説明

射出ストレッチ吹込成形用プロピレンに基くポリマー

本明細書には射出ストレッチ吹込成形(ISBM)製品および同を形成する方法が提供される。1つの実施態様において、ISBM製品は一般的に約9〜約20の分子量分布を有するプロピレンに基くランダム・コポリマーを含む。他の実施態様において、ISBM製品は一般的に、サクシネートの内部供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒から形成される、プロピレンに基くランダム・コポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は一般的に射出ストレッチ吹込成形に使用のために適合されたポリマーに関する。本発明の実施態様はとりわけ、射出ストレッチ吹込成形(injection stretch blow molding)に使用のために適合されたプロピレンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルテレフタレート(PET)は歴史的に、例えばビンおよび広口ジャーのような射出ストレッチ吹込成形(ISBM)製品を形成するために使用される射出ストレッチ吹込成形用予備成形物に使用されてきた。予備成形物のためにポリプロピレンを使用する試みが実施されてきたが、プロピレンに基く予備成形物は主として再加熱、ストレッチおよび吹込工程中に狭い加工枠を示す傾向を有した。プロピレンポリマーはとりわけ、一般的に、欠陥をもたない容器の生産を確保することを不可能にする、狭い温度枠をもたらした。ランダム・コポリマーの使用はその枠を幾らか広くしたが、ランダム・コポリマーを使用するこれまでの努力はISBM法に対して固すぎるポリマーをもたらした。
【0003】
従って、射出ストレッチ吹込成形に使用することができるプロピレンに基くポリマー(コポリマーを含む)を生産する必要が存在する。
【発明の開示】
【0004】
本発明の実施態様は射出ストレッチ吹込成形(ISBM)製品を含む。1つの実施態様において、ISBM製品は一般的に約9〜約20の分子量分布を有するプロピレンに基くランダム・コポリマーを含む。他の実施態様において、ISBM製品は一般的にサクシネート内部供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒から形成されるプロピレンに基くランダム・コポリマーを含む。
【0005】
実施態様は更に、ISBM製品を形成する方法を含む。このような方法は一般的に、プロピレンに基くランダム・コポリマーを提供し、プロピレンに基くランダム・コポリマーを予備成形物に射出成形し、そして予備成形物をビンにストレッチ吹込成形する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ポリマーサンプルのストレッチ降伏応力を表す。
【図2】形成サンプルの口部(top)荷重強さを表す。
【図3】形成サンプルの光沢(gloss)を表す。
【図4】形成サンプルの曇り度(haze)を表す。
【図5】形成サンプルの重量分布を表す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
序説および定義
次に詳細な説明が提供される。添付の請求項はそれぞれ、別の発明を規定し、それらは
侵害の目的上、請求項中に明記された種々の要素または制約に対する同等物を含むものと認められる。文脈に応じて、以下に「発明」と言及されるものはすべて、場合により、特定の実施態様のみを表すことができる。他の場合には、「発明」の言及は1項または複数の、しかし必ずしもすべてではない請求項中に引用された主題を表すことが認められるであろう。次に、特定の実施態様、バージョンおよび実施例を含む発明をそれぞれ以下に更に詳細に説明するが、該発明は、これらの実施態様、バージョンまたは実施例に限定はされず、それらは本特許中の情報が利用可能な情報および技術と組み合わされると、当業者に本発明を製造させ、使用させ得るために含まれる。
【0008】
本明細書に使用される種々の用語は以下に示される。請求項中に使用される用語が以下に定義されない範囲に対しては、印刷された刊行物および発行された特許中に使用された時に、当業者がその用語に与えてきたもっとも広義の定義を与えるべきである。更に、本明細書に記載されるすべての化合物は、別に明記されない限り、置換されていてもまたは未置換でもよく、そして化合物のリストはそれらの誘導体を含む。
【0009】
触媒系
オレフィンモノマーを重合するために有用な触媒系は当業者に知られたあらゆる触媒系を含む。該触媒系は例えば、メタロセン触媒系、シングルサイト触媒系、チーグラー・ナッタ触媒系またはそれらの組み合わせ物を含むことができる。このような触媒系の簡単な考察は以下に含まれるが、このような触媒に本発明の範囲を限定することは全く意図されない。
【0010】
チーグラー・ナッタ触媒系は一般的に、金属成分(例えば、潜在的に活性な触媒部位)の、例えば触媒支持体(support)、助触媒および/または1種または複数の電子供与体のような1種または複数の更なる成分との組み合わせ物から形成される。
【0011】
チーグラー・ナッタ触媒の特定の例は、一般的に式:
MR
[ここでMは遷移金属であり、Rはハロゲン、アルコキシまたはヒドロカルボキシル基であり、そしてxは遷移金属の原子価である]
により表される金属成分を含む。例えば、xは1〜4であることができる。
【0012】
遷移金属は例えばIV〜VIB族(例えば、チタン、クロムまたはバナジウム)から選択することができる。Rは1つの実施態様において塩素、臭素、炭酸アニオン、エステルまたはアルコキシ基から選択することができる。触媒成分の例は例えば、TiCl、TiBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(OC13Cl、Ti(OCBrおよびTi(OC1225)Clを含む。
【0013】
当業者は、触媒が重合を促進するために有用である前に、何らかの方法で触媒が「活性化される」ことができることを認めるであろう。以下に更に考察されるように、活性化は、触媒を、場合により「助触媒」とも呼ばれる活性剤と接触させることにより達成することができる。このようなZ−N活性剤の実施態様は例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAl)およびトリイソブチルアルミニウム(TiBAl)のような有機アルミニウム化合物を含む。
【0014】
チーグラー・ナッタ触媒系は更に、内部電子供与体および/または外部電子供与体のような1種または複数の電子供与体を含むことができる。内部電子供与体は生成されるポリマーのアタクチック形態を減少させて、それによりポリマー中のキシレン可溶性物質の量を減少するために使用することができる。内部電子供与体は例えば、アミン、アミド、エ
ステル、ケトン、ニトリル、エーテル、チオエーテル、チオエステル、アルデヒド、アルコラート、塩、有機酸、ホスフィン、ジエーテル、サクシネート、フタレート、マロネート、マレイン酸誘導体、ジアルコキシベンゼンまたはそれらの組み合わせ物を含むことができる(本明細書中に参照することにより引用されたものとされる、米国特許第5,945,366号および第6,399,837号明細書を参照されたい)。
【0015】
1つの特定の、限定しない実施態様において、電子供与体はサクシネートを含む。サクシネートの特定の、限定しない例は例えば、ジエチルサクシネート、ジブチルサクシネート、ジエチルメチルサクシネート、ジプロピルサクシネート、ジペンチルサクシネート、ジヘキシルサクシネート、ジオクチルサクシネート、ジデシルサクシネート、ブチルオクチルサクシネート、ジドデシルサクシネート、ジエチルsec−ブチルサクシネート、ジエチルセキシルサクシネート(diethyl thexylsuccinate)、ジエチルトリメチルシリルサクシネート、ジエチルシクロヘキシルサクシネート、ジエチルベンジルサクシネート、ジエチルシクロヘキシル(メチル)サクシネート、ジエチルt−ブチルサクシネート、ジエチルイソブチルサクシネート、ジエチルイソプロピルサクシネート、ジエチルネオペンチルサクシネート、ジエチルイソペンチルサクシネート、ジエチル2−ベンジル−2−イソプロピルサクシネート、ジエチル2,2−シクロペンチルサクシネート、ジエチル2,2−ジイソブチルサクシネート、ジエチル2−イソプロピル−2−メチルサクシネート、ジエチル2,2−ジイソプロピルサクシネート、ジエチル2−イソブチル−2−エチルサクシネート、ジエチル2−イソペンチル−2−イソブチルサクシネート、ジエチル2,2−シクロヘキシルサクシネート、ジエチル2,3−ジイソプロピルサクシネート、ジエチル2,3−ジシクロヘキシルサクシネート、ジエチル2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)サクシネート、ジエチル2,3−ジ−t−ブチルサクシネート、ジエチル2,3−ジイソブチルサクシネート、ジエチル2,3−ジネオペンチルサクシネート、ジエチル2,3−ジイソペンチルサクシネート、ジエチル2−イソプロピル−3−イソブチルサクシネート、ジエチル2−t−ブチル−3−イソプロピルサクシネート、ジエチル2−イソプロピル−3−シクロヘキシルサクシネートおよびジエチル2−イソペンチル−3−シクロヘキシルサクシネートを含む。
【0016】
サクシネートに基く触媒系は一般的に以下に更に詳細に考察される、広い分子量の分布を示すポリマーを生成する。プロピレンポリマーによるISBM製品を生産する以前の試みは、ポリマーにおける狭い加工枠および固さに対する解決として広い分子量分布をもつポリマーの適用性を認めることができなかった。本明細書で使用される用語「加工枠」は、前以て決められた加熱温度の理想温度からの変化に対するポリマーの感受性を表す。例えば、加工の枠が狭い程、ポリマーは温度変化に感受性であり、その反対も言える。実際、プロピレンに基くポリマーを使用する以前の試みは事実、使用ポリマーの分子量分布を更に低下させる(狭める)方法を含んでいた。予期されなかったことには、本発明の実施態様は、欠陥を伴って生産される製品をほとんど伴わずに(例えば、10%未満または5%未満)許容され得る加工枠内で(例えば、温度変化に対してより低い感受性)ISBM製品を生産することができた。本明細書で使用される「欠陥」は視覚検査により測定される。視覚的欠陥は一般的に、製品のあらゆる部分における濃厚化(concentrating)(過大または過小ストレッチ)からもたらされる。欠陥は更に、機械的特性試験により測定することができる。
【0017】
外部電子供与体は生産されるアタクチックポリマーの量を更に制御するために使用することができる。外部電子供与体は単官能または多官能カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、有機リン化合物および/または有機ケイ素化合物を含むことができる。1つの実施態様において、外部供与体は例えば、ジフェニルジメトキシシラン(DPMS)、シクロヘキシメチルジメトキシシラン(CMDS)、ジイソプロピルジメトキシシラン(DIDS)および/またはジシクロペ
ンチルジメトキシシラン(CPDS)を含むことができる。外部供与体は使用される内部電子供与体と同一でも異なってもよい。
【0018】
チーグラー・ナッタ触媒系の成分(例えば、触媒、活性剤および/または電子供与体)は相互と組み合わせてまたは相互とは別に、支持体と一緒に使用してもまたは使用しなくてもよい。Z−N支持体物質は例えば、二塩化マグネシウムまたは二臭化マグネシウムのような二ハロゲン化マグネシウムあるいはシリカを含むことができる。
【0019】
チーグラー・ナッタ触媒は当業者に知られたどんな方法でも形成することができる。例えば、チーグラー・ナッタ触媒はハロゲン化遷移金属を金属アルキルまたは水素化金属と接触させることにより形成することができる(参照することにより本明細書に引用したこととされる、米国特許第4,298,718号、第4,298,718号、第4,544,717号、第4,767,735号および第4,544,717号明細書を参照されたい)。
【0020】
重合法
本明細書の他の部分で説明されたように、触媒系はポリオレフィン組成物(composition)を形成するために使用される。前記のように、そして/または当業者に知られたように、一旦触媒系が調製されると、その組成物を使用して様々な方法を実施することができる。重合法に使用される装置、工程の条件、反応物、添加物および他の物質は形成されるポリマーの所望の組成および特性に応じて与えられる方法が異なるであろう。このような方法は例えば、液相、気相、スラリー相、凝集相(bulk phase)、高圧法またはそれらの組み合わせ物を含むことができる(それらを参照することにより本明細書に引用したこととされる、米国特許第5,525,678号;第6,420,580号;第6,380,328号;第6,359,072号;第6,346,586号;第6,340,730号;第6,339,134号;第6,300,436号;第6,274,684号;第6,271,323号;第6,248,845号;第6,245,868号;第6,245,705号;第6,242,545号;第6,211,105号;第6,207,606号;第6,180,735号および第6,147,173号明細書を参照されたい)。
【0021】
特定の実施態様において、前記の方法は一般的にポリマーを形成するために1種または複数のオレフィンモノマーを重合する工程を含む。オレフィンモノマーは例えば、C〜C30オレフィンモノマー、またはC〜C12オレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンおよびデセン)を含むことができる。モノマーは例えば、エチレン様不飽和モノマー、C〜C18ジオレフィン、共役または非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマーおよび環式オレフィンを含むことができる。他のモノマーの限定しない例は例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンテンを含むことができる。形成されるポリマーは例えばホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを含むことができる。
【0022】
溶液法の例は、それらを参照することにより本明細書に引用したこととされる、米国特許第4,271,060号、第5,001,205号、第5,236,998号および第5,589,555号明細書に記載されている。
【0023】
気相重合法の1例は、循環ガス流(あるいは再循環流または流動媒質として知られる)が重合熱により反応容器中で加熱される連続サイクルシステムを含む。熱は反応容器の外側の冷却システムによりサイクルの他の部分で循環ガス流から除去される。1種または複
数のモノマーを含む循環ガス流は反応性条件下、触媒の存在下で流動床を通って連続的に循環させることができる。循環ガス流は一般的に流動床から引き取られて、反応容器中に再循環される。同時に、ポリマー生成物が反応容器から引き取られて、新鮮なモノマーが添加され、重合されるモノマーを置き換える。気相法における反応容器の圧力は例えば、約100psig〜約500psig、または約200psig〜約400psigまたは約250psig〜約350psigと異なることができる。気相法における反応容器の温度は例えば、約30℃〜約120℃、または約60℃〜約115℃、または約70℃〜約110℃、または約70℃〜約95℃に変わることができる(例えば、それらを参照することにより本明細書に引用したこととされる、米国特許第4,543,399号;第4,588,790号;第5,028,670号;第5,317,036号;第5,352,749号;第5,405,922号;第5,436,304号;第5,456,471号;第5,462,999号;第5,616,661号;第5,627,242号;第5,665,818号;第5,677,375号および第5,668,228号を参照されたい)。
【0024】
スラリー相法は一般的に、触媒とともにモノマーおよび場合により水素がそれに添加される液体重合溶媒中に、固体の粒状物ポリマーの懸濁物を形成する工程を含む。懸濁物(希釈剤を含むことができる)は、揮発性成分をポリマーから分離し、場合により蒸留後に反応容器に再循環することができる反応容器から、間欠的または連続的に取り出すことができる。重合溶媒中に使用される液化希釈剤は例えばC〜Cアルカン(例えば、ヘキサンまたはイソブタン)を含むことができる。使用される溶媒は一般的に重合条件下で液体であり、比較的不活性である。凝集相法は、凝集相法においては液体溶媒もまた反応物質(例えば、モノマー)であることを除いて、スラリー法の条件に類似している。しかし、方法は例えば、凝集法、スラリー法または凝集スラリー法であってもよい。
【0025】
特定の実施態様において、スラリー法または凝集法は1個または複数のループ反応容器中で連続的に実施することができる。スラリーとして、または乾燥自由流動粉末としての触媒は、反応容器のループであってそれ自体が循環するスラリー、例えば希釈剤中の成長する重合体のスラリーによって満たされ得るループに、定期的に注入され得る。生成されるポリマーの分子量制御のためのように、場合により、水素を工程に添加することができる。ループ反応容器は例えば、約27バール〜約50バールまたは約35バール〜約45バールの圧力で、約38℃〜約121℃の温度で維持することができる。反応熱は例えば二重ジャケットパイプまたは熱交換機によるような当業者に知られたあらゆる方法によりループの壁を通して取り除くことができる。
【0026】
あるいはまた、例えば直列、並列またはそれらの組み合わせの撹拌反応容器のような他のタイプの重合法を使用することができる。ポリマーは反応容器から取り出される時に、例えば添加物の添加および/または押し出しのような更なる処理のためにポリマー回収システムに通すことができる。
【0027】
添加物は当業者に知られた添加物を含むことができる。例えば、限定しない添加物は例えば、立体障害フェノールのような抗酸化剤、ホスフェートのような安定剤、ステアレートのような中和剤、潤滑剤、離型剤、タルクおよびチョークのような充填剤、静電防止剤、可塑化剤、染料、顔料、難燃剤、タルク、シリカ、カオリン、安息香酸ナトリウムおよびナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートのような核形成剤またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0028】
ポリマー製品
本明細書に記載された方法により形成されるポリマー(およびそれらのブレンド)はプロピレンに基くランダム・コポリマーを含むことができる。他に明記されない限り、用語
「プロピレンに基く」はその主成分がプロピレンである(例えば、少なくとも約50重量%、または少なくとも約75重量%、または少なくとも約80重量%、または少なくとも約89重量%)ポリマーを表す。用語「プロピレンに基くランダム・コポリマー」は、主としてプロピレンおよび少量の、エチレンのような他のコモノマーからなり、そのコモノマーがポリマーの少なくとも約0.2重量%または少なくとも約0.8重量%または少なくとも約2重量%を構成するコポリマーを表す。更に、用語「ランダム・コポリマー」は鎖中のどんな部位においても一定のモノマー単位を発見する確率が隣接単位の性状と独立している高分子で形成されたコポリマーを表す。
【0029】
1つの実施態様において、ポリマーはプロピレンに基くランダム・コポリマーを含む。コモノマーはC〜C10アルケンから選択することができる。コモノマーは例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンおよびそれらの組み合わせ物から選択することができる。1つの特定の実施態様において、コモノマーはエチレンを含む。このような実施態様において、エチレンは例えば約0.2重量%〜約10重量%または約0.6重量%〜約4重量%の量で存在することができる。
【0030】
本明細書で他に指定されない限り、すべての試験法は出願時における最近の方法である。
【0031】
従来のチーグラー・ナッタにより形成されるポリプロピレンは一般的に、例えば約5〜約7の分子量分布を示すが、ISBMにおける使用のためにポリプロピレンを使用する以前の試みは、例えばサイクルの時間を短縮するために、過酸化物の分解のような工程により使用されるポリマーの分子量分布を更に低下させる工程を含んでいた。不幸なことには、このような方法は機械的特性の障害をもたらした。しかし、本発明で使用されるプロピレンに基くランダム・コポリマーはGPCにより測定される広い分子量分布(Mw/Mn)を示す。例えば、プロピレンに基くランダム・コポリマーは概ね、例えば少なくとも9、または少なくとも10または少なくとも11の分子量分布を示す。1つの実施態様において、プロピレンに基くランダム・コポリマーは例えば、約10〜約20、または約10〜約18または約10〜約15の分子量分布を示す。
【0032】
プロピレンに基くランダム・コポリマーはASTM D1238により測定されると、例えば少なくとも約2dg./10分の、または約5dg./10分〜約30dg./10分または約10dg./10分〜約20dg./10分の溶融流量を示すことができる。
【0033】
製品の適用
ポリマーおよびそれらのブレンドは成形操作(例えば、フィルム、シート、パイプおよび繊維の押し出し成形および同時押し出し成形並びに吹込成形、射出成形および回転成形)のような当業者に知られた適用において有用である。フィルムは、食品に接するおよび非食品に接する適用における、例えばシュリンク・フィルム、クリング(cling)フィルム、ストレッチ・フィルム、シーリング・フィルム、延伸フィルム、スナック包装物、重質フィルム袋、野菜袋、焼物食品および冷凍食品の包装物、医薬用包装物、工業用ライナーおよび膜として有用な、同時押し出し成形または張り合わせにより形成されるインフレート(blown)フィルムまたは流延フィルムを含む。繊維は、例えばフィルター、おむつの布地、医療用衣類およびジオテキスタイルを製造するための、織物形態または不織物形態で使用のための融解紡糸、溶液紡糸および融解吹込繊維操作を含む。押し出し製品は例えば、医療用チューブ、ワイアおよびケーブルのコーティング、ジオメンブレンおよび池の中敷き(pond liner)を含む。成形品は例えば、ビン、タンク、大型中空製品、固い食品容器および玩具の形態の単層および多層構造物を含む。
【0034】
1つの実施態様において、ポリマーは射出ストレッチ吹込成形(ISBM)に使用される。ISBMは薄壁の高透明度のビンを生産するために使用することができる。このような方法は一般的に当業者に知られている。例えば、ISBM法はポリマーを予備成形物に射出し、次に予備成形物をビンにストレッチ吹込する工程を含むことができる。
【0035】
本明細書で以前に記載されたように、本発明の実施態様は一般的に従来のチーグラー・ナッタポリマーの経験より広い加工枠をもつISBM製品を形成する能力をもたらす。例えば、本発明の実施態様は、約115℃〜約140℃の加工枠(前以て決められた理想的温度からの偏り)をもたらすことができる。
【0036】
予期されなかったことには、本明細書に記載の実施態様はISBM法における使用のための、PETに対する、原価効率のよい、成功した代替物をもたらす。
【実施例】
【0037】
射出ストレッチ吹込成形(ISBM)製品は種々のポリマーから形成された。本明細書で使用されるポリマー「A」は、3.1重量%のC(NMRにより分析)、6.4の分子量分布を含み、そして11g/10分の溶融流量を有する、従来のチーグラー・ナッタ触媒(TOTAL Petrochemicals USA,Inc.から7525MZとして市販)により形成されるランダム・コポリマーを表す。ポリマー「A」は更に、500ppmのIrganox 1010、1000ppmのIrganox 168、1000ppmのステアリン酸カルシウム、250ppmのDHT−4Aおよび500ppmのAtmer 129を含む。ポリマー「B」は3.2重量%のC(NMRにより分析)、10の分子量分布を含み、そして15g/10分の溶融流量を有する、サクシネートに基くチーグラー・ナッタ触媒により形成されるランダム・コポリマーを表す。ポリマー「B」は更に500ppmのIrganox 1010、1000ppmのIrganox 168、1000ppmのステアリン酸カルシウム、250ppmのDHT−4Aおよび500ppmのAtmer 129を含む。ポリマー「C」は3.3重量%のC(NMRにより分析)、10の分子量分布を含み、そして14g/10分の溶融流量を有する、サクシネートに基くチーグラー・ナッタ触媒により形成されるランダム・コポリマーを表す。ポリマー「C」は更に560ppmのIrganox 1010、1090ppmのIrganox 168、1010ppmのステアリン酸カルシウム、260ppmのDHT−4Aおよび10400ppmのAtmer 129を含む。
【0038】
ポリマーサンプルを16milのシートに成型し、次に105℃からブルックナー引き伸ばし機上の引き伸ばし不全温度まで2軸延伸された。結果は図1に示す(BおよびCのライナーのフィットラインがAのものより低い傾斜を有することに注意されたい)。ポリマーBおよびCはポリマーAより温度による影響をより受けにくく、その後のISBM法に対して広い加工枠を示すことが認められた。
【0039】
各ポリマーサンプルを21gのビンの予備成形物に成型した。ポリマーおよび対応する予備成形物の特性の表が次の表1に示される。
【0040】
【表1】

【0041】
予備成型物とポリマー間に認められた近い結果は、射出成形法がポリマーの形態学を著しくは変えないことを示す。
【0042】
予備成形物はそれぞれ少なくとも24時間熟成され、次に線状の射出ストレッチ吹込成型装置(1000本のビン/1時間/1キャビティのライン速度)を使用してビンに吹込成型された。
【0043】
すべてのビンが1/4インチの撓み(deflection)を維持することができたが、ポリマーAから形成されたビンはポリマーBおよびCから形成されたものより僅かに良好な口部荷重特性を示したことが認められた。図2を参照されたい。すべてのビンが同様な光沢および曇り度特性を示した。図3および4を参照されたい。
【0044】
しかし、ポリマーAはポリマーBおよびCより多数のビンの欠陥をもたらしたことが認められた。とりわけ、ポリマーCは、生産された40本の製品中、1件の底部領域のビン欠陥をもたらし、ポリマーBは1件の肩領域のビンの欠陥および1件の底部領域のビン欠陥をもたらし、他方ポリマーAは21件の肩領域のビン欠陥および2件の底部領域のビン欠陥をもたらしたことが認められた。
【0045】
特定のビンの断片の重量分析により、ポリマーAのサンプルは特に肩および底部領域においてポリマーBおよびCサンプルよりも、異なるビン断片の重量について有意に大きい標準偏差を有したことが示される。図5を参照されたい。
【0046】
ビンを更に落下衝撃につき試験した。測定は、ビンを水で満たし、20℃で24時間状態調節し、2つの異なる配向で、種々の高度からビンを落下試験する工程を含んだ。4ft.(1.22m)の高度からの落下衝撃能において差異は認められなかったが、ポリマーAから形成された40本中3本のビン、ポリマーBから形成された4本中1本のビンが割れ、ポリマーCから形成されたビンは割れなかった。
【0047】
以上は本発明の実施態様を対象にされているが、その基本的範囲から逸脱せずに本発明の、他の、更なる実施態様を改変することができ、その範囲は以下の請求項により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約9〜約20の分子量分布を含んでなるプロピレンに基くランダム・コポリマー:
を含んでなる射出ストレッチ吹込成形(ISBM)製品。
【請求項2】
ランダム・コポリマーがエチレンを含んでなる、請求項1の製品。
【請求項3】
ランダム・コポリマーが約0.2重量%〜約10重量%のエチレンを含んでなる、請求項2の製品。
【請求項4】
ランダム・コポリマーが少なくとも約89重量%のプロピレンを含んでなる、請求項1の製品。
【請求項5】
プロピレンに基くランダム・コポリマーがチーグラー・ナッタ触媒から形成される、請求項1の製品。
【請求項6】
チーグラー・ナッタ触媒がサクシネート電子供与体を含んでなる、請求項5の製品。
【請求項7】
プロピレンに基くランダム・コポリマーが約2dg./10分〜約30dg./10分の溶融流量を示す、請求項1の製品。
【請求項8】
生産される製品100個当たり約5件未満の欠陥を示す、請求項1の製品。
【請求項9】
約9〜約20の分子量分布を含んでなるプロピレンに基くランダム・コポリマーを提供し;
プロピレンに基くランダム・コポリマーを予備成形物に射出成形し、そして
予備成形物を製品にストレッチ吹込する工程:
を含んでなる、射出ストレッチ吹込成形製品を形成する方法。
【請求項10】
ランダム・コポリマーがエチレンを含んでなる、請求項9の方法。
【請求項11】
ランダム・コポリマーが約0.2重量%〜約10重量%のエチレンを含んでなる、請求項9の方法。
【請求項12】
ランダム・コポリマーが少なくとも約89重量%のプロピレンを含んでなる、請求項9の方法。
【請求項13】
プロピレンに基くランダム・コポリマーがチーグラー・ナッタ触媒から形成される、請求項9の方法。
【請求項14】
チーグラー・ナッタ触媒がサクシネート電子供与体を含んでなる、請求項13の方法。
【請求項15】
プロピレンに基くランダム・コポリマーが約2dg./10分〜約30dg./10分のメルト流量を示す、請求項9の方法。
【請求項16】
サクシネート内部供与体を含んでなるチーグラー・ナッタ触媒から形成されるプロピレンに基くランダム・コポリマー:
を含んでなる、射出ストレッチ吹込成形(ISBM)製品。
【請求項17】
ランダム・コポリマーが約9〜約20の分子量分布を示す、請求項16の製品。
【請求項18】
ランダム・コポリマーがエチレンを含んでなる、請求項16の製品。
【請求項19】
プロピレンに基くランダム・コポリマーが約2dg./10分〜約30dg./10分のメルト流量を示す、請求項16の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540298(P2010−540298A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528064(P2010−528064)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/078231
【国際公開番号】WO2009/045987
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】