説明

射出成形完成部品製造用ポリエチレン成形組成物

本発明は、多峰性分子量分布を有し、低分子量エチレンホモポリマーA、高分子量エチレンコポリマーB及び超高分子量エチレンコポリマーCを含むポリエチレン成形組成物に関する。成形組成物は、0.940〜0.957g/cm3の範囲にある23℃における密度、0.5〜4dg/minの範囲にあるMFR(190℃/2.16kg)、150〜300cm3/gの範囲にあるISO/R 1191に準拠してデカリン中135℃で測定したエチレンホモポリマーA、コポリマーB及びエチレンコポリマーCの混合物の粘度数VN3を有する。本発明はさらに、射出成形完成部品を製造するためのこのような成形組成物の使用及び射出成形により製造された完成部品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多峰性分子量分布を有し、たとえばクロージャー及びボトルなどの射出成形完成部品を製造するために特に適切なポリエチレン成形組成物、及び適切な触媒、好ましくはチーグラー(Ziegler)触媒の存在下でこの成形組成物を調製する方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、射出成形完成部品を製造するためのこのような成形組成物の使用及び射出成形プロセスにより製造された完成部品に関する。
「多峰性分子量分布を有するポリエチレン成形組成物」又は単に「多峰性ポリエチレン」とは、多峰性形状の分子量分布曲線を有するポリエチレン成形組成物又はポリエチレン、すなわち、異なる分子量を有する複数のエチレン重合体部分を包含するポリエチレンをいう。たとえば、本発明の好ましい実施形態によれば、多峰性ポリエチレンは、異なる分子量を有する各ポリエチレン部分を得るべく、所定の異なる反応条件下、直列配置のそれぞれの反応器内で行われる連続重合工程を包含する多重工程反応シーケンスにより調製することができる。このタイプのプロセスは、懸濁媒体中で行うことができる。この場合、モノマー及びモル質量調節剤、好ましくは水素が懸濁媒体及び適切な触媒、好ましくはチーグラー(Ziegler)触媒の存在下、第1の反応条件下で第1反応器内で最初に重合され、次いで、第2反応器に移されて第2の反応条件下でさらに重合され、調製されるべきポリエチレンがたとえば三峰性である場合には、さらに第3反応器に移されて第3の反応条件下でさらに重合される。ここで、異なる分子量を有する3種のポリエチレン部分を得るために、第1の反応条件は第2及び第3の反応条件とは異なる。この異なるエチレン重合体部分における分子量の相違は、通常は質量平均分子量Mwにより評価される。
【0003】
チーグラー(Ziegler)触媒は本発明の好ましい用途に特に適切であるが、他の触媒、たとえば均一な触媒中心を有する触媒(すなわち「シングルサイト」触媒)、たとえば、メタロセン触媒を使用することもできる。
【背景技術】
【0004】
ポリエチレンは、射出成形完成部品を製造するために広範に使用されている。この目的で使用されるポリエチレンは、薄壁射出成形部品を製造するために適切であるために、高い機械的強度及び剛性を有しているべきである。加えて、材料は、高度の環境応力破壊抵抗を有していなければならない。完成部品が食品包装材として用いられる場合、材料はさらに優れた官能特性(organoleptic properties)を有していなければならない。さらに、上述の射出成形用途にとって、成形組成物は易加工性、特に射出成形による易加工性を有していなければならない。
【0005】
単峰性分子量分布を有するポリエチレン成形組成物、すなわち、所定分子量を有する単一種のエチレン重合体部分を含むポリエチレン成形組成物は、射出成形用途にとって不充分である加工性、環境応力破壊抵抗及び機械的靱性の点で欠点を有する。
【0006】
対比して、二峰性分子量分布を有する成形組成物は、技術的な進展(technical step forward)を代表する。二峰性分子量分布を有するポリエチレン系射出成形完成部品用成形組成物は、比較的容易に加工することができ、慣用の単峰性成形組成物と比較してより良好な機械的特性を示す。単峰性成形組成物と同じ密度で、二峰性分子量分布を有する成形組成物は、より容易に加工され、より良好な環境応力破壊抵抗及びより高い機械的強度を有するが、それでもなお、二峰性成形組成物の機械的特性、特に環境応力破壊抵抗、強度及び剛性はいまだ改良が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、射出成形により加工される際に良好な加工性を保持しながら、増大した剛性とともに機械的強度の点で及び環境応力破壊抵抗の点で顕著な利点を有するポリエチレン系成形組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、成形組成物の総量を基準として25〜50wt%の低分子量エチレンホモポリマーA、28〜50wt%の高分子量エチレンコポリマーB及び15〜40wt%の超高分子量エチレンコポリマーCを含む多峰性分子量分布を有する成形組成物により達成される。本成形組成物は、23℃の温度での密度が0.940〜0.957g/cm3の範囲にあり、MFR(190℃/2.16kg)が0.5〜4dg/minの範囲にあり、ISO/R 1191に準拠してデカリン中135℃の温度で測定したエチレンホモポリマーA、コポリマーB及びエチレンコポリマーCの混合物の粘度数VN3が150〜300cm3/gの範囲にある。
【0009】
「低分子量エチレンホモポリマーA」、「高分子量エチレンコポリマーB」及び「超高分子量エチレンコポリマーC」とは、それぞれ異なる増分分子量を有するエチレンホモポリマーA、エチレンコポリマーB及びエチレンコポリマーCをいう。
【0010】
この特性の組み合わせのおかげで、特に多峰性分子量分布、これらのMFR、粘度数VN3及び密度の特定の範囲のおかげで、本発明のポリエチレン成形組成物は、有利なことに、改良された強度及び剛性を有しながら、より容易に加工できる。
【0011】
高分子量エチレンコポリマーB及び/又は超高分子量エチレンコポリマーCは、好ましくは、エチレン及び少なくともさらに別のオレフィン、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するオレフィンのコポリマーである。よって、エチレンはモノマーとして用いられ、使用されるコモノマーは、好ましくは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン又はこれらの組み合わせである。好ましいコモノマーは、1−ブテン、1−ヘキセン及び4−メチル−1−ペンテンである。1−ブテンが特に好ましい。
【0012】
高分子量コポリマーBは、好ましくは、コポリマーBの質量を基準として1〜10wt%の範囲、より好ましくは1〜8wt%の範囲、特に1〜6wt%の範囲の量で少なくとも1のコモノマーを含む。
【0013】
超高分子量コポリマーCは、好ましくは、コポリマーCの質量を基準として1〜10wt%の範囲、より好ましくは1〜8wt%の範囲、特に好ましくは1〜6wt%の範囲の量で、少なくとも1のコモノマーを含む。
【0014】
コモノマーのこれらの好ましい量は、改良された環境応力破壊抵抗を達成することを可能とする。これらの好ましい範囲内で、ポリエチレン成形組成物は、有利なことに、機械的特性のさらに改良された組み合わせを有する。
【0015】
超高分子量エチレンコポリマーCは、好ましくは、例示として上述したコモノマーの1種以上を含む。
ポリエチレン成形組成物は、好ましくは0.942〜0.957g/cm3の範囲、より好ましくは0.945〜0.957g/cm3の範囲、特に0.948〜0.957g/cm3の範囲にある23℃における密度を有する。
【0016】
この態様において、ポリエチレン成形組成物の剛性は、有利なことに、他の機械的特性及び加工性を実質的に変えることなく、さらに増大する。
ポリエチレン成形組成物は、好ましくは150〜280cm3/gの範囲、より好ましくは180〜260cm3/gの範囲、特に180〜240cm3/gの範囲にあるISO/R 1191に準拠してデカリン中135℃で測定したエチレンホモポリマーA、エチレンコポリマーB及びエチレンコポリマーCの混合物の粘度数VN3を有する。
【0017】
ポリエチレン成形組成物は、好ましくは0.5〜3dg/minの範囲、より好ましくは0.7〜3dg/minの範囲、特に1〜2.7dg/minの範囲にあるISO 1133 条件Dに準拠しMFR(190℃/2.16kg)として表されるメルトフローインデックスを有する。
【0018】
ポリエチレン成形組成物は、好ましくは、連続重合工程を具備する多重工程反応シーケンスにより調製される。たとえば、反応シーケンスが3工程を有する場合には三峰性ポリエチレン成形組成物が製造され、反応シーケンスが4工程を有する場合には四峰性ポリエチレン成形組成物が製造される。
【0019】
多峰性ポリエチレンを得るために、重合は多重プロセス、すなわち直列に接続された各反応器内で行われる複数の工程で行うことができ、分子量は好ましくはモル質量調節剤、好ましくは水素により各場合において調節される。特に、重合プロセスは、好ましくは、第1反応器内で設定される最高の水素濃度で行うことができる。続くさらに別の反応器において、水素濃度は好ましくは徐々に減少し、第3反応器内で用いられる水素濃度は第2反応器内で用いられる水素濃度に比べて低い。好ましくは、第2反応器内及び第3反応器内で、好ましくは第2反応器から第3反応器へと増加する所定コモノマー濃度が用いられる。上述したように、コポリマー部分が調製される工程において、好ましくは第2反応器内及び第3反応器内で、エチレンはモノマーとして用いられ、4〜8個の炭素原子を有するオレフィンは好ましくはコモノマーとして用いられる。
【0020】
本発明のポリエチレン成形組成物の分子量分布は、好ましくは三峰性である。この態様において、3個の反応器を直列に設け、よって、プラントの寸法を有利に抑制することによって、製造プロセスを過剰に複雑にすることなく、特性の上述の有利な組み合わせを得ることが可能である。そこで、三峰性ポリエチレン成形組成物を得るために、エチレンの重合は好ましくは直列に接続された3個の反応器内で行われる連続プロセスで行われる。ここで、異なる反応条件が3個の反応器内にそれぞれ設定される。好ましくは、重合は懸濁液中で行われる。第1反応器内で、適切な触媒、たとえばチーグラー(Ziegler)触媒が、好ましくは、懸濁媒体、助触媒、エチレン及び水素と一緒に供給される。好ましくは、第1反応器にはコモノマーが導入されない。次いで、第1反応器からの懸濁液は第2反応器に送られ、ここに、エチレン、水素及び好ましくは所定量のコモノマー、たとえば1−ブテンも添加される。第2反応器内に供給される水素の量は、好ましくは第1反応器内に供給される水素の量よりも少ない。第2反応器からの懸濁液は、第3反応器に移される。第3反応器内で、エチレン、水素及び好ましくは所定量のコモノマー、たとえば1−ブテンが好ましくは第2反応器内で使用されるコモノマーの量よりも多量に導入される。第3反応器内の水素の量は、第2反応器内の水素の量よりも少ない。第3反応器を出る懸濁液から懸濁媒体は分離され、得られるポリマー粉末は乾燥され、次いで好ましくはペレット化される。
【0021】
ポリエチレンは、モノマーの重合により、たとえば懸濁液中で、好ましくは70〜90℃の範囲、好ましくは80〜90℃の範囲の温度、2〜20barの範囲、好ましくは2〜10barの範囲の圧力での重合により得られる。重合は、好ましくは、適切な触媒、たとえばチーグラー(Ziegler)触媒の存在下、好ましくは多重プロセスの所定生産性を保障するに十分活性な触媒の存在下で行われる。チーグラー(Ziegler)触媒は、好ましくは遷移金属化合物及び有機アルミニウム化合物からなる。
【0022】
好ましい三峰性、すなわち好ましい分子量分布曲線の三峰性形状は、各重合工程の後得られるポリマーのISO/R 1191に準拠する粘度数VNによって、3種の個々の分子量分布の重心の位置で記述することができる。
【0023】
低分子量エチレンホモポリマーAは、好ましくは第1重合工程で形成される。この好ましい実施形態において、第1重合工程の後得られるポリマーで測定される粘度数VN1は、低分子量エチレンホモポリマーAの粘度数であり、好ましくは50〜150cm3/gの範囲、より好ましくは60〜120cm3/gの範囲、特に65〜100cm3/gの範囲にある。
【0024】
別の実施形態によれば、高分子量エチレンコポリマーB又は超高分子量コポリマーCのいずれかが第1重合工程で形成されてもよい。
高分子量エチレンコポリマーBは、好ましくは第2重合工程で形成される。
【0025】
低分子量エチレンホモポリマーAが第1重合工程で形成され、高分子量エチレンコポリマーBが第2重合工程で形成される特に好ましい実施形態によれば、第2重合工程の後得られるポリマーで測定した粘度数VN2は、低分子量エチレンホモポリマーAと高分子量エチレンコポリマーBとの混合物の粘度数である。VN2は好ましくは70〜180cm3/gの範囲、より好ましくは90〜170cm3/gの範囲、特に100〜160cm3/gの範囲にある。
【0026】
この好ましい実施形態において、VN1及びVN2の測定値から始めて、高分子量エチレンコポリマーBの粘度数VNBをたとえば下記式によって計算することができる。
【0027】
【数1】

【0028】
式中、w1は、最初の2工程で形成される二峰性分子量分布を有するポリエチレンの総量を基準としてwt%で測定される第1重合工程で形成された低分子量エチレンホモポリマーの質量の割合である。
【0029】
超高分子量エチレンコポリマーCは、好ましくは第3重合工程で形成される。この好ましい実施形態において、並びに異なる重合の順番が提供される別の実施形態において、第3重合工程の後得られるポリマーで測定される粘度数VN3は、低分子量エチレンホモポリマーA,、高分子量エチレンコポリマーB及び超高分子量エチレンコポリマーCの混合物の粘度数である。VN3は好ましくは上述の好ましい範囲、すなわち、150〜300cm3/g、好ましくは150〜280cm3/g、より好ましくは180〜260cm3/gの範囲、特に180〜240cm3/gの範囲にある。
【0030】
この好ましい実施形態において、VN2及びVN3のこれらの測定値から始めて、第3重合工程で形成される超高分子量コポリマーCの粘度数VNCは、たとえば下記実験式から計算することができる。
【0031】
【数2】

【0032】
式中、w2は、全3工程で形成される三峰性分子量分布を有するポリエチレンの総量を基準とするwt%で測定された最初の2工程で形成される二峰性分子量分布を有するポリエチレンの割合である。
【0033】
低分子量エチレンホモポリマーA、高分子量コポリマーB及び超高分子量コポリマーCがこの順番で得られる好ましい場合について、ポリエチレン成形組成物の各エチレン重合体部分の粘度数を計算する方法を与えたが、この計算方法は異なる重合順番についても適用できる。事実、いかなる場合も、3種のエチレン重合体部分の製造の順番とは独立に、第1のエチレン重合体部分の粘度数は、第1重合工程の後で得られるエチレンポリマーで測定された粘度数VN1に等しく、第2のエチレン重合体部分の粘度数は、最初の2工程で形成された二峰性分子量分布を有するポリエチレンの総量を基準とする第1重合工程で形成された第1のエチレン重合体部分の質量割合w1及びそれぞれ第2及び第3重合工程の後で得られるポリマーで測定された粘度数VN1及びVN2から計算することができ、第3のエチレン重合体部分の粘度数は、全3工程で形成された三峰性分子量分布を有するポリエチレンの総量を基準とするwt%で測定される最初の2工程で形成された二峰性分子量分布を有するポリエチレンの質量割合w2及びそれぞれ第2重合工程及び第3重合工程の後で得られるポリマーで測定された粘度数VN2及びVN3から計算することができる。
【0034】
本発明のポリエチレン成形組成物は、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤は、たとえば、混合物の総量を基準として0〜10wt%、好ましくは0〜5wt%の量の熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、金属不活剤、過酸化物分解化合物(peroxide−destroying compound)、塩基共安定剤(basic costabilizer)ばかりでなく、混合物の総量を基準として合計で0〜50wt%の量のカーボンブラック、フィラー、顔料、難燃剤又はこれらの組み合わせである。
【0035】
本発明の成形組成物は、有利なことに、射出成形して射出成形品、好ましくは回転対称の完成部品、たとえばブロー成形プラスチック部品又はボトルのクロージャーを製造することができる。
【実施例】
【0036】
[実施例1(本発明)]
直列に接続した3個の反応器内連続プロセスでエチレンの重合を行った。国際特許出願パンフレットWO91/18934、実施例2に操作番号2.2として開示されている方法により調製したチーグラー(Ziegler)触媒を14.3mmol/hの量で、懸濁媒体としての十分なヘキサン、180mmol/hの量の助触媒としてのトリエチルアルミニウム、エチレン及び水素と一緒に、第1反応器に供給した。エチレンの量(=51.7kg/h)及び水素の量(=62g/h)は、24vol%のエチレンの割合及び68vol%の水素の割合が第1反応器のガス空間で測定され、残余は窒素と気化した懸濁媒体との混合物となるように設定した。第1反応器内での重合は84℃の温度で行った。次いで、第1反応器からの懸濁液をガス空間中での水素の割合が55vol%に減少している第2反応器に移し、再循環懸濁媒体中に溶解している材料を介して添加された54.5kg/hの量のエチレン及び450g/hの量の1−ブテンを第2反応器に導入した。水素の量の減少は、中間H2減圧によって得られた。40vol%のエチレン、55vol%の水素及び0.4vol%の1−ブテンを第2反応器のガス空間で測定した。残余は、窒素と気化した懸濁媒体との混合物であった。第2反応器内での重合は85℃の温度で行った。第2反応器からの懸濁液をさらに別の中間H2減圧を介して第3反応器に移し、これによって第3反応器のガス空間内の水素の量を2.1vol%に設定した。38.3kg/hの量のエチレン及び3900g/hの量の1−ブテンを第3反応器に導入した。79vol%のエチレンの割合、2.1vol%の水素の割合及び11vol%の1−ブテンの割合が第3反応器のガス空間中で測定された。残余は、窒素と気化した懸濁媒体との混合物であった。第3反応器内での重合は85℃の温度で行った。懸濁媒体は第3反応器を出るポリマー懸濁液から分離し、残りのポリマー粉末を乾燥しペレット化した。
【0037】
融点210℃及び保持圧力750barで、スクリュー付き4−キャビティツール(cavity tool)を用いるKM250射出成形機械(Krauss Maffei(最大把持力2750kN、スクリュー直径50mm))で、直径40mm及び壁厚2mmを有するクロージャーを射出成形した。ツールの表面温度は30℃であった。製造されたクロージャーは、欠陥のない表面を有していた。
【0038】
上述した粘度数及び実施例1に記載したように調製したポリエチレン成形組成物のポリマーA、B及びCの割合WA、WB及びWCを下記Table 1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
Table 1中の略記号は以下のとおりである。
A、WB、WC=それぞれ、低分子量エチレンホモポリマーA、高分子量コポリマーB及び超高分子量エチレンコポリマーCの質量[%];
VN1、VN2、VN3=それぞれ、ISO/R 1191に準拠してデカリン中135℃で測定した低分子量エチレンホモポリマーA、ポリマーAとポリマーBとの混合物、エチレンホモポリマーAとコポリマーBとエチレンコポリマーCの混合物の粘度数[cm3/g];
密度:ISO 1183に準拠して23℃で測定した密度[g/cm3];
MFR(190℃/2.16kg)=ISO 1133,条件Dに準拠するメルトフローインデックス[dg/min];
ESCR=M.Fleiβner(Full Notch Creep Test)法により測定した環境応力破壊抵抗[h]、条件:80℃、2.5MPa、水/Arkopal 2%。この実験室方法は、M.Fleiβner in Kunststoffe 77 (1987),p.45 ff.,に記載されており、ISO/CD 16770に対応する。この刊行物はISO 1167に準拠する長時間内部圧力の脆弱分岐と円周ノッチを有するテストバーにおけるクリープテストでの緩慢な亀裂成長の決定との間に関係があることを示す。破壊までの時間を短縮することは、応力亀裂促進媒体としての2%強度Arkopal水溶液中、温度80℃、引張応力2.5MPaでのノッチ(ノッチ深さ1.6mm/カミソリ刃)による亀裂開始時間を短縮することによって達成される。種は、10×10×90mm寸法の3種の試験種を10mm厚プレスプレートから切り出すことによって製作する。試験種は、内製されたノッチング装置のカミソリ刃(刊行物Figure 5参照)によって、真ん中で円周周りに刻まれる。;
ACN=ISO 179−1/1eA/DIN 53453に準拠して測定される+23℃でのノッチ衝撃靭性[kJ/m2];
スパイラル長さ=スパイラルテストで製作されたスパイラルの長さ[mm]。スパイラルはポリマーから射出成形される。射出成形用途において知られているように、射出成形により製作された試験種の長さは、射出成形プロセスにおける加工挙動の指標である。報告された形態は、射出温度190℃、射出圧力1050bar、スパイラル壁厚1mmに基づく。
[実施例2(比較例)]
直列に接続した2個の反応器内連続プロセスでエチレンの重合を行った。国際特許出願パンフレットWO91/18934、実施例2に操作番号2.2として開示されている方法により調製したチーグラー(Ziegler)触媒を14.3mmol/hの量で、十分な懸濁媒体、180mmol/hの量の助触媒としてのトリエチルアルミニウム、エチレン及び水素と一緒に、第1反応器に供給した。エチレンの量(=71.5kg/h)及び水素の量(=79g/h)は、26vol%のエチレンの割合及び61vol%の水素の割合が第1反応器のガス空間で測定されるように設定した。さらに、再循環懸濁媒体中に溶解した1−ブテンとして導入された1.2vol%の1−ブテンの割合が測定された。残余は窒素と気化した懸濁媒体との混合物であった。第1反応器内での重合は84℃の温度で行った。次いで、第1反応器からの懸濁液をガス空間中での水素の割合が19vol%に減少している第2反応器に移し、58.5kg/hの量のエチレン及び2350l/hの量の1−ブテンを導入した。水素の量の減少は、中間H2減圧によって得られた。67vol%のエチレン、19vol%の水素及び6.5vol%の1−ブテンを第2反応器のガス空間で測定した。残余は、窒素と気化した懸濁媒体との混合物であった。第2反応器内での重合は85℃の温度で行った。懸濁媒体を分離し、粉末を乾燥させた後で、第2反応器からのポリマー懸濁液を通過させペレット化した。
【0041】
融点210℃及び保持圧力750barで、スクリュー付き4−キャビティツール(cavity tool)を用いるKM250射出成形機械(Krauss Maffei(最大把持力2750kN、スクリュー直径50mm))で、直径40mm及び壁厚2mmを有するクロージャーを射出成形した。ツールの表面温度は30℃であった。製造されたクロージャーは、欠陥のない表面を有していた。
【0042】
上述した粘度数及び比較例に記載したように調製したポリエチレン成形組成物のポリマーA、B及びCの割合WA、WB及びWCを下記Table 2に示す。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多峰性分子量分布を有し、成形組成物の総量を基準として25〜50wt%の低分子量エチレンホモポリマーA、28〜50wt%の高分子量エチレンコポリマーB及び15〜40wt%の超高分子量エチレンコポリマーCを含み、0.940〜0.957g/cm3の範囲にある23℃における密度、0.5〜4dg/minの範囲にあるMFR(190℃/2.16kg)及び150〜300cm3/gの範囲にあるデカリン中135℃でISO/R 1191に準拠して測定したエチレンホモポリマーA、コポリマーB及びエチレンコポリマーCの混合物の粘度数VN3を有するポリエチレン成形組成物。
【請求項2】
高分子量エチレンコポリマーB及び超高分子量エチレンコポリマーCは、エチレンと少なくとも4〜8個の炭素原子を有するさらなるオレフィンとのコポリマーである、請求項1に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項3】
オレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン又はこれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項4】
高分子量コポリマーBは、コポリマーBの質量を基準として1〜10wt%の範囲にある量で少なくとも1のコモノマーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項5】
超高分子量コポリマーCは、コポリマーCの質量を基準として1〜10wt%の範囲にある量で少なくとも1のコモノマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項6】
デカリン中135℃でISO/R 1191に準拠して測定した粘度数VN3は150〜280cm3/gの範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項7】
ポリエチレン成形組成物は、連続重合工程を含む多重工程反応シーケンスにより調製される、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項8】
第1重合工程の後、低分子量エチレンホモポリマーAで測定した粘度数VN1は50〜150cm3/gの範囲にある、請求項7に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項9】
第2重合工程の後、低分子量エチレンホモポリマーA及び高分子量エチレンコポリマーBの混合物で測定した粘度数VN2は70〜180cm3/gの範囲にある、請求項7又は8に記載のポリエチレン成形組成物。
【請求項10】
モノマーの3工程重合は、70〜90℃の範囲の温度、2〜10barの範囲の圧力及び遷移金属化合物及び有機アルミニウム化合物からなるチーグラー(Ziegler)触媒の存在下、懸濁液中で行われ、各工程で製造されるポリエチレンの分子量は各場合において水素により調節される、請求項1〜9の1以上のポリエチレン成形組成物を調製する方法。
【請求項11】
射出成形完成部品を製造するための請求項1〜9の1以上のポリエチレン成形組成物の使用。
【請求項12】
請求項1〜9の1以上のポリエチレン成形組成物を含む、射出成形完成部品。

【公表番号】特表2008−545029(P2008−545029A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518814(P2008−518814)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063580
【国際公開番号】WO2007/003530
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】