説明

射出成形機用サイドゲートバルブ装置

【課題】ピストン機構の直線運動をテコの原理を用い、かつカム機構を併用して90°回転させてバルブピンを左右方向の平面上に一以上配設して一以上のゲートを働かせて成形できるようにした射出成形機用サイドゲートバルブ装置の提供。
【解決手段】射出成形機の操作の都度、一以上のキャビティの一以上のゲートを開閉する一以上のバルブピン9を、単一の駆動用ピストン1と直交させて、該駆動用ピストン1の往復動をテコ機構B及びカム機構Aを介して開閉できるようにして成ることを特徴とする射出成形機用サイドゲートバルブ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の射出成形操作におけるゲートのバルブ開閉を、横方向側方から制御できるようにした射出成形機用サイドゲートバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に知られる射出成形機にあっては、プローブ内に配設されるピストンの直線運動により直接バルブピンを駆動させて、ゲートを開閉して成形操作が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、テコ機構を介在させてバルブピンを作動させてゲートを開閉するようにした装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3028407号公報
【特許文献2】特開2009−29084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の射出成形機にあっては、ピストン機構,プローブ、そしてバルブピンは基本的に一直線上に並ぶ構成となるため、製品の横にゲートを設けたい場合、完全なランナレス形成は難しいという課題があった。
【0006】
また、テコ機構を備えていても、本質的にピストン直線運動とバルブピンとが平行であり、運動方向を変える仕組ではないという課題もあった。
【0007】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、ピストン機構の直線運動をテコの原理を用い、かつカム機構を併用して90°回転させてバルブピンを左右方向の平面上に一以上配設して一以上のゲートを働かせて成形できるようにした射出成形機用サイドゲートバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0009】
(1)射出成形機の操作の都度、一以上のキャビティの一以上のゲートを開閉する一以上のバルブピンを、単一の駆動用ピストンと直交させて、該駆動用ピストンの往復動をテコ機構及びカム機構を介して開閉できるようにして成ることを特徴とする射出成形機用サイドゲートバルブ装置。
【0010】
(2)前記カム機構は、駆動用ピストンの細径部とこの細径部の前後にテーパー部を介して形成される太径部とより成り、かつテコ機構は、中間で軸支されるアームの先端係止部と後端係止部とより成り、先端係止部にバルブピンの頭部を係合させて駆動用ピストンの細径部と太径部とに、アームの先端係止部のバルブピンの頭部と後端係止部が交互に係合することによりバルブピンがゲートに対して開閉できるようにして成ることを特徴とする前項(1)記載の射出成形機用サイドゲートバルブ装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動用ピストンの往復動に対して、バルブピンの開閉操作は、90°直交して行わせているので、成形品の横にゲートを設けることができ、完全なランナレス成形を可能とすると共に、バルブピンの開閉操作は、駆動用ピストンに設けられるカム機構と係合するテコ機構により90°直交させることができ、しかもゲートピンは、駆動用ピストンのカム機構に対して互いに相対向して反対方向にテコ機構を配設することにより、同一の駆動用ピストンの往復動に同期して二方向の射出成形を行わせることができるという効果を有する。
【0012】
さらに、テコ機構は、軸支されるアームの先端係止部と後端係止部の駆動用ピストンのカム機構の細径部と太径部との交互の係止変動を可能としているので、先端係止部と係合されているゲートピンによるゲートの開閉操作を射出成形操作と同期させて常に適切なランナレス成形作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る射出成形機用サイドゲートバルブ装置の一実施例を示す斜視図
【図2】図1の作動状態を示す平面説明図であって、(a)はバルブ開の状態を示す図、(b)はバルブ閉の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0015】
図面において、1は射出成形機に設けられる駆動用ピストン、2はピストン杆であって、先端部に近く、細径部3とこの細径部3の前後にテーパー面4,4を介して太径部5,5を備える。図示ではピストン杆2自体の杆径を有する部位を太径部5とし、この太径部5より径の長さが小さい部位を細径部3として形成し、両部3,5を繋ぐ面にテーパー面4,4を形成している。そして、この細径部3、太径部5並びにテーパー面4,4をカム機構Aとしている。
【0016】
6は軸7で枢支されるテコ用のアーム、8はアーム6の先端係止部で、バルブピン9の頭部9aを係止している。10はアーム6の後端係止部を示し、後端係止部10と前記先端係止部8はアーム6を介してテコ機構Bを構成している。そして、前記バルブピン9は、キャビティに通ずるゲートを開閉して射出された溶融樹脂をランナ流路11を介して射出成形操作の都度、連動同期させて供給している。
【0017】
さらに、このテコ機構Bは、駆動用ピストン1のピストン杆2を挟んで反対側にも相対向して配設して2つのバルブピン9,9を同時に作動できる構成として示してある。
【0018】
なお、テコ機構Bのアーム6の先端係止部8のバルブピン9の頭部9a及び後端係止部10は、いずれかがピストン杆2の太径部5又は細径部3と当接して、軸7を支点として可傾変動してバルブピン9をゲートに対して接離してゲートの開閉が行われるものである。
【0019】
太径部5及び細径部3との境界にはテーパー面4,4が設けてあるのでテコ機構Bの後端係止部10,先端係止部8のバルブピン9の頭部9aの摺動は円滑に無理なく行われる。
【0020】
叙上の構成の下に図2(a),(b)を参考にして作用を説明する。射出成形操作に連動して駆動用ピストン1が矢符方向Xに移動すると、ピストン杆2も従動し、テコ機構Bの後端係止部10は、ピストン杆2の太径部5に杠上され、他方先端係止部8のバルブピン9の頭部9aは滑落し、これによりバルブピン9はゲートより開いた矢符方向Pに移動して溶融樹脂のキャビティへの注入操作が行われる。
【0021】
ついで、射出操作終了後は駆動用ピストン1は矢符方向Yに帰動するので、テコ機構Bのアーム6の後端係止部10はテーパー面4より滑動し、細径部3上に落下すると共に、アーム6の先端係止部8のバルブピン9の頭部9aはテーパー面4を滑動して上行し、太径部5上に達し、バルブピン9は矢符方向Qに傾動し、その結果バルブピン9はバルブを閉じて射出操作を完了する。
【0022】
射出成形操作と連動する駆動用ピストン1の往復作動によりキャビティに通ずるゲートを開閉するバルブピン9は駆動用ピストン1の駆動方向と90°直角に曲折した状態で作動させることができ、しかも駆動用ピストン1のピストン杆2を挟んで相対向した横方向で双方向でのバルブピン9,9の往復開閉操作を有効に行わせることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 駆動用ピストン
2 ピストン杆
3 細径部
4 テーパー面
5 太径部
6 アーム
7 軸
8 先端係止部
9 バルブピン
9a 頭部
10 後端係止部
11 ランナ流路
A カム機構
B テコ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の操作の都度、一以上のキャビティの一以上のゲートを開閉する一以上のバルブピンを、駆動用ピストンと直交させて、該駆動用ピストンの往復動をテコ機構及びカム機構を介して開閉できるようにして成ることを特徴とする射出成形機用サイドゲートバルブ装置。
【請求項2】
前記カム機構は、駆動用ピストンの細径部とこの細径部の前後にテーパー部を介して形成される太径部とより成り、かつテコ機構は、中間で軸支されるアームの先端係止部と後端係止部とより成り、先端係止部にバルブピンの頭部を係合させて駆動用ピストンの細径部と太径部とに、アームの先端係止部のバルブピンの頭部と後端係止部が交互に係合することによりバルブピンがゲートに対して開閉できるようにして成ることを特徴とする請求項1記載の射出成形機用サイドゲートバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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