説明

対応するシクロヘキサンカルボキシアミド誘導体を経るシクロヘキサンカルボン酸誘導体の新規な製造方法

医薬活性化合物の製造において中間体として有用である、式(I)で示される化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬活性化合物の製造における中間体として有用なシクロヘキサンカルボン酸誘導体の製造方法に関する。
【0002】
第一の態様において、本発明は、式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、Rは、(C−C)アルキル、好ましくはペンタ−3−イルである)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体の製造方法であって、
a)式(II):
【0005】
【化2】

【0006】
で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体を、強酸の存在下のHOで、又は水性塩基で加水分解して、式(III):
【0007】
【化3】

【0008】
で示されるシクロヘキサンカルボン酸アミド誘導体を得て;
b)前記シクロヘキサンカルボン酸アミド誘導体を、ニトロシル化剤と反応させて、式(I)で示される化合物を得ること、
を含む方法を提供する。
【0009】
式(I)で示される化合物を、価値のある医薬化合物の合成における中間体として用いてもよい。例えば、1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸を、EP1,020,439に記載された化合物の合成において用いてもよい。
【0010】
したがって、別の実施態様において、本発明は、以下のスキーム1:
【0011】
【化4】

【0012】
(ここで、Xは、I、Br、Cl又はFであり、Rは、先に定義されたとおりであり、そしてRは、(C−C)アルキルである)で表される合成工程を含む方法を提供する。特にその方法は、式(I)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤(例えば、PX、PX、SOX又はNCX)と反応させて、式(V)で示されるハロゲン化アシルを得ることを含む。ハロゲン化工程は、好ましくはトリ−(C−C)アルキルアミンの存在下で実施する。更にその方法は、ハロゲン化アシルをビス(2−アミノフェニル)ジスルフィドと反応させてビス(2−アミノフェニル)ジスルフィドのアミノ基をアシル化し、アミノアシル化ジスルフィド生成物を還元剤(例えば、トリフェニルホスフィン、亜鉛又は水素化ホウ素ナトリウム)で還元してチオール生成物を得、そしてチオール生成物中のチオール基をRC(O)X’(ここで、X’は、I、Br、Cl又はFである)でアシル化することを含む。
【0013】
更なる工程は、例えば、Shinkai et al., J. Med. Chem. 43:3566-3572 (2000)又はWO2007/051714に記載された手順により、実施してもよい。
【0014】
好ましくは、ハロゲン化剤は、塩化チオニル、五塩化リン、三臭化リン、シアヌル酸フルオリド、塩化オキサリル及びクロロトリメチルプロペニルアミン(Cl-trimethylpropenylamine)から選択され、最も好ましくは塩化チオニルである。Xが、Clである、式(III)で示されるハロゲン化アシルが、最も好ましい。チオールアシル化工程において、好ましくは、アシル化剤は、X’が、Clである、RC(O)X’である。最も好ましくは、Rは、イソプロピルである。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、式(II):
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rは、先に定義されたとおりである)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体の製造方法であって、
式(IV):
【0018】
【化6】

【0019】
で示されるシクロヘキサンカルボニトリルを、第二級アミン及び(C−C)アルキルリチウム、(C−C)シクロアルキルリチウム又はフェニルリチウムの存在下で、アルキル化剤(例えば、1−ハロ−CH、好ましくは1−ハロ−2−エチルブタン、又はRCH−OHのスルホン酸エステル、好ましくは2−エチル−1−ブタノールのスルホン酸エステル)と反応させることを含む方法を提供する。
【0020】
好ましくは、(C−C)アルキルリチウム、(C−C)シクロアルキルリチウム又はフェニルリチウムを第二級アミンと、式(IV)で示されるシクロヘキサンカルボニトリルに添加し、続いてアルキル化剤を添加する。
【0021】
好ましくは、上述のカップリング反応に続いて、鉱酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、ホウ酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸又は硫酸、最も好ましくは塩酸)で、クエンチする。
【0022】
が、ペンタ−3−イルである、式(III)で示される化合物は、新規である。したがって、更なる実施態様において、本発明は、式(III’):
【0023】
【化7】

【0024】
で示される化合物を提供する。
【0025】
更に別の実施態様において、本発明は、式(I):
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Rは、先に定義されたとおりである)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体の製造方法であって、
a)式(II):
【0028】
【化9】

【0029】
で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体を、強酸の存在下のHOで、又は水性塩基で加水分解して、式(III):
【0030】
【化10】

【0031】
で示されるシクロヘキサンカルボン酸アミド誘導体を得て;
b)前記シクロヘキサンカルボン酸アミド誘導体(III)を、ニトロシル化剤と反応させて、式(I)で示される化合物を得て;
c)塩基性水溶液を添加することにより、溶液を塩基性pH、好ましくは9〜14のpH、より好ましくは11〜13.5のpH、最も好ましくは12.5〜13のpHに調整し、その後、相分離して有機相を廃棄し、新しい有機相を添加して、好ましくは鉱酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、ホウ酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸又は硫酸、最も好ましくは塩酸)を添加して溶液を酸性することにより、水相を1〜10のpHに、好ましくは3〜8のpHに、最も好ましくは6〜7のpHに調整し、それにより式(I)で示される化合物を有機相に抽出することにより、好ましくは有機溶媒から、式(I)で示される化合物を溶液抽出すること、を含む方法を提供する。
【0032】
好ましくは、化合物(II)の加水分解、a)及びb)の後に、二相性混合物を分離し、水溶液を逆に有機溶媒で抽出し、そして集めた反応混合物の有機相にHOを添加する。その後、本明細書で定義された塩基性水溶液を、好ましくは10分間かけて添加することにより、二相性溶液のpHを10〜14、好ましくは11〜13.5のpHに調整する。有機相を廃棄し、NaCl及び本明細書で定義された有機溶媒、より好ましくはトルエンの飽和溶液を水相に添加し、より好ましくは有機相を廃棄して、水及び有機溶媒を水相に添加する。この後、先に定義された鉱酸を添加することにより、混合物のpHを6〜7のpHに調整する。水相を廃棄して、有機相を濃縮する。
【0033】
更なる実施態様において、本発明は、式(II)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体の製造と、続く前記の加水分解工程、及び以下のスキーム2(ここで、R’は、先に定義されたとおりである)を含む、式(I)で示される化合物の製造方法を提供する。
【0034】
【化11】

【0035】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる以下の用語は、他に断りがなければ、以下に示す意味を有する。
【0036】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、好ましくはクロロ又はブロモを意味する。
【0037】
「アルカリ金属」又は「アルカリ」は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムを指す。好ましいアルカリ金属は、リチウム又はナトリウムである。これらのうち、ナトリウムが、最も好ましい。
【0038】
「(C−C)アルキル」は、炭素原子が1〜8個の分枝状又は直鎖状炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びヘプチルを指す。(C−C)アルキルが、好ましい。
【0039】
「(C−C)シクロアルキル」は、単環式飽和炭素環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを指す。
【0040】
「(C−C)アルキルリチウム」は、リチウム原子により置換された、先に定義された(C−C)アルキル、例えば、ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、sec−ブチルリチウムであると理解される。
【0041】
「第二級アミン」は、式HNR(式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、そして独立して、(C−C)アルキルもしくは(C−C)シクロアルキルから選択されるか、又はRとRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、OもしくはNから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、(C−C)ヘテロシクロアルカンを得る)で示されるアミンを指す。代表的な例としては、非限定的に、ピペリジン、4−メチル−ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルプロピルアミン及びメチルプロピルアミンが挙げられる。好ましくは、第二級アミンは、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルプロピルアミン、メチルプロピルアミン及びモルホリンから選択される。より好ましい第二級アミンは、ジエチルアミン又はジイソプロピルアミンであり、最も好ましくはジエチルアミンである。
【0042】
「(C−C)ヘテロシクロアルカン」は、1又は2個の環原子が、N又はOから選択されるヘテロ原子である、環原子4〜8個の飽和非芳香族環状化合物を指し、そしてそのヘテロシクロアルカンは、1個以上の(C−C)アルキル、好ましくは1個の(C−C)アルキルで場合により置換されていてもよい。
【0043】
「ニトロシル化剤」は、ニトロシル硫酸、亜硝酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む。最も好ましくは、ニトロシル化剤は、ニトロシル硫酸である。
【0044】
「RCH−OHのスルホン酸エステル」は、RCH−OHの、置換もしくは非置換フェニルスルホン酸、非置換ナフタレンスルホン酸又は(C−C)アルキルスルホン酸エステル誘導体(ここで、置換フェニル及び(C−C)アルキル鎖及びRは、本明細書で定義されたとおりである)を指す。代表的な例としては、非限定的に、ベンゼンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル、1−ナフタレンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル、2−ナフタレンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル、トルエン−4−スルホン酸2−エチル−ブチルエステル、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル、2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル、エタンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル、メタンスルホン酸2−エチル−ブチルエステル及びブタンスルホン酸2−エチル−ブチルエステルが挙げられる。
【0045】
「強酸」は、水溶液中で完全に解離していてpHが2以下の酸を指す。強酸としては、非限定的に、硫酸(HSO)、ハロゲン化水素酸(即ち、X''がI、Br、Cl又はFであるHX'')、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、強酸は、HSO又はハロゲン化水素酸(ここで、X''は、Br又はClである)である。最も好ましくは、強酸は、HSOである。好ましくは、水中のHSOの濃度は、75%〜90%、より好ましくは78%〜83%の範囲内、最も好ましくは82.5%である。「水性塩基」は、塩基及び水を含む溶液を指す。水に容易に溶解する数多くの塩基(例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)、Mg(OH)、好ましくはNaOH又はKOH)が、当該技術分野で公知である。より好ましくは、水性塩基は、12〜14のpHを有する。
【0046】
他に断りがなければ、本明細書で言及される有機溶媒は、エーテル類似溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル又はジブチルエーテル)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン又はペンタン)、飽和脂環式炭化水素溶媒(例えば、シクロヘキサン又はシクロペンタン)又は芳香族溶媒(例えば、トルエン又はt−ブチル−ベンゼン)を含む。非プロトン性有機溶媒(例えば、テトラヒドロフランのみ、又は例えば非極性溶媒ヘキサン、ヘプタン、及びt−ブチル−ベンゼンの群から選択される他の非プロトン性溶媒との混合物)は、アルキル化の際の好ましい溶媒である。最も好ましくは、非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0047】
好ましいリチウム剤は、(C−C)アルキルリチウムであり、そしてブチルリチウムが、最も好ましい。
【0048】
好ましいアルキル化剤は、1−ハロ−2−エチルブタン、最も好ましくは1−ブロモ−2−エチルブタンである。
【0049】
アルキル化は、好ましくは不活性ガス雰囲気下で、即ち、アルゴン又は窒素下で実施する。
【0050】
更なる実施態様において、本発明は、ニトロシル化剤をインシトゥ(in situ)で発生させる(例えば、HSOと亜硝酸(NHO)を混合する)、先に記載された方法を提供する。
【0051】
好ましくは、式(II)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体の加水分解剤は、強酸である。工程a)に関して最も好ましい強酸は、HSOである。加水分解工程は、式(II)で示される化合物を80℃〜120℃の温度のHSOに投入するか、又は式(II)で示される化合物及びHSOの両方を混合物として80℃〜120℃の温度に加熱する、のいずれかにより実施する。より好ましくは、両方の添加様式での温度は、95〜110℃、最も好ましくは105〜110℃である。好ましくは、式(II)で示される化合物に関してHSOを1.5〜4当量用いる。より好ましくは、1.9〜3.6当量用いる。最も好ましくは、2当量用いる。加水分解は、過剰のHO、好ましくは式(II)で示される化合物に関してHOを5〜25当量、より好ましくは10〜20当量用いて実施する。最も好ましくは、式(II)で示される化合物に関してHOを14〜16当量用いる。
【0052】
式(III)で示されるアミドの加水分解では、ニトロシル硫酸を、好ましくは1.1〜1.4当量、最も好ましくは1.2〜1.4当量用いる。ニトロシル硫酸を最初に添加して次にHOを添加するか、又はHOを最初に添加して次にニトロシル硫酸を添加する、のいずれかである。第二の添加様式が、好ましい。好ましくは、投入温度は、20〜65℃、最も好ましくは60〜65℃である。
【0053】
本発明によれば、抽出工程(c)の「塩基性水溶液」は、好ましくは無機塩基もしくは有機塩基、それらの混合物から、又は一般に公知で適切なpHの緩衝溶液から選択される。好ましい無機塩基は、アルカリ塩基、例えば、アルカリ炭酸塩、アルカリ重炭酸塩、アルカリホウ酸塩、アルカリリン酸塩、アルカリ水酸化物である。より好ましい「塩基性水溶液」は、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又はそれらの混合物の溶液から選択される。最も好ましい「塩基性水溶液」は、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又はそれらの混合物の溶液である。
【0054】
更なる実施態様において、本発明は、上述の方法及び条件のいずれかにより得られる式(II)で示される化合物の生成を含む、S−[2−([[1−(2−エチルブチル)−シクロヘキシル]−カルボニル]アミノ)フェニル]2−メチルプロパンチオアートの製造方法を提供する。
【0055】
本発明の方法は、半連続的又は連続的方法として、より好ましくは連続的方法として実施してもよい。特に、式(II)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体の製造方法は、半連続的又は連続的方法として実施してもよい。
【0056】
式(II)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体の製造方法を連続的に実施する場合、第二級アミンと(C−C)アルキルリチウム、(C−C)シクロアルキルリチウム又はフェニルリチウムとの溶液(S)(最も好ましくは、リチウムジイソプロピルアミド)、並びにシクロヘキサンカルボニトリルの溶液(S)を、好ましくは混合しながら、反応容器に連続して添加する。その後、脱プロトン化からの混合物及びアルキル化剤(最も好ましくは臭化2−エチルブチル)の溶液(S)を、好ましくは混合しながら、第二の反応容器に連続して添加する。好ましくは、反応混合物を、その後、HClで処理し、回収した有機相を水で洗浄し、減圧濃縮して、式(II)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体を得る。連続的方法では、好ましい反応容器は、混合チャンバ及び反応チャンバからなるマイクロリアクタである。
【0057】
好ましくは、溶液(S)及び溶液(S)の添加速度は、それぞれ1.2〜2.1mmol/分(最も好ましくは1.64mmol/分)及び0.8〜1.7mmol/分(最も好ましくは1.17mmol/分)である。好ましくは、溶液(S)と溶液(S)との接触時間は、60秒未満(より好ましくは30秒未満、最も好ましくは11秒未満)である。好ましくは、溶液Sの添加速度は、1.29mmol/分(範囲0.9〜1.7mmol/分)であり、そして好ましくは、接触時間は、20分未満であり、より好ましくは6分である。
【0058】
本明細書に明確に開示された合成経路を有さない出発原料及び試薬は、一般に商業的供給業者から入手することができるか、又は当業者に周知の方法を用いれば容易に製造される。例えば、式(IV)で示される化合物は、市販されるか、又は当業者に公知の手順により製造することができる。以下の実施例は、更なる例示の目的で提供されており、請求された発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
以下の略語及び定義を用いる:br(ブロード);BuLi(ブチルリチウム)、CDCl(重水素化クロロホルム);eq.(当量);g(グラム);GC(ガスクロマトグラフィー);h(時間);HCl(塩酸);HO(水);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);ISP(同位体スピン分布);KOH(水酸化カリウム);LDA(リチウムジイソプロピルアミド);M(モル濃度);m(多重線);MS(質量分析法);mL(ミリリットル);NaOH(水酸化ナトリウム);NMR(核磁気共鳴);RT(室温);s(一重線);t(三重線);THF(テトラヒドロフラン)。
【0060】
実施例1:1−(2−エチル−ブチル)−シクロへキサンカルボン酸
1.1 1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル
ジイソプロピルアミン26.25g(259.4mmol)を、無水THF24.0mlで希釈して、内部温度を−15.0℃に冷却した。ヘキサン中(2.5mol/l)のブチルリチウム73.02g(263.8mmol)を、内部温度が−2℃未満に保持される速度で添加した(投入時間 25分間)。投入が完了した後、溶液を−5℃に冷却した。シクロヘキシルカルボニトリル24.0g(219.8mmol)を、THF48.0mlに溶解して、2℃に冷却した。調製したLDA溶液(−5℃)を、内部温度が8.0℃未満に保持される速度で20分以内で添加した。ラインを、THF6.0mlですすいだ。混合物を3.0℃に冷却して、THF30.0mlに溶解した臭化2−エチルブチル38.1g(230.8mmol)で15分以内で処理し、放置して内部温度を26℃にした。ラインをTHF6.0mlですすいで、その黄色溶液を室温で撹拌した。水120mlを添加して、濃HCl 35.0mlを添加することにより、pH値を1に調整した。二相性混合物をヘキサンで三回抽出し(合計264ml)、回収されたヘキサン相を水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、53℃で減圧濃縮して、1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル43.75gを透明で黄色がかったわずかに油性の残渣として得た(HPLCアッセイ95.3面積%、103.0%収率、較正なし)。
【表1】

【0061】
1.2 1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸:
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル10.0g(51.7mmol)を、HSO(水中の82.5%溶液)21.8g(183.7mmol)中、100℃で4時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ニトロシル硫酸23.0g(72.4mmol)を投入した。反応混合物に、HO 25.0mlを1時間以内で添加し、放置して内部温度を40℃にした(冷却、発熱反応)。投入が完了した後、HO 25.0mlを更に添加した。ヘキサン30.0gを添加した後、相を分離して、水相をヘキサンで2回(合計80.0g)抽出した。回収した有機相をHO 24.0mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で有機相を蒸発させて、1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸10.12gをわずかに粘性の黄色がかった油状物として得て、それを種結晶を添加した後に結晶化させた(HPLCアッセイ95.2%m/m、収率88%)。
【表2】

【0062】
実施例2:1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸アミド
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル21.3g(110.2mmol)及びHSO(水中の82.5%溶液)46.5g(391.2mmol)を、混合して100℃に加熱し、100℃で3時間撹拌した。その時間の後、反応混合物を20℃に冷却し、水50.0mLで反応停止させて、28%NaOH 86.0mLを添加することによりpHを7〜8に調整した。塩化メチレン50mLを添加し、水相を分離した後、水相を塩化メチレン50.0mlで再度抽出した。有機相を集めて、真空濃縮した。残渣をn−ヘキサンで結晶化させた。1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸アミド16.5gを、HPLCアッセイで100%m/mとなった無色結晶として得た(収率70.8%)。
【表3】

【0063】
実施例3:1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル10.0g(51.7mmol)及びHSO(水中の75%溶液)20g(153mmol)を混合し、105℃に加熱して、105℃で10時間撹拌した。GC分析では、出発原料は残存しなかった。その時間の後、反応混合物を15℃に冷却した。亜硝酸ナトリウム4.28g(62.0mmol)を少しずつ添加して、かなりの量の気体が発生する活発な反応を引き起こした。亜硝酸ナトリウムを、合計5.34g(77.4mmol)になるまで更に添加した。水(20ml)及びトルエン(30ml)を反応混合物に添加して、透明な二相に分離させた。下相の水相をトルエン(15ml)で洗浄し、トルエン相を集めた。集めたトルエン相を、pH9に緩衝させた水性炭酸水素ナトリウム(15ml)で洗浄し、続いて更なる水性重炭酸ナトリウムで2回(各10ml)洗浄した。集めたトルエン相を真空濃縮して、GCアッセイで93%m/mとなった1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸(I)8.45gを得た(収率77%)。
【0064】
実施例4:1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸
105℃〜110℃に加熱したHSO(水中の82.5%溶液)23.8g(200mmol)の連続撹拌溶液に、1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル20.4g(100mmol)をアルゴン下で60分間かけて滴下した。その後、反応混合物を105℃〜110℃で更に2時間撹拌した。GC分析では、出発原料は残存しなかった(混合物中に残存する原料のニトリルが0.5%未満)。反応混合物が65℃に冷却されたら、ヘキサン100mlを添加した。その後、HO 26.5g(1.47mol)を5〜10分間かけて添加した。注入ポンプの補助により、激しく撹拌させ(800rpm)、60〜65℃で、二相反応混合物にニトロシル硫酸(硫酸中の40%)44.5g(140mmol)を60分間かけて添加した。反応混合物を60〜65℃で更に30分間撹拌した。反応混合物を放冷して、室温まで下降させた。水相を廃棄した。その後、有機相にHO 100.0mlを添加した。撹拌しながら、滴下漏斗の補助により、水酸化ナトリウム(水中の28%溶液)約38gを10分間かけて、20〜30℃で添加して、溶液のpHを12.5〜13に調整した。両方の相を、5分間で分離させた。有機相を廃棄して、NaCl飽和溶液24g(20ml)及びトルエン240mlを水相に添加した。撹拌しながら、滴下漏斗の補助により、HCl(水中の37%溶液)約26gで10分間かけてpHを6〜7に調整した。両方の相を、5分間で分離させた。有機相を減圧濃縮して、GCアッセイで98.1%m/mとなった1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸 20.6gを得た(収率95%)。
【0065】
実施例5:1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸
105℃〜110℃に加熱したHSO(水中の82.5%溶液)の23.8g(200mmol)の連続撹拌溶液に、1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル20.9g(100mmol)を、アルゴン下で60分間かけて滴下した。その後、反応混合物を105℃〜110℃で更に2時間撹拌した。GC分析では、出発原料は残存しなかった(混合物中に残存する原料のニトリルが0.5%未満)。反応混合物が65℃に冷却されたら、ヘプタン100mlを添加した。その後、HO 26.5g(1.47mol)を5〜10分間かけて添加した。注入ポンプの補助により、激しく撹拌させ(800rpm)、60〜65℃で、二相反応混合物にニトロシル硫酸(硫酸中の40%)47.7g(140mmol)を60分間かけて添加した。反応混合物を60〜65℃で更に30分間撹拌した。反応混合物を放冷して、室温まで下降させた。水相を廃棄した。その後、有機相にHO 100.0mlを添加した。撹拌しながら、滴下漏斗の補助により、20〜30℃で水酸化ナトリウム(水中の28%溶液)約17gを10分間かけて添加して、溶液のpHを12.5〜13に調整した。両方の相を、5分間で分離させた。有機相を廃棄して、トルエン240mlを水相に添加した。撹拌しながら、滴下漏斗の補助により、HCl(水中の37%溶液)約12gで10分間かけてpHを6〜7に調整した。両方の相を、5分間で分離させた。有機相を減圧濃縮して、GCアッセイで52.1%m/mとなった、トルエン中の1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸 37.0gを得た(収率90.7%)。
【0066】
実施例6:1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル
EHRFELDのマイクロリアクタ装置を、以下の実施例で用いた。
溶液の調製:
− THF中のリチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液111ml(200mmol)を、THF55mlで希釈した
− シクロヘキシルカルボニトリル15.4g(141mmol)を、溶媒混合物(33%THF、50%ヘプタン、17.4%エチルベンゼン)200mlに溶解した
− 臭化2−エチルブチル25.8g(156mmol)を、溶媒混合物(33%THF、50%ヘプタン、17.4%エチルベンゼン)200mlに溶解した
− マイクロリアクションのコンディショニング − 低流動性THF(small flux THF)を伴うシステム
反応:
上記LDA溶液を、1.36ml/分(1.64mmol/分)の流れで混合装置に投入した。1.8ml/分(1.17mmol/分)のシクロヘキシルカルボニトリルの第二の流れを、25℃の同じ混合装置に投入した。11秒の滞留時間の後、1.83ml/分(1.29mmol/分)の臭化エチルブチル流を、第二の混合装置内で、最初の混合装置からの流れと合流させた。加熱されたマイクロリアクタに流入するまでの滞留時間は、25℃で6秒であった。マイクロリアクタ内の滞留時間は、約360秒であった。リアクタの出口での流動温度は、58℃であった。反応混合物を冷却して、1N HCl(140mmol)70mlを含む容器に投入した。この混合物を30分間撹拌して、n−ヘプタンで抽出した。有機相を、最初、50℃、150ミリバールで蒸発させ、その後、80℃、15ミリバールで蒸発させた。1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキシルカルボニトリル31.4g(162mmol、アッセイ:78.7%、収率:91%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化12】


(式中、Rは、(C−C)アルキル、好ましくはペンタ−3−イルである)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体の製造方法であって、以下の工程:
a)式(II):
【化13】


で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体を、強酸、好ましくは硫酸もしくはハロゲン化水素酸の存在下のHOで、又は水性塩基、好ましくはNaOHもしくはKOHで加水分解して、式(III):
【化14】


で示されるシクロヘキサンカルボン酸アミド誘導体を得る工程;
b)前記シクロヘキサンカルボン酸アミド誘導体を、ニトロシル化剤と反応させて、式(I)で示される化合物を得る工程、
を含む方法。
【請求項2】
式(II):
【化15】


(式中、Rは、請求項1に定義されたとおりである)で示されるシクロヘキサンカルボニトリル誘導体の製造方法であって、
式(IV):
【化16】


で示されるシクロヘキサンカルボニトリルを、第二級アミン、好ましくはジイソプロピルアミン、及び(C−C)アルキルリチウム、(C−C)シクロアルキルリチウム又はフェニルリチウムの存在下で、アルキル化剤(例えば、1−ハロ−CH、又はRCH−OHのスルホン酸エステル)と反応させることを含む方法。
【請求項3】
式(IV):
【化17】


(式中、Rは、請求項1に定義されたとおりである)で示されるシクロヘキサンカルボニトリルを、第二級アミン及び(C−C)アルキルリチウム、(C−C)シクロアルキルリチウム又はフェニルリチウムの存在下で、アルキル化剤(例えば、1−ハロ−CH、又はRCH−OHのスルホン酸エステル)と反応させることによる、請求項2記載の式(II)で示される化合物の製造を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第二級アミンが、ジイソプロピルアミンである、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
(C−C)アルキルリチウムが、ブチルリチウムである、請求項2〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶液を塩基性pHに調整し、その後、鉱酸、好ましくはHClの添加により水相を1〜10のpHに調整することによる、式(I)で示される化合物の溶液抽出を更に含む、請求項1又は3〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
トリ−(C−C)アルキルアミンの存在下で、ハロゲン化剤を、請求項1記載の式(I)で示される化合物と反応させて、式(V):
【化18】


(式中、Xは、I、Br、Cl又はFである)で示される化合物を得る工程を更に含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
式(VI’):
【化19】


で示される化合物を、式(I)で示される化合物でアシル化して、式(VI):
【化20】


(式中、Rは、請求項1に定義されたとおりである)で示される化合物を得る工程を更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(VI)で示される化合物を、還元剤で還元して、式(VII):
【化21】


(式中、Rは、請求項1に定義されたとおりである)で示される化合物を得る工程を更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
式(VII)で示される化合物を、RC(O)X’(ここで、X’は、I、Br、Cl又はFである)でアシル化して、式(VIII):
【化22】


(式中、Rは、(C−C)アルキルであり、そしてRは、請求項1に定義されたとおりである)で示される化合物を得る工程を更に含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
アルキル化剤が、1−ブロモ−2−エチルブタンである、請求項2〜10のいずれか記載の方法。
【請求項12】
「ニトロシル化剤」が、インシトゥで発生する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
式(III’):
【化23】


で示される化合物。
【請求項14】
式(II):
【化24】


(式中、Rは、請求項1に定義されたとおりである)で示される化合物の生成を含む、S−[2−([[1−(2−エチルブチル)−シクロヘキシル]−カルボニル]アミノ)フェニル]2−メチルプロパンチオアートの製造方法であって、式(IV):
【化25】


で示されるシクロヘキサンカルボニトリルを、第二級アミン及び(C−C)アルキルリチウム、(C−C)シクロアルキルリチウム又はフェニルリチウムの存在下で、アルキル化剤(例えば、1−ハロ−CH、又はRCH−OHのスルホン酸エステル)と反応させることを含む方法。
【請求項15】
方法が、半連続的又は連続的であり、好ましくは連続的である、請求項1〜12又は14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
本明細書の先に記載された発明。

【公表番号】特表2011−516448(P2011−516448A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502348(P2011−502348)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053584
【国際公開番号】WO2009/121789
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】