対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡
【課題】良好に収差が補正されている必要がある励起側の開口数によらず蛍光側の取り込み開口数を大きくすることにより、より明るい画像を取得することが可能な対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡を提供する。
【解決手段】走査型顕微鏡10に用いられ、光源20から放射された励起光(第1の波長の照明光)を試料60に照射して走査し、この励起光により励起した試料60から放射される蛍光(第2の波長の観察光)を集光する対物レンズユニット39であって、対物レンズ37と、励起光を遮断し、蛍光を透過する輪帯状のフィルタであって、対物レンズ37の射出瞳を通過する励起光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズ37の最大開口数の光束の径よりも小さくするフィルタ38と、を有する。
【解決手段】走査型顕微鏡10に用いられ、光源20から放射された励起光(第1の波長の照明光)を試料60に照射して走査し、この励起光により励起した試料60から放射される蛍光(第2の波長の観察光)を集光する対物レンズユニット39であって、対物レンズ37と、励起光を遮断し、蛍光を透過する輪帯状のフィルタであって、対物レンズ37の射出瞳を通過する励起光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズ37の最大開口数の光束の径よりも小さくするフィルタ38と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生物顕微鏡の分野では、非線形効果を用いた顕微鏡が注目を集めている。その中でも、多光子励起を使用した顕微鏡は蛍光試料内の拡散に対して強く、試料の深部まで明るく観察をすることができる。したがって、今まで観察し難かった、脳などの光の拡散が大きい試料の深部をより明るく観察することができる。そのため、ユーザーからの需要がある。この需要に対応するため、多くの多光子励起顕微鏡が提案されている。
【0003】
このような多光子励起顕微鏡は、対物レンズにより励起光がスポットを結ぶ位置のみが励起されるので、ピンホールを使用しなくともよいという特徴がある。そのため、わざわざ試料からの観察光を非走査光に変える(デスキャンする)必要がないので、走査手段と対物レンズとの間に光束分離手段を挿入配置し、その先にディテクターを配置することが可能である。このディテクターをNDD(Non Descanned Detector)と言う。ピンホールを使用する場合は、試料面のうち当該ピンホールと共役な位置から出射した観察光しか受光できないが、NDDであれば 集光位置の周りに拡散した観察光であっても受光することができるため、明るい画像を得ることができる。このNDDの特徴を利用してさまざまな対物レンズが開発されている。例えば、より多くの散乱光を拾えるようにするため広視野・高開口数の対物レンズが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−008989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような多光子励起顕微鏡の対物レンズにおいて、検出器をNDDのみと考えた場合、良好に収差が補正されている必要があるのは励起側だけであり、蛍光は検出器に入りさえすればよい。しかし、従来の対物レンズでは、励起側と蛍光側とで開口数を変えることができないため、蛍光の取り込み側の開口数は励起側の良好に収差が補正できる範囲の開口数に限定されてしまうという課題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、良好に収差が補正されている必要がある励起側の開口数によらず蛍光側の取り込み開口数を大きくすることにより、より明るい画像を取得することが可能な対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る対物レンズユニットは、走査型顕微鏡に用いられ、光源から放射された第1の波長の照明光を試料に照射して走査し、この試料から出射する第2の波長の観察光を集光する対物レンズユニットであって、対物レンズと、第1の波長の照明光を遮断し、第2の波長の観察光を透過する輪帯状のフィルタであって、対物レンズの射出瞳を通過する照明光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするフィルタと、を有することを特徴とする。
【0008】
このような対物レンズユニットにおいて、フィルタは、対物レンズの射出瞳と略同一位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、このような対物レンズユニットにおいて、フィルタは、軸上物点から射出される最大開口数の光線及び、軸外物点から射出される光束の中、最も光軸から離れた方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第1フィルタと、最も光軸に近い方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第2フィルタと、を有することが好ましい。
【0010】
また、このような対物レンズユニットにおいて、対物レンズは、照明光が通過する第1レンズと、第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することが好ましい。
【0011】
また、第1の本発明に係る走査型顕微鏡は、第1の波長の照明光を放射する光源と、この照明光を走査する走査ユニットと、照明光を試料に照射し、試料から出射する第2の波長の観察光を集光する上述の対物レンズユニットのいずれかと、観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、第2の本発明に係る走査型顕微鏡は、照明光を放射する光源と、この照明光を走査する走査ユニットと、照明光を試料に照射し、試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、光源と走査ユニットとの間の光路上に配置され、対物レンズの射出瞳を通過する照明光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくする絞りと、観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、第3の本発明に係る走査型顕微鏡は、照明光を放射する光源と、この照明光を走査する走査ユニットと、照明光を試料に照射し、試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、光源と走査ユニットとの間の光路上に配置され、対物レンズの射出瞳を通過する照明光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするビームエキスパンダと、観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、このような走査型顕微鏡において、対物レンズは、観察光が通過する第1レンズと、この第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明を以上のように構成すると、良好に収差が補正されている必要がある励起側の開口数によらず蛍光側の取り込み開口数を大きくすることにより、より明るい画像を取得することが可能な対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図2】走査光学系の主要部の構成を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態に係る走査型顕微鏡における対物レンズユニットの構成を示す説明図であって、(a)はこの対物レンズユニットを示し、(b)はフィルタを示し、(c)はフィルタの特性を示す。
【図4】第1及び第2のフィルタで励起側の開口数を制限する構成を示す説明図であって、(a)は励起側の光線の状態を示し、(b)は蛍光側の光線の状態を示す。
【図5】第2の実施形態に係る走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図6】第3の実施形態に係る走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図7】対物レンズの変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて走査型顕微鏡10の構成について説明する。この走査型顕微鏡10は、光源20から放射されたレーザ光(照明光)をステージ11上に載置された標本60に照射して走査する走査光学系30と、標本60からの蛍光(観察光)を検出する第1検出部40及び第2検出部50と、を有して構成される。なお、以降の説明において、走査光学系30の光軸方向をz軸とし、このz軸に直交する面内で互いに直交する方向をそれぞれx軸及びy軸とする。
【0018】
この走査型顕微鏡10において、光源20は、波長が異なる複数のレーザ光を、同時または個別に射出することが可能に構成されている。なお、以降の説明においては、光源20から赤外光および可視光の2種類のレーザ光が射出されるものとして説明する。また、この光源20から射出される赤外光は、試料60の多光子励起を誘発するための、所定の周期で射出される非常に短いパルス状の光(例えば、100フェムト秒のパルス光であって、以下、「IRパルス光」と称する)であるものとする。
【0019】
走査光学系30は、光源20側から順に、第1集光レンズ31、第1ダイクロイックミラー32、走査ユニット33、瞳投影レンズ34、第2集光レンズ35、第2ダイクロックミラー36、及び、対物レンズ37を有する。
【0020】
また、第1検出部40は、上述のNDDであって、第2ダイクロイックミラー36の側方に配置され、この第2ダイクロイックミラー36側から順に、第3集光レンズ41、第4集光レンズ42、及び、第1光検出器43から構成される。ここでは、第1光検出器43の受光面は対物レンズ37の射出瞳位置と略共役に配置されているが、第1光検出器43は物体面との共役になっていてもよい。
【0021】
さらに、第2検出部50は、第1ダイクロイックミラー32を挟んで試料60と対向するように配置されており、この第1ダイクロイックミラー32側から順に、第5集光レンズ51、対物レンズ37の試料側の焦点面と略共役な位置に配置された遮光板52、及び、第2光検出器53から構成される。ここで、遮光版52にはピンホール52aが設けられており、このピンホール52aは走査光学系30の光軸を含むように配置されている。
【0022】
また、この走査型顕微鏡10には、走査ユニット33でレーザ光を走査する位置(試料60上の走査面内の座標)及び第1及び第2光検出器43,53で検出された値を処理する図示しない処理部が設けられている。なお、第1及び第2光検出器43,53としては、例えば、PMT(Photo Multiplier Tube:光電子倍増管)、GaAsP等が用いられる。
【0023】
この走査型顕微鏡10において、光源20から放射されたレーザ光は、第1集光レンズ31で略平行光束となり、第1ダイクロイックミラー32に入射して対物レンズ37側に反射され、走査ユニット33に入射する。この走査ユニット33は、光軸に直交する方向(上述のx軸方向及びy軸方向)にレーザ光を2次元的に走査するものであり、例えば、図2に示すようにレーザ光を反射することによりこのレーザ光を光軸に直交する面内で所定の方向(この方向をx軸方向とする)に偏向させる第1の偏向素子33x、及び、光軸に直交する面内で第1の偏向素子33xの偏向方向と略直交する方向(この方向をy軸方向とする)に偏向させる第2の偏向素子33yからなる2つの偏向素子で構成されている。そして、この走査ユニット33を出射したレーザビーム(略平行光束)は瞳投影レンズ34により一次像面に結像された後、第2集光レンズ35を通過することにより再び略平行光束となり、第2ダイクロイックミラー36を透過して対物レンズ37によって試料60上の対物レンズ37の焦点面に集光される。なお、試料60上に集光されたレーザ光は点像となっており、その点像の径は対物レンズ37の開口数(NA)で決まる大きさである。
【0024】
ここで、本実施形態に係る走査型顕微鏡10において、試料60の観察時には、光源20から放射されるレーザー光のうち、IRパルス光又は可視光の何れか一方が、試料60の画像を得るためのイメージング用の光(励起光)として用いられる。
【0025】
例えば、IRパルス光を励起光(第1の波長の照明光)として用いる場合、可視光は全く使用されないか、又は、試料60の光刺激用として使用される。この場合、IRパルス光が試料60に照射されると、試料60からは多光子励起による蛍光が発生し、この蛍光は観察光(第2の波長の観察光)となって対物レンズ37に入射し、この対物レンズ37で略平行光束となり第2ダイクロイックミラー36で反射されて第1検出部40に入射する。そして、この観察光は第3集光レンズ41及び第4集光レンズ42で必要な径の略平行光束に変換されて第1光検出器43に入射して検出される。なお、この第1検出部40には、試料60や対物レンズ37等で反射され、観察光とともにこの第1検出部40に入射するIRパルス光を除去するために、図示しないIRカットフィルタが配置されている。
【0026】
一方、可視光を励起光として用いる場合、IRパルス光は全く使用されないか、又は、試料60の光刺激用として使用される。この場合、観察光が試料60に照射されると、試料60からは蛍光が発生し、この蛍光は観察光となって対物レンズ37に入射し、この対物レンズ37で略平行光束となり第2ダイクロイックミラー36を透過する。そして、この観察光は、第2集光レンズ35により一次像面に結像された後、さらに瞳投影レンズ34で略平行光束にされて走査ユニット33に入射し、この走査ユニット33でデスキャンされて出射し、第1ダイクロイックミラー32を透過して第2検出部50内に入り、第5集光レンズ51により遮光板52のピンホール52a上に集光される。この第2検出部50において、遮光板52のピンホール52aを通過した光のみが第2光検出器53に到達し検出される。
【0027】
上述のように、遮光板52のピンホール52aは試料60上の走査面に集光されたレーザ光の点像と共役であり、試料60上の照射領域(対物レンズ37の焦点面)から出た観察光(蛍光)はこのピンホール52aを通過することができる。一方、試料60上の他の領域から出た光のほとんどはこのピンホール52a上には集光されず、通過することができない。
【0028】
以上より、図示しない処理部が走査ユニット33の走査に同期されて第1及び第2光検出器43,53で検出された光信号を処理することにより、試料60上のレーザ光が照射された座標と光信号から求められる輝度を用いて、試料60の走査面における二次元的な画像を得ることができる。これによりこの走査型顕微鏡10は、高い分解能で試料60の像を得ることができる。このように、本実施形態に係る走査型顕微鏡10は、走査型多光子顕微鏡及び走査型共焦点顕微鏡の両方として使用することができる。
【0029】
[第1の実施形態]
それでは、このような構成の走査型顕微鏡10の第1の実施形態として、励起光が放射されるとき(励起側)の開口数(NA)よりも、蛍光を取り込むとき(蛍光側)の開口数(NA)が大きくなるようにした構成について説明する。
【0030】
図3に示すように、本第1の実施形態に係る走査型顕微鏡10において、対物レンズ37には、この対物レンズ37の射出瞳の位置、若しくはその近傍に、輪帯状(リング状)のフィルタ38が配置されて、対物レンズユニット39を構成している。このフィルタ38は、図3(c)に示すように、光源20から放射されたIRパルス光(第1の波長の照明光)を、例えば、吸収することにより遮断し、このIRパルス光により試料60で励起された蛍光(第2の波長の観察光)を透過する光学部材で構成されており、その外径が、対物レンズ37を通過する最大開口数の光束以上の大きさに形成され、また、開口部38aの内径は最大開口数の光束よりも小さく形成されている。そのため、図3(a)に示すように、IRパルス光LEはこのフィルタ38の開口部38aのみを通過することができるので、このフィルタ38により絞られ、対物レンズ37から射出したときのIRパルス光LEの開口数が対物レンズ37の最大開口数よりも小さくなる。すなわち、IRパルス光LEは、対物レンズ37の外周部は通過せず、収差が良好に補正された光軸付近を通過するため、このIRパルス光LEを対物レンズ37の焦点面上の一点に効率良く集光することができる。一方、このIRパルス光LEにより励起された蛍光LFはフィルタ38を通過することができるので、対物レンズ37の最大開口数で、散乱光も含めて効率良く取り込むことができる。
【0031】
なお、図4に示すように射出瞳が対物レンズ37の内部にある場合は、この対物レンズ37を構成するレンズの適宜の面で光束を制限することで、励起側の開口数を対物レンズ37の最大開口数(蛍光側の開口数)より小さくすることができる。具体的には、軸上物点から射出される最大開口数の光線及び、軸外物点から射出される光束の中、最も光軸から離れた方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ37内の適宜のレンズ面(例えば、図4における第A面)との交点で制限するように第1フィルタ381を配置し、最も光軸に近い方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ37内の適宜のレンズ面(例えば、図4における第B面)との交点で制限するように第2フィルタ382を配置する。なお、第1及び第2フィルタ381,382の各々は、図3(b)に示す形状を有するとともに、入射する光の波長に対して図3(c)に示す特性を有している。
【0032】
このような走査型顕微鏡10において、第1検出部40をNDDと考えた場合、対物レンズ37の蛍光側は厳密な収差の補正は必要がないため、液浸の対物レンズであれば蛍光側の取り込み開口数を1.33、油浸の対物レンズであれば蛍光側の取り込み開口数を1.5まで上げて、より明るい画像を取得することができる。このとき、上述のように励起側の開口数はフィルタ38(381,382)で制限されるため、対物レンズ37において良好に収差が補正された光軸付近を使用することができるので、IRパルス光を、試料60上の所望の位置に効率良く集光して多光子励起を起こさせることができる。また、このように対物レンズ37にフィルタ38を設けた対物レンズユニット39とすることにより、従来の走査型顕微鏡の対物レンズユニットの代わりにこの対物レンズユニット39を取り付けることで上述の効果を得ることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態に係る走査型顕微鏡10では、対物レンズ37に励起側の開口数を制限するフィルタ38(381,382)を設けた場合について説明したが、光源20から走査光学系30に入射するIRパルス光の光束を絞ることでも、同様の効果を得ることができる。例えば、図5に示すように、光源20と走査ユニット33との間の略平行光束の区間(図1に示す、第1集光レンズ31と第1ダイクロイックミラー32との間が望ましい)に、絞り21を配置し、IRパルス光の光束を絞ることで、対物レンズ37の射出瞳を通過するIRパルス光の光束径も絞られる。そのため、IRパルス光は、対物レンズ37の外周部は通過せず、収差が良好に補正された光軸付近を通過するため、このIRパルス光を対物レンズ37の焦点面上の一点に効率良く集光することができる。一方、このIRパルス光により励起された試料60から発生した蛍光は、対物レンズ37の最大開口数で、散乱光も含めて効率良く取り込むことができる。
【0034】
[第3の実施形態]
あるいは、図6に示すように、光源20と走査ユニット33との間の略平行光束の区間(図1に示す、第1集光レンズ31と第1ダイクロイックミラー32との間が望ましい)に、ビームエキスパンダ22を配置し、IRパルス光の光束を細くすることで、対物レンズ37の射出瞳を通過するIRパルス光の光束径も絞ることができ、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
なお、以上の第1〜第3の実施形態において、試料60で発生する蛍光を取り込むために、対物レンズ37の開口数を大きくすると、収差の補正が難しくなり、IRパルス光を焦点面上の一点に集光することが難しくなる。そのため、図7に示すように、対物レンズ37′を、走査光学系30の光軸上に配置された第1レンズ37aと、その外周を囲むように配置された第2レンズ37bとで構成し、光源20から放射されたレーザ光(IRパルス光)は第1レンズ37aで集光し、試料60から出射した蛍光はこの第1レンズ37a及び第2レンズ37bで集光するように構成することができる。
【0036】
対物レンズ37′をこのような構成とすると、第1レンズ37aの開口数はIRパルス光を試料60上に集光するために必要な開口数とすることができるので、収差を良好に補正することができる。一方、蛍光に対しては、上述のように第1検出部40をNDDであるとすると、対物レンズ37′は、試料60で発生する蛍光を集光してこの第1検出部40に入射させれば良いので、第2レンズ37bでも十分機能を発揮することができる。
【0037】
なお、第2レンズ37bは、中空でリング状のレンズでも良いし、複数のマイクロレンズを第1レンズ37aの外周に沿って輪帯状に並べた構成でも良い。また、この対物レンズ37′を第1の実施形態の対物レンズユニット39に適用する場合は、IRパルス光が第1レンズ37aを通過するようにフィルタ38を配置する。
【符号の説明】
【0038】
10 走査型顕微鏡 20 光源 21 絞り
22 ビームエキスパンダ 33 走査ユニット
37,37′ 対物レンズ 37a 第1レンズ 37b 第2レンズ
38 フィルタ 381 第1フィルタ 382 第2フィルタ
39 対物レンズユニット 60 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生物顕微鏡の分野では、非線形効果を用いた顕微鏡が注目を集めている。その中でも、多光子励起を使用した顕微鏡は蛍光試料内の拡散に対して強く、試料の深部まで明るく観察をすることができる。したがって、今まで観察し難かった、脳などの光の拡散が大きい試料の深部をより明るく観察することができる。そのため、ユーザーからの需要がある。この需要に対応するため、多くの多光子励起顕微鏡が提案されている。
【0003】
このような多光子励起顕微鏡は、対物レンズにより励起光がスポットを結ぶ位置のみが励起されるので、ピンホールを使用しなくともよいという特徴がある。そのため、わざわざ試料からの観察光を非走査光に変える(デスキャンする)必要がないので、走査手段と対物レンズとの間に光束分離手段を挿入配置し、その先にディテクターを配置することが可能である。このディテクターをNDD(Non Descanned Detector)と言う。ピンホールを使用する場合は、試料面のうち当該ピンホールと共役な位置から出射した観察光しか受光できないが、NDDであれば 集光位置の周りに拡散した観察光であっても受光することができるため、明るい画像を得ることができる。このNDDの特徴を利用してさまざまな対物レンズが開発されている。例えば、より多くの散乱光を拾えるようにするため広視野・高開口数の対物レンズが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−008989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような多光子励起顕微鏡の対物レンズにおいて、検出器をNDDのみと考えた場合、良好に収差が補正されている必要があるのは励起側だけであり、蛍光は検出器に入りさえすればよい。しかし、従来の対物レンズでは、励起側と蛍光側とで開口数を変えることができないため、蛍光の取り込み側の開口数は励起側の良好に収差が補正できる範囲の開口数に限定されてしまうという課題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、良好に収差が補正されている必要がある励起側の開口数によらず蛍光側の取り込み開口数を大きくすることにより、より明るい画像を取得することが可能な対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る対物レンズユニットは、走査型顕微鏡に用いられ、光源から放射された第1の波長の照明光を試料に照射して走査し、この試料から出射する第2の波長の観察光を集光する対物レンズユニットであって、対物レンズと、第1の波長の照明光を遮断し、第2の波長の観察光を透過する輪帯状のフィルタであって、対物レンズの射出瞳を通過する照明光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするフィルタと、を有することを特徴とする。
【0008】
このような対物レンズユニットにおいて、フィルタは、対物レンズの射出瞳と略同一位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、このような対物レンズユニットにおいて、フィルタは、軸上物点から射出される最大開口数の光線及び、軸外物点から射出される光束の中、最も光軸から離れた方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第1フィルタと、最も光軸に近い方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第2フィルタと、を有することが好ましい。
【0010】
また、このような対物レンズユニットにおいて、対物レンズは、照明光が通過する第1レンズと、第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することが好ましい。
【0011】
また、第1の本発明に係る走査型顕微鏡は、第1の波長の照明光を放射する光源と、この照明光を走査する走査ユニットと、照明光を試料に照射し、試料から出射する第2の波長の観察光を集光する上述の対物レンズユニットのいずれかと、観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、第2の本発明に係る走査型顕微鏡は、照明光を放射する光源と、この照明光を走査する走査ユニットと、照明光を試料に照射し、試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、光源と走査ユニットとの間の光路上に配置され、対物レンズの射出瞳を通過する照明光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくする絞りと、観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、第3の本発明に係る走査型顕微鏡は、照明光を放射する光源と、この照明光を走査する走査ユニットと、照明光を試料に照射し、試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、光源と走査ユニットとの間の光路上に配置され、対物レンズの射出瞳を通過する照明光の光束径を、この射出瞳を通過する対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするビームエキスパンダと、観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、このような走査型顕微鏡において、対物レンズは、観察光が通過する第1レンズと、この第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明を以上のように構成すると、良好に収差が補正されている必要がある励起側の開口数によらず蛍光側の取り込み開口数を大きくすることにより、より明るい画像を取得することが可能な対物レンズユニット及びこの対物レンズユニットを有する走査型顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図2】走査光学系の主要部の構成を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態に係る走査型顕微鏡における対物レンズユニットの構成を示す説明図であって、(a)はこの対物レンズユニットを示し、(b)はフィルタを示し、(c)はフィルタの特性を示す。
【図4】第1及び第2のフィルタで励起側の開口数を制限する構成を示す説明図であって、(a)は励起側の光線の状態を示し、(b)は蛍光側の光線の状態を示す。
【図5】第2の実施形態に係る走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図6】第3の実施形態に係る走査型顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図7】対物レンズの変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて走査型顕微鏡10の構成について説明する。この走査型顕微鏡10は、光源20から放射されたレーザ光(照明光)をステージ11上に載置された標本60に照射して走査する走査光学系30と、標本60からの蛍光(観察光)を検出する第1検出部40及び第2検出部50と、を有して構成される。なお、以降の説明において、走査光学系30の光軸方向をz軸とし、このz軸に直交する面内で互いに直交する方向をそれぞれx軸及びy軸とする。
【0018】
この走査型顕微鏡10において、光源20は、波長が異なる複数のレーザ光を、同時または個別に射出することが可能に構成されている。なお、以降の説明においては、光源20から赤外光および可視光の2種類のレーザ光が射出されるものとして説明する。また、この光源20から射出される赤外光は、試料60の多光子励起を誘発するための、所定の周期で射出される非常に短いパルス状の光(例えば、100フェムト秒のパルス光であって、以下、「IRパルス光」と称する)であるものとする。
【0019】
走査光学系30は、光源20側から順に、第1集光レンズ31、第1ダイクロイックミラー32、走査ユニット33、瞳投影レンズ34、第2集光レンズ35、第2ダイクロックミラー36、及び、対物レンズ37を有する。
【0020】
また、第1検出部40は、上述のNDDであって、第2ダイクロイックミラー36の側方に配置され、この第2ダイクロイックミラー36側から順に、第3集光レンズ41、第4集光レンズ42、及び、第1光検出器43から構成される。ここでは、第1光検出器43の受光面は対物レンズ37の射出瞳位置と略共役に配置されているが、第1光検出器43は物体面との共役になっていてもよい。
【0021】
さらに、第2検出部50は、第1ダイクロイックミラー32を挟んで試料60と対向するように配置されており、この第1ダイクロイックミラー32側から順に、第5集光レンズ51、対物レンズ37の試料側の焦点面と略共役な位置に配置された遮光板52、及び、第2光検出器53から構成される。ここで、遮光版52にはピンホール52aが設けられており、このピンホール52aは走査光学系30の光軸を含むように配置されている。
【0022】
また、この走査型顕微鏡10には、走査ユニット33でレーザ光を走査する位置(試料60上の走査面内の座標)及び第1及び第2光検出器43,53で検出された値を処理する図示しない処理部が設けられている。なお、第1及び第2光検出器43,53としては、例えば、PMT(Photo Multiplier Tube:光電子倍増管)、GaAsP等が用いられる。
【0023】
この走査型顕微鏡10において、光源20から放射されたレーザ光は、第1集光レンズ31で略平行光束となり、第1ダイクロイックミラー32に入射して対物レンズ37側に反射され、走査ユニット33に入射する。この走査ユニット33は、光軸に直交する方向(上述のx軸方向及びy軸方向)にレーザ光を2次元的に走査するものであり、例えば、図2に示すようにレーザ光を反射することによりこのレーザ光を光軸に直交する面内で所定の方向(この方向をx軸方向とする)に偏向させる第1の偏向素子33x、及び、光軸に直交する面内で第1の偏向素子33xの偏向方向と略直交する方向(この方向をy軸方向とする)に偏向させる第2の偏向素子33yからなる2つの偏向素子で構成されている。そして、この走査ユニット33を出射したレーザビーム(略平行光束)は瞳投影レンズ34により一次像面に結像された後、第2集光レンズ35を通過することにより再び略平行光束となり、第2ダイクロイックミラー36を透過して対物レンズ37によって試料60上の対物レンズ37の焦点面に集光される。なお、試料60上に集光されたレーザ光は点像となっており、その点像の径は対物レンズ37の開口数(NA)で決まる大きさである。
【0024】
ここで、本実施形態に係る走査型顕微鏡10において、試料60の観察時には、光源20から放射されるレーザー光のうち、IRパルス光又は可視光の何れか一方が、試料60の画像を得るためのイメージング用の光(励起光)として用いられる。
【0025】
例えば、IRパルス光を励起光(第1の波長の照明光)として用いる場合、可視光は全く使用されないか、又は、試料60の光刺激用として使用される。この場合、IRパルス光が試料60に照射されると、試料60からは多光子励起による蛍光が発生し、この蛍光は観察光(第2の波長の観察光)となって対物レンズ37に入射し、この対物レンズ37で略平行光束となり第2ダイクロイックミラー36で反射されて第1検出部40に入射する。そして、この観察光は第3集光レンズ41及び第4集光レンズ42で必要な径の略平行光束に変換されて第1光検出器43に入射して検出される。なお、この第1検出部40には、試料60や対物レンズ37等で反射され、観察光とともにこの第1検出部40に入射するIRパルス光を除去するために、図示しないIRカットフィルタが配置されている。
【0026】
一方、可視光を励起光として用いる場合、IRパルス光は全く使用されないか、又は、試料60の光刺激用として使用される。この場合、観察光が試料60に照射されると、試料60からは蛍光が発生し、この蛍光は観察光となって対物レンズ37に入射し、この対物レンズ37で略平行光束となり第2ダイクロイックミラー36を透過する。そして、この観察光は、第2集光レンズ35により一次像面に結像された後、さらに瞳投影レンズ34で略平行光束にされて走査ユニット33に入射し、この走査ユニット33でデスキャンされて出射し、第1ダイクロイックミラー32を透過して第2検出部50内に入り、第5集光レンズ51により遮光板52のピンホール52a上に集光される。この第2検出部50において、遮光板52のピンホール52aを通過した光のみが第2光検出器53に到達し検出される。
【0027】
上述のように、遮光板52のピンホール52aは試料60上の走査面に集光されたレーザ光の点像と共役であり、試料60上の照射領域(対物レンズ37の焦点面)から出た観察光(蛍光)はこのピンホール52aを通過することができる。一方、試料60上の他の領域から出た光のほとんどはこのピンホール52a上には集光されず、通過することができない。
【0028】
以上より、図示しない処理部が走査ユニット33の走査に同期されて第1及び第2光検出器43,53で検出された光信号を処理することにより、試料60上のレーザ光が照射された座標と光信号から求められる輝度を用いて、試料60の走査面における二次元的な画像を得ることができる。これによりこの走査型顕微鏡10は、高い分解能で試料60の像を得ることができる。このように、本実施形態に係る走査型顕微鏡10は、走査型多光子顕微鏡及び走査型共焦点顕微鏡の両方として使用することができる。
【0029】
[第1の実施形態]
それでは、このような構成の走査型顕微鏡10の第1の実施形態として、励起光が放射されるとき(励起側)の開口数(NA)よりも、蛍光を取り込むとき(蛍光側)の開口数(NA)が大きくなるようにした構成について説明する。
【0030】
図3に示すように、本第1の実施形態に係る走査型顕微鏡10において、対物レンズ37には、この対物レンズ37の射出瞳の位置、若しくはその近傍に、輪帯状(リング状)のフィルタ38が配置されて、対物レンズユニット39を構成している。このフィルタ38は、図3(c)に示すように、光源20から放射されたIRパルス光(第1の波長の照明光)を、例えば、吸収することにより遮断し、このIRパルス光により試料60で励起された蛍光(第2の波長の観察光)を透過する光学部材で構成されており、その外径が、対物レンズ37を通過する最大開口数の光束以上の大きさに形成され、また、開口部38aの内径は最大開口数の光束よりも小さく形成されている。そのため、図3(a)に示すように、IRパルス光LEはこのフィルタ38の開口部38aのみを通過することができるので、このフィルタ38により絞られ、対物レンズ37から射出したときのIRパルス光LEの開口数が対物レンズ37の最大開口数よりも小さくなる。すなわち、IRパルス光LEは、対物レンズ37の外周部は通過せず、収差が良好に補正された光軸付近を通過するため、このIRパルス光LEを対物レンズ37の焦点面上の一点に効率良く集光することができる。一方、このIRパルス光LEにより励起された蛍光LFはフィルタ38を通過することができるので、対物レンズ37の最大開口数で、散乱光も含めて効率良く取り込むことができる。
【0031】
なお、図4に示すように射出瞳が対物レンズ37の内部にある場合は、この対物レンズ37を構成するレンズの適宜の面で光束を制限することで、励起側の開口数を対物レンズ37の最大開口数(蛍光側の開口数)より小さくすることができる。具体的には、軸上物点から射出される最大開口数の光線及び、軸外物点から射出される光束の中、最も光軸から離れた方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ37内の適宜のレンズ面(例えば、図4における第A面)との交点で制限するように第1フィルタ381を配置し、最も光軸に近い方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と対物レンズ37内の適宜のレンズ面(例えば、図4における第B面)との交点で制限するように第2フィルタ382を配置する。なお、第1及び第2フィルタ381,382の各々は、図3(b)に示す形状を有するとともに、入射する光の波長に対して図3(c)に示す特性を有している。
【0032】
このような走査型顕微鏡10において、第1検出部40をNDDと考えた場合、対物レンズ37の蛍光側は厳密な収差の補正は必要がないため、液浸の対物レンズであれば蛍光側の取り込み開口数を1.33、油浸の対物レンズであれば蛍光側の取り込み開口数を1.5まで上げて、より明るい画像を取得することができる。このとき、上述のように励起側の開口数はフィルタ38(381,382)で制限されるため、対物レンズ37において良好に収差が補正された光軸付近を使用することができるので、IRパルス光を、試料60上の所望の位置に効率良く集光して多光子励起を起こさせることができる。また、このように対物レンズ37にフィルタ38を設けた対物レンズユニット39とすることにより、従来の走査型顕微鏡の対物レンズユニットの代わりにこの対物レンズユニット39を取り付けることで上述の効果を得ることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態に係る走査型顕微鏡10では、対物レンズ37に励起側の開口数を制限するフィルタ38(381,382)を設けた場合について説明したが、光源20から走査光学系30に入射するIRパルス光の光束を絞ることでも、同様の効果を得ることができる。例えば、図5に示すように、光源20と走査ユニット33との間の略平行光束の区間(図1に示す、第1集光レンズ31と第1ダイクロイックミラー32との間が望ましい)に、絞り21を配置し、IRパルス光の光束を絞ることで、対物レンズ37の射出瞳を通過するIRパルス光の光束径も絞られる。そのため、IRパルス光は、対物レンズ37の外周部は通過せず、収差が良好に補正された光軸付近を通過するため、このIRパルス光を対物レンズ37の焦点面上の一点に効率良く集光することができる。一方、このIRパルス光により励起された試料60から発生した蛍光は、対物レンズ37の最大開口数で、散乱光も含めて効率良く取り込むことができる。
【0034】
[第3の実施形態]
あるいは、図6に示すように、光源20と走査ユニット33との間の略平行光束の区間(図1に示す、第1集光レンズ31と第1ダイクロイックミラー32との間が望ましい)に、ビームエキスパンダ22を配置し、IRパルス光の光束を細くすることで、対物レンズ37の射出瞳を通過するIRパルス光の光束径も絞ることができ、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
なお、以上の第1〜第3の実施形態において、試料60で発生する蛍光を取り込むために、対物レンズ37の開口数を大きくすると、収差の補正が難しくなり、IRパルス光を焦点面上の一点に集光することが難しくなる。そのため、図7に示すように、対物レンズ37′を、走査光学系30の光軸上に配置された第1レンズ37aと、その外周を囲むように配置された第2レンズ37bとで構成し、光源20から放射されたレーザ光(IRパルス光)は第1レンズ37aで集光し、試料60から出射した蛍光はこの第1レンズ37a及び第2レンズ37bで集光するように構成することができる。
【0036】
対物レンズ37′をこのような構成とすると、第1レンズ37aの開口数はIRパルス光を試料60上に集光するために必要な開口数とすることができるので、収差を良好に補正することができる。一方、蛍光に対しては、上述のように第1検出部40をNDDであるとすると、対物レンズ37′は、試料60で発生する蛍光を集光してこの第1検出部40に入射させれば良いので、第2レンズ37bでも十分機能を発揮することができる。
【0037】
なお、第2レンズ37bは、中空でリング状のレンズでも良いし、複数のマイクロレンズを第1レンズ37aの外周に沿って輪帯状に並べた構成でも良い。また、この対物レンズ37′を第1の実施形態の対物レンズユニット39に適用する場合は、IRパルス光が第1レンズ37aを通過するようにフィルタ38を配置する。
【符号の説明】
【0038】
10 走査型顕微鏡 20 光源 21 絞り
22 ビームエキスパンダ 33 走査ユニット
37,37′ 対物レンズ 37a 第1レンズ 37b 第2レンズ
38 フィルタ 381 第1フィルタ 382 第2フィルタ
39 対物レンズユニット 60 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型顕微鏡に用いられ、光源から放射された第1の波長の照明光を試料に照射して走査し、前記試料から出射する第2の波長の観察光を集光する対物レンズユニットであって、
対物レンズと、
前記第1の波長の照明光を遮断し、前記第2の波長の観察光を透過する輪帯状のフィルタであって、前記対物レンズの射出瞳を通過する前記照明光の光束径を、前記射出瞳を通過する前記対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするフィルタと、
を有することを特徴とする対物レンズユニット。
【請求項2】
前記フィルタは、前記対物レンズの射出瞳と略同一位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズユニット。
【請求項3】
前記フィルタは、
軸上物点から射出される最大開口数の光線及び、軸外物点から射出される光束の中、最も光軸から離れた方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と前記対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第1フィルタと、
最も光軸に近い方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と前記対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第2フィルタと、を有することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズユニット。
【請求項4】
前記対物レンズは、
前記照明光が通過する第1レンズと、
前記第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
第1の波長の照明光を放射する光源と、
前記照明光を走査する走査ユニットと、
前記照明光を試料に照射し、前記試料から出射する第2の波長の観察光を集光する請求項1〜4のいずれか一項に記載の対物レンズユニットと、
前記観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項6】
照明光を放射する光源と、
前記照明光を走査する走査ユニットと、
前記照明光を試料に照射し、前記試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、
前記光源と前記走査ユニットとの間の光路上に配置され、前記対物レンズの射出瞳を通過する前記照明光の光束径を、前記射出瞳を通過する前記対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくする絞りと、
前記観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項7】
照明光を放射する光源と、
前記照明光を走査する走査ユニットと、
前記照明光を試料に照射し、前記試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、
前記光源と前記走査ユニットとの間の光路上に配置され、前記対物レンズの射出瞳を通過する前記照明光の光束径を、前記射出瞳を通過する前記対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするビームエキスパンダと、
前記観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項8】
前記対物レンズは、
前記観察光が通過する第1レンズと、
前記第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することを特徴とする請求項6または7に記載の走査型顕微鏡。
【請求項1】
走査型顕微鏡に用いられ、光源から放射された第1の波長の照明光を試料に照射して走査し、前記試料から出射する第2の波長の観察光を集光する対物レンズユニットであって、
対物レンズと、
前記第1の波長の照明光を遮断し、前記第2の波長の観察光を透過する輪帯状のフィルタであって、前記対物レンズの射出瞳を通過する前記照明光の光束径を、前記射出瞳を通過する前記対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするフィルタと、
を有することを特徴とする対物レンズユニット。
【請求項2】
前記フィルタは、前記対物レンズの射出瞳と略同一位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズユニット。
【請求項3】
前記フィルタは、
軸上物点から射出される最大開口数の光線及び、軸外物点から射出される光束の中、最も光軸から離れた方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と前記対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第1フィルタと、
最も光軸に近い方向に射出される光線を、軸上物点から射出される最大開口数の光線と前記対物レンズ内の適宜のレンズ面との交点で制限する第2フィルタと、を有することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズユニット。
【請求項4】
前記対物レンズは、
前記照明光が通過する第1レンズと、
前記第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
第1の波長の照明光を放射する光源と、
前記照明光を走査する走査ユニットと、
前記照明光を試料に照射し、前記試料から出射する第2の波長の観察光を集光する請求項1〜4のいずれか一項に記載の対物レンズユニットと、
前記観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項6】
照明光を放射する光源と、
前記照明光を走査する走査ユニットと、
前記照明光を試料に照射し、前記試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、
前記光源と前記走査ユニットとの間の光路上に配置され、前記対物レンズの射出瞳を通過する前記照明光の光束径を、前記射出瞳を通過する前記対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくする絞りと、
前記観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項7】
照明光を放射する光源と、
前記照明光を走査する走査ユニットと、
前記照明光を試料に照射し、前記試料から出射する観察光を集光する対物レンズと、
前記光源と前記走査ユニットとの間の光路上に配置され、前記対物レンズの射出瞳を通過する前記照明光の光束径を、前記射出瞳を通過する前記対物レンズの最大開口数の光束の径よりも小さくするビームエキスパンダと、
前記観察光を検出する検出部と、を有することを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項8】
前記対物レンズは、
前記観察光が通過する第1レンズと、
前記第1レンズの外周に沿って配置された第2レンズと、を有することを特徴とする請求項6または7に記載の走査型顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−54146(P2013−54146A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191227(P2011−191227)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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