説明

対象物支持装置および動作方法、並びにプログラム

【課題】易損品を安全に固定する。
【解決手段】十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する粘性流体が封入された嚢状部からなり、易損品12に当接する作用部33を備える対象物支持装置13において、粘性流体の粘度Vを検知し、粘性流体の粘度を目的粘度V0として設定し、検知された粘性流体の粘度Vと目的粘度V0との差分V0−Vを算出し、差分V0−Vに応じて、粘性流体の粘度を制御する。本発明は、例えば、壷などの易損品を固定する構成に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物支持装置および動作方法、並びにプログラムに関し、特に、例えば、壊れやすい物品を固定することができるようにする対象物支持装置および動作方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ユーザが直接触れて使用する用具、特に、ユーザがくつろぐ際に利用する家具(ソファ、ベッド等)は、安全性や快適性の観点から、スポンジや皮革等の柔らかい素材で構成されている。
【0003】
スポンジや皮革に限らず、例えば、内部に水等の液体および空気が封入されたウォータマットがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これらの「柔らかさ」は、素材に固有なものであり、用途に応じて「柔らかさ」を変化させることは不可能である。しかしながら、実際には、ソファやベッドは、1つの用途にしか利用されないので、「柔らかさ」を変化させる必要はなかった。
【0005】
ところで、このような家具の一部としても用いられる素材(例えば、主に塗料や被膜等のポリマ)を生成する過程において、製造・施工段階での容易性や収率を向上させるために、その粘度が最適な粘度範囲になるように調整する粘度制御方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、油圧回路において、実際の動粘度が適正範囲の動粘度に含まれない場合、冷却手段の冷却能力を可変制御することによって油の実際の動粘度を適正範囲に含ませるように制御することにより、力の適切な伝達を実現する液体粘度制御方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、電気粘性流体の粘度を制御し、可動体に駆動力を付与することにより、力覚的なフィードバックを得るようにしたコンピュータシミュレーション装置の入出力装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−304950号公報
【特許文献2】特開2004−339354号公報
【特許文献3】特開2004−316814号公報
【特許文献4】特開平7−311650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、製造・施工段階での素材の粘度を制御するものであり、その素材がユーザに提供される際には、その素材の粘度は一定の粘度である。
【0010】
また、特許文献4のように、電気粘性流体や磁気粘性流体に対して、その粘度を動的に変化させる手法は数多く提案されているが、これらの流体の粘度を一定にしておくためには、その目的となる粘度を維持するための電界や磁界の発生を制御する必要がある。
【0011】
電界や磁界の強さの制御によって目的となる粘度を維持するためには、その粘度に対応した電界や磁界を一様にかける必要があるが、ある1点での電界の強さは、電荷の空間的な位置に影響を受けるので、例えば、電極間の距離が一様に等しい必要がある。
【0012】
そのため、提案されている手法における電極は、その位置が固定されているか、または、膜状の電極が誤差の影響のない程度の至近距離で重ね合わせられている等、形状について相当な制約を受けている。同様に、磁界の強さも磁荷の空間的な位置に影響を受けるので、例えば、磁極間の距離が一様に等しい必要がある。
【0013】
さらに、電気粘性流体や磁気粘性流体の粘度制御は、振動や力の伝達等の一時的な利用に際しては有効であるが、例えば、ベッドやソファ等の家具の長時間にわたっての利用においては、電界または磁界を発生し続けるためのエネルギーが増大する。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、低エネルギーで流体の粘度を変化させるとともに、その流体が封入されている封入体の形状を自由に変化させることにより、易損品を固定できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面の対象物支持装置は、十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部と、前記流体の粘度を検知する検知手段と、前記流体の粘度を設定粘度として設定する設定手段と、前記検知手段により検知された前記流体の粘度と前記設定粘度との差分を算出する算出手段と、前記差分に応じて、前記流体の粘度を制御する粘度制御手段とを備える。
【0016】
嚢状部が、前記対象物に対応した形状で前記対象物に当接し、かつ、前記流体の粘度が所定の目的粘度に制御されるとき、前記作用部には、前記対象物を支持させることができる。
【0017】
前記粘度制御手段には、前記流体の温度を制御することで、前記流体の粘度を制御させることができる。
【0018】
前記流体に、複数の物質の混合物を用いた場合、前記粘度制御手段には、前記混合物の濃度を制御することで、前記流体の粘度を制御させることができる。
【0019】
前記粘度制御手段には、前記流体のpH値を制御することで、前記流体の粘度を制御させることができる。
【0020】
前記対象物支持装置において、前記作用部は、複数の前記嚢状部から構成するようにできる。
【0021】
前記粘度制御手段には、複数の前記嚢状部それぞれに封入されている前記流体の粘度を制御させることができる。
【0022】
前記対象物支持装置において、前記作用部は、複数の前記嚢状部のうちの1つの嚢状部に、前記流体とともに他の1つの嚢状部が封入されてなり、前記1つの嚢状部が所定の対象物に当接するようにできる。
【0023】
前記対象物支持装置において、前記作用部は、複数の前記嚢状部のうちの1つの嚢状部に、前記流体とともに他の1つの嚢状部が封入されてなり、前記1つの嚢状部が所定の対象物に当接し、前記他の1つの嚢状部の表面には、前記1つの嚢状部と前記他の1つの嚢状部とが層状の構造を維持するための突起部を設けることができる。
【0024】
前記対象物支持装置において、前記作用部は、複数の前記嚢状部のうちの1つの嚢状部に、前記流体とともに他の1つの嚢状部が封入されてなり、前記1つの嚢状部が所定の対象物に当接する構成の集合体とすることができる。
【0025】
前記対象物支持装置には、前記作用部を複数設けることができる。
【0026】
本発明の一側面の動作方法は、十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部を備える対象物支持装置の動作方法であって、前記流体の粘度を検知する検知ステップと、前記流体の粘度を設定粘度として設定する設定ステップと、前記検知ステップにおいて検知された前記流体の粘度と前記設定粘度との差分を算出する算出ステップと、前記差分に応じて、前記流体の粘度を制御する粘度制御ステップとを含む。
【0027】
本発明の一側面のプログラムは、十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部を備える対象物支持装置を制御するコンピュータに、前記流体の粘度を検知する検知ステップと、前記流体の粘度を設定粘度として設定する設定ステップと、前記検知ステップにおいて検知された前記流体の粘度と前記設定粘度との差分を算出する算出ステップと、前記差分に応じて、前記流体の粘度を制御する粘度制御ステップとを含む処理を実行させる。
【0028】
本発明の一側面においては、十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部を備える対象物支持装置において、流体の粘度が検知され、流体の粘度が設定粘度として設定され、検知手段により検知された流体の粘度と設定粘度との差分が算出され、差分に応じて、流体の粘度が制御される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一側面によれば、対象物を支持することができ、特に、易損品を固定することができる。また、本発明の一側面によれば、所定の表面で、複数段階の柔らかさ(応力応答)を提供することができ、例えば、1つの家具を複数の用途に用いることができるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明を適用した対象物支持装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0032】
図1A乃至図1Cにおいて、箱11は、例えば、木やプラスチック、アルミニウム等の軽量な金属等で形成されており、易損品を収容して運搬するのに用いられる。
【0033】
箱11の内部には、例えば、重量が大きく衝撃に弱い、壷などの易損品12が収容されている。易損品12は、壷に限らず、例えば、シャンデリア等の立体的な装飾品であってもよい。
【0034】
対象物支持装置13は、箱11に収容された易損品12を固定するのに用いられる。対象物支持装置13は、コンプレッサ31、粘度制御部32、および作用部33から構成される。
【0035】
コンプレッサ31は、粘度制御部32の制御に基づいて冷媒を圧縮する。コンプレッサ31が冷媒を圧縮することによって、熱が発生する。また、コンプレッサ31で圧縮された冷媒は、粘度制御部32の制御に基づいて、図示せぬ膨張弁に流入される。膨張弁によって冷媒が膨張することによって、熱が吸収される。すなわち、コンプレッサ31は、図示されない、いわゆるヒートポンプの一部を構成している。
【0036】
なお、冷媒は、圧縮および膨張が可能な媒体であれば、その他の媒体でもよい。
【0037】
粘度制御部32は、ユーザの操作入力に応じて、図示せぬヒートポンプを制御することで発生する、または吸収される熱によって、作用部33に封入されている、温度によって粘度が変化する粘性流体の粘度を制御する。
【0038】
なお、以下の説明においては、粘性流体は、温度が高い程、低粘度を示し、逆に、温度が低い程、高粘度を示すものとする。
【0039】
作用部33は、十分柔軟性および伸縮性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、上述の粘性流体が封入された嚢状部から構成されており、固定される対象物としての易損品12に応じた形状で、その易損品12に当接する。
【0040】
なお、作用部33の嚢状部を構成する膜は、用途に応じて、断熱性に優れたものや熱伝導率の高いものを用いることができる。
【0041】
次に、図1A乃至図1Cを参照して、対象物支持装置13の動作について説明する。
【0042】
まず、第1の動作として、図1Aで示されるように、作用部33は、対象物に対して上部の離れた位置に固定される。このとき、作用部33の粘性流体の粘度は、例えば水のように低くされている。
【0043】
第2の動作として、図1Bで示されるように、その状態で作用部33は、図中の下方向に移動されることにより、易損品12に接近する。すると、作用部33は、易損品12に当接し、あたかも水のごとく振舞い、易損品12を包み込むように箱11に収容される。
【0044】
次に、第3の動作として、粘度制御部32が、コンプレッサ31を制御し、冷媒を図示せぬ膨張弁に流入させることにより、図1Cで示されるように、作用部33の粘性流体の粘度が、例えばゼリー状に高くなる。
【0045】
以上の動作により、図1Cにおいては、箱11に収容されている易損品12が、対象物支持装置13の作用部33によって支持され、固定される。
【0046】
このようにして、易損品12を箱11へ梱包する時、または、箱11から取り出す時には、粘度制御部32が、作用部33の粘性流体の粘度を低く制御し、箱11を運搬する時には、作用部33の粘性流体の粘度を高く制御することで、易損品12を、柔軟な面で支持して、安全に運搬することができる。
【0047】
なお、上述した説明においては、衝撃に弱い易損品12を固定の対象物としたが、低温で高粘度を示す粘性流体が作用部33に封入されている場合には、低温状態での運搬に適した、生鮮食料品、動物や人間の臓器などを固定の対象物としてもよい。
【0048】
また、対象物支持装置13は、運搬において易損品12等を固定する用途に限らず、所定の容器等に収容された貴重品を保管する金庫などに適用することもできる。
【0049】
次に、図2のブロック図を参照して、図1の対象物支持装置13の機能構成例について説明する。
【0050】
図2において、対象物支持装置13は、コンプレッサ31、作用部33、操作入力部51、粘度モニタリング部52、ヒートポンプ53、注入バッファ54、および排出バッファ55から構成される。
【0051】
コンプレッサ31および粘度制御部32は、図1で説明したコンプレッサ31および粘度制御部32と同一であるので、その説明は省略する。
【0052】
操作入力部51は、例えば、各種の操作ボタンやダイヤル等から構成され、対象物支持装置13に対する指示が入力されるとき、ユーザに操作され、その操作内容に対応した操作信号を発生し、粘度モニタリング部52に供給する。
【0053】
より具体的には、操作入力部51は、易損品12の固定が指示されるとき、または、易損品12の固定の解除が指示されるとき、ユーザにより操作され、その操作内容に対応した操作信号を発生し、粘度モニタリング部52に供給する。
【0054】
粘度モニタリング部52は、作用部33の粘性流体の粘度Vを検知し、その粘度Vが、操作入力部51からの操作信号に応じた粘度になるようにヒートポンプ53を制御する。
【0055】
粘度モニタリング部52は、目的粘度設定部52a、粘度検知部52b、および差分算出部52cを備えている。
【0056】
目的粘度設定部52aは、操作入力部51からの操作信号に応じて、作用部33の粘性流体の粘度についての、ユーザの所望の粘度である目的粘度V0を設定し、差分算出部52cに供給する。
【0057】
より具体的には、目的粘度設定部52aは、操作入力部51が操作されて、易損品12の固定が指示されると、目的粘度V0を高粘度に設定し、差分算出部52cに供給する。また、目的粘度設定部52aは、操作入力部51が操作されて、易損品12の固定の解除が指示されると、目的粘度V0を低粘度に設定し、差分算出部52cに供給する。
【0058】
ここで、目的粘度V0として設定される粘度は、粘度モニタリング部52内の図示せぬメモリに、作用部33の粘性流体の温度対粘度特性を予め記憶させ、その粘度特性より得られる粘度変化の範囲において決定される。
【0059】
粘度検知部52bは、いわゆる温度センサから構成され、作用部33の粘性流体の温度を測定する。粘度検知部52bは、粘度モニタリング部52内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部33の粘性流体の温度対粘度特性に基づいて、測定した温度に対応する粘度Vを求めて、差分算出部52cに供給する。
【0060】
差分算出部52cは、目的粘度設定部52aからの目的粘度V0と、粘度検知部52bからの粘度Vとの差分V0−Vを算出する。
【0061】
そして、粘度モニタリング部52は、差分算出部52cが算出した差分V0−Vと、図示せぬメモリに記憶されている温度対粘度特性とに基づいて、差分V0−Vに対応する温度差を求め、その温度差を0にするようにヒートポンプ53を制御する。
【0062】
ヒートポンプ53は、コンプレッサ31がその一部として構成されるヒートポンプである。ヒートポンプ53は、粘度モニタリング部52の制御の下、差分V0−Vに対応する温度差を0にする熱量を、作用部33および注入バッファ54の粘性流体に供給するか、または、粘性流体から吸収する。
【0063】
注入バッファ54は、作用部33の嚢状部を構成する膜の拡張による嚢状部の体積の増加や、粘性流体自身の温度変化による体積の減少に応じて、作用部33に流入される粘性流体を一時的に蓄える。注入バッファ54に蓄えられている粘性流体は、ヒートポンプ53からの熱量によって、作用部33の粘性流体とともに、その温度が制御される。
【0064】
排出バッファ55は、作用部33の嚢状部を構成する膜の収縮による嚢状部の体積の減少や、粘性流体自身の温度変化による体積の増加に応じて、作用部33において余剰となって排出された粘性流体を一時的に蓄える。排出バッファ55に蓄えられた粘性流体は、注入バッファ54に流入されるようになっており、その温度は、遅滞なく注入バッファ54に流入される粘度になるように、例えば、粘度モニタリング部52によって、ヒートポンプ53が制御されることで調整される。
【0065】
すなわち、粘性流体は、注入バッファ54、作用部33、排出バッファ55、注入バッファ54、…の順番に循環しながら流動する。
【0066】
このような構成により、対象物支持装置13は、作用部33の粘性流体の粘度を制御することができる。
【0067】
次に、図3のフローチャートを参照して、対象物支持装置13の目的粘度設定処理について説明する。
【0068】
ステップS11において、粘度モニタリング部52は、操作入力部51が、ユーザによって操作され、対象物の固定が指示されたか否かを判定する。
【0069】
ステップS11において、例えば、図1Bで示されるように、作用部33が、あたかも水のごとく、易損品12を包み込み、箱11に満たされた状態で、操作入力部51が操作され、対象物としての易損品12の固定が指示された場合、処理は、ステップS12に進む。
【0070】
ステップS12において、粘度モニタリング部52の目的粘度設定部52aは、操作入力部51からの易損品12の固定を指示する旨の操作信号に応じて、目的粘度V0を所定の高粘度に設定し、差分算出部52cに供給して、処理は終了する。
【0071】
この処理により、例えば、図1Cで示されるように、箱11に収容されている易損品12が、作用部33により固定される。
【0072】
一方、ステップS11において、対象物の固定が指示されていないと判定された場合、処理は、ステップS13に進み、粘度モニタリング部52は、ユーザによって対象物の固定の解除が指示されたか否かを判定する。
【0073】
ステップS13において、例えば、図1Cで示されるように、ゼリー状の粘度の作用部33が、易損品12を包み込み、箱11に満たされた状態で、操作入力部51が操作され、対象物としての易損品12の固定の解除が指示された場合、処理は、ステップS14に進む。
【0074】
ステップS14において、目的粘度設定部52aは、目的粘度V0を所定の低粘度に設定し、差分算出部52cに供給して、処理は終了する。
【0075】
この処理により、例えば、図1Bで示されるように、作用部33は、箱11に易損品12とともに、あたかも水のように満たされた状態となるため、易損品12を上方に移動させることが可能となる。結果として、易損品12を箱11より取り出すことが可能となる。
【0076】
なお、ステップS13において、対象物の固定の解除が指示されていないと判定された場合、処理は、ステップS11に戻り、これ以降の処理が繰り返される。
【0077】
このような処理により、易損品12を箱11に収容する、または、箱11より取り出すために、作用部33の粘性流体の目的粘度V0が設定される。
【0078】
次に、図4のフローチャートを参照して、対象物支持装置13の温度による粘度制御処理について説明する。
【0079】
ステップS31において、粘度検知部52bは、作用部33の粘性流体の温度を測定し、処理は、ステップS32に進む。
【0080】
ステップS32において、粘度検知部52bは、粘度モニタリング部52内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部33の粘性流体の温度対粘度特性に基づいて、測定した温度に対応する粘度Vを求め、差分算出部52cに供給して、処理は、ステップS33に進む。
【0081】
ステップS33において、差分算出部52cは、粘度検知部52bからの粘度Vと、目的粘度設定部52aから供給された目的粘度V0との差分V0−Vを算出し、処理は、ステップS34に進む。
【0082】
ステップS34において、粘度モニタリング部52は、目的粘度V0と作用部33の粘性流体の粘度Vとの差分V0−Vが略0であるか否かを判定する。
【0083】
ステップS34において、差分V0−Vが略0であると判定された場合、そのときの作用部33の粘性流体の粘度Vは、目的粘度V0と等しい粘度であるので、処理は、ステップS31に戻り、ステップS31乃至ステップS34の処理が繰り返される。
【0084】
すなわち、この場合、粘性流体の粘度Vは、目的粘度V0となっており、粘度を変える必要がないので、ステップS31乃至ステップS34の処理を繰り返すことにより、対象物支持装置13は、粘度Vを監視し続ける。
【0085】
一方、ステップS34において、差分V0−Vが略0でないと判定された場合、処理は、ステップS35に進み、粘度モニタリング部52は、差分V0−Vが正であるか否か、すなわち、作用部33の粘性流体の粘度Vより目的粘度V0の方が高いか否かを判定する。
【0086】
ステップS35において、差分V0−Vが正である、すなわち、作用部33の粘性流体の粘度Vより目的粘度V0の方が高いと判定された場合、処理は、ステップS36に進む。
【0087】
ステップS36において、粘度モニタリング部52は、ヒートポンプ53を制御して、差分V0−Vに応じて粘性流体を冷却する。すなわち、粘度モニタリング部52は、目的粘度V0と粘度Vとに対応するそれぞれの温度を求めるとともに、それらの温度差から、必要な熱量を算出し、算出された熱量に相当する熱量を吸収するように、ヒートポンプ53を制御して、作用部33の粘性流体の粘度Vを高くして目的粘度V0に近づけるように、作用部33および注入バッファ54の粘性流体の温度を下げる。ステップS36の後、処理は、ステップS31に戻り、差分V0−Vが正である限りステップS31乃至ステップS36の処理が繰り返される。
【0088】
一方、ステップS35において、差分V0−Vが正でない、すなわち、作用部33における粘度Vより目的粘度V0の方が低いと判定された場合、処理は、ステップS37に進む。
【0089】
ステップS37において、粘度モニタリング部52は、ヒートポンプ53を制御して、差分V0−Vに応じて粘性流体を加熱する。すなわち、粘度モニタリング部52は、目的粘度V0と粘度Vとに対応するそれぞれの温度を求めるとともに、それらの温度差から、必要な熱量を算出し、算出された熱量に相当する熱量を発生するように、ヒートポンプ53を制御して、作用部33の粘性流体の粘度Vを低くして目的粘度V0に近づけるように、作用部33および注入バッファ54の粘性流体の温度を上げる。ステップS37の後、処理は、ステップS31に戻り、差分V0−Vが負である限りステップS31乃至ステップS35およびステップS37の処理が繰り返される。
【0090】
以上の処理により、上述した目的粘度設定処理で、目的粘度V0が易損品12の固定の指示の有無により変化しても、対応して粘性流体の粘度を制御することが可能となる。
【0091】
結果として、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、作用部33の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、作用部33の粘度を上げて、柔軟な面で支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12を安全に運搬することが可能になる。
【0092】
以上においては、作用部33の嚢状部を構成する膜の伸縮による嚢状部の体積の増減や、粘性流体自身の温度変化による体積の増減を考慮したため、注入バッファ54および排出バッファ55を設けた例について説明してきたが、嚢状部を構成する膜を伸縮しない膜としたり、粘性流体自身の体積の増減がない場合、注入バッファ54および排出バッファ55は、必ずしも設けられる必要がない。
【0093】
図5は、嚢状部を構成する膜を伸縮しない膜としたり、粘性流体自身の体積の増減がない場合の、図1の対象物支持装置13の他の機能構成例を示している。
【0094】
なお、図5においては、図2と対応する構成には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。すなわち、図5の対象物支持装置13は、図2の対象物支持装置13に、注入バッファ54および排出バッファ55を備えていない点以外は、基本的に、図2の対象物支持装置13と同様の構成を有するものである。
【0095】
図5の対象物支持装置13においても、図2の対象物支持装置13と同様の作用効果を奏することができる。なお、図5の対象物支持装置13による目的粘度設定処理および粘度制御処理については、図3および図4のフローチャートを参照して説明した、図2の対象物支持装置13の処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0096】
また、粘性流体の種類によっては、温度の変化に伴い、粘度の変化に加えて、固相、液相、気相間の相転移が発生することがあるが、対象物を固定するという用途に見合う場合には、これを妨げるものではない。
【0097】
例えば、粘性流体が水である場合、液相から固相に相転移することで、すなわち、水から氷に変化することで、対象物支持装置13は対象物を固定することができる。
【0098】
また、上述した説明においては、図1の作用部33に封入される粘性流体として、温度によって粘度が変化するものを適用したが、例えば、溶質および溶媒からなる混合物の濃度によって粘度が変化するものや、pH値によって粘度が変化するものを適用することもできる。
【0099】
まず、図6乃至図9を参照して、溶質および溶媒からなる混合物の濃度によって粘度制御を行う例について説明する。
【0100】
図6は、濃度によって粘度制御を行う対象物支持装置71の機能構成例を示すブロック図である。
【0101】
図6において、対象物支持装置71は、操作入力部91、作用部92、粘度モニタリング部93、溶媒バッファ94、溶質バッファ95、濃度調整部96、注入バッファ97、分離部98、およびコンプレッサ99から構成される。
【0102】
操作入力部91は、図2の操作入力部51に対応し、各種の操作ボタンやダイヤル等から構成され、対象物支持装置71に対する指示が入力されるとき、ユーザに操作され、その操作内容に対応した操作信号を発生し、粘度モニタリング部93に供給する。
【0103】
作用部92は、図1の作用部33に対応し、十分柔軟性および伸縮性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、濃度によって粘度が変化する粘性流体が封入された嚢状部から構成されており、固定される対象物としての易損品12に応じた形状で、その易損品12に当接する。
【0104】
作用部92に封入される粘性流体は、溶質と溶媒の2種類の物質が混合された混合物であり、この2種類の物質はそれぞれ分離が可能であるものとする。すなわち、作用部92に封入される粘性流体においては、通常の状態では2種類の物質が混合され、所定の条件(分離膜で隔てる、電界や磁界を与える、温度を変化させる等)によって2種類の物質が分離される。
【0105】
以下、作用部92に封入される粘性流体を、溶質が砂で、溶媒が水である混合物であるものとして説明する。
【0106】
粘度モニタリング部93は、図2の粘度モニタリング部52に対応し、作用部92の粘性流体の粘度Vを検知し、その粘度Vが、操作入力部91からの操作信号に応じた粘度になるように濃度調整部96を制御する。
【0107】
粘度モニタリング部93は、目的粘度設定部93a、粘度検知部93b、および差分算出部93cを備えている。
【0108】
目的粘度設定部93aは、操作入力部91からの操作信号に応じて、作用部92の粘性流体の粘度についての、ユーザの所望の粘度である目的粘度V0を設定し、差分算出部93cに供給する。
【0109】
より具体的には、目的粘度設定部93aは、操作入力部91が操作されて、易損品12の固定が指示されると、目的粘度V0を高粘度に設定し、差分算出部93cに供給する。また、目的粘度設定部93aは、操作入力部91が操作されて、易損品12の固定の解除が指示されると、目的粘度V0を低粘度に設定し、差分算出部93cに供給する。
【0110】
ここで、目的粘度V0として設定される粘度は、粘度モニタリング部93内の図示せぬメモリに、予め測定した、溶質および溶媒の混合比対粘度特性を予め記憶させ、その粘度特性より得られる粘度変化の範囲において決定される。
【0111】
粘度検知部93bは、作用部92に対して外力を加えたときの応力を測定する。粘度検知部93bは、粘度モニタリング部93内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部92の粘性流体の応力対粘度特性に基づいて、測定した応力に対応する粘度Vを求めて、差分算出部93cに供給する。
【0112】
差分算出部93cは、目的粘度設定部93aからの目的粘度V0と、粘度検知部93bからの粘度Vとの差分V0−Vを算出する。
【0113】
そして、粘度モニタリング部93は、差分算出部93cが算出した差分V0−Vと、図示せぬメモリに記憶されている混合比対粘度特性とに基づいて、差分V0−Vに対応する混合比を求め、その混合比の差を0にするように濃度調整部96を制御する。
【0114】
溶媒バッファ94は、溶媒である水を蓄えており、濃度調整部96からの要求に応じて、適宜、濃度調整部96に、その水を供給する。
【0115】
溶質バッファ95は、溶質である砂を蓄えており、濃度調整部96からの要求に応じて、適宜、濃度調整部96に、その砂を供給する。
【0116】
濃度調整部96は、粘度モニタリング部93の制御の下、溶媒バッファ94および溶質バッファ95から、差分V0−Vに対応する混合比の差を0にする量の水および砂を取得し、混合することで、混合物としての粘性流体の濃度を調整する。濃度調整部96は、濃度を調整した粘性流体を、注入バッファ97に供給する。
【0117】
注入バッファ97は、作用部92の嚢状部を構成する膜の拡張による嚢状部の体積の増加や、粘性流体自身の温度変化による体積の減少に応じて、作用部92に流入される粘性流体を一時的に蓄える。
【0118】
分離部98は、作用部92の嚢状部を構成する膜の収縮による嚢状部の体積の減少や、粘性流体自身の温度変化による体積の増加に応じて、作用部92において余剰となって排出された粘性流体を一時的に蓄え、コンプレッサ99を動力源として濾過(固液分離)することによって、砂と水に分離する。分離部98は、分離した溶媒としての水を、溶媒バッファ94に供給するとともに、分離した溶質としての砂を、溶質バッファ95に供給する。
【0119】
すなわち、分離部98において分離された水および砂は、濃度調整部96によって再度混合され、混合物の粘性流体として、注入バッファ97、そして、作用部92に流入する。
【0120】
このような構成により、対象物支持装置71は、作用部92の粘性流体の粘度を制御することができる。
【0121】
なお、対象物支持装置71においては、目的粘度設定処理は、図3のフローチャートを参照して説明した、図2の粘度モニタリング部52による目的粘度設定処理と同様にして、粘度モニタリング部93によって行われるので、その説明は省略する。
【0122】
次に、図7のフローチャートを参照して、対象物支持装置71の濃度による粘度制御処理について説明する。
【0123】
ステップS51において、粘度検知部93bは、作用部92に対して外力を加えたときの応力を測定し、処理は、ステップS52に進む。
【0124】
ステップS52において、粘度検知部93bは、粘度モニタリング部93内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部92の粘性流体の応力対粘度特性に基づいて、測定した応力に対応する粘度Vを求め、差分算出部93cに供給して、処理は、ステップS53に進む。
【0125】
ステップS53において、差分算出部93cは、粘度検知部93bからの粘度Vと、目的粘度設定部93aから供給された目的粘度V0との差分V0−Vを算出し、処理は、ステップS54に進む。
【0126】
ステップS54において、粘度モニタリング部93は、目的粘度V0と作用部92の粘性流体の粘度Vとの差分V0−Vが略0であるか否かを判定する。
【0127】
ステップS54において、差分V0−Vが略0であると判定された場合、すなわち、そのときの作用部92の粘性流体の粘度Vは、目的粘度V0と等しい粘度であるので、処理は、ステップS51に戻り、ステップS51乃至ステップS54の処理が繰り返される。
【0128】
すなわち、この場合、粘性流体の粘度Vは、目的粘度V0となっており、粘度を変える必要がないので、ステップS51乃至ステップS54の処理を繰り返すことにより、対象物支持装置71は、粘度Vを監視し続ける。
【0129】
一方、ステップS54において、差分V0−Vが略0でないと判定された場合、処理は、ステップS55に進み、粘度モニタリング部93は、差分V0−Vが正であるか否か、すなわち、作用部92の粘性流体の粘度Vより目的粘度V0の方が高いか否かを判定する。
【0130】
ステップS55において、差分V0−Vが正である、すなわち、作用部92の粘性流体の粘度Vより目的粘度V0の方が高いと判定された場合、処理は、ステップS56に進む。
【0131】
ステップS56において、粘度モニタリング部93は、濃度調整部96を制御して、差分V0−Vに応じて、粘性流体における溶質としての砂の比率を上げる。すなわち、粘度モニタリング部93は、目的粘度V0と粘度Vとに対応するそれぞれの混合比を求めるとともに、それらの混合比の差から、粘性流体における砂の比率を上げるように、濃度調整部96を制御して、作用部92の粘性流体の粘度Vを高くして目的粘度V0に近づけるように、水と砂を混合させる。ステップS56の後、処理は、ステップS51に戻り、差分V0−Vが正である限りステップS51乃至ステップS56の処理が繰り返される。
【0132】
一方、ステップS55において、差分V0−Vが正でない、すなわち、作用部92の粘性流体の粘度Vより目的粘度V0の方が低いと判定された場合、処理は、ステップS57に進む。
【0133】
ステップS57において、粘度モニタリング部93は、濃度調整部96を制御して、差分V0−Vに応じて、粘性流体における溶媒としての水の比率を上げる。すなわち、粘度モニタリング部93は、目的粘度V0と粘度Vとに対応するそれぞれの混合比を求めるとともに、それらの混合比の差から、粘性流体における水の比率を上げるように、濃度調整部96を制御して、作用部92の粘性流体の粘度Vを低くして目的粘度V0に近づけるように、水と砂を混合させる。ステップS57の後、処理は、ステップS51に戻り、差分V0−Vが負である限りステップS51乃至ステップS55およびステップS57の処理が繰り返される。
【0134】
以上の処理により、温度によって粘度が変化する粘性流体と同様にして、溶質および溶媒からなる混合物の濃度によって粘度が変化する粘性流体の粘度を制御することが可能となる。
【0135】
結果として、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、作用部92の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、作用部92の粘度を上げて、柔軟な面で支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12を安全に運搬することが可能になる。
【0136】
また、粘性流体として、溶質および溶媒の混合物を適用し、その濃度によって粘性流体の粘度を変化させることで、温度によって粘度が変化する粘性流体を適用した場合と比較して、熱量の出入が不要な分、粘度を維持するためのエネルギーを小さくすることができる。
【0137】
以上においては、作用部93の嚢状部を構成する膜の伸縮による嚢状部の体積変化の増減や、粘性流体自身の温度変化による体積の増減を考慮したため、溶質バッファ95および注入バッファ97を設けた例について説明してきたが、嚢状部を構成する膜を伸縮しない膜としたり、粘性流体自身の体積変化の自由度が低い場合、溶質バッファ95および注入バッファ97は、必ずしも設けられる必要がない。
【0138】
図8は、嚢状部を構成する膜を伸縮しない膜としたり、粘性流体自身の体積変化の自由度が低い場合の、図6の対象物支持装置71の他の機能構成例を示している。
【0139】
なお、図8においては、図6と対応する構成には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。すなわち、図8の対象物支持装置71は、図6の対象物支持装置71に、溶質バッファ95および注入バッファ97を備えていない点以外は、基本的に、図6の対象物支持装置71と同様の構成を有するものである。
【0140】
ただし、図8の分離部98は、作用部92の粘性流体から、水のみを分離し、溶媒バッファ94に供給する。
【0141】
なお、図8の対象物支持装置71による目的粘度設定処理については、図3のフローチャートを参照して説明した、図2の対象物支持装置13の処理と同様であり、また、粘度制御処理については、図7のフローチャートを参照して説明した、図6の対象物支持装置71の処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0142】
また、図8の対象物支持装置71においては、粘性流体における溶媒としての水の比率のみが調整されるので、粘度制御処理における溶媒の流動性が良い反面、目的粘度V0に対して、作用部92における粘性流体の体積が一意的に決まるので、作用部92の形状や体積の自由度は、図6の構成例と比較して低くなる。
【0143】
しかしながら、図8の対象物支持装置71は、例えば、ユーザが、作用部92の特定の表面に対して粘度変化を感じることができるものに適用することができる。
【0144】
次に、図9を参照して、図8の対象物支持装置71の応用例について説明する。
【0145】
図9においては、作用部92は、溶質と溶媒の混合物である粘性流体が封入されたベッドとして機能する。濃度調整部96は、ユーザによる操作入力に応じた粘度モニタリング部93の制御の下、分離部98によって分離され、溶媒バッファ94に蓄えられ、粘性流体に混合される溶媒の量を調整する。
【0146】
図9Aに示される状態においては、溶媒バッファ94には、溶媒は蓄えられておらず、全て作用部92の粘性流体に混合されている。
【0147】
図9Aに示される状態から、ユーザによる操作入力に応じた粘度モニタリング部93の制御によって、図9Bに示されるように、分離部98は、作用部92の粘性流体から溶媒を分離し、溶媒バッファ94は、分離された溶媒を蓄える。
【0148】
すなわち、図9Bに示される作用部92の粘性流体は、図9Aに示される作用部92と比較して溶媒の比率は低く、粘度は高い。
【0149】
このように、図8の対象物支持装置71をベッドに適用することにより、例えば、ユーザが就寝する時にはウォータベッドのように粘性流体の粘度を低くし(図9A)、起床後に活動する時にはマットレスのように粘性流体の粘度を高くする(図9B)ようにするなど、ユーザに、図8の対象物支持装置71の特定の表面で、生活の用途に応じた複数段階の柔らかさ(応力応答)を提供することができ、ユーザは、ベッドとしての対象物支持装置71を複数の用途に用いることができる。なお、図8の対象物支持装置71は、ベッドに限らず、ソファ等の他の家具に適用することができる。
【0150】
また、溶質と溶媒とを混合した粘性流体として、ダイラタンシー性(力を加えると徐々に硬くなって固体のようになり、力を加えるのを止めると元の流体に戻る性質)を有する粘性流体を用いることにより、作用部92に加わる外力に応じて、様々な感触を与えることができる。
【0151】
なお、上述した説明では、粘性流体として、溶質と溶媒の2種類の混合物を用いるようにしたが、3種類以上の混合物を用いるようにしてもよい。
【0152】
次に、図10乃至図12を参照して、pH値によって粘度制御を行う例について説明する。
【0153】
図10は、pH値によって粘度制御を行う対象物支持装置111の機能構成例を示すブロック図である。
【0154】
図10において、対象物支持装置111は、操作入力部131、作用部132、粘度モニタリング部133、第1溶質バッファ134、アルカリ性タンク135、酸性タンク136、pH調整部137、注入バッファ138、排出バッファ139、電解質分離部140、酸塩基分離分解部141、および電源142から構成される。
【0155】
操作入力部131は、図2の操作入力部51に対応し、各種の操作ボタンやダイヤル等から構成され、対象物支持装置111に対する指示が入力されるとき、ユーザに操作され、その操作内容に対応した操作信号を発生し、粘度モニタリング部133に供給する。
【0156】
作用部132は、図1の作用部33に対応し、十分柔軟性および伸縮性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、pH値によって粘度が変化する粘性流体が封入された嚢状部から構成されており、固定される対象物としての易損品12に応じた形状で、その易損品12に当接する。
【0157】
作用部132に封入される粘性流体は、pH値によってゾルとゲルの形態が可逆的に変化する物質であり、pH値の変化によって粘度特性が可逆的に変化する高分子(以下、第1溶質と称する)、加水分解によって酸と塩基とに分離される塩(以下、第2溶質と称する)、および、第1溶質と第2溶質とが可溶な溶媒から構成される。
【0158】
ここでいう塩は、酸と塩基との中和反応によって生じる化合物で、酸の陰性成分と塩基の陽性成分とからなるものをいう。
【0159】
第1溶質としては、例えば、ペクチン等があり、第2溶質としては、例えば、NaCl(塩化ナトリウム)やKCl(塩化カリウム)等がある。また、溶媒としては、水が用いられる。
【0160】
さらに、第2溶質を加水分解して得られる塩基(以下、アルカリ性第2溶質と称する)としては、HCl(塩化水素)等があり、第2溶質を加水分解して得られる酸(以下、酸性第2溶質と称する)としては、NaOH(水酸化ナトリウム)やKOH(水酸化カリウム)等がある。
【0161】
このようにして構成される粘性流体は、pH値が低い(酸性が強い)程、高粘度を示し、逆に、pH値が高い(アルカリ性が強い)程、低粘度を示す。
【0162】
粘度モニタリング部133は、図2の粘度モニタリング部52に対応し、作用部132の粘性流体の粘度Vを検知し、その粘度Vが、操作入力部131からの操作信号に応じた粘度になるようにpH調整部137を制御する。
【0163】
粘度モニタリング部133は、目的粘度設定部133a、粘度検知部133b、および差分算出部133cを備えている。
【0164】
目的粘度設定部133aは、操作入力部131からの操作信号に応じて、作用部132の粘性流体の粘度についての、ユーザの所望の粘度である目的粘度V0を設定し、差分算出部133cに供給する。
【0165】
より具体的には、目的粘度設定部133aは、操作入力部131が操作されて、易損品12の固定が指示されると、目的粘度V0を高粘度に設定し、差分算出部133cに供給する。また、目的粘度設定部133aは、操作入力部131が操作されて、易損品12の固定の解除が指示されると、目的粘度V0を低粘度に設定し、差分算出部133cに供給する。
【0166】
ここで、目的粘度V0として設定される粘度は、粘度モニタリング部133内の図示せぬメモリに、作用部132の粘性流体のpH値対粘度特性を予め記憶させ、その粘度特性より得られる粘度変化の範囲において決定される。
【0167】
粘度検知部133bは、いわゆるpHセンサから構成され、作用部132の粘性流体のpH値を測定する。粘度検知部133bは、粘度モニタリング部133内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部132の粘性流体のpH値対粘度特性に基づいて、測定したpH値に対応する粘度Vを求めて、差分算出部133cに供給する。
【0168】
差分算出部133cは、目的粘度設定部133aからの目的粘度V0と、粘度検知部133bからの粘度Vとの差分V0−Vを算出する。
【0169】
そして、粘度モニタリング部133は、差分算出部133cが算出した差分V0−Vと、予め測定され、図示せぬメモリに記憶されているpH値対粘度特性とに基づいて、差分V0−Vに対応するpH値の差分を求め、そのpH値の差分を0にするようにpH調整部137を制御する。
【0170】
第1溶質バッファ134は、第1溶質を蓄えており、pH調整部137からの要求に応じて、適宜、pH調整部137に、その第1溶質を供給する。
【0171】
アルカリ性タンク135は、アルカリ性第2溶質を蓄えており、pH調整部137からの要求に応じて、適宜、pH調整部137に、そのアルカリ性第2溶質を供給する。
【0172】
酸性タンク136は、酸性第2溶質を蓄えており、pH調整部137からの要求に応じて、適宜、pH調整部137に、その酸性第2溶質を供給する。
【0173】
pH調整部137は、粘度モニタリング部133の制御の下、第1溶質バッファ134、アルカリ性タンク135、および酸性タンク136から、差分V0−Vに対応するpH値の差分を0にする量の第1溶質、アルカリ性第2溶質、および酸性第2溶質を取得し、混合することで、粘性流体のpH値を調整する。pH調整部137は、pH値を調整した粘性流体を、注入バッファ138に供給する。
【0174】
注入バッファ138は、作用部132の嚢状部を構成する膜の拡張による嚢状部の体積の増加や、粘性流体自身の温度変化による体積の減少に応じて、作用部132に流入される粘性流体を一時的に蓄える。
【0175】
排出バッファ139は、作用部132の嚢状部を構成する膜の収縮による嚢状部の体積の減少や、粘性流体自身の温度変化による体積の増加に応じて、作用部132において余剰となって排出された粘性流体を一時的に蓄える。排出バッファ139に蓄えられた粘性流体は、電解質分離部140に流入されるようになっている。
【0176】
電解質分離部140は、排出バッファ139から流入されてきた粘性流体を、透析により、第1溶質と第2溶質とに分離し、分離したうちの第1溶質を第1溶質バッファ134に供給する。すなわち、電解質分離部140において分離された第1溶質は、第1溶質バッファ134に蓄えられ、pH調整部137において再度混合され、pH値が調整された粘性流体として、注入バッファ138、作用部132に流入する。
【0177】
また、電解質分離部140は、分離したうちの第2溶質を酸塩基分離分解部141に供給する。
【0178】
酸塩基分離分解部141は、電源142から供給される電気による電気分解によって、第2溶質をアルカリ性第2溶質と酸性第2溶質とに分解する。
【0179】
酸塩基分離分解部141は、分解したうちのアルカリ性第2溶質をアルカリ性タンク135に供給するとともに、分解したうちの酸性第2溶質を酸性タンク136に供給する。
【0180】
すなわち、分解されたアルカリ性第2溶質は、アルカリ性タンク135に蓄えられ、pH調整部137において再度混合され、pH値が調整された粘性流体として、注入バッファ138、そして、作用部132に流入する。
【0181】
また、分解された酸性第2溶質は、酸性タンク136に蓄えられ、pH調整部137において再度混合され、pH値が調整された粘性流体として、注入バッファ138、そして、作用部132に流入する。
【0182】
このような構成により、対象物支持装置111は、作用部132の粘性流体の粘度を制御することができる。
【0183】
なお、対象物支持装置111においては、目的粘度設定処理は、図3のフローチャートを参照して説明した、図2の粘度モニタリング部52による目的粘度設定処理と同様にして、粘度モニタリング部133によって行われるので、その説明は省略する。
【0184】
次に、図11のフローチャートを参照して、対象物支持装置111のpH値による粘度制御処理について説明する。
【0185】
ステップS71において、粘度検知部133bは、作用部132の粘性流体のpH値を測定し、処理は、ステップS72に進む。
【0186】
ステップS72において、粘度検知部133bは、粘度モニタリング部133内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部132の粘性流体のpH値対粘度特性に基づいて、測定したpH値に対応する粘度Vを求め、差分算出部133cに供給して、処理は、ステップS73に進む。
【0187】
ステップS73において、差分算出部133cは、粘度検知部133bからの粘度Vと、目的粘度設定部133aから供給された目的粘度V0との差分V0−Vを算出し、処理は、ステップS74に進む。
【0188】
ステップS74において、粘度モニタリング部133は、目的粘度V0と作用部132の粘性流体の粘度Vとの差分V0−Vが略0であるか否かを判定する。
【0189】
ステップS74において、差分V0−Vが略0であると判定された場合、すなわち、そのときの作用部132の粘性流体の粘度Vは、目的粘度V0と等しい粘度であるので、処理は、ステップS71に戻り、ステップS71乃至ステップS74の処理が繰り返される。
【0190】
すなわち、この場合、粘性流体の粘度Vは、目的粘度V0となっており、粘度を変える必要がないので、ステップS71乃至ステップS74の処理を繰り返すことにより、対象物支持装置111は、粘度Vを監視し続ける。
【0191】
一方、ステップS74において、差分V0−Vが略0でないと判定された場合、処理は、ステップS75に進み、粘度モニタリング部133は、差分V0−Vが正であるか否か、すなわち、作用部132の粘性流体の粘度Vより目的粘度V0の方が高いか否かを判定する。
【0192】
ステップS75において、差分V0−Vが正である、すなわち、作用部132における粘度Vより目的粘度V0の方が高いと判定された場合、処理は、ステップS76に進む。
【0193】
ステップS76において、粘度モニタリング部133は、pH調整部137を制御して、差分V0−Vに応じて酸性第2溶質を加える。すなわち、粘度モニタリング部133は、目的粘度V0と粘度Vとに対応するpH値を求めるとともに、それらのpH値の差から、粘性流体における酸性第2溶質を加えるように、pH調整部137を制御して、作用部132の粘性流体の粘度Vを高くして目的粘度V0に近づけるように、pH値を低くする。ステップS76の後、処理は、ステップS71に戻り、差分V0−Vが正である限りステップS71乃至ステップS76の処理が繰り返される。
【0194】
一方、ステップS75において、差分V0−Vが正でない、すなわち、作用部132における粘度Vより目的粘度V0の方が低いと判定された場合、処理は、ステップS77に進む。
【0195】
ステップS77において、粘度モニタリング部133は、pH調整部137を制御して、差分V0−Vに応じてアルカリ性第2溶質を加える。すなわち、粘度モニタリング部133は、目的粘度V0と粘度Vとに対応するpH値を求めるとともに、それらのpH値の差から、粘性流体におけるアルカリ性第2溶質を加えるように、pH調整部137を制御して、作用部132の粘性流体の粘度Vを低くして目的粘度V0に近づけるように、pH値を高くする。ステップS77の後、処理は、ステップS71に戻り、差分V0−Vが負である限りステップS71乃至ステップS75およびステップS77の処理が繰り返される。
【0196】
以上の処理により、温度によって粘度が変化する粘性流体と同様にして、pH値によって粘度が変化する粘性流体の粘度を制御することが可能となる。
【0197】
結果として、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、作用部132の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、作用部132の粘度を上げて、柔軟な面で支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12を安全に運搬することが可能になる。
【0198】
また、粘性流体として、pH値によって粘度が変化する粘性流体を適用することで、温度によって粘度が変化する粘性流体を適用した場合と比較して、熱量の出入が不要であり、かつ、化学変化による粘度の変化であるので、粘度を維持するためのエネルギーをより小さくすることができる。
【0199】
以上においては、粘性流体の粘度が、元々高粘度の領域にない場合について説明してきたが、次に、元々高粘度の粘性流体を用いる場合について説明する。
【0200】
図12は、元々高粘度の粘性流体を用いた場合の、図10の対象物支持装置111の他の機能構成例を示している。
【0201】
なお、図12においては、図10と対応する構成には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。すなわち、図12の対象物支持装置111は、図10の対象物支持装置111において、アルカリ性第2溶質が、アルカリ性タンク135から作用部132、第1溶質バッファ134、および排出バッファ139に供給される点以外は、基本的に、図10の対象物支持装置111と同様の構成を有するものである。
【0202】
図12の対象物支持装置111による目的粘度設定処理については、図3のフローチャートを参照して説明した、図2の対象物支持装置13の処理と同様であり、また、粘度制御処理については、図11のフローチャートを参照して説明した、図10の対象物支持装置111の処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0203】
図12の対象物支持装置111においては、アルカリ性タンク135から、作用部132、第1溶質バッファ134、および排出バッファ139にアルカリ性第2溶質が供給されることで、対象物支持装置111の粘性流体の粘度を全体的に低く保つことができ、元々高粘度の粘性流体であっても、その流動性を確保することができる。
【0204】
なお、上述した説明では、粘性流体を構成する第1溶質は、pH値が高い(アルカリ性が強い)程、低い粘度を示す性質を有するものとしたが、第1溶質が、pH値が低い(酸性が強い)程、低い粘度を示す性質を有する場合には、アルカリ性タンク135と酸性タンク136の構成を逆にすることもできる。
【0205】
また、pH値によって粘度が変化する粘性流体として、チキソトロピー性(外力が加わらない状態においては流動性を示さず、外力が加わると流動性を示す性質)を有する粘性流体を用いることにより、作用部92に加わる外力に応じて、粘性流体がより低い粘度を示すようにすることができる。
【0206】
以上、図1に示した対象物支持装置13の実施の形態を基本とした構成について説明したが、例えば、対象物支持装置13において、作用部を複数備える構成を用いることもできる。
【0207】
図13は、作用部を複数備えた対象物支持装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0208】
図13においては、箱11および易損品12は、図1と同一であるので、その説明は省略する。
【0209】
対象物支持装置211は、箱11に収容された易損品12を固定するのに用いられる。対象物支持装置211は、粘度制御部231、作用部232−1、および作用部232−2から構成される。
【0210】
粘度制御部231は、ユーザの操作入力に応じて、図示せぬヒートポンプを制御することで発生する、または吸収される熱によって、作用部232−1および作用部232−2に封入されている、温度によって粘度が変化する粘性流体の粘度を制御する。
【0211】
図1で説明した場合と同様に、以下の説明では、粘性流体は、温度が高い程、低粘度を示し、逆に、温度が低い程、高粘度を示すものとする。また、作用部232−1および作用部232−2には、それぞれ同様の粘性流体が封入されているものとする。
【0212】
作用部232−1は、十分柔軟性および伸縮性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、上述の粘性流体が封入された嚢状部から構成されており、固定される対象物としての易損品12に応じた形状で、その易損品12に対して作用する。
【0213】
作用部232−2は、十分柔軟性および伸縮性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、上述の粘性流体とともに、作用部232−1が封入された嚢状部から構成されており、固定される対象物としての易損品12に応じた形状で、その易損品12に当接する。
【0214】
すなわち、作用部232−2は、作用部232−1を包むように構成される。
【0215】
なお、作用部232−1および作用部232−2の嚢状部を構成する膜は、断熱性に優れたものを用いるものとする。これにより、作用部232−1の粘性流体と、作用部232−2の粘性流体との間の熱の移動を防ぐことができる。
【0216】
次に、図13A乃至図13Cを参照して、対象物支持装置211の動作について説明する。
【0217】
まず、第1の動作として、図13Aで示されるように、作用部232−1および作用部232−2は、対象物に対して上部の離れた位置に固定される。このとき、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体の粘度は、例えば水のように低くされている。
【0218】
第2の動作として、図13Bで示されるように、その状態で作用部232−1および作用部232−2は、図中の下方向に移動されることにより、易損品12に接近する。すると、作用部232−2は、易損品12に当接し、あたかも水のごとく振舞い、易損品12を包み込むように箱11に収容される。このとき、作用部232−1も、あたかも水のごとく振舞い、作用部232−2を挟んで易損品12の内側に収容される。
【0219】
次に、第3の動作として、粘度制御部231が、図示せぬヒートポンプを制御し、作用部232−1および作用部232−2から熱を吸収することにより、図13Cで示されるように、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体の粘度が高くなる。
【0220】
図13Cの状態においては、粘度制御部231は、作用部232−2の粘性流体の粘度を、箱11を運搬する際に易損品12が箱11の内側に衝突しても損壊しない程度に(例えば、ゼリー状に)高くするとともに、作用部232−1の粘性流体の粘度を、易損品12の内側底部を支持する固体のように、作用部232−2の粘性流体の粘度より高くする。
【0221】
以上の動作により、図13Cにおいては、箱11に収容されている易損品12が、対象物支持装置211の作用部232−1および作用部232−2によって固定される。
【0222】
このようにして、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体の粘度をそれぞれ粘度に上げて、柔軟な面と、ほぼ固体状の作用部とで支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12への衝撃を固体に近い面で吸収するよりも吸収しやすい構造とすることが可能となり、易損品12をより安全に運搬することが可能になる。
【0223】
なお、図13Cにおいては、粘度制御部231が、作用部232−2の粘性流体に加える圧力を、作用部232−1の粘性流体に加える圧力より大きくすることで、作用部232−1の表面と、作用部232−2の内側の面との距離を保つことができ、層状の構造を維持することができるとともに、作用部232−2の粘性流体の流動性を確保することができる。
【0224】
このように、粘性流体の流動性を確保することで、温度によって粘度が変化した粘性流体が嚢状部の中を循環し、粘性流体全体の粘度を均質にすることができ、衝撃を吸収しやすい構造とすることができる。
【0225】
また、図14に示されるように、作用部232−1の表面に、ある程度の弾力性を有する突起機構251を設けることで、作用部232−1の表面と、作用部232−2の内側の面との距離を保つようにして、層状の構造を維持するようにしてもよい。
【0226】
具体的には、突起機構251として、図15に示されるように、ある程度の太さを有するシリコーンゴム、弾力性に優れた繊維をコイル状の組織にしたもの、海綿状組織からなる突起などを適用することができる。
【0227】
なお、図14においては、突起機構251は、作用部232−1の表面に設けられるようにしたが、作用部232−2の内側の面に設ける、または、作用部232−1の表面と作用部232−2の内側の面のそれぞれに設けるようにしてもよい。
【0228】
このようにして、作用部232−1と作用部232−2とは、層状の構造を維持することができるとともに、作用部232−2は、その粘性流体の流動性を確保することで、温度によって粘度が変化した粘性流体が嚢状部の中を循環し、粘性流体全体の粘度を均質にすることができ、より衝撃を吸収しやすい構造とすることができる。
【0229】
次に、図16のブロック図を参照して、図13の対象物支持装置211の機能構成例について説明する。
【0230】
図16において、対象物支持装置211は、作用部232−1、作用部232−2、操作入力部271、粘度モニタリング部272、ヒートポンプ273−1、ヒートポンプ273−2、注入バッファ274−1、注入バッファ274−2、および排出バッファ275から構成される。
【0231】
操作入力部271は、図2の操作入力部51に対応し、例えば、各種の操作ボタンやダイヤル等から構成され、対象物支持装置211に対する指示が入力されるとき、ユーザに操作され、その操作内容に対応した操作信号を発生し、粘度モニタリング部272に供給する。
【0232】
粘度モニタリング部272は、図2の粘度モニタリング部52に対応し、作用部232−1および作用部232−2それぞれの粘性流体の粘度Vを検知し、それぞれの粘度Vが、操作入力部271からの操作信号に応じた粘度になるようにヒートポンプ273−1およびヒートポンプ273−2を制御する。
【0233】
粘度モニタリング部272は、目的粘度設定部272a、粘度検知部272b、および差分算出部272cを備えている。
【0234】
目的粘度設定部272aは、操作入力部271からの操作信号に応じて、作用部232−1および作用部232−2それぞれの粘性流体の粘度についての目的粘度V0を設定し、差分算出部272cに供給する。
【0235】
粘度検知部272bは、いわゆる温度センサから構成され、作用部232−1および作用部232−2それぞれの粘性流体の温度を測定する。粘度検知部272bは、粘度モニタリング部272内の図示せぬメモリに記憶されている、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体の温度対粘度特性に基づいて、測定したそれぞれの温度に対応する粘度Vを求めて、差分算出部272cに供給する。
【0236】
差分算出部272cは、目的粘度設定部272aからの作用部232−1の粘性流体についての目的粘度V0と、粘度検知部272bからの作用部232−1の粘性流体の粘度Vとの差分V0−Vを算出する。また、目的粘度設定部272aからの作用部232−2の粘性流体についての目的粘度V0と、粘度検知部272bからの作用部232−2の粘性流体の粘度Vとの差分V0−Vを算出する。
【0237】
そして、粘度モニタリング部272は、差分算出部272cが算出した作用部232−1および作用部232−2それぞれの粘性流体についての差分V0−Vと、図示せぬメモリに記憶されている温度対粘度特性とに基づいて、作用部232−1および作用部232−2それぞれの粘性流体についての差分V0−Vに対応する温度差を求め、それらの温度差を0にするようにヒートポンプ273−1およびヒートポンプ273−2を制御する。
【0238】
ヒートポンプ273−1は、図2のヒートポンプ53に対応し、粘度モニタリング部272の制御の下、作用部232−1の粘性流体についての差分V0−Vに対応する温度差を0にする熱量を、作用部232−1および注入バッファ274−1の粘性流体に供給するか、または、粘性流体から吸収する。
【0239】
同様に、ヒートポンプ273−2は、作用部232−2の粘性流体についての差分V0−Vに対応する温度差を0にする熱量を、作用部232−2および注入バッファ274−2の粘性流体に供給するか、または、粘性流体から吸収する。
【0240】
注入バッファ274−1は、図2の注入バッファ54に対応し、作用部232−1の嚢状部を構成する膜の拡張による嚢状部の体積の増加や、粘性流体自身の温度変化による体積の減少に応じて、作用部232−1に流入される粘性流体を一時的に蓄える。
【0241】
同様に、注入バッファ274−2は、作用部232−2の嚢状部を構成する膜の拡張による嚢状部の体積の増加や、粘性流体自身の温度変化による体積の減少に応じて、作用部232−2に流入される粘性流体を一時的に蓄える。
【0242】
排出バッファ275は、図2の排出バッファ55に対応し、作用部232−1および作用部232−2の嚢状部を構成する膜の収縮による嚢状部の体積の減少や、粘性流体自身の温度変化による体積の増加に応じて、作用部232−1および作用部232−2において余剰となって排出された粘性流体を一時的に蓄える。排出バッファ275に蓄えられた粘性流体は、注入バッファ274−1および注入バッファ274−2に流入されるようになっており、その温度は、遅滞なく注入バッファ274−1および注入バッファ274−2に流入される粘度になるように、例えば、粘度モニタリング部272によって、ヒートポンプ273−1およびヒートポンプ273−1が制御されることで調整される。
【0243】
すなわち、粘性流体は、注入バッファ274−1、作用部232−1、排出バッファ275、注入バッファ274−1、…の順番、または、注入バッファ274−2、作用部232−2、排出バッファ275、注入バッファ274−2、…の順番に循環しながら流動する。
【0244】
このような構成により、対象物支持装置211は、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体の粘度を制御することができる。
【0245】
なお、対象物支持装置211における、目的粘度設定処理や温度による粘度制御処理は、対応する図2の対象物支持装置13の各部によって行われる、図3および図4のフローチャートを参照して説明した処理と同様に行われるので、その説明は省略する。
【0246】
ただし、対象物としての易損品12の固定が指示された場合、粘度モニタリング部272は、作用部232−1の粘性流体の目的粘度V0_1を、作用部232−2の粘性流体の目的粘度V0_2よりも高く設定する。
【0247】
図16の対象物支持装置211によれば、図2の対象物支持装置13と同様、または、それ以上の作用効果を奏することができる。
【0248】
すなわち、目的粘度設定処理で、作用部232−1および作用部232−2の粘性流体それぞれの目的粘度V0が対象物の固定の指示の有無により変化しても、対応して作用部232−1および作用部232−2の粘性流体それぞれの粘度を制御することが可能となる。
【0249】
結果として、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、作用部33の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、作用部232−1および作用部232−2の粘度をそれぞれ上げて、柔軟な面と、ほぼ固体状の作用部とで支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12をより安全に運搬することが可能になる。
【0250】
具体的には、柔軟な面を有する作用部232−2が易損品12を包み込み、ほぼ固体状の作用部232−1が、作用部232−2を挟んで、易損品12の内側を支持することで、作用部が1個の場合と比較して、易損品12を、箱11内でより安定して固定することができるので、易損品12をより安全に運搬することが可能になる。
【0251】
なお、上述した説明においては、対象物支持装置211に2個の作用部を備えた構成について説明したが、N個(Nは3以上の整数)の作用部を備えるようにしてもよい。
【0252】
図17のブロック図を参照して、N個の作用部が備えられた対象物支持装置211の機能構成例について説明する。
【0253】
図17においては、図16と対応する構成には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。すなわち、図17の対象物支持装置211は、図16の対象物支持装置211における作用部232−1および作用部232−2の2個の作用部に代わり、作用部232−1乃至作用部232−NのN個の作用部が備えられ、これに対応して、ヒートポンプ273−1乃至ヒートポンプ273−N、および注入バッファ274−1乃至注入バッファ274−Nが備えられた点以外は、基本的に、図16の対象物支持装置211と同様の構成を有するものであり、その動作も基本的に同様であるので、その説明は省略する。
【0254】
図17の対象物支持装置211においても、図16の対象物支持装置211と同様の作用効果を奏することができる。
【0255】
すなわち、図13を参照して説明した場合と同様に、作用部をN層の層状に構成した場合、各層毎に粘性流体の粘度を制御することができるので、例えば、易損品12に近い層の粘性流体の粘度を、柔軟な面を実現する程度に高くし、易損品12から遠い層程、その粘性流体の粘度をほぼ固体状に高くするようにできる。
【0256】
このようにすることで、易損品12の形状や強度に合わせて、より衝撃を吸収しやすい構成で、易損品12を支持することが可能となる。
【0257】
なお、図13においては、作用部を複数の層状に構成したが、十分小さい作用部を複数用いた構成によって、易損品12を支持することもできる。
【0258】
次に、図18を参照して、十分小さい作用部を複数用いた場合の例について説明する。なお、図18においては、箱11および易損品12は、図1と同一であるので、その説明は省略する。
【0259】
図18Aに示される対象物支持装置構成部311は、粘度制御部331、および、図1の作用部33と比較して十分小さい作用部332から構成される。対象物支持装置構成部311においては、図2の対象物支持装置13と同様にして、作用部332の粘性流体の粘度が制御される。この対象物支持装置構成部311が複数用いられ、対象物支持装置として機能することで、易損品12が支持される。
【0260】
次に、図18B乃至図18Dを参照して、複数の対象物支持装置構成部311の動作について説明する。
【0261】
まず、第1の動作として、図18Bで示されるように、複数の対象物支持装置構成部311のうちのいくつかの対象物支持装置構成部311の作用部332は、箱11の底部に敷き詰められ、その上に易損品12が収容される。さらに、複数の対象物支持装置構成部311のうちの他の対象物支持装置構成部311の作用部332は、対象物に対して上部の離れた位置に固定される。このとき、作用部332の粘性流体の粘度は、例えば水のように低くされている。
【0262】
第2の動作として、図18Cで示されるように、その状態で複数の対象物支持装置構成部311のうちの他の対象物支持装置構成部311の作用部332は、図中の下方向に移動されることにより、易損品12に接近する。すると、対象物支持装置構成部311のそれぞれの作用部332は、易損品12に当接し、あたかも水のごとく振舞い、それぞれの作用部332は、易損品12を包み込むように箱11を埋め尽くす。
【0263】
このとき、それぞれの作用部332の粘性流体の粘度は低く、流動性が高いので、作用部332同士の間の間隙や、作用部332と易損品12との間の間隙はほとんど生じない。
【0264】
次に、第3の動作として、それぞれの粘度制御部331が、図示せぬヒートポンプを制御し、それぞれの作用部332から、熱を吸収することにより、図18Dで示されるように、それぞれの作用部332の粘性流体の粘度が、例えばゼリー状に高くなる。
【0265】
以上の動作により、図18Dにおいては、箱11に収容されている易損品12が、対象物支持装置としての複数の対象物支持装置構成部311の作用部332によって支持され、固定される。
【0266】
このように、複数の小さな作用部332によって易損品12を支持する場合、図13で示される構成において考慮する必要があった、粘性流体の流動性について考慮する必要がなく、作用部332の構成を単純にすることができる。
【0267】
また、作用部332の粘性流体の粘度が低い状態で、易損品12を複数の作用部332で包み込むとき、作用部332の粘性流体の流動性が高いので、作用部332同士の間の間隙や、作用部332と易損品12との間の間隙を十分埋めることができ、その状態で作用部332の粘性流体の粘度を高くすることで、柔軟な面で、間隙なく易損品12を支持することが可能となる。
【0268】
さらに、図18Dにおいては、それぞれの作用部332の粘性流体の粘度を一様としてもよく、また、例えば、易損品12に接している作用部332の粘性流体の粘度を、柔軟な面を実現する程度高くし、それ以外の作用部332の粘性流体の粘度をほぼ固体状にする等、作用部332の粘性流体の粘度をそれぞれ制御するようにしてもよい。
【0269】
結果として、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、それぞれの作用部332の粘性流体の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、それぞれの作用部332の粘性流体の粘度を上げて、易損品12を、柔軟な面で支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12を安全に運搬することができる。
【0270】
なお、図18の例では、1個の粘度制御部が1個の作用部(の粘性流体の粘度)を制御するようにしたが、図17の構成を適用することで、1個の粘度制御部が複数個の作用部を制御するようにすることもできる。
【0271】
ところで、図1乃至図12を参照して説明した構成においては、粘度を制御するために、物質や熱量の移動を必要とし、粘性流体を所定の粘度から目的粘度に変化させるときには、ある程度の時間を要する。
【0272】
特に、図9で説明したベッドのように、作用部が比較的大きい場合、粘性流体が流動する量が多くなり、作用部の粘性流体の粘度を目的粘度に変化させるのには長い時間を要する。
【0273】
ここで、図19を参照して、図9で説明したベッドにおける粘度の変化について説明する。
【0274】
まず、図19Aで示されるように、ユーザが横たわっているベッドとしての作用部411の粘性流体は低い粘度(右下がり斜線)にされている。
【0275】
次に、図19Aの状態から、図示せぬ粘度制御部の制御の下、作用部411の粘性流体の粘度は、図19Aで示される粘度より高い目的粘度に向かって変化する。
【0276】
すなわち、図19Bに示されるように、作用部411の粘性流体の粘度は、一様には変化せず、図中、白抜きで示された部分(例えば、図示せぬヒートポンプからの熱量出入部や、図示せぬ注入バッファから作用部411への流入口付近等)から徐々に変化し、作用部411の粘性流体全体が均質な状態で目的粘度に達するまでには所定の時間を要する。
【0277】
そして、作用部411の粘性流体の粘度は高くなる(左下がり斜線)が、例えば、図19Cに示されるように、図中、4箇所の方形状の領域(右下がり斜線)で示されるように、作用部411の所定の部分においては粘度が低いままとなり、粘度のムラが生じることもある。
【0278】
このように、作用部411が大きく、その中に封入される粘性流体の量が多い場合、目的粘度V0にするための熱量が粘性流体全体に伝わるまでに時間を要するとともに、作用部411内の一部の領域にはその熱量が伝わらず、粘度のムラが生じやすい。
【0279】
そこで、作用部411を小さくし、その中に封入される粘性流体の量を少なくした場合には、目的粘度V0にするための熱量が粘性流体全体に伝わるまでの時間を短縮するとともに、領域全体にその熱量が伝わり、粘度のムラを低減することができる。
【0280】
次に、図20を参照して、ベッドとしての作用部を、十分小さい作用部を複数用いて構成するようにした場合について説明する。
【0281】
図20において、ベッドとしての作用部431は、複数の、十分小さい作用部451から構成される。
【0282】
まず、図20Aに示されるように、ベッドとしての作用部431を構成する複数の作用部451の粘性流体は低い粘度(右下がり斜線)にされている。
【0283】
次に、図20Aの状態から、図示せぬ粘度制御部の制御の下、複数の作用部451の粘性流体の粘度は、図20Aで示される粘度より高い目的粘度に向かって変化する。
【0284】
すなわち、図20Bに示されるように、複数の作用部451それぞれの粘性流体は、一様には変化せず、図中、白抜きで示された部分(例えば、図示せぬヒートポンプからの熱量出入部や、図示せぬ注入バッファから作用部451への流入口付近等)から徐々に変化し、作用部451それぞれの粘性流体全体が目的粘度になるまでには所定の時間を要する。
【0285】
しかしながら、作用部451それぞれの粘性流体は、図19の作用部411の粘性流体と比較した場合、粘性流体の量が少ない分、目的粘度V0になるまでの時間は短くて済む。
【0286】
そして、図20Cに示されるように、複数の作用部451それぞれの粘性流体の粘度は高くなり(左下がり斜線)、目的粘度V0となる。このとき、作用部451それぞれの粘性流体の量は少なく、作用部451内の領域全体にその熱量が伝わるので、図20Cに示されるように、ベッドとしての作用部431において、粘度のムラが生じ難い。
【0287】
このように、複数の作用部を用いた構成をベッドとして適用することで、粘性流体の粘度を速やかに目的粘度に変化させることができるとともに、粘度のムラを抑えることができる。
【0288】
なお、図20においては、1個の作用部451に対して1個の粘度制御部を備えるようにしてもよいし、作用部451により構成される作用部431に対して1個の粘度制御部を備えるようにしてもよい。
【0289】
また、図20における作用部451それぞれを、図13を参照して説明したように、層状に構成するようにしてもよい。この場合、例えば、内側が固体状で、外側が柔軟な面を有する作用部451の集合体として、ベッドとしての作用部431を構成することができる。
【0290】
また、図13乃至図20を参照して説明した、作用部を複数備える構成において、粘性流体を、温度によって粘度が変化するものとしたが、濃度やpH値によって変化するものであってもよい。
【0291】
さらに、用途に応じて、粘性流体とその粘度制御方法を組み合わせるようにしてもよい。
【0292】
例えば、溶質と溶媒からなる混合物としての粘性流体において、溶媒として、温度による粘度変化が大きいものが用いられ、溶質として、高濃度時にダイラタンシー性を有するものが用いられることで、その粘性流体は、温度および濃度の制御と、外力の大きさによって、より幅広いの粘度変化を示すようにすることができる。
【0293】
また、図10を参照して説明した、pH値によって粘度が変化する粘性流体において、溶媒として、温度による粘度変化が大きいものが用いられ、第1溶質および第2溶質の濃度に応じてチキソトロピー性を示す場合にも、その粘性流体は、温度および濃度の制御と、外力の大きさによって、より幅広いの粘度変化を示すようにすることができる。
【0294】
以上のように、十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する粘性流体が封入された嚢状部からなり、易損品12に当接する作用部33を備える対象物支持装置13では、粘性流体の粘度Vを検知し、粘性流体の粘度を目的粘度V0として設定し、粘度検知部52bにより検知された粘性流体の粘度Vと目的粘度V0との差分V0−Vを算出し、差分V0−Vに応じて、粘性流体の粘度を制御するので、例えば、易損品12を箱11に収容する、または、箱11から取り出す際には、作用部33の粘度を下げて、易損品12を傷つけることなく出し入れすることが可能になるとともに、箱11内に固定する際には、作用部33の粘度を上げて、柔軟な面で支持することで、易損品12を固定することができるので、易損品12を安全に運搬することができる。
【0295】
なお、上述した実施の形態において、作用部の内部に、粘性流体の粘度変化を促進するために、粘性流体を攪拌する構成を追加するようにしてもよい。
【0296】
上述した粘度制御処理等の一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等に、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0297】
図21は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0298】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)601,ROM(Read Only Memory)602,RAM(Random Access Memory)603は、バス604により相互に接続されている。
【0299】
バス604には、さらに、入出力インターフェース605が接続されている。入出力インターフェース605には、キーボード、マウス、マイクロホン等よりなる入力部606、ディスプレイ、スピーカ等よりなる出力部607、ハードディスクや不揮発性のメモリ等よりなる記憶部608、ネットワークインタフェース等よりなる通信部609、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等のリムーバブルメディア611を駆動するドライブ610が接続されている。
【0300】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU601が、例えば、記憶部608に記憶されているプログラムを、入出力インターフェース605およびバス604を介して、RAM603にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0301】
コンピュータ(CPU601)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等よりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア611に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0302】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア611をドライブ610に装着することにより、入出力インターフェース605を介して、記憶部608にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部609で受信し、記憶部608にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM602や記憶部608に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0303】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0304】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0305】
【図1】本発明を適用した対象物支持装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】対象物支持装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図3】目的粘度設定処理を説明するフローチャートである。
【図4】温度による粘度制御処理を説明するフローチャートである。
【図5】対象物支持装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【図6】濃度によって粘度制御を行う対象物支持装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図7】濃度による粘度制御処理を説明するフローチャートである。
【図8】図6の対象物支持装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【図9】図8の対象物支持装置のベッドとしての応用例を示す図である。
【図10】pH値によって粘度制御を行う対象物支持装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図11】pH値による粘度制御処理を説明するフローチャートである。
【図12】図10の対象物支持装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【図13】作用部を複数備えた対象物支持装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図14】作用部の表面に設けられた突起機構について説明する図である。
【図15】図14の突起機構の具体的な例について説明する図である。
【図16】図13の対象物支持装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図17】N個の作用部を備えた対象物支持装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図18】十分小さい作用部を複数用いた構成について説明する図である。
【図19】図9で説明したベッドにおける粘度の変化について説明する図である。
【図20】十分小さい作用部を複数用いて構成するようにしたベッドについて説明する図である。
【図21】本発明が適用される対象物支持装置として機能するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0306】
13 対象物支持装置, 32 粘度制御部, 33 作用部, 51 操作入力部, 52 粘度モニタリング部, 52a 目的粘度設定部, 52b 粘度検知部, 52c 差分算出部, 53 ヒートポンプ, 91 操作入力部, 92 作用部, 93 粘度モニタリング部, 93a 目的粘度設定部, 93b 粘度検知部, 93c 差分算出部, 96 濃度調整部, 131 操作入力部, 132 作用部, 133 粘度モニタリング部, 133a 目的粘度設定部, 133b 粘度検知部, 133c 差分算出部, 137 pH調整部, 211 対象物支持装置, 231 粘度制御部, 232−1,232−2 作用部, 271 操作入力部, 272 粘度モニタリング部, 272a 目的粘度設定部, 272b 粘度検知部, 272c 差分算出部, 273−1,273−2 ヒートポンプ, 311 対象物支持装置構成部, 331 粘度制御部, 332 作用部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部と、
前記流体の粘度を検知する検知手段と、
前記流体の粘度を設定粘度として設定する設定手段と、
前記検知手段により検知された前記流体の粘度と前記設定粘度との差分を算出する算出手段と、
前記差分に応じて、前記流体の粘度を制御する粘度制御手段と
を備える対象物支持装置。
【請求項2】
嚢状部が、前記対象物に対応した形状で前記対象物に当接し、かつ、前記流体の粘度が所定の目的粘度に制御されるとき、前記作用部は、前記対象物を支持する
請求項1に記載の対象物支持装置。
【請求項3】
前記粘度制御手段は、前記流体の温度を制御することで、前記流体の粘度を制御する
請求項1に記載の対象物支持装置。
【請求項4】
前記流体は、複数の物質の混合物であり、
前記粘度制御手段は、前記混合物の濃度を制御することで、前記流体の粘度を制御する
請求項1に記載の対象物支持装置。
【請求項5】
前記粘度制御手段は、前記流体のpH値を制御することで、前記流体の粘度を制御する
請求項1に記載の対象物支持装置。
【請求項6】
前記作用部は、複数の前記嚢状部から構成される
請求項1に記載の対象物支持装置。
【請求項7】
前記粘度制御手段は、複数の前記嚢状部それぞれに封入されている前記流体の粘度を制御する
請求項6に記載の対象物支持装置。
【請求項8】
前記作用部は、複数の前記嚢状部のうちの1つの嚢状部に、前記流体とともに他の1つの嚢状部が封入されてなり、前記1つの嚢状部が所定の対象物に当接する
請求項6に記載の対象物支持装置。
【請求項9】
前記作用部は、複数の前記嚢状部のうちの1つの嚢状部に、前記流体とともに他の1つの嚢状部が封入されてなり、前記1つの嚢状部が所定の対象物に当接し、
前記他の1つの嚢状部の表面には、前記1つの嚢状部と前記他の1つの嚢状部とが層状の構造を維持するための突起部が設けられている
請求項6に記載の対象物支持装置。
【請求項10】
前記作用部は、複数の前記嚢状部のうちの1つの嚢状部に、前記流体とともに他の1つの嚢状部が封入されてなり、前記1つの嚢状部が所定の対象物に当接する構成の集合体である
請求項6に記載の対象物支持装置。
【請求項11】
前記作用部を複数備える
請求項1に記載の対象物支持装置。
【請求項12】
十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部を備える対象物支持装置の動作方法において、
前記流体の粘度を検知する検知ステップと、
前記流体の粘度を設定粘度として設定する設定ステップと、
前記検知ステップにおいて検知された前記流体の粘度と前記設定粘度との差分を算出する算出ステップと、
前記差分に応じて、前記流体の粘度を制御する粘度制御ステップと
を含む対象物支持装置の動作方法。
【請求項13】
十分柔軟性が高く、形状の自由度が高い膜で構成され、粘度が変化する流体が封入された嚢状部からなり、所定の対象物に当接する作用部を備える対象物支持装置を制御するコンピュータに、
前記流体の粘度を検知する検知ステップと、
前記流体の粘度を設定粘度として設定する設定ステップと、
前記検知ステップにおいて検知された前記流体の粘度と前記設定粘度との差分を算出する算出ステップと、
前記差分に応じて、前記流体の粘度を制御する粘度制御ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−187262(P2009−187262A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26299(P2008−26299)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】