説明

射出成形用の熱制御金型及びその製造方法

【課題】形状に厚肉部や薄肉部といった凹凸のある成形部品の射出成形時に、金型温度を従来よりも下げつつ、かつ、溶融樹脂に対する冷却速度を容易に均一にすることによって、転写性及び成形サイクルのタクトを向上させることができる熱制御金型の構造を工夫することであり、また上記熱制御金型の製造方法を提供する。
【解決手段】第1金属層A1と第2金属層A2の間に、前記金属層よりも低熱伝導の熱制御層を挟んだ構造を有する射出成形用の熱制御金型A,Bであって、射出成形装置に装着される第1金属層上に熱制御金型A,Bの転写用凹形状又は凸形状に準じる凹形状部又は凸形状部を有し、上記熱制御金型A,Bの第1金属層上に、低熱伝導耐熱樹脂30のワニスを塗布して形成された熱制御層があり、上記熱制御層の表面に導電層40を介して第2金属層が積層されており、上記第2金属層の樹脂成形面が凹形状又は凸形状の転写面であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプラスチック製回折レンズなどの高性能プラスチック品の射出成形用金型、殊にそのコア金型に関するものであり、熱伝導をコントロールして成型品の要部の冷却速度を均等化し、これによってタクトを短縮して生産性を向上させ、熱歪みを小さくして成形精度を向上させることができるものである。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ等の光学素子、薄肉導光板などの高品質成型品を射出成形するときは、冷却が均等でないと熱歪みを生じるなどのために成形精度が低下する。
他方、成形体全体の冷却を緩やかにすることによってその熱歪みを抑制できるがそうするとタクトが長くなる。
また、タクトを短縮するために樹脂の充填温度を下げると、流動性が低下して微小キャビティに充填率が低下して成形精度が低下する。
成形体の表面の微細凹凸が高密度でこれが転写成形される場合は、この表面の微細凹凸の成形精度が低下し、その製品の品質を損なうことになる。これを防ぐために各部分の伝熱特性を加減(コントロール)することが一般的に知られており、その一例が下記特許文献1、特許文献2に記載されている。
また、関連する従来技術として、特許文献3,特許文献4、特許文献5、特許文献6,特許文献7に記載されているものがある。
【0003】
〔従来技術1〕
この従来技術1は特許文献1に記載されているものであり、面状光源用偏肉導光板を射出成形する方法において、金属から成る金型の型キャビティを構成する型壁面に断熱層を被覆した断熱層被覆金型を用いて、上記断熱層の厚さを成形品の部分的な厚さの違いに応じて部分的に違えることで各部の熱伝導性を調整し、全体の冷却を均等にして熱歪みを低減するものである。これは薄型・大画面の面状光源用偏肉導光板を射出成形する金型であり、図10に示すように断面三角形の成形品の斜面に凹凸を転写成形するものであり、可動金型102に装着されたコア金型103にポリイミド樹脂製の断面三角形の熱制御層(断熱層)104を重ね、さらに、熱制御層104に金属層105が重ねられていて、当該金属層105の表面が転写用微細な粗面になっており、可動金型102、固定金型101、金属層105によって射出成形用のキャビティ106が形成されている。そして、断面三角形の熱制御層104は、キャビティ106の厚肉部で薄く、キャビティ106の薄肉部で厚い構造になっている。
そして、金属層105の粗面の凹凸は、キャビティ106の厚肉部から薄肉部に向かって密になっている。
以上のように、成形品を効率よく、高品精度で成形するために、熱制御層104の厚さを違えて、キャビティ106による成形品の冷却速度を厚肉部と薄肉部で均等化するという手段をとっているものである。
【0004】
〔従来技術2〕
特許文献2に記載されているものは従来技術2であり、その概要は、図11に示すものである。入れ子金型のキャビティを形成する面に断面形状の断熱層(熱制御層)を設けて、成形品の冷却を種々の目的に応じて様々に部分的にコントロールする(制御する)ものである。
すなわち、可動金型112にコア金型113を装着し、固定金型111とで射出成形用のキャビティ115を形成している成形金型について、キャビティが薄肉の領域(イ)に対応する面に熱制御層(断熱層)114を設け、コア金型113と熱制御層114とを薄い金属層116で被覆してあり、キャビティー115の薄肉の領域(イ)において厚いところから薄いところに向かって熱制御層114の厚さが厚くなっている。これにより、キャビティー厚肉部(図11の領域(ロ))において右側から注入されて薄い領域をその先端に向かって流れる樹脂から金型への伝熱が抑制され、キャビティの狭いところほどこの効果が高い。
以上、特許文献1、特許文献2に記載されているものにおいては、キャビティの狭い領域に達した樹脂が当該領域で冷却されてその流動性が急激に低下し充填率が低下することが防止されるものである。
【0005】
〔従来技術3〕
特許文献3に記載されているものは、金型内のキャビティにおいて対向する双方の面に一対のスタンパを装着し、該スタンパの少なくともいずれか一方に断熱材を内包した断熱スタンパにおいて、断熱効果を有する断熱材の膜厚が、半径方向で外周に向かうにつれて厚くなる膜厚分布を有することによって、断熱効果を半径方向で変化させ、転写性などの特性を向上させるというものである。
【0006】
〔従来技術4〕
特許文献4に記載されているものは、リング状の基板の外周側境界領域に第一、第二の凹溝と第一、第二の凸部を形成し、その内側の領域に水系塗布液を塗布する。この時塗布量不足を補うために第一凸部の外側に距離xだけ突出させた領域まで水系塗布液を塗布する。一部の塗布液は第一凸部を越えて流れるが、第二凸部でせき止められる。このようにして乾燥時にヒケや流動を抑制できるものである。
【0007】
〔従来技術5〕
特許文献5に記載されているものは、リング状の基板の外周側境界領域に第一、第二の凹溝と第一、第二の凸部を形成し、その内側の領域に水系塗布液を塗布する。この時塗布量不足を補うために境界領域で外側に十分膨らんだ塗膜を形成する。一部の塗布液は第一凸部を越えて流れるが、第二凸部でせき止められる。このようにして乾燥時にヒケや流動を抑制できる。
【0008】
〔従来技術6〕
特許文献6に記載されているものは、リング状のディスク基板に保護層を設け、該保護層の印刷面にはリング状をなす受理層の内周側境界部と外周側境界部に断面V字の凹溝を形成しているものであり、当該凹溝の深さは受理層の中央領域の膜厚と同等以上としている。塗布液を印刷面に塗布した後乾燥処理すると、前記凹溝の厚さによって先行乾燥が抑えられ、膜厚を均一化できる。なお、これは本願の請求項5に係る発明に比較的近いものである。
【0009】
〔従来技術7〕
特許文献7に記載されているものは、断熱スタンパ(熱制御金型)の第二金属層(成形用の転写面を持つ層)を、電解めっきによってCrとNiの積層構造で形成して硬度を高め、スタンパの耐久性を向上させるというものである。
【0010】
〔従来技術の問題点〕
上記従来技術1のものは、偏肉導光板を良好且つ効率良く成形するために、断熱層の厚さを変えるという手段を取っているものであるが、熱制御手段が熱制御層(断熱層)を転写面の下層に介在させ、各部の熱制御層の厚さを加減することで、各部の熱伝導性を調整しているもので、熱伝導性の微妙な調整が容易でなく、また、熱制御層上層の転写面が凹凸面である場合になおさら微妙な調整が容易でない。
また、上記従来技術2は、キャビティ厚と断熱層厚を制御して、偏肉成形品を良好且つ効率良く成形するという手段を取っているが、この場合も、従来技術1と同様に、局部的な熱伝導性の調整は熱制御層の厚さの調整によるほかはないので、熱伝導性を局部的に微妙に調整するのは容易でない。
また、従来技術3では、熱伝導材(断熱材)の厚さを場所によって変化させることによって断熱効果を理想的にしているが、断熱層を形成するための現在実用化されている方法(スピンコート、蒸着、スパッタリング、複合めっき、等)で断熱材の厚さを部位によって変えるのは容易ではなく、まして理想的な厚さ分布を実際に形成することは非常に困難なことである。
【0011】
さらに、従来技術4、従来技術5、従来技術6では、半径数cm以上の面積のある円形の場合には有効であるが、四角形などの角のある形状や、数cm以下の微小な面積の場合には、乾燥ヒケによる膜厚変動を防ぐことは困難である。
さらに、従来技術7では、熱制御金型の耐久性を高める特許であるが、熱制御金型の熱伝導率は場所によらず一定であるため、厚さの異なる成形品の射出成形では厚肉部と薄肉部の冷却時間が異なってくるため、良好且つ効率良く成形するのが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明は、形状に厚肉部や薄肉部といった凹凸のある成形部品の射出成形時に、金型温度を従来よりも下げつつ、かつ、溶融樹脂に対する冷却速度を容易に均一にすることによって、転写性及び成形サイクルのタクトを向上させることができる熱制御金型の構造を工夫することであり、また上記熱制御金型の製造方法を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔熱制御金型の発明の手段〕
熱制御金型の発明の手段は次の(イ)〜(ホ)のとおりである。
(イ)第1金属層と第2金属層の間に、前記金属層よりも低熱伝導の熱制御層を挟んだ構造を有する射出成形用の熱制御金型A,Bであって、
(ロ)射出成形装置に装着される第1金属層上に熱制御金型A,Bの転写用凹形状又は凸形状に準じる凹形状部又は凸形状部を有し、
(ハ)上記熱制御金型A,Bの第1金属層上に、低熱伝導耐熱樹脂のワニスを塗布して形成された熱制御層があり、
(ニ)上記熱制御層の表面に導電層を介して第2金属層が積層されており、
(ホ)上記第2金属層の樹脂成形面が凹形状又は凸形状の転写面であること。
【0014】
さらに、上記の熱制御金型については、次の(ヘ)のようにすることができる(請求項2)。
(ヘ)上記第1金属層上の凹形状部又は凸形状部が凹形状曲面部又は凸形状曲面部であり、上記凸形状の転写面に階段状の成形パターンがあること。
【0015】
〔熱制御金型の製造方法の発明の手段〕(請求項3)
熱制御金型の製造方法の発明は次の(a)〜(f)のとおりである(請求項3)。
(a)第1金属層と第2金属層の間に、前記金属層よりも低熱伝導の熱制御層を挟んだ構造を有する射出成形用の熱制御金型A,Bの製造方法であって、
(b)射出成形装置の取付け板に装着される第1金属層上に熱制御金型A,Bの転写用凹形状又は凸形状に準じる凹形状又は凸形状を形成し、
(c)上記熱制御金型A,Bの第1金属層上に低熱伝導耐熱樹脂のワニスを塗布して加熱乾燥させて熱制御層を形成し、
(d)次に上記熱制御層の表面に導電層を形成し、
(e)その後に当該導電層上に電解めっきで第2金属層を形成し、
(f)上記第2金属層の樹脂成形面に転写用凹形状又は凸形状を形成すること。
【0016】
さらに、上記金属金型の製造方法については、次の(g)のようにすることもできる(請求項4)。
(g)上記第1金属層上の凹形状部又は凸形状部が凹状曲面部又は凸状曲面部であり、上記第2金属層上の凸形状の樹脂成形面に階段状の成形パターンを形成すること。
【0017】
さらに、上記金属金型の製造方法について、次の(イ)〜(ハ)のようにすることができる(請求項5)。
(イ)上記第一金属層の上面に、金型転写面積より大きな面積で且つ樹脂熱制御層を超える深さの液溜まり部を形成し、
(ロ)該液溜まり部に前記溶剤に溶解させた状態の低熱伝導耐熱樹脂のワニスを所望の量吐出させてから、溶媒を乾燥除去して樹脂層を形成し、
(ハ)その後溶媒乾燥除去時のヒケによって盛り上がった樹脂層と液溜まり部の外周部壁面を一緒に削り、樹脂熱制御層表面を平坦にすること。
さらに、次の(ニ)によるようにすることができる(請求項6)。
(ニ)上記液溜まり部外周部の深さの最浅部をd、所望の樹脂熱制御層深さをD、樹脂ワニスの溶媒分をPvol%、とするとき、
1.5×(D/(100−P)×0.01)>d>D/(100−P)×0.01
の関係となるように、液溜まり部深さdを規定したこと。
【発明の効果】
【0018】
この発明の効果を請求項毎に整理すれば次のとおりである。
〔請求項1に係る発明〕
請求項1に係る発明(上記「熱制御金型の発明の手段」)は、第1金属層と第2金属層との間に断熱性の高い熱制御層を介在させているので、上記熱制御層の厚さを成形部品の厚肉部に当接する部分は薄く、薄肉部に当接する部分は厚くという具合に容易に局部的にその厚さを加減することができ、第1金属層と熱制御層の両方による熱制御機能があり、両者の組み合わせで局部的な熱伝達性を自在に微妙にコントロール(制御又は調節)することができる。
これによって、成形部品の厚肉部と薄肉部の冷却速度を微細に調整してほぼ均等にすることができる。したがって、成形品の熱歪みを低減し、成形部品の複屈折や機械特性といった転写性を向上させることができ、さらに、微細パターンの末端における樹脂流動性の低下が低減されるので、従来に比して金型温度を大幅に下げることができ、これにより、成形タクトを短縮することができる。
また、上記熱制御金型によって製造された成形部品は熱歪みが少なく、転写成形精度が高いので高品質である。
【0019】
〔請求項2に係る発明に効果〕
請求項2に係る発明は、特に第一金属層上の凸形状の上の第二金属層に、凸形状の階段状成形パターンを形成してあるから、次の特有の効果を奏する。
すなわち、第二金属層の凸形状に準じる凸形状が第一金属層上に形成されているので、転写形状の高さの違いからくる第二金属層の厚さの違いによる冷却状態の変化を、熱制御層と第一金属層の厚さがを調整しているので、転写性にばらつきが出ず、良好な転写性を得ることができる。
【0020】
〔請求項3に係る発明〕
上記請求項3に係る発明(上記「物を製造する方法の発明の手段」は、第一金属層上に凹形状または凸形状をあらかじめ形成してから低熱伝導耐熱樹脂のワニスによる熱制御層を形成しているのであるから、請求項1に係る発明の金型(所期の熱伝導性分布を備えた金型)を容易に且つ高精度に製造することができ、また、短いタクトで成形行程を繰り返すことができるから、生産性が高い。
さらに、細かな且つ複雑な転写形状にも対処可能である。
【0021】
〔請求項4に係る発明〕
請求項4に係る発明は、請求項3の製造方法の構成をとっているから、上記の効果の他に次の特有の効果を奏する。
すなわち、短い成形タクトで樹脂成形面に転写精度良く回折形状パターンを転写することが可能である。
【0022】
〔請求項5に係る発明〕
請求項5に係る発明は、第一金属層の上面に、金型転写面積より大きな面積で且つ樹脂熱制御層を超える深さの液溜まり部を形成し、該液溜まり部に前記溶剤に溶解させた状態の低熱伝導耐熱樹脂のワニスを所望の量吐出させてから、溶媒を乾燥除去して樹脂層を形成し、その後溶媒乾燥除去時のヒケによって盛り上がった樹脂層と液溜まり部の外周部壁面を一緒に削り樹脂熱制御層表面を平坦化しており、このため、樹脂熱制御層の厚さむらが抑えられ、光学、機械特性に優れた回折レンズを転写性良く成形可能な熱制御金型を製造できる。
【0023】
〔請求項6に係る発明〕
請求項6に係る発明は、液溜まり部外周部の深さの最浅部をd、所望の樹脂熱制御層深さをD、樹脂ワニスの溶媒分をPvol%とすると、
1.5×(D/(100−P)×0.01)>d>D/(100−P)×0.01
の関係となるように、液溜まり部深さdを規定しているので、乾燥硬化によって目減りする溶媒の量を見込んだ吐出量の樹脂ワニスを液溜まり部に吐出しても、樹脂ワニスが液溜まり部からあふれ出すことが無く、かつ次工程の液溜まり部端部の除去を効率良く短時間で行うことができる。
【0024】
〔請求項7に係る発明〕
請求項7に係る発明は、請求項1の熱制御金型を使用して射出成形を行っているのであるから、上記の効果の他に次の特有の効果を奏する。
すなわち、短い成形タクトで転写精度が良く、且つ光学、機械特性に優れた樹脂成形品を提供できる。
【0025】
〔請求項8に係る発明〕
請求項8に係る発明は、請求項1の熱制御金型を使用して回折レンズの射出成形を行っているから、上記の効果の他に次の特有の効果を奏する。
すなわち、短い成形タクトで転写精度が良く、且つ光学、機械特性に優れた回折レンズを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、実施例の金型で成形する回折レンズの平面図、(b)は、上記回折レンズの端面図、(c)は、上記回折レンズの側面図
【図2】は、金型Aの制作工程の前半を示す制作工程図
【図3】は、金型Bの制作工程の前半を示す制作工程図
【図4】は、金型Aの制作工程の後半を示す制作工程図
【図5】は、金型Bの制作工程の後半を示す制作工程図
【図6】は、金型A,Bによる射出成形装置の断面構造を模式的に示す断面図
【図7】は、金型A,Bの熱制御層の他の形成方法による制作工程図
【図8】は、図7の実施例における金型A,Bの断面図
【図9】は、図7の実施例による熱制御金型の断面図
【図10】は、従来技術の説明用断面図
【図11】は、他の従来技術の説明用断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明による熱制御金型の構成及び製造方法を、回折レンズの成形を次の実施例で説明する。
この実施例の回折レンズ1の概要は図1に示すとおりであり、その形状は、全体はシリンドリカルレンズ形状となっている。そして凹面側の短手方向に段々の段差状の回折形状パターンが刻まれている。凸面側は長手方向で直線形状で、短手方向で凸形状である。
【0028】
金型は、回折レンズ1の凹部2と凸部3を両側から挟み込むようにして成形するものであり、2個の熱制御金型Aと熱制御金型Bが1セットとして製作される。回折レンズ1の凹部2を成形するのが熱制御金型A(以下これを単に「金型A」という)であり、凸部3を成形するのが熱制御金型B(以下これを単に「金型B」という)である。回折レンズ1の具体的な寸法は、長手方向が約12mm、短手方向が約4mm、レンズ厚さが約3mm。段差パターンは、一段々々の高さが1.5μmである。そして、段差幅は、中心部で約200μmで端部に行くに従って段々と狭くなり、最端部で約10μmとなる。段差数は約100段程度となっており、全体としての凹部2の深さが約150μmである。回折レンズ1の凸部3は、曲率半径(R)が約25mmの非球面形状(円弧状)となっている。
金型Aは第1金属層A1、熱制御層30、第2金属層A2によるものであり(図4(c))、金型Bは第1金属層B1も同様に、第1金属層B1と断熱層30と第2金属層B2によるものである(図5(c))。これらの金型A,Bは次の1〜6の工程によって成形される。
【0029】
1.第1金属層A1,B1の形成:
射出成形装置に装着される第1金属層A1の上面に回折レンズ1の上面に回折レンズ1の凹部2に類似した凸部10を形成し(図2(a))、また金型Bの第1金属層B1の上面に回折レンズの凹面に類似している凹部20を形成する(図3(a))。上記第1金属層A1、第1金属層B1の材質は加工性に優れ、硬度が比較的高度であればよく、例えば、SK材やSKH材又はSTAVAX等を使用することができる。
金型Aの第2金属層A2の上記凸部51の表面に回折レンズ凹部の段差に相当する段差が形成されているが、第1金属層A1の上記凸部10の表面には上記段差は形成されていない。
金型A側は、頭頂部の高さが15μmの短手方向側が凸レンズの形状、金型B側は、底部の深さが15μmの短手方向が凹レンズの形状とする。これは、第一金属層の深さまたは高さの形状を、単純に第二金属層の転写面と同じ高さまたは深さの形状としてしまうと、後の熱制御層30の形成時に熱制御層厚さの最厚部と最薄部での違いが100μm以上となってしまうが、熱制御層30である低熱伝導耐熱樹脂と、金属とでは熱伝導率に大きな違いがあるため、ここまで熱制御層30に大きく厚さの差をつけてしまうと、成形品からの熱の伝わり方が場所によって大きく違ってきてしまい、例えば熱制御層の薄い部分はすでに冷却が終了しているのに、熱制御層の厚い部分ではまだ冷却が終了しない、といった不具合によってかえって成形性に悪影響を及ぼすからである。
なお、金型A,Bはともにその長手方向は直線状となっている。
【0030】
上記の第1金属層A1の凸部10、第1金属層B1の凹部20は精密切削加工で成形する。加工寸法は回折レンズの円弧状凹凸の直径よりも一回り大きく座ぐり加工し、その中央部に回折レンズの直径に準じた大きさの凸形状(図2(a))、又は凹形状(図3(a))を形成する。なお、第1金属層A1,B1の表面には熱制御層30(ワニス)との密着性を高めるために、ドライ方法(又はウエット方法も可)による表面エッチング処理を施す(図示略)。また上記第1金属層A1,B1上面の成形加工は、上記の凸部10又は凹部20を精密加工できればよいのであるから、精密機械加工に限られるものではなく、物理、化学的な加工(湿式、乾式エッチング、デポジション)等の他の方法によることもできる。
【0031】
2.熱制御層の形成:
第1金属層A1,B1の上面の熱制御層形成材料は、低熱伝導性、高耐熱性等の性質を有する高分子材料やセラミックス材料、または金属材料である。具体的には、高分子材料としてポリイミドやポリアミドイミド、セラミックス系としてはジルコニアがあり、金属材料としてはビスマスがあり、また、その他に低熱伝導物質のフィラーや微粒子を共析させた複合めっき皮膜も利用可能である。但しこのうち、セラミックス系材料を積層させるには1000℃以上の焼結温度が必要となり、またビスマスは剛性が低くて脆く且つ成膜時の面粗さが粗くなるため実際に利用する場合には、相応の検討が必要となる。以上のことからこの実施例においては低熱伝導性(約0.5W/m・K)で、高い耐熱性(約300℃)を持ちながら、取扱いの比較的容易なポリアミドイミドの樹脂ワニス(商品名:東洋紡製バイロマックス)を使用して熱制御層30を形成している。
【0032】
前記金型A,Bの凸部10又は凹部20が熱制御層30で完全に被覆されており、当該熱制御層30は、上記凸部10又は凹部20を除き、所定厚さの被覆層であり、その表面は平坦面である。
この熱制御層30を次のようにして形成する。すなわち、所要量の前記樹脂ワニスを、精密ディスペンサによって滴下し(図2(b)、図3(b))、その後一定時間(この例では約180秒)放置し、その後、加熱乾燥(200℃、40分)させる。なお樹脂ワニスの滴下時に、座ぐり部端部の樹脂ワニスが表面張力によってわずかに持ち上がって高くなるが(図2(c)、図3(c))、この部分は回折レンズの成形部分ではなく、また下記の第2金属層A2,B2によって覆われるので特に問題はない。
【0033】
熱制御層30の厚さについては、金型Aの凸部(回折レンズの凹部に対応する部分)10の頂部で15μm、その他の平坦部で厚30μmであり、金型Bの凹部(回折レンズの凹部に対応する部分)の底部で45μm、その他の平坦部で30μmである。このような厚さ分布とすることで、回折レンズの厚肉部に当たる金型部分の熱伝導性を高め、逆に薄肉部の熱伝導性を低くすることによって、成形される回折レンズの冷え方が均一になる。
【0034】
3.導電皮膜形成前処理:
熱制御層の30表面に、次工程で形成する導電層との密着強度を高めるための前処理、すなわち導電層(以下これを「導電皮膜」という)形成前処理を実施する。これが導電皮膜形成前処理である(図2(d)、図3(d))。この実施例では大気圧プラズマ表面処理法を採用しているが、大気圧プラズマ処理を採用するのは、簡便な方法でありながら、樹脂表面の活性度を高めることができ、またその効果が長時間持続するからである。この処理によって、未処理の場合(約3〜4N/cm)と比較して6〜8倍の密着強度(約25N/cm)が得られるようになる。
この導電皮膜形成前処理法としては、その他に、酸素プラズマエッチング処理、紫外線/オゾン処理等があるが、これらは酸素濃度や処理時間などのパラメータを最適化しないと、逆に密着強度を低下させてしまうことになるために取扱が難しい。これに対して大気圧プラズマ表面処理法はそのようなことはないので優れている。
【0035】
4.導電皮膜形成処理:
上記の導電皮膜前処理を施した熱制御層表面に、導電皮膜を形成する。導電皮膜形成方法としては、アルゴンガス等による導電物質のスパッタリング法やイオンプレーティング法、その他に金属蒸着法、無電解めっき法があり、それぞれ利用できるが、界面剥離の問題を考えると、被積層対象物に金属粒子が深く浸透し、皮膜密着性が高いスパッタリング法やイオンプレーティング法が望ましい。なおスパッタリング法では、広い面積に均一な成膜が可能で、イオンプレーティング法では、飛び出した原子分子状の粒子に電界をかけて加速することによって、さらに高い密着性を得ることが可能である。
【0036】
この実施例では、導電皮膜の材質として第2金属層A2,B2と同材質のニッケルをアルゴンガスのスパッタリングによって成膜する方法を採用し、アルゴンガスのDCスパッタリングによってニッケルの成膜を実施した。そして到達真空度:2〜8×10−3Pa、アルゴンリーク圧:0.3〜1.5Pa、DCパワー:200〜700Wで、薄膜形成を実施した。膜厚は、20nmを下回ると膜形成が困難となり、200nmを超えると内部応力によるクラックが発生するので、この実施例では100nm±50nmとした(図4(a)、図4(b))。
【0037】
5.第2金属層形成:
導電皮膜40を形成したワークに、第2金属層A2,B2(図4(a)、図5(a))をニッケル電解めっきによって形成する。電解めっき浴の概要を表1に示す。
【0038】
【表1】

ワークを入槽してから3分〜5分間、0.2A/dm2未満の弱電流密度で通電し、導電皮膜をニッケル電鋳液に馴染ませて濡れ性を向上させ、ピット発生や電鋳時剥離を防ぐようにする。弱通電終了後に通電電流値を上昇させ、最終的に、10A/dm2〜20A/dm2程度まで電流値を上昇させてから一定に保ち、所定の電鋳膜厚(200〜250μm程度)を得るまで通電を続ける(図4(b)、図5(b))。
【0039】
6.成形パターン形成:
上記の第2金属層A2,B2を形成した後、これらの第2金属層に回折レンズ(図1参照)の形状に対応する凸形状51、又は凹形状52を形成し、上記凸形状の表面に階段状の回折レンズの成形パターンを形成する。そしてこれらの形成方法は上記「1.金属層A,Bの形成」の形成工程と同様に、精密切削加工で行う(図4(c)、図5(c))。
【0040】
上記1〜6の加工工程によって、熱制御構造の金型A,Bが製作される。
この金型の熱制御は第1金属層A1,B1の伝熱抵抗、熱制御層(断熱層)30の伝熱抵抗、第2金属層A2,B2の伝熱抵抗によるものであるから、その中で熱制御層30の部分的な伝熱抵抗の調整が、第一金属層A1,B1上に形成された凹凸形状の差からくる熱制御層30の厚さの差を通してなされ、したがって、成形品の厚さの差における熱制御が容易になる。それゆえ、上記従来のものに比して、複雑な形状の転写面を備えた金型の熱制御が容易であり、且つ金型の製造も容易である。
【0041】
次に、これらの金型による回折レンズの射出成形について説明する(図6参照)。
射出成形装置の可動金型71、固定金型72に金型A,金型Bをそれぞれ着脱離自在に装着して固定し、両金型A,Bによるキャビティに溶融樹脂を充填し、固定金型72と可動金型71で加圧する。そして所定温度まで冷却してから固定金型72と可動金型71を分離して成形品を取り出す。
【0042】
そして、この実施例では金型A,Bの加熱温度を従来の金型による場合よりも20〜30℃下げても、樹脂充填中の樹脂が流動状態を確保できる温度以上に保持され、微細構造部への充填が十分になされる。このように、金型温度が20℃〜30℃低く、また、微細形状への充填にも不具合は無いから、取り出し温度まで金型を冷却するのに要する時間が短くなり、したがって、成形タクトが短縮される。すなわち、従来の金型による場合は、成形タクトが約2分であるのに対して、この実施例では1分以下であるので、結局、成形タクトが約1分以上短縮される。仮に、熱制御層30の厚さが均一な熱制御金型で回折レンズを成形すると、成形品の厚肉部と薄肉部で冷却状態が違ってくるために、成形品の複屈折が大きくなってしまう(±200nm程度)という光学特性の不具合を生じるが、この実施例の金型A,Bによる場合は、成形品の厚さの差に応じて熱制御層の厚さを調整し、成形品の冷却時間を均一にできるから、複屈折を±100nmに抑制することができる。
【0043】
〔第2の実施例〕
以上の実施例に加えて、以下のような方法で第一金属層と熱制御層を形成することにより、より光学、機械特性に優れた回折レンズを転写性良く成形可能な第2の実施例で熱制御金型を製造できる。以下の(1)〜(3)の工程でこれを説明する。ただし、この工程以降の工程は、上記の実施例についての工程4〜工程7と同じであるので、これについての説明は省略するが、最終的には、図9に示すような断面形状の熱制御金型が制作される。ただし、図7(a)〜図7(e)及び図9においては、金型A,Bに実際にある第一金属層上の凹凸形状の図示は省略されている。
【0044】
(1)第一金属層形成:
成形装置の取付け板に装着する第一金属層上へ、第二金属層表面の転写面に対応する凸形状(金型A)及び凹形状(金型B)を形成する(図2(a)参照)。第一金属層の材質としては、加工性が良く比較的硬度の高い金属材料であればよい。回折レンズ成形のため、金型Aの第二金属層表面の凹部転写面には回折レンズ凹部に対応した段差が形成されているが、第一金属層表面には、そのような細かい形状まで形成する必要はなく、マクロなレンズ形状に対応した型を形成する。但しそのレンズ形状の寸法であるが、金型A側は、頭頂部の高さが15μmの短手方向側が凸レンズの形状、金型B側は、底部の深さが15μmの短手方向が凹レンズの形状、とする。長手方向は、金型A,Bともに直線状となっている。これは、単純に第二金属層の転写面と同じ深さの形状としてしまうと、後の熱制御層形成時に熱制御層厚さの最厚部と最薄部での違いが100μm以上となってしまい、そのため、成形品からの熱の伝わり方が場所によって大きく違ってしまうので、かえって成形性に悪影響を及ぼすからである。
【0045】
第2の実施例では形成方法として、精密切削加工等の機械加工を採用したが、他に研削加工等も利用できる。加工手順としては、回折レンズの転写面積よりも一回り大きいサイズの液溜まり部を座ぐって形成し(図7(a)参照)、その中央部に回折レンズ形状に準ずる形状に対応した凸形状(金型A)及び凹形状(金型B)を形成する(図示略)。
液溜まり部外周部の深さの最浅部dは、所望の熱制御層深さをD、樹脂ワニスの溶媒分をPvol%、とすると、
1.5×(D/(100−P)×0.01)>d>D/(100−P)×0.01
の関係となるように設定する(図7(e)、図8参照)。このように液溜まり部外周部の最浅深さdを設定することによって、乾燥硬化によって目減りする溶媒量を見込んだ量の樹脂ワニスを液溜まり部に吐出しても、樹脂ワニスが液溜まり部からあふれ出すことが無く、かつ次工程の液溜まり部端部の除去を効率良く短時間で行うことができる。
なお、第一金属層表面は、熱制御層との密着をよくするために、ドライまたはウェット方法による表面エッチング処理を施す(図示略)。
【0046】
(2)熱制御層形成:
上記(1)の第一金属層上へ、熱制御層の形成を行う。熱制御層形成材料としては、高分子材料としてポリイミドやポリアミドイミド、セラミックス系としてはジルコニア、金属系としてはビスマスがあり、その他に低熱伝導物質のフィラーや微粒子を共析させた複合めっき皮膜も利用可能である。ただしこのうち、セラミックス系材料を積層させるには1000℃以上の焼結温度が必要となり、またビスマスは剛性が低くて脆く且つ成膜時の面粗さが粗くなるため実際に利用する場合には、相応の検討が必要となる。
【0047】
以上の点から第2の実施例では、形成材料としてポリアミドイミドの樹脂ワニス(商品名:東洋紡製バイロマックス)を使用する。前記金型A,Bの凸及び凹レンズ形状が完全に埋まり、且つ予め乾燥硬化によって目減りする溶媒の量、及び次工程の機械加工による除去分を見込んで、乾燥硬化後に設定の熱制御層厚さを上回り、かつ液溜まり部から溢れないような量の前記樹脂ワニスを、精密ディスペンサによってを定量滴下する(図7(b)参照)。
滴下後一定時間放置して液溜まり部全体に樹脂ワニスを拡散させる(図7(c)参照)。なお樹脂ワニスを滴下して拡散させても、樹脂ワニスの粘度が高い場合には樹脂ワニス表面が平坦にならず高さにむらができる場合がある(図7(c)参照)。この高さむらは、次工程の乾燥によって、樹脂中の溶媒が揮発し体積収縮を起こしても残る(図7(d)参照)場合があるが、最終的に機械加工によって平坦化されるので問題はない。
拡散化終了後、樹脂ワニスを加熱乾燥させる(200℃,40分)ことによって熱制御層を形成する(図7(d)参照)。
【0048】
(3)液溜まり部外周部の除去及び熱制御層表面の平坦化:
上記(2)の樹脂ワニスの乾燥硬化が終わったところで、液溜まり部外周部と樹脂熱制御層を同時に機械加工によって、樹脂熱制御層の設定厚さまで削り、平坦化を行う(図7(e)参照)。
機械加工は、研削または切削加工で行うが、切削加工の場合液溜まり外周部が金属製のためバリが樹脂熱制御層側に食い込む可能性があるため、研削加工で行うことを推奨する。また加工表面は、鏡面にはせず、梨地状とすると表面積がその分増えるため、次の導電皮膜形成時に密着性が高まる。
本発明による熱制御金型を用いて、上記回折レンズを成形すると、その成形タクト約30秒であり、従来の金型を用いて上記回折レンズを成形する場合の成形タクトが約3分強であるので、これに対して3〜6倍に生産性が向上している。
【符号の説明】
【0049】
A,B:金型(熱制御金型)
A1:金型Aの第1金属層
B1:金型Bの第1金属層
A2:金型Aの第2金属層
B2:金型Bの第2金属層
1:回折レンズ
2:回折レンズの凹部
3:回折レンズの凸部
10:凸部
20:凹部
30:熱制御層
40:導電皮膜
51:凸形状
52:凹形状
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特許第3884105号
【特許文献2】特開平10−016009号公報
【特許文献3】特開2003−80567号公報
【特許文献4】特開2007−172674号公報
【特許文献5】特開2007−168087号公報
【特許文献6】特開2004−355781号公報
【特許文献7】特開2008−221783号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属層と第2金属層の間に、前記金属層よりも低熱伝導性の熱制御層を挟んだ構造を有する射出成形用の熱制御金型A,Bであって、
射出成形装置に装着される第1金属層上に熱制御金型A,Bの転写用凹形状又は凸形状に準じる凹形状部又は凸形状部を有し、
上記熱制御金型A,Bの第1金属層上に、低熱伝導耐熱樹脂のワニスを塗布して形成された熱制御層があり、
上記熱制御層の表面に導電層を介して第2金属層が積層されており、
上記第2金属層の樹脂成形面が凹形状又は凸形状の転写面であることを特徴とする射出成形用の熱制御金型。
【請求項2】
上記第1金属層上の凹形状部又は凸形状部が凹上曲面部又は凸上曲面部であり、上記凸形状の転写面に階段状の成形パターンがあることを特徴とする回折レンズ射出成形用の熱制御金型。
【請求項3】
第1金属層と第2金属層の間に、前記金属層よりも低熱伝導の熱制御層を挟んだ構造を有する射出成形用の熱制御金型A,Bの製造方法であって、
射出成形装置に装着される第1金属層上に熱制御金型A,Bの転写用凹形状又は凸形状に準じる凹形状又は凸形状を形成し、
上記熱制御金型A,Bの第1金属層上に低熱伝導耐熱樹脂のワニスを塗布して加熱乾燥させて熱制御層を形成し、
次に上記熱制御層の表面に導電層を形成し、
その後に当該導電層上に電解めっきで第2金属層を形成し、
上記第2金属層の樹脂成形面に転写用凹形状又は凸形状を形成することを特徴とする射出成形用の熱制御金型の製造方法。
【請求項4】
上記第1金属層上の凹形状部又は凸形状部が凹上曲面部又は凸上曲面部であり、上記第2金属層の凸形状の樹脂成形面に回折形状パターンを形成することを特徴とする請求項3の回折レンズ射出成形用の熱制御金型の製造方法。
【請求項5】
請求項1の第一金属層の上面に、金型転写面積より大きな面積で且つ樹脂熱制御層を超える深さの液溜まり部を形成し、該液溜まり部に前記溶剤に溶解させた状態の低熱伝導耐熱樹脂のワニスを所望の量吐出させてから、溶媒を乾燥除去して樹脂層を形成し、その後溶媒乾燥除去時のヒケによって盛り上がった樹脂層と液溜まり部の外周部壁面を一緒に削り、樹脂熱制御層表面を平坦にすることを特徴とする、熱制御金型の製造方法。
【請求項6】
請求項2の液溜まり部外周部の深さの最浅部をd、所望の樹脂熱制御層深さをD、樹脂ワニスの溶媒分をPvol%、とすると、1.5×(D/(100−P)×0.01)>d>D/(100−P)×0.01の関係となるように、液溜まり部深さdを規定したことを特徴とする、熱制御金型の製造方法。
【請求項7】
成形部厚さに厚肉部と薄肉部があって表裏面が曲面状の凹凸である成形部品であって、請求項1の熱制御金型を用いて射出成形された成形部品。
【請求項8】
成形部厚さに厚肉部と薄肉部があって表裏面が曲面状の凹凸である回折レンズであって、請求項2の熱制御金型を用いて射出成形された回折レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−158881(P2010−158881A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51064(P2009−51064)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】