説明

射出成形用金型

【課題】 樹脂成形品に発生するフローマークを抑制することができる射出成形品用金型を提供する。
【解決手段】 金型内に形成される金型空間部に溶融樹脂の流路を通して溶融樹脂が充填され、前記金型空間部4内に合成樹脂の成形品が形成される射出成形用金型において、前記溶融樹脂の流路から前記金型空間部4に移行する箇所であって、溶融樹脂の流れを変える屈曲部41の内側内面Cを曲面形状に形成したことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形される樹脂成形品に発生するフローマークを抑制することができる射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ粉などの光輝材を含有する樹脂材料を射出成形する際、図3(a)(b)に示すように、射出成形用金型100が用いられている。
射出成形用金型100は一般に雄型101と雌型102で構成され、雄型101と雌型102相互間に成形品が形成される金型空間部(キャビティとも呼ばれる)103が形成されている。この金型空間部103には、溶融流路104が連通されており、この溶融流路104には、図示しない射出成形機のノズルを通して溶融樹脂が供給されるものである。
【0003】
図4に示すように、直角か直角に近い角を有する部品形状の場合、金型形状が急激に変化する屈曲部105を有し、その部分で樹脂の乱流106が発生し、樹脂の充填方向が急激に変化することになる。このため、屈曲部105を起点とした成形品の外観部分、特に金型空間部103内の部品形状が変化するD部にフローマーク107が発生するか、発生し易い傾向があった。フローマーク107とは、樹脂成形品に、金型空間部103内の流れ模様が残って外観上に現れる不具合であり、外観品質を著しく低下させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−213593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の射出成形品用金型では、樹脂の充填方向が急激に変化する場合、その屈曲部を起点としてフローマークの発生が抑制できず、外観品質低下を回避することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、樹脂成形品に発生するフローマークを抑制することができる射出成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、金型内に形成される金型空間部に溶融樹脂の流路を通して溶融樹脂が充填され、前記金型空間部内に合成樹脂の成形品が形成される射出成形用金型において、前記溶融樹脂の流路から前記金型空間部に移行する箇所であって、溶融樹脂の流れを変える屈曲部の内側内面を曲面形状に形成したことにある。
また、本発明は、前記屈曲部の内側内面を0.5≦R<3.0を満足するように形成したことにある。
【発明の効果】
【0008】
溶融樹脂の充填方向の急激な変化を防ぎ、樹脂の乱流を抑えることで金型空間部内での流れ模様の発生を防ぎ、フローマークの発生を緩和・抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による射出成形用金型を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】図1(b)の金型空間部内の樹脂の流れを示す拡大図である。
【図3】従来の射出成形用金型を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】従来の金型空間部内の樹脂の流れおよび乱流を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図示の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1(a)(b)は、本発明の実施の形態による射出成形用金型1である。射出成形用金型1は雄型2と雌型3で構成され、雄型2と雌型3相互間に金型空間部4が形成されている。この金型空間部4には、ゲート51、ランナー52、スプルー53からなる溶融流路5が連通されており、この溶融流路5の開口54には、図示しない射出成形機のノズルを通して溶融樹脂が供給されるものである。溶融樹脂は、シルバーメタリック色などの光輝材を含有する樹脂材料で、光輝材としてはアルミ粉などが用いられている。ゲート51はランナー52と金型空間部4の中間に設けられており、ランナー52の幅から次第に広くして金型空間部4に連結されている。
【0012】
金型空間部4は射出成形品の形状に応じて射出成形用金型1内部に種々の形状に形成されており、金型空間部4には直角あるいは直角に近い急激に曲がる屈曲部41が射出成形品に応じて何箇所かに形成されている。
溶融流路5から金型空間部4に移行する箇所であって、金型空間部4内で溶融樹脂の流れを変える金型空間部4の屈曲部41には、内側内面Cに、角部を落とした曲面形状Rが形成されている。この曲面形状Rは、0.5≦R<3.0(mm)で形成されており、より好ましくは1.5≦R≦2.0(mm)に形成されている。
【0013】
図1(a)において、前記ゲート51の最も狭い部分の幅L1から最も広い幅L2まで広げられてから金型空間部4に連結され、この幅L2よりも、この曲面形状Rを形成する範囲L3は、広範囲L2<L3に形成されている。
【0014】
上記実施の形態によると、射出成形機のノズルから開口54を通して充填された溶融樹脂は、スプルー53、ランナー52、ゲート51を通り、金型空間部4に充填される。金型空間部4に充填された溶融樹脂は、金型空間部4の屈曲部41で、充填方向が急激に変わるが、図2に示すように屈曲部41の内側内面Cに、角部を落とした曲面形状Rが形成されているので、屈曲部41で乱流が起きずに溶融樹脂の流れは内側内面Cの曲面形状Rに沿ってスムーズに流れる。こうして、屈曲部41での溶融樹脂の乱流を抑えることで、金型空間部4内での流れ模様を防ぎ、フローマークの発生を緩和、抑制することができ、外観、品質の向上を図ることができる。
【0015】
[実施例]
ドアトリムオーナメントを、アルミ粉を添加した樹脂材料で、射出成形した際、意匠面にフローマークが発生した(図3参照)。
意匠面の裏面に相当する金型空間部4の屈曲部41の内側内面Cに、幅40mmで、R=0.5,1.0,1.5,2.0,3.0(mm)をそれぞれ設け、フローマーク抑制効果を確認した結果、R=0.5,1.0のR取りでは、フローマークが緩和したが、抑制はできなかった。R=1.5,2.0,3.0(mm)のR取りでは、フローマークを完全に抑制することができた。ただし、R=3.0のR取りを施すと、板厚アップによりヒケ(フローマークとは異なる外観不具合)気味となった。
ドアトリムオーナメントの金型空間部4の屈曲部41の内側内面Cに、0.5≦R≦3.0のRを設けることで、フローマークの発生を抑制することができた。図1の内側内面Cに、R=0.5,1.0,1.5,2.0,3.0(mm)の曲面を設けたときのフローマークの発生状況を表1に示す。このときの金型寸法は、ゲート51の最も狭い部分(L1)から広い部分(L2)までの距離を20(mm)、狭い部分の幅L1、最も広い幅L2=36(mm)、ゲート51の広い部分から金型空間部4までを7(mm)、ドアトリムオーナメントの成形金型にRを設ける幅L3=40(mm)に設定している。なお、ゲート51の幅L1,L2と、曲面形状Rを形成する範囲L3との関係は、L1<L2≦L3に設定する。
【0016】
【表1】

【0017】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、射出成形用金型1で成形される樹脂成形品はドアトリムオーナメントに限らずどのような、樹脂成形品にも適用できることは言うまでもない。金型空間部4の屈曲部41の内側内面Cに適用する湾曲部は、R=0.5,1.0,1.5,2.0,3.0(mm)の中で適宜選択すればよく、また、屈曲部41としては、直角あるいは、鋭角、鈍角の角部に対しても適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0018】
1 射出成形用金型
2 雄型
3 雌型
4 金型空間部
41 屈曲部
5 溶融流路
C 内側内面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に形成される金型空間部に溶融樹脂の流路を通して溶融樹脂が充填され、前記金型空間部内に合成樹脂の成形品が形成される射出成形用金型において、前記溶融樹脂の流路から前記金型空間部に移行する箇所であって、溶融樹脂の流れを変える屈曲部の内側内面を曲面形状に形成したことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記屈曲部の内側内面を0.5≦R<3.0の範囲内の曲面形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194582(P2011−194582A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60448(P2010−60448)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】