説明

対物レンズアクチュエーター

【課題】従来の対物レンズアクチュエーターに最小限の変更を加えて、不要共振周波数が3kHz周辺よりも低い周波数領域にシフトするように改良した対物レンズアクチュエーターを提供する。
【解決手段】対物レンズ1Lを保持したレンズホルダー1eを、ワイヤ保持部材1bの両側部から前方に突き出す複数本の平行なワイヤ1dによって可動に支持させ、レンズホルダー1eに取り付けた制御用コイル1j,1k等とワイヤ1dを電気的に接続すると共に、導通確認用ランド部を有する配線基板1hをワイヤ保持部材1bの後面に取付けて、ワイヤ1dの後端を配線基板1hに接続固定した対物レンズアクチュエーターにおいて、上記配線基板1hの導通確認用ランド部をスルーホール1tに変更する。スルーホール1tにすることで配線基板1hの剛性を低下させて、不要共振周波数を低い周波数領域にシフトさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエーターに関し、更に詳しくは、不要共振周波数を3kHz周辺よりも低い周波数領域へシフトさせるように改良した対物レンズアクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク記録・再生装置などに搭載される従来の一般的な光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエーターは、対物レンズを保持したレンズホルダーを、ワイヤ保持部材の両側部から前方に突き出す複数本の平行なワイヤによって可動に支持させ、レンズホルダーに取り付けた制御用コイルとワイヤを電気的に接続すると共に、導通確認用ランド部を有する配線基板をワイヤ保持部材の後面に取付けて、ワイヤの後端を配線基板に接続固定した構造を有している。
【0003】
このような対物レンズアクチュエーターは、駆動時のフォーカス制御に伴って不要共振が発生するが、この不要共振周波数が3kHz周辺に存在すると、FEカットオフ周波数を指定することが困難になる。そのため、不要共振周波数を3kHz周辺よりも低い周波数領域へシフトさせることが望まれている。
【0004】
これに対し、レンズを有するアクチュエーターと、ホルダーと、このホルダーに固定された互いに対向する外周片及び該外周片間を橋絡してアクチュエーターを保持する保持片からなる弾性部材とを備えた光学装置において、アクチュエーターの質量が増加して共振周波数が高くなった場合に、上記弾性部材に貫通孔又は凹部を設けることにより、弾性部材の固有振動数を下げて共振周波数をもとに戻すようにした光学装置が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、ベースと、対物レンズを保持するレンズホルダーと、レンズホルダーに一方の端部を固定されてレンズホルダーを揺動可能に支持する複数本の棒状弾性支持部材とを備えた対物レンズアクチュエーターにおいて、ベースに対して不動なリジッドプリント基板と、このリジッドプリント基板に固定されるフレキシブルプリント基板を設け、上記棒状弾性支持部材のうち一部の支持部材は他方の端部をリジッドプリント基板に固定し、残りの支持部材は他方の端部をフレキシブルプリント基板に固定することによって、不要共振を低減させたものも知られている(特許文献2)。
【0006】
更に、弾性及び導電性を有する材料によって平板状に形成されて、ホルダ支持部材の外周部に固定される固定部と、支持ワイヤの端部が固定されて該支持ワイヤと共働してレンズホルダを二軸方向に変位可能に支持する傾斜した変位共働部とを有する変位共働部材を備え、傾斜した変位共働部によって共振周波数を下げるようにした対物レンズ駆動装置も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭62−39226号公報
【特許文献2】特開2009−211771号公報
【特許文献3】特開2001−34975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の光学装置は、アクチュエーターを保持する保持片と外周片とからなる特殊な形状の弾性部材に貫通孔又は凹部を設けることにより、弾性部材の固有振動数を下げて共振周波数を所定値に設定するものであるから、この特許文献1の技術は、そのような弾性部材が存在しない従来の対物レンズアクチュエーターには適用できない。
【0009】
また、前記特許文献2の対物レンズ駆動装置は、不要共振を低減させるものではあるが、棒状弾性支持部材の他方の端部の接続固定を、リジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板を選択して行う必要があるので、組立作業が面倒であり、また、棒状弾性支持部材を一方の基板に接続固定する箇所では他方の基板が邪魔にならないようにする必要があるので、リジッドプリント基板とフレキシブルプリント基板の配置関係や形状も複雑化するという不都合があった。
【0010】
更に、前記特許文献3の対物レンズ駆動装置は、ホルダ支持部材の外周部に固定される固定部と、支持ワイヤの端部が固定されて該支持ワイヤと共働してレンズホルダを二軸方向に変位可能に支持する傾斜した変位共働部とを有する特殊な形状の変位共働部材を用いて、共振周波数を下げるものであるから、従来の対物レンズアクチュエーターにおいて、その配線基板を変位共働部材として兼用することにより特許文献3の技術を適用するとしても、配線基板を新たに設計し直すことが必要になり、大幅なコストアップを招くという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、従来の対物レンズアクチュエーターに最小限の変更を加えるだけで、不要共振周波数が3kHz周辺よりも低い周波数領域にシフトするように改良した対物レンズアクチュエーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る対物レンズアクチュエーターは、対物レンズを保持したレンズホルダーを、ワイヤ保持部材の両側部から前方に突き出す複数本の平行なワイヤによって可動に支持させ、レンズホルダーに取り付けた制御用コイルとワイヤを電気的に接続すると共に、導通確認用ランド部を有する配線基板をワイヤ保持部材の後面に取付けて、ワイヤの後端を配線基板に接続固定した対物レンズアクチュエーターにおいて、上記配線基板の導通確認用ランド部をスルーホールにしたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の対物レンズアクチュエーターにおいては、上記配線基板に更に貫通孔を形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の対物レンズアクチュエーターのように、ワイヤの後端が接続固定された配線基板の導通確認用ランド部をスルーホールにすると、このスルーホールによって配線基板の剛性が低下し、固有振動数が下がるため、不要共振周波数が低い周波数領域にシフトされる。後述の実施形態に係る対物レンズアクチュエーターのように、配線基板の六つの導通確認用ランド部を全てスルーホールにした場合は、実際に不要共振周波数が200Hz程度下がることが確認されている。
【0015】
更に不要共振周波数を下げたい場合は、配線基板の配線パターンが形成されていない箇所に貫通孔を適当個数形成し、配線基板の剛性をもっと低下させるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る対物レンズアクチュエーターの斜視図である。
【図2】同対物レンズアクチュエーターを搭載した光ピックアップ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る対物レンズアクチュエーターの具体的な実施形態を詳細に説明する。
【0018】
この実施形態の対物レンズアクチュエーター10は、図1に示すように、アクチュエータベース1aの上にワイヤ保持部材1bが接着剤で固着されている。このワイヤ保持部材1bの両側にはゲル充填部1cが三カ所ずつ設けられており、これらのゲル充填部1cを通って前方へ突き出す片側3本(両側で6本)のワイヤ1dによって、長方形の箱型のレンズホルダー1eが支持されている。
【0019】
即ち、このレンズホルダー1eの左右側壁部には、小基板1fがそれぞれ貼着されており、この小基板1fの端子部に各ワイヤ1dの先端を半田付けすることによって、レンズホルダー1eが可動状態で各ワイヤ1dにより支持されている。そして、各ワイヤ1dの後端部は、ワイヤ保持部材1bの両側の各ゲル充填部1cを貫通し、ワイヤ保持部材1bの後面1gに接着剤で接着された配線基板1hの両側の6つの端子部に半田1iで接続固定されている。このゲル充填部1cは不要な共振を減衰させるために設けられたもので、例えばシリコーン系のゲル剤等が充填されている。
【0020】
上記のレンズホルダー1eは中央に対物レンズ1Lを保持したもので、その長方形の外周壁の内側にはフォーカス制御用コイル1jが嵌め込まれて接着されており、また、外周壁の前後外壁面にはトラッキング制御用コイル1kが貼着されている。そして、このレンズホルダー1eの下面には、チルト制御用2連コイル(図に表れていない)がヨーク遊挿口(図に表れていない)を取り囲むように貼着されており、このヨーク遊挿口には、アクチュエータベース1aから立ち上がる左右のヨーク(図に表れていない)が下方から遊挿されている。これらのコイルはレンズホルダー1eの左右側壁の小基板1fに接続されており、この小基板1fを中継して前記のワイヤ7eに電気的に接続されている。また、レンズホルダー1eの前後には一組のマグネット1m,1mが配置され、アクチュエータベース1aから立ち上がる取付片1n,1nに取付固定されている。
【0021】
ワイヤ保持部材1bの後面1gには、配線基板1hの位置決めを行う一対の突起1p,1pが突設されており、これらの突起1p,1pに配線基板1hの一対の位置決め用の孔1q,1qを嵌合させることによって、配線基板1hがワイヤ保持部材1bの後面1gに位置決めされて接着剤で取付けられている。この配線基板1hの下端にはフレキシブル配線板1rが水平に配置されており、配線基板1hの下端部に形成された入力端子部と、フレキシブル配線板1rの先端部に形成された出力端子部が、ブリッジ半田1sで接続されている。従って、フレキシブル配線板1r、配線基板1h、各ワイヤ1d、小基板1dを通じて、前記の各制御用コイルに給電されるようになっている。尚、フレキシブル配線板1rは、配線基板1hに半田付けするときに、アクチュエーターベース1aの後端部に形成された位置決め支持部1uにより位置決めされて支持されるため、半田付け作業を正確且つ容易に行うことができるようになっている。
【0022】
上記の配線基板1hは、ガラス−エポキシ樹脂等からなる剛性の高い二層基板であって、その表面には各ワイヤ1dへの給電用配線パターン(図示せず)が形成されて絶縁皮膜で被覆されており、裏面には各ワイヤ1dに通じる導通確認用の配線パターン(図示せず)が形成されて絶縁皮膜で被覆されている。そして、この配線基板1hには、導通確認用の配線パターンに通じる六つの導通確認用のスルーホール1tが左右対称に配置されて形成されており、これらのスルーホール1tのドーナツ形のランド部にテスターのプルーブを当てて各制御用コイルへの導通、動作確認を行うようにしている。
【0023】
ガラス−エポキシ樹脂等からなる配線基板は、剛性が高く、固有振動数が大きいため、アクチュエーターの動作時に3kHz周辺の不要共振を発生し、FEカットオフ周波数を指定することが困難になる恐れが多分にあるが、この配線基板1hのように導通確認用のスルーホール1tが形成されていると、配線基板1hの剛性が低下して固有振動数が下がるため、不要共振周波数が低い周波数領域にシフトされることになる。不要共振周波数のシフト幅は、スルーホール1tの個数、内径の大きさ、配置など変更することによって調整可能である。従って、3kHz周辺の不要共振周波数帯を避けて、FEカットオフ周波数を指定することができる。
【0024】
また、必要とあらば、配線基板1hの配線パターンが形成されていない箇所に貫通孔を適当個数形成することによって、配線基板1hの剛性を更に低下させ、不要共振周波数を更に下げるようにしてもよい。
【0025】
上記構成の対物レンズアクチュエーター10を搭載した図2に示す光ピックアップ装置は、光ディスク記録・再生装置の2本のガイド軸に沿って光ディスクの回転テーブルの方へ移動しながら、レーザーダイオード2から発せられたレーザービームを回折格子3で3ビームに回折し、ビームスプリッター4を透過させて立上げミラーで上方に反射させ、対物レンズ1Lで集光して光ディスクに照射し、光ディスクで反射した光を対物レンズ1Lを通して立上げミラーで反射させ、更にビームスプリッター4で反射させてセンサーレンズ5を透過させ、光検出器6で検出することによって記録・再生を行うようになっている。このとき、対物レンズアクチュエーター10のフォーカス制御用コイル、トラッキング制御用コイル、チルト制御用コイルが通電制御され、前記マグネット間の磁界によるローレンツ力を受けて、対物レンズ1Lを保持したレンズホルダー1eが動作制御されて、フォーカス制御、トラッキング制御、チルト制御が行われ、主にフォーカス制御に伴って不要共振が発生するが、前述したように、対物レンズアクチュエーター10の配線基板1hの剛性を導通確認用のスルーホール1tによって低下させ、不要共振周波数を3kHzよりも低い周波数領域にシフトさせているので、FEカットオフ周波数の指定が妨げられることはない。
【符号の説明】
【0026】
10 対物レンズアクチュエーター
1b ワイヤ保持部材
1d ワイヤ
1e レンズホルダー
1g ワイヤ保持部材の後面
1h 配線基板
1j フォーカス制御用コイル
1k トラッキング制御用コイル
1L 対物レンズ
1t スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを保持したレンズホルダーを、ワイヤ保持部材の両側部から前方に突き出す複数本の平行なワイヤによって可動に支持させ、レンズホルダーに取り付けた制御用コイルとワイヤを電気的に接続すると共に、導通確認用ランド部を有する配線基板をワイヤ保持部材の後面に取付けて、ワイヤの後端を配線基板に接続固定した対物レンズアクチュエーターにおいて、
上記配線基板の導通確認用ランド部をスルーホールにしたことを特徴とする対物レンズアクチュエーター。
【請求項2】
上記配線基板に更に貫通孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズアクチュエーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−155774(P2012−155774A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11308(P2011−11308)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】