説明

射出成形機

【課題】既存の射出成形機にも容易に適用でき、耐久性を備えているにも拘わらず、確実に射出ノズルのハナタレ現象を防止できる射出ノズルを提供する。
【解決手段】
射出ノズル(N)の先端部近傍の位置において、射出ノズル(N)内に空気あるいは液体のような冷却流体が流れる冷却流体路(24、22、21、23、25)を形成する。この冷却流体路(24、…)に冷却媒体を送ると、射出ノズル(N)内の溶融樹脂の温度がわずか低下し、粘度が上昇する。これによって溶融樹脂の流動抵抗は増して、ハナタレ現象が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出ユニットと型締ユニットからなる射出成形機に関するもので、換言するとスクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている加熱シリンダの先端部に取り付けられている射出ノズルの構造あるいは加熱シリンダの先端部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品は、色々な方法により成形されているが、射出成形法によっても成形されている。射出成形方法の実施に使用される射出成形機は従来周知のように、射出ユニットと型締ユニットから構成されている。射出ユニットは、加熱シリンダ、該シリンダの先端部に取り付けられている射出ノズル、加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ等から構成されている。一方、型締ユニットはキャビティが形成されている金型、これらの金型を型締めする型締装置等からなっている。したがって、射出ユニットのスクリュを回転駆動して成形材料を可塑化し、そして型締された金型のスプルブッシュに所定のタッチ力で射出ノズルを当接して、スクリュを軸方向に駆動すると、可塑化された溶融成形材料は金型のキャビティに射出充填される。ある程度の冷却固化を待って金型を開くと成形品が得られる。以下同様にして所定の成形サイクルで成形品を得ることができる。
【0003】
ところで、射出ノズルが下方に開口している竪型射出成形機や、粘性の小さい成形材料を使用している場合には、溶融成形材料が射出ノズルの先端から洩れ出すことがある。いわゆるハナタレ現象を起こし易い。そこで、射出ノズルには、一般にシャットオフ弁あるいはシャットオフバルブが設けられている。これらのバルブは特許文献1、2にも示されているように、機械式バルブであり、概略的にはノズル孔に進入して閉鎖し、待避して開通するバルブニードルからなっている。あるいは、所定の回転角度位置ではノズル孔を遮断し、他の位置では開口するロータリバルブからなっている。このような機械式なバルブによってもハナタレ現象を抑えることはできる。しかしながら、機械式バルブは、ノズル孔のような固定部材と、この固定部材に対して摺動するニードルのような摺動部材とからなっているので、精密加工が要求され高価である。また、摺動部分からの溶融成形材料の洩れの問題、摺動部分のカジリにより耐久性の問題等も抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−370256号
【特許文献2】特開2006−035686号
【特許文献3】特開平 6−297529号
【0005】
特許文献3により、空冷あるいは液冷によって溶融樹脂の温度を調節してハナタレ現象を防止する方法が提案されている。すなわち、金型のスプルーブッシュと射出ノズルの先端部との間にロケートブッシュを介在させ、このロケートブッシュの温度を空冷あるいは液冷によって調節する射出成形機が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記射出成形機によると、機械的な摺動部分がないので、特許文献1、2に記載のようなバルブの欠点はないが、解決すべき問題はある。例えば、射出ノズルの先端部がロケートブッシュに直接接触しているにしても、ロケートブッシュは射出ノズルに対しては外部機器であり、外部機器の温度調節によってハナタレを効果的に防止できるとは認め難い。溶融樹脂の温度が低下し、粘度が大きくなっても、射出ノズルの先端部の出口において粘度が大きくなるだけで、先端部の出口では粘性が大きくなった溶融樹脂の流れ抵抗を受ける流路がもはや存在しないので、粘性が大きくなっても射出ノズルから洩れると思われる。溶融樹脂の流れが止まるのは、ロケートブッシュ内の流路に達してからと思われる。また、射出ノズルの先端部の温度が調節されるにしてもロケートリングを介した間接的な調節であり、熱応答性は悪く、ハイ成形サイクルには適用できない可能性もある。さらには、ロケートブッシュが複雑、大型化する欠点もある。さらに射出装置を後退させて射出ノズルをロケートブッシュから離間させると温度調節することができなくなるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記したような問題に鑑みてなされたもので、具体的には機械的な摺動あるいは摩擦部分はなく、したがって耐用年数は長く、しかも確実に射出ノズルのハナタレを防止できる射出ノズルを提供することを目的としている。また、先端部近傍が格別に大型化することがない、さらには既存の射出成形機にも容易に適用できる射出ノズルを提供することも目的としている。また、ハイ成形サイクルにも適用できる射出ノズルを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
溶融樹脂の粘度は、僅かな温度の変化により変化する。そこで、本発明は射出ノズル内の溶融樹脂の温度あるいは加熱シリンダの先端部の温度を僅かに変化するように構成することにより発明の目的が達成される。すなわち、本発明は上記目的を達成するために、射出ノズルの先端部近傍の位置において、射出ノズル内に空気あるいは液体のような冷却流体が流れる冷却流体路が形成される。この冷却流体路に冷却媒体が送られると、射出ノズル内の溶融樹脂の温度が低下し、したがって粘度は上がり、流動抵抗は増す。流動抵抗が増すので、所定距離のノズル孔を通過することができず、ハナタレ現象が防止される。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、スクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている加熱シリンダの先端部に射出ノズルが取り付けられている射出成形機において、前記射出ノズルの先端部近傍の、バンドヒータが設けられている外周部と、溶融樹脂通路となっている内周部との間は所定の肉厚部となっており、該肉厚部には冷却用の流体が流れる冷却流体路が形成されるように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機において、前記射出ノズルが前記加熱シリンダの先端部に取り付けられているノズル本体と、該ノズル本体にネジ機構により取り付けられているノズルチップとからなり、前記冷却流体路が前記ネジ機構のねじ山の一部を切り落とすようにして形成されている。請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の射出成形機において、前記冷却流体路が前記溶融樹脂通路の周りに複数個形成され、そして請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の射出成形機において、前記冷却流体路は軸方向に所定長さにわたって形成され、溶融樹脂の流れ方向と同じ方向に冷却用流体が流されるように構成される。
【0010】
請求項5に記載の発明は、スクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている加熱シリンダの先端部に射出ノズルが取り付けられている射出成形機において、前記射出ノズルの先端部から所定距離だけ前記加熱シリンダ側に寄った位置の、前記加熱シリンダの先端部のバンドヒータが設けられている外周部と、溶融樹脂通路となっている内周部との間には冷却用の流体が流れる冷却流体路が軸方向に所定長さにわたって形成されるように構成される。請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の射出成形機において、前記冷却流体路は角度的に実質的に180°の間隔をおいて形成されている冷却流体往路と冷却流体復路と、前記射出ノズル側に形成され、前記冷却流体往路と冷却流体復路とに連通し、そして請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の射出成形機において、前記冷却流体復路にはインジェクタが接続されるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によると、スクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている加熱シリンダの先端部に射出ノズルが取り付けられている射出成形機において、射出ノズルの先端部近傍の、バンドヒータが設けられている外周部と、溶融樹脂通路となっている内周部との間は所定の肉厚部となっており、該肉厚部には冷却用の流体が流れる冷却流体路が形成されている。従って冷却流体路に流体を流すと、射出ノズルの先端部は冷却される。これによって射出ノズルの先端部近傍の溶融樹脂の温度をわずかに低下させることができ、溶融樹脂の粘性を上昇させ、それによってハナタレ現象を防止することができる。また射出ノズルが加熱シリンダの先端部に取り付けられているノズル本体と、該ノズル本体にネジ機構により取り付けられているノズルチップとからなる射出成形機における他の発明によると、冷却流体路がネジ機構のねじ山の一部を切り落とすようにして形成されているので、容易に冷却流体路を形成することができるという効果が得られる。そして冷却流体路が溶融樹脂通路の周りに複数個形成されている発明によると、速やかにかつ均一に溶融樹脂を冷却することが可能になる。また冷却流体路は軸方向に所定長さにわたって形成され、溶融樹脂の流れ方向と同じ方向に冷却用流体が流されるようになっている発明によると、溶融樹脂通路を所定の長さにわたって効率よく冷却することができるので、確実にハナタレ現象を防止出来る効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る射出ノズルを示す図で、その(ア)は上半分を断面にして示す正面図、その(イ)は(ア)において(イ)−(イ)で切った断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す図で、その(ア)は第2の実施の形態に係る射出ノズルを、その(イ)は第3の実施の形態に係る射出ノズルを上半分を断面にしてそれぞれ示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施の形態に係る射出ノズルNは、図1に示されているように、ノズル本体1と、ノズルチップ10とからなっている。そして、ノズル本体1が加熱シリンダの先端部のシリンダヘッド部30に取り付けられている。このように、本実施の形態に係る射出ノズルNの外部形状は従来周知のノズルと実質的に同じになっている。したがって後述するように、既存の射出ノズルにも容易に再加工して適用できることになる。
【0014】
加熱シリンダは、軸方向に所定長さを有し、後端部には射出材料供給孔が設けられ、先端部はシリンダヘッド部30となっている。シリンダヘッド部30は、加熱シリンダに取り付けられる大径のフランジ部31と、このフランジ部31よりも小径の軸部32とから全体として略円筒状に形成されている。そして、軸部32の先端部の内周面にはノズル本体1がネジ込まれる雌ネジ33、33が2段に形成され、軸部32の外周部には加熱用のバンドヒータ34が設けられている。また、軸部32のフランジ部31寄りには、溶融樹脂の温度を検出し、バンドヒータ34の発熱温度を制御する温度センサ35が設けられている。このように構成されているシリンダヘッド部30の軸心には、加熱シリンダのボアに整合する溶融樹脂通路37が形成されている。なお、加熱シリンダのボア内には従来周知の形態をしてスクリュ36が軸方向と回転方向とに駆動可能に設けられている。
【0015】
ノズル本体1も略円筒状に構成され、後端部の外周部には、シリンダヘッド部30の雌ネジ33、33に螺合する雄ネジ3、3が形成され、先端部の内周面にはノズルチップ10が螺合する雌ネジ2が形成されている。この雌ネジ2は、軸方向に所定長さを有する。また、ノズル本体1の外周部には、周知のように加熱用のバンドヒータ4が取り付けられている。前記雌ネジ2、2と雄ネジ3との間の外周部が工具のスパナが係合するナット部5となっている。ノズル本体1の軸芯にも、シリンダヘッド部30の溶融樹脂通路37と整合した第1の溶融樹脂通路7が形成されている。
【0016】
ノズルチップ10も略円筒状を呈し、その後端部の外周部には、ノズル本体1の雌ネジ2に螺合する雄ネジ12が形成され、先端部が図示されない金型のロケートリングにタッチするノズル部11となっている。ノズル部11の後方の外周部はスパナが係合するナット部15となっている。このノズルチップ10の外周部にも加熱用のバンドヒータ14が設けられている。第1の溶融樹脂通路7の先端部はテーパ状に絞られ、ノズルチップ10の軸心に形成されている第2の溶融樹脂通路17に連なっている。第2の溶融樹脂通路17は、周知のように、ノズル部11においてさらに絞られている。
【0017】
本実施の形態によると、ノズル部11の先端部から、射出ノズルNの大きさにもよるが、例えば5〜10mmの距離Lをおいて、冷却流体路が軸方向に形成されている。冷却流体路は、本実施の形態では前記した雌ネジ2と雄ネジ12にわたって形成されている第1の冷却流体路21と、ノズル本体1に軸方向に形成されている第2の冷却流体路22と、ノズル本体1とノズルチップ10とにわたって同様に軸方向に形成されている第3の冷却流体路23とからなっている。これらの冷却流体路21、22、23の数は、限定はされないが、本実施の形態によると、図1の(ア)および(イ)において下方にも示されているように、もう1本の冷却流体路21’、22’、23’も形成され、全体として2本形成されている。以下、さらに詳しく説明すると、ノズル本体1の雌ネジ2の山を切り欠いて、これによって軸方向に所定幅の溝8が形成され、同様にノズルチップ10の雄ネジ12の山を切り欠いて、軸方向に所定幅の溝18が形成されている。これらの溝8、18は、ノズル本体1の雌ネジ2にノズルチップ10の雄ネジ12をネジ込むと、図1の(イ)に模式的に示されているように整合し、閉鎖された空間すなわち第1の冷却流体路21が構成される。ネジ込んで締め付けるとき、締め付け量により溝8、18の位置が多少ずれても、溝8、18は所定幅に形成されているので、重なり合う部分すなわち第1の冷却流体路21を構成する部分が存在し、冷却流体路21は確保される。あるいは、締め付けるとき、ノズル本体1とノズルチップ10の突き合わせ端面6、16に所定厚さのシムなどを介在させて、溝8、18を合わせることができるようになっている。
【0018】
第1の冷却流体路21に整合する第2の冷却流体路22は、ノズル本体1の突き合わせ端面6から加熱シリンダの方向に穴加工することにより形成されている。そして、この第2の冷却流体路22に突き当たるようにして、ノズル本体1の外周部から供給路24が形成されている。本実施の形態によると、第3の冷却流体路23は、ノズル本体1あるいはノズルチップ10に、またはこれら両部材1、10にまたがって、第1の冷却流体路21に整合するようにノズル部11の方へ形成されている。この第3の冷却流体路23に突き当たるようにして、ノズル本体1とノズルチップ10の突き合わせ面の外周部から排出路25が形成されている。
【0019】
排出路25は、図には示されていないが所定の排出路管が接続されている。この排出路管は、比較的長い流体管の途中に丁字形に接続されている。この流体管にはポンプが設けられ、ポンプを駆動すると流体管内を空気が流れ、それによって排出路管にわずかに負圧が生じる。これによって空気が冷却流体路を流れる。すなわち空気は供給路24から吸い込まれ、第2の冷却流体路22、第1の冷却流体路21、そして第3の冷却流体路23を流れ、排出路25から排出されることになる。従って射出ノズルNの先端部近傍の温度、すなわち溶融樹脂温度をわずかに低下させることができる。本実施の形態においては、このように温度調整していない外気を冷却流体路に通すようにしているが、温度調整した液体を流すようにしてもよい。つまり供給路24に供給管を、排出路25には排出管を接続し、供給管から温度調整した液体を供給するようにしても、同様に溶融樹脂の温度を低下させることができる。
【0020】
次に、上記実施の形態の作用について説明する。前記したように本実施の形態に係る射出ノズルNは、全体としては従来周知の射出ノズルと略同じように製作される。そして、ノズル本体1の雌ネジ2のネジ山を切り落とすようにして軸方向に所定幅の溝8を形成する。また、ノズルチップ10の雄ネジ12のネジ山を切り落とすようにして軸方向に所定幅の溝18を形成する。このとき、これらの溝8、18は、ノズル本体1にノズルチップ10をネジ込んで取り付けるとき整合する位置に形成する。なお前述したように、溝8、18を所定幅に形成しておけば位置が多少ずれても、あるいはシムで調節するようにしておけば、問題はない。
【0021】
ノズル本体1の溝8とノズルチップ10の溝18とにより構成される第1の冷却流体路21に整合するようにして、ノズル本体1の突き合わせ端面6から軸方向に、錐加工により第2の冷却流体路22を開ける。また、ノズル本体1の外周部から穴加工して供給路24を第2の冷却流体路22に達するように開ける。さらには、第1の冷却流体路21に整合するようにして、ノズル本体1とノズルチップ10とにわたって軸方向に、第3の冷却流体路23を開ける。また、ノズル本体1とノズルチップ10の接合部の外周部から穴加工して排出路25を第3の冷却流体路23に達するように開ける。以上の説明からも明らかなように、既存の射出ノズルにも同様にして冷却流体路を形成することができる。そして、シリンダヘッド部30にノズル本体1とノズルチップ10を取り付け、図1に示されているように組み立てる。
【0022】
上記のようにして組み立てられた射出ノズルNを使用して従来周知のようにして溶融樹脂を金型のキャビティに射出充填し、そして冷却固化を待って金型を開いて成形品を得る。このとき、射出充填の完了後に所定時間ポンプを駆動する。そうすると空気が第2の冷却流体路22、22’、第1の冷却流体路21、21’および第3の冷却流体路23、23’を流れる。溶融樹脂の温度がわずかに下がり、これにより粘度が上がり流動性が低下する。そうすると、溶融樹脂は長さLの樹脂通路17を流れない。すなわち、溶融樹脂は樹脂通路17内に滞留し、ハナタレが防止される。このとき溶融樹脂は、粘性抵抗により若干流れにくくなっているだけで、プラグすなわち「栓」は形成されていない。従って次回の射出充填時に、溶融樹脂を射出しても成形不良は生じることはない。しかしながら次回の射出充填に備えて、ポンプの駆動を停止して、バンドヒータ14によって射出ノズルNの温度を上げるようにしてもよい。そうすると、溶融樹脂の温度が上がり、抵抗が減少して溶融樹脂が流れやすくなり確実に成形不良を防止することができる。以下、同様にして成形する。
【0023】
図2により、本発明の第2、第3の実施の形態を説明する。図2の(ア)に示されている第2の実施の形態によると、加熱シリンダ40の先端部に直接ノズル本体50が取り付けられている。すなわち、加熱シリンダ40の先端部の内周部には雌ネジ41が形成され、この雌ネジ41にノズル本体50の後端部に形成されている雄ネジ51がネジ込まれている。ノズル本体50の突き合わせ端面52には、所定深さの、所定径のリング状溝53が形成されている。一方、加熱シリンダ40の突き合わせ端面42からは、リング状溝53に整合して軸方向に冷却流体往路43と、冷却流体復路44とが、例えば錐により穴加工されている。これらの冷却流体往復路43、44は、角度的に180°離間している。したがって、冷却流体往路43に供給される冷却流体はリング状溝53を半周して冷却流体復路44から外部へ排出される。これらの流体往復路43、44のそれぞれに達するようにして、加熱シリンダ40の外周部から流体給排路45、46が開けられている。本実施の形態によると、冷却流体排出路46はインジェクタ48に接続されている。したがって、インジェクタ48に例えば空気を流すと、その絞り部は負圧になり、冷却流体が吸引される。これにより冷却空気の供給、停止ができる。本実施の形態によっても、流体往復路43、44は、ノズル本体50の先端部から距離Lだけ後方に寄った位置から軸方向に所定長さに形成されているので、第1の実施の形態と同様な効果が得られることは明らかである。また、本実施の形態によると、流体往復路43、44は溶融樹脂通路37に近寄って形成されているので、熱応答性は向上している。なお、図2の(ア)中の符号49は、加熱シリンダ40の先端部の外周部に取り付けられているバンドヒータを示している。
【0024】
図2の(イ)に第3の実施の形態が示されている。上記第2の実施の形態の構成部材と同じような部材には同じ参照数字を付け、あるいは同じ参照数字にダッシュ「’」を付け重複説明はしない。本実施の形態によると、加熱シリンダ40’の先端部は段状に縮径され、所定肉厚の縮径部40”となっている。そして、縮径部40”の外周部に雄ネジ41’が形成されている。この雄ネジ41’にノズル本体50’の内周部に形成されている雌ネジ51’が螺合している。本実施の形態によると、ノズル本体50’の突き合わせ端面52’側には、前記第2の実施の形態と同様に所定深さのリング状溝53’が形成されている。一方、加熱シリンダ40’の突き合わせ端面42’からは、リング状溝53’に整合して軸方向に冷却流体往路43’と、冷却流体復路44’とが例えば錐加工されている。これらの冷却流体往復路43’、44’は、角度的に180°離間している。したがって、冷却流体往路43’に供給される冷却流体はリング状溝53’を半周して冷却流体復路44’から外部へ排出される。これらの流体往復路43’、44’に達するようにして、加熱シリンダ40’の外周部から冷却流体給排路45’、46’が開けられている。本実施の形態でも、冷却流体排路46’にはインジェクタ48’が接続されている。本実施の形態によっても、前記実施の形態と略同様に作用し、そして同様な効果が得られる。
【0025】
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば上記で説明した冷却流体路のそれぞれは分岐のない流路になっているが、射出ノズルNの内部で分岐していてもよい。具体的には射出ノズルNの先端部近傍に、出口の無い、いわゆるメクラ穴のような細い有底穴を軸方向に複数本明け、これらの有底穴の開口部を冷却流体路に連通させるようにする。そうすると空気が冷却流体路を流れるとき、これらの有底穴にもわずかに空気が入り込み、射出ノズルNの先端部近傍を冷却することができる。このような有底穴も冷却流体路の一部と言うことができる。
【符号の説明】
【0026】
N 射出ノズル 1 ノズル本体
2 雌ネジ 3 雄ネジ
8 溝 10 ノズルチップ
17 樹脂通路 18 溝
21 第1の冷却流体路 24 供給路
25 排出路 30 シリンダヘッド部
40、40’ 加熱シリンダ 43、43’ 冷却流体往路
44、44’ 冷却流体復路 45、45’ 冷却流体供給路
46、46’ 冷却流体排出路 48、48’ インジェクタ
50、50’ ノズル本体 53、53’ リング状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている加熱シリンダの先端部に射出ノズルが取り付けられている射出成形機において、
前記射出ノズルの先端部近傍の、バンドヒータが設けられている外周部と、溶融樹脂通路となっている内周部との間は所定の肉厚部となっており、該肉厚部には冷却用の流体が流れる冷却流体路が形成されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、前記射出ノズルが前記加熱シリンダの先端部に取り付けられているノズル本体と、該ノズル本体にネジ機構により取り付けられているノズルチップとからなり、前記冷却流体路が前記ネジ機構のねじ山の一部を切り落とすようにして形成されている射出成形機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の射出成形機において、前記冷却流体路が前記溶融樹脂通路の周りに複数個形成されている射出成形機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の射出成形機において、前記冷却流体路は軸方向に所定長さにわたって形成され、溶融樹脂の流れ方向と同じ方向に冷却用流体が流されるようになっている射出成形機。
【請求項5】
スクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている加熱シリンダの先端部に射出ノズルが取り付けられている射出成形機において、
前記射出ノズルの先端部から所定距離だけ前記加熱シリンダ側に寄った位置の、前記加熱シリンダの先端部のバンドヒータが設けられている外周部と、溶融樹脂通路となっている内周部との間には冷却用の流体が流れる冷却流体路が軸方向に所定長さにわたって形成されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項6】
請求項5に記載の射出成形機において、前記冷却流体路は角度的に実質的に180°の間隔をおいて形成されている冷却流体往路と冷却流体復路と、前記射出ノズル側に形成され、前記冷却流体往路と冷却流体復路とに連通しているリング状溝とからなる射出成形機。
【請求項7】
請求項5または6に記載の射出成形機において、前記冷却流体復路にはインジェクタが接続されている射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−183738(P2012−183738A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48655(P2011−48655)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】