とのうちのオピオイドの場合がある。完全作動薬は、例えば、フェンタニル、レミフェンタニル、オキシコドン及びメサドンである。前記完全拮抗薬のうち、ナロキソン及びナルトレキソンが言及される場合がある。作動薬/拮抗薬は、例えば、ナルブフィンであり、部分拮抗薬は、例えば、ブプレノルフィンである。アセチルサリチル酸、エトフェナメート又はジクロフェナクのようなサリチル酸誘導体は酸性鎮痛薬の例である。
【0027】
前記ミューオピオイド受容体拮抗薬のうち、例えば、アルミボパン(almivopan)及びメチルナルトレキソンが言及される場合がある。
【0028】
前記麻酔薬のうち、例えば、リドカイン、テトラカイン又はエチドカインのような局部麻酔が考慮される。
【0029】
副交感神経作動模倣薬の例はコリンエステラーゼ阻害剤であり、これらの中のうち特に、フィゾスチグミン、リバスチグミン、ネオスチグミン、ドネペジル及びガランタミンが言及されるべきである。
【0030】
前記副交感神経遮断薬のうち、例えば、スコポラミンが示される場合がある。
【0031】
前記制吐薬は、前記副交感神経遮断薬と、オンダンセトロン及びグラニセトロンのような5−HT3−受容体拮抗薬と、ドンペリドンのようなドパミンD2−受容体拮抗薬とのうちから選択される場合がある。
【0032】
前記催吐薬のうち、アポモルヒネのようなドパミン−D2−受容体作動薬が考慮されるべきである。
【0033】
前記交感神経作動模倣薬のうち、ドブタミンのようなカテコールアミンが考慮される。さらに、サルブタモール、フェノテロール及びクレンブテロールのようなベータ−2−交感神経作動模倣薬も言及されるべきである。
【0034】
前記ホルモンは、例えば、エストラジオール、ノルエルゲストロミン、ゴセレリン又はブセレリンのうちから選択される場合がある。
【0035】
前記抗片頭痛薬の例はトリプタンのような5−HT1−受容体作動薬であり、これらのうち特に、ゾルミトリプタン、スマトリプタン又はナラトリプタンである。
【0036】
アルファ−1−アドレナリン受容体に対する拮抗薬として、タムスロシンが言及される場合がある。
【0037】
抗痙攣薬の例はガバペンチンである。
【0038】
抗認知症薬として、メマンティンが言及される。
【0039】
抗ヒスタミン薬のうち、ミゾラスチン、トリプロリジン及びデスロラタジンのような前記抗アレルギー薬が考慮される。
【0040】
前記抗うつ薬のうち、ノルトリプチリンが示される場合がある。
【0041】
適切なベータ遮断薬は、例えば、ネビボロールである。
【0042】
興奮薬の例は、例えば、メチルフェニデートである。
【0043】
マトリクスは1種類よりも多い活性物質を含む場合もあり、例えば、副交感神経遮断薬と組み合わせの副交感神経作動模倣薬、特に、フィゾスチグミン/スコポラミンのような活性物質2種類の組み合わせか、グラニセトロンと組み合わせのフェンタニルのような制吐薬と組み合わせの鎮痛薬か、ミュー受容体作動薬及びミュー受容体拮抗薬、例えば、フェンタニル/ナロキソンのような鎮痛薬2種類かである。
【0044】
本発明によるシステムは、温度不安定性を示す活性物質が用いられることが特に好ましく、26°Cよりも低い保存温度、特に、2°Cないし8°Cの範囲の温度が推奨可能である。
【0045】
本出願によれば、密閉層の下の層は皮膚温度よりも低い温度では透過できず、皮膚温度又はそれよりも高い温度では透過できると理解されるべきである。皮膚温度の下の皮膚の前記温度は、個人及び環境条件に依存して変化する場合があり、前記温度は30°Cないし35°Cの範囲にあると理解されるべきである。特に、前記皮膚温度は31°Cないし33°Cの範囲であり、約32°Cが特に好ましい。本発明による前記システムで、密閉材は前記皮膚温度で融解温度を有し、30°Cないし35°Cの範囲が好ましく、31°Cないし33°Cが特に好ましい。
【0046】
混合物質が用いられる場合もあり、成分及びこの割合を適切に選択することによって、所望の融解温度が設定される場合がある。
【0047】
前記密閉層のための物質は、植物性脂肪と、動物性脂肪と、脂肪酸と、アルカノールと、長鎖飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド(C1224ないしC1836)及び中鎖トリグリセリド(C12ないしC1020)と、長鎖アルカロール及び酸のエステルと、天然樹脂と、高分子パラフィンと、水和ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体と、トコフェロールのポリエチレングリコール誘導体と、多糖類と、アクリル酸の重合体とのグループから選択される場合がある。特に適切なものは、前記グループの物質からの均一な混合物である。
【0048】
植物性脂肪のグループのうち、カカオバター、カルナバワックス、クプアスバター、キャンデリラワックス及びシアバターが言及される場合がある。前記植物性脂肪の均一混合物は長所を有する場合がある。
【0049】
前記動物性脂肪のうち、蜜蝋、ラノリンが言及されるべきである。鯨蝋の代用品は、鯨蝋のための合成的な代用品として役立つ場合がある。
【0050】
長鎖飽和脂肪酸(C1020ないしC1836)の前記モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの化合物の例として、硬質脂肪(アデプスソリダス(adeps solidus))は前記中鎖トリグリセリド(C12ないしC1020)のグループから言及される場合があり、特に、脂肪酸のオクタン酸及び/又はデカン酸を含む代表的な中性油が言及されるべきである。
【0051】
前記アルカノールのグループから、ドデカノール、トリデシルアルコール及びセチルアルコールが言及される場合がある。
【0052】
ウンデセン酸及びステアリン酸は、遊離脂肪酸の例として提供する。
【0053】
長鎖アルコール及び酸のエステルとして、パルミチン酸ミリシルエステルが言及される場合がある。
【0054】
コロフォニー(Colophony)は天然樹脂のグループからの例である。
【0055】
多糖類の例は、キサンタン、グア粉末及びヒアルロン酸である。
【0056】
ポリアクリル酸の例は、カルボポール(Carbopol)である。
【0057】
トコフェルソラン(Tocophersolan)は、トコフェロールのポリエチレングリコール誘導体の材料としての例である。
【0058】
本発明によるシステムでは、密閉材は50μmないし600μm、特に、100μmから500μmまでの層の厚さで提供される場合がある。特に好ましいものは、200μmないし400μmの層の厚さである。
【0059】
本発明による前記システムは、植物性脂肪及び動物性脂肪を利用する密閉材によって特徴付けられる場合がある。前記システムの粘着性を向上するために天然樹脂を添加することが都合がよい。
【0060】
本発明によれば、前記密閉材は抗酸化剤の特性を有する場合があり、この性質は、特に、酸素の存在下で酸化される活性物質の場合に適切である。この点について、好ましいものは、抗酸化剤の一部分を含む植物性脂肪であるか、あるいは抗酸化剤を添加することである。前記植物性脂肪のグループのうち、クプアスバターは特に好ましいもの、特に、パルミチン酸ミリシルエステルと区別されるべきであり、トコフェルソランが抗酸化剤として用いられる場合もある。
【0061】
さらに、本発明によるシステムは、硬質脂肪(アデプスソリダス)及び中性油を利用する密閉材によって特徴付けられる場合がある。硬質脂肪及び中性油の混合物は、重量比60%ないし90%の硬質脂肪を含み、重量比10%ないし40%の中性油を含むことが好ましく、重量比75%ないし90%の硬質脂肪を含み、重量比10%ないし25%の中性油を含むことがさらにより好ましい。
【0062】
本発明によるシステムでは、密閉材の粘度は脂肪酸を添加することによって調節される場合がある。この点について、重量比1−20%の割合で前記脂肪酸のウンデセン酸及びステアリン酸を用いることが都合がよい。重量比5−10%の割合が特に好ましい。さらに、セチルアルコール、トリデシルアルコール又はドデカノールのようなアルカノールは重量比1−20%の割合で添加される場合がある。特に、重量比5−10%の割合が都合がよい。
【0063】
さらに、本発明によるシステムの前記密閉材は、添加された添加剤との重合体からなる場合がある。特に好ましいものは、添加された水和ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体とのポリアクリル酸である。
【0064】
本発明による貯留槽システムの活性物質−透過性膜は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、エチレン/酢酸ビニル共重合体及び/又はシリコーンのうちから選択される不活性重合体からなることが好ましい。膜の厚さは5μmないし100μmであり、10μmから50μmまでが好ましく、15μmないし40μmが特に好ましい。
【0065】
前記活性物質−透過性膜は孔を有することが好ましく、孔のサイズは0.1μmないし50μmの範囲の場合がある。前記孔は0.2μmないし10μmの範囲のサイズを有することが好ましく、0.5μmないし5μmの範囲が特に好ましい。
【0066】
本発明による前記システムは、被覆貼付剤の役割を果たす箔とともに提供される場合がある。前記箔は側面全てで前記システムを越えて広がり、少なくとも周辺域において感圧接着を用いて提供される場合がある。
【0067】
本発明による貯留槽システムの剥離可能な保護層は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリ塩化ビニル又はポリウレタンと、適用可能な場合には、セロハンのような処理された紙繊維とからなる場合があり、場合によっては、シリコーン、フルオロシリコーン又はフルオロカーボンのコーティングを有することが好ましい場合がある。
【0068】
本発明による皮膚投与及び経皮投与の治療システムは、以下の実施例1及び2の特別な代表的な実施態様として説明されるような方法で一般的に製造される場合がある。
【0069】
以下に、本発明の代表的な実施態様がより詳細に説明される。
【実施例1】
【0070】
密閉層を製造するために、硬質脂肪(重量比80%)と、中性油(重量比20%)との混合物は75°Cで融解され、40°Cの液相で維持される。パルミチン酸ミリシルエステルは、その中に重量比2%の量で均一に混ぜられる。活性物質−透過性膜(本発明では微細孔性ポリエチレン膜のDSMソルポア(Solupor))のコーティングが、ナイフ塗工(knife coater)による連続コーティング装置上で250μmの厚さで行なわれる。
【0071】
コーティングされた後、前記密閉層が4°Cで硬化するまで前記膜は冷却される。貯留槽システムを製造するために、コーティングされた膜は、充填小開口部を維持しつつ、被覆層(裏打ち箔(backing foil))に175°Cで、かつ、加圧下で従来の密封装置によって溶着される。タムスロシン塩基(重量比2%)はエタノール(重量比75%)中に溶解され、重量比23%のミリスチン酸イソプロピルを添加することによって均一な溶液になるまで攪拌される。貯留槽は、前記充填開口部を通じて活性物質を含む溶液で満たされ、溶着され、かつ、打ち抜かれる。前記システムは2°Cないし8°Cで保管される。保護箔の除去後、前記システムは、粘着剤がコーティングされたオーバーテープによって皮膚に固定される。
【実施例2】
【0072】
密閉層を製造するために、蜜蝋(重量比70%)と、カルナバワックス(重量比20%)と、コロフォニー(重量比10%)との混合物が110°Cで融解され、45°Cの液相で維持される。トコフェルソランが重量比5−10%の量で添加される。液体混合物は、それが均一になるまで攪拌される。活性物質−透過性膜(本発明ではポリプロピレン・セルガード2400)のコーティングは、ナイフ塗工による連続コーティング装置上で330μmの厚さで行なわれる。
【0073】
コーティングされた後、密閉層が硬化(4°C)するまで膜は冷却される。貯留槽システムを製造するために、コーティングされた膜は、充填小開口部を維持しつつ、被覆層(裏打ち箔)に175°Cで、かつ、加圧下で従来の密封装置によって溶着される。フィゾスチグミン塩基はエタノール溶液中に溶解される。ヒドロキシプロピルセルロースが重量比2.5%の割合で添加され、前記ヒドロキシプロピルセルロースが完全に膨潤されるまで混合物は静置可能である。貯留槽は、充填開口部を通じて活性物質を含むヒドロゲルで満たされ、溶着され、かつ、打ち抜かれる。前記システムは25°Cよりも低い温度で保管される。保護箔の除去後、前記システムは皮膚に固定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の活性物質を含む貯留槽と、該活性物質の貯留槽を画する活性物質−透過性膜と、密閉層とを含み、該密閉層は、少なくとも1種類の活性物質を皮膚温度よりも低い温度では透過できないが、皮膚温度又はそれよりも高い温度では透過できることを特徴とする、皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項2】
密閉材が、植物性脂肪と、動物性脂肪と、アルカノールと、脂肪酸と、長鎖飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド(C1224ないしC1836)及び中鎖トリグリセリド(C12ないしC1020)と、長鎖アルカロール及び酸のエステルと、天然樹脂と、高分子パラフィンと、水和ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体と、トコフェロールのポリエチレングリコール誘導体と、多糖類と、アクリル酸の重合体と、これらの混合物とのグループからの物質から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項3】
前記密閉材は、カカオバター及びクプアスバターと、鯨蝋の代用品と、蜜蝋と、硬質脂肪と、中性油と、ドデカノールと、セチルアルコールと、ウンデセン酸と、パルミチン酸ミリシルエステルと、コロフォニーと、トコフェルソランと、グア粉末及びカルボポールと、これらの混合物とのうちから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項4】
前記密閉層の材料は均一な混合物からなることを特徴とする、請求項1ないし3のうちの1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項5】
前記密閉層は、植物性脂肪及び動物性脂肪の混合物、好ましくは、樹脂との組み合わせの植物性脂肪及び動物性脂肪の混合物のうちから選択されることを特徴とする、請求項1ないし4のうちの1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項6】
前記混合物は、蜜蝋及びカルナバワックスからなり、蜜蝋の割合は重量比40%ないし95%の範囲であり、かつ、カルナバワックスの割合は重量比5%ないし60%の範囲であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項7】
前記密閉層の物質は、長鎖飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド(C1224ないしC1836)と、中鎖トリグリセリド(C12ないしC1020)との均一の混合物であることを特徴とする、請求項1ないし6の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項8】
前記混合物は、硬質脂肪及び中性油からなり、前記硬質脂肪が重量比60%ないし90%の割合で含まれ、かつ、前記中性油が重量比10%ないし40%の割合で含まれることを特徴とする、請求項1ないし7の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項9】
前記密閉層は重量比0.1%ないし10%の抗酸化剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし8の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項10】
前記抗酸化剤は、トコフェロールのポリエチレングリコール誘導体、特に、トコフェルソランであることを特徴とする、請求項1ないし9の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項11】
前記密閉層は、皮膚温度又はそれよりも高い温度で透過性を増大する特性を有することを特徴とする、請求項1ないし10の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項12】
前記密閉層は、感圧接着の特性を有することを特徴とする、請求項1ないし11の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項13】
前記密閉層の厚さは、50μmないし600μmの範囲であり、特に100μmないし500μmの範囲であり、好ましくは200μmないし400μmの範囲であることを特徴とする、請求項1ないし12の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項14】
少なくとも1種類の活性物質を含む前記層は、固体、半固体又は液体の貯留槽として形成されることを特徴とする、請求項1ないし13の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システム。
【請求項15】
少なくとも1種類の活性物質を皮膚に放出するための、請求項1ないし14の1つに記載の皮膚投与又は経皮投与の治療システムの使用。


【図1】
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【公表番号】特表2010−531684(P2010−531684A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513646(P2010−513646)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001112
【国際公開番号】WO2009/003466
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510002350)アシノ アーゲー (7)
【Fターム(参考)】