説明

封止部材を有するねじ付部材およびスパークプラグ

【課題】潰れた際の張出部からのはみ出しを抑制しつつも十分な大きさの潰れ代を確保できる封止部材を有するねじ付部材およびスパークプラグを提供する。
【解決手段】ガスケット100は、周方向断面が一方の端部101よりも他方の端部102が内側となる渦巻状をなす。周方向断面は、第一延伸部110、第二延伸部120、第三延伸部130、第一接続部140、第二接続部150、第三接続部160からなる。ガスケット100の軸Q方向の高さをh、h/2を満たす第二延伸部120の部位における厚みをt、第一接続部140の曲率半径をr、第二延伸部120の最小となる径方向距離をR2、第三延伸部130の最大となる径方向距離をR1とする。このとき、2×t≦r≦(R1−R2)/2を満たすとともに、h≧(R1−R2)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付孔を介した気密漏れを封止する封止部材を有するねじ付部材およびスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スパークプラグは、主体金具の外周に形成したねじ山を、エンジン等の内燃機関の取付孔に形成した雌ねじに対してねじ止めすることで、エンジンへの取付けを行う。主体金具の外周には、円環状の金属板を一周にわたって厚み方向に折り返して形成される封止部材(ガスケット)が装着され、取付孔を介した燃焼室内の気密漏れが防止される。スパークプラグの取付け時に、ガスケットは、主体金具の張出部と取付孔の開口周縁部との間に挟まれ圧縮される。ガスケットは、ねじ締めに伴い変形し、張出部と開口周縁部とのそれぞれに対する密着性および軸力(締め付けに伴う圧縮により軸方向に働く反力)を高め、気密漏れを封止する。
【0003】
ところで直噴式のエンジンでは、燃焼室内に突き出される接地電極と、燃料の噴射口と、火花放電間隙との位置関係が、着火性に影響する。ゆえに、スパークプラグをエンジンに取り付ける際には、ねじの回転により接地電極の向き(燃焼室内における上記の位置関係)を自由に調整できることが望まれる。そこで、スパークプラグを取り付ける際のねじ締めで、トルクを維持しつつもガスケットが潰れることのできる大きさ(圧縮変位の変化量)を確保したものが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、ガスケットの圧縮変位の変化量を0.5mm以上確保したことで、所定の軸力を維持した状態でねじの回転を0.5〜1回転以上確保し、接地電極の向きを調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−266186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ガスケットの圧縮変位の変化量を確保するための潰れ代となる部分が、ガスケットの軸方向よりも径方向に大きく確保されている。ガスケットは取り付け時の潰れによって径方向に広がりやすいため、潰れ代となる部分の形状が径方向に大きいガスケットでは張出部からはみ出す場合がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、潰れた際の張出部からのはみ出しを抑制しつつも十分な大きさの潰れ代を確保できる封止部材を有するねじ付部材およびスパークプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、自身の外周にねじ山が形成され、当該ねじ山よりも基端側に、自身の外周から外向きに張り出しつつ周方向に一周する形態をなす張出部を有するねじ付部材に、外側から同心的に装着される環状形態をなし、前記ねじ付部材が、雌ねじの形成された取付孔に螺合により取り付けられた状態において、前記張出部と、前記取付孔の開口周縁部との間にて圧縮されて、前記張出部と前記開口周縁部との間を封止する封止部材を備えた、封止部材を有するねじ付部材において、前記封止部材の中心軸を含む平面にて当該封止部材の断面をみたときに、当該断面が、一方の端部から他方の端部まで連続しつつ前記他方の端部が前記一方の端部よりも内側に位置する渦巻状をなすとともに、自身の一端を前記一方の端部とし、前記自身の一端よりも前記封止部材の径方向内側に位置する自身の他端へ向け、前記封止部材の軸方向に沿う成分よりも前記径方向に沿う成分の方が大きくなるように、略直線状に延びる第一延伸部と、前記径方向に沿う成分よりも前記軸方向に沿う成分の方が大きくなるように略直線状に延びる第二延伸部と、前記第一延伸部の他端と前記第二延伸部の一端とを、曲率半径rの曲線にて接続する第一接続部と、前記第二延伸部よりも前記径方向外側の位置にて、前記径方向に沿う成分よりも前記軸方向に沿う成分の方が大きくなるように略直線状に延びる第三延伸部と、前記第二延伸部の他端と前記第三延伸部の一端とを、前記第一延伸部から離れる方向に屈曲する曲線にて接続する第二接続部と、自身の一端が前記第三延伸部の他端に接続されるとともに、自身の他端を前記他方の端部とし、前記軸方向において、前記第一延伸部および前記第二接続部との間に位置しつつ当該第一延伸部および当該第二接続部と重なる部位を有する第三接続部とから構成され、前記封止部材は、前記第一延伸部が前記ねじ付部材の前記張出部に接触する側に位置するとともに、前記ねじ付部材が前記第二延伸部よりも前記径方向内側に位置するように前記ねじ付部材に装着され、前記封止部材が、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する前において、前記ねじ付部材に装着された状態において、前記封止部材の前記軸方向の高さをh、h/2を満たす位置における前記第二延伸部の厚みをtとし、さらに、前記封止部材の前記径方向において、前記第三延伸部のうち、前記封止部材の前記中心軸から最も離れた部位における前記中心軸からの径方向距離をR1、前記第二延伸部のうち、前記封止部材の前記中心軸に最も近い部位における前記中心軸からの径方向距離をR2としたときに、2×t≦r≦(R1−R2)/2を満たすとともに、h≧(R1−R2)を満たす封止部材を有するねじ付部材が提供される。
【0008】
封止部材の断面の形状を規定することで、封止部材が圧縮される際の大きさを確保でき、封止部材による気密性を維持したまま、ねじ付部材の周方向の向きを調整することができる。具体的に、2×t≦rとすることで封止部材の成形性を確保できる。r≦(R1−R2)/2とすることで封止部材の圧縮時における潰れ代の大きさを確保でき、ねじ付部材の周方向の向きの調整を可能とすることができる。h≧(R1−R2)とすることで、潰れ代を中心軸方向に大きくでき、潰れ代を確保しつつも潰れた際の径方向への膨らみを抑制することができる。
【0009】
第1態様において、前記封止部材の前記断面において、前記他方の端部は、前記径方向において、前記一方の端部よりも前記中心軸寄りの位置にあってもよい。封止部材の断面の形状において、他方の端部が一方の端部よりも中心軸寄りの位置にあれば、第一延伸部と張出部との接触位置と中心軸とを半径とする等価摩擦直径を、第二接続部と開口周縁部との接触位置と中心軸とを半径とする等価摩擦直径よりも小さくできる。これにより、ねじ付部材を取り付ける際の締め付けトルクを小さくし、取り外す際の戻しトルクを大きくできるので、耐緩み性を確保することができる。
【0010】
第1態様において、前記封止部材は、ステンレス鋼からなるものであってもよい。ステンレス鋼であれば剛性が高いので、ねじ付部材が取り付けられる装置の駆動・休止に伴う加熱・冷却サイクルによって発生するクリープ変形に対する耐久性が高く、有効である。
【0011】
第1態様において、前記封止部材を前記軸方向に圧縮する際の圧縮荷重をFとし、前記封止部材への付加圧力PをF/{π(R1−R2)}にて算出したときに、前記付加圧力Pが60MPa〜130MPaの範囲内における、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する際の回転角が、90°以上360°未満であってもよい。さらには、前記付加圧力Pが60MPa〜130MPaの範囲内における、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する際の回転角が、180°以上360°未満であってもよい。
【0012】
回転角として90°以上を確保できれば、ねじ付部材の周方向の向きを、ねじ付部材が取り付けられる装置の駆動に影響する向きとならないように、調整することができる。さらに、回転角として180°以上を確保できれば、ねじ付部材の周方向の向きを、ねじ付部材が取り付けられる装置の駆動において好ましい方向に調整することができる。なお、回転角として360°未満とするのは、回転角が360°であれば、ねじ付部材の周方向の向きを任意の方向に調整できるので、必要十分である。
【0013】
第1態様において、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する前において、前記ねじ付部材に装着された前記封止部材の前記断面で、前記h/2を満たし、前記厚みtの中央となる前記第二延伸部の位置において、前記封止部材の硬度を測定したときに、ビッカース硬度で、200Hv以上450Hv以下であってもよい。封止部材が200Hv以上450Hv以下のビッカース硬度を確保できれば、封止部材が十分なバネ性を得ることができ、ねじ付部材の周方向の向きを調整する際に、十分な軸力を確保できる。
【0014】
第1態様において、前記ねじ付部材に装着する前の前記封止部材の前記断面をみたときに、前記第三接続部の一端側から前記他方の端部側へと向かう方向が、前記軸方向に対し、40°以上70°以下の角度で交差してもよい。封止部材の断面において、第三接続部の一端側から他方の端部側へと向かう方向が、軸方向に対し、40°以上の角度で交差すれば、封止部材を圧縮する際に第二延伸部と第三延伸部とを径方向に膨らませ、バネ性をもった変形を行わせ、十分な軸力を確保できる。なお、上記角度が70°より大きい封止部材は、作製が難しい。
【0015】
本発明の第2態様によれば、第1態様に係る封止部材を有するねじ付部材の前記封止部材を、主体金具に装着して使用するスパークプラグが提供される。第1態様に係る封止部材が装着されたスパークプラグであれば、内燃機関の駆動・休止に伴う加熱・冷却サイクルによる負荷に十分に耐えることができる。よって、気密性および耐緩み性を確保しつつ、接地電極の向きを調整することができるので、着火性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スパークプラグ1の部分断面図である。
【図2】ガスケット100のスパークプラグ1への装着前の状態における周方向断面を示す図である。
【図3】ガスケット100のスパークプラグ1への装着後の状態における周方向断面を示す図である。
【図4】スパークプラグ1をエンジンヘッド90に取り付け、主体金具50の張出部54と取付孔91の開口周縁部92との間にガスケット100を挟んで圧縮した状態を示す部分断面図である。
【図5】接地電極30の向きと点火進角(BTDC)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したスパークプラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照し、本発明に係る封止部材の一例としてのガスケット100を装着したスパークプラグ1の構造について説明する。なお、後述する主体金具50を、本発明におけるねじ付部材の一例として説明するが、スパークプラグ1は主体金具50に各部品が組み付けられて完成するものである。よって、便宜上、主体金具50の軸線が、スパークプラグ1の軸線Oと一致するものとして、以下の説明を行うものとする。また、図1において、軸線O方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
【0018】
図1に示すように、スパークプラグ1は、軸孔12内の先端側に中心電極20を保持し、後端側に端子金具40を保持する絶縁碍子10を有する。また、スパークプラグ1は、絶縁碍子10の径方向周囲を周方向に取り囲み、絶縁碍子10を保持する主体金具50を有する。主体金具50の先端面57には接地電極30が接合されている。接地電極30は、先端部31側が中心電極20と対向するように屈曲されており、中心電極20に設けられた貴金属チップ80との間に火花放電間隙GAPを有する。
【0019】
まず、絶縁碍子10について説明する。絶縁碍子10は周知のようにアルミナ等を焼成して形成され、軸中心に軸線O方向へ延びる軸孔12を有する筒形状をなす。軸線O方向における絶縁碍子10の略中央には、外径が最も大きい鍔部19が形成されている。鍔部19より後端側(図1における上側)には、後端側胴部18が形成されている。鍔部19より先端側(図1における下側)には後端側胴部18よりも外径の小さな先端側胴部17が形成されている。先端側胴部17よりも先端側には、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。脚長部13は先端側ほど外径が縮小されている。脚長部13は、スパークプラグ1が内燃機関のエンジンヘッド90(図4参照)に取り付けられた場合に、エンジンの燃焼室(図示外)内に曝される。脚長部13と先端側胴部17との間は段部15として形成されている。
【0020】
次に、中心電極20について説明する。上記したように、絶縁碍子10は、軸孔12の先端側に中心電極20を保持する。中心電極20は、インコネル(商標名)600または601等のニッケル系合金等からなる母材24の内部に、熱伝導性に優れる銅等からなる金属芯25を配置した構造を有する。中心電極20の先端部22は絶縁碍子10の先端面から突出し、先端側に向かって外径が縮小されている。先端部22の先端面には、耐火花消耗性向上のため、貴金属チップ80が接合されている。また、絶縁碍子10は、軸孔12内に、シール体4およびセラミック抵抗3を有する。中心電極20は、シール体4およびセラミック抵抗3を経由して、軸孔12の後端側に保持された端子金具40に電気的に接続されている。スパークプラグ1の使用時には、端子金具40に点火コイル(図示外)が接続され、高電圧が印加される。
【0021】
次に、接地電極30について説明する。接地電極30は、耐腐食性の高い金属(一例として、インコネル(商標名)600または601等のニッケル合金)を用い、横断面が略長方形の棒状に形成された電極である。接地電極30は、一端側の基部32が、主体金具50の先端面57に溶接により接合されている。接地電極30は、他端側の先端部31側が、中心電極20の先端部22側へ向けて屈曲されている。接地電極30の先端部31と、中心電極20の貴金属チップ80との間には、火花放電間隙GAPが形成されている。
【0022】
次に、主体金具50について説明する。主体金具50は、低炭素鋼材からなる円筒状の金具である。前述したように、主体金具50は、絶縁碍子10の後端側胴部18の一部から脚長部13にかけての部位の周囲を取り囲み、絶縁碍子10を保持する。主体金具50は、図示外のスパークプラグレンチが嵌合する工具係合部51と、エンジンヘッド90の取付孔91(図4参照)の雌ねじに螺合するねじ山が形成された取付部52とを有する。なお、本実施の形態の主体金具50は、取付部52のねじ山の呼び径をM12とする規格に沿って作製されたものである。呼び径についてはM12に限定するものではなく、M10でもM14であってもよく、あるいはM8であってもよい。また、主体金具50の表面にはNiめっき層が形成されている。
【0023】
主体金具50の工具係合部51と取付部52との間には、径方向外向きに鍔状に張り出す張出部54が形成されている。取付部52と張出部54との間の部位はねじ首59と称され、ねじ首59には、後述するガスケット100が嵌め込まれている。
【0024】
主体金具50の工具係合部51より後端側には、厚みの薄い加締部53が設けられている。張出部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に厚みの薄い座屈部58が設けられている。主体金具50の内周で、取付部52の位置には段部56が形成されており、段部56には、環状の板パッキン8が配置されている。工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50の内周面と絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間には円環状のリング部材6,7が介在されており、リング部材6,7間にタルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53は、内側に向けて折り曲げるように加締められることで、リング部材6,7およびタルク9を介し、絶縁碍子10を主体金具50内で先端側へ向け押圧する。加締部53に押圧された絶縁碍子10は、段部15が板パッキン8を介して主体金具50の段部56に支持されて、主体金具50と一体になる。主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性は板パッキン8によって保持され、燃焼ガスの流出が防止される。上記した座屈部58は、加締めの際に、圧縮力の付加に伴い外向きに撓み変形するように構成されており、軸線O方向におけるタルク9の圧縮長さを長くして、気密性を高めている。
【0025】
次に、ガスケット100について説明する。ガスケット100は、オーステナイト系ステンレス鋼、もしくはフェライト系ステンレス鋼からなる一枚の環状の板材に対し厚み方向に折り返す加工を施して、円環状に作製されたものである。ガスケット100が主体金具50に装着される際には、円環状のガスケット100の中心軸(便宜上、軸Q(図3参照)とする)を軸線O方向に揃え、ねじ首59に嵌め込まれる。このとき、後述する第一延伸部110側が主体金具50の張出部54に向けられ、ねじ首59が、後述する第二延伸部120よりも径方向内側に位置するようにして、ガスケット100がねじ首59に装着される。なお、図1に示す、ガスケット100は、主体金具50に装着される際に軸Q方向に圧縮され、径方向に膨らむように変形されたものであり、ねじ首59からの外れが防止される。以下では、主体金具50に装着する前のガスケット100(すなわち軸Q方向に圧縮されていない状態のもの)について説明する。
【0026】
図2に示すように、本実施の形態のガスケット100は、上記した環状の板材を厚み方向に3箇所で折り返すことによって、周方向と直交する断面(言い換えると、軸Qを含む平面にてガスケット100をみた断面であり、以下、「周方向断面」という)の形状が渦巻状となるように作製される。より具体的に、ガスケット100は、周方向断面において、一方の端部101から他方の端部102まで連続しつつ、端部102が端部101よりも内側に位置する渦巻状をなす。例えば、折り返し箇所が4箇所以上のものや、周方向断面が渦巻状でなく、表裏逆の厚み方向への折り返しが含まれるガスケットを作製するには、少なくとも5工程以上のプレス成型による加工を必要とする。本実施の形態のガスケット100は、板材の一方の面側が常に谷側となる、いわゆる一方向曲げによって作製でき、具体的に、4工程のプレス成型によって形成することができるため、成形性に優れる。以下、ガスケット100の形態について説明するが、便宜上、ガスケット100の周方向断面は、第一延伸部110、第二延伸部120、第三延伸部130、第一接続部140、第二接続部150、および第三接続部160の6つの部位からなるものとする。
【0027】
第一延伸部110は、周方向断面において、ガスケット100の一方の端部101を自身の一端111とし、自身の他端112へ向けて、直線状に延びる形状を有する部位である。第一延伸部110の他端112は、径方向において、一端111よりも内側に配置される。第二延伸部120は、周方向断面において、径方向の成分よりも軸Q方向の成分が大きくなるように、自身の一端121から他端122へ向けて、直線状に延びる形状を有する部位である。第二延伸部120の一端121は、他端122よりも、第一延伸部110側に配置される。第三延伸部130も同様に、周方向断面において、径方向の成分よりも軸Q方向の成分が大きくなるように、自身の一端131から他端132へ向けて、直線状に延びる形状を有する部位である。第三延伸部130の他端132は、一端131よりも、第一延伸部110側に配置される。また、第三延伸部130は、径方向において、第二延伸部120よりも外側に配置される。
【0028】
第一接続部140は、第一延伸部110の他端112と、第二延伸部120の一端121とを接続する部位である。第一接続部140は、ガスケット100の作製時に折り曲げられる上記の3箇所の部位うちの1部位である。後述するが、主体金具50のねじ首59への装着時にガスケット100が圧縮されたときに、第一接続部140は周方向断面の形状が曲率半径rの曲線に沿う形状となって、第一延伸部110と第二延伸部120とを接続する。あらかじめガスケット100の作製時に第一接続部140において折り曲げがなされることで、ガスケット100が装着時に圧縮された際、第一接続部140が曲率半径rの曲線に沿う形状に形成される。
【0029】
第二接続部150は、第二延伸部120の他端122と第三延伸部の一端131とを接続する部位である。第二接続部150は、上記の第一接続部140と同様に、ガスケット100の作製時に折り曲げられる部位の一つである。第二接続部150は、折り曲げによって、周方向断面の形状が、軸Q方向において第一延伸部110から離れる方向に屈曲するU字形状の曲線に沿う形状となる。
【0030】
第三接続部160は、自身の一端161が第三延伸部130の他端132に接続され、自身の他端162を、ガスケット100の他方の端部102とする部位である。第三接続部160も同様に、ガスケット100の作製時に折り曲げられる部位の一つである。第三接続部160の他端162は、径方向において、一端161よりも内側に位置するように折り曲げられる。その際に、他端162は、径方向においては、第二延伸部120と第三延伸部130との間に位置され、軸Q方向においては、第一延伸部110と第二接続部150との間に位置される。これにより、第三接続部160の他端162は、ガスケット100がなす渦巻状の形状の内側で、軸Q方向において、第一延伸部110と第二接続部150とに重なる位置に配置される。
【0031】
このように、ガスケット100は、周方向断面が渦巻状となるように形成されることで、ガスケット100は内部に空間が確保される。この内部空間が、スパークプラグ1をエンジンヘッド90に取り付ける際にガスケット100が潰れる潰れ代として機能する。本実施の形態では、スパークプラグ1をエンジンヘッド90に取り付ける際に、燃焼室内に突き出される接地電極30の向きを調整するため、ガスケット100には、潰れ代の大きさの確保が望まれる。またガスケット100の圧縮時に、気密性の確保のための十分な軸力を得るために、ガスケット100の第二延伸部120と第三延伸部130とが確実に径方向に膨らむ変形をなすことが望まれる。そこで、ガスケット100の作製時に、第三接続部160を折り曲げる際の折り曲げ角度θに規定が設けられている。具体的に、第三接続部160は、第三延伸部130の他端132と接続する自身の一端161側から、ガスケット100の他方の端部102である自身の他端162側へと向かう方向が、軸Q方向に対し、40°以上70°以下の角度で交差することが規定されている。
【0032】
第三接続部160が折り曲げられる前の状態において、第三接続部160の一端161から他端162へ向かう方向は、第三延伸部130の一端131から他端132へ向かう方向と一致し、直線状に延びる。第三接続部160が折り曲げられる際には、第三接続部160の一端161から他端162へ向かう方向が、第三延伸部130の一端131から他端132へ向かう方向と交差する角度θが、40°以上70°以下となるように、第三接続部160が折り曲げられる。もっとも、第三接続部160の折り曲げ後において、一端161から他端162を向く方向は、折り曲げ位置によって異なってくる。本実施の形態では、ガスケット100の作製時における第三接続部160の折り曲げは、一端161付近において行われるものとし、他端162付近においては延伸方向が維持されるものとする。よって、便宜上、他端162付近における第三接続部160の延伸方向(仮想直線163で示す)が、第三延伸部130の延伸方向(仮想直線164で示す)と交差する角度θを検討する。
【0033】
後述する実施例1によれば、仮想直線163と仮想直線164とが交差する角度θが70°より大きいものは、成型することができない。また、仮想直線163と仮想直線164とが交差する角度θが40°未満の場合、ガスケット100を主体金具50に装着する際の圧縮において、第二延伸部120と第三延伸部130とが径方向に膨らむ変形をなさない虞がある。
【0034】
次に、主体金具50に装着された状態のガスケット100(軸Q方向に圧縮され、径方向に膨らむように変形された状態のもの)について、図3,図4を参照し、説明する。ガスケット100は、主体金具50(図1参照)に装着される際に、図3に示すように、軸Q方向に圧縮される。圧縮によって、ガスケット100は、周方向断面が径方向に膨らみ、内径が主体金具50のねじ山の外径よりも小さい程度の大きさとなるため、ガスケット100のねじ首59からの外れが防止される。なお、ガスケット100の周方向の数カ所において、ガスケット100の内径をさらに小さくするための部分的な圧縮を行ってもよい。
【0035】
図4に示すスパークプラグ1は、主体金具50がエンジンヘッド90の取付孔91に取り付けられ、ガスケット100が、主体金具50の張出部54と、取付孔91の開口周縁部92とに挟まれた状態のものである。なお、図4の状態において、ガスケット100は、主体金具50の締め付けによる軸Q方向への圧縮が、まだなされていない。この状態からさらに締め付けがなされると、図示しないが、ガスケット100は、主体金具50の張出部54と、取付孔91の開口周縁部92との間で軸Q方向に圧縮されて、径方向に膨らむ変形を生ずる。このとき、第二延伸部120と第三延伸部130とが互いに遠ざかる方向へバネ性を有した曲がりを生ずることで、ガスケット100は、張出部54と開口周縁部92とに対する軸力(締め付けに伴う圧縮により軸Q方向に働く反力)を維持したまま変形される。
【0036】
張出部54と開口周縁部92との間で圧縮されるガスケット100による気密性を確保するには、ガスケット100に適度な圧縮力が付加されることが重要である。そこで、ガスケット100を軸Q方向に圧縮する際の圧縮荷重をFとし、ガスケット100への適度な圧縮力が付加される圧力(付加圧力)Pを、P=F/{π(R1−R2)}により算出する。なお、図3に示すように、ガスケット100の周方向断面において、第三延伸部130のうち、軸Qに最も遠い部位における軸Qからの径方向距離をR1とする。同様に、第二延伸部120のうち、軸Qに最も近い部位における軸Qからの径方向距離をR2とする。
【0037】
後述する実施例2によれば、付加圧力Pの範囲を、60MPa以上130MPa以下とすることが望ましいことがわかった。付加圧力Pが60MPa未満であると、ガスケット100による気密性の確保が難しい。付加圧力Pが130MPaより大きいと強度を確保することが難しく、締め付けにより、主体金具50が破断する虞がある。
【0038】
また、上記の付加圧力Pの範囲を確保するには、ガスケット100の硬度を確保することによりバネ性を得て、ガスケット100の圧縮時に十分な軸力が得られるようにすることも必要である。後述する実施例3によれば、図3に示す、ガスケット100の周方向断面のS点において、ガスケット100の硬度を測定したときに、ビッカース硬度で200Hv以上450Hv以下であるとよいことがわかった。なお、図3に示す、エンジンヘッド90に取り付ける前の主体金具50に装着された状態のガスケット100の周方向断面において、ガスケット100の軸Q方向の高さをhとする。軸Q方向の高さがh/2となる部位において、第二延伸部120の厚みをtとする。厚みtの中央の位置を、上記のS点とする。
【0039】
S点におけるガスケット100のビッカース硬度が200Hv未満の場合、ガスケット100は十分なバネ性を得ることができず、締め付けにより圧縮されると塑性変形し、緩みを生ずる虞がある。S点におけるガスケット100のビッカース硬度が450Hvより大きい場合、締め付けにより圧縮されるとガスケット100に割れやクラックを生ずる虞がある。
【0040】
また、上記したように、本実施の形態のガスケット100は、燃焼室内に突き出される接地電極30の向きを調整するための潰れ代を設けている。もっとも、ガスケット100として気密性の確保は必要であるので、潰れ代が潰れても、付加圧力Pの範囲として60MPa以上130MPa以下が確保されることが望まれる。ゆえに、後述する実施例4によれば、付加圧力Pの範囲が確保された上で、スパークプラグ1の着火性を確保するためには、接地電極30の向きを、少なくとも90°以上調整できることが望まれる。接地電極30の向きを調整可能な角度が90°未満の場合、接地電極30の向きを、着火性への影響を小さくできる向きに調整することが難しい場合がある。なお、接地電極30の向きは、360°(一回転分)調整できれば全方向に対応できるので、上限を360°としている。
【0041】
さらに後述する実施例4によれば、接地電極30の向きを180°以上調整できれば、スパークプラグ1の着火性を確実に確保することができることがわかった。接地電極30の向きを調整可能な角度が180°未満の場合、接地電極30の向きを、着火性への影響がより小さくできる向きに調整することが難しい場合がある。なお、接地電極30の向き調整の上限を360°とする点は、上記同様である。
【0042】
また、接地電極30の向きを調整するのに十分な大きさの潰れ代を確保しつつ、潰れても張出部54からはみ出すことがないように、本実施の形態では、ガスケット100の周方向断面の形状に、規定を設けている。上記したように、ガスケット100の軸Q方向の高さをh、h/2の位置における第二延伸部120の厚みをt、第一接続部140の曲率半径をrとする。また、第三延伸部130の軸Qに最も遠い部位における径方向距離をR1、同様に、第二延伸部120の軸Qに最も近い部位における径方向距離をR2とする。このとき、2×t≦r≦(R1−R2)/2を満たすと共に、h≧(R1−R2)を満たす。
【0043】
ガスケット100において、第二延伸部120および第三延伸部130は、潰れ代が軸Q方向に潰れる際に潰れによって径方向に膨らむ部分である。第二延伸部120および第三延伸部130によって、潰れ代の軸Q方向の大きさが確保される。上記のように接地電極30の向きを調整するには、軸Q方向の潰れの大きさとして、ある程度の大きさの確保が必要となる。よって、hがR1−R2より小さく、潰れ代が軸Q方向よりも径方向に大きい場合、ガスケット100が潰れた場合の径方向の大きさが、hがR1−R2以上のものよりも大きくなる。すると、ガスケット100が張出部54からはみ出したり、ねじ首59に引っかかったりする場合があり、十分な締め付けを行えなくなる虞がある。後述する実施例5によれば、接地電極30の向きの調整する角度として十分な角度(具体的には180°以上)を確保できなくなる虞があることがわかった。
【0044】
次に、ガスケット100が軸Q方向に潰れる大きさを確保するには、第一接続部140の曲率半径rを、より小さくするとよい。曲率半径rが大きいほど、軸Q方向において第一接続部140の占める大きさが、より大きくなる。すると、第二延伸部120の軸Q方向の大きさを確保しづらくなり、十分な潰れ代を確保できなくなる虞がある。後述する実施例5によれば、曲率半径rが、(R1−R2)/2より大きい場合に、十分な潰れ代を確保できなくなることがわかった。
【0045】
一方で、曲率半径rが小さいほど、ガスケット100を作製する際に、第一接続部140において折り曲げ加工による歪み量が大きくなる。すると、折り曲げにかかる荷重による負荷で、第一接続部140の折り曲げ痕にシワが寄り、ガスケット100を圧縮した際に折り曲げ痕を起点に折れや潰れを生じ、第二延伸部120におけるバネ性を確保しづらくなる虞がある。後述する実施例6によれば、曲率半径rが第二延伸部120の厚みtの2倍未満である場合、ガスケット100の作製時に、第一接続部140において折れや潰れを生ずる場合があることがわかった。
【0046】
なお、ガスケット100の材料として、例えばJIS(日本工業規格)に定められた以下の規格番号のステンレス鋼(SUS)を用いることができる。オーステナイト系ステンレス鋼の例としては、SUS201、SUS202、SUS301、SUS301J、SUS302、SUS302B、SUS304、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS316LN、SUS316J1、SUS316J1L、SUS317、SUS317L、SUS317J1、SUS321、SUS347、SUSXM15J1等を用いることができる。また、フェライト系ステンレス鋼の例としては、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS430LX、SUS430JIL、SUS434、SUS436L、SUS436JIL、SUS444、SUS445J1、SUS445J2、SUS447J1、SUSXM27等を用いることができる。
【0047】
これらのようなステンレス鋼を用いて作製したガスケットは、一般的に用いられるFeからなるガスケットと比べ剛性が高い。ゆえに、エンジンの駆動・休止に伴う加熱・冷却によって発生するクリープ変形の耐久性が高く、ガスケットの変形に起因するねじ止めの緩みが生じにくい。後述する実施例7によれば、ガスケット100にステンレス鋼(SUS)を用いた場合と鉄(Fe)を用いた場合とで、耐緩み性に差を生ずることが確認され、ガスケット100の材料としてステンレス鋼を用いることが好ましいことが明らかとなった。
【0048】
さらに、主体金具50のねじ首59にガスケット100を装着する向きによっても、耐緩み性に差を生ずることが、後述する実施例7によって確認された。具体的に、本実施の形態のガスケット100は、周方向断面で、第二延伸部120側を径方向内側に、第三延伸部130側を径方向外側に配置する形状で作製され、第一延伸部110側を張出部54に向けて、ねじ首59に装着される。これに対し、第二延伸部側を径方向外側に、第三延伸部側を径方向内側に配置する形状で作製され、第一延伸部側を張出部54に向けて、ねじ首59に装着される形態のガスケット(サンプル43)がある。また、第二延伸部側を径方向内側に、第三延伸部側を径方向外側に配置する形状で作製され、第二接続部側を張出部54に向けて、ねじ首59に装着される形態のガスケット(サンプル44)がある。いずれの形態のガスケットも、本実施の形態のガスケット100よりも、ねじの取り外し(緩め)に必要な軸力(戻しトルク)が小さくなり、耐緩み性が低下することがわかった。
【0049】
この現象は、等価摩擦直径の比較によって説明される。図4に示すように、主体金具50のねじ首59に装着される際に、上記したように、ガスケット100は、軸Q方向に圧縮される。ガスケット100が装着された主体金具50を取付孔91に取り付け、ねじの締め付けを行うと、圧縮の初期において、ガスケット100は、張出部54と点Xの一点において接触する。ガスケット100と張出部54との間において生ずる実質的な摩擦力を評価する指標となる公知の等価摩擦直径を検討したとき、点Xの径方向距離を半径とする仮想円の直径が、ガスケット100と張出部54との間における等価摩擦直径に相当する。同様に、ガスケット100は、取付孔91の開口周縁部92とも点Yの一点において接触する。このため、ガスケット100と開口周縁部92との間における等価摩擦直径は、点Yの径方向距離を半径とする仮想円の直径が相当する。
【0050】
ここで、等価摩擦直径とは、「回転摩擦力に関して、円環状の接触を、それと同一の回転摩擦力を有する円形状の接触に置き換えたときの円の直径」を指す。耐緩み性を高めるには、ガスケットと主体金具およびエンジンヘッドと間の摩擦力を高め、戻しトルクを大きくすればよい。発明者らは、エンジンヘッドを模したアルミブッシュを用い、アルミブッシュに設けた取付孔に主体金具をねじ止めする際に、ガスケットと主体金具およびアルミブッシュとの間に発生する滑りの状況を観察した。その結果、締め付け時には、ガスケットと主体金具との間にて滑りが生じやすく、ガスケットとアルミブッシュとの間では滑りが生じにくいことがわかった。一方、緩め時には、ガスケットと主体金具との間では滑りが生じにくく、ガスケットとアルミブッシュとの間にて滑りが生じやすいことがわかった。このことから、ガスケットと主体金具との間の摩擦力よりも、ガスケットとアルミブッシュ、すなわちエンジンヘッドとの間の摩擦力を高めれば、ねじ止めの緩みに対する耐性(耐緩み性)を高めることできる。
【0051】
実施例7によれば、サンプル43のガスケットは、本実施の形態のガスケット100(サンプル41)と比べ、開口周縁部との間の等価摩擦直径は同じであるが、張出部との間の等価摩擦直径は大きい。つまり、サンプル43のガスケットが装着された主体金具は、締め付け時に、より大きなトルクで締め付けないと、本実施の形態のガスケット100が装着された主体金具50と同等の締め付け力を得られない。言い換えると、サンプル43のガスケットが装着された主体金具と、本実施の形態のガスケット100が装着された主体金具50とを同一トルクで締め付けた場合、戻しトルクは、本実施の形態のガスケット100が装着された主体金具50のが大きい。
【0052】
また、サンプル44のガスケットは、本実施の形態のガスケット100(サンプル41)と比べ、開口周縁部との間の等価摩擦直径が小さく、張出部との間の等価摩擦直径は大きい。よって、両者を同一トルクで締め付けた場合、締め付け力と戻しトルクとのいずれも、サンプル44のガスケットが装着された主体金具よりも、本実施の形態のガスケット100が装着された主体金具50のが大きい。
【0053】
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。ガスケット100は、環状の板材を厚み方向に3箇所で折り返して作製したが、2箇所あるいは4箇所以上で折り返して作製してもよい。また、ガスケット100の周方向断面が、ガスケット100の全周に渡って同一形状でなくともよい。すなわち、ガスケット100は、ガスケット100の周方向において、部分的に、図3に示す周方向断面の形状を有するものであってもよい。
【0054】
図3に示すガスケット100の周方向断面の形状は、主体金具50のねじ首59に装着される際に軸Q方向に圧縮された状態の形状を示した。これに限らず、ガスケット100をねじ首59に装着した状態では図2に示す周方向断面の形状をなし、スパークプラグ1を取付孔91に締め付ける際の圧縮により、図3に示す周方向断面の形状を有してもよい。
【実施例1】
【0055】
ガスケット100の作製時に、第三接続部160を折り曲げる際の折り曲げ角度θを規定することの効果について確認を行った。まず、角度θの大きさの違いによるプレス成型機による成型が可能であるか否かについて、シミュレーションにより確認した。図2に示す、ガスケット100の周方向断面において、第三接続部160の折り曲げ角度θが0°〜70°のガスケットは、プレス成型機による成型の過程をシミュレートしたところ、成型することが可能であったので、○と評価した。しかし、角度θを90°とするガスケットは、成型の過程をシミュレートしたところ、プレス成型機では加工することができないことがわかり、×と評価した。
【0056】
次に、角度θの大きさの違いによる成型後のガスケットを圧縮した場合の挙動の違いをシミュレーションにより確認した。シミュレーションは、公知のFEM解析により行った。角度θが40°以上のガスケットの場合、軸Q方向に圧縮すると、第一延伸部110が押圧されて、第一接続部140が曲がりを生じ、第一延伸部110の一端111側が下方に移動される。そして第一延伸部110が第三接続部160の他端162に接触し、そのまま他端162が第一延伸部110に押圧されて、潰れ代の内側に巻き込まれるように、下方に移動された。さらに圧縮を続けると、第三接続部160の他端162から抗力を受ける第一延伸部110によって、第一接続部140を介して第二延伸部120が押圧され、第二延伸部120が径方向内側へ向けて曲がりを生じ、第二延伸部120の軸Q方向の長さが短くなった。同様に、他端162において第一延伸部110からの抗力を受ける第三接続部160が、第三延伸部130を押圧し、第三延伸部130が径方向外側へ向けて曲がりを生じ、第三延伸部130の軸Q方向の長さが短くなった。これにより、潰れ代が径方向に膨らみつつ軸Q方向に圧縮され、望ましい形態で潰れたので、○と評価した。
【0057】
一方、角度θが40°未満のガスケットの場合、上記同様、軸Q方向の圧縮により第一接続部140が曲がり、第一延伸部110が第三接続部160の他端162に当接する。すると、第三接続部160の他端162が第一延伸部110から押圧されるが、第三接続部160が、第一延伸部110の面に対して垂直な方向に当接した状態で押圧されてしまう。これにより、第三接続部160が、第三延伸部130とともに径方向外向きに曲がりを生じてしまい、潰れ代が平行四辺形のように変形する。潰れ代は、第二延伸部120および第三延伸部130における径方向に膨らむ曲がりを生ずることなく、軸Q方向に潰れを生ずる。このため、潰れ代は潰れるものの、第二延伸部120および第三延伸部130によるバネ性を得られず、軸力が確保できないため、×と評価した。上記の評価試験の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より明らかに、ガスケット100の作製時に、第三接続部160を折り曲げる際の折り曲げ角度θを40°以上70°以下に規定すれば、成型性および圧縮時の変形の両面において望ましい形態の潰れ代を有するガスケット100を得られることがわかった。
【実施例2】
【0060】
次に、ガスケット100が気密性および耐緩み性を確保するのに必要な付加圧力Pを確認するため、評価試験を行った。ステンレス鋼からなる厚さ0.5mmの円環状の板材にプレス成型による加工を施し、ガスケット100のサンプルを5つ作製した。このとき、図3に示すように、ガスケット100の周方向断面における各寸法を確認したところ、第一接続部140の曲率半径rが1mm、径方向距離R1が8.15mm、径方向距離R2が6mmとなった。このガスケット100のサンプルを主体金具50のねじ首59に装着したスパークプラグ1の5つのサンプルを、それぞれ、締め付けトルク(圧縮荷重F)を異ならせてアルミブッシュ(図示外)に取り付けた。具体的に、各スパークプラグ1のサンプルを取り付ける際の付加圧力P(前述したようにP=F/{π(R1−R2)}により算出される)を、それぞれ、30,60,100,130,190[MPa]とした。このとき、付加圧力Pが190MPaで取り付けられたスパークプラグ1のサンプルでは、主体金具50が破断してしまった。ゆえに、強度の面において×と評価し、以下の耐緩み性および気密性については評価試験を行わなかった。
【0061】
スパークプラグ1のサンプルが取り付けられたアルミブッシュに対し、ISO11565に示される振動試験を実施した。具体的にはスパークプラグ1のサンプルを取り付けたアルミブッシュを200℃に加熱した状態で、加速度30G±2G、周波数50〜500Hz、スイープ率1オクターブ/分の振動を、スパークプラグ1のサンプルの軸線方向とその直交方向とにそれぞれ8時間ずつ与えた。そして振動試験後に、スパークプラグ1のサンプルが取り付けられたままのアルミブッシュを、液体(例えばエタノール)で満たされたケースで覆い、アルミブッシュの取付孔内に、燃焼室側に相当する開口から1.5MPaの空気圧を加え、1分間あたりの空気漏洩量を測定した。空気漏洩量が5cc以下のものは、ガスケット100による気密性を十分に維持できるとして○と評価し、5ccより多いものは、気密性を維持できないとして×と評価した。
【0062】
さらに、アルミブッシュからスパークプラグ1を取り外し、このとき、主体金具50の取り外しに必要なトルク(戻しトルク)を測定して、締め付けトルクに対する戻しトルクの割合(戻しトルク/締め付けトルク)を百分率で求めた。戻しトルクが締め付けトルクの10%以上であった場合には、緩みに対する耐性(耐緩み性)が良好であるとして○と評価し、10%未満のものは、緩みに対する耐性が低いとして×と評価した。評価試験の結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2に示すように、付加圧力Pが30〜130[MPa]で取り付けられたガスケット100のサンプルは、いずれも、緩みに対する耐性が良好であった。また、気密性について、付加圧力Pが60〜130[MPa]で取り付けられたガスケット100のサンプルは、十分な気密性を維持できたが、付加圧力Pが30[MPa]で取り付けられたガスケット100のサンプルは、気密性を維持できなかった。よって、スパークプラグ1を取り付ける際の付加圧力Pが60〜130[MPa]であれば、第二延伸部120および第三延伸部130がバネ性を維持したまま変形することによって潰れ代の潰れがなされ、ガスケット100として十分な軸力を得て、耐緩み性および気密性を確保できることがわかった。
【実施例3】
【0065】
次に、潰れ代が潰れる場合に、第二延伸部120および第三延伸部130がバネ性を保持したまま変形するのに必要な硬さを確認するため、評価試験を行った。ステンレス鋼の製造工程における焼鈍条件を種々変化させ、ビッカース硬度の異なる9種類の厚さ0.5mmの板材を用意した。そして、上記9種類の各板材を用い、実施例2と同様の寸法条件を備えたガスケット100のサンプルを作製した。また、9つのガスケット100のサンプルと同じサンプルを別途作製し、各サンプルの上記S点におけるビッカース硬度を測定したところ、それぞれ、150、180、200、250、325、380、400、450、460[Hv]であった。なお、ビッカース硬度は、JIS Z2244に基づく試験方法において、試験荷重を1.961Nとし、荷重保持時間を10秒として測定される。そして、作製したガスケット100のサンプルを装着したスパークプラグ1の9つのサンプルを、所定の締め付けトルクでアルミブッシュ(図示外)に取り付け、実施例2と同様の条件で振動試験を実施した。試験後にアルミブッシュからスパークプラグ1を取り外し、戻しトルクを測定して、実施例2と同様に、耐緩み性の評価を行った。なお、耐緩み性の評価についても同様であるが、戻しトルクが締め付けトルクの20%以上であった場合には、耐緩み性がさらに良好であるとして◎と評価した。
【0066】
また、上記9種類のガスケット100のサンプルを装着したスパークプラグ1のサンプルを、それぞれ、再度アルミブッシュに取り付け、このとき、締め付けトルクを段階的に大きくしていった。そして、主体金具50に破断(例えばねじ山の破損)が生じたらガスケット100のサンプルを取り外して外観を観察した。ガスケット100のサンプルに割れやクラックが生じていたら×と評価し、生じていなかったら○と評価した。評価試験の結果を表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
表3に示すように、ビッカース硬度が450Hv以下のガスケット100は、主体金具50に破断が生ずるほどの締め付けトルクで圧縮しても割れやクラックを生じなかったが、450Hvを超えると、割れやクラックを生ずることがわかった。また、ビッカース硬度が200Hv未満のガスケット100は、熱と振動によって塑性変形を生じ、軸力が低下することがわかった。そして、ガスケット100のビッカース硬度を250Hv以上とすれば、十分な耐緩み性を確保できることがわかった。よって、ガスケット100のビッカース硬度が200Hv以上450Hv以下であれば、第二延伸部120および第三延伸部130が十分なバネ性を得ることができ、ガスケット100として十分な軸力を得て、耐緩み性を確保できることがわかった。
【実施例4】
【0069】
次に、スパークプラグ1の着火性を確保するために必要な、接地電極30の向きの調整可能な角度について検討するため、評価試験を行った。ここでは、潰れ代が、取付部52のねじ山のピッチで1/2ピッチ分の大きさまで潰れることのできる大きさを有することで、接地電極30の向きを0°〜180°の範囲で調整可能なガスケット100のサンプルを8つ用意した。ガスケット100の各サンプルを、それぞれスパークプラグ1のサンプルに装着し、各スパークプラグ1を、試験用の自動車エンジン(1.6L、4気筒)に、付加圧力Pを60MPaで取り付けた。このとき、燃焼室内(図示外)で接地電極30の向く向きが、もっとも着火性が良好となる向きを0°とし、8つのサンプルの接地電極30の向きを45°ずつ、ずらして取り付け、各サンプルを、便宜上、0°から順にサンプル21〜28とした。接地電極30の向きの調整を行わなかった場合の点火進角(BTDC)は、サンプル21から順に、42,41,37.5,37,35,37.5,41,41.5[°]となった。この評価試験の結果を表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
表4に示すように、ガスケット100に潰れ代がなく接地電極30の向きが調整できない場合、サンプル25のように点火進角が35°となる接地電極30の向き(180°)にスパークプラグ1が取り付けられてしまった場合、点火進角を35°から変更できず、着火性を向上することができなかった。ガスケット100の潰れ代が小さく接地電極30の向きが45°までしか調整できない場合、サンプル25のようにスパークプラグ1が取り付けられてしまっても、接地電極30の向きを+45°調整することにより、点火進角を35°から37.5°に改善することができた。一方、サンプル22のように点火進角が41°となる接地電極30の向き(45°)にスパークプラグ1が取り付けられた場合に、接地電極30の向きを+45°調整してしまうと、点火進角が37.5°に落ちてしまう場合もある。この場合には、接地電極30の向きを調整しなければ、点火進角として41°を得ることができた。同様に、ガスケット100の潰れ代がやや大きく接地電極30の向きを90°まで調整できる場合は、サンプル25については、接地電極30の向きを+90°調整することにより、点火進角を35°から41°に改善することができた。さらにガスケット100の潰れ代が大きく、接地電極30の向きを180°まで調整できる場合、サンプル25については点火進角を35°から42°まで改善することができた。
【0072】
このように、接地電極30の向きを調整可能な角度が大きくなるほど、点火進角の調整の自由度を高くすることができる。表4に示すように、例えば、接地電極30の向きを90°まで調整できるガスケット100が装着された場合、各サンプル21〜28について、接地電極30の向きを+90°までの範囲で調整することで、点火進角の最良な値(最大値)として、順に、42,41,37.5,37.5,41,41.5,42,42[°]が得られた。そして、これら最大値の中でもっとも小さな値は、サンプル23,24の示す点火進角の最大値37.5°であった。接地電極30の向きが調整できない場合と比べ、接地電極30の向きを90°まで調整できれば、点火進角の最小値を、35°(接地電極30の向きが調整できない場合のサンプル25)から37.5°まで改善できることが確認できた。ここで図5に示すように、接地電極30の向きが135°〜225°の範囲(グラフ中斜線で示す)では、点火進角が大きく低下することがわかる。接地電極30の向きを少なくとも90°以上調整できれば、少なくとも、点火進角の最小値を、上記のように、37.5°とすることができる。これにより、図5の斜線で示される、点火進角37°以下の範囲を避けることができ、スパークプラグ1の着火性を確保できることがわかった。
【0073】
さらに、表4に示すように、接地電極30の向きを180°まで調整できるガスケット100が装着された場合、各サンプル21〜28について、同様に、接地電極30の向きを調整することで、点火進角の最大値として、順に、42,41,41,41.5,42,42,42,42[°]が得られた。これら最大値の中の最小値は、サンプル22,23の示す点火進角の最大値41°であった。このように、接地電極30の向きを180°まで調整できれば、点火進角の最小値を、接地電極30の向きが調整できない場合のサンプル25が示す35°から41°まで改善できることが確認できた。図5に示すように、35°から42°の範囲の値をとる点火進角の平均値は39°であるが、接地電極30の向きを少なくとも180°以上調整できれば、確実に、平均値よりも高い点火進角となるように調整でき、スパークプラグ1の着火性を確実に確保できることがわかった。
【実施例5】
【0074】
次に、ガスケット100の周方向断面の形状に規定を設けることの効果を確認するため、評価試験を行った。まず、厚みの異なるステンレス鋼からなる円環状の板材を複数用意し、プレス成型の際の折り曲げ位置や折り曲げ角度を調整して、表5に示す、16種類のガスケット100のサンプル1〜16を作製した。サンプル1〜16において、第一接続部140の曲率半径rは、0.4mm〜1.2mmの範囲で異なるものとなった。また、第二延伸部120の厚みtは、0.3mm〜0.5mmの範囲で異なるものとなった。さらに、径方向距離R1と径方向距離R2の大きさの組み合わせについても異ならせ、潰れ代の1/2の大きさに値する(R1−R2)/2の大きさ(便宜上、Wとする)は、0.8mm〜1.075mmの範囲で異なるものとなった。そして、また、潰れ代の縦横比Cを、h/(R1−R2)で求めたところ、Cは、0.938〜1.475の範囲で異なるものとなった。表5に各サンプルの厚みt、曲率半径r、潰れ代の1/2の大きさW、潰れ代の縦横比Cを比較した表を示す。
【0075】
【表5】

【0076】
表5に示す各サンプル1〜16を、それぞれ、スパークプラグ1のサンプルに装着し、60〜130MPaの締め付けトルクでスパークプラグ1をアルミブッシュに取り付けた。このとき、潰れ代が取付部52のねじ山のピッチで1/2ピッチ分の大きさまで潰れることができたサンプル(すなわち接地電極30の向きを180°以上調整できたサンプル)を確認した。調整できたサンプルについては○と判定し、できなかったサンプルを×と判定した。この評価試験の結果を表6に示す。なお、表6では、各サンプルの曲率半径rの大きさと、潰れ代の縦横比Cとの関係について着目した。
【0077】
【表6】

【0078】
表6に示すように、サンプル1〜9,13,14は、接地電極30の向きを180°以上調整することができた。縦横比Cが1未満で潰れ代が径方向に大きいサンプル11〜12,15,16は、接地電極30の向きを180°以上調整することができないことがわかった。また、曲率半径rが、Wよりも大きなサンプル10も、接地電極30の向きを180°以上調整することができないことがわかった。よって、曲率半径rがW(すなわち、(R1−R2)/2)以下であり、且つ、縦横比Cが1以上であれば(すなわち潰れ代が軸Q方向に大きくh≧(R1−R2)を満たせば)、接地電極30の向きを180°以上調整することができることが確認できた。
【実施例6】
【0079】
さらに、上記の各サンプル1〜16について、第一接続部140を形成する際の成形性についても、評価を行った。サンプル1〜16のガスケット100を作製する際のプレス成型で第一接続部140を折り曲げた後、折り曲げ痕の様子について観察を行った。そのとき、第一接続部140の折り曲げ痕にシワが寄り、折れや潰れが生じたことが確認できたサンプルを×と評価し、折り曲げ痕がなめらかな曲面を形成したサンプルを○と評価した。評価試験の結果を表7に示す。なお、表7では、各サンプルの曲率半径rの大きさと、厚みtの関係について着目した。
【0080】
【表7】

【0081】
表7に示すように、曲率半径rが厚みtの2倍以上であったサンプル2,3,6,9,10,12は、第一接続部140の折り曲げ痕にシワがなく、なめらかな曲面が形成され、成形性が良好であった。一方、曲率半径rが厚みtの2倍未満のサンプル1,4,5,7,8,11,13〜16は、第一接続部140の折り曲げ痕にシワが寄っているのが確認された。実施例5においてアルミブッシュに取り付けたスパークプラグ1を取り外し、各サンプルの第一接続部140の折り曲げ痕を観察したところ、曲率半径rが厚みtの2倍未満のサンプル1,4,5,7,8,11,13〜16では折れや潰れを生じていたことが確認された。
【実施例7】
【0082】
次に、ガスケット100の材料や、ガスケット100を主体金具50に装着する向き、周方向断面の形状の違いなどによる耐緩み性の影響を確認するため、評価試験を行った。まず、実施例2と同様に、ステンレス鋼からなる厚さ0.5mmの円環状の板材にプレス成型による加工を施し、本実施の形態のガスケット100のサンプル41を作製した。ガスケット100の周方向断面における各寸法は、第一接続部140の曲率半径rが1mm、径方向距離R1が8.15mm、径方向距離R2が6mmとなった。また、サンプル41と同寸法で、材料を鉄(Fe)にしたサンプル42を作製した。さらに、周方向断面の形状がサンプル41と鏡像体をなすサンプル43を作製した。各サンプルを主体金具50のねじ首59に装着したスパークプラグ1のサンプルを作製し、さらにサンプル41を、軸Q方向を逆さまにしたサンプル44をねじ首59に装着したスパークプラグ1のサンプルを用意した。
【0083】
各サンプル41〜44が装着されたスパークプラグ1を締め付けトルク15N・mでアルミブッシュにそれぞれ取り付け、実施例2と同様の振動試験を行った。さらに、アルミブッシュからスパークプラグ1を取り外し、このとき、主体金具50の取り外しに必要なトルク(戻しトルク)を測定した。この評価試験の結果を表8に示す。
【0084】
【表8】

【0085】
表8に示すように、サンプル41の戻しトルクは7.9N・mであったのに対し、サンプル42〜44は、それぞれ、4.7,6.7,4.4[N・m]となり、耐緩み性が低下することがわかった。なお、サンプル41と43について、張出部54との接触痕(点Xで示す)から等価摩擦直径を求めたところ、それぞれ13.5mm、14.8mmであった。開口周縁部92との接触痕(点Yで示す)に基づく等価摩擦直径は、サンプル41と43とでは同じであり、周方向断面が鏡像体をなすと、張出部54側と開口周縁部92側との間で等価摩擦直径の比率が異なってくることが、戻しトルクに影響することが確認された。
【符号の説明】
【0086】
1 スパークプラグ
10 絶縁碍子
12 軸孔
30 接地電極
50 主体金具
54 張出部
90 エンジンヘッド
91 取付孔
92 開口周縁部
100 ガスケット
101 一方の端部
102 他方の端部
110 第一延伸部
111,121,131,161 一端
112,122,132,162 他端
120 第二延伸部
130 第三延伸部
140 第一接続部
150 第二接続部
160 第三接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の外周にねじ山が形成され、当該ねじ山よりも基端側に、自身の外周から外向きに張り出しつつ周方向に一周する形態をなす張出部を有するねじ付部材に、外側から同心的に装着される環状形態をなし、前記ねじ付部材が、雌ねじの形成された取付孔に螺合により取り付けられた状態において、前記張出部と、前記取付孔の開口周縁部との間にて圧縮されて、前記張出部と前記開口周縁部との間を封止する封止部材を備えた、封止部材を有するねじ付部材において、
前記封止部材の中心軸を含む平面にて当該封止部材の断面をみたときに、
当該断面が、一方の端部から他方の端部まで連続しつつ前記他方の端部が前記一方の端部よりも内側に位置する渦巻状をなすとともに、
自身の一端を前記一方の端部とし、前記自身の一端よりも前記封止部材の径方向内側に位置する自身の他端へ向け、前記封止部材の軸方向に沿う成分よりも前記径方向に沿う成分の方が大きくなるように、略直線状に延びる第一延伸部と、
前記径方向に沿う成分よりも前記軸方向に沿う成分の方が大きくなるように略直線状に延びる第二延伸部と、
前記第一延伸部の他端と前記第二延伸部の一端とを、曲率半径rの曲線にて接続する第一接続部と、
前記第二延伸部よりも前記径方向外側の位置にて、前記径方向に沿う成分よりも前記軸方向に沿う成分の方が大きくなるように略直線状に延びる第三延伸部と、
前記第二延伸部の他端と前記第三延伸部の一端とを、前記第一延伸部から離れる方向に屈曲する曲線にて接続する第二接続部と、
自身の一端が前記第三延伸部の他端に接続されるとともに、自身の他端を前記他方の端部とし、前記軸方向において、前記第一延伸部および前記第二接続部との間に位置しつつ当該第一延伸部および当該第二接続部と重なる部位を有する第三接続部と
から構成され、
前記封止部材は、前記第一延伸部が前記ねじ付部材の前記張出部に接触する側に位置するとともに、前記ねじ付部材が前記第二延伸部よりも前記径方向内側に位置するように前記ねじ付部材に装着され、
前記封止部材が、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する前において、前記ねじ付部材に装着された状態において、
前記封止部材の前記軸方向の高さをh、
h/2を満たす位置における前記第二延伸部の厚みをtとし、
さらに、前記封止部材の前記径方向において、
前記第三延伸部のうち、前記封止部材の前記中心軸から最も離れた部位における前記中心軸からの径方向距離をR1、
前記第二延伸部のうち、前記封止部材の前記中心軸に最も近い部位における前記中心軸からの径方向距離をR2としたときに、
2×t≦r≦(R1−R2)/2
を満たすとともに、
h≧(R1−R2)
を満たすことを特徴とする封止部材を有するねじ付部材。
【請求項2】
前記封止部材の前記断面において、前記他方の端部は、前記径方向において、前記一方の端部よりも前記中心軸寄りの位置にあることを特徴とする請求項1に記載の封止部材を有するねじ付部材。
【請求項3】
前記封止部材は、ステンレス鋼からなることを特徴とする請求項1または2に記載の封止部材を有するねじ付部材。
【請求項4】
前記封止部材を前記軸方向に圧縮する際の圧縮荷重をFとし、前記封止部材への付加圧力PをF/{π(R1−R2)}にて算出したときに、前記付加圧力Pが60MPa〜130MPaの範囲内における、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する際の回転角が、90°以上360°未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の封止部材を有するねじ付部材。
【請求項5】
前記付加圧力Pが60MPa〜130MPaの範囲内における、前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する際の回転角が、180°以上360°未満であることを特徴とする請求項4に記載の封止部材を有するねじ付部材。
【請求項6】
前記ねじ付部材を前記取付孔に螺合する前において、前記ねじ付部材に装着された前記封止部材の前記断面で、前記h/2を満たし、前記厚みtの中央となる前記第二延伸部の位置において、前記封止部材の硬度を測定したときに、ビッカース硬度で、200Hv以上450Hv以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の封止部材を有するねじ付部材。
【請求項7】
前記ねじ付部材に装着する前の前記封止部材の前記断面をみたときに、前記第三接続部の一端側から前記他方の端部側へと向かう方向が、前記軸方向に対し、40°以上70°以下の角度で交差することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の封止部材を有するねじ付部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の封止部材を有するねじ付部材の前記封止部材を、主体金具に装着して使用することを特徴とするスパークプラグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−33445(P2012−33445A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174280(P2010−174280)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】