説明

対物レンズアクチュエータ及び光ディスク装置

【課題】簡単な構成で光ディスクの反りや面振れ等によって発生するチルトを精度よく補正できる対物レンズアクチュエータおよびそれを用いた光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る対物レンズアクチュエータは、レンズホルダの対物レンズと反対側の端部にあってレンズホルダのラジアルチルト軸の周りに円筒状に配置されたラジアルチルト磁石と、固定部に固定されラジアルチルト磁石を間に挟んで配置されてレンズホルダをラジアルチルト軸回りに回転駆動する一対のラジアルチルトコイルとを備え、電磁力による偶力によってラジアルチルト磁石を回転させ対物レンズを傾けてチルト補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズアクチュエータ及び光ディスク装置に係り、特に、光ピックアップの対物レンズを3軸駆動する対物レンズアクチュエータ及びそれを内蔵する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)規格やDVD(Digital Versatile Disk)規格と呼ばれる複数種類の記録密度の光ディスクが既に広く普及しているが、近年、青紫色の波長のレーザ光を用いて情報を記録することにより、さらに記録密度が高められた超高密度光ディスクであるBD(Blu-ray Disc)やHD DVD(High Definition Digital Versatile Disk)も実用化されている。
【0003】
光ディスクの情報を再生したり光ディスクに情報を記録する光ディスク装置は、レーザ光の焦点を光ディスク上の特定の情報記録面に正確に合わせることによって情報の再生や記録を行っている。この位置合わせは、レーザ光を集光するための対物レンズと光ディスクの相対位置或いは相対姿勢角を、対物レンズアクチュエータを用いて制御することによって実現している。
【0004】
具体的には、トラッキング制御およびフォーカス制御と呼ばれる位置制御と、ラジアルチルト制御と呼ばれる姿勢角制御とをそれぞれサーボ機構を用いて行っている。
【0005】
トラッキング制御は、光ディスクの特定のトラックの中心にレーザ光の焦点が常に位置するように対物レンズの径方向の位置を微調するサーボ制御である。また、フォーカス制御は、レーザ光の焦点が光ディスク上に正確に位置するように対物レンズと光ディスクとの離隔距離を制御するサーボ制御である。
【0006】
ラジアルチルト制御は、光ディスクの反射面がレーザ光の光軸に対して垂直な面から若干ずれてラジアル方向に傾斜した場合でも、レーザ光が光ディスクの反射面に対して常に垂直に照射されるように、対物レンズの姿勢角を光ディスクの径方向(ラジアル方向)に制御するサーボ制御である。
【0007】
これらのサーボ制御の駆動は、一般に、コイルの電流と永久磁石の磁束とによって生じる電磁力によって行われる。このため、対物レンズが装着される可動部とこれを支持する固定部にはコイルと永久磁石が隣接するように適宜配設されている。
【0008】
記録密度が高められた超高密度光ディスクにおいては、対物レンズの光軸と光ディスクの記録面の傾きによって発生するコマ収差が記録再生の信号品位を低下させるため、ラジアルチルト制御の精度が重要な課題となっている。特許文献1には、2つのチルト補正用コイルと2つのチルト補正用マグネットを用いたラジアルチルト補正機構を備えた対物レンズアクチュエータが提案されている。
【0009】
図8は従来の対物レンズアクチュエータを示す図である。この対物レンズアクチュエータ400は2つのチルト補正コイル401が、レンズホルダ402の回転中心を挟んで設けられた2つのチルト補正マグネット403に互いに逆方向の力を与え、レンズホルダ402をチルト方向にひねるように構成されている。これにより、チルト補正マグネット403を保持したレンズホルダ402をチルト方向に回転でき、対物レンズ404の光軸を傾けて光照射角度を調整することが可能となっている。
【特許文献1】特開2004−310966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図8における2つのチルト補正用コイル401と2つのチルト補正用マグネット403を設けたラジアルチルト補正機構では、2つのチルト補正用コイル401と2つのチルト補正用マグネット403のレンズホルダに対する取り付け位置に精度を要する。2つのチルト補正用マグネット403は、レンズホルダ402の回転中心を挟んで配置されるが、取り付け位置がずれた場合には回転中心に対してアンバランスが生じる。
【0011】
回転中心に対してアンバランスが生じると光ディスクの情報記録面の傾きに対して対物レンズの傾きを精度よく追従させることが困難になる。対物レンズアクチュエータのチルト補正の基本的な機能や性能を確保するためには、チルト補正用コイルとチルト補正用マグネットを組み立てる際に簡単に精度よく組み立てられることが望まれている。また、2つのチルト補正用マグネット403の磁極の向きを取り違えると正常に動作しなくなるため、2つのチルト補正用マグネット403の磁極の向きには細心の注意を払って組み立てる必要があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、対物レンズアクチュエータにおいて、簡単な構成で、光ディスクの反りや面振れ等によって発生するチルトを精度よく補正できる対物レンズアクチュエータおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の対物レンズアクチュエータは、トラッキング方向の並進駆動、フォーカス方向の並進駆動、およびラジアルチルト軸回りの回転駆動が可能な対物レンズアクチュエータにおいて、光ディスクの情報記録面上にレーザ光を集光する対物レンズと、端部に対物レンズを有し、中央部に前記対物レンズをフォーカス方向に並進駆動するフォーカスコイル有し、前記フォーカスコイルの側面に前記対物レンズをトラッキング方向に並進駆動する一組のトラッキングコイルを有するレンズホルダと、前記レンズホルダの前記対物レンズと反対側の端部にあって前記レンズホルダのラジアルチルト軸の周りに円筒状に配置されたラジアルチルト磁石と、前記トラッキングコイルに対向する位置に配設されるトラッキング磁石と、前記フォーカスコイルに対向する位置に配設されるフォーカス磁石と、前記トラッキング磁石および前記フォーカス磁石が固定される固定部と、前記固定部に固定され、前記ラジアルチルト磁石を間に挟んで配置されて前記レンズホルダをラジアルチルト軸回りに回転駆動する一対のラジアルチルトコイルと、前記固定部に一端が固定され、他端が前記レンズホルダに固定され、前記レンズホルダを中空に保持するサスペンションワイヤとを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の光ディスク装置は、対物レンズアクチュエータを具備する光ピックアップと、前記対物レンズアクチュエータの駆動を制御する駆動制御部と、記録用データを変調し、レーザ制御信号として前記光ピックアップへ出力する記録処理部とを備え、前記対物レンズアクチュエータは、トラッキング方向の並進駆動、フォーカス方向の並進駆動、およびラジアルチルト軸回りの回転駆動が可能な対物レンズアクチュエータであって、光ディスクの情報記録面上にレーザ光を集光する対物レンズと、端部に対物レンズを有し、中央部に前記対物レンズをフォーカス方向に並進駆動するフォーカスコイル有し、前記フォーカスコイルの側面に前記対物レンズをトラッキング方向に並進駆動する一組のトラッキングコイルを有するレンズホルダと、前記レンズホルダの前記対物レンズと反対側の端部にあって前記レンズホルダのラジアルチルト軸の周りに円筒状に配置されたラジアルチルト磁石と、前記トラッキングコイルに対向する位置に配設されるトラッキング磁石と、前記フォーカスコイルに対向する位置に配設されるフォーカス磁石と、前記トラッキング磁石および前記フォーカス磁石が固定される固定部と、前記固定部に固定され、前記ラジアルチルト磁石を間に挟んで配置されて前記レンズホルダをラジアルチルト軸回りに回転駆動する一対のラジアルチルトコイルと、前記固定部に一端が固定され、他端が前記レンズホルダに固定され、前記レンズホルダを中空に保持するサスペンションワイヤとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る対物レンズアクチュエータおよび光ディスク装置によれば、簡単な構成で、光ディスクの反りや面振れ等によって発生するチルトを精度よく補正でき、信頼性の高い光ディスクの情報の再生および記録をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る対物レンズアクチュエータ、および光ディスク装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る光ディスク装置100は、例えば、CD(Compact Disk)−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disk)−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM(Random Access Memory)及びBD(Blu-ray Disc)等の光ディスク200に対して、情報の記録再生を行なうものである。
【0018】
図1は、本発明による光ディスク装置100の構成例を示したブロック図である。光ディスク装置100は、光ピックアップ50、3軸制御部60(駆動制御部)、再生処理部70、および記録処理部80を備えて構成されている。
【0019】
光ピックアップ50は、光ディスク200に対して情報の記録や再生のためにレーザ光を照射すると供に光ディスク200からの反射光を電気信号に変換し再生信号として出力するものであり、光学系構成品として、半導体レーザ51、コリメートレンズ52、PBS(偏光ビームスプリッタ)53、回折格子及び1/4波長板56、対物レンズ11、集光レンズ54、および光検出器55を備えている。PBS53と回折格子及び1/4波長板56との間にレーザ光の向きを変える立ち上げミラー57を備えている。立ち上げミラー57を用いない構成としても良い。
【0020】
また、光ピックアップ50は、対物レンズ11および回折格子及び1/4波長板56を装着する対物レンズアクチュエータ10を備えており、対物レンズアクチュエータ10によって対物レンズ11および回折格子及び1/4波長板56を3軸制御している。3軸制御部60は、フォーカスエラー信号生成回路61、フォーカス制御回路62、トラッキングエラー信号生成回路63、トラッキング制御回路64、ラジアルチルトエラー信号生成回路65、およびラジアルチルト制御回路66を備えている。
【0021】
3軸制御部60が備えるこれらの回路によって生成される制御信号は、対物レンズアクチュエータ10に出力され、対物レンズ11の位置制御および姿勢角制御を行っている。具体的には、レーザ光の焦点が光ディスク上に正確に位置するように対物レンズと光ディスクとの離隔距離を制御するフォーカス制御、光ディスクの特定のトラックの中心にレーザ光の焦点が常に位置するように対物レンズの径方向の位置を微調するトラッキング制御、および光ディスクの反射面がレーザ光の光軸に対して垂直な面から若干ずれてラジアル方向に傾斜した場合でも、レーザ光が光ディスクの反射面に対して常に垂直に照射されるように、対物レンズの姿勢角を光ディスクの径方向に制御するラジアルチルト制御をそれぞれサーボ制御している。
【0022】
再生処理部70は、光ピックアップ50から出力される信号に対して再生処理を行うものであり、信号処理回路71および復調回路72を備えている。また、記録処理部80は、主に光ディスク200に対する情報の記録を行うものであり、変調回路81、記録再生制御部82、およびレーザ制御回路83を備えている。
【0023】
上記のように構成された光ディスク装置100の動作について説明する。まず、光ディスク200に対する情報記録の動作から説明する。記録処理部80の変調回路81は、所定の変調方式に基づいてホスト、例えばパーソナルコンピュータ本体から提供される記録情報(データシンボル)をチャネルビット系列に変調する。記録情報に対応したチャネルビット系列は、記録再生制御部82に入力される。
【0024】
この記録再生制御部82には、ホストからの記録再生指示(この場合、記録指示)が入力される。記録再生制御部82は、3軸制御部60に制御信号を出力し、目的の記録位置に光ビームが適切に集光されるように対物レンズアクチュエータ10を駆動する。さらに、記録再生制御部82は、チャネルビット系列をレーザ制御回路83に供給する。
【0025】
レーザ制御回路83は、チャネルビット系列をレーザ駆動波形に変換し、半導体レーザ51をパルス駆動させる。この結果、半導体レーザ51は、所望のビット系列に対応した記録用の光ビームを生成する。半導体レーザ51で生成された記録用の光ビームは、コリメートレンズ52で平行光となり、PBS53に入射し、透過する。PBS53を透過した光ビームは、回折格子及び1/4波長板56を透過し、対物レンズ11により光ディスク200の情報記録面に集光される。
【0026】
集光された記録用の光ビームは、3軸制御部60および対物レンズアクチュエータ10によるフォーカス制御、トラッキング制御、およびラジアルチルト制御によって、光ディスク200の情報記録面上に最良の光ビームスポットが得られる状態で維持される。
【0027】
次に、この光ディスク装置100による光ディスク200からの情報の再生について説明する。記録再生制御部82には、ホストからの記録再生指示(この場合、再生指示)が入力される。記録再生制御部82は、ホストからの再生指示に従って、レーザ制御回路83に再生制御信号を出力する。
【0028】
レーザ制御回路83は、再生制御信号に基づいて半導体レーザ51を駆動させ再生用の光ビームを生成する。半導体レーザ51で生成された再生用の光ビームは、コリメートレンズ52で平行光となり、PBS53に入射し透過する。PBS53を透過した光ビームは回折格子及び1/4波長板56を透過し、対物レンズ11により光ディスク200の情報記録面に集光される。
【0029】
集光された再生用の光ビームは、3軸制御部60および対物レンズアクチュエータ10によるフォーカス制御、トラッキング制御、およびラジアルチルト制御によって、光ディスク200の情報記録面上に最良の光ビームスポットが得られる状態で維持される。
【0030】
光ディスク200上に照射された再生用の光ビームは、情報記録面内の反射膜あるいは反射性記録膜によって反射される。反射光は、対物レンズ11を逆方向に透過して再度平行光となり、回折格子及び1/4波長板56を透過した後、入射光に対して垂直な偏光を持つPBS53で反射される。
【0031】
PBS53で反射された光ビームは、集光レンズ54により収束光となり、光検出器55に入射される。光検出器55は、例えば、4分割のフォトディテクタから構成されている。光検出器55に入射した光束は、光電変換されて電気信号となり増幅される。増幅された信号は、再生処理部70の信号処理回路71において等化処理された後2値化され、復調回路72に送られる。復調回路72では所定の変調方式に対応した復調動作が施されて、再生データが出力される。
【0032】
一方、光検出器55から出力される電気信号の一部は3軸制御部60へ入力され、フォーカスエラー信号生成回路61によりフォーカスエラー信号が生成される。同様に、光検出器55から出力される電気信号の一部は3軸制御部60へ入力され、トラッキングエラー信号生成回路63およびラジアルチルトエラー回路66により夫々トラッキングエラー信号およびラジアルチルトエラー信号が生成される。
【0033】
フォーカス制御回路62は、フォーカスエラー信号に基づき対物レンズアクチュエータ10を制御し、ビームスポットのフォーカスを制御する。トラッキング制御回路64は、トラッキングエラー信号に基づき対物レンズアクチュエータ10を制御し、ビームスポットのトラッキングを制御する。また、ラジアルチルト制御回路66は、ラジアルチルトエラー信号に基づき対物レンズアクチュエータ10を制御し、ビームスポットのラジアルチルトを制御する。
【0034】
このように、対物レンズアクチュエータ10は、3軸制御部60からの制御信号に基づいて対物レンズアクチュエータ10に搭載されている対物レンズ11の位置および姿勢角を制御し、光ディスク200に対するビームスポットの位置が最適となるように維持している。
【0035】
次に、対物レンズアクチュエータ10の第1の実施形態の構造および動作について説明する。図2、図3及び図4は、対物レンズアクチュエータ10の全体構造を示す外観図である。図2は、対物レンズアクチュエータ10を光ディスク側から見た平面図である。図3は、図2におけるAA断面図であり、対物レンズアクチュエータ10を側面から見た図である。図4は、図2におけるBB断面図であり、対物レンズアクチュエータ10を図3と異なる方向から見た側面図である。
【0036】
この対物レンズアクチュエータ10は、対物レンズ11を保持するレンズホルダ33を含む可動部34を、光ディスク200の情報記録面に対して、フォーカス方向に並進駆動、トラッキング方向に並進駆動、及びラジアルチルト軸40の回り(ラジアルチルト方向)に回転駆動を夫々独立に行う機能を有している。
【0037】
図2に示すように、可動部34を支える固定部30は、ヨークベース35、ヨークベース35の後方側に配置され略直方体形状をなすゲルホルダ36、ゲルホルダ36のさらに後方側に固定される固定端回路基板37によって構成される。図2において、平板状に形成されたヨークベース35は、光ディスク200の情報記録面に平行になるように設置されている。
【0038】
ゲルホルダ36には、その両側に開口部36a、36bが形成されている。この開口部36aの中には、2本のサスペンションワイヤ38a、38bにダンピングを与える為のゲル剤が充填されており、開口部36bの中には、3本のサスペンションワイヤ39a、39bにダンピングを与える為のゲル剤が充填されている。また、このゲルホルダ36の後方には、固定端回路基板37が取着されている。この固定端回路基板37は、3軸制御部60を構成するフォーカス制御回路62、トラッキング制御回路64及びラジアルチルト制御回路66の各出力端にそれぞれ接続されている。
【0039】
固定端回路基板37には、ゲルホルダ36の開口部36aに対応する位置に、弾性線状体である2本のサスペンションワイヤ38a,38bの一端部が、フォーカス方向に縦に並んで固定されている。これらサスペンションワイヤ38a,38bは、導電性材料で形成され、その他端部は、ゲルホルダ36の開口部36aを貫通して、ヨークベース35のほぼ中央部にまで達し、可動部34に固定されている。
【0040】
また、上記固定端回路基板37には、ゲルホルダ36の開口部36bに対応する位置に、2本のサスペンションワイヤ39a、39bの一端部が、フォーカス方向に縦に並んで固定されている。これらサスペンションワイヤ39a、39bは、導電性材料で形成され、その他端部は、ゲルホルダ36の開口部36bを挿通して、ヨークベース35のほぼ中央部にまで達し、可動部34に固定されている。
【0041】
2本のサスペンションワイヤ38a、38bの他端部と、2本のサスペンションワイヤ39a、39bの他端部との間に、可動部34が支持されている。可動部34は、対物レンズ11を保持したレンズホルダ33が取着されている。また、レンズホルダ33の内部には、回折格子及び1/4波長板56が配設されている。
【0042】
サスペンションワイヤ38a、38bの他端部はレンズホルダ33に接続されている。同様にサスペンションワイヤ39a、39bの他端部はレンズホルダ33に接続されている。これらの接続によって可動部34は、固定部30に対して弾性的に中空に支持されており、トラッキング方向およびフォーカス方向の並進移動、並びにラジアルチルト軸40回りの回転が可能となっている。
【0043】
ゲルホルダ36の開口部36a、36bの内部には、例えばシリコーン系ゲル等の粘弾性材料が充填されており、サスペンションワイヤ38a、38b及び39a、39bに対して、高い減衰特性を与える構造となっている。
【0044】
レンズホルダ33の中央部には、1組のトラッキングコイル41a、41bとフォーカスコイル42が設けられている。フォーカスコイル42はその3つの側面をレンズホルダの中央の窓部の内側に接着固定されている。トラッキングコイル41a、41bはフォーカスコイル42のレンズホルダ33に接着されていない他の1側面に接着固定されている。
【0045】
稼動部34の各コイル41a、41b、42は、サスペンションワイヤ38a、38b、39a、39bに電気的に接続されており(不示図)、3軸制御部60から出力される制御電流が、固定端回路基板37、サスペンションワイヤ38a、38b及び39a、39bを介して、各コイル41a、41b、42に供給されるようになっている。
【0046】
ヨークベース35には、トラッキングコイル41a、41b、フォーカスコイル42とそれぞれ所定の間隔をもって、トラッキング磁石44およびフォーカス磁石45がトラッキングコイル41a、41b、フォーカスコイル42を挟むような形で配置されて固定されている。ヨークベース35から略垂直に光ディスク側の方向へトラッキング磁石44、フォーカス磁石45を固定し磁気回路を構成するためのヨーク35a、35bが設けられている。
【0047】
このように構成されたフォーカスコイル42に電流を供給すると、フォーカスコイル42にフォーカス方向の電磁力が作用する。この電磁力により、可動部34に装着された対物レンズ11がフォーカス方向に並進駆動される。同様に、トラッキング方向の並進駆動においても、トラッキングコイル41a,41bに電流を供給すると、トラッキングコイル41a,41bにトラッキング方向の電磁力が作用する。この電磁力により、可動部34に装着された対物レンズ11がトラッキング方向に並進駆動される。フォーカス方向の並進動作及びトラッキング方向の並進動作は3軸制御部60からの制御信号に基づいて動作が制御される。
【0048】
レンズホルダ33の対物レンズ11と反対側の端部には円筒状のラジアルチルト磁石46が配置されている。レンズホルダ33には、稼動部34のラジアルチルト回転軸40をその中心に持ち、レンズホルダ33の側面からラジアルチルト軸40方向に突出し、レンズホルダ33に一体的に固定された円柱状のシャフト47が設けられている。ラジアルチルト磁石46の内径とシャフト47の外径が略嵌合するようにして接着等により固定されている。従ってラジアルチルト磁石46は稼動部34のラジアルチルト軸の周りに円筒状に配置されている。
【0049】
ラジアルチルト磁石46をフォーカス方向に挟むようにしてラジアルチルトコイル43a、43bが配置されている。ラジアルチルトコイル43a、43bは、ゲルホルダ36の中央部の開口に固定されており、コイルの内部にはラジアルチルト磁石46とで磁気回路を構成するヨーク48a、48bが配置されている。
【0050】
図5は、ラジアルチルト磁石46とこれに対向する位置に配設されるラジアルチルトコイル43a、43bの位置関係を、磁石の極性も含めて例示した図である。ラジアルチルト磁石46は、円筒形をしており、内部がS極、外部がN極となるように着磁されている。この結果ラジアルチルト磁石46からラジアルチルトコイル43a、43bに向かう磁束が形成される。
【0051】
図5において、ラジアルチルトコイル43aのラジアルチルト磁石46に近い側のコイル部に紙面垂直上向きに電流を流したときには、電磁力により矢印の向きの力F1が生じる。同様にラジアルチルトコイル43bのラジアルチルト磁石46に近い側のコイル部に紙面垂直上向きに電流を流したときには、矢印の向きの力F2が生じる。ラジアルチルト軸40の回りには力F1とF2によって偶力が発生し、ラジアルチルト磁石46は左回りに回転する。従ってレンズホルダ33もラジアルチルト軸40回りに左回転する。
【0052】
ラジアルチルト磁石46が、ラジアルチルトコイル43a、43bの間で多少移動しても偶力の大きさは殆ど変化しない。従って安定してレンズホルダ、つまり対物レンズをヨークベースに対してラジアルチルト方向に傾けることが可能となる。
【0053】
このようにレンズホルダの対物レンズと反対側の端部にあってレンズホルダのラジアルチルト軸40の周りに円筒状に配置されたラジアルチルト磁石46と、固定部30に固定され、ラジアルチルト磁石46を間に挟んで配置されレンズホルダ33をラジアルチルト軸40回りに回転駆動する一対のラジアルチルトコイル43a、43bとによって、ラジアルチルトを補正することができる。ラジアルチルト軸40回り回転動作は3軸制御部60からの制御信号に基づいて動作が制御される。
【0054】
ラジアルチルト磁石46は円筒形状であり、レンズホルダ33のシャフト47へ嵌め込むようにすればよいので着磁の向きを間違えずに組み立てることができる。したがって対物レンズアクチュエータ10の組み立てにおいて安定した品質が確保でき、ラジアルチルトを精度よく補正することができる。
【0055】
図6および図7は、本発明の第2の実施形態に係わる対物レンズアクチュエータ300の外観図である。図6は、対物レンズアクチュエータ300を光ディスク側から見た平面図である。図7は、図6におけるCC断面図であり、対物レンズアクチュエータ300を側面から見た図である。
【0056】
この第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態におけるラジアルチルトコイル43a、43bをラジアルチルトコイル301a、301bに代えてラジアルチルトコイルの配置を換えたことである。
【0057】
第1の実施形態では、ラジアルチルト磁石46をフォーカス方向に挟むようにしてラジアルチルトコイル43a、43bが配置されていたが、第2の実施形態では、ラジアルチルト磁石302をトラッキング方向に挟むようにしてラジアルチルトコイル301a、301bが配置されている。このような構成においても安定してレンズホルダ、つまり対物レンズをヨークベースに対してラジアルチルト方向に傾けさせることができ、簡単な構成で、光ディスクの反りや面振れ等によって発生するチルトを精度よく補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による光ディスク装置の構成例を示したブロック図
【図2】対物レンズアクチュエータを光ディスク側から見た平面図。
【図3】図2におけるAA断面図。
【図4】図2におけるBB断面図。
【図5】ラジアルチルト磁石とラジアルチルトコイルの位置関係を、磁石の極性も含めて例示した図。
【図6】第2の実施形態に係わる対物レンズアクチュエータを光ディスク側から見た平面図。
【図7】図6におけるCC断面図。
【図8】従来の対物レンズアクチュエータを光ディスク側から見た平面図。
【符号の説明】
【0059】
10 対物レンズアクチュエータ
11 対物レンズ
30 固定部
33 レンズホルダ
34 可動部
35 ヨークベース
36 ゲルホルダ
37 固定端回路基板
38a、38b サスペンションワイヤ
39a、39b サスペンションワイヤ
40 ラジアルチルト軸
41a、41b トラッキングコイル
42 フォーカスコイル
43a、43b ラジアルチルトコイル
44 トラッキング磁石
45 フォーカス磁石
46 ラジアルチルト磁石
47 シャフト
50 光ピックアップ
60 3軸制御部
70 再生処理部
80 記録処理部
100 光ディスク装置
200 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラッキング方向の並進駆動、フォーカス方向の並進駆動、およびラジアルチルト軸回りの回転駆動が可能な対物レンズアクチュエータにおいて、
光ディスクの情報記録面上にレーザ光を集光する対物レンズと、
端部に対物レンズを有し、中央部に前記対物レンズをフォーカス方向に並進駆動するフォーカスコイル有し、前記フォーカスコイルの側面に前記対物レンズをトラッキング方向に並進駆動する一組のトラッキングコイルを有するレンズホルダと、
前記レンズホルダの前記対物レンズと反対側の端部にあって前記レンズホルダのラジアルチルト軸の周りに円筒状に配置されたラジアルチルト磁石と、
前記トラッキングコイルに対向する位置に配設されるトラッキング磁石と、
前記フォーカスコイルに対向する位置に配設されるフォーカス磁石と、
前記トラッキング磁石および前記フォーカス磁石が固定される固定部と、
前記固定部に固定され、前記ラジアルチルト磁石を間に挟んで配置されて前記レンズホルダをラジアルチルト軸回りに回転駆動する一対のラジアルチルトコイルと、
前記固定部に一端が固定され、他端が前記レンズホルダに固定され、前記レンズホルダを中空に保持するサスペンションワイヤと
を有することを特徴とする対物レンズアクチュエータ。
【請求項2】
前記一対のラジアルチルトコイルは、前記ラジアルチルト磁石をフォーカス方向に間に挟んで配置されたことを特徴とする請求項1記載の対物レンズアクチュエータ。
【請求項3】
前記一対のラジアルチルトコイルは、前記ラジアルチルト磁石をトラッキング方向に間に挟んで配置されたことを特徴とする請求項1記載の対物レンズアクチュエータ。
【請求項4】
対物レンズアクチュエータを具備する光ピックアップと、
前記対物レンズアクチュエータの駆動を制御する駆動制御部と、
前記光ピックアップから出力される信号を再生処理する再生処理部と、
記録用データを変調し、レーザ制御信号として前記光ピックアップへ出力する記録処理部とを備え、
前記対物レンズアクチュエータは、
トラッキング方向の並進駆動、フォーカス方向の並進駆動、およびラジアルチルト軸回りの回転駆動が可能な対物レンズアクチュエータであって、
光ディスクの情報記録面上にレーザ光を集光する対物レンズと、
端部に対物レンズを有し、中央部に前記対物レンズをフォーカス方向に並進駆動するフォーカスコイル有し、前記フォーカスコイルの側面に前記対物レンズをトラッキング方向に並進駆動する一組のトラッキングコイルを有するレンズホルダと、
前記レンズホルダの対物レンズと反対側の端部にあって前記レンズホルダのラジアルチルト軸の周りに円筒状に配置されたラジアルチルト磁石と、
前記トラッキングコイルに対向する位置に配設されるトラッキング磁石と、
前記フォーカスコイルに対向する位置に配設されるフォーカス磁石と、
前記トラッキング磁石および前記フォーカス磁石が固定される固定部と、
前記固定部に固定され、前記ラジアルチルト磁石を間に挟んで配置されて前記レンズホルダをラジアルチルト軸回りに回転駆動する一対のラジアルチルトコイルと、
前記固定部に一端が固定され、他端が前記レンズホルダに固定され、前記レンズホルダを中空に保持するサスペンションワイヤと
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
前記一対のラジアルチルトコイルは、前記ラジアルチルト磁石をフォーカス方向に間に挟んで配置されたことを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記一対のラジアルチルトコイルは、前記ラジアルチルト磁石をトラッキング方向に間に挟んで配置されたことを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245476(P2009−245476A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87998(P2008−87998)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】