寸法計測装置およびこれを用いた半導体装置の製造方法
【課題】本発明の目的は、試料上に形成されたパターンのラフネスを高精度に測定する寸法解析プログラム、及び寸法計測装置の提供にある。
【解決手段】上記目的を達成するために、構造物の寸法を所定の方向に沿って複数回測定して得た1組の結果(以下、要素測定結果と称す)を複数個結合することにより上記方向に長い構造物の寸法の測定結果(以下、結合測定結果と称す)を仮想的に構築しそのスペクトル(以下、結合スペクトルと称す)を計算し、当該結合スペクトルを複数個作成し平均することによりスペクトル(以下、平均結合スペクトルと称す)を作成する寸法解析プログラム、及び寸法計測装置を提案する。
【解決手段】上記目的を達成するために、構造物の寸法を所定の方向に沿って複数回測定して得た1組の結果(以下、要素測定結果と称す)を複数個結合することにより上記方向に長い構造物の寸法の測定結果(以下、結合測定結果と称す)を仮想的に構築しそのスペクトル(以下、結合スペクトルと称す)を計算し、当該結合スペクトルを複数個作成し平均することによりスペクトル(以下、平均結合スペクトルと称す)を作成する寸法解析プログラム、及び寸法計測装置を提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法計測装置を用いて計測した微細な構造物の寸法を解析するプログラムに関し、ことに寸法に空間的変動がある場合に変動を特徴付ける統計量を精度良く抽出することのできる寸法解析プログラム、および同プログラムを搭載した寸法計測装置に関する。本発明はさらに、素子の寸法を高精度に制御することにより高性能な半導体装置を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属−絶縁体−半導体(MIS)型トランジスタの微細化に伴いその特性バラツキが増大する結果、回路動作に支障をきたす確率が高くなってきた。このため、MISトランジスタ特性のバラツキを正確に把握する必要がある。MISトランジスタの特性、特にしきい値電圧は能動領域(以下、チャネルと称す)において電荷の流れる方向に測ったゲート電極の長さ(以下、ゲート長と称す)に依存する。同ゲート長は電荷の流れる方向と垂直な方向(チャネル幅方向)に分布していることが知られており、この現象は通常LWR(line width roughness)と呼ばれる。MISトランジスタ特性は主にゲート長をチャネル幅方向に平均した値Lgに依存するが、それ以外にゲート長の分散(もしくは標準偏差),チャネル幅WgおよびLWRの相関距離ζにも依存する。この点に関しては、例えばルーニセン(Leunissen)等によるプロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5752巻(2005年)、第499頁ないし第509頁に詳しい。
【0003】
上記したLgおよびゲート長の分散に関しては関連業界が協力して測定方法の標準化が行われ、セミ・P47−0307「テスト・メソッド・フォー・エバリュエーション・オブ・ラインエッジ・ラフネス・アンド・ラインウィドス・ラフネス」として規格化された。同規格はCD−SEMと呼ばれる走査型電子顕微鏡を用いて所定(2μm)以上の長さを有する配線の幅(ゲート長に相当)を所定の間隔(10nm以下)で測定し、その平均値と標準偏差により配線幅の分布を把握するというものである。
【0004】
他方、相関距離ξに関しては、配線幅の測定結果を元に自己相関関数を求め、距離の指数関数を用いて相関距離を決定する方法が用いられて来た。これについては、例えばコンスタンツーディス(Constantoudis)等によるプロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5375巻(2004年)、第967頁ないし第977頁に詳しい。また、配線幅の空間的変動のスペクトルを波数のべき関数と比較することにより求める方法もある。この方法も上記コンスタンツーディス等による文献に記載されている。
【0005】
さらに、上記したセミ規格が必要とする2μmの領域を測定する上で、2μm以上の長さを有する配線を形成しておく必要のあることは言うまでもないが、これを配線幅方向と配線長方向とで異なる倍率の下で観察することのできるCD−SEMを必要とすることが多い。しかしながら、半導体装置を実際に生産する現場において、常にこれら条件を満たすことができる訳でない。このため、上記条件を満たすことができない場合に対応すべく、複数の測定結果をつなぎ合わせることにより仮想的に長い配線を構築し、その配線幅の分布から平均値および標準偏差を求める方法が提案されている。これをパッチワーク法と呼ぶことがあり、詳細は例えばヤマグチ(Yamaguchi)等によるジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第7B巻(2005年)、第5575頁ないし第5580頁に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】プロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5752巻(2005年)、第499頁ないし第509頁
【非特許文献2】セミ・P47−0307「テスト・メソッド・フォー・エバリュエーション・オブ・ラインエッジ・ラフネス・アンド・ラインウィドス・ラフネス」
【非特許文献3】プロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5375巻(2004年)、第967頁ないし第977頁
【非特許文献4】ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第7B巻(2005年)、第5575頁ないし第5580頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法を用いて相関距離もしくは分散を求める際の問題点について説明する。自己相関関数を用いる方法とスペクトルを用いる方法のいずれの場合においても、実際に測定して得られた結果(自己相関関数もしくはスペクトル)と計算により得られた結果とが一致するように計算に用いる相関距離と分散を調整することにより測定対象の相関距離および分散を決定している。測定は例えば上記セミ・P47−0307に記述されているように、有限の領域において所定の間隔で行うのが普通である。このため、自己相関関数もしくはスペクトルを計算により求める際にも実際の測定の場合と同じ領域と間隔を想定する必要がある。このうち、スペクトルに関しては本発明者等がジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第106巻(2009年)、第xxxx−1頁ないし第xxxx−8頁において実際の測定条件に則して計算する方法を報告している。しかしながら、パッチワーク法を用いた場合においては、自己相関関数もしくはスペクトルがどのようなものになるか理論的に解明されていないので、相関距離の解析を行うことができないという問題があった。
【0008】
従来の方法にはさらに次のような問題もある。スペクトルを求める際、理想的には測定を無限回にわたり行いその結果を平均する必要がある。しかし、実際に測定できる回数には限りがある。その回数が少ない場合においては、スペクトルに生ずるジャギーとよばれるギザギザが大きくなり解析の障害となる。パッチワーク法においては、この問題が深刻なものとなる。すなわち、n個の配線(その長さをLとする)を結合して仮想的に1個の長い配線(長さnLとなる)を形成する場合においては、形成することのできる仮想的長配線の数が元の配線(以下、要素配線と称す)の数の1/nへと減少し、その結果ジャギーが顕著に増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記パッチワーク法の問題を解決するために本発明においては、要素配線を結合して仮想的長配線を形成する際に、要素配線の空間配置の順序を乱数により完全に乱した上で結合する。このようにすると、配線幅の相関関数が距離の指数関数である場合においては、結合した仮想的長配線のスペクトルIAS,τを理論的に次式により表すことができることを本発明者等は見出した。
【0010】
【数1】
ここで、
【0011】
【数2】
であり、τは1からnNまでの値をとる。要素配線はy方向に延伸するとした。
【0012】
なお、自己相関関数が指数関数でない場合においては、これをφ(y)とすれば(1)式にかわり次式により仮想的長配線のスペクトルを求めることができる。
【0013】
【数3】
なお、上記(1)式および(3)式により表されるIAS,τをkτの関数として見た場合、その関数形は要素配線を結合しない場合の結果と等しい。ただし、要素配線の場合においてはkτがK0≡2π/L=nk0の整数倍である値のみをとるのに対し、仮想的長配線の場合においてはそれ以外にk0の整数倍の値もとる。この結果のみからは、仮想的長配線のスペクトルが結合しない場合のスペクトルを内挿したものであるかのように推測しがちである。しかし、同推測が常に正しいとは限らないことを後述する。なお、(1)式右辺により仮想的長配線のIAS,τを求めるに際しては、nNをNに代入するのでなくNをそのままにして計算することに注意が必要である。
【0014】
実測結果からスペクトルを求めるに際しては、スペクトルのジャギーを低減するために同一条件の下で形成した配線を可能な限り多数測定するのが望ましいのは言うまでもない。さらに、要素配線を結合することにより仮想的長配線を構成する際、異なる仮想的長配線の間で同一の要素配線を共有する場合が生ずることを本発明においては許容する。その結果、形成することのできる仮想的長配線の数に限りがほぼなくなり平均操作の回数を飛躍的に増加させることができるので、スペクトルのジャギーを大きく低減することができる。なお、要素配線には長い配線の一部を仮想的に切り出したものを用いても良い。また、隣接して形成された配線から仮想的に切り出したものを用いても良いが、並列して多数形成された配線のうち端に近いものにおいては寸法分布が中央付近のものの寸法分布と異なる場合があるので注意が必要である。
【0015】
以下、本発明の上記手段の有効性を検証するために行った検討結果について説明する。まず、上記(1)式の妥当性を検証するために、モンテカルロ法を用いて計算により模擬的に形成した要素配線を用いて形成した仮想的長配線のスペクトルと(1)式を用いて計算したスペクトルとを比較した結果の一例を図1(a)に示す。同図(b)は同図(a)において長方形により囲まれた部分を拡大したものである。同図には、長さ2000nmの要素配線を順不同で20個結合させた仮想的長配線の幅を10nmの間隔で測定した場合に得られるスペクトルを示しており、白丸がモンテカルロ法による結果を、黒丸が(1)式により計算した結果を示す。なお、モンテカルロ法による結果は、524個作成した要素配線の共有を許容しながら仮想的長配線を4000個形成し、これらから得たスペクトルを平均した結果である。両者が極めて良く一致するところから、(1)式が妥当なものであることのみならず、本発明者等が行ったモンテカルロ法を用いた計算も妥当なものであることが確認できる。参考までに同図には無限に広がる領域において無限小の間隔で測定した場合に得られるスペクトル(以下、連続スペクトルと称す)を実線で示してある。同連続スペクトルに従い変動する配線幅を有限の間隔で測定することにより、スペクトルがk=nNk0/2で表わされる直線を軸として線対称なものへと変形することが見て取れる。ここで、nおよびNが偶数であるとした(以下同様)。このような変形はエイリアシングと呼ばれる現象により生ずることが知られている。上記図から、有限の間隔で測定することにより求めたスペクトルが上記対称軸付近およびそれ以上の波数に対して本来のスペクトルから大きく乖離することが分る。これらは、結合していない要素配線のスペクトルにおいても生ずる現象である。他方、本来のスペクトルには存在しない周期的変動が存在しており、これは仮想的長配線のみに見られる特徴である。したがって、寸法変動の分散および相関距離を適切に求めるためには、測定条件に即して(1)式によりスペクトルを計算し測定により求めたスペクトルと比較することが重要である。
【0016】
ついで、スペクトルを平均することの効果について調べた結果について述べる。スペクトルの平均によりジャギーが減少することは、例えばバンデイ(Bunday)等がプロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5375巻(2004年)、第515頁ないし第533頁において報告している。しかし、同報告を含め公知の例における平均効果の検討は定性的であり、要素配線を結合した仮想的長配線のジャギーの検討に対してはほとんど参考とならなかった。そこで、先ず、結合を行っていない要素配線のスペクトルの平均効果について検討した。その結果の一例を図2に示す。ここでは、上記したモンテカルロ法を用いた計算により作成した5240個の配線のスペクトルを求めこれらの一部を平均して得たスペクトルJτと(1)式においてn=1として解析的に計算したスペクトルIτとの差εを上記平均回数NPSDの関数として示した。配線の長さは2000nm、LWRの相関距離は30nm、想定した測定間隔は10nmである。なお、εは次式により計算した。
【0017】
【数4】
同図から、平均回数とともにモンテカルロ法によるスペクトルが解析的結果に漸近するので、平均操作がスペクトルのジャギー低減に効果を発揮することが理論的かつ定量的に確認できる。また、同図はジャギーを所望の水準に留めるのに必要な平均回数を求める上でも有用である。図3は、要素配線を5個結合して形成した仮想的長配線のスペクトルのジャギーについて、図2と同様モンテカルロ法により検討した結果である。ここで、要素配線の長さは2000nm、LWRの相関距離は3000nm、想定した測定間隔は10nmであり、要素配線の総数Nfは20個(中白の丸)および200個(中黒の丸)とした。仮想的長配線の間で要素配線の重複を許容しない場合においては形成することのできる仮想的長配線の数はそれぞれ4個と40個であるが、同図においては重複を許容しているので仮想的長配線をほぼ無数に形成することができる。同図から、スペクトルを平均する回数が重複を許容しない場合の上限を超えても誤差がさらに減少するので、重複を許容することがジャギー低減に有効であることが分る。誤差の減少はやがて止まるが、到達した最小値は要素配線の数の多い方が小さい。なお、スペクトルの平均回数が要素配線の数の概ね5倍を超えるとジャギー低減効果が飽和する。図4には、仮想的長配線を構成する要素配線の数が20個である場合の結果を示す。図3と図4を比較すると、結合する要素配線の数が異なる場合においてもスペクトルの誤差はスペクトルを平均する回数によりほぼ決定されることが分る。この結果は、スペクトルのジャギー低減という観点からは結合する要素配線の数を制限する必要のないことを示している。上記平均効果を実際にスペクトルにより確認するために、上記図3と図4を求める際に計算したスペクトルの例を図5に示す。同図(a)と(b)においては、要素配線の総数が20、その結合数も同じ20である。(a)においては平均回数が1であるので、要素配線の重複を許容しない場合に対応する。これに対して、(b)は重複を許容して2000回平均した結果である。(b)において形成した2000個の仮想的長配線においては、これらを構成する要素配線は全て同じであり、要素配線を結合する順序のみが異なる。それにもかかわらず(b)のスペクトルのジャギーが(a)のスペクトルのジャギーよりも小さいことが明瞭に見て取れる。また、図5(c)は、(b)における要素配線の総数を200個へと増加させた場合の結果である。(b)と(c)とでは平均回数が同じであるが、要素配線の総数が大きい(c)の方がスペクトルのジャギーが小さくなっている。なお、上記説明においてスペクトルを平均する際には、通常、配線幅のフーリエ変換の絶対値の二乗を波数毎に平均する。このため、「スペクトルを平均する」ことは「フーリエ変換の絶対値の二乗を平均する」ことと等価であることは言うまでもない。
【0018】
LWRの統計量を求める上で結合する要素配線の数nを適切な値に設定する必要があることを以下に説明する。図6は、長さ2000nmの配線の幅を10nmの間隔で測定する場合に得られるスペクトルをvar(w)/ξにより規格化した結果を示す。ここでは、相関距離が1000nm,2000nmおよび3000nmである場合の結果が示してある。このように規格化すると相関距離の値が異なっていてもスペクトルがほぼ一致する場合のあることが分る。この時、ξ=1000nm、c(1<c<3)を定数として分散がvar(w)、相関距離がξであるスペクトルと分散がcvar(w)、相関距離がcξであるスペクトルとの間で区別がつかないため、分散や相関距離を決定することができない。このような問題を解消するための方策の一つは波数の最小値が相関距離の逆数よりも小さくなるように要素配線の測長領域の長さLを設定することである。すなわち、L>2πξとする必要がある。同条件を満たすことが常に可能であるとは限らないが、そのような場合においても上記配線を要素配線として結合すると先に示した図1のように、波数の小さい領域においてスペクトルに平坦な部分が出現する。同部分におけるスペクトルの最大値はIAS,1(τ=1)であり、nとともにI0に漸近する。ξの異なるI0をvar(w)/ξにより規格化した値は相互に異なるので、nを十分に大きくしIAS,1がI0にほぼ等しくなるようにすれば、波数の大きい領域とτ=1付近においてそれぞれスペクトルを比較することにより分散や相関距離を決定することが可能となる。nの値を適切に選択する参考とするために、図7に上記IAS,1とI0の比をnの関数として示す。ξ/Lが大きい程上記した比は小さいが、nが10以上であればξ/Lの値にかかわらず上記比がほぼ1となり、分散や相関関数を精度よく決定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の寸法解析プログラムを用いれば、構造物の撮影画像を元に同構造物の寸法の平均値、分散,標準偏差,相関距離等の統計量を正確に抽出することが可能となる。また、同寸法解析プログラムを搭載した本発明の寸法計測装置を用いれば、構造物の撮影から寸法の諸統計量の抽出までを一貫して迅速かつ正確に把握することが可能となる。さらに、同寸法計測装置を工程管理に用いることを特徴とする本発明の製造方法を用いれば、半導体装置を構成する微細構造物の寸法精度が向上するので、半導体装置の製造歩留まりと品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】要素配線を結合した仮想的長配線のLWRのスペクトルを示す図。
【図2】複数の試料間で平均を行ったスペクトルにおけるジャギーの大きさを示す図。
【図3】要素配線を5個結合した仮想的長配線のLWRのスペクトルにおけるジャギーの大きさを示す図。
【図4】要素配線を20個結合した仮想的長配線のLWRのスペクトルにおけるジャギーの大きさを示す図。
【図5】要素配線の重複を許容して行った平均操作の効果を示す図。
【図6】相関距離の長いLWRのスペクトルを示す図。
【図7】最小波数に対するスペクトルの値を示す図。
【図8】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第1の画面を示す図。
【図9】特定の波数に対するスペクトルの値を示す図。
【図10】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第2の画面を示す図。
【図11】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第3の画面を示す図。
【図12】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第4の画面を示す図。
【図13】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第5の画面を示す図。
【図14】本発明の第2の実施例により表示装置上に表示された画面の一例を示す図。
【図15】本発明の第3の実施例により表示装置上に表示された第1の画面を示す図。
【図16】本発明の第3の実施例により表示装置上に表示された第2の画面を示す図。
【図17】測定領域の長さが異なる要素配線を結合した仮想的長配線のスペクトルを示す図。
【図18】本発明の第4の実施例を示す図。
【図19】本発明の第5の実施例を示す図。
【図20】本発明の第6の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施例
図8は、本発明の寸法解析プログラムが稼働している最中に表示装置(モニタ)上に表示される画面の一例を示す。この例においては、「LWR−PR1−0002」に始まり「LWR−PR1−0904」に終わる偶数番号を名前の一部に有する452個の電子ファイル(以下、単にファイルと称す)が「/root/mnt/cd−meas/pr1」にて指定される電子フォルダ(以下、単にフォルダと称す)に格納されている。ファイル名はボックス1、および4ないし6に表示された内容により指定される。これらボックスに入力された内容からファイル名が指定される方法は自明であろう。また、フォルダ名はボックス3に入力された内容により指定される。ボックス3は、フォルダ名を入力する際の便を図るためのプルダウンメニューである。上記した各々のファイルにはホトレジストからなる細線をCD−SEMを用いて撮影し、その寸法(配線幅)を日立ハイテクノロジーズ社から販売されているターミナル・ピーシー(Terminal−PC)と呼ぶ画像処理ソフトウェアを用いて10nmの間隔で200回測定した結果が記録されている。これら測定条件は、それぞれボックス7と8に入力する。なお、これらボックス7と8の内容は測定条件を記録したファイルから自動的に読み取ることも可能である。
【0022】
「Spectra」と記されたボタン23をクリックすると、上記したファイルから逐次データが読み込まれ解析が行われる。解析した結果の内、寸法の平均値はボックス11に、スペクトルはグラフ21(白丸)にそれぞれ表示される。なお、白丸で示したスペクトルは以下のようにして求める。まず、上記したファイルに記録されたデータを幅として有する要素配線をボックス9に入力された数だけ無作為に抽出した上で結合し仮想的長配線を形成しスペクトルを求める。その際、抽出した要素配線を結合する順序も無作為である。このようにして仮想的長配線のスペクトルをボックス10に入力された数だけ求めこれらを平均したものが白丸で示したスペクトルである。また、同グラフ21にはボックス12(LWRの第1成分における寸法の分散)と13(第1成分における寸法変動の相関距離)に入力された内容を用いて(1)式ないし(3)式により計算した第1成分のスペクトルIAS,τ,1st、ボックス14(LWRの第2成分における寸法の分散)と15(第2成分における寸法変動の相関距離)に入力された内容を用いて(1)式ないし(3)式により計算した第2成分のスペクトルIAS,τ,2ndおよび画像雑音に起因したスペクトルInoiseに相当する一定値(ボックス17の内容)を合算した結果(実線)も表示されている。ここで雑音に起因した成分として波数によらない一定値を加算したのは、雑音が一般的に白く(波数に依存せず一定である)かつ確率変数として独立しているためである。ボックス18には同雑音に起因した寸法の分散varnoiseが表示されている。上記Inoiseとvarnoiseとの間には次式に示す関係がある。
【0023】
【数5】
ラジオボタン19と20が選択されているので、画像雑音がないとして計算した結果(破線)および無限の大きさを有する領域を連続的に測定した場合に想定される結果(一点鎖線)もグラフ21には表示されている。なお、ボタン群22を適宜クリックすることによりグラフ21の座標軸の範囲を変更することが可能である。ボックス12ないし15、および17の内容の内の少なくとも一つが変更されるとこれら値を用いて再度計算が行われ、結果が即座に更新されるようになっている。これにより、上記ボックス12ないし15および17の内容を様々に変化させながら計算結果(実線)が実測結果(白丸)と一致する値を探索することにより、画像雑音の影響を受けることなく寸法変動をもたらす第1成分と第2成分の分散と相関距離を高精度に決定することができる。このようにして最適化された実線の結果は白丸の結果と良く一致しており、ホトレジスト細線の寸法変動がいずれも指数関数型の自己相関関数を有する二つの成分によりもたらされていることおよび本発明の(1)式がスペクトル解析に有効であることが確認できる。
【0024】
「Fit」と記されたボタン24をクリックすると、ボックス12ないし15および17に入力する内容を試行錯誤により最適化する上記作業を自動で行うことができる。この場合においても、自動により決定された内容を再度上記した手動的方法により修正することができるのは言うまでもない。自動による最適化作業は以下のようにして行われる。
(a)LWRの第1成分(相関距離の短い方の成分)が支配的である波数領域(ここでは、0.01cm-1ないし0.314cm-1)において、第2成分の存在を無視して(1)式ないし(3)式を用いて計算したスペクトルが実測結果と一致するように、第1成分の相関距離ξ1およびスペクトルの雑音成分Inoiseを決定する。波数領域の上限はエイリアシング効果による対称軸の座標nNk0/2に等しい。なお、後述するシステム変動の影響を除外するために、kmn=mnk0(m=0,1,…,N−1)である波数に対しては計算結果と実測結果との比較を行わない。ここでは同時に第1成分の分散varinit,1stも求めるが、これは下記(b)以降に述べる一連の計算における初期値となる。
(b)ξ1を(2)式に代入し、第1成分のスペクトルIτ,1stを規格化した
を(1)式により計算する。ここで、var(w1)は第1成分の分散であるが、
を求める上でその値は必要ない。
(c)第1成分のスペクトルを次式により計算する。
(d)第2成分の相関距離ζ2の値を適当に仮定し、第2成分のスペクトルIτ,2ndを規格化した
を(b)と同様にして計算する。ここでvar(w2)は第2成分の分散であるが、
を計算する上でその値が必要でないのは
の場合と同じである。
(e)第2成分の分散の暫定値varτ,2ndを次式により計算する。
ここで、Imeas,τは実測結果から求めたスペクトルである。
(f)τ<nである波数kτに対して、これら暫定値varτ,2ndの平均varAV,2ndを計算する。(g)第2成分のスペクトルを次式により計算する。
(h)和Iτ,ALL≡Iτ,1st+Iτ,2nd+Inoiseを求める。
(i)所定の波数領域においてIτ,ALLとImeas,τとが最も良く一致するように、(d)ないし(h)を反復しξ2を最適化する。その値をξtempor,2とする。ここでも(a)と同様、kmn=mnk0(m=0,1,…,N−1)である波数に対しては両者の比較を行わない。
(j)第1成分の分散の暫定値vartempor,1stを次式により計算する。
(k)第1成分のスペクトルを次式により計算する。
(l)上記(e)ないし(g)によりIτ,2ndを再度計算する。
(m)第1成分の分散の暫定値が変化しなくなるまで(j)ないし(l)を反復する。
(n)第1成分の分散の暫定値が変化しなくなるまで(d)から(m)を反復する。
(o)上記(n)によりvartempor,1stとξtempor,2が一定となるのみならず、varAV,2ndも一定となる。これら一定値がそれぞれボックス12,15および14に表示される。また、第1成分の相関距離とスペクトルの雑音成分は上記(a)により決定された値がそれぞれボックス13と17に表示される。
【0025】
なお、上記した反復計算においては第1成分の分散の初期値に(a)で求めた値を用いているので、上記(n)により最終的に決定した第1成分の分散の値は初期値にほぼ等しい。このため多くの場合において、(n)における反復を多くとも2回行えば十分な精度を得ることができる。また、(n)を省略したとしても実用上問題ないことも多い。
【0026】
グラフ21に示した実測結果のスペクトル(白丸)の値の多くが上記した計算結果(実線)と良く一致する一方で、波数kmn=mnk0(m=0,1,…,N−1)における実測結果の値が計算結果から大きく乖離している。その原因について本発明者等が検討した結果を以下に述べる。仮想的長配線を構成する要素配線の配線幅をws,α(s=0,1,…,N−1)とする。ここで、sは要素配線内における測定位置を示し、αは要素配線を識別する番号である。sを固定してws,αを要素配線間で無限回平均した値をWs、そのスペクトルをISYS,m(m=0,1,…,N−1)とすると、上記した波数kmnに対するスペクトルの値は(1)式ないし(3)式から計算される値IAS,mnにnISYS,mが上乗せされてIAS,mn+nISYS,mとなることを見出した。なお、Wsはws,αと異なり確率変数でないので、以下においては同変数をシステム変数,同変数が表す配線幅の変動をシステム変動とそれぞれ呼ぶことにする。上記結果によると、システム変動によりスペクトルに上乗せされる量はnに比例する。これを検証するために、mを固定して実測結果から求めたスペクトルの値をnの関数として図9に示す。同図には、m=1,2,7,8の場合の結果が示してある。上記した理論的解析結果から予期される通り、波数kmnに対するスペクトルの値がnの一次関数であることが確認できる。なお、同一次関数におけるnの係数はISYS,mに等しい。
【0027】
上記した図8において「System」と記されたボタン25をクリックすると図10に示すように上記システム変数を解析する画面になる。同画面におけるグラフ28の白丸は、システム変数の値を近似的に求めるために、実測したws,αをsを固定して平均した結果を示す。実線は、上記白丸で示した結果をボックス30に入力された数を次数とする多項式により近似した結果である。また、グラフ29の白丸は実測結果から次式
【0028】
【数6】
により求めたシステム変動のスペクトルISYS-MEAS,mであり、実線は上記多項式近似の結果のスペクトルである。ボックス30に入力した値を変更すると、直ちに新しい値の下で多項式近似を再度実行しその結果をグラフ28および29に表示するようになっている。グラフ29の白丸と実線とがほぼ一致するところから、図8のグラフ21において波数kmn=mnk0に対するスペクトルの値が実測結果と計算結果とで大きく異なっている原因がシステム変動にあることが分る。なお、図10のボタン31をクリックすると図8の画面にもどる。
【0029】
図8のボックス16には上記システム変動による分散が表示されているが、その値は以下のようにして計算される。要素配線を結合することにより形成した仮想的長配線内における配線幅の平均値を(w)α、分散をvar(w)αとして次式
【0030】
【数7】
により配線幅の分散var(w)measを求める。ここでvar((w)α)ASと(var(w)α)ASは、スペクトルを求めるためにボックス10に入力された数だけ形成した一連の仮想的長配線を標本とする母集団における(w)αの分散およびvar(w)αの平均値である。上記var(w)measからボックス12,14および18に表示された値を引き算したものがボックス16に表示してある。他方、システム変動のスペクトルを上記(6)式を用いて計算し、次式
【0031】
【数8】
により求めた分散は0.15nm2となり、ボックス16に表示された値と一致する。なお、(8)式におけるk0は(2)式により計算される。さらに、多項式近似の結果から求めた分散も0.17nm2となり上記値とほぼ一致する。
【0032】
図11は、上記図8のボタン26をクリックした場合に表示される画面の一例である。グラフ32および33における3種類の直線は、ボックス12ないし15に表示された値を統計量とするLWRを有する要素配線を結合した仮想的長配線内における配線幅の平均値(w)αを無限個集めた母集団における標準偏差σ((w)α)を次式
【0033】
【数9】
により計算した結果を仮想的長配線の長さnLおよび結合した要素配線の数nの関数としてそれぞれ示したものである。ここで、IAS,0,1stとIAS,0,2ndは仮想的長配線のLWRのスペクトルを構成する二つの成分のτ=0における値を図8のグラフ21における実線と同様にして計算した結果である。なお、k0は(3)式により計算されるので
【0034】
【数10】
である。上記3種の直線においては要素配線の長さLが異なり、それぞれ50nm,200nm,2000nmである。これらLの値は、ボックス34により指定される。また、グラフ32における曲線(一点鎖線)は、長さがnLである単一の要素配線における結果を同様にして計算した結果を示す。このようにして求めたσ((w)α)は、1本の仮想的長配線において求めた(w)αが真の値(w)にどれほど近いかを示す指標となる。すなわち、モンテカルロ法を用いた計算によると(w)αは正規確率分布をしており、この場合、(w)は99.7%の確率で(w)α−3σ((w)α)ないし(w)α+3σ((w)α)の範囲に、95%の確率で(w)α−2σ((w)α)ないし(w)α+2σ((w)α)の範囲に、68%の確率で(w)α−σ((w)α)ないし(w)α+σ((w)α)の範囲に存在することになる。上記グラフ32によると、仮想的長配線の長さをそろえた比較においては、要素配線の短い方がσ((w)α)が小さく(w)αが(w)に近いことが分る。他方グラフ33によると、nをそろえた比較においては要素配線の長い方がσ((w)α)の小さいことが分る。したがって、これらグラフを参照することにより実際の状況に応じて配線幅の平均値を高精度に測定するための条件を適切に設定することが可能となる。
【0035】
上記グラフ33を用いれば、素子寸法に関する複数の測定結果を平均した値を用いて半導体装置の生産工程の管理を行っている場合に同平均値の精度を推定することも可能である。すなわち、生産工程管理においても通常、所定のパターンの幅uを所定の間隔で複数回測定した結果を平均した値Uを寸法の1測定結果としている。これら測定結果をnAV個平均した値Vは、上記パターンを要素配線としてnAV個結合した仮想的長配線の幅の平均値に等しい。したがって、uの測定条件がボックス7と8の内容と同じであり、かつuの変動を特徴付ける統計量がボックス12ないし15に表示された値に等しい場合においては、Vに生ずるバラツキの標準偏差σ(V)をグラフ33からn=nAVとして読みとることができる。また(10)式によれば、Uのバラツキの標準偏差をσ(U)として次式
【0036】
【数11】
によりσ(V)を求めることもできる。これにより、測定したVの精度を上記した(w)αの場合と同様にして把握することができる。なお、Vの分散を求めるには(11)式の両辺を平方すればよい。
【0037】
図12は、上記図11のボタン35をクリックした際に表示される画面の一例である。同画面においてグラフ36は、MISトランジスタのチャネル長がボックス12ないし15に表示された値を統計量とするLWRを有するとして、同チャネル長の素子内における平均値Lgを無数に集めた母集団における分散σ(Lg)をチャネル幅Wgの関数として次式
【0038】
【数12】
【0039】
【数13】
により計算し、ボックス37に表示された係数cを用いてcσ(Lg)と−cσ(Lg)を実線により表示したものである。ここで、var(w1)とvar(w2)は、LWRの第1成分の分散と第2成分の分散であり、その値がボックス12と14にそれぞれ表示されている。図12に示された例においてはc=3であり、この場合MISトランジスタの99.7%においてLgの平均値からの偏差ΔLgがグラフ36に示された二つの実線の間に分布する。なお、同グラフにおける破線は第1のLWR成分のみを考慮した場合の結果である。実線と破線を比較すると、100nm以上のWgを有するMISトランジスタのLgの分布に対して第2のLWR成分が少なからず影響して値が大きくなっており、この点を回路設計上考慮する必要のあることが分る。なお、上記(12)式および(13)式は長さWgの配線を無限小の間隔で測定する場合の結果である。この結果は、(1)式および(9)式においてLをWgで置き換え、Wg=NΔyを一定に保ちながらN→∞,Δy→0とした極限として得られる。
【0040】
図13は、図8において「Analysis」と表示されたボタン27をクリックした場合に表示される画面の一例である。要素配線の結合数を様々に変化させて図8と同様にして仮想的長配線のスペクトルを求めた上でフィッティングにより決定した第1成分の分散(黒丸)と第2成分の分散(黒三角)がグラフ39に、第2成分の相関距離がグラフ40にそれぞれ表示されている。解析を行う結合数nは、ボックス41に表示された名前を有するファイルに記載されている。これらグラフによれば、本実施例の試料においてはnが10以上になるとフィッティングにより決定した分散と相関距離の値がnによらずほぼ一定となる。したがって、上記試料と同一条件で作成される試料のLWRを評価するにはnを10以上とすれば良いことが分る。この結果は上記図7の結果と整合性のあるものとなっている。
【0041】
以上に述べたように、本発明の寸法解析プログラムを用いれば配線幅の分散のみならず相関距離をも正確に求めることができる。特に、相関距離が測定領域よりも長い場合においても正確な解析が可能であるので、半導体装置を生産する様々な現場に対応することができるとともに、半導体装置を構成する様々な素子の寸法バラツキを高精度に推定することができる。さらにまた、画像雑音に起因した成分の分散をも定量的に求めることができるので、画像を撮影する条件およびターミナル・ピーシー等を用いて寸法測定を行う条件の善し悪しの判定を行うことができるという利点もある。
【0042】
なお、本実施例は図8ないし図13に示すように様々な機能を有しているが、必要に応じてその一部のみを搭載した場合においても本発明の目的の少なくとも一部を達成することができるのはいうまでもない。
【0043】
第2の実施例
図14は、本発明による別の寸法解析プログラムが稼働している最中にモニタ上に表示される画面の一例である。本プログラムにおいては、上記した実施例1のプログラムと異なりCD−SEMを用いて細線を撮影した画像から寸法を直接解析することが可能である。ここでは、「PR1−0002」に始まり「PR1−0904」に終わる偶数番号を名前の一部に有する452個の電子ファイルが「/root/mnt/cd−image/pr1」にて指定される電子フォルダに格納されている場合の例を示してある。これらは、上記実施例1に示した配線幅を測定する元となった画像である。ファイル名はボックス51、および4ないし6に入力された内容により指定される。これらボックスに入力された内容からファイル名が指定される方法は実施例1の場合と同様に自明であろう。また、上記フォルダ名がボックス53に入力された内容により指定されること、およびボックス52がフォルダ名を入力する際の便を図るためのプルダウンメニューであることも実施例1の場合と同様である。本プログラムは、上記したターミナル・ピーシーが有するのと類似した機能により上記画像から寸法を読み取る。このための条件を記載したファイルとこれを格納するフォルダがボックス54と56により指定される。プルダウンメニュー55はボックッス56への入力を補助するためにある。なお、ボックス7と8には上記ボックス54で指定したファイルに記載された内容のうちの該当部分が自動的に入力される。
【0044】
読み取った寸法は、ボックス1で指定される文字列を頭とし対応する画像ファイルと同じ番号を有する名前のファイルに記録され、ボックス3で指定されるフォルダに保存される。本実施例において寸法を記録したファイルの名前は、「LWR−PR1−0002」ないし「LWR−PR1−0904」となる。これらファイルを実施例1と同様にして解析した結果がグラフ21に表示されている。このように本寸法解析プログラムを用いれば、細線の画像からスペクトルを求めるまでを一貫で行い、寸法の分散および相関距離を正確に求めることができる。
【0045】
第3の実施例
図15は、本発明による第三の寸法解析プログラムが稼働している最中にモニタ上に表示される画面の一例である。本プログラムにおいては、上記した第1の実施例のプログラムと異なり要素配線を結合せずに求めたスペクトルを元に相関距離の小さい方の成分の解析を行う。相関距離の大きい方の成分は第1の実施例と同様にして解析する。すなわち、プルダウンメニュー43において「ξ1」を選択した上でボタン23をクリックすると第1の実施例と同様にして、ボックス1、および4ないし6に表示された内容により指定されるファイルから逐次データが読み込まれる。これら全てのデータの平均値がボックス11に表示される。ついで、各々のデータを元にボックス7と8に表示された値を用いてスペクトルを求め、波数毎にこれらの平均値を求めた結果がグラフ42の白丸として表示される。波数毎に行われる同平均操作の数は上記ファイルの数(ここでは452個)に等しい。なお、上記ファイルに記録されているデータは、第1の実施例と同一の条件により作成された試料をCD−SEMにより撮影した画像を用いて間隔を変えて測定したものであり、測定数も異なる。ボックス12,13および17に表示された値を用いて(1)式および(2)式により計算した結果が実線により表示されている。ボタン24をクリックすると、(1)式および(2)式を用いて計算した結果と上記実測結果とが一致するように、ボックス12,13および17の内容を最適化する作業が自動的に行われる。
【0046】
ついで、プルダウンメニュー43において「All ξ」を選択すると図16が表示される。ボタン23をクリックすると、第1の実施例と同様にして要素配線を結合した仮想的長配線のスペクトルがグラフ44に白丸として表示される。(1)式ないし(3)式により計算した結果が実線により表示される点も第1の実施例と同じである。さらに、ボタン24をクリックすると、第1の実施例における(b)ないし(o)によりボックス12,14および15の内容が自動的に最適化される。なお、(a)において決定する必要のある値には、上記図15において決定した値が用いられる。
【0047】
上記図15および図16の少なくとも一方においてボックスの内容を最適化する作業を手動により行ってもよいことは言うまでもない。
【0048】
本実施例においては要素配線を測定する領域の長さが500nmであるので、縦方向と横方向とで倍率を変えて撮像するという特別な機能を有したCD−SEMを必要としない。このため、半導体装置の生産現場の多くにおいて実施することができる。
【0049】
さらに、本実施例において要素配線を結合せずに第1成分を解析することの利点を以下に説明する。図17は、測定間隔を本実施例と同じ5nmに維持したまま要素配線の測定領域の長さLを変えて(1)式ないし(3)式により仮想的長配線のLWRスペクトルを計算した結果を示す。相関距離は3000nmとした。同図から明らかなように、Lが減少するとスペクトルの値が局所的にではあるが増大する。これら極大値がLの値を相関距離とするスペクトルの値にほぼ等しいことを本発明者等は確認している。これに対して、相関距離が小さければLが減少しても波数が同じである限りスペクトルの値はほとんど変化しない(図示せず)。このため、Lが小さい場合においては第1の実施例の(a)にいう波数の大きい領域においても第2成分の影響を無視することができず、第1成分の解析に支障が生ずる。他方、本実施例のように要素配線を結合せずにそのまま求めたスペクトルにおいては、Lが変化しても第1成分の値はもとより第2成分の値もほとんど変化しないので第1成分を高精度に解析することができる。ただし、この場合においてもLがあまりに小さいと図6に示した事例に類似した理由により解析の精度が劣化するので、L>2πξとするのが望ましい。
【0050】
第4の実施例
図18は、本発明による寸法計測装置の一例を示す概略図である。本寸法計測装置は通常のCD−SEMと同等の機能を有する走査型電子顕微鏡101、同顕微鏡により撮影した画像を記録したファイルを保存する記憶装置111および上記実施例2の寸法解析プログラムを用いて同記憶装置111に保存されたファイルを解析する計算機121とから構成される。これらは通信回線131と132により相互に電気的に接続されている。これにより、細線の画像を撮影しながら同時にあるいは画像撮影後短時間の内に寸法の平均値のみならずその分散および相関距離を求めることができる。さらに、計算機121により解析された結果は必要に応じて走査型電子顕微鏡101に内蔵されたモニタ102に表示され、測定現場で寸法の諸統計量を把握することが可能となっている。
【0051】
これらにより、測定結果を生産現場に対して迅速に反映させることが可能となる。また、例えば画像雑音が大きすぎて分散もしくは相関距離の精度を確保することが困難な場合に、走査型電子顕微鏡101の画像撮影条件を変更することにより平均値、分散もしくは相関長の精度を速やかに改善することができるという利点もある。
【0052】
なお、本寸法計測装置の3つの構成要素である走査型電子顕微鏡101,記憶装置111および計算機121の間は、必ずしも直接的に接続されている必要はなく、各々をローカル・エリア・ネットワーク(LAN)に接続することにより間接的に接続しても良い。また、LANにとどまらず広域ネットワーク(WAN)により相互に接続されていても本発明の目的を達成することができるのは言うまでもない。さらに、記憶装置111がなく、走査型電子顕微鏡101と計算機121が直接もしくはLANもしくはWANを介して接続されていても良い。この場合、走査型電子顕微鏡101もしくは計算機121に内蔵された記憶装置(図示せず)が記憶装置111の役割を果たすことになる。
【0053】
第5の実施例
図19は、本発明による寸法計測装置の第二の例を示す概略図である。本実施例は、上記第4の実施例における記憶装置111と計算機121を走査型電子顕微鏡101と一体化し、筐体151に内蔵させたものである。なお、本実施例と異なり記憶装置111と計算機121を外付けとしても本発明の目的を達成することができるのは言うまでもない。さらに、記憶装置111を装備せず、その機能を走査型電子顕微鏡101もしくは計算機121に内蔵された記憶装置により代用しても良い。さらにまた、計算機121をも排して上記実施例2の寸法解析プログラムを元々走査型電子顕微鏡101に内蔵されていた計算機に搭載しても良い。
【0054】
上記図において、CD−SEM機能による観察結果と寸法計測結果はモニタ154に表示される。また、寸法解析プログラムによる寸法の分散および相関距離等の解析結果はモニタ155に表示される。なお、156はCD−SEM機能および寸法解析プログラムを制御するためのキーボードであり、152と153は測定用ウェハを測定室内へ出し入れするための投入口である。
【0055】
本実施例によれば寸法の諸統計量の解析を測定現場でしかも迅速に行うことができるので、測定精度の維持・向上に向けた測定条件の管理・改善はもとより、測定結果を生産現場に対して反映させることをより速やかに実行することが可能となる。
【0056】
第6の実施例
図20は、本発明による半導体装置の製造方法の一例を示す概略図である。本実施例においては、上記第4の実施例における走査型電子顕微鏡101,記憶装置111および計算機121が通信回線141ないし143により、露光装置201,塗布現像ベーク装置211およびエッチング装置221が通信回線146ないし148によりそれぞれLAN161に接続されている。これら以外にも半導体製造装置がLAN161に接続されているが、ここでは図示しない。このようにLAN161に接続された製造装置の稼働状況を監視するとともにその動作を制御するために計算機122が通信回線145を介してLAN161に接続されている。また、同計算機122の動作を補助するために記憶装置112が通信回線144を介してLAN161に接続されている。本製造方法においては、加工対象となる薄膜が形成された半導体基板上に塗布現像ベーク装置211によりホトレジスト膜を塗布し、露光装置201により所定のマスクを用いて露光した後、再度塗布現像ベーク装置211により現像とベークを行い所望の形にホトレジストを成形する。ついで、走査型電子顕微鏡101を用いて同ホトレジストの形状を撮影した画像を電子ファイルとして記憶装置111に保存した上で、計算機121を用いて実施例7と同様にして寸法の平均値,分散および相関距離を求める。その結果を記憶装置112に保存し計算機122を用いて解析した上で、後続の半導体基板上に形成するホトレジストの寸法の諸統計量が所望の値となるよう、必要に応じて露光装置201もしくは塗布現像ベーク装置211もしくは両者に対して計算機122から処理条件変更の指示を出す。また、当該半導体基板上に形成した薄膜の加工後における寸法の諸統計量が所望の値となるよう、次工程の処理を行うエッチング装置221に対して必要に応じて処理条件変更の指示を予め出すこともある。その後、上記ホトレジストをマスクとしてエッチング装置221を用いて薄膜を加工する。ホトレジスト・マスクを除去した後、加工された薄膜の形状を再度走査型電子顕微鏡101を用いて撮影し上記と同様にして寸法の諸統計量を解析した上で、後続の半導体基板上における薄膜の加工後の寸法が所望の値となるように、必要に応じてエッチング装置221に対して処理条件変更の指示を出す。
【0057】
なお、寸法の平均値が所望の値となるようCD−SEMの測定結果を前工程および次工程に反映させることは従来より行われてきた。このように寸法の平均値のみを管理する場合においては、本発明の利点が少ない。他方、寸法の分散(あるいは標準偏差)を管理しようとする場合、従来法を用いるとCD−SEMで撮影された画像に含まれる雑音に起因した誤差が大きいので製造装置に対する処理条件の変更を適切に指示することが困難である。このため、CD−SEMによる測定結果を製造条件に反映させることにより、逆に管理範囲を外れる事例を増やしてしまうことがある。これに対して、本発明を用いれば画像雑音が存在しその強度が変化する場合においても分散を正確に求めることができるので、加工後における寸法の分散を高精度に管理・制御することができる。さらに、寸法変動の相関距離を管理することは、本発明を用いることにより実用上初めて可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1,3−18,30,34,37,41,51,53,54,56 ボックス
2,43,52,55 プルダウンメニュー
19,20 ラジオボタン
21,28,29,32,33,36,39,40,42,44 グラフ
22−27,31,35,38 ボタン
101 走査型電子顕微鏡
102,154,155 モニタ
111,112 記憶装置
121,122 計算機
131,132,141148 通信回線
151 筐体
152,153 搬出入口
156 キーボード
161 ローカル・エリア・ネットワーク
201 露光装置
211 塗布現像ベーク装置
221 エッチング装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法計測装置を用いて計測した微細な構造物の寸法を解析するプログラムに関し、ことに寸法に空間的変動がある場合に変動を特徴付ける統計量を精度良く抽出することのできる寸法解析プログラム、および同プログラムを搭載した寸法計測装置に関する。本発明はさらに、素子の寸法を高精度に制御することにより高性能な半導体装置を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属−絶縁体−半導体(MIS)型トランジスタの微細化に伴いその特性バラツキが増大する結果、回路動作に支障をきたす確率が高くなってきた。このため、MISトランジスタ特性のバラツキを正確に把握する必要がある。MISトランジスタの特性、特にしきい値電圧は能動領域(以下、チャネルと称す)において電荷の流れる方向に測ったゲート電極の長さ(以下、ゲート長と称す)に依存する。同ゲート長は電荷の流れる方向と垂直な方向(チャネル幅方向)に分布していることが知られており、この現象は通常LWR(line width roughness)と呼ばれる。MISトランジスタ特性は主にゲート長をチャネル幅方向に平均した値Lgに依存するが、それ以外にゲート長の分散(もしくは標準偏差),チャネル幅WgおよびLWRの相関距離ζにも依存する。この点に関しては、例えばルーニセン(Leunissen)等によるプロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5752巻(2005年)、第499頁ないし第509頁に詳しい。
【0003】
上記したLgおよびゲート長の分散に関しては関連業界が協力して測定方法の標準化が行われ、セミ・P47−0307「テスト・メソッド・フォー・エバリュエーション・オブ・ラインエッジ・ラフネス・アンド・ラインウィドス・ラフネス」として規格化された。同規格はCD−SEMと呼ばれる走査型電子顕微鏡を用いて所定(2μm)以上の長さを有する配線の幅(ゲート長に相当)を所定の間隔(10nm以下)で測定し、その平均値と標準偏差により配線幅の分布を把握するというものである。
【0004】
他方、相関距離ξに関しては、配線幅の測定結果を元に自己相関関数を求め、距離の指数関数を用いて相関距離を決定する方法が用いられて来た。これについては、例えばコンスタンツーディス(Constantoudis)等によるプロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5375巻(2004年)、第967頁ないし第977頁に詳しい。また、配線幅の空間的変動のスペクトルを波数のべき関数と比較することにより求める方法もある。この方法も上記コンスタンツーディス等による文献に記載されている。
【0005】
さらに、上記したセミ規格が必要とする2μmの領域を測定する上で、2μm以上の長さを有する配線を形成しておく必要のあることは言うまでもないが、これを配線幅方向と配線長方向とで異なる倍率の下で観察することのできるCD−SEMを必要とすることが多い。しかしながら、半導体装置を実際に生産する現場において、常にこれら条件を満たすことができる訳でない。このため、上記条件を満たすことができない場合に対応すべく、複数の測定結果をつなぎ合わせることにより仮想的に長い配線を構築し、その配線幅の分布から平均値および標準偏差を求める方法が提案されている。これをパッチワーク法と呼ぶことがあり、詳細は例えばヤマグチ(Yamaguchi)等によるジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第7B巻(2005年)、第5575頁ないし第5580頁に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】プロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5752巻(2005年)、第499頁ないし第509頁
【非特許文献2】セミ・P47−0307「テスト・メソッド・フォー・エバリュエーション・オブ・ラインエッジ・ラフネス・アンド・ラインウィドス・ラフネス」
【非特許文献3】プロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5375巻(2004年)、第967頁ないし第977頁
【非特許文献4】ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第7B巻(2005年)、第5575頁ないし第5580頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法を用いて相関距離もしくは分散を求める際の問題点について説明する。自己相関関数を用いる方法とスペクトルを用いる方法のいずれの場合においても、実際に測定して得られた結果(自己相関関数もしくはスペクトル)と計算により得られた結果とが一致するように計算に用いる相関距離と分散を調整することにより測定対象の相関距離および分散を決定している。測定は例えば上記セミ・P47−0307に記述されているように、有限の領域において所定の間隔で行うのが普通である。このため、自己相関関数もしくはスペクトルを計算により求める際にも実際の測定の場合と同じ領域と間隔を想定する必要がある。このうち、スペクトルに関しては本発明者等がジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第106巻(2009年)、第xxxx−1頁ないし第xxxx−8頁において実際の測定条件に則して計算する方法を報告している。しかしながら、パッチワーク法を用いた場合においては、自己相関関数もしくはスペクトルがどのようなものになるか理論的に解明されていないので、相関距離の解析を行うことができないという問題があった。
【0008】
従来の方法にはさらに次のような問題もある。スペクトルを求める際、理想的には測定を無限回にわたり行いその結果を平均する必要がある。しかし、実際に測定できる回数には限りがある。その回数が少ない場合においては、スペクトルに生ずるジャギーとよばれるギザギザが大きくなり解析の障害となる。パッチワーク法においては、この問題が深刻なものとなる。すなわち、n個の配線(その長さをLとする)を結合して仮想的に1個の長い配線(長さnLとなる)を形成する場合においては、形成することのできる仮想的長配線の数が元の配線(以下、要素配線と称す)の数の1/nへと減少し、その結果ジャギーが顕著に増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記パッチワーク法の問題を解決するために本発明においては、要素配線を結合して仮想的長配線を形成する際に、要素配線の空間配置の順序を乱数により完全に乱した上で結合する。このようにすると、配線幅の相関関数が距離の指数関数である場合においては、結合した仮想的長配線のスペクトルIAS,τを理論的に次式により表すことができることを本発明者等は見出した。
【0010】
【数1】
ここで、
【0011】
【数2】
であり、τは1からnNまでの値をとる。要素配線はy方向に延伸するとした。
【0012】
なお、自己相関関数が指数関数でない場合においては、これをφ(y)とすれば(1)式にかわり次式により仮想的長配線のスペクトルを求めることができる。
【0013】
【数3】
なお、上記(1)式および(3)式により表されるIAS,τをkτの関数として見た場合、その関数形は要素配線を結合しない場合の結果と等しい。ただし、要素配線の場合においてはkτがK0≡2π/L=nk0の整数倍である値のみをとるのに対し、仮想的長配線の場合においてはそれ以外にk0の整数倍の値もとる。この結果のみからは、仮想的長配線のスペクトルが結合しない場合のスペクトルを内挿したものであるかのように推測しがちである。しかし、同推測が常に正しいとは限らないことを後述する。なお、(1)式右辺により仮想的長配線のIAS,τを求めるに際しては、nNをNに代入するのでなくNをそのままにして計算することに注意が必要である。
【0014】
実測結果からスペクトルを求めるに際しては、スペクトルのジャギーを低減するために同一条件の下で形成した配線を可能な限り多数測定するのが望ましいのは言うまでもない。さらに、要素配線を結合することにより仮想的長配線を構成する際、異なる仮想的長配線の間で同一の要素配線を共有する場合が生ずることを本発明においては許容する。その結果、形成することのできる仮想的長配線の数に限りがほぼなくなり平均操作の回数を飛躍的に増加させることができるので、スペクトルのジャギーを大きく低減することができる。なお、要素配線には長い配線の一部を仮想的に切り出したものを用いても良い。また、隣接して形成された配線から仮想的に切り出したものを用いても良いが、並列して多数形成された配線のうち端に近いものにおいては寸法分布が中央付近のものの寸法分布と異なる場合があるので注意が必要である。
【0015】
以下、本発明の上記手段の有効性を検証するために行った検討結果について説明する。まず、上記(1)式の妥当性を検証するために、モンテカルロ法を用いて計算により模擬的に形成した要素配線を用いて形成した仮想的長配線のスペクトルと(1)式を用いて計算したスペクトルとを比較した結果の一例を図1(a)に示す。同図(b)は同図(a)において長方形により囲まれた部分を拡大したものである。同図には、長さ2000nmの要素配線を順不同で20個結合させた仮想的長配線の幅を10nmの間隔で測定した場合に得られるスペクトルを示しており、白丸がモンテカルロ法による結果を、黒丸が(1)式により計算した結果を示す。なお、モンテカルロ法による結果は、524個作成した要素配線の共有を許容しながら仮想的長配線を4000個形成し、これらから得たスペクトルを平均した結果である。両者が極めて良く一致するところから、(1)式が妥当なものであることのみならず、本発明者等が行ったモンテカルロ法を用いた計算も妥当なものであることが確認できる。参考までに同図には無限に広がる領域において無限小の間隔で測定した場合に得られるスペクトル(以下、連続スペクトルと称す)を実線で示してある。同連続スペクトルに従い変動する配線幅を有限の間隔で測定することにより、スペクトルがk=nNk0/2で表わされる直線を軸として線対称なものへと変形することが見て取れる。ここで、nおよびNが偶数であるとした(以下同様)。このような変形はエイリアシングと呼ばれる現象により生ずることが知られている。上記図から、有限の間隔で測定することにより求めたスペクトルが上記対称軸付近およびそれ以上の波数に対して本来のスペクトルから大きく乖離することが分る。これらは、結合していない要素配線のスペクトルにおいても生ずる現象である。他方、本来のスペクトルには存在しない周期的変動が存在しており、これは仮想的長配線のみに見られる特徴である。したがって、寸法変動の分散および相関距離を適切に求めるためには、測定条件に即して(1)式によりスペクトルを計算し測定により求めたスペクトルと比較することが重要である。
【0016】
ついで、スペクトルを平均することの効果について調べた結果について述べる。スペクトルの平均によりジャギーが減少することは、例えばバンデイ(Bunday)等がプロシーディングズ・オブ・エスピーアイイー、第5375巻(2004年)、第515頁ないし第533頁において報告している。しかし、同報告を含め公知の例における平均効果の検討は定性的であり、要素配線を結合した仮想的長配線のジャギーの検討に対してはほとんど参考とならなかった。そこで、先ず、結合を行っていない要素配線のスペクトルの平均効果について検討した。その結果の一例を図2に示す。ここでは、上記したモンテカルロ法を用いた計算により作成した5240個の配線のスペクトルを求めこれらの一部を平均して得たスペクトルJτと(1)式においてn=1として解析的に計算したスペクトルIτとの差εを上記平均回数NPSDの関数として示した。配線の長さは2000nm、LWRの相関距離は30nm、想定した測定間隔は10nmである。なお、εは次式により計算した。
【0017】
【数4】
同図から、平均回数とともにモンテカルロ法によるスペクトルが解析的結果に漸近するので、平均操作がスペクトルのジャギー低減に効果を発揮することが理論的かつ定量的に確認できる。また、同図はジャギーを所望の水準に留めるのに必要な平均回数を求める上でも有用である。図3は、要素配線を5個結合して形成した仮想的長配線のスペクトルのジャギーについて、図2と同様モンテカルロ法により検討した結果である。ここで、要素配線の長さは2000nm、LWRの相関距離は3000nm、想定した測定間隔は10nmであり、要素配線の総数Nfは20個(中白の丸)および200個(中黒の丸)とした。仮想的長配線の間で要素配線の重複を許容しない場合においては形成することのできる仮想的長配線の数はそれぞれ4個と40個であるが、同図においては重複を許容しているので仮想的長配線をほぼ無数に形成することができる。同図から、スペクトルを平均する回数が重複を許容しない場合の上限を超えても誤差がさらに減少するので、重複を許容することがジャギー低減に有効であることが分る。誤差の減少はやがて止まるが、到達した最小値は要素配線の数の多い方が小さい。なお、スペクトルの平均回数が要素配線の数の概ね5倍を超えるとジャギー低減効果が飽和する。図4には、仮想的長配線を構成する要素配線の数が20個である場合の結果を示す。図3と図4を比較すると、結合する要素配線の数が異なる場合においてもスペクトルの誤差はスペクトルを平均する回数によりほぼ決定されることが分る。この結果は、スペクトルのジャギー低減という観点からは結合する要素配線の数を制限する必要のないことを示している。上記平均効果を実際にスペクトルにより確認するために、上記図3と図4を求める際に計算したスペクトルの例を図5に示す。同図(a)と(b)においては、要素配線の総数が20、その結合数も同じ20である。(a)においては平均回数が1であるので、要素配線の重複を許容しない場合に対応する。これに対して、(b)は重複を許容して2000回平均した結果である。(b)において形成した2000個の仮想的長配線においては、これらを構成する要素配線は全て同じであり、要素配線を結合する順序のみが異なる。それにもかかわらず(b)のスペクトルのジャギーが(a)のスペクトルのジャギーよりも小さいことが明瞭に見て取れる。また、図5(c)は、(b)における要素配線の総数を200個へと増加させた場合の結果である。(b)と(c)とでは平均回数が同じであるが、要素配線の総数が大きい(c)の方がスペクトルのジャギーが小さくなっている。なお、上記説明においてスペクトルを平均する際には、通常、配線幅のフーリエ変換の絶対値の二乗を波数毎に平均する。このため、「スペクトルを平均する」ことは「フーリエ変換の絶対値の二乗を平均する」ことと等価であることは言うまでもない。
【0018】
LWRの統計量を求める上で結合する要素配線の数nを適切な値に設定する必要があることを以下に説明する。図6は、長さ2000nmの配線の幅を10nmの間隔で測定する場合に得られるスペクトルをvar(w)/ξにより規格化した結果を示す。ここでは、相関距離が1000nm,2000nmおよび3000nmである場合の結果が示してある。このように規格化すると相関距離の値が異なっていてもスペクトルがほぼ一致する場合のあることが分る。この時、ξ=1000nm、c(1<c<3)を定数として分散がvar(w)、相関距離がξであるスペクトルと分散がcvar(w)、相関距離がcξであるスペクトルとの間で区別がつかないため、分散や相関距離を決定することができない。このような問題を解消するための方策の一つは波数の最小値が相関距離の逆数よりも小さくなるように要素配線の測長領域の長さLを設定することである。すなわち、L>2πξとする必要がある。同条件を満たすことが常に可能であるとは限らないが、そのような場合においても上記配線を要素配線として結合すると先に示した図1のように、波数の小さい領域においてスペクトルに平坦な部分が出現する。同部分におけるスペクトルの最大値はIAS,1(τ=1)であり、nとともにI0に漸近する。ξの異なるI0をvar(w)/ξにより規格化した値は相互に異なるので、nを十分に大きくしIAS,1がI0にほぼ等しくなるようにすれば、波数の大きい領域とτ=1付近においてそれぞれスペクトルを比較することにより分散や相関距離を決定することが可能となる。nの値を適切に選択する参考とするために、図7に上記IAS,1とI0の比をnの関数として示す。ξ/Lが大きい程上記した比は小さいが、nが10以上であればξ/Lの値にかかわらず上記比がほぼ1となり、分散や相関関数を精度よく決定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の寸法解析プログラムを用いれば、構造物の撮影画像を元に同構造物の寸法の平均値、分散,標準偏差,相関距離等の統計量を正確に抽出することが可能となる。また、同寸法解析プログラムを搭載した本発明の寸法計測装置を用いれば、構造物の撮影から寸法の諸統計量の抽出までを一貫して迅速かつ正確に把握することが可能となる。さらに、同寸法計測装置を工程管理に用いることを特徴とする本発明の製造方法を用いれば、半導体装置を構成する微細構造物の寸法精度が向上するので、半導体装置の製造歩留まりと品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】要素配線を結合した仮想的長配線のLWRのスペクトルを示す図。
【図2】複数の試料間で平均を行ったスペクトルにおけるジャギーの大きさを示す図。
【図3】要素配線を5個結合した仮想的長配線のLWRのスペクトルにおけるジャギーの大きさを示す図。
【図4】要素配線を20個結合した仮想的長配線のLWRのスペクトルにおけるジャギーの大きさを示す図。
【図5】要素配線の重複を許容して行った平均操作の効果を示す図。
【図6】相関距離の長いLWRのスペクトルを示す図。
【図7】最小波数に対するスペクトルの値を示す図。
【図8】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第1の画面を示す図。
【図9】特定の波数に対するスペクトルの値を示す図。
【図10】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第2の画面を示す図。
【図11】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第3の画面を示す図。
【図12】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第4の画面を示す図。
【図13】本発明の第1の実施例により表示装置上に表示された第5の画面を示す図。
【図14】本発明の第2の実施例により表示装置上に表示された画面の一例を示す図。
【図15】本発明の第3の実施例により表示装置上に表示された第1の画面を示す図。
【図16】本発明の第3の実施例により表示装置上に表示された第2の画面を示す図。
【図17】測定領域の長さが異なる要素配線を結合した仮想的長配線のスペクトルを示す図。
【図18】本発明の第4の実施例を示す図。
【図19】本発明の第5の実施例を示す図。
【図20】本発明の第6の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施例
図8は、本発明の寸法解析プログラムが稼働している最中に表示装置(モニタ)上に表示される画面の一例を示す。この例においては、「LWR−PR1−0002」に始まり「LWR−PR1−0904」に終わる偶数番号を名前の一部に有する452個の電子ファイル(以下、単にファイルと称す)が「/root/mnt/cd−meas/pr1」にて指定される電子フォルダ(以下、単にフォルダと称す)に格納されている。ファイル名はボックス1、および4ないし6に表示された内容により指定される。これらボックスに入力された内容からファイル名が指定される方法は自明であろう。また、フォルダ名はボックス3に入力された内容により指定される。ボックス3は、フォルダ名を入力する際の便を図るためのプルダウンメニューである。上記した各々のファイルにはホトレジストからなる細線をCD−SEMを用いて撮影し、その寸法(配線幅)を日立ハイテクノロジーズ社から販売されているターミナル・ピーシー(Terminal−PC)と呼ぶ画像処理ソフトウェアを用いて10nmの間隔で200回測定した結果が記録されている。これら測定条件は、それぞれボックス7と8に入力する。なお、これらボックス7と8の内容は測定条件を記録したファイルから自動的に読み取ることも可能である。
【0022】
「Spectra」と記されたボタン23をクリックすると、上記したファイルから逐次データが読み込まれ解析が行われる。解析した結果の内、寸法の平均値はボックス11に、スペクトルはグラフ21(白丸)にそれぞれ表示される。なお、白丸で示したスペクトルは以下のようにして求める。まず、上記したファイルに記録されたデータを幅として有する要素配線をボックス9に入力された数だけ無作為に抽出した上で結合し仮想的長配線を形成しスペクトルを求める。その際、抽出した要素配線を結合する順序も無作為である。このようにして仮想的長配線のスペクトルをボックス10に入力された数だけ求めこれらを平均したものが白丸で示したスペクトルである。また、同グラフ21にはボックス12(LWRの第1成分における寸法の分散)と13(第1成分における寸法変動の相関距離)に入力された内容を用いて(1)式ないし(3)式により計算した第1成分のスペクトルIAS,τ,1st、ボックス14(LWRの第2成分における寸法の分散)と15(第2成分における寸法変動の相関距離)に入力された内容を用いて(1)式ないし(3)式により計算した第2成分のスペクトルIAS,τ,2ndおよび画像雑音に起因したスペクトルInoiseに相当する一定値(ボックス17の内容)を合算した結果(実線)も表示されている。ここで雑音に起因した成分として波数によらない一定値を加算したのは、雑音が一般的に白く(波数に依存せず一定である)かつ確率変数として独立しているためである。ボックス18には同雑音に起因した寸法の分散varnoiseが表示されている。上記Inoiseとvarnoiseとの間には次式に示す関係がある。
【0023】
【数5】
ラジオボタン19と20が選択されているので、画像雑音がないとして計算した結果(破線)および無限の大きさを有する領域を連続的に測定した場合に想定される結果(一点鎖線)もグラフ21には表示されている。なお、ボタン群22を適宜クリックすることによりグラフ21の座標軸の範囲を変更することが可能である。ボックス12ないし15、および17の内容の内の少なくとも一つが変更されるとこれら値を用いて再度計算が行われ、結果が即座に更新されるようになっている。これにより、上記ボックス12ないし15および17の内容を様々に変化させながら計算結果(実線)が実測結果(白丸)と一致する値を探索することにより、画像雑音の影響を受けることなく寸法変動をもたらす第1成分と第2成分の分散と相関距離を高精度に決定することができる。このようにして最適化された実線の結果は白丸の結果と良く一致しており、ホトレジスト細線の寸法変動がいずれも指数関数型の自己相関関数を有する二つの成分によりもたらされていることおよび本発明の(1)式がスペクトル解析に有効であることが確認できる。
【0024】
「Fit」と記されたボタン24をクリックすると、ボックス12ないし15および17に入力する内容を試行錯誤により最適化する上記作業を自動で行うことができる。この場合においても、自動により決定された内容を再度上記した手動的方法により修正することができるのは言うまでもない。自動による最適化作業は以下のようにして行われる。
(a)LWRの第1成分(相関距離の短い方の成分)が支配的である波数領域(ここでは、0.01cm-1ないし0.314cm-1)において、第2成分の存在を無視して(1)式ないし(3)式を用いて計算したスペクトルが実測結果と一致するように、第1成分の相関距離ξ1およびスペクトルの雑音成分Inoiseを決定する。波数領域の上限はエイリアシング効果による対称軸の座標nNk0/2に等しい。なお、後述するシステム変動の影響を除外するために、kmn=mnk0(m=0,1,…,N−1)である波数に対しては計算結果と実測結果との比較を行わない。ここでは同時に第1成分の分散varinit,1stも求めるが、これは下記(b)以降に述べる一連の計算における初期値となる。
(b)ξ1を(2)式に代入し、第1成分のスペクトルIτ,1stを規格化した
を(1)式により計算する。ここで、var(w1)は第1成分の分散であるが、
を求める上でその値は必要ない。
(c)第1成分のスペクトルを次式により計算する。
(d)第2成分の相関距離ζ2の値を適当に仮定し、第2成分のスペクトルIτ,2ndを規格化した
を(b)と同様にして計算する。ここでvar(w2)は第2成分の分散であるが、
を計算する上でその値が必要でないのは
の場合と同じである。
(e)第2成分の分散の暫定値varτ,2ndを次式により計算する。
ここで、Imeas,τは実測結果から求めたスペクトルである。
(f)τ<nである波数kτに対して、これら暫定値varτ,2ndの平均varAV,2ndを計算する。(g)第2成分のスペクトルを次式により計算する。
(h)和Iτ,ALL≡Iτ,1st+Iτ,2nd+Inoiseを求める。
(i)所定の波数領域においてIτ,ALLとImeas,τとが最も良く一致するように、(d)ないし(h)を反復しξ2を最適化する。その値をξtempor,2とする。ここでも(a)と同様、kmn=mnk0(m=0,1,…,N−1)である波数に対しては両者の比較を行わない。
(j)第1成分の分散の暫定値vartempor,1stを次式により計算する。
(k)第1成分のスペクトルを次式により計算する。
(l)上記(e)ないし(g)によりIτ,2ndを再度計算する。
(m)第1成分の分散の暫定値が変化しなくなるまで(j)ないし(l)を反復する。
(n)第1成分の分散の暫定値が変化しなくなるまで(d)から(m)を反復する。
(o)上記(n)によりvartempor,1stとξtempor,2が一定となるのみならず、varAV,2ndも一定となる。これら一定値がそれぞれボックス12,15および14に表示される。また、第1成分の相関距離とスペクトルの雑音成分は上記(a)により決定された値がそれぞれボックス13と17に表示される。
【0025】
なお、上記した反復計算においては第1成分の分散の初期値に(a)で求めた値を用いているので、上記(n)により最終的に決定した第1成分の分散の値は初期値にほぼ等しい。このため多くの場合において、(n)における反復を多くとも2回行えば十分な精度を得ることができる。また、(n)を省略したとしても実用上問題ないことも多い。
【0026】
グラフ21に示した実測結果のスペクトル(白丸)の値の多くが上記した計算結果(実線)と良く一致する一方で、波数kmn=mnk0(m=0,1,…,N−1)における実測結果の値が計算結果から大きく乖離している。その原因について本発明者等が検討した結果を以下に述べる。仮想的長配線を構成する要素配線の配線幅をws,α(s=0,1,…,N−1)とする。ここで、sは要素配線内における測定位置を示し、αは要素配線を識別する番号である。sを固定してws,αを要素配線間で無限回平均した値をWs、そのスペクトルをISYS,m(m=0,1,…,N−1)とすると、上記した波数kmnに対するスペクトルの値は(1)式ないし(3)式から計算される値IAS,mnにnISYS,mが上乗せされてIAS,mn+nISYS,mとなることを見出した。なお、Wsはws,αと異なり確率変数でないので、以下においては同変数をシステム変数,同変数が表す配線幅の変動をシステム変動とそれぞれ呼ぶことにする。上記結果によると、システム変動によりスペクトルに上乗せされる量はnに比例する。これを検証するために、mを固定して実測結果から求めたスペクトルの値をnの関数として図9に示す。同図には、m=1,2,7,8の場合の結果が示してある。上記した理論的解析結果から予期される通り、波数kmnに対するスペクトルの値がnの一次関数であることが確認できる。なお、同一次関数におけるnの係数はISYS,mに等しい。
【0027】
上記した図8において「System」と記されたボタン25をクリックすると図10に示すように上記システム変数を解析する画面になる。同画面におけるグラフ28の白丸は、システム変数の値を近似的に求めるために、実測したws,αをsを固定して平均した結果を示す。実線は、上記白丸で示した結果をボックス30に入力された数を次数とする多項式により近似した結果である。また、グラフ29の白丸は実測結果から次式
【0028】
【数6】
により求めたシステム変動のスペクトルISYS-MEAS,mであり、実線は上記多項式近似の結果のスペクトルである。ボックス30に入力した値を変更すると、直ちに新しい値の下で多項式近似を再度実行しその結果をグラフ28および29に表示するようになっている。グラフ29の白丸と実線とがほぼ一致するところから、図8のグラフ21において波数kmn=mnk0に対するスペクトルの値が実測結果と計算結果とで大きく異なっている原因がシステム変動にあることが分る。なお、図10のボタン31をクリックすると図8の画面にもどる。
【0029】
図8のボックス16には上記システム変動による分散が表示されているが、その値は以下のようにして計算される。要素配線を結合することにより形成した仮想的長配線内における配線幅の平均値を(w)α、分散をvar(w)αとして次式
【0030】
【数7】
により配線幅の分散var(w)measを求める。ここでvar((w)α)ASと(var(w)α)ASは、スペクトルを求めるためにボックス10に入力された数だけ形成した一連の仮想的長配線を標本とする母集団における(w)αの分散およびvar(w)αの平均値である。上記var(w)measからボックス12,14および18に表示された値を引き算したものがボックス16に表示してある。他方、システム変動のスペクトルを上記(6)式を用いて計算し、次式
【0031】
【数8】
により求めた分散は0.15nm2となり、ボックス16に表示された値と一致する。なお、(8)式におけるk0は(2)式により計算される。さらに、多項式近似の結果から求めた分散も0.17nm2となり上記値とほぼ一致する。
【0032】
図11は、上記図8のボタン26をクリックした場合に表示される画面の一例である。グラフ32および33における3種類の直線は、ボックス12ないし15に表示された値を統計量とするLWRを有する要素配線を結合した仮想的長配線内における配線幅の平均値(w)αを無限個集めた母集団における標準偏差σ((w)α)を次式
【0033】
【数9】
により計算した結果を仮想的長配線の長さnLおよび結合した要素配線の数nの関数としてそれぞれ示したものである。ここで、IAS,0,1stとIAS,0,2ndは仮想的長配線のLWRのスペクトルを構成する二つの成分のτ=0における値を図8のグラフ21における実線と同様にして計算した結果である。なお、k0は(3)式により計算されるので
【0034】
【数10】
である。上記3種の直線においては要素配線の長さLが異なり、それぞれ50nm,200nm,2000nmである。これらLの値は、ボックス34により指定される。また、グラフ32における曲線(一点鎖線)は、長さがnLである単一の要素配線における結果を同様にして計算した結果を示す。このようにして求めたσ((w)α)は、1本の仮想的長配線において求めた(w)αが真の値(w)にどれほど近いかを示す指標となる。すなわち、モンテカルロ法を用いた計算によると(w)αは正規確率分布をしており、この場合、(w)は99.7%の確率で(w)α−3σ((w)α)ないし(w)α+3σ((w)α)の範囲に、95%の確率で(w)α−2σ((w)α)ないし(w)α+2σ((w)α)の範囲に、68%の確率で(w)α−σ((w)α)ないし(w)α+σ((w)α)の範囲に存在することになる。上記グラフ32によると、仮想的長配線の長さをそろえた比較においては、要素配線の短い方がσ((w)α)が小さく(w)αが(w)に近いことが分る。他方グラフ33によると、nをそろえた比較においては要素配線の長い方がσ((w)α)の小さいことが分る。したがって、これらグラフを参照することにより実際の状況に応じて配線幅の平均値を高精度に測定するための条件を適切に設定することが可能となる。
【0035】
上記グラフ33を用いれば、素子寸法に関する複数の測定結果を平均した値を用いて半導体装置の生産工程の管理を行っている場合に同平均値の精度を推定することも可能である。すなわち、生産工程管理においても通常、所定のパターンの幅uを所定の間隔で複数回測定した結果を平均した値Uを寸法の1測定結果としている。これら測定結果をnAV個平均した値Vは、上記パターンを要素配線としてnAV個結合した仮想的長配線の幅の平均値に等しい。したがって、uの測定条件がボックス7と8の内容と同じであり、かつuの変動を特徴付ける統計量がボックス12ないし15に表示された値に等しい場合においては、Vに生ずるバラツキの標準偏差σ(V)をグラフ33からn=nAVとして読みとることができる。また(10)式によれば、Uのバラツキの標準偏差をσ(U)として次式
【0036】
【数11】
によりσ(V)を求めることもできる。これにより、測定したVの精度を上記した(w)αの場合と同様にして把握することができる。なお、Vの分散を求めるには(11)式の両辺を平方すればよい。
【0037】
図12は、上記図11のボタン35をクリックした際に表示される画面の一例である。同画面においてグラフ36は、MISトランジスタのチャネル長がボックス12ないし15に表示された値を統計量とするLWRを有するとして、同チャネル長の素子内における平均値Lgを無数に集めた母集団における分散σ(Lg)をチャネル幅Wgの関数として次式
【0038】
【数12】
【0039】
【数13】
により計算し、ボックス37に表示された係数cを用いてcσ(Lg)と−cσ(Lg)を実線により表示したものである。ここで、var(w1)とvar(w2)は、LWRの第1成分の分散と第2成分の分散であり、その値がボックス12と14にそれぞれ表示されている。図12に示された例においてはc=3であり、この場合MISトランジスタの99.7%においてLgの平均値からの偏差ΔLgがグラフ36に示された二つの実線の間に分布する。なお、同グラフにおける破線は第1のLWR成分のみを考慮した場合の結果である。実線と破線を比較すると、100nm以上のWgを有するMISトランジスタのLgの分布に対して第2のLWR成分が少なからず影響して値が大きくなっており、この点を回路設計上考慮する必要のあることが分る。なお、上記(12)式および(13)式は長さWgの配線を無限小の間隔で測定する場合の結果である。この結果は、(1)式および(9)式においてLをWgで置き換え、Wg=NΔyを一定に保ちながらN→∞,Δy→0とした極限として得られる。
【0040】
図13は、図8において「Analysis」と表示されたボタン27をクリックした場合に表示される画面の一例である。要素配線の結合数を様々に変化させて図8と同様にして仮想的長配線のスペクトルを求めた上でフィッティングにより決定した第1成分の分散(黒丸)と第2成分の分散(黒三角)がグラフ39に、第2成分の相関距離がグラフ40にそれぞれ表示されている。解析を行う結合数nは、ボックス41に表示された名前を有するファイルに記載されている。これらグラフによれば、本実施例の試料においてはnが10以上になるとフィッティングにより決定した分散と相関距離の値がnによらずほぼ一定となる。したがって、上記試料と同一条件で作成される試料のLWRを評価するにはnを10以上とすれば良いことが分る。この結果は上記図7の結果と整合性のあるものとなっている。
【0041】
以上に述べたように、本発明の寸法解析プログラムを用いれば配線幅の分散のみならず相関距離をも正確に求めることができる。特に、相関距離が測定領域よりも長い場合においても正確な解析が可能であるので、半導体装置を生産する様々な現場に対応することができるとともに、半導体装置を構成する様々な素子の寸法バラツキを高精度に推定することができる。さらにまた、画像雑音に起因した成分の分散をも定量的に求めることができるので、画像を撮影する条件およびターミナル・ピーシー等を用いて寸法測定を行う条件の善し悪しの判定を行うことができるという利点もある。
【0042】
なお、本実施例は図8ないし図13に示すように様々な機能を有しているが、必要に応じてその一部のみを搭載した場合においても本発明の目的の少なくとも一部を達成することができるのはいうまでもない。
【0043】
第2の実施例
図14は、本発明による別の寸法解析プログラムが稼働している最中にモニタ上に表示される画面の一例である。本プログラムにおいては、上記した実施例1のプログラムと異なりCD−SEMを用いて細線を撮影した画像から寸法を直接解析することが可能である。ここでは、「PR1−0002」に始まり「PR1−0904」に終わる偶数番号を名前の一部に有する452個の電子ファイルが「/root/mnt/cd−image/pr1」にて指定される電子フォルダに格納されている場合の例を示してある。これらは、上記実施例1に示した配線幅を測定する元となった画像である。ファイル名はボックス51、および4ないし6に入力された内容により指定される。これらボックスに入力された内容からファイル名が指定される方法は実施例1の場合と同様に自明であろう。また、上記フォルダ名がボックス53に入力された内容により指定されること、およびボックス52がフォルダ名を入力する際の便を図るためのプルダウンメニューであることも実施例1の場合と同様である。本プログラムは、上記したターミナル・ピーシーが有するのと類似した機能により上記画像から寸法を読み取る。このための条件を記載したファイルとこれを格納するフォルダがボックス54と56により指定される。プルダウンメニュー55はボックッス56への入力を補助するためにある。なお、ボックス7と8には上記ボックス54で指定したファイルに記載された内容のうちの該当部分が自動的に入力される。
【0044】
読み取った寸法は、ボックス1で指定される文字列を頭とし対応する画像ファイルと同じ番号を有する名前のファイルに記録され、ボックス3で指定されるフォルダに保存される。本実施例において寸法を記録したファイルの名前は、「LWR−PR1−0002」ないし「LWR−PR1−0904」となる。これらファイルを実施例1と同様にして解析した結果がグラフ21に表示されている。このように本寸法解析プログラムを用いれば、細線の画像からスペクトルを求めるまでを一貫で行い、寸法の分散および相関距離を正確に求めることができる。
【0045】
第3の実施例
図15は、本発明による第三の寸法解析プログラムが稼働している最中にモニタ上に表示される画面の一例である。本プログラムにおいては、上記した第1の実施例のプログラムと異なり要素配線を結合せずに求めたスペクトルを元に相関距離の小さい方の成分の解析を行う。相関距離の大きい方の成分は第1の実施例と同様にして解析する。すなわち、プルダウンメニュー43において「ξ1」を選択した上でボタン23をクリックすると第1の実施例と同様にして、ボックス1、および4ないし6に表示された内容により指定されるファイルから逐次データが読み込まれる。これら全てのデータの平均値がボックス11に表示される。ついで、各々のデータを元にボックス7と8に表示された値を用いてスペクトルを求め、波数毎にこれらの平均値を求めた結果がグラフ42の白丸として表示される。波数毎に行われる同平均操作の数は上記ファイルの数(ここでは452個)に等しい。なお、上記ファイルに記録されているデータは、第1の実施例と同一の条件により作成された試料をCD−SEMにより撮影した画像を用いて間隔を変えて測定したものであり、測定数も異なる。ボックス12,13および17に表示された値を用いて(1)式および(2)式により計算した結果が実線により表示されている。ボタン24をクリックすると、(1)式および(2)式を用いて計算した結果と上記実測結果とが一致するように、ボックス12,13および17の内容を最適化する作業が自動的に行われる。
【0046】
ついで、プルダウンメニュー43において「All ξ」を選択すると図16が表示される。ボタン23をクリックすると、第1の実施例と同様にして要素配線を結合した仮想的長配線のスペクトルがグラフ44に白丸として表示される。(1)式ないし(3)式により計算した結果が実線により表示される点も第1の実施例と同じである。さらに、ボタン24をクリックすると、第1の実施例における(b)ないし(o)によりボックス12,14および15の内容が自動的に最適化される。なお、(a)において決定する必要のある値には、上記図15において決定した値が用いられる。
【0047】
上記図15および図16の少なくとも一方においてボックスの内容を最適化する作業を手動により行ってもよいことは言うまでもない。
【0048】
本実施例においては要素配線を測定する領域の長さが500nmであるので、縦方向と横方向とで倍率を変えて撮像するという特別な機能を有したCD−SEMを必要としない。このため、半導体装置の生産現場の多くにおいて実施することができる。
【0049】
さらに、本実施例において要素配線を結合せずに第1成分を解析することの利点を以下に説明する。図17は、測定間隔を本実施例と同じ5nmに維持したまま要素配線の測定領域の長さLを変えて(1)式ないし(3)式により仮想的長配線のLWRスペクトルを計算した結果を示す。相関距離は3000nmとした。同図から明らかなように、Lが減少するとスペクトルの値が局所的にではあるが増大する。これら極大値がLの値を相関距離とするスペクトルの値にほぼ等しいことを本発明者等は確認している。これに対して、相関距離が小さければLが減少しても波数が同じである限りスペクトルの値はほとんど変化しない(図示せず)。このため、Lが小さい場合においては第1の実施例の(a)にいう波数の大きい領域においても第2成分の影響を無視することができず、第1成分の解析に支障が生ずる。他方、本実施例のように要素配線を結合せずにそのまま求めたスペクトルにおいては、Lが変化しても第1成分の値はもとより第2成分の値もほとんど変化しないので第1成分を高精度に解析することができる。ただし、この場合においてもLがあまりに小さいと図6に示した事例に類似した理由により解析の精度が劣化するので、L>2πξとするのが望ましい。
【0050】
第4の実施例
図18は、本発明による寸法計測装置の一例を示す概略図である。本寸法計測装置は通常のCD−SEMと同等の機能を有する走査型電子顕微鏡101、同顕微鏡により撮影した画像を記録したファイルを保存する記憶装置111および上記実施例2の寸法解析プログラムを用いて同記憶装置111に保存されたファイルを解析する計算機121とから構成される。これらは通信回線131と132により相互に電気的に接続されている。これにより、細線の画像を撮影しながら同時にあるいは画像撮影後短時間の内に寸法の平均値のみならずその分散および相関距離を求めることができる。さらに、計算機121により解析された結果は必要に応じて走査型電子顕微鏡101に内蔵されたモニタ102に表示され、測定現場で寸法の諸統計量を把握することが可能となっている。
【0051】
これらにより、測定結果を生産現場に対して迅速に反映させることが可能となる。また、例えば画像雑音が大きすぎて分散もしくは相関距離の精度を確保することが困難な場合に、走査型電子顕微鏡101の画像撮影条件を変更することにより平均値、分散もしくは相関長の精度を速やかに改善することができるという利点もある。
【0052】
なお、本寸法計測装置の3つの構成要素である走査型電子顕微鏡101,記憶装置111および計算機121の間は、必ずしも直接的に接続されている必要はなく、各々をローカル・エリア・ネットワーク(LAN)に接続することにより間接的に接続しても良い。また、LANにとどまらず広域ネットワーク(WAN)により相互に接続されていても本発明の目的を達成することができるのは言うまでもない。さらに、記憶装置111がなく、走査型電子顕微鏡101と計算機121が直接もしくはLANもしくはWANを介して接続されていても良い。この場合、走査型電子顕微鏡101もしくは計算機121に内蔵された記憶装置(図示せず)が記憶装置111の役割を果たすことになる。
【0053】
第5の実施例
図19は、本発明による寸法計測装置の第二の例を示す概略図である。本実施例は、上記第4の実施例における記憶装置111と計算機121を走査型電子顕微鏡101と一体化し、筐体151に内蔵させたものである。なお、本実施例と異なり記憶装置111と計算機121を外付けとしても本発明の目的を達成することができるのは言うまでもない。さらに、記憶装置111を装備せず、その機能を走査型電子顕微鏡101もしくは計算機121に内蔵された記憶装置により代用しても良い。さらにまた、計算機121をも排して上記実施例2の寸法解析プログラムを元々走査型電子顕微鏡101に内蔵されていた計算機に搭載しても良い。
【0054】
上記図において、CD−SEM機能による観察結果と寸法計測結果はモニタ154に表示される。また、寸法解析プログラムによる寸法の分散および相関距離等の解析結果はモニタ155に表示される。なお、156はCD−SEM機能および寸法解析プログラムを制御するためのキーボードであり、152と153は測定用ウェハを測定室内へ出し入れするための投入口である。
【0055】
本実施例によれば寸法の諸統計量の解析を測定現場でしかも迅速に行うことができるので、測定精度の維持・向上に向けた測定条件の管理・改善はもとより、測定結果を生産現場に対して反映させることをより速やかに実行することが可能となる。
【0056】
第6の実施例
図20は、本発明による半導体装置の製造方法の一例を示す概略図である。本実施例においては、上記第4の実施例における走査型電子顕微鏡101,記憶装置111および計算機121が通信回線141ないし143により、露光装置201,塗布現像ベーク装置211およびエッチング装置221が通信回線146ないし148によりそれぞれLAN161に接続されている。これら以外にも半導体製造装置がLAN161に接続されているが、ここでは図示しない。このようにLAN161に接続された製造装置の稼働状況を監視するとともにその動作を制御するために計算機122が通信回線145を介してLAN161に接続されている。また、同計算機122の動作を補助するために記憶装置112が通信回線144を介してLAN161に接続されている。本製造方法においては、加工対象となる薄膜が形成された半導体基板上に塗布現像ベーク装置211によりホトレジスト膜を塗布し、露光装置201により所定のマスクを用いて露光した後、再度塗布現像ベーク装置211により現像とベークを行い所望の形にホトレジストを成形する。ついで、走査型電子顕微鏡101を用いて同ホトレジストの形状を撮影した画像を電子ファイルとして記憶装置111に保存した上で、計算機121を用いて実施例7と同様にして寸法の平均値,分散および相関距離を求める。その結果を記憶装置112に保存し計算機122を用いて解析した上で、後続の半導体基板上に形成するホトレジストの寸法の諸統計量が所望の値となるよう、必要に応じて露光装置201もしくは塗布現像ベーク装置211もしくは両者に対して計算機122から処理条件変更の指示を出す。また、当該半導体基板上に形成した薄膜の加工後における寸法の諸統計量が所望の値となるよう、次工程の処理を行うエッチング装置221に対して必要に応じて処理条件変更の指示を予め出すこともある。その後、上記ホトレジストをマスクとしてエッチング装置221を用いて薄膜を加工する。ホトレジスト・マスクを除去した後、加工された薄膜の形状を再度走査型電子顕微鏡101を用いて撮影し上記と同様にして寸法の諸統計量を解析した上で、後続の半導体基板上における薄膜の加工後の寸法が所望の値となるように、必要に応じてエッチング装置221に対して処理条件変更の指示を出す。
【0057】
なお、寸法の平均値が所望の値となるようCD−SEMの測定結果を前工程および次工程に反映させることは従来より行われてきた。このように寸法の平均値のみを管理する場合においては、本発明の利点が少ない。他方、寸法の分散(あるいは標準偏差)を管理しようとする場合、従来法を用いるとCD−SEMで撮影された画像に含まれる雑音に起因した誤差が大きいので製造装置に対する処理条件の変更を適切に指示することが困難である。このため、CD−SEMによる測定結果を製造条件に反映させることにより、逆に管理範囲を外れる事例を増やしてしまうことがある。これに対して、本発明を用いれば画像雑音が存在しその強度が変化する場合においても分散を正確に求めることができるので、加工後における寸法の分散を高精度に管理・制御することができる。さらに、寸法変動の相関距離を管理することは、本発明を用いることにより実用上初めて可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1,3−18,30,34,37,41,51,53,54,56 ボックス
2,43,52,55 プルダウンメニュー
19,20 ラジオボタン
21,28,29,32,33,36,39,40,42,44 グラフ
22−27,31,35,38 ボタン
101 走査型電子顕微鏡
102,154,155 モニタ
111,112 記憶装置
121,122 計算機
131,132,141148 通信回線
151 筐体
152,153 搬出入口
156 キーボード
161 ローカル・エリア・ネットワーク
201 露光装置
211 塗布現像ベーク装置
221 エッチング装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の寸法を所定の方向に沿って複数回測定して得た1組の結果(以下、要素測定結果と称す)を複数個結合することにより上記方向に長い構造物の寸法の測定結果(以下、結合測定結果と称す)を仮想的に構築しそのスペクトル(以下、結合スペクトルと称す)を計算する。同結合スペクトルを複数個作成し平均することによりスペクトル(以下、平均結合スペクトルと称す)を作成する機能を有することを特徴とする寸法解析プログラム。
【請求項2】
同一の要素測定結果が複数の結合測定結果に含まれることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項3】
少なくとも一つの結合測定結果においてこれを構成する要素測定結果を組み合わせる順序がその少なくとも一部において実際の順序と異なっていることを特徴とする特許請求の範囲第1項もしくは第2項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項4】
少なくとも一つの結合測定結果においてこれを構成する要素測定結果が連結されていない複数の構造物を測定して得られたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項5】
少なくとも一つの結合測定結果においてこれを構成する要素測定結果の少なくとも一部が測定方向とは異なる方向に存在する構造物を測定して得られたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項6】
平均操作に用いる結合スペクトルの数が要素測定結果の数以上であることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第5項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項7】
構造物の寸法を測定した領域の長さをL,K0≡2π/Lとして、K0の整数倍である波数の少なくとも一部における値が要素測定結果のスペクトルに対する理論式の値と等しい理論式(以下、結合理論式と称す)を用いてK0の整数倍とならない波数に対する値の少なくとも一部を計算する機能を有する寸法解析プログラム。
【請求項8】
特許請求の範囲第1項ないし第6項のいずれかに記載の方法により求めた平均結合スペクトルと特許請求の範囲第7項に記載の結合理論式を用いて計算した結果とを比較することにより寸法変動を特徴付ける一組の定数の値(以下、寸法変動定数と称す)の内の少なくとも一つもしくは雑音に起因した成分を特徴付ける一組の定数の値(以下、雑音定数と称す)の内の少なくとも一つを決定する機能を有することを特徴とする寸法解析プログラム。
【請求項9】
平均結合スペクトルと結合理論式を用いて計算した結果との比較を波数領域を変えて行うことにより、複数の寸法変動定数においてこれを構成する少なくとも一つの値をそれぞれ決定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第8項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項10】
寸法を測定する間隔をy0としてスペクトルの検討を行う波数の領域をこれと等価になるように0ないしkmax≡π/y0の範囲に設定し直した場合において、相関距離が小さい方の寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う波数領域の最小値が、相関距離が大きい方の寸法変動定数の内の少なくとも一つにおいてこれを構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う波数領域の最小値より大きいことを特徴とする特許請求の範囲第9項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項11】
相関距離が最大ではない寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う際に雑音定数を構成する少なくとも一つの値を決定し、決定したこれら値の内の少なくとも一つを用いて他の寸法変動定数の内の少なくとも一つにおいてこれを構成する少なくとも一つの値を決定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第9項もしくは第10項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項12】
相関距離が最大ではない寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う際に平均結合スペクトルに代えて要素測定結果を結合せずに求めたスペクトルを用いることを特徴とする特許請求の範囲第9項ないし第11項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項13】
要素測定結果を測定点ごとに平均して得た結果を元に寸法の非確率的変動に関する解析を行う機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第12項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項14】
k0の整数倍である波数の内の少なくとも一部に対する平均スペクトルの値を元に寸法の非確率的変動に関する解析を行う機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第13項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項15】
k0の整数倍である波数の少なくとも一部を除外した残りの波数の少なくとも一部に対する平均スペクトルの値を元に寸法の分布に関する解析を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第14項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項16】
平均スペクトルと結合理論式を用いて計算した結果とを比較することにより決定した寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を用いて素子寸法の分布を推定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第15項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項17】
要素測定結果内における平均値(以下、要素平均値と称す)をnA個用いて平均したものを平均要素平均値として平均要素平均値の標準偏差もしくは分散を、要素平均値の標準偏差をnAの平方根で除した値もしくは要素平均値の分散をnAで除した値をそれぞれ用いて推定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第16項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項18】
特許請求の範囲第1項ないし第6項記載の方法の内の少なくともいずれかの方法を用いて求めた平均スペクトルを表示する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第17項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項19】
特許請求の範囲第7項記載の結合理論式を用いて計算した結果を表示する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第18項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項20】
特許請求の範囲第15項記載の推定結果を表示する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第19項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項21】
特許請求の範囲第1項ないし第20項に記載の機能の内の少なくともいずれかの機能を有する寸法計測装置。
【請求項22】
本体と通信回線により接続されてはいるが空間的に離れた場所に設置された装置を用いて特許請求の範囲第1項ないし第20項に記載の機能の内の少なくともいずれかの機能を実現することを特徴とする寸法計測装置。
【請求項23】
特許請求の範囲第1項ないし第20項記載の機能の内の少なくともいずれかの機能を用いて寸法変動定数の内の少なくとも一つの値を決定し、その結果を製造条件に反映させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
構造物の寸法を所定の方向に沿って複数回測定して得た1組の結果(以下、要素測定結果と称す)を複数個結合することにより上記方向に長い構造物の寸法の測定結果(以下、結合測定結果と称す)を仮想的に構築しそのスペクトル(以下、結合スペクトルと称す)を計算する。同結合スペクトルを複数個作成し平均することによりスペクトル(以下、平均結合スペクトルと称す)を作成する機能を有することを特徴とする寸法解析プログラム。
【請求項2】
同一の要素測定結果が複数の結合測定結果に含まれることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項3】
少なくとも一つの結合測定結果においてこれを構成する要素測定結果を組み合わせる順序がその少なくとも一部において実際の順序と異なっていることを特徴とする特許請求の範囲第1項もしくは第2項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項4】
少なくとも一つの結合測定結果においてこれを構成する要素測定結果が連結されていない複数の構造物を測定して得られたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項5】
少なくとも一つの結合測定結果においてこれを構成する要素測定結果の少なくとも一部が測定方向とは異なる方向に存在する構造物を測定して得られたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項6】
平均操作に用いる結合スペクトルの数が要素測定結果の数以上であることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第5項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項7】
構造物の寸法を測定した領域の長さをL,K0≡2π/Lとして、K0の整数倍である波数の少なくとも一部における値が要素測定結果のスペクトルに対する理論式の値と等しい理論式(以下、結合理論式と称す)を用いてK0の整数倍とならない波数に対する値の少なくとも一部を計算する機能を有する寸法解析プログラム。
【請求項8】
特許請求の範囲第1項ないし第6項のいずれかに記載の方法により求めた平均結合スペクトルと特許請求の範囲第7項に記載の結合理論式を用いて計算した結果とを比較することにより寸法変動を特徴付ける一組の定数の値(以下、寸法変動定数と称す)の内の少なくとも一つもしくは雑音に起因した成分を特徴付ける一組の定数の値(以下、雑音定数と称す)の内の少なくとも一つを決定する機能を有することを特徴とする寸法解析プログラム。
【請求項9】
平均結合スペクトルと結合理論式を用いて計算した結果との比較を波数領域を変えて行うことにより、複数の寸法変動定数においてこれを構成する少なくとも一つの値をそれぞれ決定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第8項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項10】
寸法を測定する間隔をy0としてスペクトルの検討を行う波数の領域をこれと等価になるように0ないしkmax≡π/y0の範囲に設定し直した場合において、相関距離が小さい方の寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う波数領域の最小値が、相関距離が大きい方の寸法変動定数の内の少なくとも一つにおいてこれを構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う波数領域の最小値より大きいことを特徴とする特許請求の範囲第9項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項11】
相関距離が最大ではない寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う際に雑音定数を構成する少なくとも一つの値を決定し、決定したこれら値の内の少なくとも一つを用いて他の寸法変動定数の内の少なくとも一つにおいてこれを構成する少なくとも一つの値を決定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第9項もしくは第10項に記載の寸法解析プログラム。
【請求項12】
相関距離が最大ではない寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を決定するために比較を行う際に平均結合スペクトルに代えて要素測定結果を結合せずに求めたスペクトルを用いることを特徴とする特許請求の範囲第9項ないし第11項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項13】
要素測定結果を測定点ごとに平均して得た結果を元に寸法の非確率的変動に関する解析を行う機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第12項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項14】
k0の整数倍である波数の内の少なくとも一部に対する平均スペクトルの値を元に寸法の非確率的変動に関する解析を行う機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第13項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項15】
k0の整数倍である波数の少なくとも一部を除外した残りの波数の少なくとも一部に対する平均スペクトルの値を元に寸法の分布に関する解析を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第14項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項16】
平均スペクトルと結合理論式を用いて計算した結果とを比較することにより決定した寸法変動定数を構成する少なくとも一つの値を用いて素子寸法の分布を推定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第15項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項17】
要素測定結果内における平均値(以下、要素平均値と称す)をnA個用いて平均したものを平均要素平均値として平均要素平均値の標準偏差もしくは分散を、要素平均値の標準偏差をnAの平方根で除した値もしくは要素平均値の分散をnAで除した値をそれぞれ用いて推定する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第16項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項18】
特許請求の範囲第1項ないし第6項記載の方法の内の少なくともいずれかの方法を用いて求めた平均スペクトルを表示する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第17項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項19】
特許請求の範囲第7項記載の結合理論式を用いて計算した結果を表示する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第18項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項20】
特許請求の範囲第15項記載の推定結果を表示する機能を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第19項のいずれかに記載の寸法解析プログラム。
【請求項21】
特許請求の範囲第1項ないし第20項に記載の機能の内の少なくともいずれかの機能を有する寸法計測装置。
【請求項22】
本体と通信回線により接続されてはいるが空間的に離れた場所に設置された装置を用いて特許請求の範囲第1項ないし第20項に記載の機能の内の少なくともいずれかの機能を実現することを特徴とする寸法計測装置。
【請求項23】
特許請求の範囲第1項ないし第20項記載の機能の内の少なくともいずれかの機能を用いて寸法変動定数の内の少なくとも一つの値を決定し、その結果を製造条件に反映させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−163991(P2011−163991A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28371(P2010−28371)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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