説明

対物レンズおよび光ピックアップ装置

【課題】BDに用いて好適なスポット径にレーザ光を集束可能な対物レンズおよび光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】対物レンズRは、レーザ光を開口数が0.85でスポット状に集束させるレンズ面R1、R2と、レンズ面R1に形成された反射防止膜R1aを備える。反射防止膜R1aは、レンズ面R1の法線とレンズ面R1の光軸がなす角度が55度以上であって、70度以下のときに前記レーザ光に対する反射率が極小となるよう膜設計がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズおよび光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置では、所定の波長帯域のレーザ光が、対物レンズにより、光ディスク上にスポット状に集束されて照射され、光ディスクに対する記録または再生が行われる。この場合、対物レンズには、レンズ面におけるレーザ光の反射を抑止するため、反射防止膜が形成される。反射防止膜は、レンズ面に入射するレーザ光のレンズ面の法線からの傾き(以下、「入射角度」という)が変動すると、反射率が変動する、入射角依存性を有している。
【0003】
一般的に、レーザ光源から出射されるレーザ光は、ガウス強度分布を有しており、レーザ光が透過するレンズの中央部に近いほど、レーザ光の強度は強く、対物レンズの中央部から外縁に近づくほど、レーザ光の強度は弱くなる。こうなると、レーザ光の集束力が弱まり、光ディスク上におけるスポット径の増大を招く。
【0004】
かかる問題を解消するために、レンズ面の中央部よりややレンズ面の周辺部に近づく領域において、透過光量が大きくなるように反射防止膜の反射率が調整されることが知られている。たとえば、入射角度が0度でレンズ面を光が透過する場合の反射率が、レーザ光の波長帯域よりもやや長波長側にシフトした波長帯域において極小となるよう反射防止膜が形成される。波長400〜440nmのレーザ光が入射角度0度でレンズ面を透過する場合、反射防止膜は、反射率が波長460〜650nmの範囲内に極小値を示すように形成される(たとえば、特許文献1)。
【0005】
また、近年、光ディスクの高容量化が進められており、高密度で情報が記録されたブルーレイディスク(以下、「BD」という)が用いられている。かかるBDに対して、高密度の情報の記録/再生を行うため、レーザ光のスポット径の小径化が求められている。ここで、スポット径は、一般的に、再生信号の時間方向のずれ(ジッタ)と相関関係があり、スポット径が大きくなるほど、ジッタが大きくなることが知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4172180号公報
【特許文献2】特開2007−257708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の対物レンズにおいて、スポット径が大きくなることに伴い、ジッタが所定以上に大きくなると、再生信号が適正に同期できなくなる等、光ディスクの記録または再生に悪影響を及ぼす惧れがある。
【0008】
この関係から、特に、BDに対して記録または再生を行う場合、ジッタによる再生信号への影響を抑えるためには、スポット径は、0.385μm程度以内であるのが望ましい。しかしながら、上記のように、入射角度が0度でレンズ面を光が透過する場合の反射率が波長460〜650nmの範囲内に極小値を示すように形成された反射防止膜では、スポット径を0.385μm以内に抑えることができない。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、BDに用いて好適なスポット径にレーザ光を集束可能な対物レンズおよび光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、ブルーレイディスク用のレーザ光が平行光化されて入射する対物レンズに関する。本態様に係る対物レンズは、前記レーザ光を開口数が0.85でスポット状に集束させるレンズ部と、前記レンズ部の前記レーザ光の入射側に形成された第1レンズ面と、前記第1レンズ面に形成された第1反射防止膜と、を備える。前記第1反射防止膜は、前記第1レンズ面の法線と前記第1レンズ面の光軸がなす角度が55度以上であって、70度以下のときに前記レーザ光に対する反射率が極小となるよう膜設計がなされている。
【0011】
第1の態様に係る対物レンズによれば、対物レンズの透過率を損ねずに、BDに用いて好適なスポット径にレーザ光を集束することができる。
【0012】
第1の態様において、前記第レンズ部の前記レーザ光の出射側に形成された第2レンズ面と、前記第2レンズ面に形成された第2反射防止膜と、をさらに備えるよう構成され得る。
【0013】
この場合、前記第2反射防止膜は、前記反射率が前記レーザ光の有効径全面にわたって5%以下であるように構成され得る。こうすると、前記対物レンズを、BDに用いる場合に好適な対物レンズの透過率に保つことができる。したがって、前記対物レンズを透過した前記レーザ光の強度を高めることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、光ピックアップ装置に関する。本態様に係る光ピックアップ装置は、ブルーレイディスクに用いるレーザ光を出射する光源と、前記光源から出射されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズと、前記コリメータレンズによって平行光に変換された前記レーザ光が入射される上記第1の態様に係る対物レンズとを有する。
【0015】
本態様に係る光ピックアップ装置によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、BDに用いて好適なスポット径にレーザ光を集束可能な対物レンズおよび光ピックアップ装置を提供することができる。
【0017】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る対物レンズの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る対物レンズによるレーザ光のスポット形状の例とレンズ面の透過率の領域を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る対物レンズの光源側のレンズ面の反射率の入射角度依存性を示すグラフである。
【図4】実施の形態に係る対物レンズの光源側のレンズ面の反射率の波長依存特性を示すグラフである。
【図5】実施の形態に係る対物レンズのディスク側のレンズ面の反射率の入射角度依存性を示すグラフである。
【図6】実施の形態に係る対物レンズのBD光の反射率が極小となる入射角度とスポット径の関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態に係る対物レンズのディスク側のレンズ面の最大反射率と透過率の関係を示すグラフである。
【図8】実施の形態に係る光ピックアップ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態では、BD用の対物レンズに本発明が適用されている。
【0020】
<対物レンズ>
図1(a)は、本実施の形態に係る対物レンズRを下方向(光源側)から見たときの平面図、図1(b)は、対物レンズRを上方向(ディスク側)から見たときの平面図である。図1(c)は、対物レンズRの光軸を含む当該光軸に平行な面によって対物レンズRを切断したときの断面を模式的に示す図である。なお、図1(c)には、BDに対応するレーザ光(以下、「BD光」という)の光線のうち、対物レンズRの光軸を通る光線と、有効径の最外角を通る光線が示されている。
【0021】
図1(a)、(b)を参照して、対物レンズRは、平面視において真円の形状を有している。対物レンズRは、光透過性に優れる樹脂材料により形成されている。対物レンズRの下面には、レンズ面R1が形成されている。また、対物レンズRの上面には、レンズ面R2が形成されている。レンズ面R1の径φo、レンズ面R2の径φiは、それぞれ、対物レンズRの径φよりも、数段小さくなっている。また、レンズ面R1の径φoは、レンズ面R2の径φiよりも大きくなっている。レンズ面R1の有効径は、径φoよりもやや小さくなっている。レンズ面R2の有効径は、径φiよりもやや小さくなっている。
【0022】
また、図1(c)に示すように、レンズ面R1は、光源側方向に突出する非球面形状の凸面となっている。レンズ面R2は、ディスク側方向に突出する非球面形状の凸面となっている。レンズ面R1の曲率は、レンズ面R2の曲率よりも、数段大きくなっている。レンズ面R1とレンズ面R2の光軸は、互いに一致している。レンズ面R1の有効径は、レンズ面R2の有効径よりも大きくなっている。
【0023】
レンズ面R1、レンズ面R2は、それぞれ、平行光の状態で入射したBD光をBD上に適正に集束させることができるよう構成されている。BD光の波長は、400nm〜440nm程度である。レンズ面R1に入射したBD光は、レンズ面R1で光軸に向かう方向に屈折され、レンズ面R2に向かう。BD光の有効径の最外角を通ってレンズ面R1に入射する光線の入射角度θは、通常60度以上で、最大でも70度程度である。そして、BD光は、レンズ面R2によって、さらに光軸に向かう方向に屈折される。こうして対物レンズRにより集束されたBD光は、BDに適する高い開口数(NA=0.85)にてBDに入射する。その後、BD光は、BDのカバー層で屈折され、記録層上にフォーカスされる。なお、本願発明において、レンズ部とは、入射してくる光線を屈折させることができる機能を有する部分である。そして、本実施の形態においては、レンズ部はレンズ面R1およびレンズ面R2を含む。
【0024】
また、レンズ面R1、R2の表面には、それぞれ、反射防止膜R1a、R2aが形成されている。反射防止膜R1a、R2aは、屈折率の異なる薄膜が積層された多層膜である。反射防止膜R1a、R2aは、レンズ表面でのBD光の反射を抑制し、BD光の透過率を高めるよう、膜厚と層数が設計されている。
【0025】
ところで、一般的に、レンズ面R1、R2の中央付近を透過するレーザ光の光量に対してレンズ面R1、R2の周辺部を透過するレーザ光の光量が小さくなるほど、集束作用が弱まり、BD上におけるレーザ光のスポット径が大きくなり易い。逆に、レンズ面R1、R2の中央付近を透過するレーザ光の光量に対してレンズ面R1、R2の周辺部を透過するレーザ光の光量が大きくなるほど、レーザ光のスポット径が小さくなる。
【0026】
図2(a)は、対物レンズRへの入射時におけるBD光のビーム形状の例を示す模式図である。
【0027】
図示の如く、BD光の光強度は、ガウス分布を有しており、BD光の中心に近いほど強度が高く、中心から離れるほど強度が低くなる。したがって、BD光のビームBMは、中央部の領域BMaでは、光量が大きく、中央部より外側の周辺部の領域BMbでは、光量が小さくなっている。このように、光強度のガウス分布の関係から、レンズ面R1、R2の中央部を透過するBD光の光量とレンズ面R1、R2の中央部を透過するBD光の光量が、アンバランスとなり、BD上におけるスポット径が大きくなり易い。
【0028】
さらに、通常、反射防止膜R1aは、中央部から周辺部にわたって光が透過する場合の反射率が、小さくなるように、膜厚と層数が設計される。または、反射防止膜R1aは、スポット径の増大を抑えるために、入射角度が0度でレンズ面R1を光が透過する場合の反射率が、BD光の波長帯域よりもやや長波長側にシフトした波長帯域において極小となるように、膜厚と層数が設計される。このような場合、BD光の波長400〜440nmに対する反射率が極小となる入射角度は、0度〜50度程度の範囲となる。
【0029】
しかし、上述のように、レンズ面R1の最外縁に近い周辺部におけるBD光の最大入射角度は略70度程度と非常に大きくなっている。したがって、上記のように入射角度が0度〜50度程度の範囲に反射防止膜R1aの反射率の極小値があると、入射角度50度よりも大きい角度で入射するBD光に対する反射率は、極小値から離れるため、比較的大きくなり易い。
【0030】
このように、レンズ面R1の最外縁に近い周辺部を透過するBD光に対する反射率が大きくなると、光強度のガウス分布の関係と相俟って、レンズ面R1の最外縁に近い周辺部を透過するBD光の光量が小さくなり、スポット径が増大し易い。
【0031】
以上のことから、スポット径の増大を抑えるためには、図2(b)に示すようにレンズ面R1において、極力、瞳座標Pyが1となる領域Eに近づく領域の透過率が、中央部の領域Aに近づく領域の透過率よりも大きくなるように反射防止膜R1aが設計されるのが望ましい。瞳座標Pyは、BD光の最外角(入射瞳)に対応するレンズ面R1の位置が1、レンズ面R1の光軸に対応するレンズ面R1の位置が0として、示されている。すなわち、瞳座標Py=1が、BD光の最大入射角度略70度に対応する。
【0032】
また、一般的に、スポット径の大きさは、対物レンズRが光ピックアップ装置に用いられた場合における再生信号のジッタと相関関係があり、スポット径の大きさが大きくなるほど、ジッタが大きくなる。スポット径が大きくなり、ジッタが所定以上に大きくなると、再生信号が適正に同期できなくなる等、光ディスクの記録または再生に悪影響を及ぼす惧れがある。
【0033】
この関係から、特に、BDに対して再生を行う場合、ジッタの再生信号への影響を抑えるために、スポット径は、0.385μm以内とするのが望ましい。
【0034】
そこで、本願発明者らは、BD光の最大入射角度の略70度(瞳座標Py=1)以下の所定の入射角度において、反射率が極小値となるように、レンズ面R1の反射防止膜R1aを複数設計し、BD光を略平行光の状態で対物レンズRに入射させて、BD上におけるスポット径が0.385μm以内に収まるか否かをシミュレーションにより検証した。
【0035】
各シミュレーションに用いた対物レンズRの光源側のレンズ面R1、BD側のレンズ面R2の形状は、以下の式(1)で示される。
【0036】
【数1】

【0037】
上記式(1)において、Zは、光軸方向のサグ量である。cは、曲率半径の逆数であり、rは、光軸と直交する方向の高さである。kは、コ―ニック定数である。A4、A6、A8、A10、A12、A14およびA16は、それぞれ、4次、6次、8次、10次、12次、14次および16次の非球面係数である。
【0038】
上記式(1)を満たすように設計した対物レンズRのレンズ面R1、R2の設計例を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1で設計されたレンズ面R1の最大接線角度は、67.7度であり、レンズ面R2の最大接線角度は、34.3度である。レンズ面R1とレンズ面R2を組み合わせることにより、対物レンズRは、開口数(NA=0.85)に対応し、BD光をBD上に適正に集束させることができる。
【0041】
上記式(1)、および表1に基づいて設計された対物レンズRのレンズ面R1の表面に形成される反射防止膜R1aの膜設計の例を表2に示す。また、対物レンズRのレンズ面R2の表面に形成される反射防止膜R2aの膜設計の例を表3に示す。また、これらの反射防止膜R1a、R2a、対物レンズRに用いられる素材の屈折率を表4に示す。なお、表2には、実施例1と実施例2と比較例1の3つの反射防止膜R1aの設計例が示されており、表3には、比較例2と実施例3の2つの反射防止膜R2aの設計例が示されている。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
表2の実施例1は、レンズ面R1を透過するBD光の入射角度が55度のときに、BD光に対する反射率が極小値となるように設計された反射防止膜R1aの膜設計の例である。また、表2の実施例2は、レンズ面R1を透過するBD光の入射角度が60度のときに、BD光に対する反射率が極小値となるように設計された反射防止膜R2aの膜設計の例である。また、表2の比較例1は、レンズ面R1を透過するBD光の入射角度が50度のときに、BD光に対する反射率が極小値になるように設計された反射防止膜R1aの膜設計の例である。実施例1、2、及び比較例1の場合、光源側から順に、互いに屈折率の異なる二酸化ケイ素(SiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)が積層された多層膜構造となっており、表2に示す如く、膜厚が設計されている。なお、基材には、三井化学株式会社製の環状ポリオレフィン系樹脂であるアペル(登録商標)を用いた。
【0046】
また、表3の比較例2は、最大反射率が略12%となるように設計された反射防止膜R2aの膜設計の例である。表3の実施例3は、最大反射率が略4%となるように設計された反射防止膜R2aの膜設計の例である。それぞれ、ディスク(BD)側から順に、互いに屈折率の異なる二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムの2層膜構造となっており、表3に示す如く、膜厚が設計されている。なお、基材には、上記同様、三井化学株式会社製の環状ポリオレフィン系樹脂であるアペル(登録商標)を用いた。
【0047】
図3(a)、(b)は、上記実施例1、実施例2および比較例1のレンズ面R1におけるBD光(波長405nm)の入射角度と反射率の特性を示したグラフである。図3(a)は、横軸にレンズ面R1に対するBD光の入射角度が示されており、縦軸にレンズ面R1の反射率が示されている。なお、図3(b)は、図3(a)の横軸の入射角度を図2(b)に示した瞳座標Pyに置き換えて示されたものであり、図3(a)と同等のグラフである。
【0048】
図3(a)を参照して、実施例1の場合、反射率が極小となる入射角度は、55度である。このときの反射率は、略2%程度である。また、入射角度が0度のときの反射率は、略20%程度である。この場合、図3(b)に示すように、瞳座標Pyでは、0.8のときに、反射率が極小となる。したがって、図2(b)に示すBD光の最外角に近い領域の透過光量が大きくなり、瞳座標Pyが0付近の領域の透過光量が大きく減衰されることとなる。これにより、スポット径を小さく絞ることができる。
【0049】
図3(a)に戻り、実施例2の場合、反射率が極小となる入射角度は、60度である。このときの反射率は、略3%程度である。また、入射角度が0度のときの反射率は、略20%程度となっている。この場合、図3(b)に示すように、瞳座標Pyにすると、0.9のときに、反射率が極小となる。したがって、実施例1よりも、さらにBD光の最外角に近い領域の透過光量が大きくなり、瞳座標Pyが0付近の領域の透過光量が大きく減衰されることとなる。これにより、さらにスポット径を小さく絞ることができる。比較例1の場合、反射率が極小となる入射角度は、50度である。このときの反射率は、略0.9%である。また、入射角度が0度のときの反射率は、略20%程度となっている。この場合、図3(b)に示すように、瞳座標Pyにすると0.7のときに、反射率が極小値とな
る。したがって、実施例1と実施例2と比較すると、BD光の最外角に近い領域の透過光量が小さくなることとなる。これにより、比較例1では、スポット径を絞ることができなくなり、実施例1や実施例2よりもスポット径が大きくなってしまう。
【0050】
図4は、レーザ光が入射角度0度でレンズ面R1を透過する場合の反射率の波長依存特性を示すグラフである。図4は、横軸にレンズ面R1に対する入射するレーザ光の波長帯域が示されており、縦軸にレンズ面R1の反射率が示されている。なお、図4は、図3(a)、(b)に示したグラフと同等のグラフである。図4のグラフに示すような特性を有する反射防止膜R1aを設計すると、図3(a)、(b)のグラフに示すようなBD光における入射角度と反射率の特性が得られる。また、逆に、図3(a)、(b)に示すような特性を有する反射防止膜R1aを設計すると、図4に示すグラフの特性が得られる。
【0051】
実施例1の場合、反射率が極小となる波長は、略740nmである。すなわち、このような特性を持つ反射防止膜R1aが形成されたレンズ面R1を透過するBD光の反射率が極小となる入射角度は、55度となる。
【0052】
また、実施例2の場合、反射率が極小となる波長は、略860nmである。すなわち、このような特性を持つ反射防止膜R1aが形成されたレンズ面R1を透過するBD光の反射率が極小となる入射角度は、60度となる。また、比較例1の場合、反射率が極小となる波長は、略680nmである。すなわち、このような特性を持つ反射防止膜R1aが形成されたレンズ面R1を透過するBD光の反射率が極小となる入射角度は、50度となる。
【0053】
図5(a)は、レンズ面R2におけるBD光(波長405nm)の入射角度と反射率の特性を示したグラフである。図5(a)は、横軸にレンズ面R2に対するBD光の入射角度が示されており、縦軸にレンズ面R2の反射率が示されている。なお、図5(b)は、図5(a)の横軸の入射角度を図2(b)に示した瞳座標Pyに置き換えて示されたものであり、図5(a)と同等のグラフである。
【0054】
図5(a)、(b)には、比較例2として、レンズ面R2の中央部付近を透過するBD光の反射率が、略12%程度であり、レンズ面R2の周辺部を透過するBD光の反射率が、略5%程度の反射防止膜R2aが示されている。比較例2の場合、反射率が極小となる入射角度は、30度である。この場合、図5(b)に示すように、瞳座標Pyにすると、0.9のときに、反射率が極小となる。比較例2では、実施例1、2と同様に、BD光の最外角に近い領域の透過光量が大きくなり、中央付近の領域の透過光量が大きく減衰されることとなる。したがって、スポット径を小さく絞ることができる。
【0055】
また、図5(a)、(b)には、実施例3として、レンズ面R2を透過するBD光の反射率が、有効径全面にわたって5%以下である反射防止膜R2aが示されている。実施例3の場合、最大の反射率は、略4%であり、最小の反射率は、略1.5%である。反射率が極小となる入射角度は、比較例2と同様に30度である。このように、最大の反射率と最小の反射率の差は、非常に小さい。したがって、実施例3の場合、スポット径を絞る作用は略発生しない。
【0056】
本願の発明者らは、上記の実施例1、2、比較例1の反射防止膜R1a(反射率が極小となる入射角度=50度、55度、60度)とともに、それぞれ、入射角度が40度、65度のときに反射率が極小となる反射防止膜R1aを設計し、上記の比較例2の反射防止膜R2aと組み合わせて、それぞれの場合のBD上におけるスポット径をシミュレーションにより求めた。
【0057】
図6は、スポット径のシミュレーション結果を示すグラフである。図6において、横軸には、BD光の波長帯域において、反射防止膜R1aの反射率が極小となるBD光の入射角度(以下、単に「ボトム角度」という)が示されており、縦軸には、BD上におけるスポット径が示されている。
【0058】
ボトム角度が40度のとき、BD上におけるスポット径は、略0.388μmであり、ボトム角度が50度のとき、BD上におけるスポット径は、略0.386μmである。これらのスポット径は、BDに用いる場合に好適なスポット径の上限値0.385を上回っている。
【0059】
また、ボトム角度が55度になると、BD上におけるスポット径は、略0.384μmとなる。さらに、ボトム角度が60度、65度のとき、BD上におけるスポット径は、略0.382μmとなる。このように、55度以上のような非常に入射角度が大きい場合においても、ボトム角度が大きくなるにつれて、スポット径が小さくなる傾向がある。このシミュレーションにおける対物レンズRの最大接線角度は、67.7度であるため、70度のときのスポット径のシミュレーション結果はないが、上記の傾向から、ボトム角度が65度のときよりも70度のときの方が、スポット径が小さくなるものと想定される。
【0060】
上述の如く、入射角度70度は、瞳座標Py=1に対応し、BD光の有効径の最外角に略対応する。したがって、ボトム角度が、55度以上であって、且つ、ボトム角度がBD光の有効径の最外角に対応する70度以下であれば、BD上におけるスポット径は、BDに用いる場合に好適なスポット径の上限値0.365を下回ることがわかる。なお、入射角度が70度以上でレンズ面R1に入射する光は、BD光の有効径よりも大きくなるため、不要な光である。
【0061】
実施例1と実施例2と比較例1の場合におけるスポット径の大きさと対物レンズRの透過率の関係を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
表5に示すように、実施例1のボトム角度が55度のとき、スポット径は、略0.384μmであり、対物レンズRの透過率は、82.7%である。また、実施例2のボトム角度が60度のとき、スポット径は、略0.382μmであり、対物レンズRの透過率は、83.5%である。また、比較例1のボトム角度が50度のとき、スポット径は、0.386μmであり、対物レンズRの透過率は、83.9%である。このように、ボトム角度を大きくしても、対物レンズRの透過率は略低下せずに、スポット径が小さくなることがわかる。
【0064】
以上のことから、BD光の波長400〜440nmに対する反射率が極小となる入射角度が55度以上であって70度以下となるように反射防止膜R1aがレンズ面R1に形成されることにより、対物レンズRの透過率をさほど損ねずに、BD上におけるスポット径を、BDに用いる場合に好適なスポット径の上限値0.385以下に収めることができる

【0065】
このように反射防止膜R1aのボトム角度を設定すると、透過率を損ねずに、スポット径を絞ることができるため、レンズ面R2の反射率をある程度小さくしても、スポット径を小さく保つことができる。したがって、ボトム角度を大きくするに応じて、レンズ面R2(反射防止膜R2a)の反射率を下げることにより、スポット径を小さく保ちつつ、透過光量を向上させることができる。また、透過率の向上が必要のない場合は、レンズ面R2(反射防止膜R2a)の反射率をそのままとすることで、スポット径をより小さく絞ることができる。このように、ボトム角度を大きくすると、透過率が略低下せずに、スポット径が小さくなるため、反射防止膜R2aの反射率を適宜調整することにより、目的に応じて、より好適なスポット径、または透過率を得ることができる。
【0066】
ここで、上述の如く、スポット径は、再生信号のジッタの関係から、できるだけ小さい方が望ましい。他方、対物レンズRの透過率は、光ピックアップ装置に搭載される光検出器が検出する再生信号の出力がBDからの反射光の強度に比例するため、ある程度大きい方が望ましい。したがって、スポット径と透過光量は、再生信号のジッタによる影響と再生信号の出力強度とのバランスを考慮して設計する必要がある。光検出器からの再生信号の強度が小さくなると、再生信号のSN比が劣化し、BDに対する記録または再生処理に影響を及ぼす惧れがある。
【0067】
これらの関係から、特に、BDに対して記録または再生を行う場合、対物レンズRの透過率は、85%以上であることが望ましい。
【0068】
そこで、本願発明者らは、ボトム角度が55度以上から70度以下となるように形成されたレンズ面R1の反射防止膜R1aに加え、所定の最大反射率を有するレンズ面R2の反射防止膜R2aを複数設計し、対物レンズRの透過率が85%以上を確保できるか否かをシミュレーションにより検証した。
【0069】
各シミュレーションに用いた対物レンズRの光源側のレンズ面R1、BD側のレンズ面R2の形状は、上記同様に式(1)、表2ないし表4で示される。
【0070】
上記の比較例2(レンズ面R2の最大反射率=12%)とともに、それぞれ、レンズ面R2の最大反射率が0%、5%、8%である反射防止膜R2aを設計し、それぞれの場合における対物レンズRの透過率をシミュレーションにより求めた。
【0071】
図7は、レンズ面R1のボトム角度が60度である実施例2を組み合わせたときにおけるレンズ面R2の最大反射率と対物レンズRの透過率の関係を示したグラフである。図7は、横軸にレンズ面R2の最大反射率が示されており、縦軸に対物レンズRの透過率が示されている。
【0072】
レンズ面R2の最大反射率が0%のとき、対物レンズRの透過率は、略89%であり、レンズ面R2の最大反射率が5%のとき、対物レンズRの透過率は、略88%である。これらの対物レンズRの透過率は、BDに用いる場合に好適な透過率の下限値85%よりも上回る。
【0073】
また、レンズ面R2の最大反射率が8%になると、対物レンズRの透過率は、略84.5%となる。さらに、レンズ面R2の最大反射率が12%になると、再生信号の出力は、略83%となる。したがって、レンズ面R2の最大反射率が5%を超えると、対物レンズRの透過率は、BDに用いる場合に好適な対物レンズRの透過率の下限値85%よりも下回る。
【0074】
以上のことから、レンズ面R1を上記のように構成することに加え、レンズ面R2の最大反射率を5%以下に抑えることにより、BDに用いる場合に好適な対物レンズRの透過率の下限値85%以上にすることができることがわかる。なお、ここでは、レンズ面R1のボトム角度が60度であるときの例のみを示したが、上述のように、レンズ面R1のボトム角度が55度、あるいは、60度よりも大きくても、対物レンズRの透過率は略変わらない。したがって、レンズ面R1のボトム角度が55度以上であって70度以下の範囲において、レンズ面R2の最大反射率を5%以下に抑えることにより、対物レンズRの透過率を、下限値85%以上とすることができることがわかる。
【0075】
比較例2と実施例3の場合におけるスポット径と対物レンズRの透過率の関係を表6に示す。
【0076】
【表6】

【0077】
表6に示すように、レンズ面R1にボトム角度が60度である実施例2の反射防止膜R1aが形成され、レンズ面R2に最大反射率が略12%である比較例2の反射防止膜R2aが形成されている場合、スポット径は、略0.382μmであり、対物レンズRの透過率は、83.5%である。また、レンズ面R1に実施例2の反射防止膜R1aが形成され、レンズ面R2に最大反射率が略4%である実施例3の反射防止膜R2aが形成されている場合、スポット径は、略0.384μmであり、対物レンズRの透過率は、87.9%である。
【0078】
レンズ面R1にボトム角度が55度である実施例1の反射防止膜R1aが形成され、レンズ面R2に最大反射率が略12%である比較例2の反射防止膜R2aが形成されている場合、スポット径は、略0.3837μmであり、対物レンズRの透過率は、82.7%である。また、レンズ面R1に実施例1の反射防止膜R1aが形成され、レンズ面R2に最大反射率が略4%である実施例3の反射防止膜R2aが形成されている場合、スポット径は、略0.385μmであり、対物レンズRの透過率は、87.7%である。
【0079】
このように、ボトム角度が大きい反射防止膜R1aが形成されたレンズ面R1に、最大反射率が低く抑えられた反射防止膜R2aが形成されたレンズ面R2を組み合わせることによって、スポット径をBDに用いる場合に好適なスポット径の上限値0.385以下に収めつつ、且つ、対物レンズRの透過率をBDに用いる場合に好適な対物レンズRの透過率の下限値85%以上に保たせることができることがわかる。
【0080】
<対物レンズの効果>
本実施の形態による対物レンズによれば、以下の効果が奏され得る。
【0081】
BD光の波長400〜440nmに対する反射率が極小となる入射角度が55度以上であって70度以下となるように反射防止膜R1aがレンズ面R1に形成されることにより
、対物レンズRの透過率をさほど損ねずに、BD上におけるスポット径を、BDに用いる場合に好適なスポット径の上限値0.385以下に収めることができる。
【0082】
また、ボトム角度を大きくすると、透過率が略低下せずに、スポット径が小さくなるため、反射防止膜R2aの反射率を下げることにより、スポット径を小さく保ちつつ、透過光量を向上させることができる。
【0083】
さらに、最大反射率を5%以下に抑えるように反射防止膜R2aが形成されたレンズ面R2を組み合わせることにより、対物レンズRの透過率を、BDに用いる場合に好適な対物レンズRの透過率の下限値85%以上に保つことができる。
【0084】
<光ピックアップ装置>
図8に、上記の対物レンズRを搭載する光ピックアップ装置100の光学系(BD用の光学系)の構成を例示する。
【0085】
BD用の光学系は、半導体レーザ101と、回折格子102と、偏光ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ104と、コリメータレンズアクチュエータ105と、立ち上げミラー106と、λ/4板107と、対物レンズ108と、アナモレンズ109と、光検出器110と、FMD(Front Monitor Diode)111から構成されている。
【0086】
半導体レーザ101は、波長400〜440nm程度の青色レーザ光を出力する。回折格子102は、半導体レーザ101から出射されたレーザ光をメインビームと2つのサブビームに分割する。偏光ビームスプリッタ103は、回折格子102側から入射されたレーザ光を反射および透過する。なお、半導体レーザ101は、出射レーザ光の偏光方向が偏光ビームスプリッタ103に対してS偏光となる方向からややずれるように配置されている。これにより、回折格子102を透過したレーザ光は、たとえば、95%が偏光ビームスプリッタ103により反射され、残り5%が偏光ビームスプリッタ103を透過する。
【0087】
コリメータレンズ104は、偏光ビームスプリッタ103によって反射されたレーザ光を平行光に変換する。コリメータレンズアクチュエータ105は、コリメータレンズ104をレーザ光の光軸方向に駆動する。なお、コリメータレンズ104とコリメータレンズアクチュエータ105は、収差補正手段として機能する。
【0088】
立ち上げミラー106は、コリメータレンズ104を介して入射されたレーザ光を対物レンズR8に向かう方向に反射する。λ/4板107は、立ち上げミラー106によって反射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスク(BD)からの反射光を、ディスクへ向かうときの偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は偏光ビームスプリッタ103を透過して光検出器110へと導かれる。
【0089】
対物レンズ108は、樹脂材料により射出成形にて形成されており、上記実施の形態の対物レンズRのように、光源側に反射防止膜raが形成されたレンズ面108a、ディスク(BD)側に反射防止膜rbが形成されたレンズ面108bが形成されている。反射防止膜raは、BD光の波長400〜440nmに対する反射率が極小となる入射角度が55度以上であって70度以下になるように設計されている。また、反射防止膜rbは、最大反射率が5%以内に抑えられるように設計されている。また、対物レンズ108は、前記光源側がホルダ121に載置されて装着されている。このホルダ121は、対物レンズアクチュエータ122によって、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。なお、対物レンズ108におけるBD光の開口数は0.85である。
【0090】
アナモレンズ109は、ディスクによって反射されたレーザ光を光検出器110上に集束させる。光検出器110は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。なお、本実施の形態では、フォーカスエラー信号の生成手法として非点収差法が採用され、トラッキングエラー信号の生成手法としてDPP(Differential Push Pull)法が採用されている。光検出器110は、これらの手法に従ってフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を導出するためのセンサーパターンを有している。
【0091】
FMD111は、偏光ビームスプリッタ103を透過したレーザ光を受光して、受光光量に応じた信号を出力する。FMD111からの信号は、半導体レーザ101のパワー制御に用いられる。
【0092】
本実施の形態の光ピックアップ装置によれば、上記対物レンズの実施の形態と略同様の効果が奏され得る。
【0093】
上記構成において、光ピックアップ装置(光学装置)は、上記対物レンズと、その対物レンズを通過する構成により結像される像を制御する制御系(コリメータレンズアクチュエータ105、対物レンズアクチュエータ122、光検出器110等)を備えていることとなる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0095】
たとえば、上記実施の形態では、レンズ面R1のボトム角度を大きくし、且つ、レンズ面R2の反射率を下げることによって透過率の向上を図ったが、レンズ面R1の反射率を下げること、または、レンズ面R1とレンズ面R2の両方の反射率を下げることによって、透過率の向上を図っても良い。たとえば、レンズ面R1の反射率を下げる場合、上記実施の形態では、レンズ面R1の最大反射率が略20%程度であったが、対物レンズRの透過率が85%以上を保つことができる範囲で、レンズ面R1の最大反射率を下げれば良い。
【0096】
また、上記実施の形態では、レンズ面R1およびレンズ面R2の両方に、反射防止膜R1a、R2aが設けられたが、レンズ面R1のみに設けられても良い。
【0097】
また、上記実施の形態では、図3、図6に示すように、波長が405nmにおける反射率特性での反射防止膜R1a、R2aの設計例が示されたが、BD光として用いられ得る波長400〜440nm以内の範囲であれば、どのような波長における反射率特性で反射防止膜R1a、R2aが設計されても良い。また、図4に示す反射率の波長依存特性から反射防止膜R1aが設計されても良い。この場合、BD光におけるボトム角度が55度に対応するように、入射角度が0度でレンズ面R1を光が透過する場合の反射率が、波長が740nm以上において極小となるように反射防止膜R1aが設計されれば良い。
【0098】
また、上記実施の形態では、単一の対物レンズRが示されたが、複数のレンズからなる複合レンズが用いられても良い。
【0099】
また、上記実施の形態では、BD用の対物レンズが示されたが、当該レンズは、BDと、CD/DVDのうちの1つまたは2つに対して互換性を持つ対物レンズに本発明を適用することも可能である。また、同様に、上記実施の形態では、BD用の光ピックアップ装置の構成が示されたが、BDと、CD/DVDのうち1つまたは2つに対して互換型の光
ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。
【0100】
また、上記実施の形態では、最大接線角度が67.7度であるレンズ面R1が示されたが、レンズ面R1の最大接線角度は、55度以上70度以下であって、BD光を適正に集光可能であれば、どのような角度であっても良い。同様に、レンズ面R2の最大接線角度は、最大反射率が5%以下に抑えられれば、どのような角度であっても良い。
【0101】
また、上記実施の形態では、所定の厚みの二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムの複数層構造の反射防止膜R1a、R2aが示されたが、本発明に示す特性を有すれば、反射防止膜は、どのような厚み、層数、素材であっても良い。また、上記実施の形態では、対物レンズRは、樹脂製のレンズが用いられたが、ガラス製のレンズが用いられても良い。
【0102】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
R … 対物レンズ
R1 … レンズ面(レンズ部、第1レンズ面)
R1a… 反射防止膜(第1反射防止膜)
R2 … レンズ面(レンズ部、第2レンズ面)
R2a… 反射防止膜(第2反射防止膜)
100 … 光ピックアップ装置
108 … 対物レンズ
108a… レンズ面(レンズ部、第1レンズ面)
108b… レンズ面(レンズ部、第2レンズ面)
112 … コリメータレンズ
ra … 反射防止膜(第1反射防止膜)
rb … 反射防止膜(第2反射防止膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルーレイディスク用のレーザ光が平行光化されて入射する対物レンズにおいて、
前記レーザ光を開口数が0.85でスポット状に集束させるレンズ部と、
前記レンズ部の前記レーザ光の入射側に形成された第1レンズ面と、
前記第1レンズ面に形成された第1反射防止膜と、
を備え、
前記第1反射防止膜は、前記第1レンズ面の法線と前記第1レンズ面の光軸がなす角度が55度以上であって、70度以下のときに前記レーザ光に対する反射率が極小となるよう膜設計がなされている、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズにおいて、
前記第レンズ部の前記レーザ光の出射側に形成された第2レンズ面と、
前記第2レンズ面に形成された第2反射防止膜と、をさらに備える、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の対物レンズにおいて、
前記第2反射防止膜は、前記反射率が前記レーザ光の有効径全面にわたって5%以下である、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項4】
ブルーレイディスクに用いるレーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズと、
前記コリメータレンズによって平行光に変換された前記レーザ光が入射される請求項1ないし3の何れか一項に記載の対物レンズと、を有する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114725(P2013−114725A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261609(P2011−261609)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】