説明

封止装置

【課題】上下の基板を貼り合わせて液晶表示パネル、有機ELパネル等のセル構造体の生産効率を向上できるようにするとともに、高品質のセル構造体が得られるようにする。
【解決手段】上面に開口部が形成され吸排気口P1を有けた空室筐体1と、前記空室筐体1の開口部を覆う柔軟性および透光性を有するシート部材11と、吸排気口P2を有するとともに、UV透過マスク15を内部に収容して前記シート部材11上に載置されるUVマスク支持枠14と、前記UVマスク支持枠14の上面の開口部を覆う可動封止盤18と、前記可動封止盤18の上方に配設された光源部とを備え、前記シート部材11を境界とする下部の空室筐体内が減圧可能な第1のチャンバーCH1となる一方、前記シート部材11を境界とする上部のUVマスク支持枠14および可動封止盤18に囲われた内部が減圧可能な第2のチャンバーCH2となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルあるいは有機EL( Organic Electro-Luminescence )表示パネル等のように貼り合わせた一対の基板の内部に発光層を形成し、この発光層を電気的に駆動することにより画像あるいは照明光が得られるようにした表示パネルの封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルとして代表的な液晶表示パネルの製造は、図9に一例を示すように透明電極が形成された一対の基板(例えば、ガラス基板)の一方(下側基板50)に紫外線硬化型シール材51を閉環状に塗布し、このシール材51で囲まれた領域に透明球状のスペーサを散布するとともに、液晶材料52を滴下する。
【0003】
そして、この下基板50を真空チャンバー53内に下基板50面と平行方向に移動可能に支持された位置決めテーブル54上に弾性シート55を介して載置固定する。一方。一対の基板の他方(上基板56)を同様に真空チャンバー53内に上基板56面と垂直方向に移動可能に支持された吸着盤57に吸着固定する。
【0004】
そして、真空チャンバー53内を真空排気して所定の真空度に到達した後、吸着盤57を降下させて下基板50上のシール材51および液晶材料52が上基板56に接触する手前の位置で停止させ、対向する上基板56と下基板50のアライメントマークの位置関係を位置決めテーブル54を移動させることによって調整し、両基板50、56の粗いアライメント処理を行う。
【0005】
次に、真空チャンバー53内を更に真空排気して所定の真空度まで高めた後、更に吸着盤57を降下させて上基板56を下基板50側に加圧し、上基板56と下基板50の間のセルギャップが透明球状のスペーサで保持された状態に維持する。このとき、両基板50、56間では下側基板50上のシール材51が押潰されて同様に押潰された液晶材料52がシール材51と両基板50、56とで囲まれた領域に流動拡散され、領域全体が液晶材料で満たされる。
【0006】
次に、真空チャンバー53内に吸気して真空チャンバー53内を大気圧に戻し、大気圧中で対向する上基板56と下基板50のアライメントマークの位置関係を位置決めテーブル54を移動させることによって調整し、両基板50、56の精密なアライメント処理を行なう。そして、最後にアライメント処理が施された一対の基板50、56に紫外線を照射してシール材51を硬化させ、液晶表示パネルの製造工程(貼り合わせ工程)が完了する(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
一方、有機EL表示パネルの発光体は通電および酸素や湿気の影響により徐々に劣化して輝度が低下する性質があるため、接着剤中の気泡や水分を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。この特許文献2に開示された技術は、弾性体シートによって仕切られた第1の空間および第2の空間に対し、この両空間を排気可能にする排気手段を備え、この排気手段により第1の空間を第2の空間に対して負圧に制御し、両空間に生じた差圧を、弾性シートを介して封止基板および素子基板の一方に作用させることにより、両基板を圧着可能となるようにしている。
【0008】
また、液晶表示パネルあるいは有機EL表示パネルの製造工程において、光プレス法によりUV(紫外線)を照射して光硬化型接着剤を硬化させる場合、特に有機EL素子はUVが照射されると劣化が著しくなることから、一般に石英の遮光ガラスに遮光マスクパターンを形成し、光硬化型接着材のみにUVが照射されるようにしている(例えば、特許文献3)。
【0009】
この特許文献3に開示された技術は、電気光学層が形成された基板の背面側に遮光ガラスを配置し、前記電気光学層を気密的に覆うために、前記基板と封止部材とを光硬化型接着材を介して圧接させた状態で、前記遮光ガラス側からUVを照射して前記光硬化型接着材を硬化させることにより、基板と封止部材とを接合するようにしたもので、このため、遮光ガラスと基板との接触面に撥水処理を施し、遮光ガラスと基板が貼り付くのを防止している。
【0010】
前記特許文献3に開示された構成は、きわめて高価な石英ガラスを用いるという方法であり、耐久性等の面から問題があることから、本願の出願人は柔軟性および透光性を有するシート部材を採用し、このシート部材にセル構造体の上側基板が圧接するようにし、シート部材の初期性能が許容値以下に低下した場合は、連続して未使用の部分を供給できるようにした。そして、このシート部材を境界として減圧可能な第1チャンバーと第2チャンバーが形成されるようにし、セル構造体の両面からの圧力制御が可能となるようにしている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−296601号公報
【特許文献2】特開2005−276754号公報
【特許文献3】特開2006−004707号公報
【特許文献4】特開2009−058783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、液晶表示パネルおよび有機EL表示パネルは大型化する傾向にあり、パネルの大型化に伴って製造装置も大型化している。また、パネルが大型化しても貼り合わせを行う上下基板の封止装置への搬出入は専用の搬送装置で行われ、人為的作業を伴わないようにしなければならない。仮に人為的作業により上下基板の搬出入を行った場合、作業者の衣服などから塵埃が飛散したり、身体から汗が蒸発して適正な湿度を維持することができず、クリーンルーム相当の環境が得られなくなり、生産の歩留まりを著しく低下することになる。
【0013】
また、生産効率を向上するためには、セル構造体の上下に形成されるチャンバーは可能な限り必要最低限の容量であることが望ましいことになる。即ち、上下基板の貼り合わせが行われるチャンバー内は一工程毎に毎回必ず高い真空度となるようにし、基板間のセルギャップ内の真空度が高くなるようにしなければならない。しかしながら、このチャンバーの容量が大きい場合は、その内部の空気の吸引量も大きくなることから、真空ポンプの作動時間が比例して長くなることになり、これが大きな原因となって生産効率が低下する。
【0014】
特に有機EL表示パネルを製造する場合は、きわめて高い真空度が要求されるため、可能な限りチャンバーを小型化して効率よく真空状態が形成されるようにしなければならない。しかも、チャンバーを小型にしつつも、このチャンバー内への上下基板の搬入および完成した表示パネルの搬出が可能となるようにした気密状態が得られる開閉扉を備え、自動生産が可能となるようにしなければならない。
【0015】
本発明は上記したような課題を解決するためになされたもので、液晶表示パネル、有機EL表示パネル等の生産効率を向上することができる封止装置を提供できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、上面に開口部が形成され吸排気口を有するとともに、内部にステージと下側基板の支持ロッドおよび上側基板の支持ロッドを昇降可能に設けた空室筺体と、前記空室筺体の開口部を覆う柔軟性および透光性を有するシート部材と、外形が前記空室筺体と略一致する形状であって吸排気口を有するとともに、UV透過マスクを内部に収容して前記シート部材上に載置されるUVマスク支持枠と、前記UVマスク支持枠の上面の開口部を覆う可動封止盤と、前記可動封止盤の上方に配設された光源部とを備え、前記空室筺体上にシート部材を介してUVマスク支持枠および可動封止盤が配置されたとき、前記シート部材を境界とする下部の空室筐体内が減圧可能な第1のチャンバーとなる一方、前記シート部材を境界とする上部のUVマスク支持枠および可動封止盤に囲われた内部が減圧可能な第2のチャンバーとなる封止装置であるようにする。
【0017】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の封止装置において、空室筺体内に第1の基板を支持して昇降可能となるようにした第1の支持ロッドおよび第2の基板を支持して昇降可能となるようにした第2の支持ロッドと、セル構造体を載置して昇降可能となるようにしたステージとを備えるようにする。
【0018】
請求項3記載の発明では、上記請求項2記載の封止装置において、第1の支持ロッドがステージ内で昇降するように構成する。
【0019】
請求項4記載の発明では、上記請求項2記載の封止装置において、第1、第2の支持ロッドおよびステージを昇降するための駆動機構が空室筐体の底面下に構成されているようにする。
【0020】
請求項5記載の発明では、上記請求項2記載の封止装置において、空室筺体の任意の側面に第1のチャンバーの気密状態を保つことができるようにした開閉扉を設けるようにする。
【0021】
請求項6記載の発明では、上記請求項2記載の封止装置において、第1の基板と第2の基板とのアライメント調整をするためのアライメントカメラをステージの側部に設けるようにする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空室筐体上にシート部材を介してUVマスク支持枠および可動封止盤を配置する構成としたので、前記シート部材を境界とする下部の空室筐体内の第1のチャンバーを可能な限り小さくすることができ、これにより、この第1のチャンバーの排気処理を迅速に行うことが可能となることから、生産効率を向上することがでる。
【0023】
また、上記の構成において、空室筐体内に第1の基板を支持して昇降可能となるようにした第1の支持ロッドおよび第2の基板を支持して昇降可能となるようにした第2の支持ロッドと、セル構造体を載置して昇降可能となるようにしたステージを備え、さらに空室筐体の任意の側面に第1のチャンバーの気密状態を保つことができるようにした開閉扉を設けるようにしたので、第1、第2の基板の搬入、そして成形されたセル構造体の搬出の自動化が可能となり、人為的作業の介在しない連続自動生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の封止装置の構成を説明する断面図である。
【図2】本発明の封止装置の構成を説明する斜視図である。
【図3】本発明の封止装置の構成を説明する部分斜視図である。
【図4】本発明の封止装置の要部の動作態様を説明する図である。
【図5】本発明の封止装置の吸排気回路の構成を説明する図である。
【図6】セル構造体となる第1の基板の説明図である。
【図7】セル構造体となる第2の基板の説明図である。
【図8−1】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図8−2】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図8−3】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図8−4】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図8−5】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図8−6】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図8−7】本発明の封止装置の動作態様を説明する図である。
【図9】従来の封止装置の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図にもとづいて詳細に説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付して説明が重複しないようにする。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1および図2において符号1は、内部が第1のチャンバーCH1となる中空体である空室筐体であり、上面に開口部1aが形成されており、任意の側面に基板搬入窓1bが形成されている。さらに空室筐体1には後述する吸排気回路に接続された吸排気管P1が配設されている。
【0027】
空室筐体1の内部中央にはステージ2が設けられ、このステージ2に固定されたロッド3が空室筐体1の底部から外部に延設されており、ギヤボックス4に与えられたモータ5の駆動力によりロッド3が上下動し、ステージ2が空室筐体1の内部で昇降する。なお、空室筐体1の底面の前記ロッド3の支持部分には気密シールSが設けられ、この部分の気密状態が保たれるようにしている。
【0028】
さらに、空室筐体1の底面下には、空室筐体1の内部に搬入される第1の基板(下基板)W1の対角線上の4箇所の角隅部を下面から支持する支持ロッド6を上下動するための流体圧シリンダー7が配置固定されている。また、同様に空室筐体1の底面下には、空室筐体1の内部に搬入される第2の基板(上基板)W2の四隅を下面から支持するホルダー8aを先端に備える支持ロッド8を上下動するための流体圧シリンダー9が配置固定されている。なお、空室筐体1の底面の前記支持ロッド6、8の支持部分には気密シールSが設けられ、この部分の気密状態が保たれるようにしている。
【0029】
第1の基板W1を支持する支持ロッド6はステージ2内を貫通し、上下動するようにしてあるが、これは第1の基板W1が可能な限り広い範囲でステージ2上に載置され、成形時に圧力の偏る部分ないように配慮したことによるものである。なお、ステージ2の側部にはアライメントカメラ10を設け、第1の基板W1と第2の基板W2との水平アライメントを行うための画像信号が得られるようにしている。
【0030】
つぎに、前記空室筐体1の上面には、その全範囲を覆うようにUV透過特殊シート11が配設されており、このUV透過特殊シート11は供給ロール12から送り出され、巻取ロール13に巻き取られる仕組みになっている。このUV透過特殊シート11は紫外線を透過し、且つ柔軟性を有する材料、例えば、PET樹脂で形成されており、空室筐体1のフランジ1cの上面に密着するので、この部分の気密性が保たれる。
【0031】
前記UV透過特殊シート11上の空室筐体1のフランジ1c上に載置されるUVマスク支持枠14は、空室筐体1の外形と略一致する形状の枠体であり、その内部にフランジ14aで支持してUVマスク15を収容するようにしている。このUVマスク15は、上方に配置される後述するランプハウス19から出射されるUVの必要量を空室筐体1内へ導引するための複数の通孔15aが形成されている。さらに、UVマスク支持枠14には後述する吸排気回路に接続された吸排気管P2が配設されており、枠体の上面および下面にOリング16、17が配設され、気密性が保たれるようにしている。
【0032】
前記UVマスク支持枠14の上面には、その開口部14bを覆閉するための可動封止盤18が載置される。この可動封止盤18は図示を省略した搬送機構により前後方向または横方向からUVマスク支持枠14の定位置に搬入されて図1に示すようにUVマスク支持枠14上に載置され、図示を省略した加圧装置により下方向に圧力が加えられる。これにより、UV透過特殊シート11、UVマスク支持枠14の内面、可動封止盤18の裏面で囲われた空間が第2のチャンバーCH2となる。そして、前記加圧装置による加圧により、Oリング16、17が押し潰される状態となるので、この部分の気密性が十分に保たれる。
【0033】
前記可動封止盤18の上方にはランプハウス19が配設されており、このランプハウス19の内部には、その開口19aに向かって順次、紫外線を放射するUVランプ20、このUVランプ20からの輻射熱を遮断する熱線カットフィルター21および開閉自在なシャッター22が収容されている。
【0034】
本発明の機構要素は以上のように構成されているが、装置の自動化を達成するには、空室筐体1の基板搬入窓1bに開閉扉を備えることを要する。図3は、かかる構成の一例を示すもので、同図に示すように基板搬入窓1bの全面を覆う開閉扉23が、昇降装置24のギヤ機構により動力が伝達され上下動するように配設されている。
【0035】
一方、基板搬入窓1bのフランジ部の全周には、図4に示すように流体圧チューブ25が配設されており、図4(A)に示すように開閉扉23を降下させるときは、流体圧チューブ25内の流体を吸引して開閉扉23との接触を避けるようにする。このようにして基板搬入窓1bが開放されているときに、同図に示すように第1の基板W1、第2の基板W2の搬入がロボットアームRB1、RB2により可能となる。そして、第1の基板W1、第2の基板W2の搬入が完了すると、図4(B)に示すように開閉扉23を昇上し、流体圧チューブ25に加圧流体を注入して膨張させ、気密状態が得られるようにする。
【0036】
ここで、本発明の装置の吸排気回路の構成を図5に基づいて説明する。同図に示すように空室筐体1に接続された吸排気管P1は、バルブ26aを介して大気Aに繋がる一方、バルブ26b、26cを介して真空ポンプ28に繋がっている。一方、UVマスク支持枠14に接続された吸排気管P2は、バルブ27aを介して大気Aに繋がる一方、バルブ27b、27cを介して真空ポンプ28に繋がれている。なお、バルブ26cおよびバルブ27cから真空ポンプ28に向かう配管は互いに途中で連結され、1本の配管で真空ポンプ28に繋がっている。また、バルブ26cとバルブ27cは真空圧力調整用のバルブであり、排気後の到達真空圧を制御するために設けられている。
【0037】
本発明の封止装置は以上のように構成されており、第1の基板W1および第2の基板W2を空室筐体1内に搬入し、セル構造体30が完成するまでの処理工程を以下に説明するが、第1の基板W1および第2の基板W2は、予備成形されたものを準備しなければならないため、まず、その予備成形された第1の基板W1、第2の基板W2の加工の態様を液晶表示パネルの場合の例で以下に説明する。
【0038】
図6に示すように、第1の基板W1の片面に、縦横所定の間隔を保った複数の液晶表示領域31aの少なくとも領域内に透明球状のスペーサ31bを散布するか、あるいはフォトスペーサ32bを形成して、第1の基板W1と第2の基板W2を貼り合わせたとき、両基板W1、W2間の液晶表示領域31aにおける設定ギャップを確保するようにしている。さらに、複数の液晶表示領域31aの外側に両基板W1、W2の位置合わせ用のアライメントマーク31cが複数箇所設けられている。
【0039】
一方、第2の基板W2の片面には、図7に示すように縦横所定の間隔を保って複数の閉環状のシール材32aが塗布されている。このシール材32aはUV硬化性と熱硬化性の両方の性質を有しているとともに、シール材32aには予め円柱状のシリカファイバ32bが混入されて、両基板W1、W2の貼り合わせ時に、両基板W1、W2間のシール部における設定ギャップを確保できるようにしている。
【0040】
また、複数のシール材32aが塗布された領域全体を囲むように閉環状のシール材32cが塗布されている。このシール材32cにもシール材32aと同様に予め円柱状のシリカファイバ32bが混入されて、両基板W1、W2の貼り合わせ時に、両基板W1、W2間のシール部における設定ギャップを確保できるようにしている。なお、シール材32aとシール材32cに混入されるシリカファイバ32bはいずれも材質、形状、大きさが同一である。
【0041】
さらに、閉環状のシール材32cの外側に、アライメントマーク32dと仮固定用のUV硬化樹脂32eが複数箇所設けられている。また、各閉環状のシール材32aで囲まれた内側の領域には複数の位置に所定量の液晶材料32fがディスペンサ等の液状定量吐出装置によって滴下されている。
【0042】
なお、本発明の装置において有機EL表示パネルの形成を対象とする場合は、第1のW1または第2の基板W2の何れか一方に有機EL層が形成されたものを用い、これに対応する他の基板を封止基板となるようにして成形が可能となる。
【0043】
以上のようにして予備成形された複数枚の第1の基板W1および第2の基板W2は、図示しない搬入装置に貯蔵され成形の準備が整う。かかる前提における図1に示す各機構要素は、処理工程が開始される初期状態にあり、第1の基板W1の支持ロッド6、第2の基板W2の支持ロッド8、およびステージ2は最も降下した位置にある。そして、装置の運転が開始されると、まず、図8(A)に示すように流体圧シリンダー7が作動され、支持ロッド6が同図に示すように上昇する。このとき、バルブ27bが開放されて第2のチャンバーCH2は真空引きされ、UV透過特殊シート11はUVマスク15に密着する。
【0044】
つぎに、図4(A)に示すように開放されている基板搬入窓1bからロボットアームRB1により第1の基板W1が搬入され、前記支持ロッド6の先端6a上に図8(B)に示すように載置される。なお、ロボットアームRB1による第1の基板W1の搬入を先に行い、その後、流体圧シリンダー7を作動して支持ロッド6を上昇するようにしてもよい。
【0045】
前記工程により支持ロッド6の先端6aに第1の基板W1が載置されると、図8(C)に示すように支持ロッド6が降下し、第1の基板W1がステージ2に接近した位置に配置される。第1の基板W1が図8(C)の配置状態になると、流体圧シリンダー9が作動して支持ロッド8を図8(D)に示すように上昇する。
【0046】
かかる状態に至ると、ロボットアームRB2により第2の基板W2が搬入され、この第2の基板W2の四隅が図8(E)に示すように支持ロッド8の先端のホルダー8aにより支持され載置された状態となる。なお、この場合においても、ロボットアームRB2による第2の基板W2の搬入を先に行い、その後、流体圧シリンダー9を作動して支持ロッド8を上昇するようにしてもよい。また、第2の基板W2の搬入に際し、アライメントカメラ10が第1の基板W1のアライメントマーク31cと第2の基板W2のアライメントマーク32dを検出し、この画像信号に基づくロボットアームRB2による微調整により両基板W1、W2の水平方向のアライメントが可能となる。
【0047】
以上のようにして第1の基板W1と第2の基板W2の搬入が完了すると、開閉扉23が上昇し、図4(B)に示ように流体圧チューブ25に加圧流体が注入されて膨張することにより、この部分が気密状態となり、第1のチャンバーCH1が密閉された状態となる。そして、この状態においてバルブ26bが開放され、図8(F)に示すように第1のチャンバーCH1の真空引きが開始され、バルブ26cの調整により約1Pa(パスカル)までの高真空度となるようにする。なお、このとき、UV透過特殊シート11が第1のチャンバーCH1側へ引き込まれないように、バルブ27cを調整して第2のチャンバーCH2が負圧とならないようにする。
【0048】
このようにして、第1のチャンバーCH1を高真空度とするのは、特に有機EL表示パネルを製作する場合において有意であり、排気に伴い第1チャンバーCH1内の酸素や湿気、そして空気中の不純物を除去することができ、歩留まりを高くすることができる。
【0049】
前記工程により高真空度で第1のチャンバーCH1の排気が完了すると、図8(G)に示すように流体圧シリンダー7を作動し、支持ロッド6により第2の基板W2のシール材32cに第1の基板W1が接触する程度まで上昇させて仮固定を行う。これと同時に、第1のチャンバーCH1の真空度を約50Paまでバルブ26cを調整して高め、バルブ29aを開いてアルゴンまたは窒素ガスなど十分に乾燥させた不活性ガスGをガス供給手段29から導入する。
【0050】
図8(H)の工程は、ステージ2をさらに上昇しつつ、第1のチャンバーCH1の真空度を約100Paまで高めた状態を示す。なお、このとき、流体圧シリンダー7、9が作動され、その支持ロッド6、8は初期位置に復帰する。そして、図8(I)の工程では、ステージ2が最高位に達するまで上昇され、これとともに第1のチャンバーCH1の真空度が約50kPaになるまでバルブ26cを調整して高める。
【0051】
図8(J)の工程は、第1のチャンバーCH1内の真空度を約50kPaに維持した状態でバルブ27bを閉止するとともに、バルブ27aを開放して大気Aを第2のチャンバーCH2に導入した状態を示す。これにより、大気Aが第2のチャンバーCH2に充満すると、大気圧は約101kPaであることから、第1のチャンバー1内が負圧となり、第2のチャンバーCH2の正圧がUV透過特殊シート11を、通孔15aを介して押し下げ、第2の基板W2の全面に密着して加圧力が加わる。
【0052】
図8(K)の工程は、可動封止盤18を搬送機構によりUVマスク支持枠14の上面から移動して除去した状態を示すもので、この可動封止盤18が除去されてもUV透過特殊シート11の上面は依然大気圧となっているため、第1のチャンバーCH1内の負圧状態は維持されることになる。したがって、この状態においても、UV透過特殊シート11による第2の基板W2への加圧力に変化が生じることはない。
【0053】
このようにして、第2の基板W2へ大気圧が加わると、第2の基板W2が第1の基板W1側へ移動し、両基板W1、W2間のギャップが縮まる。これが液晶表示パネルを形成している場合であると、両基板W1、W2間のギャップ(セルギャップ)はシリカファイバ32bとスペーサ31bによって定まり、例えば、約5μm程度に接近する。そして、両基板W1、W2およびシール材32aで囲まれた領域には液晶材料32fが満たされている。
【0054】
つぎに、図8(L)の工程において、シャッター22が所定時間開き、予め点灯させておいたUVランプ20の熱線カットフィルター21を介したUV光のUVマスク15で定められる必要光量がUV透過特殊シート11を透過して第2の基板W2に照射される。これにより、第1の基板W1と第2の基板W2間に位置するシール材32a、32cが硬化し、所定のセルギャップを有するセル構造体30が完成する。
【0055】
このようにして、セル構造体30が完成すると、バルブ26bが閉止されバルブ26aが開放されることにより、第1のチャンバーCH2内に大気Aが導入される。これにより、図8(M)に示すようにUV透過特殊シート11の第2の基板W2との密着が解除され、該UV透過特殊シート11は初期位置に復帰する。そして、ステージ2を初期位置まで降下させ、開閉扉23を昇降装置24により移動し、空室筐体1の基板搬入窓1bから、上昇させた支持ロッド8のホルダー8aらより支持されているセル構造体30をロボットアームRB1またはRB2により取り出すことができる。
【0056】
以上詳細に説明したように、本発明の封止装置では、空室筐体1上面の開口部をUV透過特殊シート11で覆閉し、UVマスク15を収容したUVマスク支持枠14を載置するようにし、更にこのUVマスク支持枠14の開口部を覆閉する可動封止盤18を載置するようにした。そして、空室筐体1に基板搬入窓1bを形成してこの前面に開閉扉を配設するようにしたことにより、空室筐体1を可能な限り小型化することができることから真空状態を形成するための排気処理を迅速に行うことができ、生産効率を向上することが可能となり、液晶表示パネルあるいは有機EL表示パネル等の生産に対応する汎用性の高い封止装置とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・・・空室筐体
2・・・・・ステージ
3・・・・・ロッド
4・・・・・ギヤボックス
5・・・・・モータ
6・・・・・支持ロッド
7・・・・・流体圧シリンダー
8・・・・・支持ロッド
9・・・・・流体圧シリンダー
10・・・・アライメントカメラ
11・・・・UV透過特殊シート
12・・・・供給ロール
13・・・・巻取ロール
14・・・・UVマスク支持枠
15・・・・UVマスク
16・・・・Oリング
17・・・・Oリング
18・・・・可動封止盤
19・・・・ランプハウス
20・・・・UVランプ
21・・・・熱線カットフィルター
22・・・・シャッター
23・・・・開閉扉
24・・・・昇降装置
25・・・・流体圧チューブ
26a、26b、26c・・・・バルブ
27a、27b、27c・・・・バルブ
28・・・・真空ポンプ
30・・・・セル構造体
W1・・・・第1の基板
W2・・・・第2の基板
CH1・・・第1のチャンバー
CH2・・・第2のチャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部が形成され吸排気口を有するとともに、内部にステージと下側基板の支持ロッドおよび上側基板の支持ロッドを昇降可能に設けた空室筺体と、
前記空室筺体の開口部を覆う柔軟性および透光性を有するシート部材と、
外形が前記空室筺体と略一致する形状であって吸排気口を有するとともに、UV透過マスクを内部に収容して前記シート部材上に載置されるUVマスク支持枠と、
前記UVマスク支持枠の上面の開口部を覆う可動封止盤と、
前記可動封止盤の上方に配設された光源部とを備え、
前記空室筺体上にシート部材を介してUVマスク支持枠および可動封止盤が配置されたとき、前記シート部材を境界とする下部の空室筺体内が減圧可能な第1のチャンバーとなる一方、前記シート部材を境界とする上部のUVマスク支持枠および可動封止盤に囲われた内部が減圧可能な第2のチャンバーとなるようにしたことを特徴とする封止装置。
【請求項2】
前記空室筺体内に第1の基板を支持して昇降可能となるようにした第1の支持ロッドおよび第2の基板を支持して昇降可能となるようにした第2の支持ロッドと、セル構造体を載置して昇降可能となるようにしたステージとを備えたことを特徴とする請求項1記載の封止装置。
【請求項3】
前記第1の支持ロッドが前記ステージ内で昇降するように構成したことを特徴とする請求項2記載の封止装置。
【請求項4】
前記第1、第2の支持ロッドおよびステージを昇降するための駆動機構が空室筺体の底面下に構成されていることを特徴とする請求項2記載の封止装置。
【請求項5】
前記空室筺体の任意の側面に第1のチャンバーの気密状態を保つことができるようにした開閉扉を設けたことを特徴とする請求項2記載の封止装置。
【請求項6】
前記第1の基板と第2の基板とのアライメント調整をするためのアライメントカメラを前記ステージの側部に設けたことを特徴とする請求項2記載の封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図8−6】
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【図8−7】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−250008(P2010−250008A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98195(P2009−98195)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(399041561)常陽工学株式会社 (36)
【Fターム(参考)】