対物レンズ、顕微鏡
【課題】短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供すること。
【解決手段】複数の光学素子L1〜L4をそれぞれ保持した略円筒状のレンズ保持枠21〜24と、前記レンズ保持枠を内蔵する鏡筒部材10とを有し、前記レンズ保持枠の少なくとも一つのレンズ保持枠22は、前記光学素子を保持する第1レンズ保持枠22aと、前記第1レンズ保持枠をネジで保持する第2レンズ保持枠22bとを有し、前記鏡筒部材は、径方向に沿って形成された少なくとも一つの長孔11、12を有することを特徴とする対物レンズ1。
【解決手段】複数の光学素子L1〜L4をそれぞれ保持した略円筒状のレンズ保持枠21〜24と、前記レンズ保持枠を内蔵する鏡筒部材10とを有し、前記レンズ保持枠の少なくとも一つのレンズ保持枠22は、前記光学素子を保持する第1レンズ保持枠22aと、前記第1レンズ保持枠をネジで保持する第2レンズ保持枠22bとを有し、前記鏡筒部材は、径方向に沿って形成された少なくとも一つの長孔11、12を有することを特徴とする対物レンズ1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズと、これを備える顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
対物レンズは、複数の光学素子(以後、本明細書中ではレンズという)と、これらレンズそれぞれを保持する複数のレンズ保持部材と、複数のレンズ保持部材を内部に収容する鏡筒とから構成されている。そして、対物レンズの光学性能のうちでアス(非点収差)は、上記レンズの面変形が大きな要因となっており、このアスを低減するために各レンズを光軸回りにそれぞれ回転することで低減することが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−64886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アスを低減するためには、複数のレンズの形状変形がお互いにアスを打ち消す方向になるように各レンズを回転させて調整する必要がある。また、形状変形のあるレンズを特定できていない場合は、無作為にレンズを選択して調整しなければならず、調整に非常に手間がかかる。また、レンズの回転調整量も分からないことから、レンズを一定量回転させてレンズ鏡筒に組み込む作業の繰り返しとなり、調整作業が非常に煩雑となる。さらに、複数のレンズのうち形状変形が一つのレンズしかない場合には、アスを打ち消すためのレンズが一つしかないため調整不可能となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の光学素子をそれぞれ保持した略円筒状のレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を内蔵する鏡筒部材とを有し、前記レンズ保持枠の少なくとも一つのレンズ保持枠は、前記光学素子を保持する第1レンズ保持枠と、前記第1レンズ保持枠をネジで保持する第2レンズ保持枠とを有し、前記鏡筒部材は、径方向に沿って形成された少なくとも一つの長孔を有することを特徴とする対物レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記対物レンズを具備する顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る対物レンズを具備する顕微鏡を示す図。
【図2】実施形態に係る対物レンズを示す図。
【図3】図2に示す対物レンズのA−A線に沿った断面図。
【図4】アス調整レンズのレンズ枠の断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の一実施形態にかかる対物レンズを具備する顕微鏡について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0011】
図1において、顕微鏡100は、顕微鏡本体101と、顕微鏡本体101に配置された接眼鏡筒102と、後述する複数の対物レンズ1を観察位置に配置するレボルバ104と、標本105を載置するステージ106と、透過照明用光源107とから構成されている。
【0012】
観察者は、透過照明用光源107からの照明光をステージ106に載置した標本105に照射し、フォーカスノブ108を回転させることでステージ106を上下動し、標本105に対物レンズ1をフォーカシングし、対物レンズ1で標本105からの光を集光して、接眼鏡筒102を介して接眼レンズ109で標本105の拡大像を観察する。なお、本願に係る対物レンズ1を装着する顕微鏡は、図1に示す正立型顕微鏡に限らず倒立型顕微鏡であっても良い。また、照明は、透過照明に限らず反射照明であっても良い。
【0013】
次に、顕微鏡100で使用される一実施形態にかかる対物レンズ1について図2〜図4を参照しつつ説明する。
【0014】
図2に示すように、実施形態に係る対物レンズ1は、レンズ鏡筒10と、該レンズ鏡筒10の外周部にレンズ鏡筒10の周方向に沿って第1長孔11と第2長孔12が形成されている。また、対物レンズ1の上部には、対物レンズ1をレボルバ104のレンズ取り付け孔に螺合するためのネジ15が形成されている。
【0015】
第1長孔11は、後述するアス調整レンズに変形(面変形)を与えるためのネジ13を調整するための長孔で、周方向に沿って少なくとも一つ形成されている。
【0016】
また、第2長孔12は、後述するアス調整レンズを対物レンズ1の光軸回りに回転するための孔14が操作できるようにあけられた長孔であり、周方向に沿って少なくとも一つ形成されている。
【0017】
対物レンズ1に複数のレンズを保持する状態について図3を参照しつつ説明する。図3において、対物レンズ1は、複数のレンズL1〜L4が円筒状の各レンズ保持枠21、22、23、24に接着固定され、レンズ保持枠21〜24をレンズ鏡筒10内に内嵌することで構成される。なお、レンズL3は、二枚のレンズが接合された接合レンズであるが、一体として一つの符号L3で表している。各レンズ保持枠21〜24は、それぞれレンズ保持枠21〜24の外周部端部がそれぞれ当接している。レンズ保持枠24のネジ15方向の端部は、レンズ鏡筒10の内周に螺合した押さえ環25に当接している。
【0018】
対物レンズ1は、レンズ鏡筒10の先端部10aと押さえ環25とで各レンズ保持枠21〜24を締め付けることで各レンズをレンズ鏡筒10内に固定する。
【0019】
レンズL2は、後述する対物レンズ1のアスを調整するためのアス調整レンズであり、レンズ保持枠22に接着固定されている。
【0020】
図3、図4に示すようにレンズ保持枠22は、先端にレンズL2を接着固定する第1レンズ保持枠22aと、第1レンズ保持枠22aを内嵌して固定する第2レンズ保持枠22bとから構成されている。
【0021】
第1レンズ保持枠22aには、光軸回りの90度ずつの4箇所にネジ孔31、31が形成されている。この4箇所のネジ孔31、31に対応する第2レンズ保持枠22bの位置には、皿ネジ13、13を挿通する貫通孔33、33が形成されている。この貫通孔33、33に皿ネジ13、13挿通してネジ孔31、31に皿ネジ13、13を螺合して締め付けることで第1レンズ保持枠22aを第2レンズ保持枠22bに固定する。固定した際、皿ネジ13、13の頭部は、第2レンズ保持枠22bの外周面から飛び出すことが無いように、皿ネジ13、13の頭が隠れる深さをもって貫通孔31、31が形成されている。
【0022】
第2レンズ保持枠22bには、第1レンズ保持枠22aに固定されたレンズL2を光軸回りに回転するための冶具の先端を通す孔14、14が形成されている。
【0023】
このようにして構成されたレンズL2を保持するレンズ保持枠22は、レンズ鏡筒10の内側に第2レンズ保持枠22bの外周部を回転可能に嵌合することでレンズL2の光軸を各レンズL1、L2,L4の光軸と略一致させることができる。
【0024】
以上のような構成により、本実施形態に係る対物レンズ1が構成されている。
次に、本実施形態に係る対物レンズ1のアス調整について説明する。対物レンズ1には複数のレンズL1〜L4が含まれてる。それぞれのレンズL1〜L4は、各レンズ保持部材21〜24に接着剤等で接着されている。このため、接着剤の変形やレンズ保持枠21〜24をレンズ鏡筒10内に押さえ環25で固定した際の変形などでレンズL1〜L4が変形する。この変形によってそれぞれのレンズL1〜L4にアスが発生し、結果としてL1〜L4のアスが統合されたアスとして対物レンズ1のアスが発生する。
【0025】
本実施形態の対物レンズ1では、レンズL2をアス調整レンズとしている。4箇所に配置された皿ネジ13の対向する2箇所をそれぞれ締め付けることによって、第1レンズ保持枠22aとレンズL2の接着材を介してレンズL2が変形(僅かに楕円状に)する。この変形によりレンズL2には、アスが発生する。皿ネジ13の締め付け具合を調整することで、レンズL2の変形量を変えることができるため、結果的にレンズL2で発生するアスを調整することができる。
【0026】
調整の際、作業者はレンズ鏡筒10内にレンズL1〜L4を各レンズ保持枠21〜24を介して配置した後、レンズL4を保持するレンズ保持枠22を光軸回りに回転できる程度に押さえ環25を締め付ける。
【0027】
作業者は、この対物レンズ1を図1で示す顕微鏡100のレボルバ104に装着する。ステージ106上にピンホールを有する標本105を配置して、接眼レンズ109でピンホールを観察できるように光源107、フォーカスノブ108を調整する。作業者が、ピンホールを観察した時、対物レンズ1のアスにより、ピンホール像が楕円状に歪んで観察される。
【0028】
作業者は、レンズ鏡筒10の外周に形成された第1長孔11を介して、皿ネジ13、13を締め付ける。これにより、レンズL2に任意のアスが発生し、ピンホール像の楕円形状が変化する。その後、作業者は、第2の長孔12を介して第2のレンズ保持枠22bに形成された孔14に調整棒を差込、レンズL2を光軸回りに一回転ながらピンホール像の変化を観察し、ピンホール像の楕円形状が最小となる位置で止める。
【0029】
作業者は、皿ネジ13、13の締め付けを調整してピンホール像が略円形(略真円)になるようにレンズL2を調整する。ピンホール像が略円形になった時に、対物レンズ1のアスが解消される。この状態で、標本を観察することで対物レンズ1のアスがない状態の標本像を観察することができる。
【0030】
なお、上記説明では、アスの調整を顕微鏡100に対物レンズ1を装着して行う場合について説明したが、工場出荷前の調整では、専用のアス調整光学系を使用して上記と同様の手順に従って行うことは言うまでもない。
【0031】
以上、本実施形態によれば、レンズに形状変化を与え、かつ該レンズを回転すことができ、短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、皿ネジ13は、周方向に等角度(略90度)で四個配置した場合について説明したが、皿ネジ13は、少なくとも一つあれば本願の効果を奏することができる。皿ネジ13の数が多いほど、アスの調整を容易に行うことが可能になる。
【0033】
また、上記実施形態では、レンズL2を回転する孔14をアスを発生する皿ネジ13とは別に配置した例について説明したが、孔14を設けず皿ネジ13を用いてレンズL2を回転するように構成することもできる。この際、レンズ鏡筒10の長孔12は、設けなくても良い。
【0034】
また、本実施形態では、レンズ鏡筒10に形成する長孔11、12の周方向の長さは、レンズL2を孔14を用いて回転した時、回転に使用している孔14が長孔12の一方の端部近傍に達した際、長孔12の他方の端部近傍の開口部に別の孔14が出ている状態の長さを有することが好ましい。このように構成することで、レンズL2を360度任意の角度に回転することができる。あるいは、孔14を第2レンズ保持部材22bの周方向に沿って複数個形成して、レンズL2を回転した時、長孔12に少なくとも二つの孔14が見えるように構成することが好ましい。これは、皿ネジ13を用いてレンズL2を回転する場合も同様である。
【0035】
また、上記実施形態では、アス調整レンズがレンズL2一つの場合について説明したが、アス調整レンズは一つに限らず複数個を同様の構成で配置しても良い。複数個配置することでより細かい調整が可能になり、アスを良好に補正することができる。また、アス調整レンズの位置は、上記実施形態のように物体側から二番目のレンズに限らずいずれのレンズであっても良い。また、瞳に近いレンズをアス調整用レンズとすることがより好ましい。瞳に近いレンズで調整することで、より良好にアスを補正することができる。
【0036】
また、長孔11、12には、アス調整後カバー部材で孔を塞ぐことが好ましい。カバーすることで、調整後に触れてずらしてしまう、あるいはゴミの付着を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 対物レンズ
10 レンズ鏡筒
11、12 長孔
13 皿ネジ(ネジ)
14 孔
21、22、23、24 レンズ保持枠
22a 第1レンズ保持枠
22b 第2レンズ保持枠
25 押さえ環
100 顕微鏡
101 顕微鏡本体
102 接眼鏡筒
104 レボルバ
105 標本
106 ステージ
107 透過照明用光源
108 フォーカスノブ
L1、L2、L3、L4 レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズと、これを備える顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
対物レンズは、複数の光学素子(以後、本明細書中ではレンズという)と、これらレンズそれぞれを保持する複数のレンズ保持部材と、複数のレンズ保持部材を内部に収容する鏡筒とから構成されている。そして、対物レンズの光学性能のうちでアス(非点収差)は、上記レンズの面変形が大きな要因となっており、このアスを低減するために各レンズを光軸回りにそれぞれ回転することで低減することが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−64886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アスを低減するためには、複数のレンズの形状変形がお互いにアスを打ち消す方向になるように各レンズを回転させて調整する必要がある。また、形状変形のあるレンズを特定できていない場合は、無作為にレンズを選択して調整しなければならず、調整に非常に手間がかかる。また、レンズの回転調整量も分からないことから、レンズを一定量回転させてレンズ鏡筒に組み込む作業の繰り返しとなり、調整作業が非常に煩雑となる。さらに、複数のレンズのうち形状変形が一つのレンズしかない場合には、アスを打ち消すためのレンズが一つしかないため調整不可能となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の光学素子をそれぞれ保持した略円筒状のレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を内蔵する鏡筒部材とを有し、前記レンズ保持枠の少なくとも一つのレンズ保持枠は、前記光学素子を保持する第1レンズ保持枠と、前記第1レンズ保持枠をネジで保持する第2レンズ保持枠とを有し、前記鏡筒部材は、径方向に沿って形成された少なくとも一つの長孔を有することを特徴とする対物レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記対物レンズを具備する顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る対物レンズを具備する顕微鏡を示す図。
【図2】実施形態に係る対物レンズを示す図。
【図3】図2に示す対物レンズのA−A線に沿った断面図。
【図4】アス調整レンズのレンズ枠の断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の一実施形態にかかる対物レンズを具備する顕微鏡について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0011】
図1において、顕微鏡100は、顕微鏡本体101と、顕微鏡本体101に配置された接眼鏡筒102と、後述する複数の対物レンズ1を観察位置に配置するレボルバ104と、標本105を載置するステージ106と、透過照明用光源107とから構成されている。
【0012】
観察者は、透過照明用光源107からの照明光をステージ106に載置した標本105に照射し、フォーカスノブ108を回転させることでステージ106を上下動し、標本105に対物レンズ1をフォーカシングし、対物レンズ1で標本105からの光を集光して、接眼鏡筒102を介して接眼レンズ109で標本105の拡大像を観察する。なお、本願に係る対物レンズ1を装着する顕微鏡は、図1に示す正立型顕微鏡に限らず倒立型顕微鏡であっても良い。また、照明は、透過照明に限らず反射照明であっても良い。
【0013】
次に、顕微鏡100で使用される一実施形態にかかる対物レンズ1について図2〜図4を参照しつつ説明する。
【0014】
図2に示すように、実施形態に係る対物レンズ1は、レンズ鏡筒10と、該レンズ鏡筒10の外周部にレンズ鏡筒10の周方向に沿って第1長孔11と第2長孔12が形成されている。また、対物レンズ1の上部には、対物レンズ1をレボルバ104のレンズ取り付け孔に螺合するためのネジ15が形成されている。
【0015】
第1長孔11は、後述するアス調整レンズに変形(面変形)を与えるためのネジ13を調整するための長孔で、周方向に沿って少なくとも一つ形成されている。
【0016】
また、第2長孔12は、後述するアス調整レンズを対物レンズ1の光軸回りに回転するための孔14が操作できるようにあけられた長孔であり、周方向に沿って少なくとも一つ形成されている。
【0017】
対物レンズ1に複数のレンズを保持する状態について図3を参照しつつ説明する。図3において、対物レンズ1は、複数のレンズL1〜L4が円筒状の各レンズ保持枠21、22、23、24に接着固定され、レンズ保持枠21〜24をレンズ鏡筒10内に内嵌することで構成される。なお、レンズL3は、二枚のレンズが接合された接合レンズであるが、一体として一つの符号L3で表している。各レンズ保持枠21〜24は、それぞれレンズ保持枠21〜24の外周部端部がそれぞれ当接している。レンズ保持枠24のネジ15方向の端部は、レンズ鏡筒10の内周に螺合した押さえ環25に当接している。
【0018】
対物レンズ1は、レンズ鏡筒10の先端部10aと押さえ環25とで各レンズ保持枠21〜24を締め付けることで各レンズをレンズ鏡筒10内に固定する。
【0019】
レンズL2は、後述する対物レンズ1のアスを調整するためのアス調整レンズであり、レンズ保持枠22に接着固定されている。
【0020】
図3、図4に示すようにレンズ保持枠22は、先端にレンズL2を接着固定する第1レンズ保持枠22aと、第1レンズ保持枠22aを内嵌して固定する第2レンズ保持枠22bとから構成されている。
【0021】
第1レンズ保持枠22aには、光軸回りの90度ずつの4箇所にネジ孔31、31が形成されている。この4箇所のネジ孔31、31に対応する第2レンズ保持枠22bの位置には、皿ネジ13、13を挿通する貫通孔33、33が形成されている。この貫通孔33、33に皿ネジ13、13挿通してネジ孔31、31に皿ネジ13、13を螺合して締め付けることで第1レンズ保持枠22aを第2レンズ保持枠22bに固定する。固定した際、皿ネジ13、13の頭部は、第2レンズ保持枠22bの外周面から飛び出すことが無いように、皿ネジ13、13の頭が隠れる深さをもって貫通孔31、31が形成されている。
【0022】
第2レンズ保持枠22bには、第1レンズ保持枠22aに固定されたレンズL2を光軸回りに回転するための冶具の先端を通す孔14、14が形成されている。
【0023】
このようにして構成されたレンズL2を保持するレンズ保持枠22は、レンズ鏡筒10の内側に第2レンズ保持枠22bの外周部を回転可能に嵌合することでレンズL2の光軸を各レンズL1、L2,L4の光軸と略一致させることができる。
【0024】
以上のような構成により、本実施形態に係る対物レンズ1が構成されている。
次に、本実施形態に係る対物レンズ1のアス調整について説明する。対物レンズ1には複数のレンズL1〜L4が含まれてる。それぞれのレンズL1〜L4は、各レンズ保持部材21〜24に接着剤等で接着されている。このため、接着剤の変形やレンズ保持枠21〜24をレンズ鏡筒10内に押さえ環25で固定した際の変形などでレンズL1〜L4が変形する。この変形によってそれぞれのレンズL1〜L4にアスが発生し、結果としてL1〜L4のアスが統合されたアスとして対物レンズ1のアスが発生する。
【0025】
本実施形態の対物レンズ1では、レンズL2をアス調整レンズとしている。4箇所に配置された皿ネジ13の対向する2箇所をそれぞれ締め付けることによって、第1レンズ保持枠22aとレンズL2の接着材を介してレンズL2が変形(僅かに楕円状に)する。この変形によりレンズL2には、アスが発生する。皿ネジ13の締め付け具合を調整することで、レンズL2の変形量を変えることができるため、結果的にレンズL2で発生するアスを調整することができる。
【0026】
調整の際、作業者はレンズ鏡筒10内にレンズL1〜L4を各レンズ保持枠21〜24を介して配置した後、レンズL4を保持するレンズ保持枠22を光軸回りに回転できる程度に押さえ環25を締め付ける。
【0027】
作業者は、この対物レンズ1を図1で示す顕微鏡100のレボルバ104に装着する。ステージ106上にピンホールを有する標本105を配置して、接眼レンズ109でピンホールを観察できるように光源107、フォーカスノブ108を調整する。作業者が、ピンホールを観察した時、対物レンズ1のアスにより、ピンホール像が楕円状に歪んで観察される。
【0028】
作業者は、レンズ鏡筒10の外周に形成された第1長孔11を介して、皿ネジ13、13を締め付ける。これにより、レンズL2に任意のアスが発生し、ピンホール像の楕円形状が変化する。その後、作業者は、第2の長孔12を介して第2のレンズ保持枠22bに形成された孔14に調整棒を差込、レンズL2を光軸回りに一回転ながらピンホール像の変化を観察し、ピンホール像の楕円形状が最小となる位置で止める。
【0029】
作業者は、皿ネジ13、13の締め付けを調整してピンホール像が略円形(略真円)になるようにレンズL2を調整する。ピンホール像が略円形になった時に、対物レンズ1のアスが解消される。この状態で、標本を観察することで対物レンズ1のアスがない状態の標本像を観察することができる。
【0030】
なお、上記説明では、アスの調整を顕微鏡100に対物レンズ1を装着して行う場合について説明したが、工場出荷前の調整では、専用のアス調整光学系を使用して上記と同様の手順に従って行うことは言うまでもない。
【0031】
以上、本実施形態によれば、レンズに形状変化を与え、かつ該レンズを回転すことができ、短時間でアスの調整を行うことができる対物レンズと、これを具備する顕微鏡を提供することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、皿ネジ13は、周方向に等角度(略90度)で四個配置した場合について説明したが、皿ネジ13は、少なくとも一つあれば本願の効果を奏することができる。皿ネジ13の数が多いほど、アスの調整を容易に行うことが可能になる。
【0033】
また、上記実施形態では、レンズL2を回転する孔14をアスを発生する皿ネジ13とは別に配置した例について説明したが、孔14を設けず皿ネジ13を用いてレンズL2を回転するように構成することもできる。この際、レンズ鏡筒10の長孔12は、設けなくても良い。
【0034】
また、本実施形態では、レンズ鏡筒10に形成する長孔11、12の周方向の長さは、レンズL2を孔14を用いて回転した時、回転に使用している孔14が長孔12の一方の端部近傍に達した際、長孔12の他方の端部近傍の開口部に別の孔14が出ている状態の長さを有することが好ましい。このように構成することで、レンズL2を360度任意の角度に回転することができる。あるいは、孔14を第2レンズ保持部材22bの周方向に沿って複数個形成して、レンズL2を回転した時、長孔12に少なくとも二つの孔14が見えるように構成することが好ましい。これは、皿ネジ13を用いてレンズL2を回転する場合も同様である。
【0035】
また、上記実施形態では、アス調整レンズがレンズL2一つの場合について説明したが、アス調整レンズは一つに限らず複数個を同様の構成で配置しても良い。複数個配置することでより細かい調整が可能になり、アスを良好に補正することができる。また、アス調整レンズの位置は、上記実施形態のように物体側から二番目のレンズに限らずいずれのレンズであっても良い。また、瞳に近いレンズをアス調整用レンズとすることがより好ましい。瞳に近いレンズで調整することで、より良好にアスを補正することができる。
【0036】
また、長孔11、12には、アス調整後カバー部材で孔を塞ぐことが好ましい。カバーすることで、調整後に触れてずらしてしまう、あるいはゴミの付着を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 対物レンズ
10 レンズ鏡筒
11、12 長孔
13 皿ネジ(ネジ)
14 孔
21、22、23、24 レンズ保持枠
22a 第1レンズ保持枠
22b 第2レンズ保持枠
25 押さえ環
100 顕微鏡
101 顕微鏡本体
102 接眼鏡筒
104 レボルバ
105 標本
106 ステージ
107 透過照明用光源
108 フォーカスノブ
L1、L2、L3、L4 レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子をそれぞれ保持した略円筒状のレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠を内蔵する鏡筒部材とを有し、
前記レンズ保持枠の少なくとも一つのレンズ保持枠は、前記光学素子を保持する第1レンズ保持枠と、前記第1レンズ保持枠をネジで保持する第2レンズ保持枠とを有し、
前記鏡筒部材は、径方向に沿って形成された少なくとも一つの長孔を有することを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
前記長孔は、前記ネジに対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記第2レンズ保持枠は、少なくとも一つの貫通穴を有し、
前記長孔は、前記貫通穴に対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の対物レンズを具備することを特徴とする顕微鏡。
【請求項1】
複数の光学素子をそれぞれ保持した略円筒状のレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠を内蔵する鏡筒部材とを有し、
前記レンズ保持枠の少なくとも一つのレンズ保持枠は、前記光学素子を保持する第1レンズ保持枠と、前記第1レンズ保持枠をネジで保持する第2レンズ保持枠とを有し、
前記鏡筒部材は、径方向に沿って形成された少なくとも一つの長孔を有することを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
前記長孔は、前記ネジに対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記第2レンズ保持枠は、少なくとも一つの貫通穴を有し、
前記長孔は、前記貫通穴に対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の対物レンズを具備することを特徴とする顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−88606(P2013−88606A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228856(P2011−228856)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]