説明

射出成形機及びその制御方法

【課題】ポンプを作動させるのに伴って騒音が発生するのを抑制することができ、ポンプ及び液圧駆動装置のコストを低くすることができるようにする。
【解決手段】モータと、複数のシリンダが形成されたシリンダブロック、及び各シリンダに対して進退自在に配設されたピストンを備えたポンプと、ポンプの回転速度及びシリンダの数によって算出されるポンプの脈動周波数と同じ周波数の脈動抑制信号ur、vr、wrを発生させ、モータを駆動するための駆動指令信号に脈動抑制信号ur、vr、wrを加算する制御部とを有する。モータを駆動するための駆動指令信号に脈動抑制信号ur、vr、wrが加算されるので、吐出圧の変化に伴う衝撃を小さくすることができる。ポンプの吐出圧に脈動が発生するのを抑制することができ、騒音が発生するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂が、高圧で射出されて金型装置のキャビティ空間に充填され、該キャビティ空間内において冷却されて固化させられて、成形品が得られるようになっている。
【0003】
前記射出成形機は金型装置、型締装置及び射出装置を有し、前記金型装置は固定金型及び可動金型から成る金型を備え、型締装置は、固定プラテン、可動プラテン、型締シリンダ等を備え、該型締シリンダを駆動することによって、推力を発生させて可動プラテンを進退させ、型閉じ、型締め及び型開きを行う。
【0004】
また、前記射出装置は、ホッパから供給された樹脂を加熱して溶融させる前記加熱シリンダ、及び溶融させられた樹脂を射出するための射出ノズルを備え、前記加熱シリンダ内にスクリューが回転自在に、かつ、進退自在に配設される。そして、計量工程時に、計量用の油圧モータを駆動し、前記スクリューを回転させることによって、スクリューの前方に樹脂が溜められ、射出工程時に、射出用の射出シリンダを駆動し、前記スクリューを前進させることによって、射出ノズルから樹脂が射出される。
【0005】
ところで、前記射出成形機においては、前記型締シリンダを駆動するために、液圧駆動装置が配設される。該液圧駆動装置は、液圧発生用モータ、該液圧発生用モータによって駆動されるポンプ等を備え、液圧駆動装置を駆動することによって発生させられた油圧が型締シリンダに供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−66860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の液圧駆動装置においては、ポンプを作動させる際に、ポンプの吐出圧に脈動が発生し、該脈動に起因して騒音が発生してしまう。
【0007】
図2は従来の液圧駆動装置における液圧発生用モータを駆動するための電流の波形を示すタイムチャート、図3は従来の液圧駆動装置におけるポンプの吐出圧に発生する脈動を示すタイムチャートである。
【0008】
液圧発生用モータのコイルに、図2に示されるような正弦波の電流IU、IV、IWを供給すると、ポンプが作動させられるが、該ポンプにおいては、複数のシリンダを備えたピストンケーシングを回転させ、各シリンダ内でピストンを進退させることによって油を吐出するようになっているので、ピストンケーシングを1回転させるたびに吐出圧がシリンダの数だけ変化し、吐出圧に図3に示されるような脈動が発生してしまう。その結果、騒音が発生してしまう。
【0009】
そこで、騒音が発生するのを抑制するために、ポンプの弁板にヒゲ溝を形成したり、ポンプを防音カバーによって包囲したり、ポンプの部品に緩衝材を追加したりするようにしているが、ポンプ及び液圧駆動装置のコストがその分高くなってしまう。
【0010】
本発明は、前記従来の液圧駆動装置の問題点を解決して、ポンプを作動させるのに伴って騒音が発生するのを抑制することができ、ポンプ及び液圧駆動装置のコストを低くすることができる射出成形機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の射出成形機においては、モータと、該モータを駆動することによって回転させられ、複数のシリンダが形成されたシリンダブロック、及び前記各シリンダに対して進退自在に配設されたピストンを備えたポンプと、該ポンプの回転速度及び前記シリンダの数によって算出されるポンプの脈動周波数と同じ周波数の脈動抑制信号を発生させ、前記モータを駆動するための駆動指令信号に前記脈動抑制信号を加算する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、射出成形機においては、モータと、該モータを駆動することによって回転させられ、複数のシリンダが形成されたシリンダブロック、及び前記各シリンダに対して進退自在に配設されたピストンを備えたポンプと、該ポンプの回転速度及び前記シリンダの数によって算出されるポンプの脈動周波数と同じ周波数の脈動抑制信号を発生させ、前記モータを駆動するための駆動指令信号に前記脈動抑制信号を加算する制御部とを有する。
【0013】
この場合、ポンプの脈動周波数と同じ周波数の脈動抑制信号が発生させられ、モータを駆動するための駆動指令信号に脈動抑制信号が加算されるので、ポンプの吐出圧の変化に伴う衝撃を小さくすることができる。その結果、ポンプの吐出圧に脈動が発生するのを抑制することができ、騒音が発生するのを抑制することができる。
【0014】
また、騒音が発生するのを抑制するために、ポンプの弁板にヒゲ溝を形成したり、ポンプを防音カバーによって包囲したり、ポンプの部品に緩衝材を追加したりする必要がないので、ポンプ及び液圧駆動装置のコストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機について説明する。
【0016】
図4は本発明の実施の形態における射出成形機の概略図である。
【0017】
図に示されるように、11は金型装置、12は型締装置、13は射出装置、22は可塑化移動装置22であり、それぞれフレームfr上に配設される。なお、前記金型装置11、型締装置12、射出装置13及び可塑化移動装置22によって射出成形機が構成される。
【0018】
前記金型装置11は第1の金型としての固定金型11a、及び該固定金型11aに対して進退自在に配設された第2の金型としての可動金型11bを備える。
【0019】
また、前記型締装置12は、固定金型11aを取り付けるための第1の固定支持部材としての固定プラテン14、該固定プラテン14と対向させて配設された第2の固定支持部材としてのベースプレート15、前記固定プラテン14とベースプレート15との間に架設された複数のタイバー16、該各タイバー16に沿って進退自在に配設され、可動金型11bを取り付けるための可動支持部材としての可動プラテン17、型締用の駆動部としての、かつ、液圧シリンダとしての型締シリンダ18、該型締シリンダ18を駆動するための図示されない液圧駆動装置等を備える。なお、前記固定プラテン14及びベースプレート15は、図示されないボルト等の固定部材によってフレームfrに固定される。
【0020】
前記型締シリンダ18は、前記ベースプレート15と一体に形成された油圧シリンダ19、及び該油圧シリンダ19内において進退自在に配設され、可動プラテン17と一体に形成されたピストン21を備える。前記油圧シリンダ19内の空間は、ピストン21によって区画され、第1、第2の油室23、24が形成され、該第1、第2の油室23、24が、それぞれ油路25、26を介して前記液圧駆動装置と接続される。
【0021】
また、前記ベースプレート15と可動プラテン17との間には位置検出器29が配設され、該位置検出器29によって、前記可動プラテン17及び可動金型11bの位置が検出される。
【0022】
前記射出装置13は、成形材料としての樹脂を加熱して溶融させるシリンダ部材としての加熱シリンダ31、溶融させられた樹脂を射出する射出ノズル32、前記加熱シリンダ31内に回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリュー33、該スクリュー33を回転させることによって、スクリュー33の前方に一定の溶融させられた樹脂を溜めるための計量用の駆動部としての計量用モータ34、前記スクリュー33を前進させることによって、スクリュー33の前方に溜められた樹脂を射出ノズル32から射出するための射出用の駆動部としての、かつ、液圧シリンダとしての射出シリンダ35等を備える。前記加熱シリンダ31の後方の所定の箇所にホッパ36が配設される。また、前記計量用モータ34にはサーボモータ等の可変速な電動モータを使用することができる。本実施の形態においては、型締用の駆動部として型締シリンダ18が、射出用の駆動部として射出シリンダ35が使用されるようになっているが、型締シリンダ18及び射出シリンダ35のうちのいずれか一方をサーボモータに代えて、射出成形機を油圧式の駆動部と電動式の駆動部とを組み合わせた構造にすることができる。
【0023】
次に、前記構成の射出成形機の動作について説明する。
【0024】
前記射出装置13において、計量工程時に、計量用モータ34を駆動してスクリュー33を回転させると、該スクリュー33が所定の位置まで後退させられ、このとき、ホッパ36から供給された樹脂は、加熱シリンダ31内に落下し、加熱され、溶融させられ、スクリュー33の後退に伴って、スクリュー33の前方に溜められる。
【0025】
また、射出工程時に、加熱シリンダ31の前端の射出ノズル32を固定金型11aに押し付け、射出シリンダ35を駆動してスクリュー33を前進させると、スクリュー33の前方に溜められた樹脂は、射出ノズル32から射出され、固定金型11aと可動金型11bとの間に形成されたキャビティ空間内に充填される。
【0026】
そして、前記型締装置12において、油路25を介して第1の油室23に油圧が供給され、油路26を介して第2の油室24から油圧が排出されると、ピストン21が所定の推力で前進させられ、可動プラテン17が前進させられる。それに伴って可動金型11bが前進させられて、金型装置11において型閉じ及び型締めが行われる。また、油路26を介して第2の油室24に油圧が供給され、油路25を介して第1の油室23から油圧が排出されると、ピストン21が所定の推力で後退させられ、可動プラテン17が後退させられる。それに伴って可動金型11bが後退させられて、金型装置11において型開きが行われる。
【0027】
なお、ピストン21内に油室27が形成され、該油室27に油路28が接続され、該油路28は、前記油路26と連通させられる。したがって、型閉じが行われる際に、油圧を油路28を介して油室27に供給することによって、ピストン21を前進させるための推力を大きくすることができる。
【0028】
次に、前記型締シリンダ18に接続された液圧駆動装置について説明する。
【0029】
図5は本発明の実施の形態における液圧駆動装置の縦断面図、図6は本発明の実施の形態におけるポートプレートの断面図である。
【0030】
図5において、150は液圧駆動装置であり、該液圧駆動装置150は、正方向及び逆方向に駆動自在に配設された液圧発生用の駆動部としての、かつ、モータとしての液圧発生用モータ51、並びに該液圧発生用モータ51に隣接させて配設され、液圧発生用モータ51を駆動することによって、圧力流体を双方向に吐出する液圧ポンプとしてのポンプ152を備える。なお、前記液圧発生用モータ51の零点(Z相)とポンプ152の零点(吐出開始位置)とは、あらかじめ位置補償がされる。
【0031】
前記液圧発生用モータ51はサーボモータ等によって構成され、ハウジング153、ステータ154、該ステータ154より径方向内方において回転自在に配設されたロータ155、該ロータ155に取り付けられた出力軸としての中空の中空軸156、該中空軸156をハウジング153に対して回転自在に支持するベアリングbr1、br2等を備える。
【0032】
また、前記ポンプ152は、可変容量型の斜板式アキシャルプランジャポンプ(ピストンポンプ)によって構成され、前記ハウジング153に取り付けられたハウジング161、ポンプヘッドブロック162、弁板としてのポートプレート163、前記ハウジング161及びポンプヘッドブロック162に対して回転自在に配設された作動軸164、該作動軸164をハウジング161及びポンプヘッドブロック162に対して回転自在に支持するベアリングbr3、br4、前記作動軸164におけるポンプヘッドブロック162側の端部(前端部)に取り付けられたシリンダブロックとしてのピストンケーシング166、該ピストンケーシング166の円周方向における複数箇所に等ピッチで形成された複数の、本実施の形態においては、n(=9)個のシリンダ167(図においては2個のシリンダ167が示される。)に対して摺動自在に、かつ、進退自在に配設されたピストン168、該ピストン168に取り付けられたピストンロッド175、前記ハウジング161内において、前記作動軸164に対して傾斜させて配設された斜板169等を備える。なお、前記ピストンケーシング166、ピストン168及びピストンロッド175によってシリンダユニットが構成される。
【0033】
前記斜板169は、中央に穴170が形成された環状体の構造を有し、前記ハウジング161に対して回転不能に、かつ、傾斜角度を調整することができるように取り付けられ、穴170内を前記作動軸164が貫通させられる。そして、作動軸164が回転させられるのに伴って、穴170と作動軸164とが干渉することがないように、穴170の内径は作動軸164の外径より十分に大きくされる。
【0034】
また、前記各ピストン168に取り付けられたピストンロッド175は、先端が、前記斜板169におけるピストンケーシング166側の端面s1に沿って摺動し、かつ、端面s1と離れることなく、移動するように配設される。したがって、ピストンケーシング166が回転すると、シリンダ167内のピストン168が回転させられ、ピストンロッド175の先端が斜板169の端面s1上を摺動しながら回転移動させられるので、前記ピストン168がシリンダ167内を進退させられる。また、上側のシリンダ167においては、ピストン168が上死点に位置し、シリンダ167内の容積が最大となっていて、下側のシリンダ167においては、ピストン168が下死点に位置し、シリンダ167内の容積が最小となっている。
【0035】
そして、前記中空軸156の回転を作動軸164に伝達することができるように、中空軸156におけるポンプ152側の端部(前端部)に回転伝達部材としての筒状体171が取り付けられ、該筒状体171と作動軸164とがスプライン連結される。前記筒状体171は、筒状部172、及び該筒状部172におけるポンプ152側の端部に、径方向外方に向けて突出させて形成されたフランジ部173を備え、前記筒状部172の外周面に形成された雄スプラインと中空軸156の内周面に形成された雌スプラインとが噛合させられ、フランジ部173と中空軸156とが連結される。
【0036】
また、前記ポートプレート163には、図6に示されるように、弧状の形状を有する複数の、本実施の形態においては、二つのポート181、182が形成される。該ポート181、182は、前記ピストンケーシング166が回転するのに伴って、各シリンダ167と選択的に連通させられ、各シリンダ167内に油を吸入する吸入ポート又はシリンダ167から油を吐出する吐出ポートとして機能する。そのために、ポートプレート163の回転方向におけるポート181より下流側で、かつ、ポート182より上流側にポート分離部183が、ポート182より下流側で、かつ、ポート181より上流側にポート分離部184が形成される。
【0037】
なお、液圧発生用モータ51が正方向及び逆方向に駆動されるのに伴って、ポート181、182は、吸入ポート及び吐出ポートの機能が逆転し、油をポート181、182のうちの一方に選択的に吐出する。また、前記ポートプレート163の中心部には、ポンプヘッドブロック162の環状の突起部177にポートプレート163を嵌合させることができるように、嵌合孔178が形成される。
【0038】
したがって、液圧発生用モータ51を正方向(液圧発生用モータ51側からポンプ152を見て時計回り方向)に駆動して中空軸156を回転させると、該中空軸156の回転は筒状体171を介して作動軸164に伝達され、ピストンケーシング166に伝達される。その結果、シリンダ167の容積が変化させられ、ポンプ152による油の吸入及び吐出が行われる。
【0039】
この場合、ピストン168が下死点から上死点に至るまでの吸入行程においては、油がポート181からシリンダ167内に吸入され、ピストン168が上死点から下死点に至るまでの吐出行程においては、油がシリンダ167からポート182に吐出される。前記ポート181におけるポート分離部184と隣接する端部が吸引開始部181sを、ポート分離部183と隣接する端部が吸引終了部181eを構成し、前記ポート182におけるポート分離部183と隣接する端部が吐出開始部182sを、ポート分離部184と隣接する端部が吐出終了部182eを構成する。
【0040】
このように、各ピストン168は、ピストンケーシング166が1回転するごとに油の吸入及び吐出を行うので、作動軸164を回転させ、ピストンケーシング166を回転させることによって、油の吸入及び吐出を連続的に行うことができる。
【0041】
なお、前記ピストン168の行程容量は前記斜板169の傾斜角度に依存するので、斜板169の傾斜角度を変更することによって、各シリンダ167から吐出される油の量、すなわち、吐出流量を変更することができる。すなわち、前記斜板169の傾斜角度を小さくするとピストン168の行程が短くなり、行程容量が小さくなり、吐出流量が少なくなる。また、前記斜板169の傾斜角度を大きくすると、ピストン168の行程が長くなり、行程容量が大きくなり、吐出流量が多くなる。
【0042】
そして、前記ポンプ152から吐出された油は、図示されない切換弁を介して油路25、26のいずれか一方を通り、型締シリンダ18の第1、第2の油室23、24のいずれか一方に供給される。第1、第2の油室23、24の他方から排出された油は、油路25、26の他方を通り、図示されない油タンクに収容された後、ポンプ152によって吸引される。なお、該ポンプ152と切換弁との間の油路の所定の箇所に、図示されない圧力調整弁、流量調整弁、アキュムレータ等が配設され、前記圧力調整弁によって油圧が調整された油がアキュムレータに蓄えられ、流量調整弁によって流量が調整されて第1、第2の油室23、24に供給される。
【0043】
次に、前記液圧発生用モータ51を駆動するためのモータ制御装置について説明する。
【0044】
図1は本発明の実施の形態における制御部のブロック図、図7は本発明の実施の形態におけるモータ制御装置のブロック図、図8は本発明の実施の形態における脈動と脈動抑制信号との関係を示すタイムチャート、図9は本発明の実施の形態における液圧発生用モータのコイルに供給される電流の波形を示すタイムチャートである。
【0045】
図において、51は液圧発生用モータ(M)であり、該液圧発生用モータ51は、ステータ154及びロータ155を備え、前記ステータ154はU相、V相及びW相の各コイルを備える。そして、該各コイルにU相、V相及びW相の電流IU、IV、IWを供給することによって、液圧発生用モータ51を駆動することができる。前記各コイルに供給される各電流IU、IV、IWのうちの電流IU、IVが電流検出部としての電流センサ52、53によって検出される。
【0046】
前記液圧発生用モータ51を駆動するために、駆動源としての交流の電源部54、該電源部54から供給される交流の電流を整流する整流回路55、整流された電流を平滑して直流の電流を発生させるコンデンサC、及び前記直流の電流を受けて各相の電流IU、IV、IWを発生させ、電流IU、IV、IWを液圧発生用モータ51に供給するインバータ56が配設され、該インバータ56に、6個のスイッチング素子としての図示されないトランジスタが配設される。
【0047】
また、58は操作部としての操作パネル、59は記憶装置としてのメモリ、61はロータの位置で表される磁極位置θを検出するための位置検出部としてのエンコーダであり、該エンコーダ61は、磁極位置θを検出し、制御部57に送る。そして、63はインバータ56を駆動するためのドライブ回路である。
【0048】
ところで、前記ポンプ152を作動させて型締シリンダ18を駆動するために、制御部57は、前記液圧発生用モータ51の制御を行う。そのために、前記エンコーダ61から磁極位置θが制御部57に送られると、該制御部57のモータ回転速度検出処理手段としてのモータ回転速度検出部65は、モータ回転速度検出処理を行い、磁極位置θを微分して液圧発生用モータ51の回転速度、すなわち、モータ回転速度NMを検出する。
【0049】
また、前記制御部57の図示されないモータ目標トルク設定処理手段としてのモータ目標トルク設定部66は、モータ目標トルク設定処理を行い、前記モータ回転速度NMの目標値を表す目標回転速度としてのモータ目標回転速度NM* 、及び前記モータ回転速度NMを読み込み、モータ目標回転速度NM* とモータ回転速度NMとの回転速度差ΔNMを算出し、該回転速度差ΔNMに基づいて比例積分制御を行うことによってモータトルクTMの目標値を表す目標トルクとしてのモータ目標トルクTM* を算出し、設定する。なお、本実施の形態においては、あらかじめポンプ152の全体の単位時間当たりの吐出流量の目標値、すなわち、目標吐出流量Q* が設定され、該目標吐出流量Q* に基づいて、ポンプ152の回転速度、すなわち、ポンプ回転速度NPの目標値を表すポンプ目標回転速度NP* が設定され、該ポンプ目標回転速度NP* がモータ目標回転速度NM* として読み込まれる。
【0050】
そして、前記制御部57の図示されないトルク制限処理手段としてのトルクリミッタ67は、モータ目標トルクTM* を制限する。
【0051】
前記トルクリミッタ67によって制限されたモータ目標トルクTM* は、モータ目標トルクTSとして、前記制御部57の図示されない電流指令値発生処理手段としての電流指令値発生部68に送られる。該電流指令値発生部68は、電流指令値発生処理を行い、前記モータ目標トルクTSに基づいて電流指令値ids、iqsを算出し、減算器dm、qmに送る。この場合、前記メモリ59に、前記モータ目標トルクTSに対応する電流指令値ids、iqsがあらかじめ設定され、記録される。
【0052】
一方、前記制御部57は、電流センサ52、53から検出電流iu、ivを読み込み、該検出電流iu、ivに基づいて検出電流iw
iw=−iu−iv
を算出する。続いて、前記制御部57の第1の相変換処理手段としての三相二相変換部64は、第1の相変換処理を行い、検出電流iu、iv、iwを、軸座標としてのd−q座標軸上の第1、第2の軸電流としてのd軸電流id及びq軸電流iqに変換し、前記減算器dm、qmに送る。そして、減算器dmは電流指令値idsとd軸電流idとの偏差Δidを、減算器qmは電流指令値iqsとq軸電流iqとの偏差Δiqを前記制御部57の電圧指令値発生処理手段としての電圧指令値発生部69に送る。
【0053】
該電圧指令値発生部69は、電圧指令値発生処理を行い、前記偏差Δid、Δiqが零(0)になるように電圧指令値vds、vqsを算出する。
【0054】
続いて、前記制御部57の第2の相変換処理手段としての二相三相変換部70は、第2の相変換処理を行い、前記電圧指令値vds、vqsを電圧指令値vus、vvs、vwsに変換し、前記制御部57のパルス幅変調信号発生処理手段としてのパルス幅変調信号発生部71は、パルス幅変調信号発生処理を行い、電圧指令値vus、vvs、vwsに対応する液圧発生用モータ51を駆動するための駆動指令信号としてのパルス幅変調信号Mu、Mv、Mwを発生させ、該パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwをドライブ回路63に対して出力する。そして、該ドライブ回路63は前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwに基づいて駆動信号を発生させ、インバータ56に送る。該インバータ56は前記駆動信号を受けて、各トランジスタをスイッチングし(オン・オフさせ)、電流IU、IV、IWを発生させる。
【0055】
したがって、このようにして発生させられた電流IU、IV、IWが液圧発生用モータ51のコイルに供給されると、液圧発生用モータ51はモータ目標回転速度NM* で駆動され、ポンプ152はポンプ目標回転速度NP* で作動させられ、ポンプ152から目標吐出流量Q* の油が吐出される。
【0056】
ところで、前記ポンプ152においては、前述されたように、各シリンダ167内の油圧が、各シリンダ167がポート182に沿って移動する間に高くなり、ポート分離部184を通過すると、急激に低くなる。したがって、各シリンダ167からの吐出圧は、各シリンダ167がポート分離部184を通過する前後で大きく変化する。
【0057】
この場合、仮に、液圧発生用モータ51のコイルに、図2に示されるような正弦波の波形の電流IU、IV、IWが供給されると、各シリンダ167からの吐出圧が変化するのに伴って、ポンプ152の吐出圧に脈動が発生し、該脈動に起因して騒音が発生してしまう。
【0058】
なお、各シリンダ167がポート分離部183を通過する際には、シリンダ167は上死点に置かれ、油圧が低い状態でポート181側からポート182側に移動するので、ポンプ152の吐出圧に脈動は発生しない。
【0059】
したがって、ポンプ152において、ピストンケーシング166が1回転するごとに一つの脈動が発生するので、例えば、ポンプ回転速度NP(=2000)〔rpm〕で液圧発生用モータ51を駆動した場合、ポンプ152がn(=9)個のシリンダ167を備えるので、ポンプ152の吐出圧には、1〔秒〕間にW個
W=n・NP/60
=9×2000/60
=300
の脈動が発生する。なお、該脈動の波形は、図2に示されるように正弦波で近似される。
【0060】
そこで、本実施の形態においては、ポンプ152の吐出圧が変化するのに伴って、液圧発生用モータ51に供給される電流IU、IV、IWを変化させ、ポンプ152の吐出圧に脈動が発生するのを抑制し、騒音が発生するのを抑制するようにしている。
【0061】
そのために、本実施の形態においては、制御部57において、パルス幅変調信号発生部71より下流側に、演算処理部としての加算器uk、vk、wkが配設され、該加算器uk、vk、wkに脈動抑制信号発生処理手段としての脈動抑制信号発生部75が接続される。そして、該脈動抑制信号発生部75によって、ポンプ152の吐出圧に脈動が発生するのを抑制するための脈動抑制信号が発生させられ、加算器uk、vk、wkにおいて前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwに脈動抑制信号ur、vr、wrが加算される。なお、該脈動抑制信号ur、vr、wrは、各シリンダ167の位置に対応させて、前記ポンプ152からの吐出圧の脈動の振幅が小さくなるように、かつ、吐出流量の脈動の振幅が小さくなるように発生させられる。
【0062】
そして、前記脈動抑制信号ur、vr、wrは、脈動と同じ周波数及び同じ振幅で、かつ、正弦波で近似される信号にされる。前記脈動と脈動抑制信号ur、vr、wrとが相殺されるように、脈動抑制信号ur、vr、wrの波形は、脈動の波形の正負を反転させて形成されるのが好ましいが、本実施の形態においては、脈動の波形が正弦波で近似されるので、脈動の波形の位相を180〔°〕ずらして形成するようにしている。なお、前記振幅によって制御量が構成される。
【0063】
このように、本実施の形態においては、各シリンダ167からの吐出圧の変化に対応させて脈動抑制信号ur、vr、wrが発生させられ、パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwに加算されるので、前記電流IU、IV、IWを、図9に示されるような正弦波に微少な振幅を有する波形が重畳された波形に変更することができる。
【0064】
したがって、各シリンダ167がポート分離部183を通過する際に、液圧発生用モータ51によって発生させられるトルクを小さくすることができるので、各シリンダ167からの吐出圧の変化に伴う衝撃を小さくすることができる。その結果、ポンプ152の吐出圧に脈動が発生するのを抑制することができ、脈動に起因した騒音が発生するのを抑制することができる。
【0065】
また、騒音が発生するのを抑制するために、ポンプ152の弁板にヒゲ溝を形成したり、ポンプ152を防音カバーによって包囲したり、ポンプ152の部品に緩衝材を追加したりする必要がないので、ポンプ152及び液圧駆動装置150のコストを低くすることができる。
【0066】
ところで、前記型締シリンダ18においては、ポンプ152から吐出された油が、ポンプ152と切換弁との間の油路を介して第1の油室23に供給され、第1の油室23に供給される油圧に対応する型締力が発生させられるようになっているが、第1の油室23に供給される油圧が高い場合、ポンプ152からの吐出圧が高くなる。
【0067】
そして、ポンプ152の吐出圧が高くなると、ポンプ152に加わる負荷がその分大きくなるので、ポンプ152の吐出圧に脈動が発生しやすくなる。
【0068】
そこで、前記油路に圧力検出部としての図示されない油圧センサが配設され、該油圧センサによって検出された前記油路の油圧が制御部57に送られる。
【0069】
そして、該制御部57の図示されない脈動抑制信号変更処理手段は、脈動抑制信号変更処理を行い、前記油路の油圧を読み込み、油路の油圧が閾値より高いかどうかを判断し、油路の油圧が閾値より高い場合に脈動抑制信号を変更する。
【0070】
また、前記型締シリンダ18において、第1の油室23に供給される油の流量が多い場合、ポンプ152からの吐出流量も多くなる。そして、ポンプ152の吐出流量が多くなると、ポンプ152に加わる負荷がその分大きくなるので、ポンプ152の吐出圧に脈動が発生しやすくなる。
【0071】
そこで、前記油路に流量検出部としての図示されない流量センサが配設され、該流量センサによって検出された前記油路の流量が制御部57に送られる。
【0072】
そして、前記脈動抑制信号変更処理手段は、前記油路の流量を読み込み、油路の流量が閾値より多いかどうかを判断し、油路の流量が閾値より多い場合に脈動抑制信号を変更する。
【0073】
本実施の形態においては、型締シリンダ18を駆動するための液圧駆動装置について説明しているが、本発明を、射出シリンダ、可塑化移動装置22を作動させるための液圧シリンダとしての可塑化移動シリンダ、エジェクタ装置を作動させるための液圧シリンダとしてのエジェクタシリンダ等の各シリンダを駆動するための液圧駆動装置に適用することができる。
【0074】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態における制御部のブロック図である。
【図2】従来の液圧駆動装置における液圧発生用モータを駆動するための電流の波形を示すタイムチャートである。
【図3】従来の液圧駆動装置におけるポンプの吐出圧に発生する脈動を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における射出成形機の概略図である。
【図5】本発明の実施の形態における液圧駆動装置の縦断面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるポートプレートの断面図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態における脈動と脈動抑制信号との関係を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実施の形態における液圧発生用モータのコイルに供給される電流の波形を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0076】
11 金型装置
12 型締装置
13 射出装置
51 液圧発生用モータ
152 ポンプ
166 ピストンケーシング
167 シリンダ
168 ピストン
Mu、Mv、Mw パルス幅変調信号
ur、vr、wr 脈動抑制信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)モータと、
(b)該モータを駆動することによって回転させられ、複数のシリンダが形成されたシリンダブロック、及び前記各シリンダに対して進退自在に配設されたピストンを備えたポンプと、
(c)該ポンプの回転速度及び前記シリンダの数によって算出されるポンプの脈動周波数と同じ周波数の脈動抑制信号を発生させ、前記モータを駆動するための駆動指令信号に前記脈動抑制信号を加算する制御部とを有することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記制御部は、ポンプからの吐出圧の脈動の振幅が小さくなるように前記脈動抑制信号を発生させる請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記制御部は、ポンプからの吐出流量の脈動の振幅が少なくなるように前記脈動抑制信号を発生させる請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記制御部は、前記各シリンダの位置に対応させて前記脈動抑制信号を発生させる請求項1に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記モータの零点と前記ポンプの零点とは、あらかじめ位置補償がされる請求項1に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記制御部は、前記ポンプの吐出圧が閾値を超えると、前記駆動指令信号の制御量を大きくする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記制御部は、前記ポンプの吐出流量が閾値を超えると、前記駆動指令信号の制御量を大きくする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項8】
モータ、並びに該モータを駆動することによって回転させられ、複数のシリンダが形成されたシリンダブロック、及び前記各シリンダに対して進退自在に配設されたピストンを備えたポンプを有する射出成形機の制御方法において、
前記ポンプの回転速度及び前記シリンダの数によって算出されるポンプの脈動周波数と同じ周波数の脈動抑制信号を発生させ、前記モータを駆動するための駆動指令信号に前記脈動抑制信号を加算することを特徴とする射出成形機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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