射出成形におけるガス抜き効果の高い金型
【課題】射出成形における金型内部のガス圧を可能な限り低減させるために、金型に窄設されたランナーの断面形状と、金型上におけるランナーの平面的な配置の望ましい形を追求する。
【解決手段】金型内部において、充填される充填物により圧縮されるガスの流れに微妙な圧力変化を生み出すために、ランナーの断面形状を台形もしくは三角形にするとともに、金型上における従来の直線的なランナーの配置を、平面的に屈曲した配置に変更して、ガス抜き効果を高め、射出成形におけるガス抜き効果の高い金型を得る。
【解決手段】金型内部において、充填される充填物により圧縮されるガスの流れに微妙な圧力変化を生み出すために、ランナーの断面形状を台形もしくは三角形にするとともに、金型上における従来の直線的なランナーの配置を、平面的に屈曲した配置に変更して、ガス抜き効果を高め、射出成形におけるガス抜き効果の高い金型を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂の射出成形用金型、特に射出成形におけるガス抜き効果の高い金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は過去に、射出成形用の金型のガス抜きに使用するガス抜き装置あるいはガス抜き効果を備えた図15に示す如き突き出しピン等を開発し、実際の使用を重ねながらそれら装置をより有効に使用する研究を重ねてきた。それらの技術内容は下記の特許文献に開示されている。従来から射出成形においては金型内部のガスを抜くことが成形品の仕上がりに大きな影響を有していることが知られており、種々のガス抜き方法が研究されたが良好な結果が得られず、下記特許に開示された発明によって初めて望ましいガス抜きの手段が世に紹介された。これらの発明、すなわち「排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置」を適用した射出成形の概念は図10から図14に示されているが、図中Pはガス抜き装置、Sは充填材料、Mは金型、Rはランナーを示している。ガス抜きと言う問題の理解を助けるために、射出成形の際の合成樹脂等の材料の動きと充填完了までの概略を説明すると、図10に示す如く、ランナーR内を充填材料Sが進行する間にランナーRと金型M内のガスはガス抜き装置Pから外部へ排出され、わずかに金型M内部に残留するガスを圧縮しながら充填材料Sは金型M内部を図中左方から右方へ向かって進行する。図11の如く充填材料Sによる残留ガスの圧縮が極限に達すると、残留ガスは図12の如く充填材料Sと金型Mの内壁の間を逆流し再度ガス抜き装置Pから外部へ排出され、残留ガスが抜けた金型M内部の空間を充填材料Sが図13の如く埋めることによって、最終的に図14の如く充填が完了して完成品を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許第4085182号公報
【特許文献2】 特許第4096327号公報
【発明の概要】
【0004】
製品を成形する型内部の状態をできる限り低圧、望ましくは真空状態に一歩でも近づけるため、充填物を型に送給するためのランナーの平面的な配置の形状あるいはランナーの内部形状を改良し、ガス抜き装置あるいはガス抜きピンのより効率的な動作を確保する。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に示されている発明を現場の射出成形作業に適用した結果、これまでに実現できなかった各種の困難な射出成形が可能になり、それによって更に高度な射出成形作業の可能性を追求する必要が生じた。より高度な作業とは、例えばこれまでの限度をはるかに越えたより大きな完成品を得ること、同様により薄い完成品を得ること及び従来は避けることができなかった金型内部に残存してしまうガス溜まりを除去することなどで、それらに加えて従来は射出成形が困難であった材料あるいは配合材料による完成品を得ることも要求されている。従来はこのような困難を解決するために射出圧力を過大に上昇させたり、金型温度を極端に上昇させたりする手法が手探りで行われていたが、いずれも望ましい結果は得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
射出成形にとって、金型およびランナーの内部の残留ガス圧を可能な限り低くすること、理想的には合成樹脂の充填に先立って金型内部が真空になっていることが望ましい、と言う発明者の技術思想に基づいて上記の特許文献に示されている発明が完成されたが、この特許を実施することによって射出成形による完成品の仕上がりが良好になればなるほど、更なる品質向上とこれまでは不可能とされていた種類の射出成形の実現を要求される事態が増加し、発明者は前記発明品を技術現場に適用するだけでなく、発明品を適用する射出成形用の金型にまで研究の範囲を広げる必要に迫られた。
【0007】
このような状況で前記二つの発明をより有効に作用させるために多数の実験を繰り返す中で、発明者が発見した新しい事実は次の二点である。その第一は、ランナーの断面形状が従来円形であったものを台形にするとガス抜き効果の顕著な改良が見受けられること。この断面形状は矩形その他の多角形でも断面円形の場合より優れた効果が見受けられるが、金型製造の簡便性と射出成形における成形品の取り出しの支障にならぬためには断面台形もしくは断面三角形の二つのランナー断面形状が最も経済的かつ合理的であると考えられる。
【0008】
第二は、ガス抜きピン等を設置するランナーの平面的な配置形状の改良、すなわち充填物の通路を従来の直線的なものではなく屈曲した形状にすると、より高いガス抜き効果が得られるという事実である。これはランナー内を移動する充填物に先行してランナー内を移動するガスに、ランナーの屈曲部ごとに微妙な圧力変化が付加されることにより、その部分でのガス抜き効果に変化が生じるためと考えられ、その実験的事実からランナーの内部に微妙な圧力変化を発生させる障害物あるいはランナーの断面積を必要部分で変化させることによって、更なるガス抜き効果の向上を導き出すことができた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ランナー並びに金型内部に残留するいわゆるガスと総称される気体を、ランナー並びに金型内部に充填される材料の進行に先立ってほとんど抜き去ることができるので、金型内部の残留ガス圧の影響で成形品に頻発するエア溜まり等の不具合が解消されるとともに、完成した成形品表面は最も望ましい美的仕上がりを維持することがで、さらに射出成形が可能な材料の範囲を大きく拡大できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明による第一の実施例の概念図である。
【図2】 従来例の概念図である。
【図3】 本発明によるランナーの断面形状を示す概念図である。
【図4】 従来のランナーの断面形状を示す概念図である。
【図5】 本発明が使用するガス抜き装置によるガス抜きの概念図である。
【図6】 本発明の第二の実施例の概念図である。
【図7】 本発明の第二の実施例を固定側金型に適用したものの斜面図である。
【図8】 本発明の第二の実施例を補足する移動側金型を示した斜面図である。
【図9】 本発明第一の実施例に断面三角形のランナーを適用した概念図である。
【図10】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「充填中」の断面図である。
【図11】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「充填限界」状態の断面図である。
【図12】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「ガス逆流」状態の断面図である。
【図13】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「逆流ガス排気」状態の断面図である。
【図14】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「充填完了」状態の断面図である。
【図15】 先行技術文献に示されている突き出しピンの斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実際の射出成形に適用する場合、射出材料、完成品の大きさや形状、射出材料の温度並びに射出圧力等の条件によって、実施の形態はそれらに最適なものを選択するため、唯一の形態と言う形式で取りまとめることは困難であるが、特許文献1及び特許文献2に示すガス抜き装置等を使用した射出成形において、ランナー内部で微妙なガス圧の変動を発生させるために、第一にランナーの断面形状を多角形にすること、第二にランナーの平面的名配置をより屈曲したものにすること、の二点を実施の具体的形態としてあげることができる。ランナーの断面形状は多角形の中でも台形と三角形が望ましい結果を得られるとともに、二つの形態の目的はランナー内のガス圧に微妙な変化を与えることにある。
【実施例】
【0012】
図面に従っていくつかの実施例を説明する。図1に示すものは断面が台形のランナー1と金型製品部2を示す概念図で、金型内部の空間の全体像を図面で表示することが困難であるため、ランナー1と金型製品部2内で成形された物体によりその形状を示すもので、ランナー1に直角に交差する排気道3もランナー1と同様にその断面は台形であり、図中、ランナー1と排気道3の下面に複数個のガス抜き装置6が設置されており、充填物は充填口4からランナー1内に充填され、ランナー1と排気道3内を移動しつつ金型製品部2とランナー1内部のガスを外部へ排出し、最終的にランナー1末端のゲート5から金型製品部2へ流入して射出成形が行われる。
従来のランナーRの断面が円形のものの概念図は図1の場合と同様に金型によって成形された物体として図2に示されているが、断面形状の相違点以外は図2と図1とはほぼ同様の構成になっている。本発明によるランナー1の部分的拡大概念図は図3に示すとおりであり、従来品のランナーRの部分的拡大概念図は図4に示されている。それぞれのランナーが固定側7と移動側8の金型の間に穿設される際、従来の断面円形のランナーRは固定側7と移動側8に均等に穿設されるのに対し、本発明による断面台形のランナー1はすべてが固定側7に穿設され、移動側8は単なる蓋体として使用される。
【0013】
本発明には前述の特許文献に示したガス抜き装置を使用するが、そのガス抜きの原理は突き詰めると図5に示すごときベンチュリ管の応用であり、ランナーR内部を前進してくる充填物質Sにより加圧されたランナーRと金型M内部のガスが、ガス抜きピンPから大きく減圧されつつ外部へ排出される。このガス抜き装置によると、ランナーRと金型Mの内部圧力が高くなればなるほどガス抜き装置Pにおける減圧の率が高まると言う特徴があり、従来のようにガスが抜けないからという理由で充填材料Sの充填圧を高めて金型M内部に無理やり材料を押し込むという考え方が全面的に改められ、充填材料Sと金型Mの関係において必要とされる充填圧を選択すれば、ガス抜きが必要かつ十分に行われるという最も望ましいガス抜き方法が確立された。
【0014】
そのような状況下で、より精密でより確実な充填が要求され、またこれまで製品の仕上がりに問題が多発するために使用を見送られていたような材料を射出成形に使用するというより困難な問題に直面した時、ランナーの断面形状を従来の円形から台形等の多角形に変更することにより、断面円形の従来品ランナー内部を螺旋状に円滑に進行していたと考えられる内部ガスが、断面台形のランナー内を同様に進行しようとしてこの新しい断面形状によって微妙な乱流を付加され、その結果ガス抜きピンからの排出量が増すことによってガス抜き効果が向上すると言う発見が、本発明を生み出した。
【0015】
第二の実施例はガス抜きピンを設置したランナーを、平面的に見た場合、直線的にではなく屈曲して連続する溝の状態に配置する形式の実施例で、ランナーの断面は第一の実施例と同様の断面台形で構成されている。この考え方は、従来の射出成形においては充填材料が迅速かつ円滑に移動できるようにそのランナーが直線的に配置されていた習慣に着目し、充填材料の迅速かつ円滑な移動はランナーと金型内部のガス圧力をいかに低下させるかに左右され、また、同じ状況下にある場合にはガスの圧力が高くなればガスの排出効果も増加するガス抜き装置を使用するのであるから、ランナー内部でガスの流通に微妙な乱流を生じさせるであろう平面的にみた場合に屈曲した配置のランナーが有効であるという結論に基づいて開発されたものである。射出成形の現場において、この発想は極めて有効に具体化され、現実に完成度の高い射出成形品を生み出している。
【0016】
第二の実施例の具体的形状は図6に概念図として示す通りで、図中1はランナー、4は充填口、5はゲートを示しており、ランナー1の屈曲部には乱流室9が設置されるとともにランナー1の下方にはガス抜き装置Pを配置するための排気室10が設置されている。このようなランナー1に充填口4から充填された充填材料Sは乱流室9で排気室10からガスを排出しながら方向転換し、それを繰り返して最終的にゲート5から大幅に減圧された金型(図示せず)内部に流入して成形が完了する。図7は金型の固定側7に穿設された第二の実施例を示すもので、可動側8は固定側7の上面を閉鎖してランナー1を構成すれば足りるが、固定側7の乱流室9に更なる乱流を発生させるための突部11を設置することも可能で、そのような構成の例が図8に示されている。
【0017】
図9には、図1に示す第一の実施例を三角形の断面形状を有するランナーで構成した場合の図1と同様の概念図で、ランナー1の断面形状以外の構成は図1に示す第一の実施例と全く同様である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
現在、合成樹脂の射出成形が現場で求められる技術的改良は、より大きな完成品、より薄い完成品、そしてそれらの完成品の表面及び周面の上質な仕上がり、の三点を達成することに絞り込まれている。本発明によるとそれらの要求をすべて達成できるとともに、この技術思想を基としてランナー及び金型内部のガスの行動傾向をさらに詳細に追求することによって、より効率的な射出成形技術を確立できるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 ランナー
2 金型製品部
3 排気道
4 充填口
5 ゲート
6 ガス抜き装置
7 固定側の金型
8 移動側の金型
9 乱流室
10 排気室
11 突部
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂の射出成形用金型、特に射出成形におけるガス抜き効果の高い金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は過去に、射出成形用の金型のガス抜きに使用するガス抜き装置あるいはガス抜き効果を備えた図15に示す如き突き出しピン等を開発し、実際の使用を重ねながらそれら装置をより有効に使用する研究を重ねてきた。それらの技術内容は下記の特許文献に開示されている。従来から射出成形においては金型内部のガスを抜くことが成形品の仕上がりに大きな影響を有していることが知られており、種々のガス抜き方法が研究されたが良好な結果が得られず、下記特許に開示された発明によって初めて望ましいガス抜きの手段が世に紹介された。これらの発明、すなわち「排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置」を適用した射出成形の概念は図10から図14に示されているが、図中Pはガス抜き装置、Sは充填材料、Mは金型、Rはランナーを示している。ガス抜きと言う問題の理解を助けるために、射出成形の際の合成樹脂等の材料の動きと充填完了までの概略を説明すると、図10に示す如く、ランナーR内を充填材料Sが進行する間にランナーRと金型M内のガスはガス抜き装置Pから外部へ排出され、わずかに金型M内部に残留するガスを圧縮しながら充填材料Sは金型M内部を図中左方から右方へ向かって進行する。図11の如く充填材料Sによる残留ガスの圧縮が極限に達すると、残留ガスは図12の如く充填材料Sと金型Mの内壁の間を逆流し再度ガス抜き装置Pから外部へ排出され、残留ガスが抜けた金型M内部の空間を充填材料Sが図13の如く埋めることによって、最終的に図14の如く充填が完了して完成品を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許第4085182号公報
【特許文献2】 特許第4096327号公報
【発明の概要】
【0004】
製品を成形する型内部の状態をできる限り低圧、望ましくは真空状態に一歩でも近づけるため、充填物を型に送給するためのランナーの平面的な配置の形状あるいはランナーの内部形状を改良し、ガス抜き装置あるいはガス抜きピンのより効率的な動作を確保する。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に示されている発明を現場の射出成形作業に適用した結果、これまでに実現できなかった各種の困難な射出成形が可能になり、それによって更に高度な射出成形作業の可能性を追求する必要が生じた。より高度な作業とは、例えばこれまでの限度をはるかに越えたより大きな完成品を得ること、同様により薄い完成品を得ること及び従来は避けることができなかった金型内部に残存してしまうガス溜まりを除去することなどで、それらに加えて従来は射出成形が困難であった材料あるいは配合材料による完成品を得ることも要求されている。従来はこのような困難を解決するために射出圧力を過大に上昇させたり、金型温度を極端に上昇させたりする手法が手探りで行われていたが、いずれも望ましい結果は得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
射出成形にとって、金型およびランナーの内部の残留ガス圧を可能な限り低くすること、理想的には合成樹脂の充填に先立って金型内部が真空になっていることが望ましい、と言う発明者の技術思想に基づいて上記の特許文献に示されている発明が完成されたが、この特許を実施することによって射出成形による完成品の仕上がりが良好になればなるほど、更なる品質向上とこれまでは不可能とされていた種類の射出成形の実現を要求される事態が増加し、発明者は前記発明品を技術現場に適用するだけでなく、発明品を適用する射出成形用の金型にまで研究の範囲を広げる必要に迫られた。
【0007】
このような状況で前記二つの発明をより有効に作用させるために多数の実験を繰り返す中で、発明者が発見した新しい事実は次の二点である。その第一は、ランナーの断面形状が従来円形であったものを台形にするとガス抜き効果の顕著な改良が見受けられること。この断面形状は矩形その他の多角形でも断面円形の場合より優れた効果が見受けられるが、金型製造の簡便性と射出成形における成形品の取り出しの支障にならぬためには断面台形もしくは断面三角形の二つのランナー断面形状が最も経済的かつ合理的であると考えられる。
【0008】
第二は、ガス抜きピン等を設置するランナーの平面的な配置形状の改良、すなわち充填物の通路を従来の直線的なものではなく屈曲した形状にすると、より高いガス抜き効果が得られるという事実である。これはランナー内を移動する充填物に先行してランナー内を移動するガスに、ランナーの屈曲部ごとに微妙な圧力変化が付加されることにより、その部分でのガス抜き効果に変化が生じるためと考えられ、その実験的事実からランナーの内部に微妙な圧力変化を発生させる障害物あるいはランナーの断面積を必要部分で変化させることによって、更なるガス抜き効果の向上を導き出すことができた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ランナー並びに金型内部に残留するいわゆるガスと総称される気体を、ランナー並びに金型内部に充填される材料の進行に先立ってほとんど抜き去ることができるので、金型内部の残留ガス圧の影響で成形品に頻発するエア溜まり等の不具合が解消されるとともに、完成した成形品表面は最も望ましい美的仕上がりを維持することがで、さらに射出成形が可能な材料の範囲を大きく拡大できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明による第一の実施例の概念図である。
【図2】 従来例の概念図である。
【図3】 本発明によるランナーの断面形状を示す概念図である。
【図4】 従来のランナーの断面形状を示す概念図である。
【図5】 本発明が使用するガス抜き装置によるガス抜きの概念図である。
【図6】 本発明の第二の実施例の概念図である。
【図7】 本発明の第二の実施例を固定側金型に適用したものの斜面図である。
【図8】 本発明の第二の実施例を補足する移動側金型を示した斜面図である。
【図9】 本発明第一の実施例に断面三角形のランナーを適用した概念図である。
【図10】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「充填中」の断面図である。
【図11】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「充填限界」状態の断面図である。
【図12】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「ガス逆流」状態の断面図である。
【図13】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「逆流ガス排気」状態の断面図である。
【図14】 ガス抜き装置と充填の関係を示す「充填完了」状態の断面図である。
【図15】 先行技術文献に示されている突き出しピンの斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実際の射出成形に適用する場合、射出材料、完成品の大きさや形状、射出材料の温度並びに射出圧力等の条件によって、実施の形態はそれらに最適なものを選択するため、唯一の形態と言う形式で取りまとめることは困難であるが、特許文献1及び特許文献2に示すガス抜き装置等を使用した射出成形において、ランナー内部で微妙なガス圧の変動を発生させるために、第一にランナーの断面形状を多角形にすること、第二にランナーの平面的名配置をより屈曲したものにすること、の二点を実施の具体的形態としてあげることができる。ランナーの断面形状は多角形の中でも台形と三角形が望ましい結果を得られるとともに、二つの形態の目的はランナー内のガス圧に微妙な変化を与えることにある。
【実施例】
【0012】
図面に従っていくつかの実施例を説明する。図1に示すものは断面が台形のランナー1と金型製品部2を示す概念図で、金型内部の空間の全体像を図面で表示することが困難であるため、ランナー1と金型製品部2内で成形された物体によりその形状を示すもので、ランナー1に直角に交差する排気道3もランナー1と同様にその断面は台形であり、図中、ランナー1と排気道3の下面に複数個のガス抜き装置6が設置されており、充填物は充填口4からランナー1内に充填され、ランナー1と排気道3内を移動しつつ金型製品部2とランナー1内部のガスを外部へ排出し、最終的にランナー1末端のゲート5から金型製品部2へ流入して射出成形が行われる。
従来のランナーRの断面が円形のものの概念図は図1の場合と同様に金型によって成形された物体として図2に示されているが、断面形状の相違点以外は図2と図1とはほぼ同様の構成になっている。本発明によるランナー1の部分的拡大概念図は図3に示すとおりであり、従来品のランナーRの部分的拡大概念図は図4に示されている。それぞれのランナーが固定側7と移動側8の金型の間に穿設される際、従来の断面円形のランナーRは固定側7と移動側8に均等に穿設されるのに対し、本発明による断面台形のランナー1はすべてが固定側7に穿設され、移動側8は単なる蓋体として使用される。
【0013】
本発明には前述の特許文献に示したガス抜き装置を使用するが、そのガス抜きの原理は突き詰めると図5に示すごときベンチュリ管の応用であり、ランナーR内部を前進してくる充填物質Sにより加圧されたランナーRと金型M内部のガスが、ガス抜きピンPから大きく減圧されつつ外部へ排出される。このガス抜き装置によると、ランナーRと金型Mの内部圧力が高くなればなるほどガス抜き装置Pにおける減圧の率が高まると言う特徴があり、従来のようにガスが抜けないからという理由で充填材料Sの充填圧を高めて金型M内部に無理やり材料を押し込むという考え方が全面的に改められ、充填材料Sと金型Mの関係において必要とされる充填圧を選択すれば、ガス抜きが必要かつ十分に行われるという最も望ましいガス抜き方法が確立された。
【0014】
そのような状況下で、より精密でより確実な充填が要求され、またこれまで製品の仕上がりに問題が多発するために使用を見送られていたような材料を射出成形に使用するというより困難な問題に直面した時、ランナーの断面形状を従来の円形から台形等の多角形に変更することにより、断面円形の従来品ランナー内部を螺旋状に円滑に進行していたと考えられる内部ガスが、断面台形のランナー内を同様に進行しようとしてこの新しい断面形状によって微妙な乱流を付加され、その結果ガス抜きピンからの排出量が増すことによってガス抜き効果が向上すると言う発見が、本発明を生み出した。
【0015】
第二の実施例はガス抜きピンを設置したランナーを、平面的に見た場合、直線的にではなく屈曲して連続する溝の状態に配置する形式の実施例で、ランナーの断面は第一の実施例と同様の断面台形で構成されている。この考え方は、従来の射出成形においては充填材料が迅速かつ円滑に移動できるようにそのランナーが直線的に配置されていた習慣に着目し、充填材料の迅速かつ円滑な移動はランナーと金型内部のガス圧力をいかに低下させるかに左右され、また、同じ状況下にある場合にはガスの圧力が高くなればガスの排出効果も増加するガス抜き装置を使用するのであるから、ランナー内部でガスの流通に微妙な乱流を生じさせるであろう平面的にみた場合に屈曲した配置のランナーが有効であるという結論に基づいて開発されたものである。射出成形の現場において、この発想は極めて有効に具体化され、現実に完成度の高い射出成形品を生み出している。
【0016】
第二の実施例の具体的形状は図6に概念図として示す通りで、図中1はランナー、4は充填口、5はゲートを示しており、ランナー1の屈曲部には乱流室9が設置されるとともにランナー1の下方にはガス抜き装置Pを配置するための排気室10が設置されている。このようなランナー1に充填口4から充填された充填材料Sは乱流室9で排気室10からガスを排出しながら方向転換し、それを繰り返して最終的にゲート5から大幅に減圧された金型(図示せず)内部に流入して成形が完了する。図7は金型の固定側7に穿設された第二の実施例を示すもので、可動側8は固定側7の上面を閉鎖してランナー1を構成すれば足りるが、固定側7の乱流室9に更なる乱流を発生させるための突部11を設置することも可能で、そのような構成の例が図8に示されている。
【0017】
図9には、図1に示す第一の実施例を三角形の断面形状を有するランナーで構成した場合の図1と同様の概念図で、ランナー1の断面形状以外の構成は図1に示す第一の実施例と全く同様である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
現在、合成樹脂の射出成形が現場で求められる技術的改良は、より大きな完成品、より薄い完成品、そしてそれらの完成品の表面及び周面の上質な仕上がり、の三点を達成することに絞り込まれている。本発明によるとそれらの要求をすべて達成できるとともに、この技術思想を基としてランナー及び金型内部のガスの行動傾向をさらに詳細に追求することによって、より効率的な射出成形技術を確立できるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 ランナー
2 金型製品部
3 排気道
4 充填口
5 ゲート
6 ガス抜き装置
7 固定側の金型
8 移動側の金型
9 乱流室
10 排気室
11 突部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置を使用した金型において、ランナーの断面形状を台形としたことを特徴とする射出成形におけるガス抜き効果の高い金型。
【請求項2】
排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置を使用した金型において、ランナーの断面形状を三角形としたことを特徴とする射出成形におけるガス抜き効果の高い金型。
【請求項3】
排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置を使用した金型において、金型に穿設されるランナーの平面的な配置を屈曲して連続する溝により構成したことを特徴とする射出成形におけるガス抜き効果の高い金型。
【請求項1】
排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置を使用した金型において、ランナーの断面形状を台形としたことを特徴とする射出成形におけるガス抜き効果の高い金型。
【請求項2】
排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置を使用した金型において、ランナーの断面形状を三角形としたことを特徴とする射出成形におけるガス抜き効果の高い金型。
【請求項3】
排気通路に連続するプラグ室に挿入した断面円形あるいは多角形のプラグの外周面に、該プラグの軸線に沿って切り欠き部、プラグ室の断面積に対するプラグ以外の断面積が狭くなった狭隘部及びガス抜き溝を連続的に穿設し、該プラグ室を射出成形用の型のランナーに一個以上設置してなる、射出成形におけるガス抜き装置を使用した金型において、金型に穿設されるランナーの平面的な配置を屈曲して連続する溝により構成したことを特徴とする射出成形におけるガス抜き効果の高い金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−20563(P2012−20563A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171106(P2010−171106)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(500283169)有限会社 サンエイ・モールド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(500283169)有限会社 サンエイ・モールド (3)
【Fターム(参考)】
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