説明

射出成形装置の安全扉装置

【課題】安全性を確保しつつメンテナンス作業の必要が生じたときに作業性良く同作業を行うことのできる射出成形装置の安全扉装置を提供する。
【解決手段】 射出成形装置の装置本体を囲う安全カバー13の一部であって、正面の作業用の開口部68の下側に位置する正面下部カバーを、左右方向端部のヒンジ軸76の周りに回転する開閉可能な回転式の扉となすと共に、扉の裏側に位置する部分であって開口部68に対し左右方向の両側に位置する部分に、投光部ユニット72と受光部ユニット74とを有する光電センサ70を設け、且つ扉には、開時に光電センサ70の光を遮光する状態となる一方、閉時には非遮光状態となる遮光板82を扉と一体回転する状態に設け、扉を安全扉80として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は射出成形装置の安全扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム製品や樹脂製品等の成形装置として射出成形装置が広く用いられている。
この射出成形装置には、安全のために装置本体を囲う安全カバーが設けてある。この安全カバーには、その正面位置に床から所定高さ位置より上側の部分に、成形品を取り出したり金具を成形金型にセットしたり或いはその他作業を行うための開口部が設けてあり、その下側に安全カバーの一部を成す正面下部カバーが備えられている。
【0003】
従来、この正面下部カバーは安全のために固定状態に設けてあり開閉不能に構成されていた。
他方開口部の高さ位置には、開口部に対し左右両側に複数の投光部と、これら投光部に対向する受光部とを備えた多光軸の光電センサが、安全装置のエリアセンサとして設けられており、装置稼動中においてはその光電センサがオン状態にあって、作業者の手等がその開口部に進入するとこの光電センサがこれを検知して、装置を自動的に停止させたり警報を鳴らしたりするようにしている。
【0004】
この開口部はまた、装置のメンテナンス作業用としても用いられており、メンテナンス作業が必要となった場合には、その光電センサをオフ状態として、その開口部を通じ作業者が装置内部のメンテナンスを行うようにしていた。
しかしながらこの開口部を通じてのメンテナンス作業では、作業者が安全カバーの内側に入り込むことができず、メンテナンス作業が行いづらいといった問題が生じていた。
本発明はこのような問題を解決すべく案出されたものである。
【0005】
尚本願に対する先行技術として下記特許文献1に、射出成形機の金型交換等を行う開口部に安全カバーを設け、射出成形機の動作中は安全カバーを閉じた状態で成形運転を行い、金型の交換時には安全カバーをスライド移動させて開状態とすることで作業者が安全に作業を行えるようになした射出成形機が開示されている。
但しこの安全カバーは開口部を開閉するためのものであって、本発明の対象とする正面下部カバーとは異なったものであり、従ってこの特許文献1に開示のものは本発明とはその対象が異なった別異の発明である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−25405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情を背景とし、安全性を確保しつつメンテナンス作業の必要が生じたときに、作業性良く同作業を行うことのできる射出成形装置の安全扉装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して請求項1のものは、射出成形装置の装置本体を囲う安全カバーの一部であって、正面の作業用の開口部の下側に位置する正面下部カバーを、左右方向端部の軸の周りに回転する開閉可能な回転式の扉となすと共に、該扉の裏側に位置する部分であって前記開口部に対し左右方向の両側に位置する部分に、投光部と受光部とを有する光電センサを設け、且つ前記扉には、開時に該光電センサの光を遮光する状態となる一方、閉時には非遮光状態となる遮光板を該扉と一体回転する状態に設け、該扉を安全扉として構成してあることを特徴とする。
【0009】
請求項2のものは、請求項1において、前記光電センサは前記扉の上部に位置する部分に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0010】
以上のように本発明は、射出成形装置の装置本体を囲う安全カバーにおける開口部の下側の、正面下部カバーを開閉可能な回転式の扉と成す一方、その扉の裏側に位置する部分であって開口部に対し左右方向の両側に位置する部分に光電センサを設け、そしてその扉に開時には光電センサの光を遮光する一方、閉時には非遮光状態となる遮光板を扉と一体回転する状態に設け、かかる扉を安全扉として構成したもので、本発明によれば、従来固定式に設けられていた開口部下側の正面下部カバーが回転式の扉となしてあるため、装置本体のメンテナンスが必要となったとき、その扉(安全扉)を開くことによって、作業者が身体の全体を安全カバーの内側に入れて作業することができるようになり、メンテナンス作業の作業性を大幅に向上せしめることができる。
【0011】
一方このように正面下部カバーを開閉可能な扉として構成しておくと、装置稼動中に誤って正面下部カバー即ち扉が開かれてしまうといった危険を招く。
【0012】
そこでこの発明では、この正面下部カバーから成る扉の裏側に光電センサを設け、一方その扉には開時にその光電センサの光を遮る遮光部を設けることによって、かかる扉を安全扉として構成している。
従って装置稼動中に誤って正面下部カバーからなる扉が開かれてしまうと、自動的に安全装置が働いて装置が停止状態となったり警告が発せられ、これによって安全を確保することができる。
【0013】
次に請求項2は、上記光電センサを扉の上部に位置する部分に設けたもので、この場合、開口部の左右方向両側位置に設けてある開口部用の光電センサをそのままわずかに下側に延長することで、簡単にこの安全扉用の光電センサを構成することができる。
【0014】
或いはまた、従来にあっては開口部用のエリアセンサとしての光電センサは通常開口部の下端位置よりも下側まで延長して設けられていることも多く、この場合、安全扉用の光電センサを特に設けなくても、従来備えられている開口部用の光電センサをそのまま安全扉用の光電センサとして利用できる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は射出成形装置の全体構成を示したもので、射出装置10と成形装置12とを有する装置本体、及びこれを囲う安全カバー13とを含んでいる。
射出装置10は、射出ポット14とリボン状のゴム材料をスクリューの回転により可塑化し流動化させて、射出ポット14内に押し出す押出機16と、射出ポット14内に充填されたゴム材料を図中下向きの前進移動によって射出ポット14から射出するプランジャ18と、その駆動シリンダ20とを有している。
射出装置10は、プランジャ18を下向きに前進移動させて、射出ポット14内のゴム材料を下方の成形型24に向けて射出する。
【0016】
成形装置12は、型締装置22と成形型24とを有している。
尚図1において25は型締装置22における油圧装置である。
この実施形態において、成形型24は、上型26と薄板状をなす中型28と下型30との上下の分割構造をなしている。
下型30の下側には熱板36が設けられており、更にその下側に断熱板38が設けられ、その下側に第1スライド板40が設けられている。
尚42は成形位置において上下に移動し、中型28と下型30とを熱板36,断熱板38等とともに上昇させ又は下降させる可動板である。
【0017】
上記第1スライド板40は、図1に示しているように後方(図中左方)に延び出しており、その端部上に熱板36に埋設されたヒータに繋がる配線をまとめて収容する配線ボックス44が設けられ、更にその上側に配線ボックス44の蓋を兼ねた第2スライド板46が設けられている。
第2スライド板46は配線ボックス44から更に図中左方に延び出している。
【0018】
本実施形態においてこれら第1スライド板40,配線ボックス44,第2スライド板46全体がスライド部材47を構成している。
これら第1スライド板40,配線ボックス44,第2スライド板46にて構成されたスライド部材47は、進退シリンダ48にて図1中左右方向に前進及び後退運動させられる。
一方成形装置12の前部(図1中右部)にはテーブル50が設けられていて、そのテーブル50に、成形型24における中型28と下型30とを分離するための型分離装置52が設けられている。
【0019】
この型分離装置52は昇降シリンダ54と、これにより昇降駆動される昇降ロッド56と、その上端に設けられた昇降部材58とを図1の紙面と直角方向の左右両側に一対有している。
これら昇降部材58の上側には更に爪部材60が設けられており、かかる爪部材60が昇降部材58と一体に昇降運動させられる。
【0020】
この実施形態においては、図1の型締装置22にて成形型24を型締状態に保持し、その状態でプランジャ18を駆動シリンダ20により図中下向きに突き出すことで、射出ポット14内に充填されている流動状態のゴム材料が、成形型24のキャビティに注入される。
そしてその状態で所定時間保持されることで、キャビティに注入されたゴム材料が加硫されゴム製品となる。
【0021】
その後成形型24における中型28と下型30とが下降せしめられ、そしてその下降端においてスライド部材47が図1中左から右向きに前進させられて、スライド部材47詳しくは第1スライド板40上に載置されている中型28と下型30とが、ともにテーブル50上に持ち来たされる。
即ち中型28と下型30とが成形位置から型分離位置へと移動せしめられる。
【0022】
型分離装置52は、その後続いて昇降シリンダ54により昇降ロッド56を上昇させる。
すると中型28を保持した一対の保持爪(図示略)が一体に上昇させられて中型28を上方に持ち上げ、下型30から中型28を分離させる。
その後中型28に保持されている製品が中型28ごと或いは中型28から分離された上で射出成形装置の外部へと取り出される。
【0023】
上記安全カバー13には、図2にも示しているように正面位置において床から所定高さ位置、ここでは床から約90センチメートルの高さ位置よりも上方に開口部68が設られており、そしてこの開口部68の左右方向両側に、多数の投光部と各投光部に光軸を対向して配置された対応する数の受光部と縦に配列して成る多光軸の光電センサ70が、安全装置のエリアセンサとして設けられている。
ここで開口部68の上端は床から約200センチメートル位の高さである。
図中72は、開口部68の左側において投光部を上下に連ねて成る投光部ユニットを表しており、また74は開口部68の右側に受光部を縦に所定ピッチで連ねて成る受光部ユニットを表している。
尚ここでは投光部ユニット72を左側に、受光部ユニット74を右側に配置しているが、勿論その配置関係は逆の配置であっても支障はない。
【0024】
この安全装置のエリアセンサとしての光電センサ70は次のように働く。
この光電センサ70は、装置稼動中においては発光部から発せられた光を受光部で受光して、投光部ユニット72と受光部ユニット74との間に光のカーテンを形成した状態にある。
この状態で開口部68に作業者の手や物体が挿入されると、その挿入によって光が遮断され、受光部で発光部からの受光しなくなる。そしてそのことによって、開口部68に作業者の手等や物体等が進入したことを検知する。そしてこの検知に基づいて安全装置が働いて装置が停止せしめられたり、或いは同時に警報が発せられたりする。
【0025】
図2において、安全カバー13における開口部68の下側の部分の正面下部カバーは左右方向端部、ここでは右端部においてヒンジ軸76にてフレーム78に連結されており、かかる正面下部カバーが開閉可能な安全扉80として構成されている。
【0026】
上記光電センサ70は、安全扉80の裏側位置においてその下部が、かかる安全扉80の上部に至るまで延長する形態で設けられている。
一方安全扉80には、図3に示しているように遮光板82が安全扉80と一体回転する状態に設けられている。
ここで遮光板82は、安全扉80の上部に且つ安全扉80の板面の方向に部分的に突出する形態で設けられている。
この遮光板80は、上記光電センサ70の下部に対して上下方向に重複する位置に設けられている。
【0027】
この安全扉80は、図4(B)(I)に示しているように閉時には遮光板82が光電センサ70の光を遮ることはないが、図4(B)(II)に示しているようにこれを開いたとき、即ち安全扉80の開時には、遮光板82が図中上側即ち装置本体側に突き出した状態となって、光電センサ70の光を遮断した状態となる。
従って装置稼動中にあって光電センサ70がオン状態のときに安全扉80を開くと、遮光板82が光電センサ70の光を遮ることによって安全装置が働き、装置が稼動停止せしめられる。
【0028】
以上のように本実施形態によれば、従来固定式に設けられていた開口部68下側の正面下部カバーが回転式の安全扉80となしてあるため、装置本体のメンテナンスが必要となったとき、その扉(安全扉)80を開くことによって、作業者が身体の全体を安全カバー13の内側に入れて作業することができるようになり、メンテナンス作業の作業性を大幅に向上せしめることができる。
【0029】
一方装置稼動中に誤って正面下部カバー、即ち安全扉80が開かれてしまうと、安全扉80の裏側の光電センサ70の光が遮光板82にて遮られることから、自動的に安全装置が働いて装置が停止状態となったり警告が発せられ、これによって安全を確保することができる。
また光電センサ70を安全扉80の上部に位置する部分に設けているため、開口部68の左右方向両側位置に設けてある開口部用の光電センサ70を、そのままわずかに下側に延長することで、簡単にこの安全扉80用の光電センサ70を構成することができる。
【0030】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例である。
例えば本発明は遮光板82を安全扉80の上端部ではなく、上下方向の中間部に設けるとともに、これに対向する位置に光電センサを設けるといったことも可能であるし、また本発明は上記ゴム射出成形機以外に樹脂の射出成形機や或いは上例以外の様々な種類、形態の射出成形装置に適用することも可能であるなど、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の適用対象である射出成形装置の一例の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1における安全扉装置の正面図である。
【図3】同実施形態の作用説明図である。
【図4】同実施形態の図3とは異なる作用説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 射出装置
12 成形装置
13 安全カバー
68 開口部
70 光電センサ
72 投光部ユニット
74 受光部ユニット
76 ヒンジ軸
80 安全扉
82 遮光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置の装置本体を囲う安全カバーの一部であって、正面の作業用の開口部の下側に位置する正面下部カバーを、左右方向端部の軸の周りに回転する開閉可能な回転式の扉となすと共に、該扉の裏側に位置する部分であって前記開口部に対し左右方向の両側に位置する部分に、投光部と受光部とを有する光電センサを設け、且つ前記扉には、開時に該光電センサの光を遮光する状態となる一方、閉時には非遮光状態となる遮光板を該扉と一体回転する状態に設け、該扉を安全扉として構成してあることを特徴とする射出成形装置の安全扉装置。
【請求項2】
請求項1において、前記光電センサは前記扉の上部に位置する部分に設けてあることを特徴とする射出成形装置の安全扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−196402(P2007−196402A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14495(P2006−14495)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000177058)三友工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】