説明

封口板

【課題】圧力容器を施蓋する封口板において、封口板と圧力容器の間の密封性を安定化させる。
【解決手段】圧力容器1の開口部内周に配置される絶縁材料からなる封口板本体31と、この封口板本体31の外径部と圧力容器1の間を密封するガスケット33を備え、封口板本体31が、圧力容器1に内径側へ向けて屈曲形成した絞り部11とその外側に形成したカシメ部12の間に固定され、ガスケット33が、封口板本体31の内側面外径部と絞り部11の間に圧縮状態で介在される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタや電解コンデンサ、二次電池などの圧力容器を施蓋する封口板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力容器(例えばアルミケース)内に素子及び電解液を封入した電気二重層キャパシタや電解コンデンサなど、大型のコンデンサは、前記圧力容器を施蓋する封口板として、従来、一対の外部電極端子を貫設した合成樹脂プレートと、その外周部に装着されたガスケットからなるものが用いられている。
【0003】
図4は、従来の技術による封口板を備えたコンデンサの一部を概略的に示すものであって、参照符号100はコンデンサ素子120及び電解液を収容した圧力容器、参照符号110はこの圧力容器100の開口部の内周を閉塞するように配置された封口板である。
【0004】
封口板110は、一対の外部電極端子(正極端子及び負極端子)112に絶縁性の硬質合成樹脂により一体成形された封口板本体111と、その外側の外周部に装着されたガスケット113で構成されている。そしてこの封口板110は、封口板本体111の外周縁部が有底筒状の圧力容器100の開口部内周に挿入されると共に、この圧力容器100に内径側へ向けて屈曲形成された絞り部101に支持されており、圧力容器100の開口端部をカーリング加工によりカシメを行うことにより形成したカシメ部102によりガスケット113を介して固定されると共に、前記カシメ部102をガスケット113に食い込ませるようにして気密性の保持を図っている。また、一対の外部電極端子112は、その内端部がそれぞれ導体121を介してコンデンサ素子120の正極及び負極に接続されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−258221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような密封構造の封口板110は、ガスケット113が、未装着状態では断面形状が略長方形をなすゴム状弾性材料からなるものであって、これに圧力容器100のカシメ部102の端縁を食い込ませることにより、図4に示されるように圧縮変形させて密封に必要な密接力を得ているため、ガスケット113におけるカシメ部102の食い込み部分が、カシメ部102のバラつきによって過大な応力集中状態になることがあり、この場合はガスケット113に亀裂を生じてつぶし率が低下し、シール性が低下して液漏れを発生してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、封口板と圧力容器の間の密封性を安定化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る封口板は、圧力容器の開口部内周に配置される絶縁材料からなる封口板本体と、この封口板本体の外径部と前記圧力容器の間を密封するガスケットを備え、前記封口板本体が、前記圧力容器に内径側へ向けて屈曲形成した絞り部と前記圧力容器の開口端部に形成したカシメ部の間に固定され、前記ガスケットが、前記封口板本体の内側面外径部と前記絞り部の間に圧縮状態で介在されたものである。
【0009】
また、請求項2の発明に係る封口板は、請求項1に記載の構成において、ガスケットが、封口板本体の内側面外径部に形成した段差状凹部と、圧力容器の絞り部の傾斜面との間に配置されたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る封口板によれば、ガスケットが封口板本体の内側面外径部と圧力容器の絞り部の間に圧縮状態で配置されるため、圧力容器のカシメ部の端縁を食い込ませることによって圧縮した場合のようなガスケットの亀裂の発生が防止され、シールの信頼性が向上する。
【0011】
請求項2の発明に係る封口板によれば、圧力容器の開口端部をかしめることより形成されるカシメ部の大きさのバラつきがあっても、それによるガスケットの圧縮率のバラつきが緩和されるので、安定したシール性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施の形態による封口板を備えたコンデンサを概略的に示す断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1の要部を拡大して示す組立過程の断面図である。
【図4】従来の技術による封口板を備えたコンデンサを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る封口板の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、この実施の形態による封口板を備えたコンデンサを概略的に示す断面図である。
【0014】
図1に示すコンデンサは、圧力容器1と、この圧力容器1に収容されたコンデンサ素子2と、圧力容器1の上部開口を塞ぐように設けられた封口板3を備える。
【0015】
圧力容器1はアルミニウムなどの金属からなるものであって、有底円筒状をなしており、その上部開口の近傍部に、内径側へ向けて屈曲された絞り部11が円周方向へ連続して形成されており、また、その外側(上側)には、開口端部をカーリング加工によって内周側へ折り返すようにかしめることにより、断面形状が外側へ凸の略U字形に屈曲したカシメ部12が形成されている。
【0016】
圧力容器1に収容されたコンデンサ素子2は、薄い陽極板と陰極板を、電解液を含浸させた紙又は不織布などからなるセパレータを介して積層するかあるいはロール状に巻回したものである。
【0017】
封口板3は、絶縁性の硬質合成樹脂で成形された円盤状の封口板本体31と、この封口板本体31を貫通するように設けられた一対の外部電極端子(正極端子及び負極端子)32と、この封口板本体31の外径部と圧力容器1の間で気密を保持するガスケット33を備える。また、一対の外部電極端子32は、それぞれ導体21及び不図示の集電体を介してコンデンサ素子2の陽極板及び陰極板に接続されている。
【0018】
図2に要部を拡大して示すように、封口板3における封口板本体31は、その内側面(下面)31aの外径部に、円周方向へ連続した段差状凹部31bが形成されている。一方、圧力容器1に形成された絞り部11は断面形状が略V字形をなしており、その内径φaは、封口板本体31の外径よりも小さく、好ましくはさらに段差状凹部31bの内径φbより小さいものとなっている。そしてこの段差状凹部31bは、前記絞り部11における上側の傾斜面(円錐面)11aと対向している。
【0019】
封口板3におけるガスケット33は、コンデンサの使用時に圧力容器1内の電解液が気化したガスが外部に漏れたり、外部の水蒸気などが圧力容器1内へ侵入したりするのを防止するもので、好ましくは低硬度(例えばHw50〜70程度)のゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で成形された断面円形のシールリング、すなわちOリングからなる。そしてこのガスケット33は、圧力容器1に形成された絞り部11の上側の傾斜面11aと、これに対向する封口板本体31の段差状凹部31bとの間に適当な圧縮状態、好ましくは8〜30%のつぶし率で介在している。
【0020】
封口板本体31における段差状凹部31bの外側(上側)の鍔部31cの外周面は、圧力容器1における絞り部11とカシメ部12の間の側壁13と当接又は近接対向している。また、圧力容器1におけるカシメ部12の、内側(下側)を向いた端縁12aは、前記鍔部31cの外面(上面)31dに圧接している。そしてこのカシメ部12で鍔部31c(封口板本体31)が固定されることにより、前記絞り部11との間でのガスケット33の圧縮状態が保持されている。
【0021】
以上のように構成されたコンデンサの組立においては、まずコンデンサ素子2を、有底円筒状の圧力容器1内に収納する。また、コンデンサ素子2への電解液の含浸や、封口板3における外部電極端子32を、導体21及び不図示の集電体を介してコンデンサ素子2の陽極板及び陰極板に接続する作業が行われる。なお、この時点では、圧力容器1にはまだカシメ部12が形成されておらず、すなわち圧力容器1の開口端部12’(図3参照)は側壁13と同一円筒状をなしている。
【0022】
次に図3に示すように、予め封口板本体31の段差状凹部31bにOリングからなるガスケット33を外挿してなる封口板3を、圧力容器1における絞り部11の上側の側壁13の内周に配置する。これによって、ガスケット33が前記絞り部11における上側の傾斜面11aに当接し、すなわち封口板本体31は、ガスケット33を介して前記絞り部11に支持されることになる。
【0023】
次に、圧力容器1における開口端部12’をカーリング加工によって内周側へ折り返すようにかしめることにより、図2に示すような、断面形状が外側へ凸の略U字形に屈曲したカシメ部12を形成すると共に、このカシメ部12の端縁12aを、封口板本体31の鍔部31cの外面(上面)31dに圧接させる。このため、前記鍔部31cを介してガスケット33が圧力容器1における絞り部11の傾斜面11aに押し付けられて適宜圧縮されると共に、その反力によって鍔部31c(封口板本体31)が前記カシメ部12との間で固定される。
【0024】
そして上述のカーリングによるカシメ工程では、形成されるカシメ部12の大きさにバラつきが発生しやすいが、本発明では、ガスケット33が圧力容器1における絞り部11の傾斜面11aと封口板本体31の段差状凹部31bとの間に介在していることに加え、ガスケット33が低硬度のゴム状弾性材料からなるため、圧縮に対するゴムの逃げによって、カシメ部12の大きさのバラつきに起因するガスケット33の圧縮率の変化が緩和される。このため、安定したシール性が発揮される。
【0025】
また、ガスケット33は封口板本体31の段差状凹部31bと圧力容器1の絞り部11との間で圧縮されるので、圧力容器1のカシメ部12の端縁12aを食い込ませた場合のような応力集中による亀裂の発生が防止され、シールの信頼性が向上する。しかもガスケット33としてOリングを使用することによって安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 圧力容器
11 絞り部
11a 傾斜面
12 カシメ部
2 コンデンサ素子
3 封口板
31 封口板本体
32 外部電極端子
33 ガスケット
31b 段差状凹部
31c 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の開口部内周に配置される絶縁材料からなる封口板本体と、この封口板本体の外径部と前記圧力容器の間を密封するガスケットを備え、前記封口板本体が、前記圧力容器に内径側へ向けて屈曲形成した絞り部と前記圧力容器の開口端部に形成したカシメ部の間に固定され、前記ガスケットが、前記封口板本体の内側面外径部と前記絞り部の間に圧縮状態で介在されたことを特徴とする封口板。
【請求項2】
ガスケットが、封口板本体の内側面外径部に形成した段差状凹部と、圧力容器の絞り部の傾斜面との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の封口板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−146766(P2012−146766A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2807(P2011−2807)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】